(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】エアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカー
(51)【国際特許分類】
H04R 13/00 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
H04R13/00
(21)【出願番号】P 2019559243
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2017014918
(87)【国際公開番号】W WO2018131808
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2017-0006958
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521560447
【氏名又は名称】ジオード サウンド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】ユ,オクジョン
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1596894(KR,B1)
【文献】特開2009-278517(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00838159(GB,A)
【文献】特開昭60-192499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 11/00-11/06
11/14-15/02
19/00-19/04
21/00-21/02
23/00-23/02
31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板を含む振動モジュールと、
前記振動モジュールの上部に配置される第1磁気回路と、
前記振動モジュールの下部に配置される第2磁気回路とを備え、
前記第1磁気回路は、前記振動モジュールの上部に配置される第1永久磁石、前記第1永久磁石の内部に配置される第1コイル、及び前記第2磁気回路に向かって膨らむように形成され、前記第1コイルを固定する第1固定部材を含み、
前記第2磁気回路は、前記振動モジュールの下部に配置される第2永久磁石、前記第2永久磁石の内部に配置される第2コイル、及び前記第1磁気回路に向かって膨らむように形成され、前記第2コイルを固定する第2固定部材を含む、エアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカー。
【請求項2】
前記第1コイルは、前記第1永久磁石の上面と平坦になるように配置され、前記第1永久磁石の下面よりも突出し、
前記第2コイルは、前記第2永久磁石の下面と平坦になるように配置され、前記第2永久磁石の上面よりも突出し、
前記第1コイルと前記第2コイルは、前記振動板を基準として相互対称な同じ間隔のエアギャップが形成されるように配置される、請求項1に記載のエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカー。
【請求項3】
前記振動モジュールは、
前記振動板の上面及び下面を支持するリング状の上部及び下部ダンパー、及び前記上部及び下部ダンパーを前記振動板と一緒に固定する上部及び下部ハウジングを含み、
前記上部及び下部ハウジングは、アングル(angle)
の断面形状の断面を持つ、請求項1に記載のエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカー。
【請求項4】
前記振動板は中心に質量体が配置される、請求項3に記載のエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカー。
【請求項5】
前記振動板は、中央ホールから放射状に延びた複数の延長ホールと、前記複数の延長ホール同士の間に配置される複数の振動羽根とを含む、請求項3に記載のエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカー。
【請求項6】
前記第1磁気回路とハウジングの内面との間に配置され、音響漏れを防止し且つコイルの損傷を防止するクッションパッドを含む、請求項1に記載のエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカー。
【請求項7】
前記第1永久磁石の上面に前記第2永久磁石の下面極と同じ極となるように配置されるシールド磁石、
前記振動モジュール、前記第1及び第2永久磁石、及び前記シールド磁石の外側面を包み込むシールドガイド、並びに
前記第2永久磁石及び前記シールドガイドの下面に配置されるシールドプレートを含み、
前記シールドガイドは非磁性体であり、前記シールドプレートは磁性体である、請求項1に記載のエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカー。
【請求項8】
高音振動板と、
前記
高音振動板の上部に配置される第1コイルと、
前記
高音振動板の下部に配置される第2コイルと、
前記第1コイル及び前記第2コイルの外側に配置される永久磁石とを備え、
前記第1コイル及び前記第2コイルの装着配置のための第1固定部材及び第2固定部材が前記永久磁石の両端に対称に設けられ、
前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に配置された軟質の第1磁性体ダンパー及び第2磁性体ダンパーを介して
前記高音振動板が設けられる、エアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカー。
【請求項9】
前記第1磁性体ダンパーと前記第2磁性体ダンパーは高分子樹脂、及び前記高分子樹脂に分散されたパーティクルを含み、
前記パーティクルは強磁性粉末または粒子を含む、請求項8に記載のエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーに係り、より詳細には、振動モジュールの上部及び下部に積層されるコイルをそれぞれの固定部材で確実かつ正確にセッティングすることにより、振動板を基準としてその上部及び下部にコイルが相互対称な同じ間隔のエアギャップを形成することを可能にし、これにより、エアギャップの非対称により発生する歪み及びその他の音響変換特性の不均一性を排除することができる、エアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電磁スピーカーは、導線が巻かれたコイルから発生した交流磁気力線と、永久磁石から誘導された直流磁気力線とが相互作用して力を発生させる原理はコイン型と同一であるものの、コイルが直接駆動されるコイン型とは異なり、コイルは固定され、コイルの一端に付設された鉄片が電磁石化されて振動することにより、電気-音響変換を行う。
【0003】
電磁スピーカーには、バランスドアーマチュアスピーカー(balanced armature speaker)やプレート型スピーカーなどがあるが、このような電磁スピーカーの中でも、プレート型スピーカーに関連したものは、韓国特許第1596894号(特許文献1)に提示されている。
【0004】
特許文献1の電磁スピーカーは、上部コイルと下部コイルとが対応して配置され、上部及び下部コイルの外側に永久磁石が配置され、上部コイルと下部コイルとの間に振動板が配置されるが、前記振動板の上面及び下面の縁部が上部ダンパー部材及び下部ダンパー部材によって支持されるようにギャップガイドと一緒に永久磁石同士の間に配置されたものであった。
【0005】
このように構成された従来の電磁スピーカーは、振動板が上部コイル及び下部コイルの電磁力によって電磁石化され、コイルの重量が排除された状態で永久磁石の磁力と反応して直接駆動することにより、電気信号に対応した迅速な応答性を実現することができ、これにより、非常に繊細でディテールな音響再生が可能であった。
【0006】
また、振動板が自ら能動駆動して音響変換することにより、振動部の変換経路歪み率を最小限に抑えることができ、これにより、よりクリアな音の再生に有利である。
【0007】
しかし、上述したような従来の電磁スピーカーにおいては、磁気回路が、永久磁石の内側に単純にコイルが挿入される構造であって、コイルの位置を正確にセッティングすることができず、これにより振動板を基準としてその上部及び下部に設置されるコイル間のエアギャップが相互対称でありながら同一の離隔間隔を維持するようにすることが難しく、このようにエアギャップの非対称により発生する歪み及びその他の音響変換特性の不均一性を排除することができなくなるという問題点があった。
【0008】
また、永久磁石の内側にコイルが挿入された一対の磁気回路で形成された後、磁気回路の永久磁石同士の間にギャップガイドが位置するように組み立てられるので、磁気回路の組立公差が発生せざるを得ず、これにより、上部コイル及び下部コイル間の対称維持だけでなく、音圧/特性の均一化においても作業上の困難が発生するおそれがあるという問題点があった。
【0009】
また、リング状のギャップガイドの内面に下部ダンパーリング、振動板及び上部ダンパーリングを順次組み立てるが、振動板が別個の上部及び下部ダンパーリングによって支持される構造であって、部品数及び組立工程が多いのはもとより、モジュールまたはユニット化することができず、これにより空隙の高さとダンパーリングの寸法の不均一が発生することがあり、このような不均一が発生すると、特性/音圧/再生周波数の均一実現に不利であるのはもとより、低音漏洩の可能性が存在するという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一実施形態は、上述したような従来の電磁スピーカーの諸弊害及び問題点を解決するために研究開発されたもので、振動モジュールの上部及び下部に積層されるコイルをそれぞれの固定部材で確実かつ正確にセッティングすることにより、振動板を基準としてその上部及び下部にコイルが相互対称な同じ間隔のエアギャップを形成することが可能であり、これにより、エアギャップの非対称により発生する歪み及びその他の音響変換特性の不均一性を排除することができるようにした、エアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の一実施形態は、振動板を上部及び下部ダンパーと共に上部及び下部ハウジングに一体化させて振動モジュール化することにより、別途の予備工程で組立作業の自動化が可能であり、これにより、生産コストに影響を与える手作業の最小化を図ることができるようにした、エアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、振動モジュールの振動板と上部及び下部ハウジングを磁性体で形成し、上部及び下部ダンパーを弾性率の制御が可能な非磁性体で形成することにより、永久磁石同士間の磁気抵抗と漏洩磁束を最小化するとともに、バイアス磁力の増加を図ることができ、これにより振動板の逆位相が排除され、全面積が同位相駆動されることにより位相差歪みの低減だけでなく、音響変換効率の向上を図ることができるようにした、エアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーを提供することを目的とする。
【0013】
本発明の解決しようとする課題はこれに限定されるものではなく、以降に説明する課題の解決手段や実施形態から把握できる目的や効果も含まれるといえる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーは、振動板を含む振動モジュールと、前記振動モジュールの上部に配置される第1磁気回路と、前記振動モジュールの下部に配置される第2磁気回路とを備え、前記第1磁気回路は、前記振動モジュールの上部に配置される第1永久磁石、前記第1永久磁石の内部に配置される第1コイル、及び前記第2磁気回路に向かって膨らむように形成され、前記第1コイルを固定する第1固定部材を含み、前記第2磁気回路は、前記振動モジュールの下部に配置される第2永久磁石、前記第2永久磁石の内部に配置される第2コイル、及び前記第1磁気回路に向かって膨らむように形成され、前記第2コイルを固定する第2固定部材を含む。
【0015】
前記第1コイルは、前記第1永久磁石の上面と平坦になるように配置され、前記第1永久磁石の下面よりも突出し、前記第2コイルは、前記第2永久磁石の下面と平坦になるように配置され、前記第2永久磁石の上面よりも突出し、前記第1コイルと前記第2コイルは、前記振動板を基準として相互対称な同じ間隔のエアギャップが形成されるように配置できる。
【0016】
前記振動モジュールは、前記振動板の上面及び下面を支持するリング状の上部及び下部ダンパー、及び前記上部及び下部ダンパーを前記振動板と一緒に固定する上部及び下部ハウジングを含み、前記上部及び下部ハウジングは、アングル(angle)状の断面を持つことができる。
【0017】
前記振動板は、中心に質量体が配置できる。
【0018】
前記振動板は、中央ホールから放射状に延びた複数の延長ホールと、前記複数の延長ホール同士の間に配置される複数の振動羽根とを含むことができる。
【0019】
前記第1磁気回路とハウジングの内面との間に配置され、音響漏れを防止し且つコイルの損傷を防止するクッションパッドを含むことができる。
【0020】
前記第1永久磁石の上面に前記第2永久磁石の下面極と同じ極となるように配置されるシールド磁石;前記振動モジュール、前記第1及び第2永久磁石、及び前記シールド磁石の外側面を包み込むシールドガイド;並びに前記第2永久磁石及びシールドガイドの下面に配置されるシールドプレート;を含み、前記シールドガイドは非磁性体であり、前記シールドプレートは磁性体であり得る。
【0021】
前記第1固定部材と前記振動板との間に配置される第1磁性体ダンパー、及び前記第2固定部材と前記振動板との間に配置される第2磁性体ダンパーを含むことができる。
【0022】
前記第1及び第2磁性体ダンパーは、高分子樹脂、及び前記高分子樹脂に分散されたパーティクルを含み、前記パーティクルは、強磁性粉末または粒子を含むことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーによれば、振動モジュールの上部及び下部に積層されるコイルをそれぞれの固定部材で確実かつ正確にセッティングすることにより、振動板を基準としてその上部及び下部にコイルが相互対称な同じ間隔のエアギャップを形成することが可能であり、これにより、エアギャップの非対称により発生する歪み及びその他の音響変換特性の不均一性を排除することができるため、音圧、特性、音質のバラツキが非常に少なく、均一な高品質の高解像電磁スピーカーを得ることができる。
【0024】
また、本発明は、固定部材のボーター(boater)深さに対する制御によって振動板とのエアギャップ調節が可能なので、音響変換効率の調節が可能であるという利点を持つ。
【0025】
また、本発明は、振動板を上部及び下部ダンパーと共に上部及び下部ハウジングに一体化させて振動モジュール化することにより、別途の予備工程で組立作業の自動化が可能であり、これにより、生産コストに影響を与える手作業の最小化を図ることができる。
【0026】
また、本発明は、振動モジュールの振動板と上部及び下部ハウジングを磁性体で形成し、上部及び下部ダンパーを弾性率の制御が可能な非磁性体で形成することにより、永久磁石同士間の磁気抵抗と漏洩磁束を最小化するとともにバイアス磁力の増加を図ることができ、これにより、振動板の逆位相が排除されて全面積が同位相駆動されることにより位相差歪みの低減と音響変換効率の向上を図ることができる。
【0027】
本発明の多様で有益な利点と効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の好適な一実施形態に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーを示す分解図である。
【
図2】本発明に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーの組立断面図である。
【
図5】本発明に係る電磁スピーカーから振動モジュールを抜粋して詳細に示す平面図である。
【
図7】本発明に係る電磁スピーカーにおける振動モジュールの振動板に対する他の実施形態を示す断面図である。
【
図8】本発明に係る電磁スピーカーにおける振動モジュールの振動板に対する他の実施形態を示す断面図である。
【
図9】本発明の別の実施形態に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーを示す断面図である。
【
図10】
図9の振動モジュールに適用された振動板を抜粋して示す平面図である。
【
図11】本発明に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーの別の実施形態を示す断面図である。
【
図12】本発明に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーの別の実施形態を示す断面図である。
【
図13】本発明に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーの別の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な実施形態を有することができるので、特定の実施形態を図面に例示し、説明する。ところが、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定するためのものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物及び代替物を含むものと理解されるべきである。
【0030】
本出願で使用した用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたもので、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするもので、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0031】
別に定義されない限り、技術的或いは科学的用語を含んで、ここで使用される全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されるのと同一の意味を有する。一般に使用される辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上において有する意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本出願において明白に定義しない限りは、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0032】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳細に説明するが、図面符号に関係なく、同一または対応の構成要素は同一の参照符号を付し、これについての重複説明は省略する。
【0033】
図1乃至
図6は本発明の一実施形態に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーを説明するために示す図である。
【0034】
図示のように、本発明に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーは、中空キャップ形の断面を有するハウジング10と、このハウジング10内の上部空間に装着されるワッシャー形の第1磁気回路20と、この第1磁気回路20の下部に対向配置されるワッシャー形の第2磁気回路30と、前記磁気回路同士の間に配置される振動モジュール40とを含むことができる。
【0035】
前記ハウジング10は、その内部に第1、第2磁気回路20、30だけでなく、振動モジュール40と電極部材50などの設置空間を持たなければならないので、全体的な形状が断面中空キャップ形の形状であり、非磁性体、またはアルミニウム、マグネシウム、高分子などの反磁性体で形成できる。しかし、前記ハウジング10の形状及び材質は、必ずしもこれに限定されない。
【0036】
前記ハウジング10は、その上面の中心部には第1音響放射出口11が設けられ、上面の一側からその下部の端に至るまで切り取られたコイル引き出し溝13が設けられ、キャップ形断面の下端には設置空間に組み立てられる部品を装着することができるようにハウジング10の中心方向に折り曲げ可能に切り取られた複数の折曲部材12が設けられ得る。
【0037】
前記第1及び第2磁気回路20、30は、コイルと永久磁石が対をなし、水平配置構造で形成されるが、第1磁気回路20は、第1コイル21と第1永久磁石22で構成され、第2磁気回路30は、第2コイル31と第2永久磁石32で構成され得る。
【0038】
前記第1及び第2コイル21、31は、第1、第2固定部材15、16を介して第1及び第2永久磁石22、32の内面の位置に装着配置できる。
【0039】
第1固定部材15は、第1永久磁石22の上面に配置され、第1コイル21の装着配置のために中央が下部に膨らむように突設され、その中央に第2音響放射出口15aを有するボーター(boater)形状をすることができる。
【0040】
前記第2固定部材16は、第2永久磁石32の下面に配置され、第2コイル31の装着配置のために中央が上部に膨らむように突設され、その中央に第3音響放射出口16aを有するボーター(boater)形状をすることができる。
【0041】
前記第1及び第2固定部材15、16は、ハウジング10と同様に非磁性体、またはアルミニウム、マグネシウム、高分子などの反磁性体を含むことができる。しかし、第1及び第2固定部材15、16の材質は、特に限定されない。
【0042】
前記第1磁気回路20の第1永久磁石22は、振動モジュール40の上部に積層され、第1永久磁石22の内面の第1固定部材15によってワッシャー(washer)形の第1コイル21が装着配置できる。
【0043】
第2磁気回路30の第2永久磁石32は、振動モジュール40の下部に積層され、第2永久磁石32の内面の第2固定部材16を介してワッシャー形の第2コイル31が装着配置できる。したがって、振動モジュール40を中心として、第1及び第2磁気回路20、30は相互対称に配置できる。
【0044】
前記第1及び第2コイル21、31は、第1永久磁石22の上面及び第2永久磁石32の下面と平坦になるように設けられ、第1永久磁石22の下面及び第2永久磁石32の上面よりも突出して振動板41を基準として相互対称な同じ間隔のエアギャップが形成されるように装着配置できる。
【0045】
このように振動モジュール40の上下面に第1及び第2磁気回路20、30の第1、第2コイル21、31と第1、第2永久磁石22、32とが同心を成して水平配置される構造なので、薄いスリム型の電磁スピーカーを得ることができる。
【0046】
また、前記第1及び第2固定部材15、16は、そのボーターの深さ(突出深さ)が浅く或いは深くなるように形成することにより、第1及び第2永久磁石22、32の内部で振動板41と第1または第2コイル21、31が相互対称且つ正確なエアギャップを形成するように調節可能なので、音響変換効率の調節が可能であるという利点を持つ。
【0047】
特に、第1及び第2コイル21、31を第1及び第2固定部材15、16を介して第1、第2永久磁石22、32の内面に確実かつ正確な位置及び高さにセッティングすることができ、これにより、振動板41を基準としてその上部及び下部に第1及び第2コイル21、31が相互対称な同じ間隔でエアギャップを形成するので、エアギャップの非対称により発生する歪み及びその他の音響変換特性の不均一性を排除することができ、ひいては音圧、特性、音質のバラツキが非常に少なく、均一な高品質の高解像電磁スピーカーを得ることができる。
【0048】
前記電極部材50は、中央に第4音響放射出口51を有する板状であり、第2磁気回路30の第2永久磁石32の下面に配置される。これは、第1及び第2コイル21、31と回路を成して接続され、電流を供給する役割を果たすことができる。
【0049】
前記電極部材50の第4音響放射出口51には、振動板41により発生する中音から高音まで微細音を制御するためのレジスタ53が設けられ得る。前記レジスタ53は、多孔質素材であってもよい。例えば、レジスタ53は、不織布やマイクロ穿孔素材などが使用できるが、これに限定されない。
【0050】
また、前記第1コイル21及び第2コイル31は、そのそれぞれの磁気力線が相互対向して流れるように結線する。これにより、電子石化される振動モジュール40の振動板41が第1及び第2コイル21、31から駆動力を得ることができる。
【0051】
前記振動板41は、前記第1及び第2コイル21、31に印加される電気的陽(+)の周期及び陰(-)の周期信号に対応して上下に振動することができる。
【0052】
前記振動モジュール40は、上下対称に配置される第1永久磁石22と第2永久磁石32との間に設置されるもので、振動板41と、この振動板41の外周縁の上面及び下面を支持するリング状の上部及び下部ダンパー42、43と、前記上部及び下部ダンパー42、43を包み込んで振動板41と一緒に固定することができるように断面アングル(angle)形のリングからなる一対の上部及び下部ハウジング44、45を含むことができる。上部ハウジング44の端部は下部ハウジング45に向かって折り曲げられ、下部ハウジング45の端部は上部ハウジング44に向かって折り曲げられ得る。
【0053】
前記振動板41は、振動のメイン機能をするボディ(body)と、このボディの外側に設けられたエッジ(edge)を有し、上部及び下部ハウジング44、45と同様に、鉄、ニッケル、ケイ素などの強磁性体で製作できる。
【0054】
このような振動板41の外周縁が、弾性率の制御が可能な軟性素材の上部及び下部ダンパー42、43によって支持されることにより、振動板41の外周支持部の全体区間にわたって柔軟性が増加し、これにより上下の振幅変位が大きくなるので、低音の拡大と音響変換効率の増加を図ることができる。
【0055】
前記上部及び下部ダンパー42、43は、振動板41に対するダンピングを効果的に行うことができるように、弾性率の制御が可能な非磁性体材質からなることが好ましく、例えば、高分子、シリコーン、ウレタン、合成樹脂などがある。
【0056】
前記上部及び下部ハウジング44、45は、磁性体材質で形成され、第1及び第2永久磁石22、32間の磁気抵抗と漏洩磁束を最小化するとともにバイアス磁力を増加させる一方、上部及び下部ダンパー42、43の圧力を適切に制御することができる。これにより、適切なコンプライアンスの制動力と復元力を振動板41に提供して、低音領域で振動するときに振動板の逆位相が排除され、全面積が同位相駆動されることにより、前記位相差歪みの低減及び音響変換効率の向上を図ることができる。
【0057】
このように振動板41と上部及び下部ダンパー42、43を上部及び下部ハウジング44、45を介して一体化して振動モジュール40を設けることにより、別途の予備工程を介して組立作業の自動化が可能であり、生産コストに影響を与える手作業の最小化を図ることができる。
【0058】
振動板41は、振動板自体の板-共振を抑制することができるようにボディの全体あるいは一定の部位にのみエンボス処理をすることもできる。このように振動板41のボディに形成されたエンボスにより振動板自体の板-共振を抑制することができ、このような板-共振の抑制による歪み減少及びクリアなサウンドの再現が可能となる。
【0059】
前記第1磁気回路20の第1永久磁石22及び第1コイル21の上面には、軟質のクッションパッド55が設けられ得る。前記クッションパッド55は、第1コイル21の内径と同じサイズの通孔55aが穿設されたものであれば特に限定されない。クッションパッド55は、第1磁気回路20の上面にハウジング10が被せられることによる第1コイル21の損傷を防止し、ハウジング10の内面に密着して外部へ音が漏れることを防止することにより、低音損失を防止することができる。
【0060】
図7は本発明に係る電磁スピーカーにおける振動モジュールの振動板に対する他の実施形態を示す断面図である。ここでは、振動板41の中心に付加質量体46が設けられたことを除いては、一実施形態の振動モジュールと同様の構成である。
【0061】
上述したような他の実施形態の振動板によれば、振動板41の中心に付加質量体46が設けられており、付加質量体46の付加質量による電磁スピーカーの低音再生限界周波数が低くなり、これにより低音再生限界周波数をより低い低音帯域に拡張することが可能となる。付加質量体46の種類は特に限定されない。
【0062】
図8は本発明の他の実施形態に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーを示す断面図である。ここでは、シールド磁石60が第1永久磁石22の上面に第2永久磁石32の下面の極と同じ極となるように設けられ、前記振動モジュール40と第1及び第2永久磁石22、32だけでなく、シールド磁石60の外周面を包み込みながら設置されるリング状のシールドガイド61が設けられ、前記第2永久磁石32及びシールドガイド61の下面にシールドプレート62が密着して防磁型スピーカーとして設けられたことを除いては、一実施形態の電磁スピーカーと同様の構成である。
【0063】
このとき、シールドガイド61の厚さtは、確実な防磁処理のためにシールド磁石60の厚さよりも同じか大きいことが好ましい。また、シールドガイド61は、非磁性体で形成され、ハウジング10は、シールドケースとしての機能を行うように磁性体で形成され、シールドプレート62も、磁性体で形成されなければならない。
【0064】
上述したように構成された他の実施形態の電磁スピーカーによれば、第1及び第2永久磁石22、32の異なる極がシールド磁石60によって同じ極で配列されており、磁場が
図8の破線で表示したようにシールドケースとしてのハウジング10とシールドプレート62を介して閉回路を成すので、外部漏れ磁場が減衰し、これにより磁場の外部漏れを最小限に抑えることができる。すなわち、シールドプレート62は、第2永久磁石32のN極に接触し、ハウジング10がシールド磁石60のN電極に接触するので、同じ極を持つようになり、外部漏れ磁場が減少することがある。
【0065】
図9は本発明の別の実施形態に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーを示す断面図であり、
図10は
図9の振動モジュールに適用された振動板を抜粋して示す平面図である。ここでは、振動モジュール40の振動板に、そのボディの中心である中央ホール41bから放射状に切り取られた複数の延長ホール41b-1と、複数の延長ホール41b-1同士の間に配置される複数の振動羽根41aとが備えられた開放型の高音振動板410として設けられたことを除いては、一実施形態の振動モジュールと同様の構成である。
【0066】
上述したように構成された他の実施形態の電磁スピーカーによれば、振動板410のエッジである外周縁部が振動モジュール40の上部及び下部ダンパー42、43によって支持された状態で、振動羽根41aの根部である同一円周を基準として、それぞれの振動羽根41aが
図9の仮想線Lのように上下に円弧運動をしながら振動する。
【0067】
これにより、高音振動板410の振動羽根41a同士の間に設けられた中央ホール41bと、複数の延長ホール41b-1により振動羽根41a自体から発生する低音領域は逆位相により自ら消滅し、振動羽根41aの円弧運動により発生する高音のみ放出されるので、電磁方式の高音スピーカーを得ることができる。
【0068】
図11は本発明の別の実施形態に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーを示す断面図である。ここでは、第1及び第2コイル21、22の装着配置のための第1及び第2固定部材15、16が一つの永久磁石23の両端に対称に設けられ、第1固定部材15と第2固定部材16との間に介在している軟質の第1及び第2磁性体ダンパー42a、43aを介して高音振動板410が設けられたスリム型の高音スピーカーである。前記第1及び第2磁性体ダンパー42a、43aは、高分子やシリコーンなどの軟性素材に強磁性の粉末ないし粒子(鉄、ニッケル、金属ケイ素、コバルトなど)が混合された柔軟性のある磁性体で形成できる。
上述したように構成された別の実施形態の電磁スピーカーによれば、軟質の第1及び第2磁性体ダンパー42a、43aが高音振動板410のエッジ部分を支持するので、高音振動板410から発生する不要な分割振動ないし寄生振動だけでなく、板-共振を吸収して歪みが減少し、澄んだ音響の再生に有利であり、第1及び第2コイル21、22と高音振動板410間の磁気抵抗の減少により音響変換効率が増加する。
【0069】
また、一対の第1及び第2永久磁石と振動モジュールを採用する一実施形態の電磁スピーカーとは異なり、一つの永久磁石23で形成し、高音振動板410を第1及び第2磁性体ダンパー42a、43aによってのみ支持するようにすることにより、スピーカー自体の高さをより低くすることができるため、スリム化が可能であり、コスト削減も図ることができる。
【0070】
図12は本発明の別の実施形態に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーを示す断面図である。ここでは、
図8の防磁型の全帯域電磁スピーカーに振動モジュール40の振動板として高音振動板410を適用したことを除いては、同様の構成である。
【0071】
上述したように構成された別の実施形態の電磁スピーカーによれば、第1及び第2永久磁石22、32の異なる極がシールド磁石60によって同じ極で配列されており、シールドケースとしてのハウジング10とシールドプレート62を介して閉回路をなして外部漏れ磁場が減衰する防磁型スピーカーを得る。これと同時に、
図10のような高音振動板410を適用することにより、その振動羽根41aに設けられた複数の延長ホール41b-1により、振動羽根41a自体から発生する低音領域は逆位相により自ら消滅することにより、振動羽根41aの円弧運動により発生する高音のみ放出されるので、防磁型の高音スピーカーを得ることができる。
【0072】
図13は本発明の別の実施形態に係るエアギャップの精度を向上させた高品質の電磁スピーカーを示す断面図である。ここでは、一つの永久磁石23の内面に第1及び第2コイル21、22と一緒に高音振動板410が配置された、
図11のようなスリム型高音スピーカーとして設けられ、前記永久磁石23の上面に永久磁石23の下面極と同じ極となるようにシールド磁石60が設けられ、前記永久磁石23及びシールド磁石60の外周面を包み込むリング状のシールドガイド61と、前記永久磁石23及びシールドガイド61の下面にこれと密着するようにシールドプレート62が設けられたスリム防磁型の高音スピーカーである。
【0073】
上述したように構成された別の実施形態の電磁スピーカーによれば、軟質の第1及び第2磁性体ダンパー42a、43aと高音振動板410を採用することによる、高音振動板410から発生する不要な分割振動ないし寄生振動だけでなく、板-共振を吸収して歪みが減少し、澄んだ音響の再生に有利であるのはもとより、第1及び第2コイル21、22と高音振動板410間の磁気抵抗の減少により音響変換効率が増加する。
【0074】
また、永久磁石23とシールド磁石60が同じ極で配列され、その磁場が破線で表示したようにシールドケースとしてのハウジング10とシールドプレート62を介して閉回路をなす防磁型のスピーカーであって、外部漏れ磁場が減衰し、これによる磁場の外部漏れを最小限に抑えることができる。
【0075】
以上、本発明の具体的な実施形態を参照して説明したが、本発明は、この明細書に開示された実施形態及び添付図面によって限定されず、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で当業者によって多様に変形でき、また、駆動原理と部品の配列が本発明の等価的概念と一致する限り、一部の設計的変更要素はいずれも本発明に含まれるといえる。