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特許7161656超臨界高温蒸気におけるマルテンサイト耐熱鋼の酸化膜の厚さの計算方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】超臨界高温蒸気におけるマルテンサイト耐熱鋼の酸化膜の厚さの計算方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 8/10 20060101AFI20221020BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20221020BHJP
   C22C 38/30 20060101ALN20221020BHJP
   F22B 37/38 20060101ALN20221020BHJP
【FI】
C23C8/10
C22C38/00 302Z
C22C38/30
F22B37/38 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020219752
(22)【出願日】2020-12-29
(65)【公開番号】P2021110039
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2020-12-29
(31)【優先権主張番号】201911396580.X
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】507393540
【氏名又は名称】武▲漢▼大学
(73)【特許権者】
【識別番号】521003977
【氏名又は名称】国家能源集団科学技術研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】王学
(72)【発明者】
【氏名】章亜林
(72)【発明者】
【氏名】張開
(72)【発明者】
【氏名】任徳軍
(72)【発明者】
【氏名】左志雄
(72)【発明者】
【氏名】劉勝利
(72)【発明者】
【氏名】丁偉平
(72)【発明者】
【氏名】黄橋生
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-090506(JP,A)
【文献】特開平10-170503(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136888(WO,A1)
【文献】特開2001-082702(JP,A)
【文献】特開2007-064675(JP,A)
【文献】特開2009-139137(JP,A)
【文献】特開平11-269539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0281197(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101225464(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101879530(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 8/10
F22B 37/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界高温蒸気におけるマルテンサイト耐熱鋼の酸化膜の厚さの計算方法であって、前記
マルテンサイト耐熱鋼は9%Crマルテンサイト耐熱鋼であり、高温蒸気酸化膜の厚さの
式は、
であり、
式中、Xは酸化層の厚さ、Aは定数係数、Qは活性化エネルギー、Rはガス定数、Tは温
度、tは時間であり、
酸化層の厚さXの単位はμmであり、温度Tの単位は℃であり、時間の単位はh(時間)で
あり、
高温蒸気の温度範囲は550℃~700℃、蒸気の圧力範囲は23.0~35.0MPa
、時間範囲は200~20000hであり、
前記高温蒸気酸化膜の厚さの式で、n=0.5であり、
前記活性化エネルギーQと時間tとの数学的関係は、Q=39659.32×t0.00
92であり、
前記定数係数Aの値は11616.83である、ことを特徴とする超臨界高温蒸気におけ
るマルテンサイト耐熱鋼の酸化膜の厚さの計算方法。
【請求項2】
前記マルテンサイト耐熱鋼の高温蒸気酸化膜の厚さの式では、酸化時間が200hである
場合、Qの値は41628.07である、ことを特徴とする請求項1に記載の超臨界高温
蒸気におけるマルテンサイト耐熱鋼の酸化膜の厚さの計算方法。
【請求項3】
前記マルテンサイト耐熱鋼の高温蒸気酸化膜の厚さの式では、酸化時間が600hである
場合、Qの値は42057.09である、ことを特徴とする請求項1に記載の超臨界高温
蒸気におけるマルテンサイト耐熱鋼の酸化膜の厚さの計算方法。
【請求項4】
前記マルテンサイト耐熱鋼の高温蒸気酸化膜の厚さの式では、酸化時間が1000hであ
る場合、Qの値は42256.60である、ことを特徴とする請求項1に記載の超臨界高
温蒸気におけるマルテンサイト耐熱鋼の酸化膜の厚さの計算方法。
【請求項5】
前記マルテンサイト耐熱鋼の高温蒸気酸化膜の厚さの式では、酸化時間が1500hであ
る場合、Qの値は42414.76である、ことを特徴とする請求項1に記載の超臨界高
温蒸気におけるマルテンサイト耐熱鋼の酸化膜の厚さの計算方法。
【請求項6】
前記マルテンサイト耐熱鋼の高温蒸気酸化膜の厚さの式では、酸化時間が2000hであ
る場合、Qの値は43426.66である、ことを特徴とする請求項1に記載の超臨界高
温蒸気におけるマルテンサイト耐熱鋼の酸化膜の厚さの計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界高温蒸気におけるマルテンサイト耐熱鋼の酸化膜の厚さの計算方法に関
し、特に超臨界又は超々臨界高温蒸気環境における9%Crマルテンサイト耐熱鋼の酸化
膜の厚さの計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
9%Crマルテンサイト耐熱鋼は、主にT/P91、T/P92、E911及びG115
(9Cr3W3Co)等のマルテンサイト耐熱鋼を含み、超々臨界ボイラの主蒸気管、ヘ
ッダー、過熱器、再熱器等の高温部材に広く使用されている。熱効率を向上させ、石炭の
消費と排出を低減させるために、火力発電ユニットの蒸気圧力と温度が絶えずに上昇し、
ユニットの重要な部材の高温酸化問題がますます深刻になっている。高温蒸気の酸化腐食
による加熱面管の爆発や漏れの破損事故、ユニットシャットダウン等は、発電所の安全な
運転及び経済的利益に深刻な害を及ぼす。
【0003】
近年、火力発電ユニットの高温部材の蒸気酸化の問題が一般的に注目されていることにつ
れて、蒸気酸化の危険性が継続的に認められており、国内外の蒸気酸化に関する研究の投
入も徐々に増加している。工学上の主な関心する問題は、高温蒸気中の材料によって形成
される酸化皮膜の厚さであり、温度の上昇に伴って、酸化膜の成長速度が速くなり、一定
時間内に形成された酸化皮膜がより厚くなり、その結果、以下の問題を引き起こす。第一
に、酸化膜が厚くなることにより有効な管壁が減少し、管壁への圧力が大きくなり、クリ
ープ現象によって損傷されることさえあり、第二に、酸化膜の熱伝導率が低いと、管壁の
温度の上昇を引き起こし、酸化腐食及び故障がさらに促進され、第三に、酸化皮膜が一定
の厚さに達する場合、又は管路の過度の温度や頻繁な起動と停止により酸化皮膜が不均一
に加熱される場合、酸化皮膜の一部が応力作用によって剥がれ、剥がれた酸化物スラグが
管路の詰まりを引き起こしたり、蒸気タービンに侵入して、蒸気タービンのブレードの侵
食等をもたらしたりする恐れがある。従って、作動温度及び時間に基づき耐熱鋼管の酸化
皮膜の厚さを計算することは、管継手の酸化腐食程度を判断し、残りの耐用年数を計算し
、さらに発電所の安全な運転を確保することに対して、重要な実用上の意義がある。
【0004】
酸化皮膜の厚さを計算すると、高温蒸気環境における9Cr%耐熱鋼の酸化速度モデルの
助けは必要である。現在、9Cr%耐熱鋼の高温蒸気の酸化速度に関する国内外の研究は
主に酸化重量増加の方法を採用し、酸化皮膜の厚さに関する研究は、常に単一の変数(蒸
気温度又は時間)の影響に限定される。異なるユニットの運転温度が常に異なり、異なる
温度での酸化皮膜の成長速度も異なり、単一の作業条件から得られる酸化速度モデルは、
他の温度条件に適用できず、実際の状況での酸化膜の厚さの計算に対して汎用的ではない
。工業上の酸化皮膜の厚さを測定する一般的な方法は、スケール洗浄法、サンプリング電
子顕微鏡測定、微小部分析法及び超音波検出法等があるが、上記の方法には、コストが高
く、サイクルが長く、精度が不安定で、操作が複雑で、鋼管を切断する必要がある等の欠
点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術に存在する問題を解決するために、9%Crマルテンサイト耐熱鋼管
の作動温度及び時間が知られている条件で、9%Crマルテンサイト耐熱鋼の高温蒸気の
酸化速度モデル及び関連する実験データに基づき、9%Crマルテンサイト耐熱鋼管の酸
化膜の厚さを迅速に算出できる方法をフィッティングして提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る技術案は以下のとおりである。
超臨界高温蒸気におけるマルテンサイト耐熱鋼の酸化膜の厚さの計算方法であって、前記
マルテンサイト耐熱鋼は9%Crマルテンサイト耐熱鋼であり、高温蒸気酸化膜の厚さの
式は、
であり、
式中、Xは酸化層の厚さ、Aは定数係数、Qは活性化エネルギー、Rはガス定数、Tは温
度、tは時間である、ことを特徴とする。
【0007】
上記技術案のさらなる設計として、前記高温蒸気の温度範囲は550℃~700℃、蒸気
の圧力範囲は23.0~35.0MPa、時間範囲は200~20000hである。
【0008】
前記酸化膜の厚さの式で、n=0.5である。
【0009】
前記活性化エネルギーQと時間tとの数学的関係は、Q=39659.32t0.009
2である。
【0010】
前記定数係数Aの値は11616.83である。
【0011】
前記マルテンサイト耐熱鋼の高温蒸気酸化膜の厚さの式では、酸化時間が200hである
場合、Qの値は41628.07である。
【0012】
前記マルテンサイト耐熱鋼の高温蒸気酸化膜の厚さの式では、酸化時間が600hである
場合、Qの値は42057.09である。
【0013】
前記マルテンサイト耐熱鋼の高温蒸気酸化膜の厚さの式では、酸化時間が1000hであ
る場合、Qの値は42256.60である。
【0014】
前記マルテンサイト耐熱鋼の高温蒸気酸化膜の厚さの式では、酸化時間が1500hであ
る場合、Qの値は42414.76である。
【0015】
前記マルテンサイト耐熱鋼の高温蒸気酸化膜の厚さの式では、酸化時間が2000hであ
る場合、Qの値は43426.66である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有益な効果は以下を含む。
【0017】
本発明は、23.0~35.0MPa、550℃~700℃の高温蒸気環境で9%Crマ
ルテンサイト耐熱鋼が200~2000h時間運転する過程で生成された酸化膜の厚さを
計算する方法を提供する。該方法は、一般的に酸化速度式が時間の酸化膜の厚さへの影響
しか反映しないという制限を打ち破り、酸化膜の厚さに最も影響を与える蒸気温度と運転
時間の2つの要素を同時に考慮し、且つ従来の放物線速度モデルに基づいて、実際のデー
タと組み合わせて、式を数学的に修正する。運転時間と温度に基づき、9%Crマルテン
サイト耐熱鋼の高温蒸気酸化膜の厚さを簡単で迅速に算出することができ、鋼管を切断し
測定することは不要であり、それにより、コストを節約し、運転を影響せずに鋼管の酸化
膜の厚さを計算することを実現する。この他、本式により9%Crマルテンサイト耐熱鋼
の酸化膜の厚さを算出すると、鋼管の内壁の酸化腐食の程度を反映し、部材の残りの耐用
年数の計算に参照を提供し、発電所ユニットの安全な運転を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の技術案に利用される金属酸化速度モデルは、線形速度法則、放物線速度法則、対
数速度法則、及び立方速度法則を含む。放物線法則は、酸化物体積/金属体積の比が1に
近い又は15%以下である場合、酸化層が金属表面を緊密に覆うことができると同時に、
過度の内部応力による亀裂がないという状況に適用できる。さらに、酸化反応は酸化層内
の拡散と物質移動によって行われ(金属カチオンが外に拡散し、酸素アニオンが内に拡散
し、又はアニオンとカチオンが両方向に拡散する)、新しい酸化物が酸化層内に生成され
る。界面反応速度が拡散速度より大きい場合、酸化物の生成速度が拡散と物質移動の速度
に決められる。9%Cr耐熱鋼の酸化皮膜は主に内層と外層に分けられ、内層酸化膜の成
長はO2-イオンが内に拡散することに依存し、外層酸化膜の成長はFe2+イオンが外
に拡散することに依存し、従って、放物線速度法則を用いて酸化膜の成長速度を説明する
ことができる。研究した結果、9%Crマルテンサイト耐熱鋼の酸化速度モデルは放物線
モデルに基本的に一致する。
【0019】
酸化層の成長は酸素イオンが内に拡散することのみによって制御されると仮定すると、金
属/酸化層界面の酸素濃度がc1であり、酸化層/水蒸気界面の酸素濃度がc0であり、
酸化層の厚さがXである場合、酸化層中の濃度勾配は
である。酸素の拡散係数をDとすると、Fick第1法則に基づき、界面Sの単位時間あ
たりの酸素フラックスは
である。
【0020】
定常状態の拡散条件において、
は定数であり、単位界面での拡散速度は
である。金属/酸化層界面の酸素濃度が非常に低いため、界面反応が速く、酸素が濃縮さ
れず、それにより、c1は0に近く、無視することができ、周囲の酸素濃度(酸素分圧)
が一定である場合、c0は定数と見なすことができ、酸化速度は酸化層の厚さのみに反比
例する。同様に、金属カチオンが外に拡散するプロセスについても上記プロセスで分析す
ることができ、2つの界面上の金属カチオンの濃度差が定数値である限り、酸化層の成長
速度は酸化層の厚さのみに反比例する。
【0021】
(1)

(式中、c0’は2つの界面上の金属カチオンの濃度差である。)
【0022】
式(1)を積分すると、
を得て、又は
として記す。該式では、kpは拡散係数に関連する速度定数であり、通常、Arrhen
ius方程式
に従い、式中、Qは活性化エネルギー、Rはガス定数、k0は定数である。kpを前の式
に代入して、
を得て、定数係数をAで表し、
に単純化する。
【0023】
実験の結果は、金属の高温酸化速度のより一般的な表現式は
であり、式中の指数nが式(2)のように常に1/2に等しいのではなく、所定の範囲内
に変動し、例えば、n=1/3の場合、立方体法則に準じることを示している。研究した
結果、9%Crマルテンサイト耐熱鋼の高温蒸気の酸化モデルも法則に一致し、様々な鋼
の種類と作業条件では、係数Aと指数nの値が異なる。従って、9%Crマルテンサイト
耐熱鋼の高温蒸気酸化膜の厚さの式を、
として予備決定することができる。
【0024】
本発明では、温度550℃~700℃、蒸気圧力23.0~35.0MPa、酸化時間2
00~20000hでの9%Crマルテンサイト耐熱鋼の酸化膜の厚さのデータを含む大
量の実際の実験データを収集し、上記データを利用して式(3)中のパラメータn、Q及
びAを計算した。
【0025】
計算方法は以下のとおりである。
【0026】
ステップ1、nを求め、式(3)の両側の対数を取って、
を得て、温度Tを定数値とすると、
は定数であり、Cとして記し、上式は
に単純化することができる。各温度での実験データを該式に代入して線形フィッティング
を行い、以下のフィッティング式を得る。
【0027】
T=550℃の場合、
である。
T=600℃の場合、
である。
T=650℃の場合、
である。
T=700℃の場合、
である。
【0028】
n値が基本的に0.5に近いことが分かる。これは、9%Crマルテンサイト耐熱鋼の酸
化速度が放物線法則に基本的に一致することを示し、従って、nを0.5とし、式(3)

に修正する。
【0029】
ステップ2、活性化エネルギーQを求め、式(4)の両側の対数を取って、
を得て、tを定数値とすると、
は定数Cとして記すことができ、上式を
に単純化する。
【0030】
t=200hである場合の実験データをステップ1で得られるフィッティング式に代入し
、それぞれ550℃、600℃、650℃、及び700℃でのlnX値を算出し、式(5
)に代入して計算したところ、t=200hである場合のQ値は41628.07であっ
た。同様に、他の時間でのQが表1に示されるように算出することができ、これで分かる
ように、異なる時間でのQ値が異なり、異なる時間帯の酸化反応の活性化エネルギーが異
なることを示している。研究によると、9%Crの酸化反応が複雑で、動的に変化するプ
ロセスであり、酸化の異なる段階で、反応メカニズム、生成物及び酸化物の成分及び構造
が変化するため、本発明は数理モデルを採用して時間に従った活性化エネルギーの変化を
フィッティングする。活性化エネルギーQと時間tは指数モデルに非常に一致し、得られ
るフィッティング式は、
となり、式(6)を式(4)に代入して、修正後の厚さの式
を得る。
【0031】
表1 各時間の活性化エネルギー
【0032】
ステップ3、定数Aを求め、実験データを式(7)に代入し、非線形曲面フィッティング
を行って、計算したところ、Aの値は11616.83であり、従って、最終に得られる
フィッティング式は、
となる。
【0033】
上記の式中では、温度Tの単位を℃、時間tの単位をhとし、算出された酸化膜の厚さX
の単位をμmとする。式の適用可能な時間範囲は200~20000h、温度範囲は55
0~700℃、蒸気の圧力範囲は23.0~35.0MPaである。
【0034】
実施例1
本発明に係る計算方法及びT91の酸化実験結果の比較
【0035】
馬雲海らは、2013年に26MPa、600℃/650℃/700℃条件でのT91鋼
の酸化状況を報道しており、それぞれその実験条件を本発明に係る式に代入して、本発明
により酸化膜の厚さを算出し、その実験で測定された厚さと比較して、その結果を表2に
示した。これにより、算出された厚さが実験で測定された厚さと非常に近いことが分かっ
た。
【0036】
表2 本発明の算出された厚さと実験で測定された厚さとの比較

【0037】
実施例2
本発明に係る計算方法及びT/P92の実験結果の比較
【0038】
朱忠亮らは、2013年に550℃、25MPaで、600h酸化されたP92鋼の実験
を報道しており、その断面SEM画像に基づき測定された酸化膜の厚さは約28μmであ
った。上記実験条件を本発明で得られるフィッティング式に代入して計算したところ、酸
化膜の厚さは28.8μmであり、測定結果と非常に近く、誤差率は2.8%だけであっ
た。
【0039】
実施例3
実際の発電所環境における本発明に係る計算方法の用途
【0040】
『大型発電所の微粉炭ボイラの加熱面管の蒸気酸化、排気ガスの腐食及び侵食を防止する
ための設計マニュアル』に記載されている発電所の運転中のボイラ管路の蒸気酸化皮膜の
厚さに関するデータは、600℃、25MPa条件でT92管路が22981h運転した
後の酸化皮膜の厚さが376μmであることを示した。上記の条件パラメータを本発明で
得られるフィッティング式に代入して計算したところ、酸化膜の厚さは367.14μm
であり、測定結果と比較して、誤差が2.4%だけであり、これは、本発明で得られたフ
ィッティング式が実際の用途で良好に機能できることを示している。
【0041】
実施例4
実際の発電所環境における本発明に係る計算方法の用途
【0042】
国外のある発電所で使用される超々臨界ユニットの蒸気圧力は約28.4MPaであり、
過熱器管路がT92材料を採用し、600℃の温度で約15000h時間運転した後、管
内の酸化皮膜の厚さは約215μmであると測定され、運転パラメータを本発明に係る式
に代入して計算したところ、酸化皮膜の厚さは約241μmであり、誤差は26μmであ
り、誤差率は12.1%であった。
【0043】
実施例5
実際の発電所環境における本発明に係る計算方法の用途
【0044】
国内のある発電公司の600MW超臨界貫流ボイラの高温過熱器の出口部の管材はT91
材料を採用し、その出口部の蒸気温度が約580℃であり、蒸気圧力が約26MPaであ
り、約20000h運転した後に、管内の酸化皮膜の厚さが約214μmであると測定さ
れた。該管部の運転パラメータを本発明に係る式に代入して計算したところ、酸化皮膜の
厚さは約201.5μmであり、誤差率は5.8%であった。
【0045】
以上の実施例はすべて、該方法で算出された9%Crマルテンサイト鋼の酸化膜の厚さが
実際に測定された結果に良好に一致し、誤差が15%以内であることを示した。
【0046】
本発明の技術案は、上記各実施例に限定されず、同等の置換方式によって得られる技術案
はすべて本発明の特許請求の範囲内に属する。