(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】保護回路
(51)【国際特許分類】
H02H 9/04 20060101AFI20221020BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H02H9/04 A
H02H9/02 D
(21)【出願番号】P 2018120662
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】栗尾 信広
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-311643(JP,A)
【文献】特開2012-222960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 9/04
H02H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象と並列接続される保護回路であって、
メインバリスタと、
前記メインバリスタに直列接続されたヒューズと、
前記メインバリスタ及び前記ヒューズに並列接続されたバックアップバリスタと、
前記バックアップバリスタに流れる電流を検知する電流検出部とを備え
、
前記メインバリスタに故障が生じている場合に、前記バックアップバリスタに電流が流れるとともに、前記電流検出部が、前記バックアップバリスタに流れる電流を検出して、そのことを示す検出信号を出力するように構成されている、保護回路。
【請求項2】
前記電流検出部が、
前記メインバリスタ及び前記ヒューズに並列接続されるとともに、前記バックアップバリスタに直列接続された抵抗素子と、
前記抵抗素子の両端に生じる電圧によって駆動するフォトカプラとを有している、請求項1記載の保護回路。
【請求項3】
前記メインバリスタのバリスタ電圧と、前記バックアップバリスタのバリスタ電圧とが互いに等しい、請求項1又は2記載の保護回路。
【請求項4】
前記抵抗素子の抵抗値が、前記ヒューズの抵抗値よりも大きい、請求項
2記載の保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば雷サージや開極サージ等の過電圧や過電流から負荷や半導体デバイス等を保護する保護回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の保護回路としては、特許文献1に示すように、ヒューズ及びバリスタを並列に設けた並列回路と、2つのバリスタを並列に設けた並列回路とを直列に接続してなるものがある。
【0003】
この過電圧保護回路は、ヒューズと複数のバリスタとを組み合わせることにより、何れか1つのバリスタが短絡故障或いは開放故障した場合でも、その他のバリスタによって電圧に対する保護を行えるように図ったものである。
【0004】
しかしながら、上述した構成では、短絡故障や開放故障したバリスタを特定することはできないし、そもそも短絡故障や開放故障が生じていることも分からないので、故障箇所の交換等を速やかに行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、複数のバリスタを備えた保護回路において、1つのバリスタが短絡故障或いは開放故障した場合であっても、別のバリスタが働くようにしつつ、しかもバリスタが故障していることを検知できるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る保護回路は、保護対象と並列接続される保護回路であって、メインバリスタと、前記メインバリスタに直列接続されたヒューズと、前記メインバリスタ及び前記ヒューズに並列接続されたバックアップバリスタと、前記バックアップバリスタに流れる電流を検出する電流検出部とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成であれば、雷サージ等の過電圧サージや劣化等によりメインバリスタに短絡故障や開放故障が生じた場合、バックアップバリスタが働いて、保護対象を過電圧や過電流から保護することができる。
しかも、バックアップバリスタに流れる電流を検出する電流検出部を備えているので、この電流検出部が電流を検出したことが、メインバリスタに故障が生じていることの証左となり、メインバリスタの故障を検知することができる。さらに、メインバリスタに故障が生じている場合は、ヒューズが切れていれば短絡故障であることが分かり、ヒューズが切れていなければ開放故障であることが分かるので、例えば故障の原因究明等に資する。
【0009】
前記電流検出部が、前記メインバリスタ及び前記ヒューズに並列接続されるとともに、前記バックアップバリスタに直列接続された抵抗素子と、前記抵抗素子の両端に生じる電圧によって駆動するフォトカプラとを有していることが好ましい。
このような構成であれば、保護対象の制御回路と電流検出部との間を簡単な構成で絶縁することができる。
【0010】
バリスタの選定を容易にするためには、前記メインバリスタのバリスタ電圧と、前記バックアップバリスタのバリスタ電圧とが互いに等しいことが好ましい。
【0011】
各バリスタが正常な場合にメインバリスタを働かせるための具体的な態様としては、前記抵抗素子の抵抗値が、前記ヒューズの抵抗値よりも大きい態様を挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、メインバリスタが短絡故障或いは開放故障した場合であっても、バックアップバリスタが働くようにしつつ、メインバリスタの故障を検知することができ、しかもその故障が短絡故障か開放故障であるかをも知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の保護回路の回路構成を模式的に示す図。
【
図2】その他の実施形態における保護回路の回路構成を模式的に示す図。
【
図3】その他の実施形態における保護回路の回路構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る保護回路の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態の保護回路100は、
図1に示すように、例えば半導体デバイス等の保護対象Xに並列接続されて、雷サージや開極サージ等により生じる過電圧や過電流から保護対象Xを保護するためのものである。
【0016】
具体的にこの保護回路100は、
図1に示すように、メインバリスタ10と、メインバリスタ10に直列接続されたヒューズ20と、メインバリスタ10及びヒューズ20に並列接続されたバックアップバリスタ30とを備えている。
【0017】
メインバリスタ10及びバックアップバリスタ30は、いずれもバリスタ電圧が保護対象Xの耐圧よりも小さいものであり、具体的には酸化亜鉛バリスタ等である。本実施形態では、メインバリスタ10及びバックアップバリスタ30として、バリスタ電圧が互いに等しいものを用いており、ここではバリスタ定格も等しいものとしてある。
【0018】
然して、本実施形態の保護回路100は、バックアップバリスタ30に流れる電流を検出する電流検出部40をさらに備えてなる。
【0019】
より具体的に説明すると、電流検出部40は、メインバリスタ10及びヒューズ20に並列接続されるとともに、バックアップバリスタ30に直列接続された抵抗素子41と、抵抗素子41の両端に生じる電圧によって駆動するフォトカプラ42と、フォトカプラ42の駆動電流を得るための駆動用抵抗素子43とを備えている。
【0020】
抵抗素子41は、メインバリスタ10及びバックアップバリスタ30が正常な場合に、メインバリスタ10を働かせるようにすべく、ヒューズ20よりも大きい抵抗値を有するものである。ここでのヒューズ20は、数mΩ~数十mΩ程度のものであり、抵抗素子41の抵抗値はそれ以上であるが、保護対象Xをクランプする電圧を確保すべく、ヒューズ20の抵抗値よりも大きく、且つ、可及的に小さいことが好ましい。
【0021】
フォトカプラ42は、抵抗素子41の両端に接続されて該抵抗素子41と並列に設けられており、ここでは、抵抗素子41の上流端とフォトカプラ42との間に駆動用抵抗素子43が設けられている。
【0022】
かかる電流検出部40によりバックアップバリスタ30に流れる電流が検出されると、そのことを示す検出信号が、ここではフォトカプラ42から図示しない制御装置に出力される。そして、制御装置は、検出信号を取得した場合に、メインバリスタ10が故障していると判断して、メインバリスタ10の交換等を促す警告信号を出力する。
【0023】
このように構成された保護回路100によれば、雷サージや開極サージ等の過電圧や過電流が生じた場合、メインバリスタ10及びバックアップバリスタ30が正常な状態であれば、メインバリスタ10が働いて保護対象Xを保護することができる。
【0024】
一方、雷サージ等の過電圧サージや劣化等によりメインバリスタ10に短絡故障又は開放故障のどちらが生じたとしても、この場合はバックアップバリスタ30が働いて、保護対象Xを過電圧や過電流から保護することができる。
【0025】
しかも、バックアップバリスタ30に流れる電流を検出する電流検出部40を備えているので、この電流検出部40が電流を検出したことで、メインバリスタ10に故障が生じていることを検知することができる。そのうえ、メインバリスタ10に故障が生じている場合は、ヒューズ20が切れていれば短絡故障であることが分かり、ヒューズ20が切れていなければ開放故障であることが分かるので、故障の原因究明等に資する。
【0026】
加えて、メインバリスタ10に故障が生じた場合に、そのことを図示しない制御装置が自動的に判断し、メインバリスタ10の交換等を促す警告信号を出力するので、ユーザは故障したメインバリスタ10を速やかに交換等することができる。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0028】
例えば、保護回路100としては、
図2に示すように、バックアップバリスタ30を2つ以上備えていても良い。なお、以下では説明の便宜上、前記実施形態で説明したバックアップバリスタ30を第1バックアップバリスタ30aと言い、新たに設けたバックアップバリスタ30を第2バックアップバリスタ30bと言う。
【0029】
図2に示す保護回路100は、前記実施形態の保護回路の構成に加えて、メインバリスタ10及びヒューズ20に並列接続されるとともに、第1バックアップバリスタ30aに直列接続された第2ヒューズと、メインバリスタ10及び第1バックアップバリスタ30aに並列接続された第2バックアップバリスタ30bと、この第2バックアップバリスタ30bに流れる電流を検知する第2電流検出部60とをさらに備えている。
【0030】
第2電流検出部60の基本構成は、前記実施形態の電流検出部40と同様であり、メインバリスタ10及び第1バックアップバリスタ30aに並列接続されるとともに、第2バックアップバリスタ30bに直列接続された第2抵抗素子61と、第2抵抗素子61の両端に生じる電圧によって駆動する第2フォトカプラ62と、第2フォトカプラ62の駆動電流を得るための第2駆動用抵抗素子63とを備えている。なお、第2抵抗素子の抵抗値は、電流検出部40を構成する抵抗素子41の抵抗値よりも大きい。
【0031】
このような構成であれば、メインバリスタ10が短絡故障或いは開放故障した場合に、第1バックアップバリスタ30aが働き、第1バックアップバリスタ30aが短絡故障或いは開放故障した場合に、第2バックアップバリスタ30bが働く。
しかも、電流検出部40が電流を検出した場合には、メインバリスタ10が故障していることを検知することができ、第2電流検出部60が電流を検出した場合は、第1バックアップバリスタ30aが故障していることを検知することができる。
なお、図示していないが、保護回路としては、3つ以上のバックアップバリスタを備えても良いことはいうまでもない。
【0032】
電流検出部としては、カレントトランスや電圧トランスを利用したものであっても良い。
具体的な構成の一例としては、
図3に示すように、バックアップバリスタ30が設けられている電気配線L1に第1カレントトランス71を設けた構成を挙げることができる。ここでは、メインバリスタ10が設けられている電気配線L2と、バックアップバリスタ30が設けられている電気配線L2とが合流した電気配線L3にも第2カレントトランス72を設けてある。なお、第1カレントトランス71及び第2カレントトランスからの出力は、負担抵抗、電圧レベル調整回路、パルス整形回路等の機能を備えた変換回路8を介してANDゲート9に入力される。
上述した構成により、第2カレントトランス72が電流を検出した場合には、メインバリスタ又はバックアップバリスタの何れか一方が働いていることが分かり、この状態において、第1カレントトランス71が電流を検出しない場合は、メインバリスタ10が働いており、第1カレントトランス71が電流を検出した場合には、メインバリスタ10に故障が生じて、バックアップバリスタ30が働いていることが分かる。
【0033】
前記実施形態では、メインバリスタ及びバックアップバリスタが、互いに等しいバリスタ電圧のものであったが、メインバリスタのバリスタ電圧を、バックアップバリスタのバリスタ電圧よりも小さくしても良い。
【0034】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
100・・・保護回路
X ・・・保護対象
10 ・・・メインバリスタ
20 ・・・ヒューズ
30 ・・・バックアップバリスタ
40 ・・・電流検出部
41 ・・・抵抗素子
42 ・・・フォトカプラ
43 ・・・駆動用抵抗素子