(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/42 20060101AFI20221020BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20221020BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20221020BHJP
B41J 5/30 20060101ALI20221020BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20221020BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B41J29/42 B
G03G21/00 370
G03G21/00 386
B41J29/38 302
B41J5/30 Z
B65H7/14
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2018221747
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】山本 武徳
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-138489(JP,A)
【文献】特開2018-094850(JP,A)
【文献】特開2009-262349(JP,A)
【文献】特開平05-313447(JP,A)
【文献】特開2008-173800(JP,A)
【文献】特開2016-132207(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0091132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/42
G03G 21/00
B41J 29/38
B41J 5/30
B65H 7/14
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントすべき画像をプリントシート上に物理的にプリントするプリントエンジンと、
前記プリントシートを搬送するシート搬送部と、
前記プリントシートの搬送方向の垂直方向に沿って配置され、前記プリントシートの両端エッジの位置を検出するラインセンサーと、
(a)前記ラインセンサーによって検出された前記プリントシートの両端エッジの位置に基づき前記プリントシートのセンター位置をシートセンター実際位置として特定し、(b)前記プリントすべき画像のセンター位置が前記シートセンター実際位置に一致するように、前記プリントすべき画像のセンター位置を調整する制御部と、
プリントシートのセンター位置の基準ズレ量を示す基準ズレ量データを記憶している記憶装置とを備え、
前記制御部は、(a)前記基準ズレ量に基づく前記プリントシートのシートセンター期待位置と特定した前記シートセンター実際位置との距離をセンター位置ズレ量として特定し、(b)前記センター位置ズレ量が所定の閾値を超えているか否かを判定し、(c)前記センター位置ズレ量が所定の閾値を超えている場合には、エラーが発生したと判定し、
前記制御部は、直近の所定数のプリントシートについて検出された前記シートセンター実際位置を示すシートセンター実際位置データを記憶し、
前記制御部は、(a)前記シートセンター実際位置データにおける前記所定数のシートセンター実際位置の初期値をすべて前記基準ズレ量とし、(b)連続プリントにおける各プリントシートの前記シートセンター実際位置で前記シートセンター実際位置データにおける1つのシートセンター実際位置を更新し、(c)前記シートセンター実際位置データにおける前記所定数のシートセンター実際位置の平均を前記シートセンター期待位置とすること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記シート搬送部は、レジストローラーを備え、
前記ラインセンサーは、前記プリントシートの搬送路において前記レジストローラーと前記プリントエンジンとの間に配置されていること、
を特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
シート検知センサーをさらに備え、
前記制御部は、前記シート検知センサーによって搬送中の前記プリントシートの先端が検出されたタイミングで前記ラインセンサーによって検出された前記プリントシートの両端エッジに基づき前記プリントシートのセンター位置を特定すること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
複数の給紙カセットをさらに備え、
前記基準ズレ量データは、前記複数の給紙カセットのそれぞれの前記基準ズレ量を示し、
前記制御部は、前記プリントシートが収容されていた給紙カセットの前記基準ズレ量に基づく前記プリントシートのシートセンター期待位置と特定した前記シートセンター実際位置との距離をセンター位置ズレ量として特定すること、
を特徴とする請求項
1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記連続プリントが中断され再開される際に、前記シートセンター実際位置データにおける前記所定数のシートセンター実際位置をすべて前記基準ズレ量にリセットすることを特徴とする請求項
1記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある画像形成装置(以下、第1の画像形成装置という)は、ラインセンサーで用紙のセンターを検出し、用紙のセンターとプリントすべき画像のセンターとのズレを特定し、搬送ローラーが用紙をニップした状態でその搬送ローラーを用紙幅方向に移動させることで、そのズレを低減させている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ある画像形成装置(以下、第2の画像形成装置という)は、複数の給紙トレイを備え、複数の給紙トレイのそれぞれに対応して固定のセンター位置ズレ量を記憶しており、使用中の給紙トレイに対応するセンター位置ズレ量だけ、電子写真プロセス用の光学系を機械的に調整して、電子写真プロセスで形成される画像を移動させている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-139110号公報
【文献】特開平5-313447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第1の画像形成装置では、搬送中の用紙のセンター位置に対応して、センター位置のズレを低減させることができるが、搬送ローラーを機械的に移動させる機構が必要になり、装置のコストが高くなってしまう。
【0006】
また、第2の画像形成装置では、固定的なセンター位置ズレ量に対応して、電子写真プロセスで形成される画像のセンター位置を機械的に補正しているため、同様に装置のコストが高くなるとともに、用紙ごとに発生するセンター位置のバラツキが考慮されず、センター位置のズレを効果的に低減させることが困難である。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、比較的低コストで、プリントシートのセンター位置とプリントシート上に形成される画像のセンター位置との間のズレを効果的に低減する画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像形成装置は、プリントすべき画像をプリントシート上に物理的にプリントするプリントエンジンと、前記プリントシートを搬送するシート搬送部と、前記プリントシートの搬送方向の垂直方向に沿って配置され、前記プリントシートの両端エッジの位置を検出するラインセンサーと、(a)前記ラインセンサーによって検出された前記プリントシートの両端エッジの位置に基づき前記プリントシートのセンター位置をシートセンター実際位置として特定し、(b)前記プリントすべき画像のセンター位置が前記シートセンター実際位置に一致するように、前記プリントすべき画像のセンター位置を調整する制御部と、プリントシートのセンター位置の基準ズレ量を示す基準ズレ量データを記憶している記憶装置とを備える。前記制御部は、(a)前記基準ズレ量に基づく前記プリントシートのシートセンター期待位置と特定した前記シートセンター実際位置との距離をセンター位置ズレ量として特定し、(b)前記センター位置ズレ量が所定の閾値を超えているか否かを判定し、(c)前記センター位置ズレ量が所定の閾値を超えている場合には、エラーが発生したと判定する。さらに、前記制御部は、直近の所定数のプリントシートについて検出された前記シートセンター実際位置を示すシートセンター実際位置データを記憶する。そして、前記制御部は、(a)前記シートセンター実際位置データにおける前記所定数のシートセンター実際位置の初期値をすべて前記基準ズレ量とし、(b)連続プリントにおける各プリントシートの前記シートセンター実際位置で前記シートセンター実際位置データにおける1つのシートセンター実際位置を更新し、(c)前記シートセンター実際位置データにおける前記所定数のシートセンター実際位置の平均を前記シートセンター期待位置とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比較的低コストで、プリントシートのセンター位置とプリントシート上に形成される画像のセンター位置との間のズレを効果的に低減する画像形成装置が得られる。
【0010】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を説明する側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る画像形成装置におけるシートセンター実際位置、シートセンター期待位置およびセンター位置ズレ量について説明する図である。
【
図5】
図5は、実施の形態2に係る画像形成装置の動作について説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施の形態2における連続プリントでのシートセンター実際位置、センター位置ズレ量、シートセンター実際位置データ、およびシートセンター期待位置の推移の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
実施の形態1.
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を説明する側面図である。
図2は、
図1に示す画像形成装置の平面図である。
【0015】
この実施の形態に係る画像形成装置10は、プリンター、コピー機、ファクシミリ機、複合機などといった装置であり、この実施の形態ではライン型のインクジェット方式のカラープリント機構を備える。
【0016】
図1に示す画像形成装置10は、プリントエンジン10aと、シート搬送部10bとを備える。プリントエンジン10aは、プリントすべき画像をプリントシート(プリント用紙など)上に物理的にプリントする。シート搬送部10bは、プリントシートをプリントエンジン10aに搬送する。
【0017】
この実施の形態では、プリントエンジン10aは、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックという4つのインク色に対応するライン型のインクジェット記録部1a~1dを備える。
【0018】
図2に示すように、この実施の形態では、各インクジェット記録部1a,1b,1c,1dは、複数(ここでは3個)のヘッド部11を有する。それらのヘッド部11は、主走査方向に沿って配列されており、装置本体に対して着脱可能になっている。なお、各インクジェット記録部1a,1b,1c,1dのヘッド部11は、1つでもよい。
【0019】
また、この実施の形態では、シート搬送部10bは、プリントエンジン10aに対向して配置されプリントシートを搬送する環状の搬送ベルト2と、搬送ベルト2を懸架される駆動ローラー3および従動ローラー4と、搬送ベルト2ととともにプリントシートをニップする吸着ローラー5と、排出ローラー対6とを備える。
【0020】
駆動ローラー3および従動ローラー4は、搬送ベルト2を周回させる。そして、後述の給紙カセット20-1,20-2から搬送されてきたプリントシートを吸着ローラー5がニップし、ニップされたプリントシートは、搬送ベルト2によってインクジェット記録部1a~1dのプリント位置へ順番に搬送されていき、インクジェット記録部1a~1dによりそれぞれの色の画像をプリントされる。そして、カラープリント完了後のプリントシートが排出ローラー対6によって、図示せぬ排紙トレイなどに排出される。
【0021】
さらに、シート搬送部10bは、複数の給紙カセット20-1,20-2を備えている。給紙カセット20-1,20-2は、プリントシート101,102を収容しており、リフト板21,24でプリントシート101,102を上方に押し上げてピックアップローラー22,25に当接させる。給紙カセット20-1,20-2に載置されたプリントシート101,102は上側から1枚ずつピックアップローラー22,25によって給紙ローラー23,26へピックアップされる。給紙ローラー23,26は、給紙カセット20-1,20-2からピックアップローラー22,25によって給紙されたプリントシート101,102を1枚ずつ搬送路上へ搬送するローラーである。
【0022】
搬送ローラー27は、給紙カセット20-1,20-2から搬送されてくるプリントシート101,102に共通な搬送路上の搬送ローラーである。
【0023】
レジストローラー28は、搬送されてくるプリントシート101,102を一時停止させ、2次給紙タイミングでそのプリントシート101,102をプリントエンジン10aへ搬送する。2次給紙タイミングは、そのプリントシート101,102上の指定された位置に画像が形成されるように後述の制御部81によって指定される。
【0024】
この実施の形態では、レジストローラー28にプリントシート101,102が到達した際に、レジストローラー28の直前の搬送ローラー27が、プリントシート101,102の搬送時間を調整してプリントシート101,102をたわませることによって、プリントシート101,102のスキュー(斜行)が軽減されるようになっている。
【0025】
さらに、画像形成装置10は、ラインセンサー31と、シート検知センサー32とを備える。
【0026】
ラインセンサー31は、プリントシートの搬送方向の垂直方向に沿って配置され、プリントシートの両端エッジの位置を検出する光学式センサーである。例えば、ラインセンサー31は、CIS(Contact Image Sensor)である。この実施の形態では、ラインセンサー31は、プリントシートの搬送路においてレジストローラー28とプリントエンジン10aとの間に配置されている。
【0027】
シート検知センサー32は、プリントシート101,102の先端が搬送路上の所定の位置を通過したことを検知する光学式センサーである。
【0028】
図3は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の電気的な構成を示すブロック図である。
【0029】
図3に示すように、画像形成装置10は、
図1および
図2に示すような機械的構成を有する画像出力部71の他、さらに、操作パネル72、記憶装置73、および演算処理装置74を備える。なお、画像出力部71は、上述のラインセンサー31およびシート検知センサー32を含む。
【0030】
操作パネル72は、画像形成装置10の筐体表面に配置され、液晶ディスプレイなどの表示装置、およびハードキー、タッチパネルなどの入力装置を備え、その表示装置でユーザーに対して各種メッセージを表示し、その入力装置でユーザー操作を受け付ける。
【0031】
記憶装置73は、画像形成装置10の制御に必要なデータ、プログラムなどを記憶する不揮発性の記憶装置(フラッシュメモリー、ハードディスクドライブなど)である。記憶装置73には、後述の基準ズレ量データ73aが記憶されている。
【0032】
演算処理装置74は、プログラムに従って動作するコンピューター、所定動作を実行するASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを備え、各種処理部として動作する。そのコンピューターは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備え、ROM、記憶装置73などに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、(必要に応じてASICとともに)各種処理部として動作する。
【0033】
ここでは、演算処理装置74は、制御部81、および画像処理部82として動作する。
【0034】
制御部81は、画像出力部71を制御し、ユーザーにより要求されたプリントジョブを実行する。この実施の形態では、制御部81は、画像処理部82に所定の画像処理を実行させ、ヘッド部11を制御してインクを吐出させてプリントシート上にプリント画像を形成する。画像処理部82は、RIP(Raster Image Processing)、色変換、ハーフトーニングなどの所定の画像処理を、プリントシートにプリントすべき画像の画像データに対して実行する。
【0035】
特に、制御部81は、(a)ラインセンサー31によって検出されたプリントシート101,102の両端エッジの位置に基づきプリントシート101,102のセンター位置をシートセンター実際位置として特定し、(b)プリントすべき画像のセンター位置がそのシートセンター実際位置に一致するように、プリントすべき画像のセンター位置を調整する。
【0036】
つまり、制御部81は、主走査方向に沿って、プリントすべき画像を、プリントすべき画像のセンター位置の基準値とシートセンター実際位置との差分だけ移動させて画像のプリントをプリントエンジン10aに実行させる。
【0037】
なお、ここでは、プリントすべき画像のセンター位置の基準値は、ラインセンサー31およびインクジェット記録部1a~1dの中心位置とされている。
【0038】
この実施の形態では、制御部81は、シート検知センサー32によって搬送中のプリントシート101,102の先端が検出されたタイミングでラインセンサー31によって検出されたプリントシートの両端エッジに基づきプリントシート101,102のセンター位置(シートセンター実際位置)を特定する。このようにすることで、プリントシート101,102における一定の位置で、シートセンター実際位置が測定される。したがって、連続する複数のプリントシート101,102が斜行しても、同じ条件でのシートセンター実際位置が各プリントシート101,102において測定される。
【0039】
上述の基準ズレ量データ73aは、プリントシート101,102のセンター位置の基準ズレ量を示す。そして、制御部81は、基準ズレ量データ73aを読み出し、(a)基準ズレ量に基づくプリントシート101,102のシートセンター期待位置と特定したシートセンター実際位置との距離をセンター位置ズレ量として特定し、(b)そのセンター位置ズレ量が所定の閾値を超えているか否かを判定し、(c)そのセンター位置ズレ量が所定の閾値を超えている場合には、センタリングエラーが発生したと判定し、そうではない場合には、センタリングエラーが発生したと判定しない。
【0040】
図4は、実施の形態1に係る画像形成装置におけるシートセンター実際位置、シートセンター期待位置およびセンター位置ズレ量について説明する図である。
【0041】
図4に示すように、ラインセンサー31の読取データにおいて、プリントシート101,102の幅Wsheetの区間(画素位置Xsから画素位置Xeまで)の画素は、プリントシート101,102の色に対応する画素値を有し、それ以外の画素は、背景色に対応する画素値を有するため、プリントシート101,102の(物理的な)両端エッジに対応する画素位置Xs,Xeにおいて、画像上のエッジが現れる。制御部81は、この画像上のエッジを検出し、シートセンター実際位置P1を次式で導出する。なお、画素位置は、ラインセンサー31の一端を基準位置として、基準位置から当該画素位置までの画素数で表される。
【0042】
P1=(Xe-Xs)/2
【0043】
例えば、シートセンター期待位置P2は、ラインセンサー31の中心画素位置に基準ズレ量を加算した位置とされる。ここで、ラインセンサー31の幅をWsensorとし、基準ズレ量をdxとすると、例えば、シートセンター期待位置P2は、次式で導出される。
【0044】
P2=(Wsensor/2)+dx
【0045】
なお、基準ズレ量dxは、基準位置に近づく方向のズレの量である場合には、負値を有し、基準位置に遠ざかる方向のズレの量である場合には、正値を有する。
【0046】
そして、センター位置ズレ量dpは、シートセンター期待位置とシートセンター実際位置との差分として導出される(dp=P2-P1あるいはdp=P1-P2)。
【0047】
なお、この実施の形態では、基準ズレ量データ73aは、複数の給紙カセット20-1,20-2のそれぞれの基準ズレ量を示し、制御部81は、プリントシートが収容されていた給紙カセット20-i(i=1,2)の基準ズレ量に基づくプリントシート101,102のシートセンター期待位置とシートセンター実際位置との距離をセンター位置ズレ量として特定する。
【0048】
次に、実施の形態1に係る画像形成装置の動作について説明する。
【0049】
(a)プリント時のセンター位置補正
【0050】
プリントジョブを実行する際、制御部81は、画像処理部82に所定の画像処理を実行させるとともに、シート搬送部10bにプリントシート101,102をレジストローラー28まで搬送させる。
【0051】
そして、制御部81は、レジストローラー28からプリントエンジン10aにプリントシート101,102が搬送される途中で、そのプリントシート101,102のシートセンター実際位置をラインセンサー31で測定し、シートセンター実際位置と、画像のセンター位置の基準値との差を導出し、その差だけ画像を移動させてプリントをプリントエンジン10aに実行させる。
【0052】
これにより、プリントシート101,102の幅方向の中央に画像がプリントされる。
【0053】
(b)センタリングエラーの検出
【0054】
他方、制御部81は、プリントシート101,102がレジストローラー28まで搬送されるまでに、基準ズレ量データ73aを読み出し、基準ズレ量に基づいてシートセンター期待位置を導出しておき、上述のようにして、シートセンター実際位置を測定すると、センター位置ズレを導出し、そのセンター位置ズレに基づいて、センタリングエラーが発生したか否かを判定する。
【0055】
センタリングエラーが発生していない場合には、制御部81は、プリントを継続し、センタリングエラーが発生している場合には、制御部81は、プリントを中止し、エラーメッセージを操作パネル72に表示する。
【0056】
以上のように、上記実施の形態1によれば、プリントエンジン10aは、プリントすべき画像をプリントシート101,102上に物理的にプリントし、シート搬送部10bは、プリントシート101,102を搬送する。ラインセンサー31は、プリントシート101,102の搬送方向の垂直方向に沿って配置され、プリントシート101,102の両端エッジの位置を検出する。制御部81は、(a)ラインセンサー31によって検出されたプリントシート101,102の両端エッジの位置に基づきプリントシート101,102のセンター位置をシートセンター実際位置として特定し、(b)プリントすべき画像のセンター位置がシートセンター実際位置に一致するように、プリントすべき画像のセンター位置を調整する。
【0057】
これにより、比較的低コストで、プリントシート101,102のセンター位置とプリントシート101,102上に形成される画像のセンター位置との間のズレが効果的に低減される。
【0058】
実施の形態2.
【0059】
実施の形態2に係る画像形成装置は、センタリングエラー検出のために、連続プリントにおいて、ページごとに(つまり、プリントシートごとに)得られたシートセンター実際位置に基づき、シートセンター期待位置を更新していく。なお、連続プリントは、複数ページの原稿のプリント、原稿の複数部数のプリントなどである。
【0060】
実施の形態2では、制御部81は、直近の所定数Nのプリントシートについて検出されたシートセンター実際位置を示すシートセンター実際位置データを記憶する。
【0061】
ここでは、シートセンター実際位置データは、上述の所定数Nの整数値を有する配列データであって、リングバッファとして機能する。また、シートセンター実際位置データは、例えば演算処理装置74における上述のRAMに記憶される。
【0062】
そして、実施の形態2では、制御部81は、(a)シートセンター実際位置データにおける上述の所定数Nのシートセンター実際位置の初期値をすべて基準ズレ量とし、(b)連続プリントにおける各プリントシートのシートセンター実際位置でシートセンター実際位置データにおける1つのシートセンター実際位置を更新し、(c)シートセンター実際位置データにおける上述の所定数のシートセンター実際位置の平均をシートセンター期待位置とする。
【0063】
したがって、実施の形態2では、シートセンター期待位置は、基準ズレ量に基づいて初期値を設定され、その後、ページごとに(プリントシートごとに)、その初期値を起点として、シートセンター実際位置によって更新されていく。
【0064】
なお、制御部81は、連続プリントが中断され再開される際に、シートセンター実際位置データにおける上述の所定数Nのシートセンター実際位置をすべて基準ズレ量にリセットする。つまり、連続プリントが中断された場合、給紙カセット20-iへのプリントシートの補充などが行われた可能性があり、センター位置のズレの状態が変化した可能性があるので、シートセンター実際位置データが初期化される。
【0065】
なお、実施の形態2に係る画像形成装置のその他の構成については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0066】
次に、実施の形態2に係る画像形成装置の動作について説明する。
図5は、実施の形態2に係る画像形成装置の動作について説明するフローチャートである。
【0067】
実施の形態2に係る画像形成装置は、連続プリントの場合、以下のようにして、センタリングエラーの検出を行う。
【0068】
まず、制御部81は、基準ズレ量データ73aを読み出し、シートセンター実際位置データ(配列データ)における第0要素から第(N-1)要素に基準ズレ量を初期値としてセットする(ステップS1)。なお、ここで、Nは、上述の所定数である。
【0069】
そして、シート検知センサー32によりプリントシートが検出されると(ステップS2)、制御部81は、ラインセンサー31で、そのプリントシートのシートセンター実際位置を特定し(ステップS3)、そのシートセンター実際位置と現時点のシートセンター期待位置との差(つまり、センター位置ズレ量)を導出し、センター位置ズレ量が所定の閾値を超えているか否かを判定する(つまり、センタリングエラーが発生したか否かを判定する)(ステップS4)。
【0070】
センタリングエラーが発生していなければ、制御部81は、プリント処理を継続し、そのプリントシートのプリントを完了する(ステップS5)。
【0071】
ここで、制御部81は、連続プリントが完了したか否かを判定し(ステップS6)、連続プリントが完了していなければ、このプリントシートのシートセンター実際位置で、シートセンター実際位置データにおける1つの要素の値を更新する(ステップS7)。
【0072】
例えば、第iページのシートセンター実際位置については、(i-1)をNで除算したときの剰余jが導出され、第iページのシートセンター実際位置で第j要素の値が更新される。
【0073】
したがって、シートセンター実際位置データにおいて最も古い要素の値が更新される。このようにして、シートセンター実際位置データには、直近の所定数Nのプリントシートのシートセンター実際位置が保持される。
【0074】
そして、制御部81は、更新後のシートセンター実際位置データに基づき、直近の所定数Nのプリントシートのシートセンター実際位置の平均値を導出し、その平均値で、シートセンター期待位置を更新する(ステップS8)。
【0075】
その後、ステップS2に戻り、制御部81は、次のプリントシートに対して同様の処理を実行する。
【0076】
一方、ステップS4においてセンタリングエラーが発生したと判定した場合、制御部81は、プリントの中止、エラーメッセージの表示などといったエラー処理を実行し(ステップS9)、当該処理を終了する。
【0077】
また、ステップS6において連続プリントが完了したと判定した場合、制御部81は、当該処理を終了する。
【0078】
ここで、具体例について説明する。
【0079】
図6は、実施の形態2における連続プリントでのシートセンター実際位置、センター位置ズレ量、シートセンター実際位置データ、およびシートセンター期待位置の推移の一例を示す図である。なお、
図6は、Wsensorが7200画素であり、基準ズレ量が-30画素であり、上述の所定数Nが3である場合の一例を示している。
【0080】
まず、初期状態では、シートセンター期待位置が、3570(=(7200/2)+(-30))と計算され、シートセンター実際位置データの第0要素~第2要素にセットされる。
【0081】
次に、第1ページのプリントシートのシートセンター実際位置が3500画素と測定されると、現時点のシートセンター期待位置(3570画素)と第1ページのシートセンター実際位置(3500画素)との差分(70画素)がセンター位置ズレ量として計算され、このセンター位置ズレ量に基づいてセンタリングエラーの有無が判定される。
【0082】
また、この第1ページのシートセンター実際位置(3500画素)で、シートセンター実際位置データの第0要素の値が更新され、これに伴い、シートセンター期待位置が、3547へ更新される。
【0083】
同様にして、第2ページのプリントシートのシートセンター実際位置が3470画素と測定されると、現時点のシートセンター期待位置(3547画素)と第2ページのシートセンター実際位置(3470画素)との差分(77画素)がセンター位置ズレ量として計算され、このセンター位置ズレ量に基づいてセンタリングエラーの有無が判定される。
【0084】
また、この第2ページのシートセンター実際位置(3470画素)で、シートセンター実際位置データの第1要素の値が更新され、これに伴い、シートセンター期待位置が、3513へ更新される。
【0085】
同様にして、第3ページのプリントシートのシートセンター実際位置が3480画素と測定されると、現時点のシートセンター期待位置(3513画素)と第3ページのシートセンター実際位置(3480画素)との差分(33画素)がセンター位置ズレ量として計算され、このセンター位置ズレ量に基づいてセンタリングエラーの有無が判定される。
【0086】
また、この第3ページのシートセンター実際位置(3480画素)で、シートセンター実際位置データの第2要素の値が更新され、これに伴い、シートセンター期待位置が、3483へ更新される。
【0087】
同様にして、第4ページのプリントシートのシートセンター実際位置が3450画素と測定されると、現時点のシートセンター期待位置(3483画素)と第4ページのシートセンター実際位置(3450画素)との差分(33画素)がセンター位置ズレ量として計算され、このセンター位置ズレ量に基づいてセンタリングエラーの有無が判定される。
【0088】
また、この第4ページのシートセンター実際位置(3450画素)で、シートセンター実際位置データの第0要素の値が更新され、これに伴い、シートセンター期待位置が、3467へ更新される。
【0089】
以下、同様にして、連続プリントが中断されるか終了するまで、同様に、ページごとに、シートセンター期待位置が更新されていき、各時点のシートセンター期待位置に基づいて、センタリングエラーが検出される。
【0090】
なお、実施の形態2に係る画像形成装置のその他の動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0091】
以上のように、上記実施の形態2によれば、制御部81は、(a)シートセンター実際位置データにおける上述の所定数のシートセンター実際位置の初期値をすべて基準ズレ量とし、(b)連続プリントにおける各プリントシートのシートセンター実際位置でシートセンター実際位置データにおける1つのシートセンター実際位置を更新し、(c)シートセンター実際位置データにおける上述の所定数のシートセンター実際位置の平均をシートセンター期待位置とする。
【0092】
これにより、連続プリントにおけるプリントシートのセンター位置が正方向または負方向に継続的に偏位している場合には、その方向へシートセンター期待位置が推移していくため、実施の形態1の場合と比べ、センタリングエラーの不適切な検出が少なくなる。
【0093】
つまり、給紙カセット20-i内に収容されるプリントシート101,102の束の位置に起因して、連続プリントにおけるプリントシートのセンター位置が正方向または負方向に継続的に偏位することがあり、その場合、シートセンター期待位置を固定にすると、センタリングエラーの閾値に対する、プリントシートのセンター位置の変動の許容範囲が狭くなってしまい、本来、センタリングエラーとして検出しなくてもよい状態でもセンタリングエラーが検出されることがある。一方、実施の形態2のように、シートセンター期待位置を、シートセンター実際位置を考慮して変化させていくことで、そのような許容範囲が確保され、センタリングエラーの不適切な検出が少なくなる。
【0094】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0095】
例えば、上記実施の形態1,2では、プリントエンジン10aは、インクジェット方式のプリントエンジンであるが、電子写真方式などの他のプリントエンジンでもよい。
【0096】
また、上記実施の形態1,2では、給紙カセット20-1,20-2が2つであるが、3つ以上でも1つでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、例えば、プリンター、複合機などの画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0098】
10 画像形成装置
10a プリントエンジン
10b シート搬送部
20-1,20-2 給紙カセット
28 レジストローラー
31 ラインセンサー
32 シート検知センサー
73 記憶装置
73a 基準ズレ量データ
81 制御部