(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20221020BHJP
E03D 5/10 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D5/10
(21)【出願番号】P 2018199350
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】立木 翔一
(72)【発明者】
【氏名】小林 基紀
(72)【発明者】
【氏名】正平 裕也
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-072221(JP,A)
【文献】登録実用新案第3030278(JP,U)
【文献】特開平04-194239(JP,A)
【文献】米国特許第6178569(US,B1)
【文献】中国実用新案第201485931(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/00-13/00
E03D 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大便器内の水位及び水位に関連する指標の少なくともいずれかを検知可能な検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて、前記大便器の詰まり状態を判定する詰まり判定部と、
前記詰まり判定部の判定結果に基づいて、前記大便器への洗浄水供給を禁止するか否かを判定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記大便器を洗浄するための洗浄操作を一時的に受け付けない洗浄禁止時間を、少なくとも前記大便器への洗浄水供給が終了した後に設定し、
前記詰まり判定部は、前記洗浄禁止時間中、又は、前記洗浄禁止時間直後における前記検知部の検知結果に基づいて、前記大便器の詰まり状態を判定するトイレ装置。
【請求項2】
前記詰まり判定部は、前記大便器への洗浄水供給が終了してから所定時間後に、前記大便器の詰まり状態を判定する請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記詰まり判定部が前記洗浄禁止時間中に前記大便器の詰まり状態を判定できなかった場合、前記制御部は前記洗浄禁止時間を延長し、
前記詰まり判定部は、延長された前記洗浄禁止時間において前記大便器の詰まり状態を判定する請求項1又は2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記洗浄禁止時間中に洗浄操作があった場合、前記詰まり判定部による判定が完了し、かつ前記大便器に詰まりが無いと判定された時点で前記大便器へ洗浄水を供給する請求項1~3のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記洗浄禁止時間を、さらに前記大便器への洗浄水供給中に設定する請求項1~4のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記詰まり判定部により前記大便器に詰まりが無いと判定された時点で前記洗浄禁止時間の設定を解除する請求項1~5のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、トイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行文献1には、洗浄後の大便器内の水位情報に基づいて、大便器の詰まり判定を行う技術が開示されている。この技術によれば、大便器内の水位が安定した状態で詰まり判定を行うため、判定の精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前の使用者が大便器を洗浄した直後に、次の使用者が同じ大便器を使用する場合がある。この際、次の使用者が、使用開始直後に洗浄操作を行い、大便器を洗浄する場合がある。このように短時間で連続して洗浄操作が行われると、水位が安定する前に次の便器洗浄が実行されるため、詰まり判定が完了せずに大便器から水が溢れる可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、短時間で連続して洗浄操作が行われたときでも、大便器から水が溢れることを防止しつつ、大便器の詰まり状態を判定できるトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、大便器内の水位及び水位に関連する指標の少なくともいずれかを検知可能な検知部と、前記検知部の検知結果に基づいて、前記大便器の詰まり状態を判定する詰まり判定部と、前記詰まり判定部の判定結果に基づいて、前記大便器への洗浄水供給を禁止するか否かを判定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記大便器を洗浄するための洗浄操作を一時的に受け付けない洗浄禁止時間を、少なくとも前記大便器への洗浄水供給が終了した後に設定し、前記詰まり判定部は、前記洗浄禁止時間中、又は、前記洗浄禁止時間直後における前記検知部の検知結果に基づいて、前記大便器の詰まり状態を判定するトイレ装置である。
【0007】
このトイレ装置によれば、大便器への洗浄水供給が終了した後に洗浄禁止時間が設定されるため、大便器に洗浄水が供給された後すぐに洗浄操作が行われても、洗浄水は大便器へ供給されない。従って、大便器が詰まっている状態で連続して洗浄水が供給され、大便器から水が溢れることを防止できる。また、洗浄禁止時間中、又は、前記洗浄禁止時間直後は、洗浄水が供給されないため、大便器内の水位が安定し、より正確な判定結果を得ることができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記詰まり判定部は、前記大便器への洗浄水供給が終了してから所定時間後に、前記大便器の詰まり状態を判定するトイレ装置である。
【0009】
このトイレ装置によれば、洗浄水供給の終了直後に比べて、水位がより安定した状態で大便器の詰まり状態を判定できる。このため、大便器の詰まり状態をより正確に判定することが可能となる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記詰まり判定部が前記洗浄禁止時間中に前記大便器の詰まり状態を判定できなかった場合、前記制御部は前記洗浄禁止時間を延長し、前記詰まり判定部は、延長された前記洗浄禁止時間において前記大便器の詰まり状態を判定するトイレ装置である。
【0011】
このトイレ装置によれば、詰まり状態の判定に時間を要する場合でも、洗浄禁止時間が自動で延長される。このため、大便器が詰まった状態で洗浄水が供給されて水が溢れることを、より確実に防止できる。
【0012】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記制御部は、前記洗浄禁止時間中に洗浄操作があった場合、前記詰まり判定部による判定が完了し、かつ前記大便器に詰まりが無いと判定された時点で前記大便器へ洗浄水を供給するトイレ装置である。
【0013】
このトイレ装置によれば、大便器から水が溢れることを防止しつつ、判定終了後に使用者の意図に沿った動作が自動で実現される。このため、使用者が洗浄禁止時間後に再度洗浄操作を行う必要が無く、トイレ装置の使い勝手が向上する。
【0014】
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記制御部は、前記洗浄禁止時間を、さらに前記大便器への洗浄水供給中に設定するトイレ装置である。
【0015】
このトイレ装置によれば、大便器へ供給される洗浄水が増加することを防止でき、大便器に詰まりが有るときに水が溢れることをより確実に防止できる。
【0016】
第6の発明は、第1~第5のいずれか1つの発明において、前記制御部は、前記詰まり判定部により前記大便器に詰まりが無いと判定された時点で前記洗浄禁止時間の設定を解除するトイレ装置である。
【0017】
このトイレ装置によれば、大便器から水が溢れることを防止しつつ、洗浄禁止時間を短縮でき、使い勝手が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、短時間で連続して洗浄操作が行われたときでも、大便器から水が溢れることを防止しつつ、大便器の詰まり状態を判定できるトイレ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係るトイレ装置の構成を表す模式図である。
【
図2】実施形態に係るトイレ装置の一部を表す模式的断面図である。
【
図3】(a)は検知部による検知結果を例示するグラフであり、(b)~(d)は大便器の状態を表す模式図である。
【
図4】(a)は検知部による検知結果を例示するグラフであり、(b)~(d)は大便器の状態を表す模式図である。
【
図5】実施形態に係るトイレ装置の動作の一例を表すタイミングチャートである。
【
図6】実施形態に係るトイレ装置の動作を表すフローチャートである。
【
図7】実施形態に係るトイレ装置の動作の一例を表すタイミングチャートである。
【
図8】実施形態に係るトイレ装置の動作を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係るトイレ装置の構成を表す模式図である。
図1に表したように、実施形態に係るトイレ装置1は、検知部10、詰まり判定部12、及び制御部14を備える。トイレ装置1は、大便器20及び洗浄水供給部22と組み合わせて用いられる。又は、トイレ装置1が、大便器20及び洗浄水供給部22を備えていても良い。
【0021】
本願明細書においては、大便器20に着座した使用者からみて上方を「上方」とし、その反対方向を「下方」とする。また、大便器20に着座した使用者からみて前方を「前方」とし、その反対方向を「後方」とする。
【0022】
図2は、実施形態に係るトイレ装置の一部を表す模式的断面図である。
検知部10は、大便器20内の水位及び水位に関連する指標の少なくともいずれかを検知可能である。「水位に関連する指標」とは、例えば、大便器20内の表面の所定領域における水の有無、又は大便器20内に溜まった水の圧力などである。検知部10としては、電波センサ、静電容量センサ、圧力センサ、超音波式測距センサ、又は光学式測距センサなどが用いられる。
【0023】
電波センサは、電波を放射し、その反射波を検知する。反射波の強度は、電波が放射された位置における水の有無で変化する。電波センサを検知部10として用いる場合、電波が大便器20内の表面の所定領域に放射されるように検知部10を設ける。
また、静電容量センサは、当該センサと、それに対向する所定領域と、の間の静電容量を検知する。静電容量は、その所定領域における水の有無で変化する。静電容量センサを検知部10として用いる場合、大便器20内の表面の所定領域と対向するように検知部10を設ける。
電波センサ又は静電容量センサを検知部10として用いることで、大便器20内の水位が、所定領域よりも高い位置に有るか否かを検知できる。
また、静電センサは、異なる高さに連続的に複数個所配置することで、直接的に水位を検知することができる。
【0024】
圧力センサは、大便器20内に溜まった水の圧力を検知する。圧力は、大便器20内の水の量に比例する。従って、圧力センサを検知部10として用いることで、水位を間接的に検知することができる。
【0025】
超音波式測距センサは、超音波を放射し、その反射波を受信する。超音波が水面に対して鉛直方向に放射されると、超音波を放射してから反射波のピークが検出されるまでの時間は、水面の位置に応じて変化する。
また、光学式測距センサは、対象に向けて光(例えば赤外光)を照射し、その反射光を受光素子に結像させる。受光素子の結像位置が、水面の位置に応じて変化する。
従って、超音波式測距センサ又は光学式測距センサを検知部10として用いることで、大便器20内の水位を直接的に検知できる。
【0026】
図2では、電波センサを検知部10として用いて、大便器20の内部に設けた場合を例示している。この例では、検知部10は、電波11を放射し、大便器20内の表面20aに水が有るか否かを検知している。表面20aは、溢れ面S1より低く且つ封水面S2より高い位置にある。以降では、検知部10が電波センサである場合について説明する。
【0027】
図2(a)に表したように、大便器20に詰まり等が無い通常の状態では、大便器20内の水(封水)の表面は、封水面S2に位置する。例えば
図2(b)に表したように、大便器20内に異物Eが詰まると、大便器20内の水面の位置が封水面S2よりも高くなる。溢れ面S1は、封水面S2よりも高い位置にある。溢れ面S1の位置は、任意である。例えば、溢れ面S1の位置は、次に大便を洗い流すための洗浄水が大便器20に供給されたとしても、大便器20から水が溢れ出ない上限の位置に設定される。すなわち、大便器20内の水面が溢れ面S1よりも高い位置にあると、大便器20に洗浄水が供給されたときに大便器20から水が溢れる可能性がある。
【0028】
詰まり判定部12は、検知部10の検知結果に基づいて、大便器20の詰まり状態を判定する。詰まり判定部12は、その判定結果を制御部14へ送信する。詰まり判定部12による具体的な判定方法は、後述する。
【0029】
制御部14は、詰まり判定部12の判定結果に基づいて、大便器20への洗浄水供給を禁止するか否かを判定する。制御部14は、詰まり判定部12により大便器20に詰まりが有ると判定されると、大便器20への洗浄水供給を禁止する。
【0030】
詰まり判定部12及び制御部14は、例えば、それぞれ処理装置(マイコン)を有する。又は、1つの処理装置が詰まり判定部12及び制御部14として機能しても良い。あるいは、検知部10が処理装置を備え、詰まり判定部12の機能、又は詰まり判定部12と制御部14の両方の機能を検知部10が備えていても良い。
【0031】
洗浄水供給部22は、バルブ(例えばソレノイドバルブ)又はモータ等を有し、上水道や貯水タンクなどの給水源と接続される。バルブ又はモータが動作することで、給水源から大便器20へ洗浄水が供給される状態と、洗浄水が供給されない状態と、が切り替わる。洗浄水供給部22は、この他に、水を貯留するタンクや、水を圧送するポンプなどを適宜有していても良い。
【0032】
使用者が不図示のリモコンなどにより大便器20を洗浄するための洗浄操作を行うと、制御部14は、その洗浄操作に応じた信号を洗浄水供給部22へ送信する。制御部14から送信された信号に基づいて洗浄水供給部22のバルブ又はモータが動作することで、大便器20へ洗浄水が供給される。
【0033】
例えば、制御部14は、大便器20への洗浄水供給を禁止すると判定すると、リモコンが操作されても、大便器20へ洗浄水を供給するための信号を洗浄水供給部22に送信しない。
【0034】
図3及び
図4を参照して、詰まり判定部12による判定方法について説明する。
図3(a)及び
図4(a)は、検知部による検知結果を例示するグラフである。
図3(b)~
図3(d)及び
図4(b)~
図4(d)は、大便器の状態を表す模式図である。
図3(a)及び
図4(a)において、横軸は時間を表し、縦軸は検知部10による検知結果を表す。この例では、検知部10が電波センサであり、縦軸は検知部10により検知された反射波の強度を表している。なお、反射波の強度が増した場合、定在波の影響により、縦軸の値は上下両方に変動する可能性がある。後述の実施例では、大便器20に詰まりが有る時に上方向に変動するグラフで示しているが、下方向に変動する場合も含んでよい。
【0035】
図3(a)は、大便器20に詰まりが無い場合の検知結果を例示している。
図3(a)において、期間P1は、洗浄水供給前の状態を表す。期間P2は、洗浄水供給中の状態を表す。期間P3は、洗浄水供給が終了した後の状態を表す。以降では、期間P1における大便器20の状態を「洗浄前」という。また、期間P2における大便器20の状態を「洗浄中」といい、期間P3における大便器20の状態を「洗浄後」という。以下で、これらの期間における大便器20の状態を具体的に説明する。
【0036】
図3(a)の時刻T0では、大便器20内の水面は、封水面S2にあるとする。時刻T0では、
図3(b)に表したように、大便器20内の表面20aには水が無い。このため、検知結果は、比較的小さな値で安定している。
【0037】
その後、時刻T1で大便器20への洗浄水供給が開始されると、期間P1が終了して期間P2が始まる。時刻T1では、換言すると、制御部14から洗浄水供給部22に対して、大便器20へ洗浄水を供給させる信号が送信される。
【0038】
例えば、時刻T1~T2の間は、洗浄水の供給が開始された直後であり、表面20aにおける水流が安定していないため、検知結果の値が大きく変動する。その後、時刻T2から時刻T3までの間は、
図3(c)に表したように、大便器20内に多量の洗浄水が供給される。この間、表面20aの全体が水に覆われるため、検知結果が比較的大きな値で安定する。
【0039】
時刻T3で洗浄水の供給が停止されると、期間P2が終了して期間P3が始まる。時刻T3では、換言すると、制御部14から洗浄水供給部22に対して、大便器20への洗浄水供給を停止させる信号が送信される。
【0040】
その後、時刻T3から時刻T4にかけて洗浄水が流れ切るまでの間、表面20aにおける水の流れが変化し、検知結果の値が大きく変動する。時刻T4以降では、供給された洗浄水が流れ切り、
図3(d)に表したように、表面20aに水が無い状態となる。このため、検知結果は、期間P1と同様に、比較的小さな値で安定する。なお、洗浄水供給部22からの洗浄水供給を停止する時刻と、表面20aにおける水の流れが変化する時刻と、は必ずしも一致しない。例えば、洗浄水供給部22から表面20aに到達するまでの流路が長い場合などである。この場合、洗浄水供給部22からの供給を停止直後、すなわち時刻T3直後は、まだ表面20aの全体が水に覆われているため、検知結果が比較的大きな値で安定している。つまり期間P3は、洗浄水供給を停止してから、表面20aにおける水の流れが変化し始める直前までの時間も含まれている。
【0041】
図4(a)は、大便器20に詰まりが有る場合の検知結果を例示している。
図4(a)において、期間P1~P3は、それぞれ
図3(a)と同様に、洗浄前、洗浄中、及び洗浄後の状態を表す。
【0042】
期間P1及びP2における検知部10による検知結果は、
図3(a)に表した例と実質的に同一である。すなわち、期間P1では、
図4(b)に表したように表面20aには水が無く、期間P2では、
図4(c)に表したように大便器20内を洗浄水が流れ、表面20aが水で覆われる。
【0043】
大便器20に詰まりが有ると、期間P2で供給された洗浄水が大便器20から排水されず、
図4(c)に表したように大便器20内に溜まる。この場合、表面20aが水で覆われるため、時刻T3で洗浄水の供給が終了した後も、検知結果は比較的大きな値を示す。
【0044】
詰まり判定部12は、上述した一連の流れにおいて、洗浄中の期間P2における検知部10の第1検知結果と、洗浄後の期間P3における検知部10の第2検知結果と、を比較する。詰まり判定部12は、その比較結果に基づいて、大便器20の詰まり状態を判定する。
【0045】
具体的には、詰まり判定部12は、第1検知結果と第2検知結果の差を算出する。詰まり判定部12は、差が所定値以上であれば、大便器20の詰まりは無いと判定する。詰まり判定部12は、差が所定値未満であれば、大便器20に詰まりが有ると判定する。例えば、所定値との比較には、当該差の絶対値が用いられる。所定値は、予めトイレ装置1の管理者により設定される。又は、所定値は、検知部10による過去の検知結果などに基づいて設定されても良い。
【0046】
例えば、
図3(a)に表した例において、期間P2のタイミングt1で検知部10により第1検知結果が取得され、期間P3のタイミングt2で検知部10により第2検知結果が取得される。詰まり判定部12は、第1検知結果の値V1と第2検知結果の値V2との差を、所定値PVと比較する。差V1-V2の絶対値は、所定値PV以上であるため、大便器20に詰まりは無いと判定される。
【0047】
図4(a)に表した例では、期間P2のタイミングt1で取得された第1検知結果の値V1は、期間P3のタイミングt2で取得された第2検知結果の値V2と同じである。従って、差V1-V2の絶対値は、所定値PV未満であるため、大便器20に詰まりが有ると判定される。
【0048】
あるいは、詰まり判定部12は、第1検知結果として、洗浄前の期間P1における検知部10の検知結果を用いても良い。この場合、詰まり判定部12は、第1検知結果と第2検知結果の差が所定値以上であれば、大便器20に詰まりが有ると判定し、差が所定値未満であれば、大便器20に詰まりが無いと判定する。
【0049】
ただし、期間P1では、大便器20に付帯される機能や、大便器20の使用態様などにより、表面20aの状態が変化しうる。例えば、洗浄前において大便器20内の表面に水(除菌水又は水道水)を噴霧する装置が、大便器20に設けられる場合がある。大便器20内の表面に水が噴霧されると、表面20aに多数の水滴が付着し、検知結果が大きくなる。又は、表面20aに濡れたトイレットペーパーが付着する場合もある。この場合、表面20aに何も付着していない場合に比べて、検知結果が大きくなる。これらの結果、期間P1における検知結果と期間P3における検知結果との差が閾値以上となり、大便器20に詰まりが無いにも拘わらず、大便器20に詰まりが有ると判定される可能性がある。
【0050】
このため、第1検知結果としては、洗浄中の期間P2における検知部10の検知結果を用いることが望ましい。これにより、大便器20に付帯される機能や、大便器20の使用態様などに拘わらず、大便器20の詰まり状態の判定で基準値として用いられる第1検知結果をより安定させることができる。この結果、大便器20の詰まり状態をより精度良く判定することが可能となる。
【0051】
また、詰まり判定部12は、期間P3で取得された複数の検知結果をそれぞれ第2検知結果として設定し、大便器20の詰まり状態を繰り返し判定しても良い。例えば、
図4(a)のタイミングt2で取得された検知結果に基づき、大便器20に詰まりが有ると判定された場合であっても、その後に大便器20内の水が徐々に流れて水面の位置が下がっていくこともある。タイミングt2における検知結果のみに基づいて大便器20に詰まりが有ると最終的な判定結果を出すと、その後に水が流れていった場合にも大便器20に洗浄水を供給できなくなる。
【0052】
このため、詰まり判定部12は、タイミングt2で大便器20に詰まりが有ると判定された場合は、その後に連続的又は間欠的に複数回検知結果を取得し、再び大便器20の詰まり状態を判定する。これにより、時間を掛ければ大便器20内の水が流れるような場合に、大便器20への洗浄水供給が禁止されることを防止でき、大便器20の使い勝手を向上させることができる。
【0053】
図5は、実施形態に係るトイレ装置の動作の一例を表すタイミングチャートである。
例えば
図5に表したように、時刻T10で制御部14が洗浄操作を受け付けると、洗浄水供給部22による洗浄水供給が開始される。大便器20に洗浄水が供給された後、時刻T12で洗浄供給が終了する。このとき、制御部14は、大便器20の洗浄操作を一時的に受け付けない洗浄禁止時間を設定する。
【0054】
洗浄禁止時間が設定されてから所定時間が経過した後、時刻T13で詰まり判定部12による大便器20の詰まり状態の判定が開始される。また、時刻T14で洗浄操作が行われるが、時刻T14では洗浄禁止時間が終了していないため、制御部14はその洗浄操作を受け付けない。その後、時刻T15で、詰まり判定部12による詰まり状態の判定が終了する。このとき、大便器20に詰まりが無いと判定されると、洗浄禁止時間の設定も解除される。また、
図5に表した例のように、制御部14は、洗浄禁止時間中に行われた洗浄操作に基づき、大便器20への洗浄水供給を行っても良い。
【0055】
図6は、実施形態に係るトイレ装置の動作を表すフローチャートである。
洗浄水供給部22による洗浄水供給が終了すると(ステップSt1)、制御部14は、洗浄禁止時間を設定する(ステップSt2)。制御部14は、洗浄禁止時間の設定から所定時間が経過したか判定する(ステップSt3)。所定時間が経過すると、詰まり判定部12は、検知部10による検知結果を取得する(ステップSt4)。続いて、制御部14は、詰まり判定部12による大便器20の詰まり状態の判定が完了したか、判定する(ステップSt5)。
【0056】
判定が完了していない場合、制御部14は、洗浄禁止時間が終了したか判定する(ステップSt6)。洗浄禁止時間が終了していない場合は、再度ステップSt4を実行する。洗浄禁止時間が終了している場合、洗浄禁止時間を延長し(ステップSt7)、再度ステップSt4を実行する。これにより、延長された洗浄禁止時間において、大便器20の詰まり状態の判定が行われる。
【0057】
詰まり状態の判定が完了しているとステップSt5で判定されると、制御部14は、判定結果を参照し、大便器20に詰まりが無いか否かを判定する(ステップSt8)。詰まりが有る場合、制御部14は、洗浄を禁止する(ステップSt9)。洗浄が禁止されると、以降は、洗浄禁止時間に拘わらず、大便器20への洗浄水供給が禁止される。詰まりが無い場合、制御部14は、洗浄禁止時間の設定を解除する(ステップSt10)。以降は、洗浄操作が行われると、制御部14は、その洗浄操作を受け付けて大便器20へ洗浄水を供給する。
【0058】
また、制御部14は、洗浄禁止を解除すると、洗浄禁止時間中に洗浄操作が有ったか判定する(ステップSt11)。洗浄操作が無かった場合、動作を終了する。洗浄操作が有った場合、大便器20へ洗浄水を供給する(ステップSt12)。
【0059】
実施形態の効果を説明する。
実施形態に係るトイレ装置1では、制御部14が、大便器を洗浄するための洗浄操作を一時的に受け付けない洗浄禁止時間を、少なくとも大便器20への洗浄水供給が終了した後に設定する。これにより、大便器20に洗浄水が供給された後すぐに洗浄操作が行われても、洗浄水は大便器20へ供給されない。従って、大便器20が詰まった状態で連続して洗浄水が供給され、大便器20から水が溢れることを防止できる。そして、詰まり判定部12は、洗浄禁止時間中における検知部10の検知結果に基づいて、大便器20の詰まり状態を判定する。洗浄禁止時間中は、次の洗浄水が供給されないため、大便器20内の水位が安定し、より正確な判定結果を得ることができる。
【0060】
洗浄水供給の終了直後は、大便器20内の水位が安定せず、
図3(a)の時刻T3と時刻T4の間のように検知結果が大きく変動する。値が瞬間的に大きくなったり小さくなったりしたときの検知結果を基に詰まり状態が判定されると、正確な判定結果が得られない可能性がある。一方、時刻T3から所定時間経過後の時刻T4以降では、水位が安定して、検知結果の変動が小さくなる。このため、詰まり状態の判定は、洗浄水供給が終了してから所定時間が経過し、水位がより安定した後に行われることが望ましい。水位が安定した状態で詰まり状態が判定されることで、より正確な判定結果を得ることができる。所定時間は、大便器20内の容量や大便器20から排出される洗浄水の流量、大便器20における洗浄水の流れ方などに応じて、適宜設定される。一例として、一般的な便器において、当該所定時間は、3秒以上20秒以下であり、より好ましくは5秒以上15秒以下であり、更に好ましくは8秒以上12秒以下に設定される。
【0061】
また、前述したように、大便器20に詰まりが有ると判定された場合、その後に連続的又は間欠的に複数回検知結果を取得し、大便器20の詰まり状態を繰り返し判定する方法がある。この方法によれば、大便器20内の水が時間をかけて流れていくような場合に洗浄水供給が禁止されることを防止できる。しかし、大便器20に詰まりが無いとすぐに判定される場合に比べて、判定に要する時間が長くなる。この点について、制御部14は、詰まり判定部12が洗浄禁止時間中に大便器20内の詰まり状態を判定できなかった場合、洗浄禁止時間を延長する。詰まり判定部12は、延長された洗浄禁止時間において大便器20の詰まり状態を判定する。これにより、詰まり状態の判定が終了するまで洗浄禁止時間が継続される。この方法によれば、大便器20に詰まりが無く、すぐに判定が完了する場合には、洗浄禁止時間がより早く解除される。そして、大便器20に詰まりが有り、判定の完了に時間を要する場合には、それに応じて洗浄禁止時間が延長される。このため、大便器20が詰まった状態で洗浄水が供給されることを確実に防止しつつ、無用に洗浄禁止時間が設定されることを回避できる。
【0062】
制御部14は、洗浄禁止時間中に洗浄操作があった場合、詰まり判定部12による判定が完了し、かつ大便器20に詰まりが無いと判定された時点で大便器20へ洗浄水を供給する。こうすることで、大便器20から水が溢れることを防止しつつ、判定終了後に使用者の意図に沿った動作が自動で実現される。このため、使用者が洗浄禁止時間後に再度洗浄操作を行う必要が無く、トイレ装置1の使い勝手が向上する。
【0063】
また、制御部14は、詰まり判定部12により大便器20に詰まりが無いと判定された時点で、洗浄禁止時間の設定を解除する。こうすることで、大便器20から水が溢れることを防止しつつ、洗浄禁止時間を短縮できる。洗浄禁止時間が短縮されることで、使用者からの洗浄操作を受け付け可能な時間が長くなり、トイレ装置1の使い勝手が向上する。
【0064】
(第1変形例)
図7は、実施形態に係るトイレ装置の動作の一例を表すタイミングチャートである。
図7に表した例では、制御部14は、時刻T10で洗浄水供給が開始されると、洗浄禁止時間を設定する。その後、制御部14は、時刻T12で洗浄水供給が終了した後も洗浄禁止時間を継続する。すなわち、この例では、制御部14は、洗浄後だけで無く、洗浄中にも洗浄禁止時間を設定している。
【0065】
また、
図7の例では、洗浄中の時刻T11に洗浄操作が行われている。このとき、洗浄禁止時間中であるため、制御部14は、この洗浄操作を受け付けない。ただし、
図5に表した例と同様に、時刻T15で詰まり判定部12による詰まり状態の判定が完了し、かつ大便器20に詰まりが無いと判定された時点で、大便器20へ洗浄水を供給しても良い。
【0066】
図8は、実施形態に係るトイレ装置の動作を表すフローチャートである。
図8は、使用者により洗浄操作が行われたときの制御部14の動作を表す。使用者により洗浄操作が行われると(ステップSt21)、制御部14は、洗浄水供給中か否か判定する(ステップSt22)。洗浄水供給中の場合、洗浄禁止時間中であるため、制御部14は、洗浄操作を受け付けない(ステップSt23)。洗浄水供給中では無い場合、制御部14は、洗浄操作を受け付けて大便器20へ洗浄水を供給する(ステップSt24)。その後、洗浄水供給が終了する際に、
図6のフローチャートに表した動作が実行される。
【0067】
トイレ装置1には、大便器20への洗浄中に洗浄操作が行われた際に、何らかの動作を追加で行う機能が設けられることがある。例えば、そのような機能として、洗浄水供給の時間を延長する機能が挙げられる。しかし、大便器20に詰まりが有る状態で洗浄時間が延長され、多くの洗浄水が供給されると、大便器20から水が溢れる可能性が高まる。このため、制御部14は、洗浄禁止時間を、さらに大便器20への洗浄水供給中に設定することが望ましい。こうすることで、大便器20へ供給される洗浄水が増加することを防止でき、大便器20に詰まりが有るときに大便器20から水が溢れることをより確実に防止できる。
【0068】
(第2変形例)
上述したそれぞれの例では、詰まり判定部12が、洗浄禁止時間中に大便器20の詰まり状態を判定していた。この方法に変えて、本変形例に係るトイレ装置では、詰まり判定部12が、洗浄禁止時間直後に大便器20の詰まり状態を判定する。
【0069】
洗浄禁止時間の終了直後も、洗浄禁止時間中と同様に、大便器20内の水位が安定している。従って、洗浄禁止時間直後に大便器20の詰まり状態を判定することで、より正確な詰まり状態の判定結果を得ることができる。また、大便器20に詰まりが有る場合は、洗浄禁止時間直後の詰まり状態の判定結果に基づき、制御部14により大便器20への洗浄水供給が禁止される。このため、大便器20から水が溢れることを防止しつつ、大便器20の詰まり状態をより正確に判定できる。
【0070】
すなわち、本発明においては、洗浄禁止時間が、少なくとも詰まり判定部12による詰まり判定の前に設定される。洗浄禁止時間中は、次の洗浄水が供給されないため、大便器20内の水位が安定し、より正確な詰まり状態の判定結果を得ることができる。
【0071】
なお、洗浄禁止時間直後とは、洗浄禁止時間が終了してから30秒以内であることが好ましい。ある使用者が大便器20を洗浄し、大便器20が設置された空間から退室した後、次の使用者がその空間に入室するまでの入れ替わり時間は、早くて概ね30秒程度である。洗浄禁止時間が終了してから30秒以内であれば、次の洗浄操作が行われる可能性が低い。
【0072】
又は、洗浄禁止時間直後とは、より好ましくは洗浄禁止時間が終了してから10秒以内である。例えば、使用者は、臭いの広がりを抑えるために、大便等の排泄直後に洗浄操作を行う。その後、トイレットペーパーなどを流すために、再び洗浄操作を行う。これらの洗浄操作は、早くて概ね10秒程度の間隔を空けて実行されるためである。
【0073】
ただし、使用者によっては、排泄時の音を洗浄水供給時の音でかき消すことを目的として、排泄中に連続して洗浄操作を行うことがある。この場合、洗浄禁止時間直後に洗浄操作が行われ、詰まり判定部12による詰まり状態の判定前に大便器20へ洗浄水が供給される可能性がある。従って、大便器20への洗浄水供給による溢れをより確実に防止するためには、詰まり状態が洗浄禁止時間中に判定されることが望ましい。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、トイレ装置1が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0075】
1 トイレ装置、 10 検知部、 11 電波、 12 詰まり判定部、 14 制御部、 20 大便器、 20a 表面、 22 洗浄水供給部、 E 異物、 P1~P3 期間、 PV 所定値、 S1 溢れ面、 S2 封水面、 St1~St12、St21~St24 ステップ、 T0~T4、T10~T15 時刻、 V1 第1検知結果、 V2 第2検知結果、 t1、t2 タイミング