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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】電子装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20221020BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03H3/02 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021511263
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008635
(87)【国際公開番号】W WO2020202966
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019067280
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】尾島 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 功
(72)【発明者】
【氏名】崔 弘毅
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-245829(JP,A)
【文献】特開2004-186995(JP,A)
【文献】特開2013-207674(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208747(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/114628(WO,A1)
【文献】特開2014-116707(JP,A)
【文献】特開2017-196727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電片及び前記圧電片を励振する励振電極を有する電子部品と、
前記電子部品が導電性保持部材を介して搭載されたベース基板と、
前記ベース基板との間に前記電子部品を収容する内部空間を形成し、前記内部空間を外部に開口する少なくとも1つの貫通孔が形成された中間層と、
前記中間層の外側に設けられ、前記少なくとも1つの貫通孔を塞いで前記内部空間を封止する封止層と、
を備え、
前記ベース基板における前記電子部品が搭載された搭載面には、前記電子部品の一部と重なる有底の開口部が形成され、
前記中間層及び前記封止層は、前記電子部品及び前記導電性保持部材から離間して前記ベース基板に接合された、電子装置。
【請求項2】
前記ベース基板は、
前記搭載面に設けられ前記電子部品が接合された電極パッドと、
端面に設けられたキャスタレーション電極と、
前記電極パッドと前記キャスタレーション電極とを電気的に接続するベース配線と、
を有する、
請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記封止層は、前記ベース基板に接合され、前記ベース配線の一部を覆っている、
請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記ベース基板の前記搭載面を平面視したとき、前記少なくとも1つの貫通孔は、前記開口部と重なる領域に形成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項5】
前記電子部品は、水晶振動素子である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項6】
集合基板を準備する基板準備工程と、
前記集合基板の上に第1犠牲層を設ける犠牲層形成工程と、
圧電片及び前記圧電片を励振する励振電極を有する電子部品の一部を前記第1犠牲層に支持させつつ導電性保持部材を介して前記集合基板に前記電子部品を搭載する搭載工程と、
第2犠牲層によって前記電子部品を覆う犠牲層被覆工程と、
前記第2犠牲層の側をその反対側へと開口する少なくとも1つの貫通孔が形成された中間層によって前記第2犠牲層を覆う中間層形成工程と、
前記少なくとも1つの貫通孔を通して前記第1犠牲層及び前記第2犠牲層を除去し、前記集合基板と前記中間層との間に内部空間を形成する空間形成工程と、
前記中間層の外側に設けた封止層によって前記少なくとも1つの貫通孔を塞いで前記内部空間を封止する封止工程と、
を備え、
前記中間層及び前記封止層は、前記電子部品及び前記導電性保持部材から離間してベース基板に接合される、電子装置の製造方法。
【請求項7】
前記集合基板における前記電子部品が搭載される搭載面には、前記電子部品の一部と重なる有底の開口部が形成され、
前記第1犠牲層は、前記開口部の中に設けられる、
請求項6に記載の電子装置の製造方法。
【請求項8】
前記基板準備工程は、
母基体を準備する工程と、
前記母基体を貫通するビアホールを形成する工程と、
前記ビアホールの内側面を覆うビア電極を設ける工程と、
を含み、
前記封止層を設けた後に、前記集合基板を個片化して、分割された前記ビア電極によって前記ベース基板の端面のキャスタレーション電極を形成する分割工程をさらに備える、
請求項6又は7に記載の電子装置の製造方法。
【請求項9】
前記集合基板には、前記電子部品と電気的に接続される電極パッドと、前記ビア電極とを電気的に接続するベース配線とが設けられ、
前記封止層は、前記集合基板に接合され、前記ベース配線の一部を覆う、
請求項8に記載の電子装置の製造方法。
【請求項10】
前記電子部品は、水晶振動素子である、
請求項6から9のいずれか1項に記載の電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械振動部を有する電子部品を備えた電子装置として、例えば、タイミングデバイスや荷重センサとして利用される圧電振動子が挙げられる。圧電振動子は、圧電効果を利用して電気振動を機械振動に変換する機械振動部を有する圧電振動素子と、当該圧電振動素子を収容する保持器とからなる。
【0003】
例えば、特許文献1には、周辺部に対して薄肉の振動部を有する圧電振動片と、圧電振動片の表面及び裏面に成膜されて、振動部から離間して周辺部と接合する中間膜と、中間膜の表面に成膜されて中間膜に積層される封止膜と、を含む圧電デバイスが開示されている。このように特許文献1によれば、ウェハレベルで作成されることにより低コスト化を可能にするとともに、振動特性が優れた圧電デバイスが提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-163613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の圧電デバイスにおいては、振動部を枠状に囲む周辺部が中間膜及び封止膜に接しているため、外部から作用する応力が振動部に伝達され易い。このため、応力による周波数変動が大きくなるという問題が生じる恐れがある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、応力による周波数変動が小さく小型化可能な電子装置及びその製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電子装置は、機械振動部を有する電子部品と、電子部品が搭載されたベース基板と、ベース基板との間に電子部品を収容する内部空間を形成し、内部空間を外部に開口する少なくとも1つの貫通孔が形成された中間層と、中間層の外側に設けられ、少なくとも1つの貫通孔を塞いで内部空間を封止する封止層と、を備え、ベース基板における電子部品が搭載された搭載面には、電子部品の一部と重なる有底の開口部が形成されている。
【0008】
本発明の一態様に係る電子装置の製造方法は、集合基板を準備する基板準備工程と、集合基板の上に第1犠牲層を設ける犠牲層形成工程と、機械振動部を有する電子部品の一部を第1犠牲層に支持させつつ集合基板に電子部品を搭載する搭載工程と、第2犠牲層によって電子部品を覆う犠牲層被覆工程と、第2犠牲層の側をその反対側へと開口する少なくとも1つの貫通孔が形成された中間層によって第2犠牲層を覆う中間層形成工程と、少なくとも1つの貫通孔を通して第1犠牲層及び第2犠牲層を除去し、集合基板と中間層との間に内部空間を形成する空間形成工程と、中間層の外側に設けた封止層によって少なくとも1つの貫通孔を塞いで内部空間を封止する封止工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、応力による周波数変動が小さく小型化可能な電子装置及びその製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図2】第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す平面図である。
図3図2に示した水晶振動子のIII-III線に沿った断面の構成を概略的に示す断面図である。
図4】第1実施形態に係る水晶振動子の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図5】集合基板を準備する基板準備工程を概略的に示す平面図である。
図6】水晶振動素子を搭載する搭載工程を概略的に示す断面図である。
図7】中間層を設ける中間層形成工程を概略的に示す断面図である。
図8】第1犠牲層及び第2犠牲層を除去する空間形成工程を概略的に示す断面図である。
図9】封止層を設ける封止工程を概略的に示す断面図である。
図10】個片化する分割工程を概略的に示す平面図である。
図11】第2実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す平面図である。
図12】第3実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す平面図である。
図13】第4実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。各実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0012】
以下の説明において、圧電振動子(Piezoelectric Resonator Unit)の一例として、水晶振動素子(Quartz Crystal Resonator)を備えた水晶振動子(Quartz Crystal Resonator Unit)を例に挙げて説明する。水晶振動素子は、圧電効果によって励振される圧電体として、水晶片(Quartz Crystal Element)を利用するものである。
【0013】
水晶振動子は電子装置の一例である圧電振動子の一種に相当し、水晶振動素子は電子部品の一例である圧電振動素子の一種に相当し、水晶片は圧電片の一種に相当する。なお、本発明の一実施形態に係る振動素子の振動(駆動)方式は、圧電駆動に限定されない。例えば、本発明の一実施形態に係る振動素子は、圧電基板を用いた圧電駆動型のもの以外に、静電気力を用いた静電駆動型や、磁力を利用したローレンツ駆動型などの振動素子であってもよい。また、電子部品は、機械的に振動する機械振動部を有するものであれば、上記の振動素子に限定されるものではない。
【0014】
なお、本発明の実施形態に係る圧電片は水晶片に限定されるものではない。圧電片は、圧電単結晶、圧電セラミック、圧電薄膜、又は、圧電高分子膜などの任意の圧電材料によって形成されてもよい。一例として、圧電単結晶は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)を挙げることができる。同様に、圧電セラミックは、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(ZrTi1-x)O3;PZT)、窒化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、メタニオブ酸リチウム(LiNb)、チタン酸ビスマス(BiTi12)タンタル酸リチウム(LiTaO)、四ホウ酸リチウム(Li)、ランガサイト(LaGaSiO14)、又は、五酸化タンタル(Ta)などを挙げることができる。圧電薄膜は、石英、又は、サファイアなどの基板上に上記の圧電セラミックをスパッタリング法などによって成膜したものを挙げることができる。圧電高分子膜は、ポリ乳酸(PLA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又は、フッ化ビニリデン/三フッ化エチレン(VDF/TrFE)共重合体などを挙げることができる。上記の各種圧電材料は、互いに積層して用いられてもよく、他の部材に積層されてもよい。
【0015】
<第1実施形態>
まず、図1図3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る水晶振動子1の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す分解斜視図である。図2は、第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す平面図である。図3は、図2に示した水晶振動子のIII-III線に沿った断面の構成を概略的に示す断面図である。なお、図3は平面状の断面図ではなく、後述する第1キャスタレーション電極35a、第1ベース配線34a、第1電極パッド33a、第1導電性保持部材36a、第1接続電極16a、第1引出電極15a、第1励振電極14a及び第4キャスタレーション電極35dを含む屈曲した断面を示す図である。
【0016】
各々の図面には、各々の図面相互の関係を明確にし、各部材の位置関係を理解する助けとするために、便宜的にX軸、Y´軸及びZ´軸からなる直交座標系を付すことがある。X軸、Y´軸及びZ´軸は各図面において互いに対応している。X軸、Y´軸及びZ´軸は、それぞれ、後述の水晶片11の結晶軸(Crystallographic Axes)に対応しており、X軸が電気軸(極性軸)、Y軸が機械軸、Z軸が光学軸に対応している。Y´軸及びZ´軸は、それぞれ、Y軸及びZ軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に35度15分±1分30秒回転させた軸である。以下の説明において、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y´軸に平行な方向を「Y´軸方向」、Z´軸に平行な方向を「Z´軸方向」という。また、X軸、Y´軸及びZ´軸の矢印の先端方向を「+(プラス)」、矢印とは反対の方向を「-(マイナス)」という。
【0017】
図1に示すように、水晶振動子1は、水晶振動素子10と、蓋部材20と、ベース基板30とを備えている。蓋部材20は、中間層40と封止層50とを備えている。蓋部材20及びベース基板30は、水晶振動素子10を収容するための保持器を構成している。図1図3に示した例では、蓋部材20及びベース基板30の互いに対向する側が凹状に形成されている。具体的には、蓋部材20はベース基板30側に水晶振動素子10を収容する有底の開口部を有し、ベース基板30は蓋部材20側に水晶振動素子10から離れた有底の開口部を有する。蓋部材20及びベース基板30の形状は上記に限定されるものではなく、ベース基板30が蓋部材20側に水晶振動素子10を収容する有底の開口部を有してもよい。また、蓋部材20及びベース基板30の少なくとも一方が平板状に形成されていてもよい。
【0018】
水晶振動素子10は、圧電効果により水晶を振動させ、電気エネルギと機械エネルギとを変換する素子である。水晶振動素子10は、薄片状の水晶片11と、一対の励振電極を構成する第1励振電極14a及び第2励振電極14bと、一対の引出電極を構成する第1引出電極15a及び第2引出電極15bと、一対の接続電極を構成する第1接続電極16a及び第2接続電極16bとを備えている。
【0019】
水晶片11は、互いに対向する上面11A及び下面11Bを有している。上面11Aは、ベース基板30と対向する側とは反対側、すなわち後述する中間層40の天面部41に対向する側に位置している。下面11Bは、ベース基板30と対向する側に位置している。
【0020】
水晶片11は、例えば、ATカット型の水晶片である。ATカット型の水晶片11は、互いに交差するX軸、Y´軸、及びZ´軸からなる直交座標系において、X軸及びZ´軸によって特定される面と平行な面(以下、「XZ´面」と呼ぶ。他の軸によって特定される面についても同様である。)が主面となり、Y´軸と平行な方向が厚さとなるように形成される。例えば、ATカット型の水晶片11は、人工水晶(Synthetic Quartz Crystal)の結晶体を切断及び研磨加工して得られる水晶基板(例えば、水晶ウェハ)をエッチング加工することで形成される。
【0021】
ATカット型の水晶片11を用いた水晶振動素子10は、広い温度範囲で高い周波数安定性を有する。ATカット型の水晶振動素子10では、厚みすべり振動モード(Thickness Shear Vibration Mode)が主要振動として用いられる。なお、ATカット型の水晶片11におけるY´軸及びZ´軸の回転角度は、35度15分から-5度以上15度以下の範囲で傾いてもよい。水晶片11のカット角度は、ATカット以外の異なるカットを適用してもよい。例えばBTカット、GTカット、SCカットなどを適用してよい。なお、水晶振動素子は、Z板と呼ばれるカット角の水晶片を用いた音叉型水晶振動素子であってもよい。
【0022】
ATカット型の水晶片11は、X軸方向に平行な長辺が延在する長辺方向と、Z´軸方向に平行な短辺が延在する短辺方向と、Y´軸方向に平行な厚さが延在する厚さ方向を有する板状である。水晶片11は、上面11Aを平面視したときに矩形状をなしており、中央に位置し励振に寄与する励振部17と、励振部17に隣接する周辺部18,19とを含んでいる。励振部17は、機械振動部に相当する。周辺部18は、励振部17に隣接する周辺部のうち、励振部17から視て-X軸方向側に位置する部分である。周辺部19は、励振部17に隣接する周辺部のうち、励振部17から視て+X軸方向側に位置する部分である。励振部17、及び周辺部18,19は、それぞれ、水晶片11のZ´軸方向において互いに対向する一端から他端に亘って帯状に形成されている。図2に示すように、本実施形態においては、励振部17及び周辺部18,19は、それぞれ、平面視したとき矩形状をなしている。
【0023】
なお、水晶片11の上面11Aを平面視したとき、励振部17の平面形状は上記に限定されるものではない。励振部17は、周辺部19が省略され、水晶片11における+X軸方向側の部分の略全面に亘って形成されてもよい。また、励振部17は、全周を周辺部に囲まれる島状に形成されてもよい。また、励振部17の形状は、円形状、楕円形状、多角形状及びそれらの組合せであってもよい。
【0024】
励振部17は、周辺部18,19よりも厚い。水晶片11は、両面メサ型構造を有する。これにより励振部17からの振動漏れが抑制できる。図1及び図3に示す例では、水晶片11の上面11A側及び下面11B側の両方において、励振部17がY´軸方向に沿って周辺部18,19から突出している。言い換えれば、水晶片11の上面11A側及び下面11B側の両方において、励振部17と周辺部18との境界、及び、励振部17と周辺部19との境界に段差が形成されている。励振部17と周辺部18,19との境界における段差の形状は、例えばテーパ状であるが、多段状などの他の形状であってもよい。
【0025】
水晶片11の断面形状は上記に限定されるものではなく、例えば上面11A及び下面11Bの一方側においてのみ励振部17が周辺部18,19から突出した片面メサ型構造や、励振部17が周辺部18,19よりも薄い逆メサ型構造などであってもよい。水晶片11は、励振部17と周辺部18,19との間で厚みの変化量が連続的に変化するコンベックス型構造またはベヘル型構造であってもよい。なお、水晶片11の形状は板状に限定されるものではなく、例えば、基部と基部から並行に延出する振動腕部とを有する音叉形状であってもよい。水晶片11の形状は、励振部17の厚みと周辺部18,19の厚みとが略等しい平板状であってもよい。周辺部18には、振動漏れや応力伝達を抑制する目的でスリットが形成されてもよい。
【0026】
第1励振電極14aは、励振部17の上面11A側に設けられている。また、第2励振電極14bは、励振部17の下面11B側に設けられている。言い換えると、第1励振電極14aは蓋部材20の側に設けられ、第2励振電極14bはベース基板30の側に設けられている。第1励振電極14aと第2励振電極14bは、水晶片11を挟んで互いに対向している。水晶片11の上面11Aを平面視したとき、第1励振電極14aと第2励振電極14bとは、それぞれの略全体が重なり合うように配置されている。第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、それぞれ、X軸方向に平行な長辺と、Z´軸方向に平行な短辺と、Y´軸方向に平行な厚さとを有している。
【0027】
第1引出電極15aは、第1励振電極14aと第1接続電極16aとを電気的に接続している。第2引出電極15bは、第2励振電極14bと第2接続電極16bとを電気的に接続している。図2に示すように、第1励振電極14aから引き出された第1引出電極15aは、X軸方向に沿って延在し、励振部17と周辺部18との境界の上面11A側における段差、及び周辺部18の上面11Aに設けられている。また、第2励振電極14bから引き出された第2引出電極15bは、X軸方向に沿って延在し、励振部17と周辺部18との境界の下面11B側における段差、及び周辺部18の下面11Bに設けられている。浮遊容量を低減する観点から、水晶片11の上面11Aを平面視したとき、第1引出電極15a及び第2引出電極15bは互いに離れており、第1引出電極15aは第2引出電極15bから視て+Z´軸方向に設けられている。
【0028】
第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、それぞれ、第1励振電極14a及び第2励振電極14bをベース基板30に電気的に接続するための電極であり、周辺部18の下面11B側に設けられている。図2に示すように、第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、周辺部18の-X軸方向の側の端部に並んで設けられており、第1接続電極16aは+Z´軸方向の側の角部に設けられ、第2接続電極16bは-Z´軸方向の側の角部に設けられている。
【0029】
第1励振電極14a、第1引出電極15a及び第1接続電極16aは、一体的に形成されている。第2励振電極14b、第2引出電極15b及び第2接続電極16bも同様である。上記の水晶振動素子10の電極は、例えば、クロム(Cr)と金(Au)とをこの順に積層して設けられている。水晶片11との密着性においてクロムは金よりも優れており、化学的安定性において金はクロムよりも優れている。このため、水晶振動素子10の電極がクロムと金とからなる多層構造である場合、電極の剥離や酸化を抑制でき、信頼性の高い水晶振動素子10が提供できる。
【0030】
ベース基板30は、水晶振動素子10を励振可能に保持するものである。ベース基板30は、互いに対向する上面31A及び下面31Bを有する基体31を備えている。上面31Aは、水晶振動素子10及び蓋部材20の側に位置し、水晶振動素子10が搭載される搭載面に相当する。ベース基板30には、上面31Aの側に有底の開口部39が形成されている。開口部39は電子部品の一部と重なっている。図2に示すように、本実施形態において、ベース基板30の開口部39は、水晶振動素子10の励振部17及び周辺部19の全体、並びに周辺部18の一部と重なっている。上面31Aを平面視したとき、基体31の端面は、四隅において基体31の中心に向かって円柱状に凹んでいる。基体31は、例えば絶縁性セラミック(アルミナ)などの焼結材である。熱応力の発生を抑制する観点から、基体31は耐熱性材料から構成されることが好ましい。熱履歴によって水晶振動素子10にかかる応力を抑制する観点から、基体31は、水晶片11に近い熱膨張率を有する材料によって設けられてもよく、例えば水晶によって設けられてもよい。
【0031】
ベース基板30は、基体31の上面31Aに設けられた一対の電極パッドを構成する第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bを備えている。第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、ベース基板30に水晶振動素子10を電気的に接続するための端子である。図2に示すように、第1電極パッド33aの少なくとも一部は第1接続電極16aと重なっており、第2電極パッド33bの少なくとも一部は第2接続電極16bと重なっている。
【0032】
ベース基板30は、基体31の端面のうち、四隅に形成された凹部の表面に設けられた第1キャスタレーション電極35a、第2キャスタレーション電極35b、第3キャスタレーション電極35c及び第4キャスタレーション電極35dを備えている。図2に示すようにベース基板30の上面31Aを平面視したとき、第2キャスタレーション電極35bは第1キャスタレーション電極35aから視て-Z´軸方向側に位置し、第3キャスタレーション電極35cは第2キャスタレーション電極35bから視て+X軸方向側に位置し、第4キャスタレーション電極35dは第3キャスタレーション電極35cから視て+Z´軸方向側に位置する。例えば、第1キャスタレーション電極35a、第2キャスタレーション電極35b、第3キャスタレーション電極35c及び第4キャスタレーション電極35dを半田付けすることによって、水晶振動子1は図示しない外部の回路基板に搭載される。このとき、第1キャスタレーション電極35a及び第2キャスタレーション電極35bは、図示しない外部の回路基板と水晶振動子1とを電気的に接続するための端子である。第3キャスタレーション電極35c及び第4キャスタレーション電極35dは、電気信号等が入出力されないダミー電極だが、蓋部材20の少なくとも一部を接地させて蓋部材20の電磁シールド機能を向上させる接地電極であってもよい。なお、第1キャスタレーション電極35a、第2キャスタレーション電極35b、第3キャスタレーション電極35c及び第4キャスタレーション電極35dは、ベース基板30の上面31A側の電極と下面31B側の外部電極とを電気的に接続する電極であってもよい。このような水晶振動子1と外部の回路基板との半田付けは、下面31B側の外部電極によって行われてもよい。
【0033】
ベース基板30は、基体31の上面31Aに設けられた一対のベース配線を構成する第1ベース配線34a及び第2ベース配線34bを備えている。第1ベース配線34aは第1電極パッド33aと第1キャスタレーション電極35aとを電気的に接続し、第2ベース配線34bは第2電極パッド33bと第2キャスタレーション電極35bとを電気的に接続している。
【0034】
ベース基板30の上面31A側には、一対の導電性保持部材を構成する第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bが設けられている。具体的には、第1電極パッド33a上に第1導電性保持部材36aが設けられ、第2電極パッド33b上に第2導電性保持部材36bが設けられている。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、水晶振動素子10をベース基板30に搭載し、水晶振動素子10とベース基板30とを電気的に接続する。第1導電性保持部材36aは、水晶振動素子10の第1接続電極16aに接合され、第1電極パッド33aと第1接続電極16aとを電気的に接続している。第2導電性保持部材36bは、水晶振動素子10の第2接続電極16bに接合され、第2電極パッド33bと第2接続電極16bとを電気的に接続している。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、励振部17が励振可能となるように、ベース基板30から間隔を空けて水晶振動素子10を保持している。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、例えば、シリコーン系樹脂を主剤とする熱硬化樹脂や紫外線硬化樹脂等を含む導電性接着剤であり、接着剤に導電性を与えるための導電性粒子などの添加剤を含んでいる。導電性粒子としては、例えば銀(Ag)を含む導電性粒子が用いられる。導電性接着剤の主剤は、エポキシ系樹脂などであってもよい。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、前駆体である未硬化の導電性接着剤ペーストが塗布された後に、加熱、紫外線照射などによって引き起こされる化学反応によって導電性接着剤ペーストを硬化させて設けられる。さらに、強度を増加させる目的、あるいはベース基板30と水晶振動素子10との間隔を保つ目的のフィラーが接着剤に添加されてもよい。なお、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、半田によって設けられてもよい。
【0035】
中間層40は、ベース基板30との間に水晶振動素子10を収容する内部空間49を形成している。中間層40は、水晶振動素子10を挟んでベース基板30の開口部39と対向する平板状の天面部41と、天面部41の外縁に接続されており且つ天面部41と交差する方向に延在する側壁部42とを備えている。側壁部42は、Z´X面方向において水晶振動素子10を囲んでいる。中間層40は、内部空間49の側に内面44を有し、内面44とは反対側に外面45を有している。中間層40は、側壁部42のベース基板30側の先端に対向面43を備えている。図2に示すようにベース基板30の上面31Aを平面視したとき、対向面43は水晶振動素子10を囲む矩形の枠状をなしており、基体31に接合されている。また、対向面43は、第1ベース配線34a及び第2ベース配線34bのそれぞれの一部を覆っている。中間層40は、例えば、ポリシリコン、シリコン酸化物などによって設けられている。
【0036】
中間層40には、内部空間49を外部に開口する少なくとも1つの貫通孔46が形成されている。貫通孔46は天面部41に形成され、内面44及び外面45の両側に開口している。図2に示すようにベース基板30の上面31Aを平面視したとき、複数の貫通孔46のうち少なくとも一部は、ベース基板30の開口部39と重なる領域に形成されている。複数の貫通孔46の一部は、開口部39の外側に位置してもよい。ベース基板30の開口部39と重なる複数の貫通孔46のうち、その一部は水晶振動素子10と重なり、その一部は水晶振動素子10の外側に位置している。複数の貫通孔46のそれぞれの位置が散らばることで、製造工程において犠牲層を効率的に除去でき、開口部39や内部空間49における犠牲層の残渣の発生を抑制できる。
【0037】
封止層50は、内部空間49から視て中間層40の外側に設けられ、貫通孔46を塞いで内部空間49を封止している。封止層50は中間層40を覆っており、平板状の天面部51と、天面部51の外縁に接続されており且つ天面部51と交差する方向に延在する側壁部52とを備えている。封止層50は、中間層40の側に内面54を有し、内面54とは反対側に外面55を有している。封止層50は、側壁部52のベース基板30側の先端に対向面53を備えている。封止層50の内面54は中間層40の外面45に接しており、天面部51において貫通孔46を塞いでいる。図2に示すようにベース基板30の上面31Aを平面視したとき、対向面53は水晶振動素子10を囲む矩形の枠状をなしており、基体31に接合されている。また、対向面53は、第1ベース配線34a及び第2ベース配線34bのそれぞれの一部を覆っている。封止層50は、例えば、シリコン窒化物などによって設けられている。封止層50は例えば金属などの導電材料によって設けられてもよく、このとき封止層50には内部空間49への電磁波の出入りを低減する電磁シールド機能が付与できる。また、導電材料で封止層50を設ける場合、封止層50は、第1ベース配線34a及び第2ベース配線34bから離して設けられる。このとき、封止層50は、第3キャスタレーション電極35c又は第4キャスタレーション電極35dと電気的に接続されてもよい。
【0038】
(製造方法)
次に、図4図10を参照しつつ、第1実施形態に係る水晶振動子1の製造方法について説明する。図4は、第1実施形態に係る水晶振動子の製造方法を概略的に示すフローチャートである。図5は、集合基板を準備する基板準備工程を概略的に示す平面図である。図6は、水晶振動素子を搭載する搭載工程を概略的に示す断面図である。図7は、中間層を設ける中間層形成工程を概略的に示す断面図である。図8は、第1犠牲層及び第2犠牲層を除去する空間形成工程を概略的に示す断面図である。図9は、封止層を設ける封止工程を概略的に示す断面図である。図10は、個片化する分割工程を概略的に示す平面図である。
【0039】
まず、集合基板130を準備する(基板準備工程)。基板準備工程は、母基体を準備する工程S11と、母基体にビアホールを形成する工程S12と、電極パッド、ビア電極及びベース配線を設ける工程S13とを含む。
母基体を準備する工程S11では、アルミナを主原料とするセラミック粉末を用いてグリーンシートを成形する。次に、母基体にビアホールを形成する工程S12では、グリーンシートに、開口部39及びビアホールVHを形成する。次に、電極パッド、ビア電極及びベース配線を設ける工程S13では、グリーンシートに第1電極パッド33a及び第2電極パッド33b、第1ベース配線34a及び第2ベース配線34b、並びにビア電極VEを、物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)や化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Depositon)などの気相成長法によって設ける。ビア電極VEは、ビアホールVHの内側面を覆うように、中空の筒状に設けられる。次に、当該グリーンシートを水素雰囲気化において約1600℃で焼成する。これにより、図5に示すように、セラミック(アルミナ)からなる母基体131が形成され、集合基板130が得られる。このとき、母基体131は、焼成によって例えば約20%収縮する。なお、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33b、第1ベース配線34a及び第2ベース配線34b、並びにビア電極VEは、メッキ法や印刷法などの気相成長以外の成膜方法によって設けられてもよい。なお、開口部39及びビアホールVHは、グリーンシートの焼成後に形成されてもよい。このとき、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33b、第1ベース配線34a及び第2ベース配線34b、並びにビア電極VEは、グリーンシートの焼成後に形成されてもよい。
【0040】
次に、第1犠牲層を設ける(犠牲層形成工程S14)。
図6に示すように、第1犠牲層121は、集合基板130の開口部39の内部に設けられる。第1犠牲層121の材料は、ウェットエッチング又はドライエッチングによって除去可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコン酸化物、アモルファスシリコン、フォトレジスト、その他ポリマー材料などが適宜選択される。
【0041】
次に、水晶振動素子を搭載する(搭載工程S15)。
本工程においては、図6に示すように、まず未硬化でペースト状の導電性接着剤137を第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bの上に、例えばディスペンサによって塗布する。導電性接着剤137の塗布方法は上記に限定されるものではなく、グラビア印刷方式やスクリーン印刷方式やインクジェット方式などによって設けられてもよい。次に、水晶振動素子10の励振部17を第1犠牲層121に支持させつつ、導電性接着剤137を集合基板130と水晶振動素子10とで挟む。次に、図7に示すように、水晶振動素子10の励振部17を第1犠牲層121に支持させたまま、導電性接着剤137を硬化させる。なお、第1犠牲層121によって支持される部分は水晶振動素子10の一部であれば励振部17に限定されるものではなく、周辺部18又は周辺部19であってもよい。
【0042】
次に、第2犠牲層を設ける(犠牲層被覆工程S16)。
第2犠牲層122は、水晶振動素子10を覆うように設けられる。第2犠牲層122は、第1犠牲層121と同様の材料から適宜選択される。
【0043】
次に、中間層を設ける(S17)。
図7に示すように、中間層40は、第2犠牲層122を覆い、集合基板130に接する。中間層40は、ベース配線の一部を覆うように成膜される。中間層40の形成方法は、例えば、PVDやCVDなどから適宜選択される。中間層40の膜厚は、第2犠牲層122を除去したあとに内部空間49を維持できる強度を持つように設定する。
【0044】
次に、中間層に貫通孔を形成する(S18)。
1つの中間層40につき少なくとも1つの貫通孔46が、例えば、フォトレジ工法を利用したドライエッチングによって形成される。貫通孔46の形成によって、第2犠牲層122は、貫通孔46を通して外部に露出される。貫通孔46の寸法は、後述する封止層50を設ける封止工程S20において、封止層50を形成する材料が貫通孔46を通して内部空間49に侵入しないように設定される。なお、封止層50を形成する材料が内部空間49に侵入したとしても水晶振動素子10に付着して共振周波数が変化しないように、貫通孔46を水晶振動素子10と重ならない位置に形成してもよい。
本実施形態における中間層形成工程は、工程S17と工程S18とを含むが、これに限定されるものではない。中間層形成工程は、例えば、先に貫通孔46を形成する位置にフォトレジストを設け、第2犠牲層122及び当該フォトレジストの上に中間層を成膜し、当該フォトレジストをその上に形成された中間層ごと除去して、貫通孔46が形成された中間層40を形成してもよい。
【0045】
次に、第1犠牲層及び第2犠牲層を除去する(空間形成工程S19)。
第1犠牲層121及び第2犠牲層122は、中間層40の貫通孔46を通して、例えば、ドライエッチング又はウェットエッチングなどの除去加工によって処理される。図8に示すように、第1犠牲層121の除去により集合基板130の開口部39が空洞となり、第2犠牲層122の除去により中間層40の内部空間49が空洞となる。第1犠牲層121及び第2犠牲層122としてフォトレジストを用いる場合、例えば、フォトレジストを溶解させるが水晶振動素子10の水晶片11や各種電極とは反応しない溶液が適宜選択される。
【0046】
次に、封止層を設ける(封止工程S20)。
図9に示すように、封止層50は、中間層40の全面を覆うように中間層40の外側に設けられ、貫通孔46を塞いで内部空間49及び開口部39を封止する。封止層50は、集合基板130に接触し、ベース配線の一部を覆うように成膜される。封止層50の形成方法は、例えば、PVDやCVDなどから適宜選択される。封止層50の膜厚は、中間層40とともに、ベース基板30の開口部39及び中間層40の内部空間49を維持できる強度を持つように設定する。
なお、水晶振動子1の製造方法は、封止工程S20の前に、中間層40を加熱して貫通孔46を塞ぐ加熱工程をさらに含んでもよい。このような加熱工程は、貫通孔46を完全に塞ぐことに限定されるものではなく、貫通孔46の寸法を縮小させて、その後の封止工程S20を実施し易くするものでもよい。
【0047】
最後に、集合基板を分割し個片化する(分割工程S21)。
集合基板130をスクライブラインに沿って切断し、複数の水晶振動子1に個片化する。集合基板130の切断においては、例えば、レーザーやダイシングソーを用いたダイシング装置が利用される。当該スクライブラインはビアホールVHを横断するように設定され、集合基板130の切断に伴いビア電極VEが分割される。分割されたビア電極VEは、水晶振動子1のキャスタレーション電極を形成する。
【0048】
以上に説明したように、第1実施形態に係る水晶振動子1は、水晶振動素子10の一部と重なる有底の開口部39が形成されたベース基板30と、ベース基板30に接合され少なくとも1つの貫通孔46が形成された中間層40と、中間層40の外側に設けられ貫通孔46を塞いで内部空間49を封止する封止層50とを備えている。また、第1実施形態に係る水晶振動子1の製造方法は、工程S11及び工程S12及び工程S13からなる基板準備工程と、集合基板130の上に第1犠牲層121を設ける犠牲層形成工程S14と、水晶振動素子10の一部を第1犠牲層121に支持させつつ集合基板130に搭載する搭載工程S15と、水晶振動素子10を第2犠牲層122で覆う犠牲層被覆工程S16と、少なくとも1つの貫通孔46が形成された中間層40によって第2犠牲層122を覆う工程S17及び工程S18からなる中間層形成工程と、貫通孔466を通して第1犠牲層121及び第2犠牲層122を除去する空間形成工程S19と、貫通孔46を封止層50で塞いで内部空間49を封止する封止工程S20と、集合基板130を分割してキャスタレーション電極を形成する分割工程S21とを備えている。
これによれば、ウェハレベルで作成することによって、低コストで小型の電子装置を提供できる。また、機械振動部を囲むように電子部品の端部の全周をベース基板や蓋部材などで固定された電子装置に比べて、機械振動部への応力の伝達が低減できる。したがって、本実施形態によれば、応力による周波数変動が小さく小型化可能な電子装置及びその製造方法が提供できる。また、電子部品をベース基板に搭載する際、導電性接着剤が硬化するまで第1犠牲層によって電子部品の一部を支持することで、電子部品の実装姿勢が安定化し、電子部品とベース基板との物理的な干渉が防止できる。
【0049】
以下に、本発明の他の実施形態に係る応力センサの構成について説明する。なお、下記の実施形態では、上記の第1実施形態と共通の事柄については記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については逐次言及しない。
【0050】
<第2実施形態>
図11を参照しつつ、第2実施形態に係る水晶振動子2の構成について説明する。図11は、第2実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
【0051】
第2実施形態における第1実施形態との相違点は、ベース基板230の基体231に開口部が形成されておらず、平面状の上面231Aに水晶振動素子210が搭載されている点である。水晶振動素子210は、第1導電性保持部材236aを起点に、周辺部219が周辺部218よりもベース基板230から離れるように、傾いて搭載されている。このような水晶振動子1は、例えば、周辺部219を第1犠牲層に支持させつつ水晶振動素子210をベース基板230に搭載することで実現される。なお、中間層240に貫通孔246が形成され、封止層250が貫通孔246を塞いでいる点については、第1実施形態と同様である。
本実施形態によれば、ベース基板に対して電子部品を任意の角度で保持させることができる。また、製造工程において、電子部品の先端を第1犠牲層によって支持させることで、電子部品の搭載角度の微調整が容易となる。また、これらの効果は、ベース基板の搭載面が平面状であっても、得ることができる。
【0052】
<第3実施形態>
図12を参照しつつ、第2実施形態に係る水晶振動子3の構成について説明する。図12は、第3実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
【0053】
第3実施形態における第1実施形態との相違点は、水晶振動素子310が周辺部318と周辺部319とによってベース基板330に接合される、いわゆる両持ち構造の点である。周辺部318は第1導電性保持部材336aによってベース基板330に接合され、周辺部319は第2導電性保持部材336bによってベース基板330に接合されている。なお、基体331の上面331A側に開口部339が形成され、中間層340に貫通孔346が形成され、封止層350が貫通孔346を塞いでいる点については、第1実施形態と同様である。
このような実施形態においても、応力による周波数変動が小さく小型化可能な電子装置及びその製造方法が提供でき、また、電子部品の実装姿勢を安定化できる。
【0054】
<第4実施形態>
図13を参照しつつ、第4実施形態に係る水晶振動子4の構成について説明する。図13は、第4実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
【0055】
第4実施形態における第1実施形態との相違点は、ベース基板430の基体431に貫通電極435aが形成されており、ベース基板430の端面にキャスタレーション電極が設けられていない点である。貫通電極435aは、基体431を貫通し、ベース基板430の上面431A側の電極パッド433aと下面431B側の外部電極とを電気的に接続している。ベース基板430の上面431Aを平面視したとき、貫通電極435aは、中間層440と重なっている。なお、基体431の上面431A側に開口部439が形成され、中間層440に貫通孔446が形成され、封止層450が貫通孔446を塞いでいる点については、第1実施形態と同様である。
本実施形態においても、上記したのと同様の効果を得ることができる。
【0056】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記し、その効果について説明する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0057】
本発明の一態様によれば、機械振動部を有する電子部品と、電子部品が搭載されたベース基板と、ベース基板との間に電子部品を収容する内部空間を形成し、内部空間を外部に開口する少なくとも1つの貫通孔が形成された中間層と、中間層の外側に設けられ、少なくとも1つの貫通孔を塞いで内部空間を封止する封止層と、を備え、ベース基板における電子部品が搭載された搭載面には、電子部品の一部と重なる有底の開口部が形成された、電子装置が提供される。
これによれば、ウェハレベルで作成することによって、低コストで小型の電子装置を提供できる。また、機械振動部を囲むように電子部品の端部の全周をベース基板や蓋部材などで固定された電子装置に比べて、機械振動部への応力の伝達が低減できる。したがって、本実施形態によれば、応力による周波数変動が小さく小型化可能な電子装置及びその製造方法が提供できる。また、電子部品をベース基板に搭載する際、導電性接着剤が硬化するまで第1犠牲層によって電子部品の一部を支持することで、電子部品の実装姿勢が安定化し、電子部品とベース基板との物理的な干渉が防止できる。
【0058】
一態様として、ベース基板は、搭載面に設けられ電子部品が接合された電極パッドと、端面に設けられたキャスタレーション電極と、電極パッドとキャスタレーション電極とを電気的に接続するベース配線と、を有する。
これによれば、封止された内部空間に通じる貫通電極を備えた電子装置に比べて、貫通電極と基体との隙間を通したリークが無いため、高い封止性が得られる。また、貫通電極の形成が省略できるため、製造が容易になる。
【0059】
一態様として、封止層は、ベース基板に接合され、ベース配線の一部を覆っている。
これによれば、ベース配線と周囲との間隙を通したリークが低減できるため、高い封止性が得られる。
【0060】
一態様として、ベース基板の搭載面を平面視したとき、少なくとも1つの貫通孔は、開口部と重なる領域に形成されている。
これによれば、第1犠牲層及び第2犠牲層を効率的に除去することができる。
【0061】
一態様として、ベース基板の搭載面を平面視したとき、少なくとも1つの貫通孔は、電子部品の機械振動部と重なる領域の外側に形成されている。
これによれば、封止層を形成する際、封止層の材料の機械振動部への付着を抑制し、機械振動部の周波数の変化を抑制できる。
【0062】
一態様として、電子部品は、水晶振動素子である。
【0063】
本発明の他の一態様によれば、集合基板を準備する基板準備工程と、集合基板の上に第1犠牲層を設ける犠牲層形成工程と、機械振動部を有する電子部品の一部を第1犠牲層に支持させつつ集合基板に電子部品を搭載する搭載工程と、第2犠牲層によって電子部品を覆う犠牲層被覆工程と、第2犠牲層の側をその反対側へと開口する少なくとも1つの貫通孔が形成された中間層によって第2犠牲層を覆う中間層形成工程と、少なくとも1つの貫通孔を通して第1犠牲層及び第2犠牲層を除去し、集合基板と中間層との間に内部空間を形成する空間形成工程と、中間層の外側に設けた封止層によって少なくとも1つの貫通孔を塞いで内部空間を封止する封止工程と、を備える、電子装置の製造方法が提供される。 これによれば、ウェハレベルで作成することによって、低コストで小型の電子装置を提供できる。また、機械振動部を囲むように電子部品の端部の全周をベース基板や蓋部材などで固定された電子装置に比べて、機械振動部への応力の伝達が低減できる。したがって、本実施形態によれば、応力による周波数変動が小さく小型化可能な電子装置及びその製造方法が提供できる。また、電子部品をベース基板に搭載する際、導電性接着剤が硬化するまで第1犠牲層によって電子部品の一部を支持することで、電子部品の実装姿勢が安定化し、電子部品とベース基板との物理的な干渉が防止できる。
【0064】
一態様として、集合基板における電子部品が搭載される搭載面には、電子部品の一部と重なる有底の開口部が形成され、第1犠牲層は、開口部の中に設けられる。
これによれば、電子部品とベース基板との間の距離を縮めることができ、電子装置を低背化できる。
【0065】
一態様として、基板準備工程は、母基体を準備する工程と、母基体を貫通するビアホールを形成する工程と、ビアホールの内側面を覆うビア電極を設ける工程と、を含み、電子装置の製造方法は、封止層を設けた後に、集合基板を個片化して、分割されたビア電極によってベース基板の端面のキャスタレーション電極を形成する分割工程をさらに備える。 これによれば、封止された内部空間に通じる貫通電極を設ける電子装置の製造方法に比べて、貫通電極と基体との隙間を通したリークが無いため、封止性の高い電子装置が製造できる。また、貫通電極の形成が省略できるため、電子装置の製造が容易になる。
【0066】
一態様として、集合基板には、電子部品と電気的に接続される電極パッドと、ビア電極とを電気的に接続するベース配線とが設けられ、封止層は、集合基板に接合され、ベース配線の一部を覆う。
これによれば、ベース配線と周囲との間隙を通したリークが低減できるため、封止性の高い電子装置が製造できる。
【0067】
一態様として、電子部品は、水晶振動素子である。
【0068】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、応力による周波数変動が小さく小型化可能な電子装置及びその製造方法が提供できる。
【0069】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。例えば、本発明の振動素子および振動子は、タイミングデバイスまたは荷重センサに用いることができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0070】
1…水晶振動子
10…水晶振動素子
11…水晶片
11A…上面
11B…下面
14a,14b…励振電極
15a,15b…引出電極
16a,16b…接続電極
17…励振部
18,19…周辺部
30…ベース基板
31…基体
31A…上面
31B…下面
33a,33b…電極パッド
34a,34b…ベース配線
35a~35d…キャスタレーション電極
36a,36b…導電性保持部材
39…開口部
40…中間層
46…貫通孔
49…内部空間
50…封止層
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
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図12
図13