(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】多層拘束層ダンピング
(51)【国際特許分類】
B32B 7/022 20190101AFI20221020BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20221020BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B7/027
F16F15/02 Q
(21)【出願番号】P 2020551428
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(86)【国際出願番号】 US2018023119
(87)【国際公開番号】W WO2019182553
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】514100751
【氏名又は名称】アベリー・デニソン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】AVERY DENNISON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガネサン,マヘッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ミリマン,ヘンリー・ダブリュ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-084329(JP,A)
【文献】特開昭51-093770(JP,A)
【文献】特開昭51-106190(JP,A)
【文献】特開2011-089547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0183821(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0309260(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1693350(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 7/00- 7/50
G10K 11/00-13/00
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガラス転移温度及び第1のダンピング層の厚さ(H
1)を有する第1のダンピング層と、
第2のガラス転移温度及び第2のダンピング層の厚さ(H
2)を有する第2のダンピング層と、
少なくとも一部が第1のダンピング層と第2のダンピング層との間に配置される内部拘束層と、
外部拘束層と、を含む多層ダンピングラミネートであって、
前記第2のダンピング層の少なくとも一部は、前記内部拘束層と前記外部拘束層との間に配置され、前記ラミネートのダンピング層は、第1のダンピング層から始まって減少するガラス転移温度プロファイルを有し、200Hzでの前記多層ダンピングラミネートの複合損失係数は0.
05を超え、
前記第1のダンピング層は、第1のプラトーモジュラスを有し、前記第2のダンピング層は、第2のプラトーモジュラスを有し、且つラミネートのこれらのダンピング層は、第1のダンピング層から始まって増加するプラトーモジュラスプロファイルを有する、多層ダンピングラミネート。
【請求項2】
前記複合損失係数が0.1を超える、請求項1に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項3】
前記複合損失係数が、少なくとも30℃の温度範囲にわたって0.05を超える、請求項1に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項4】
前記第1のガラス転移温度と前記第2のガラス転移温度との差が、(-3(H
1/H
2)
2+15)℃~(15(H
1/H
2)
2+20)℃の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項5】
前記第1のガラス転移温度が、前記第2のガラス転移温度よりも少なくとも5℃高い、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項6】
前記第1のガラス転移温度と前記第2のガラス転移温度との差が、5℃~35℃の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項7】
前記第1のガラス転移温度が、-60℃~100℃の範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項8】
前記第2のガラス転移温度が、-60℃~100℃の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項9】
前記第1のプラトーモジュラスに対する前記第2のプラトーモジュラスの割合が、1~(10(H
1/H
2)
1.25+10)の範囲である、請求項
1に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項10】
前記第1のダンピング層の第1の粘弾性損失係数は、((10
-10/H
1
2.5)+0.25)を超え、前記第2のダンピング層の第2の粘弾性損失係数は、((10
-10/H
2
2.5)+0.25)を超え、ここで、H
1及びH
2は、それぞれメートル単位である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項11】
前記第1のガラス転移温度と前記第2のガラス転移温度との差が20℃未満の場合、前記第1の粘弾性損失係数と前記第2の粘弾性損失係数との差は0.2~1.5の範囲であり、前記第1のガラス転移温度と前記第2のガラス転移温度との差が20℃を超える場合、前記第1の粘弾性損失係数と前記第2の粘弾性損失係数との差は0.2~3の範囲である、請求項1
0に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項12】
前記第1のダンピング層は、第1の粘弾性ダンピング材料を含み、前記第2のダンピング層は、第2の粘弾性ダンピング材料を含む、請求項1~1
1のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項13】
前記第1の粘弾性ダンピング材料及び前記第2の粘弾性ダンピング材料のうちの少なくとも1つは、接着剤を含む、請求項1
2に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項14】
前記接着剤は感圧接着剤である、請求項1
3に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項15】
前記内部拘束層及び前記外部拘束層は、それぞれ独立して金属を含む、請求項1~1
4のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項16】
前記内部拘束層及び前記外部拘束層は、それぞれ独立して金属箔である、請求項1~1
5のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項17】
前記第1のダンピング層の厚さが、0.1mil~200milの範囲である、請求項1~1
6のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項18】
前記第2のダンピング層の厚さが、0.1mil~200milの範囲である、請求項1~1
7のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項19】
前記内部拘束層及び前記外部拘束層は、それぞれ独立して0.2mil~120milの範囲の厚さを有する、請求項1~1
8のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項20】
前記内部拘束層及び前記外部拘束層は、それぞれ独立して2mil~50milの範囲の厚さを有する、請求項1~
19のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項21】
前記第2のダンピング層と反対側の前記第1のダンピング層と接触したライナー層をさらに含む、請求項1~2
0のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネート。
【請求項22】
N個のダンピング層と、N-1個の内部拘束層と、外部拘束層と、を含む多層ダンピングラミネートであって、
前記N個のダンピング層において、Nは2以上の整数であり、それぞれのダンピング層の少なくとも一部は、他のダンピング層と共存し、それぞれのダンピング層は、独立してガラス転移温度(T
g)を有し、ここで、T
g(N)<T
g(N-1)<T
g(N-2)<・・・<T
g(1)であり、
前記N-1個の内部拘束層において、それぞれのM番目の内部拘束層の少なくとも一部は、M番目のダンピング層と(M+1)番目のダンピング層との間に配置され、ここで、Mは1~N-1の範囲の整数であり、
前記外部拘束層において、N番目のダンピング層の少なくとも一部は、(N-1)番目の拘束層と外部拘束層との間に配置され、
前記ダンピング層は、それぞれ独立してプラトーモジュラス(G
o
)を有し、ここで、G
o
(N)>G
o
(N-1)>G
o
(N-2)>・・・>G
o
(1)である、多層ダンピングラミネート。
【請求項23】
ベース基板と、
請求項1~2
2のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネートと、を含むシステムであって、
前記第1のダンピング層がベース基板と接触しているシステム。
【請求項24】
振動を受けるベース基板を提供するステップと、
請求項1~2
2のいずれか一項に記載の多層ダンピングラミネートの第1のダンピング層が前記ベース基板と接触することにより、基本構造の振動を低減させるステップと、を含む、基本構造の振動を低減させる方法。
【請求項25】
目的の周波数で測定した時に、前記多層ダンピングラミネートの温度が、第1のガラス転移温度から第2のガラス転移温度へ変化するにつれて、最大せん断変形の位置を第1のダンピング層から第2のダンピング層に移動させるステップをさらに含む、請求項2
4に記載の方法。
【請求項26】
前記基本構造の振動は、温度及び周波数の連続した範囲にわたって散逸される、請求項2
4又は2
5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、振動を散逸させるための多層ダンピングラミネートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車市場、家電製品市場及び電子市場などの多数の市場において、好ましくない振動及び関連する騒音の発生低減に対する要求がある。例えば、自動車産業は、軽量車両の採用が増加する傾向にある。そのため、軽量アルミニウム及びポリマー材料の使用が増加している。しかし、このような設計及び材料を使用すると、車両の振動及び振動関連の騒音に関する問題がさらに発生する。
【0003】
一般に、騒音及び振動の問題は、振動に対する抵抗力を高めるための構造形状の強化、及び振動振幅を減少させるための構造体のダンピングという2つのアプローチにより管理されている。これらの解決策と共に、アコースティック技術を用いて、例えば、自動車のキャビンの乗客に到達する前に音波をその供給源から吸収、反射及び分離することができる。
【0004】
構造的なダンピングのアプローチは、強化又は拘束キャリア材料及びダンピング材料を含むダンピングテープ又はラミネートの適用を含むことができる。振動を散逸させる上でダンピングテープの効果は散逸する振動の周波数とダンピングテープ材料の温度の両方によって変わり得る。特に、従来のダンピングテープは、ダンピングする構造体の全ての標準動作温度を含まなくてもよい、比較的狭い温度範囲にわたってのみ振動ダンピングを提供する。その結果、より広い温度範囲にわたり振動を効果的かつ効率的にダンピング又は減少させるラミネートをダンピングさせる必要性が残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態において、本発明は、約200Hzにおける複合損失係数が約0.05を超える多層ダンピングラミネートに関する。多数の実施形態において、多層ダンピングラミネートの複合損失係数は、少なくとも約30℃の温度範囲にわたって約0.05を超える。前記多層ダンピングラミネートは、第1のダンピング層と、外部拘束層と、第2のダンピング層と、を含み、ここで、前記第2のダンピング層の少なくとも一部は、第1のダンピング層と外部拘束層との間に配置される。また、前記多層ダンピングラミネートは内部拘束層を含み、そのうちの少なくとも一部は、第1のダンピング層と第2のダンピング層との間に配置される。多数の実施形態において、前記第1のダンピング層は、第1の接着剤を含み、前記第2のダンピング層は、第2の接着剤を含む。一部の実施形態において、第1のダンピング層は、第1の粘弾性ダンピング材料を含み、第2のダンピング層は、第2の粘弾性ダンピング材料を含む。多数の実施形態において、第1のダンピング層は接着剤を含み、第2のダンピング層も接着剤を含む。多数の実施形態において、前記第1のダンピング層は感圧接着剤を含む。多数の実施形態において、第2のダンピング層も感圧接着剤を含む。多数の実施形態において、内部拘束層及び外部拘束層は、それぞれ独立して金属を含む。一部の実施形態において、前記内部拘束層及び外部拘束層は、それぞれ独立して金属箔である。前記ラミネートのダンピング層は、第1のダンピング層から始まって減少するガラス転移温度のプロファイルを有し得る。多数の実施形態において、前記第1のダンピング層のガラス転移温度、即ち、第1のガラス転移温度は、第2のダンピング層のガラス転移温度、即ち、第2のガラス転移温度よりも少なくとも5℃高い。一部の実施形態において、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差は約5℃~約35℃の範囲である。一部の実施形態において、第1及び第2のガラス転移温度は、それぞれ独立して約-60℃~約100℃の範囲である。一部の実施形態において、前記ラミネートのダンピング層は、第1のダンピング層から始まって増加するプラトーモジュラスプロファイル(plateau modulus profile)を有し得る。多数の実施形態において、前記ラミネートのダンピング層は、それぞれ粘弾性損失係数を有し、ここで、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が約20℃未満の場合、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数との差は約0.2~約1.5の範囲であり、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が約20℃を超える場合には、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数との差は約0.2~約3.0の範囲である。一部の実施形態において、前記ラミネートのダンピング層は、それぞれ粘弾性損失係数を有し、ここで、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が約20℃未満の場合、第1の粘弾性損失係数の最大値と第2の粘弾性損失係数の最大値との差は約0.2~約1.5の範囲であり、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が約20℃を超える場合には、第1の粘弾性損失係数の最大値と第2の粘弾性損失係数の最大値との差は約0.2~約3.0の範囲である。多数の実施形態において、前記第1のダンピング層及び前記第2のダンピング層は、それぞれ独立して約0.1mil~約200milの範囲の厚さを有する。一部の実施形態において、内部拘束層及び外部拘束層は、それぞれ独立して約0.2mil~約120milの範囲の厚さを有する。一部の実施形態において、多層ダンピングラミネートは、第2のダンピング層と反対側の第1のダンピング層と接触したライナー層をさらに含む。
【0006】
他の実施形態において、本発明は、N個のダンピング層と、N-1個の内部拘束層と、外部拘束層と、を含む多層ダンピングラミネートに関し、ここで、Nは、約2以上の整数である。各ダンピング層の少なくとも一部は、他のダンピング層と共存する。各M番目の内部拘束層の少なくとも一部は、M番目のダンピング層と(M+1)番目のダンピング層との間に配置され、ここで、Mは1~N-1の範囲の整数である。N番目のダンピング層の少なくとも一部は、(N-1)番目の拘束層と外部拘束層との間に配置される。前記ラミネートのダンピング層は、それぞれ独立してガラス転移温度Tgを有し、ここで、Tg(N)<Tg(N-1)<Tg(N-2)<・・・<Tg(1)である。多数の実施形態において、前記ラミネートのダンピング層は、それぞれ独立してプラトーモジュラス(Go)を有し、ここで、Go(N)>Go(N-1)>Go(N-2)>・・・>Go(1)である。
【0007】
他の実施形態において、本発明は、上述のような多層ダンピングラミネートを含むシステムに関する。前記システムは、多層ダンピングラミネートの第1のダンピング層に接触するベース基板をさらに含む。
【0008】
他の実施形態において、本発明は、ベース基板の振動を減少させる方法に関する。前記方法は、振動を受けるベース基板を提供するステップを含む。前記方法は、提供された多層ダンピングラミネートの第1のダンピング層にベース基板を接触させるステップをさらに含む。一部の実施形態において、前記方法は、目的の周波数で測定した時に、多層ダンピングラミネートの適用温度が第1のガラス転移温度から第2のガラス転移温度へ変化するにつれて、最大せん断変形の位置を第1のダンピング層から第2のダンピング層に移動させるステップをさらに含む。多数の実施形態において、基本構造の振動は、温度及び周波数の連続した範囲にわたって散逸する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、一般に、振動を受ける構造体に貼り付けられた場合、様々な温度及び周波数にわたって振動を効果的に散逸させることのできる好適な多層ダンピングラミネートに関する。例えば、これらの振動は構造体の安定性を低下させ、疲労及びストレスを増加させ、動作の寿命を短縮し、騒音の発生又は車両の乗客の不快感など、好ましくない振動による副作用を促進し得るため、構造体の好ましくない振動を減少させる上でダンピングラミネートが有益である。
【0010】
通常、振動の発生及び強度を減少させるため、これらの振動構造体にダンピング処理が適用される。一部のダンピング処理は、強化要素とダンピング要素のレイヤード構成を含む拘束層ダンピング(CLD)の構造を採用する。これらのCLD処理は、ダンピング要素の材料の選択によってある程度定められる特定の温度で特定の振動周波数を緩和するのに効果的であり得る。その結果、従来のCLD処理の効果的な温度範囲は相対的に制限され得る。各処理において異なる粘弾性ダンピング材料を使用する多数のCLD処理のレイヤード積層は、ダンピングの温度範囲を拡張するために使用できることが知られている。しかし、このような方法でダンピング温度を拡張させると、ピークのダンピング性能に不利な好ましくない減少を引き起こす。また、ダンピングの幅を増加させるためのCLD処理のこのような積層は、処理生成物の質量を増加させ、これもまた好ましくない。
【0011】
本明細書において、改善されたダンピング効率により幅広い温度でダンピングを可能にする、特定のレオロジー特性を有するダンピング材料を使用した多層CLD処理の構成を開示している。確認されたレオロジー特性は、特定の設計基準による積層構成で配置できる粘弾性材料を選択するために使用できるパラメータを提供する。これは、異なるレオロジー特性を有する差別化されたダンピング層を有する新たな多層ダンピングラミネートの構成を可能にする。これらの新たなラミネートは、ピークダンピングで減少がある場合でも最小であり、処理重量での追加も殆どない幅広い温度ダンピングを有益に示す。
【0012】
ダンピングラミネート及びその構成要素のダンピング層のダンピング性能は、それぞれの損失係数で説明することができる。ダンピング材料又はダンピング層の粘弾性損失係数であるtan(δ)は、振動エネルギーを熱エネルギーに変換する能力の尺度である。通常、高度にダンピングされることにより選択されたそれぞれのダンピング層のダンピング材料又は組成物は、約0.5以上の粘弾性損失係数を有することができる。レイヤードの構成において、複合損失係数(CLF:Composite Loss Factor)ともいう構成全体の総損失係数は、一般に0.05以上の値で効果的であるとみなされる。前記複合損失係数は、振動周波数及び温度により変わり、所定の周波数に対して、複合損失係数に対する温度の曲線をプロットすることができる。この曲線の最大CLF値はピークダンピング値といい、CLFが約0.05を超える曲線部分の横軸幅はダンピング温度の範囲という。所定の振動周波数における特定のダンピング処理のダンピング効率は、以下の式で算出できる。
【0013】
【0014】
ここで、ξはダンピング効率であり、Wはダンピング温度の範囲(℃)であり、Mはピークのダンピング値であり、ρAは、線形密度(kg/m)である。
【0015】
前記粘弾性ダンピング材料が接着剤である振動基板にダンピング材料として粘弾性ダンピング材料を使用するCLD処理が適用される場合、基板からの振動は、基板と接触する接着剤に伝達される。前記接着剤のガラス転移レジーム(regime)近傍において、基板、接着剤及び拘束層が結合され、3つ全てが同じ波長で振動すると仮定すると、前記振動は、接着剤ポリマー鎖の分子運動により熱エネルギーとして損失し、それにより、エネルギー損失が生じ、その結果、振動の振幅がダンピングする。
【0016】
従って、かかる構成では、振動ダンピングは、接着剤のガラス転移温度に近い温度でのみ最大となる。これは、ダンピング材料のガラス転移温度付近に狭く位置した複合損失係数曲線のダンピング温度の範囲、及び前記ダンピング温度の範囲が狭くなるにつれてダンピング効率の低下を招く。
【0017】
その結果、多層ダンピングラミネートが、温度が互いに異なるガラス転移温度に近づくにつれて最大せん断変形を順次示すダンピング層を交互に含むことによって、より広いダンピング温度の範囲にわたり振動エネルギーを散逸させることができる。このようにして、例えば、ダンピングラミネートの温度がそれぞれの連続する接着剤層のガラス転移温度に近づくにつれて、接着剤の交互の層が振動エネルギーを順に吸収することができる。温度及び周波数の範囲に対する振動エネルギーの順次の散逸と共に複数の拘束層の存在は、より高いダンピングの大きさとより幅広い温度及び周波数領域にわたるダンピングの両方が可能となる。前記式を参照すると、これら多層ラミネートの構成は、同じ材料の線密度(ρA)に対してピークダンピング(M)の損失が殆ど、又はまったくなく、より高い値のダンピング温度の範囲(W)を提供することができ、ダンピング効率(ξ)が改善される。
【0018】
ダンピング層
一実施形態において、多層ダンピングラミネートが開示される。前記ラミネートは、第1のガラス転移温度を有する第1のダンピング層と、第2のガラス転移温度を有する第2のダンピング層と、を含む。前記ラミネートのダンピング層は、例えば、第1のダンピング層のガラス転移温度(第1のガラス転移温度)が第2のダンピング層のガラス転移温度(第2のガラス転移温度)を超える、第1のダンピング層から始まって減少するガラス転移温度のプロファイルを有する。第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差は、例えば、約5℃~約35℃、例えば、約5℃~約30℃、約5℃~約20℃、約7.5℃~約22.5℃、約10℃~約25℃、約12.5℃~約27.5℃、又は約15℃~約30℃の範囲であり得る。上限については、第1及び第2のガラス転移温度の差は約35℃未満、例えば、約30.0℃未満、約27.5℃未満、約25.0℃未満、約22.5℃未満、約20.0℃未満、約17.5 °未満、約15.0℃未満、約12.5℃未満、約10.0℃未満、又は約7.5℃未満であり得る。下限については、第1及び第2のガラス転移温度の差は約5℃超、例えば、約7.5℃超、約10.0℃超、約12.5℃超、約15.0℃超、約17.5℃超、約20.0℃超、約22.5℃超、約25℃超、又は約27.5℃超であり得る。約35.0℃超などのさらに大きな温度差、及び約5.0℃未満などのさらに小さな温度差も考慮される。
【0019】
多層ダンピングラミネートの複合損失係数は、ASTM E 756‐98「材料の振動ダンピング特性を測定するための標準試験方法」(2018)に記載のように特定することができる。前記多層ダンピングラミネートは、200Hzでの複合損失係数が約0.05超、例えば、約0.06超、約0.07超、約0.08超、約0.09超、約0.10超、約0.20超、約0.30超、約0.40超、又は約0.50超であり得る。200Hzでの多層ダンピングラミネートの複合損失係数は、少なくとも約20℃、例えば、少なくとも約22℃、少なくとも約24℃、少なくとも約26℃、少なくとも約28℃、少なくとも約30℃、少なくとも約32℃、少なくとも約34℃、少なくとも約35℃、少なくとも約36℃、少なくとも約38℃、又は少なくとも約40℃の温度範囲にわたって約0.05超であり得る。一部の実施形態において、異なる第1及び第2のダンピング層組成物を有する提供されたラミネートは、両ダンピング層が同じ組成物を有する、例えば、両方の層が第1のダンピング層の組成物を有する、又は両方の層が第2のダンピング層の組成物を有する、同じラミネートのダンピング温度の範囲よりも少なくとも5℃高いダンピング温度の範囲にわたって好適な複合損失係数を有する。
【0020】
特定の場合において、設計上のさらなる制約なく、第1のダンピング材料が、200Hzでのピークダンピングが0℃以上で発生する「高温」ダンピング材料として選択され、第2のダンピング材料が、200Hzでのピークダンピングが0℃以下で発生する「低温」ダンピング材料として選択される場合、得られる複合損失係数曲線は、複合損失係数が0.05未満に下がる極小値を含み得る。一部の実施形態において、このようなダンピングの崩壊を回避するために、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差は、第1のダンピング層及び第2のダンピング層の厚さに基づいて、ある程度選択される。第1のダンピング層は、第1のダンピング層の厚さ(H1)を有することができ、第2のダンピング層は、第2のダンピング層の厚さ(H2)を有することができる。第1のガラス転移温度であるTg(1)と第2のガラス転移温度であるTg(2)との間の最小ガラス転移温度差(ΔTg,min)及び最大ガラス転移温度差(ΔTg,max)は、例えば、以下の式を用いて選択できる。
【0021】
【0022】
第1のダンピング層の厚さ及び第2のダンピング層の厚さは、例えば、それぞれ独立して、約0.1mil~約200mil、例えば、0.1mil~10mil、0.2mil~20mil、0.5mil~40mil、1mil~90mil、又は2mil~200milの範囲であり得る。上限については、第1及び第2のダンピング層の厚さは、それぞれ独立して、200mil未満、例えば、90mil未満、40mil未満、20mil未満、10mil未満、5mil未満、2mil未満、1mil未満、0.5mil未満、又は0.2mil未満であり得る。下限については、第1及び第2のダンピング層の厚さは、それぞれ独立して、0.1mil超、例えば、0.2mil超、0.5mil超、1mil超、2mil超、5mil超、10mil超、20mil超、40mil超、又は90mil超であり得る。200mil超などのさらに厚いもの及び0.1mil未満などのさらに薄いものも考慮される。
【0023】
場合によっては、第1のガラス転移温度及び第2のガラス転移温度は、例えば、それぞれ独立して、約-60℃~約100℃、例えば、-60℃~36℃、-44℃~52℃ 、-28℃~68℃、-12℃~84℃又は4℃~100℃の範囲であり得る。上限については、第1及び第2のガラス転移温度は、それぞれ独立して100℃未満、例えば、84℃未満、68℃未満、52℃未満、36℃未満、20℃未満、4℃未満、-12℃未満、-28℃未満又は-44℃未満であり得る。下限については、第1及び第2のガラス転移温度は、それぞれ独立して、-60℃超であり得る、例えば、-44℃超、-28℃超、-12℃超、4℃超、20℃超、36℃超、52℃超、68℃超、又は84℃超であり得る。100℃超などのさらに高いガラス転移温度、及び-60℃未満などのさらに低いガラス転移温度も考慮される。本明細書に記載のガラス転移温度は、線形粘弾性レジームにおいて、例えば、秒当たり10ラジアン及び0.1%の変形で、動的機械的分析によって測定することができる。
【0024】
多層ダンピングラミネートの第1及び第2のダンピング層の関係は、それぞれのプラトーモジュラスの側面からも特徴付けることができる。材料のプラトーモジュラスは、ゴムの振動反応レジームにおける材料の特徴的な弾性貯蔵係数を測定する単位である。第1及び第2のダンピング層の組成物は、温度がそれぞれのガラス転移温度に近づくにつれ、第1のダンピング層の第1のプラトーモジュラス及び第2のダンピング層の第2のプラトーモジュラスが、第1のダンピング層から第2のダンピング層へのせん断変形の順次転移を改善するように選択できる。場合によっては、前記ラミネートのダンピング層は、例えば、第2のプラトーモジュラスが第1のプラトーモジュラスを超える第1のダンピング層から始まって増加するプラトーモジュラスプロファイルを有することができる。第1のプラトーモジュラスに対する第2のプラトーモジュラスの割合は、即ち、約1~約200、例えば、1~20、2~40、3~70、5~100、又は8~200の範囲であり得る。上限については、第1のプラトーモジュラスに対する第2のプラトーモジュラスの割合は200未満、例えば、100未満、70未満、40未満、20未満、10未満、8未満、5未満、3未満、又は2未満であり得る。下限については、第1のプラトーモジュラスに対する第2のプラトーモジュラスの割合は、1超、例えば、2超、3超、5超、8超、10超、20超、40超、70超、又は100超であり得る。200超などのさらに大きな割合も考慮される。
【0025】
また、第1及び第2のダンピング層の材料は、第1のプラトーモジュラス及び第2のプラトーモジュラスの差が、第1のダンピング層及び第2のダンピング層の厚さにある程度基づくように選択できる。一部の実施形態において、第1のプラトーモジュラス(Go,1)に対する第2のプラトーモジュラス(Go,2)の最小比は1に近接し、第1のプラトーモジュラスに対する第2のプラトーモジュラスの最大比は、以下の式を用いて選択し得る。
【0026】
【0027】
また、前記多層ダンピングラミネートの第1及び第2のダンピング層の関係は、それぞれの粘弾性損失係数の観点から特徴付けることができる。多数の実施形態において、前記ラミネートのダンピング層は、それぞれ粘弾性損失係数を有することができ、ここで、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が約20℃未満の場合、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数との差は約0.2~約1.5の範囲であり、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が約20℃を超える場合には、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数との差は約0.2~約3.0の範囲である。一部の実施形態において、前記ラミネートのダンピング層は、それぞれ粘弾性損失係数を有することができ、ここで、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が約20℃未満の場合、第1の粘弾性損失係数の最大値と第2の粘弾性損失係数の最大値との差は約0.2~約1.5の範囲であり、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が約20℃を超える場合には、第1の粘弾性損失係数の最大値と第2の粘弾性損失係数の最大値との差は約0.2~約3.0の範囲である。第1及び第2のダンピング層の組成物は、第1のダンピング層の第1の粘弾性損失係数及び第2のダンピング層の第2の粘弾性損失係数が、各層を約0.05を超える複合損失係数全体の生成に寄与するように選択できる。場合によっては、最小の第1の粘弾性損失係数(tan(δ)1,min)及び最小の第2の粘弾性損失係数(tan(δ)2,min)は、以下の式によって、所望の動作温度又は周波数の範囲のスケールに対するダンピング層の厚さと関連するように、第1及び第2のダンピング層が構成される。
【0028】
【0029】
ここで、H1及びH2は、それぞれメートル単位である。
また、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数の差が第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差と関連するように、第1及び第2のダンピング層が構成され得る。例えば、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差(又は絶対差)が約20℃未満の場合、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数との差(又は絶対差)は約0.2~約1.5、例えば、0.20~0.98、0.33~1.11、0.46~1.24、0.59~1.37、又は0.72~1.50の範囲であり得る。上限については、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が20℃未満の場合、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数との差は1.50未満、例えば、1.37未満、1.24未満、1.11未満、0.98未満、0.85未満、0.72未満、0.59未満、0.46未満、又は0.33未満であり得る。下限については、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が約20℃未満の場合、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数との差は約0.20超、例えば、0.33超、0.46超、0.59超、0.72超、0.85超、0.98超、1.11超、1.24超、又は1.37超であり得る。
【0030】
他の実施例として、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が約20℃を超える場合、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数との差(又は絶対差)は約0.2~約3.0、例えば、0.20~1.88、0.48~2.16、0.76~2.44、1.04~2.72、又は1.32~3.00の範囲であり得る。上限については、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が約20℃を超える場合には、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数との差は約3.0未満、例えば、2.72未満、2.44未満、2.16未満、1.88未満、1.60未満、1.32未満、1.04未満、0.76未満、又は0.48未満であり得る。下限については、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が約20℃を超える場合、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数との差は約0.2超、例えば、0.48超、0.76超、1.04超、1.32超、1.6超、1.88超、2.16超、2.44超、又は2.72超であり得る。
【0031】
それぞれのダンピング層の組成物は、弾性、非弾性、粘性及び/又は粘弾性材料を含むことができる。例えば、前記ダンピング材料は、圧縮性であり得、復元力を含むことができる。一態様において、前記ダンピング材料は、ゴム、プラスチック、例えば、ナイロン、革、織物、フォーム、スポンジ、ゲルなどを含むことができる。前記ダンピング層は、複合設計であり得る。一部の実施形態において、それぞれのダンピング層は、1つ以上の粘弾性ダンピング材料を含む。一部の実施形態において、第1のダンピング層は、第1の粘弾性ダンピング材料を含み、第2のダンピング層は、第2の粘弾性ダンピング材料を含む。多数の実施形態において、第1の粘弾性ダンピング材料を備えた第1のダンピング層は、接着剤を含む。多数の実施形態において、第2の粘弾性ダンピング材料を備えた第2のダンピング層もまた、接着剤を含む。多数の実施形態において、第1のダンピング層及び第2のダンピング層のうち少なくとも1つの接着剤は、感圧接着剤を含む。
【0032】
前記ダンピング材料は、1つ以上のシリコーン接着剤を含むことができる。前記シリコーン接着剤は、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチル/メチルビニルシロキサン、ポリジメチル/メチルフェニルシロキサン、ポリジメチル/ジフェニルシロキサン、及びこれらの混合物などのポリオルガノシロキサン分散液又はゴムを含むことができる。前記シリコーン接着剤は、MQ樹脂又は樹脂の混合物などのシリコーン樹脂を含むことができる。市販のこのようなシリコーン接着剤組成物の非限定的な例としては、Dow Corning(ミシガン州ミッドランド)社製の接着剤7651、7652、7657、Q2‐7406、Q2‐7566、Q2‐7735及び7956、Momentive Performance Materials(ニューヨーク州ウォーターフォード)社製のSILGRIP(商標)PSA518、590、595、610、915、950及び6574、Shin‐Etsu Silicone(オハイオ州アクロン)社製のKRT‐009及びKRT‐026を含む。
【0033】
前記ダンピング材料は、アクリル系又はシリコーン系モノマーを含むことができる。一部の実施形態において、前記ダンピング材料は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、2‐エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸イソノニル、 イソデシルアクリレート、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メチルブチルアクリレート、4‐メチル‐2‐ペンチルアクリレート、メタクリル酸 ブチル、2‐エチルヘキシルメタクリレート、及びイソオクチルメタクリレートからなる群から選択された1つ以上のアクリル系モノマーを含む。有用なアルキルアクリレートエステルは、n‐ブチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレートを含む。一実施形態において、アクリル酸エステルモノマーは、酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソ酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ビニルバーサテート(vinyl versatate)などのビニルエステルの存在下で重合される。前記ビニルエステルは、アクリレート主鎖を形成するモノマーの総重量を基準に最大約35重量%の総量で存在することができる。一実施形態において、アクリル酸エステルモノマーは、不飽和カルボン酸と共重合される。前記不飽和カルボン酸は、特にアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、β‐カルボキシエチルアクリレートなどを含むことができる。
【0034】
一部の実施形態において、前記ダンピング材料は、シロキサン、シラン及びシラトラングリコールからなる群から選択された1つ以上のシリコーン系モノマーを含む。一部の実施形態において、前記ダンピング材料は、1,4‐ビス[ジメチル[2‐(5‐ノルボルネン‐2‐イル)エチル]シリル]ベンゼン、1,3‐ジシクロヘキシル‐1,1,3,3‐テトラキス(ジメチルシリルオキシ)ジシロキサン、1,3‐ジシクロヘキシル‐1,1,3,3‐テトラキス(ジメチルビニルシリルオキシ)ジシロキサン、1,3‐ジシクロヘキシル‐1,1,3,3‐テトラキス[(ノルボルネン‐2‐イル)エチルジメチルシリルオキシ]ジシロキサン、1,3‐ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5‐ヘキサメチル‐1,5‐ビス[2‐(5‐ノルボルネン‐2‐イル)エチル]トリシロキサン、1,1,3,3‐テトラメチル‐1,3‐ビス[2‐(5‐ノルボルネン‐2‐イル)エチル]ジシロキサン、2,4,6,8‐テトラメチル‐2,4,6,8‐テトラビニルシクロテトラシロキサン、N‐ [3‐(トリメトキシシリル)プロピル]‐N’‐(4‐ビニルベンジル)エチレンジアミン、及び3‐[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメートからなる群から選択された1つ以上のシリコーン系モノマーを含む。
【0035】
前記ダンピング材料は、シリコーンポリマー、アクリルポリマー又はメタクリルポリマーを含むことができる。好ましいアクリルポリマーは、Avery Dennison(カリフォルニア州グレンデール)社製のS2000N、S692N、AT20N、XPE 1043及びXPE 1045、並びにBASF(ニューヨーク州フローラムパーク)社製のH9232を含むが、これらに限定されない。一実施形態において、前記アクリルポリマー組成物は、スチレンイソプレン‐スチレン(SIS)、スチレン‐エチレン・ブチレン‐スチレン(SEBS)などのマルチブロックコポリマーなどを含むゴムポリマーと前記ポリマーの乾燥重量で最大30%の量で混合されるが、これらに限定されない。有用なトリブロックの例としては、Kraton Polymer Inc.(テキサス州ヒューストン)の製品がある。マルチブロックポリマーは、アクリル組成物のダンピングピーク及びその他の物理的特性を変更するのに有用であり得る。その他のダンピング材料は、ゴムポリマーを含み得る。好ましいゴムポリマーとしては、エラストマー、ブチルゴム、スチレンブロックコポリマー(例えば、Kraton社製SBCとして公知)、シリコンゴム、ニトリルゴム、イソプレン、ブタジエンを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、ゴムポリマー組成物は、アクリルポリマー及び/又はアクリルポリマーと混合され得る。
【0036】
前記ダンピング材料のポリマーに様々な官能基を取り入れることができる。前記官能基は、例えば、末端セグメントとして、アクリル系モノマー又はシリコン系モノマーで形成されたポリマーに取り入れることができる。代表的な官能基としては、ヒドロキシ、エポキシ、シアノ、イソシアネート、アミノ、アリールオキシ、アリアルコキシ、オキシム、アセト、エポキシエーテル及びビニルエーテル、アルコキシメチロール、環状エーテル、チオール、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アシルホスフィン、チオキサントン及びベンゾフェノン、アセトフェノン、アシルホスフィン及びチオキサントンの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
水素結合能を有する官能基は公知となっており、カルボキシル、アミド、ヒドロキシル、アミノ、ピリジル、オキシ、カルバモイル及びこれらの混合物を含む。一部の実施形態において、前記ダンピング材料のアクリルポリマー主鎖は、極性コモノマーのビニルピロリドン及びアクリル酸を含む。水素結合官能基を有する他のモノマーの例としては、メタクリル酸、ビニルアルコール、カプロラクトン、エチレンオキサイド、エチレングリコール、プロピレングリコール、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、N‐ビニルカプロラクタム、アセトアセトキシエチルメタクリレートなどを含む。
【0038】
一部の実施形態において、前記ダンピング材料は、さらに架橋することのできる官能性を有する1つ以上のコモノマーを含む。架橋性コモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸、アリルグリシジルエーテルなど、及びこれらの混合物を含む。上述のような機能的部分は、ポリマー鎖を架橋するか、又は高い側鎖を主鎖に付着するか、又はそのいずれにも使用できる。
【0039】
前記ダンピング材料は、多様に変更できる架橋剤をさらに含むことができる。好ましい架橋剤の例としては、ジアクリレート(エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及びヘキサンジオールジアクリレート)、ジメタクリレート(エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート及び1,3ブタングリコールジメタクリレート)、トリアクリレート(トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレート)、トリメタクリレート(ペンタエリスリトールトリメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレート)などの多官能性アクリレート及びメタクリレート、並びにジビニルベンゼン、コハク酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、シュウ酸ジビニル及びマロン酸ジビニルなどのジビニルエステルが含まれる。
【0040】
前記ダンピング材料に存在する他の架橋剤は、シリコーン系マトリックスで架橋を形成する役割を果たすことができる。一部の実施形態において、ジベンゾイルパーオキサイドなどのパーオキサイド架橋剤が好ましい。一部の実施形態において、前記架橋剤は、シリコン‐ハイドライド官能性を含む化合物である。これらの架橋剤の非限定的な例として、Pergan(ドイツ、ボホルト)社製のPEROXAN BP 50W、PEROXAN BIC及びPEROXAN Bu、Arkema(フィラデルフィア州キングオブプロシア)社製のLUPEROX(登録商標)A75及びA98、Akzo Nobel(イリノイ州シカゴ)社のPERKADOX(登録商標)CH‐50及びPD 50SPSが含まれる。架橋は、一般に使用される化学システムに応じて、加熱又はその他の技術によって製造及び/又は促進することができる。
【0041】
前記ダンピング材料に使用できる他の例示的な化学架橋剤は、触媒(例えば、 ジラウリン酸ジブチルすず)を伴う、又は伴わないジ-、トリ‐又はポリ‐イソシアネート、イオン性架橋剤、及び2官能性、3官能性又は多官能性のアジリジンを含むが、これらに限定されない。市販の化学的架橋剤の例示的かつ非限定的な例としては、NOAH Technologies(テキサス州サンアントニオ)社製のアルミニウムアセチルアセトネート(AAA)、DuPont(デラウェア州ウィルミントン)社製のTYZOR(登録商標)、Bayer(ペンシルベニア州ピッツバーグ)社製のXAMA(登録商標)、Dow Chemical社製のPAPI(商標)及びVORONATE(商標)が含まれる。
【0042】
前記ダンピング材料は、任意で1つ以上の粘着剤又は樹脂を含むことができ、これらの粘着剤(使用される場合)は、多様に変更できる。ある場合には、前記ダンピング材料の粘着剤は、単一の粘着剤を含む。別の場合には、前記粘着剤は、複数の粘着剤製品の混合物を含む。好ましい市販の粘着剤には、例えば、Luhua(中国)社製のHD110、HD1120、及びExxon Mobil(テキサス州ヒューストン)社製のE5400などの水素化DCPD樹脂が含まれる(但し、これらに限定されない)。他の好ましい水素化樹脂には、Eastman(テネシー州キングスポート)社製のREGALITE(商標)S1100、R1090、R1100、C100R及びC100Wなどの完全水素化樹脂、Hebei Qiming(中国)社製の完全水素化C9樹脂QM‐100A及びQM‐115Aが含まれる。
【0043】
また、前記ダンピング材料は、任意で1つ以上の可塑剤を含むことができ、これらの可塑剤(使用される場合)は、広範囲に変更できる。一部の実施形態において、前記可塑剤は、高分子量及び/又は高粘度を有する。ある場合には、前記可塑剤は、単一の可塑剤を含む。別の場合には、前記可塑剤は、複数の可塑剤製品の混合物を含む。好ましい市販の可塑剤には、例えば、Sinopec(中国、北京)社製のKN 4010及びKP 6030、Tianjin(中国)社製のClaire F55、Formosa Petrochemical(中国)社製のF550、及び各種ポリイソブテン製品が含まれる(但し、これらに限定されない)。
【0044】
前記ダンピング材料は、任意で1つ以上のワックスを含むことができ、これらのワックス(使用されている場合)は、多様に変更できる。ある場合には、前記ワックスは、単一のワックスを含む。別の場合には、前記ワックスは、複数のワックス製品の混合物を含む。前記ワックスは、オイルの移動を有益に改善するためにより高い分子量を有することができる。ワックスの例としては、微細結晶ワックス、パラフィンワックス、炭化水素ワックス、及びこれらの組み合わせを含む。好ましい市販のワックスには、例えば、Sasol(テキサス州ヒューストン)社製のSasol wax 3971、7835、6403、6805及び1800、Honeywell(ニュージャージー州モリスタウン)社製のA‐C1702、A‐C6702及びA‐C5180、Paramelt(ミシガン州マスキーゴン)社製のMICROWAX(商標)FG 7730及びMICROWAX(商標)FG 8113が含まれる。
【0045】
前記ダンピング材料は、広い範囲の動作温度にわたってダンピング性能を向上させるために選択された1つ以上の粉末添加剤を含むことができる。一部の実施形態において、前記ダンピング材料は、1つ以上のアクリル系粉末添加剤を含む。好ましい市販のアクリル系粉末添加剤には、SPHEROMERS(登録商標)CA 6、SPHEROMERSCA 10、SPHEROMERS CA 15、KRATON(登録商標)SBS 1101 AS、KRATON SB 1011 AC、KRATON TM 1116ポリマー、KRATON D1101 Aポリマー、KRATON(登録商標)D1114 Pポリマー、Zeon NIPOL(登録商標)1052、Zeon NIPOL 1041及びZeon NIPOL NS 612が含まれる。一部の実施形態において、前記ダンピング材料は、1つ以上のシリコーン系粉末添加剤を含む。好ましい市販のシリコーン系粉末添加剤には、Shin‐Etsu KMP 597、Shin‐Etsu KMP 600、及びShin‐Etsu KMP 701が含まれる。
【0046】
一部の実施形態において、前記ダンピング材料は1つ以上の高表面積無機フィラー又はフィラーと顔料の組み合わせを含む。高表面積は約0.01m2/ g~約300m2/gの範囲の表面積を含み得る。高表面積無機フィラーは、カーボンブラック、炭酸カルシウム、二酸化チタン、シリカ(親水性及び疎水性改質)、マイカ、タルク、カオリン、粘土、珪藻土、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、又はこれらのうち2つ以上の混合物などのフィラーを含み得るが、これらに限定されない。市販の高表面積無機フィラーの例としては、Evonik Degussa GmbH(ドイツ、エッセン)社の製品を含む。上述の例を含む無機フィラーは、ダンピングパッチのダンピング及びその他物理的特性を調節するために使用できる。多種多様な有機性フィラーもまた使用でき、あるいは代わりに使用できる。
【0047】
他の実施形態において、フィラーの組み合わせの例としては、処理及び/又は使用条件に応じて選択されるアンチブロッキング剤を含み得る。これらの製剤の例としては、例えば、シリカ、タルク、珪藻土及びこれらの任意の混合物などを含む。前記フィラー粒子は、実質的に非水溶性の無機フィラー粒子に細分化できる。
【0048】
実質的に前記細分化された非水溶性の無機フィラー粒子は、金属酸化物の粒子を含むことができる。前記粒子を構成する金属酸化物は、単純な金属酸化物、即ち、単一金属酸化物であるか、又は複合金属酸化物、即ち、2つ以上の金属酸化物であり得る。前記金属酸化物の粒子は、単一金属酸化物の粒子であるか、又は異なる金属酸化物の異なる粒子の混合物であり得る。好ましい金属酸化物の例としては、アルミナ、シリカ及びチタニアを含む。他の酸化物は、任意で微量に存在することができる。このような任意の酸化物の例としては、ジルコニア、ハフニア及びイットリアを含むが、これらに限定されない。任意で存在できる他の金属酸化物は、例えば、酸化鉄のように一般に不純物として存在する金属酸化物である。本明細書及び請求範囲においては、シリコンは金属とみなされる。粒子がアルミナ粒子である場合、殆どのアルミナは、アルミナモノヒドロキシドである。アルミナモノヒドロキシド粒子であるAlO(OH)、及びその製造法は公知となっている。
【0049】
例えば、アルミニウム、銅、又は特殊鋼などの金属粉末、二硫化モリブデン、酸化鉄、例えば、黒色酸化鉄、アンチモンドープされた二酸化チタン及びニッケルドープされた二酸化チタンなどの金属粒子が、ダンピング材料として使用することができる。金属合金微粒子も使用できる。
【0050】
カーボンブラック及びその他の顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、難燃剤、熱又は電気的導電剤、後硬化剤などの添加剤などを、前記ダンピング材料に混合してダンピングパッチの特性を変更することができる。また、これらの添加剤は、例えば、1つ以上の阻害剤、消泡剤、着色剤、発光剤、緩衝剤、アンチブロッキング剤、湿潤剤、マット剤、帯電防止剤、酸除去剤、加工助剤、押出助剤などを含むことができる。紫外線吸収剤は、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール及びヒドロベンゾフェノンを含む。酸化防止剤は、ヒンダードフェノール、アミン、硫黄及びリン水酸化物分解剤、例えば、Irganox 1520Lなどを含む。フィラー、顔料、可塑剤、難燃剤、UV安定剤などが多数の実施形態において選択事項であり、特定の実施形態において最大40%など、0~30%以上の濃度で使用することができる。特定の実施形態において、フィラー(無機及び/又は有機)、顔料、可塑剤、難燃剤、UV安定化剤、及びこれらの組み合わせの総量は、0.1%~30%、さらに特に1%~20%である。
【0051】
また、前記ダンピング材料は、1つ以上の溶媒を含むことができる。好ましい溶媒の非限定的な例としては、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、イソプロパノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、及びこれらの組み合わせを含む。本発明のダンピング材料は、これらの溶媒に限定されず、様々な他の溶媒、添加剤、及び/又は反応性希釈剤などの粘度調整剤を利用できることが理解されるであろう。
【0052】
拘束層
場合によっては、第1及び第2のダンピング層は、第1のダンピング層と第2のダンピング層との間に配置された内部拘束層の少なくとも一部によって互いに分離され得る。前記内部拘束層の1つの面は、前記第1のダンピング層に直接隣接することができる、又は前記内部拘束層と第1のダンピング層との間に配置された1つ以上の介在層があり得る。前記内部拘束層の反対の面は、第2のダンピング層に直接隣接することができる、又は前記内部拘束層と第2のダンピング層との間に配置された1つ以上の介在層があり得る。
【0053】
場合によっては、前記多層ダンピングラミネートは、外部拘束層を含む。前記ラミネートの第2のダンピング層の少なくとも一部は、第1のダンピング層と外部拘束層との間に配置することができる。第2のダンピング層の少なくとも一部は、内部拘束層と外部拘束層との間に配置することができる。外部拘束層の1つの面は、第2のダンピング層に直接隣接することができる、又は第2のダンピング層と外部拘束層との間に1つ以上の介在層があり得る。場合によっては、前記第2のダンピング層の1つの面は、内部拘束層に直接隣接し、第2のダンピング層の反対の面は、外部拘束層に直接隣接する。
【0054】
前記内部拘束層及び前記外部拘束層の厚さは、例えば、それぞれ独立して、約0.2mil~約120mil、例えば、0.2mil~9mil、0.4mil~20mil、0.7mil~35mil、1.5mil~ 65mil、又は2.5mil~120milの範囲であり得る。前記内部及び外部拘束層の厚さは、それぞれ独立して、約2mil~約50mil、例えば、2mil~15mil、3mil~20mil、4mil~25mil、5.5mil~35mil、又は7mil~50milの範囲であり得る。上限については、内部及び外部拘束層の厚さは、それぞれ独立して、約120mil未満、例えば、65mil未満、50mil未満、35mil未満、25mil未満、20mil未満、15mil未満、10mil未満、9mil未満、7mil未満、5.5mil未満、5mil未満、4mil未満、3mil未満、2.5mil未満、1.5mil未満、0.7mil未満又は0.4mil未満であり得る。下限については、内部及び外部拘束層の厚さは、それぞれ独立して、約0.2mil超、例えば、0.4mil超、0.7mil超、1.5mil超、2.5mil超、3mil超、4mil超、5mil超、5.5mil超、7mil超、9mil超、10mil超、15mil超、20mil超、25mil超、35mil超、50mil超、又は65mil超であり得る。120mil超などのさらに厚いものと0.2mil未満などのさらに薄いものも考慮される。
【0055】
内部及び外部拘束層は、それぞれ独立して、1つ以上の強化材料を含むことができ、ここで、それぞれの拘束層は、類似又は異なる組成物を有することができる。前記強化材料は、1つ以上のポリマー材料を含むことができる。ポリマー材料の非限定的な例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)及び/又はポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、及びこれらとその他の材料の組み合わせを含む。
【0056】
前記強化材料は、1つ以上の金属又は金属合金を含むことができる。金属の非限定的な例としては、アルミニウム、鋼、マグネシウム、ブロンズ、銅、ブラス、チタン、鉄、ベリリウム、モリブデン、タングステン、又はオスミウムを含む。一部の実施形態において、内部及び外部拘束層は、それぞれ独立して金属箔である。
【0057】
前記強化材料は、1つ以上の天然又は人口木材を含むことができる。前記強化材料は、1つ以上の繊維を含むことができる。繊維の非限定的な例としては、麻繊維、亜麻繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維を含む。前記強化材料は、カーボンナノチューブ、グラフェン、ダイヤモンド、カーボン又はこれらの組み合わせを含む1つ以上の炭素系材料を含むことができる。また、前記強化材料は、セラミックを含むことができる。複合材料及びこれらの材料の組み合わせも使用できる。
【0058】
ライナー層
場合によっては、前記多層ラミネートフィルムは、第1のダンピング層と接触するライナー層を含む。前記ライナー層の1つの面は、第1のダンピング層に直接隣接することができる、又は第1のダンピング層とライナー層との間に1つ以上の介在層があり得る。場合によっては、第1のダンピング層の1つの面は、内部拘束層に直接隣接し、第1のダンピング層の反対の面は、ライナー層に直接隣接する。
【0059】
剥離可能なライナーは、多層ダンピングラミネートが物体又は表面に付着する準備ができるまで、リリースライナーが所定の位置に保持されるよう保護カバーとして機能することができる。前記ラミネートにライナー又はリリースライナーが含まれている場合、前記ライナーに様々な材料及び構成を使用できる。多数の実施形態において、前記ライナーは、紙又は紙系の材料である。多数の他の実施形態において、前記ライナーは、1つ以上のポリマー材料のポリマーフィルムである。一般に、前記ライナーの少なくとも1つの面には、シリコーン又はシリコーン系材料などの剥離材でコーティングされる。理解されるように、前記ライナーの剥離コーティングされた面は、外部の第1のダンピング層の他の露出面と接触して配置される。目的の表面にラベルを適用する前に、ライナーが取り除かれることによりラミネートの第1のダンピング層が露出する。前記ライナーは、単一シート状にすることができる。或いは、前記ライナーは、複数のセクション又はパネル状にすることができる。
【0060】
一般的な多層ダンピングラミネート
一実施形態において、他の多層ダンピングラミネートが開示されている。前記多層ダンピングラミネートは、本明細書に記載のように、第1のダンピング層及び第2のダンピング層を有し得る。また、前記多層ダンピングラミネートは、第1のダンピング層及び第2のダンピング層以外に、さらにダンピング層を含み得る。一般に、多層ダンピングラミネートは、それぞれ独立してガラス転移温度Tgを有するN個のダンピング層を含み、ここで、Nは2以上の整数である。前記N個のダンピング層は、第1のダンピング層が振動基板と直接接触して配置されるダンピング層になるように配列されて振動を散逸させる。前記第1のダンピング層の上部ダンピング層は、増加する順に番号がつけられ、ここで、それぞれのダンピング層は、その下部ダンピング層よりも低いガラス転移温度を有する。多層ダンピングラミネートの各ダンピング層におけるガラス転移温度間の関係は、以下の不等式で記される。
【0061】
Tg(N)<Tg(N-1)<Tg(N-2)<・・・<Tg(1)
一部の実施形態において、それぞれのダンピング層もまた、その下部ダンピング層よりも大きいプラトーモジュラス(Go)を有する。前記多層ダンピングラミネートの各ダンピング層におけるプラトーモジュール間の関係は、以下の不等式で記される。
【0062】
Go(N)>Go(N-1)>Go(N-2)>・・・>Go(1)
例示的な例として、一部の実施形態において、N=2である。かかる構成において、動作温度が第1のガラス転移温度Tg(1)に近い場合、下部接着剤(層1)は、そのガラス転移を通過する。このダンピング層は、振動する基板と直接接触するため、前記層は、振動エネルギーの散逸を可能にするせん断変形が生じ得る。また、前記ダンピング層は、最も低いプラトーモジュラス(Go)を有するため、最大のせん断変形が生ずる。前記ラミネートの動作温度が第2のガラス転移温度Tg(2)(<Tg(1))に近づくと、前記下部ダンピング層は、そのガラス質領域に進入することにより、ガラス状固体のように作用する。従って、Tg(2)近傍の温度で、上部ダンピング層がガラス転移を通過するとき、下部ダンピング層は、前記振動する基板の厚さに対する極少量の増加として作用する。前記下部ダンピング層1は、前記温度ではガラス状であるため、全てのせん断変形が、上部ダンピング層に集中する。このように、前記多層ダンピングラミネートの温度がTg(1)からTg(2)に変わると、下部ダンピング層から上部ダンピング層にダンピングが順次移動することにより、広い温度範囲にわたってダンピングが可能となる。要約すると、両層が、それぞれのガラス転移温度の近傍でダンピング層として機能する。
【0063】
また、本発明は、上述のようなベース基板及び多層ダンピングラミネートを含むシステムに関する。前記ベース基板は、例えば、車両、電気製品、又は電子装置の表面であり得る。一部の実施形態において、車両は、振動低減シートを含む。一部の実施形態において、車両は自動車である。
【0064】
以下の実施形態が考えられる。全ての特徴及び実施形態の組み合わせが考えられる。
実施形態1:第1のガラス転移温度及び第1のダンピング層の厚さ(H1)を有する第1のダンピング層と、第2のガラス転移温度及び第2のダンピング層の厚さ(H2)を有する第2のダンピング層と、少なくとも一部が第1のダンピング層と第2のダンピング層との間に配置される内部拘束層と、外部拘束層と、を含む多層ダンピングラミネートであって、前記第2のダンピング層の少なくとも一部は、前記内部拘束層と前記外部拘束層との間に配置され、前記ラミネートのダンピング層は、第1のダンピング層から始まって減少するガラス転移温度のプロファイルを有し、前記多層ダンピングラミネートの200Hzでの複合損失係数は0.05を超える。
【0065】
実施形態2:前記複合損失係数が0.1を超える、実施形態1に記載の実施形態。
実施形態3:前記複合損失係数が、少なくとも30℃の温度範囲にわたって0.05を超える、実施形態3に記載の実施形態。
【0066】
実施形態4:第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が、(-3(H1/H2)2+15)℃~(15(H1/H2)2+20)℃の範囲である、実施形態1~3のいずれかに記載の実施形態。
【0067】
実施形態5:第1のガラス転移温度が、第2のガラス転移温度よりも少なくとも5℃高い、実施形態1~4のいずれかに記載の実施形態。
【0068】
実施形態6:第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が、5℃~35℃の範囲である、実施形態1~5のいずれかに記載の実施形態。
【0069】
実施形態7:第1のガラス転移温度が、-60℃~100℃の範囲である、 実施形態1~6のいずれかに記載の実施形態。
【0070】
実施形態8:第2のガラス転移温度が、-60℃~100℃の範囲である、 実施形態1~7のいずれかに記載の実施形態。
【0071】
実施形態9:第1のダンピング層は、第1のプラトーモジュラスを有し、第2のダンピング層は、第2のプラトーモジュラスを有し、且つラミネートのこれらのダンピング層は、第1のダンピング層から始まって増加するプラトーモジュラスプロファイルを有する、実施形態1~8のいずれかに記載の実施形態。
【0072】
実施形態10:第1のプラトーモジュラスに対する第2のプラトーモジュラスの割合が、1~(10(H1/H2)1.25+10)の範囲である、実施形態9に記載の実施形態。
【0073】
実施形態11:第1のダンピング層の第1の粘弾性損失係数は、((10‐10/H1
2.5)+0.25)を超え、第2のダンピング層の第2の粘弾性損失係数は、((10‐10/H2
2.5)+0.25)を超え、ここで、H1及びH2は、それぞれメートル単位である、実施形態1~10のいずれかに記載の実施形態。
【0074】
実施形態12:第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が20℃未満の場合、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数との差は0.2~1.5の範囲であり、第1のガラス転移温度と第2のガラス転移温度との差が20℃を超える場合、第1の粘弾性損失係数と第2の粘弾性損失係数との差は0.2~3の範囲である、実施形態11に記載の実施形態。
【0075】
実施形態13:第1のダンピング層は、第1の粘弾性ダンピング材料を含み、第2のダンピング層は、第2の粘弾性ダンピング材料を含む、実施形態1~12のいずれかに記載の実施形態。
【0076】
実施形態14:内部拘束層及び外部拘束層は、それぞれ独立して金属を含む、実施形態1~13のいずれかに記載の実施形態。
【0077】
実施形態15:内部拘束層及び外部拘束層は、それぞれ独立して金属箔である、実施形態1~14のいずれかに記載の実施形態。
【0078】
実施形態16:第1のダンピング層の厚さが、0.1mil~200milの範囲である、実施形態1~15のいずれかに記載の実施形態。
【0079】
実施形態17:第2のダンピング層の厚さが、0.1mil~200milの範囲である、実施形態1~16のいずれかに記載の実施形態。
【0080】
実施形態18:内部拘束層及び外部拘束層は、それぞれ独立して0.2mil~120milの範囲の厚さを有する、実施形態1~17のいずれかに記載の実施形態。
【0081】
実施形態19:内部拘束層及び外部拘束層は、それぞれ独立して2mil~50milの範囲の厚さを有する、実施形態1~17のいずれかに記載の実施形態。
【0082】
実施形態20:第2のダンピング層と反対側の第1のダンピング層に接触したライナー層をさらに含む、実施形態1~19のいずれかに記載の実施形態。
【0083】
実施形態21:N個のダンピング層と、N-1個の内部拘束層と、外部拘束層と、を含む多層ダンピングラミネートであって、前記N個のダンピング層において、Nは2以上の整数であり、それぞれのダンピング層の少なくとも一部は、他のダンピング層と共存し、それぞれのダンピング層は、独立してガラス転移温度(Tg)を有し、ここで、Tg(N)<Tg(N-1)<Tg(N-2)<・・・<Tg(1)であり、前記N-1個の内部拘束層において、それぞれのM番目の内部拘束層の少なくとも一部は、M番目のダンピング層と(M+1)番目のダンピング層との間に配置され、ここで、Mは1~N-1の範囲の整数であり、前記外部拘束層において、N番目のダンピング層の少なくとも一部は、(N-1)番目の拘束層と外部拘束層との間に配置される。
【0084】
実施形態22:ダンピング層は、それぞれ独立してプラトーモジュラス(Go)を有し、ここで、Go(N)>Go(N-1)>Go(N-2)>・・・>Go(1)である、実施形態21に記載の実施の形態。
【0085】
実施形態23:ベース基板と、実施形態1~22のいずれかの実施形態の多層ダンピングラミネートと、を含むシステムであって、前記第1のダンピング層はベース基板と接触している。
【0086】
実施形態24:ベース基板の振動を低減させる方法であって、振動を受けるベース基板を提供するステップと、前記実施形態1~22のいずれかの実施形態の多層ダンピングラミネートの第1のダンピング層をベース基板に接触させることにより、基本構造の振動を低減させるステップと、を含む。
【0087】
実施形態25:目的の周波数で測定した時に、多層ダンピングラミネートの温度が第1のガラス転移温度から第2のガラス転移温度へ変化するにつれて、最大せん断変形の位置を第1のダンピング層から第2のダンピング層に移動させるステップをさらに含む、実施形態24に記載の実施形態。
【0088】
実施形態26:基本構造の振動は、温度及び周波数の連続した範囲にわたって散逸される、実施形態24又は25に記載の実施の形態。
【0089】
本発明は、以下の非限定的な例を考慮してさらによく理解されるであろう。
実施例
以下の表1に示すレオロジー特性を有する5つの異なる粘弾性ダンピング材料が、異なる例示的な多層ダンピングラミネートの構成に使用された。表1の材料は、アクリルコポリマー材料A、ゴムブロックコポリマー材料B、粘着性アクリルコポリマー材料C、アクリルコポリマー材料D、及び材料Eとして材料Dの粘着性バージョンを含む。各材料の特性は、TA Instruments(デラウェア州ニューキャッスル)社製のDHR‐2レオメータを使用して、0.1%の変形及び毎秒10ラジアンの周波数での振動せん断レオロジーによって測定された。必要に応じて、設計ルールと関連するように、材料特性は、時間‐温度の重ね合わせを用いて適用する周波数の範囲で適切に移動した。tan(δ)の最大値は、ガラス転移温度におけるtan(δ)の値であった。プラトーモジュラスは、tan(δ)が最初に極小値に達したガラス転移温度を超える温度での貯蔵モジュラスの値としてとられた。
【0090】
【0091】
表1の5つのダンピング材料のうちの2つを使用して、それぞれ異なる8つの多層ダンピングラミネートを構成した。4つの例示的なラミネートは、本明細書で論じているように、特定の構成のダンピング材料層を含む一方、4つの比較ラミネートは、逆の順で構成された同じダンピング材料層を含む。8つのラミネートの性能特性は、以下の表2に示す。各ラミネートに対する複合損失係数(CLF)は、基準周波数200Hzで、厚さ0.75mmのステンレススチールビームでSAE J1637(2018)又はASTM E‐756(2018)により測定された。表2において、「DL」はダンピング層を意味し、「CL」は拘束層を意味する。表2の2つの値を含むセルは、1番目は下部層の値を示し、2番目は上部層の値を示しており、ここで「下部」ダンピング材料は、第1のダンピング層、即ち、前記振動基板と直接接触する材料を意味し、「上部」ダンピング材料は、第2のダンピング層、即ち、内部及び外部拘束層との間に配置される材料を意味する。CLF幅、即ち、ダンピング温度の範囲は、CLF≧0.05に対して測定される。
【0092】
【0093】
表2の実施例1は、表1の材料A及び材料Bをそれぞれ5mil使用した多層ダンピングラミネートである。これらのダンピング材料が、本明細書に記載のように構成された時、即ち、下部ダンピング材料としてより低いプラトーモジュラスを有するより高いTg材料を積層し、上部ダンピング材料としてより高いプラトーモジュラスを有するより低いTg材料を積層した時、(比較例Aと比べて)CLF幅において25%増加、及びピークCLFにおいて30%増加することが顕著に観察された。比較例Aは、材料Bを下部ダンピング層として、材料Aを上部ダンピング材料として置き換えて構成することによって、本明細書に記載の構成は有していない。また、双方の順いずれも同じ線密度を有するダンピングラミネートをもたらすが、下部に材料A及び上部に材料Bを有するラミネートは、ダンピング効率が50%向上することを示した。
【0094】
表2の実施例2は、表1の材料B及び材料Cをそれぞれ5mil使用した多層ダンピングラミネートである。これらのダンピング材料が、本明細書に記載のように構成された時、即ち、下部ダンピング材料としてより低いプラトーモジュラスを有するより高いTg材料を積層し、上部ダンピング材料としてより高いプラトーモジュラスを有するより低いTg材料を積層した時、(比較例Bと比べて)CLF幅において50%増加、及びピークCLFにおいてわずかな減少が観察された。比較例Bは、材料Bを下部ダンピング層として、材料Cを上部ダンピング層として置き換えて構成することによって、本明細書に記載の構成は有していない。表1のプラトーモジュラス値を用いた場合、材料Cを下部ダンピング層とし、材料Bを上部ダンピング層とする実施例2のプラトーモジュラス比G0.2/G0.1は約8であるのに対し、材料Aを下部ダンピング層とし、材料Bを上部ダンピング層とする実施例1では、プラトーモジュラス比は約4である。従って、材料A及びCは同様のレオロジーの材料特性を有するが、実施例2のプラトーモジュラス比の値が高いほど、CLF幅は著しく高くなる。
【0095】
表2の実施例3は、表1の材料C及び材料Dをそれぞれ5mil使用した多層ダンピングラミネートである。これらのダンピング材料が、本明細書に記載のように構成された時、即ち、下部ダンピング材料としてより低いプラトーモジュラスを有するより高いTg材料を積層し、上部ダンピング材料としてより高いプラトーモジュラスを有するより低いTg材料を積層した時、(比較例Cと比べて)CLF幅において20%増加、及びピークCLFにおいてわずかな減少が観察された。比較例Cは、材料Dを下部ダンピング層として、材料Cを上部ダンピング層として置き換えて構成することによって、本明細書の記載の構成は有していない。差別化されたレオロジーによるダンピング層の順序によって、ダンピング効率が向上した。また、材料Cと材料Dのガラス転移温度の間に比較的大きな差(33℃)があるにもかかわらず、ピークtan(δ)の差とプラトーモジュラス比が、前記多数の実施形態に記載された範囲内に存在することを保証することにより、処理にさらに重量を加えることなく、非常に幅広いダンピング温度の範囲を有する多層ダンピングラミネートが得られた。多数の実施形態において、多層ダンピングラミネートは、意図する用途のために軽量構造体を提供するように設計され得る。
【0096】
ダンピング曲線の幅を広げるために、異なる粘弾性ダンピング材料を含む従来のアプローチは、下部層における200Hzでのピークダンピングが0℃以上で発生し、上部層における200Hzでのピークダンピングが0℃以下で発生する「高温」の材料の使用を記載しており、好ましい又は許容可能な「高温」又は「低温」の材料を構成することに関するさらなる説明はしていない。「高温」のダンピング材料をガラス転移温度が高い材料であると見なし、「低温」のダンピング材料をガラス転移温度が低い材料であると見なした場合、下部に材料A及び上部に材料Eを積層すること(実施例4)は、材料Eが下部に積層され、材料Aが上部に積層される構成(比較例4)と比べて、著しく幅広いCLF曲線が得られることが期待される。但し、表2の結果は、下部に材料A及び上部に材料Eを代替したラミネート構成が、比較例Dと比べた時にダンピング幅においてごくわずかしか増加しないことを示す。さらに、実施例4の構成はまた、比較例Dと比べてピークCLFの減少をもたらす。この観察は、実施例4のG0,2/G0,1プラトーモジュラス比が、実施例1~3のプラトーモジュラス比よりも小さいわずか0.2であることによって生じ得る。かかる結果は、上述のようなプラトーモジュラス比によってダンピング層を構成することにより、ダンピングの温度領域を広げることで実現できるさらなる改善を示す。
【0097】
本発明を詳細に説明してきたが、本発明の思想及び範囲内での修正は、当業者にとって容易に明らかになるであろう。背景技術及び発明を実施するための形態に関して上述した当技術分野の関連知識及び参照文献、及び先の説明の観点から、これらの開示は、いずれも参照として本明細書に組み込まれる。また、本開示の態様及び多様な実施形態の一部ならびに以下及び/又は添付の請求範囲に詳述した様々な特徴は、全体的にあるいは部分的に組み合わせたり交換し得ることが理解されるべきである。多様な実施形態の上述の説明において、他の実施形態を参照するこれらの実施形態は、当業者に理解されるように、他の実施形態と適切に組み合わせることができる。また、当業者は、上述の説明が単なる例であって、本発明の限定を意図するものでないことを理解するであろう。