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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】生検針
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/02 20060101AFI20221020BHJP
   A61B 8/12 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61B10/02 110H
A61B8/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018068400
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019176993
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002402
【氏名又は名称】特許業務法人テクノテラス
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
(72)【発明者】
【氏名】植木 賢
(72)【発明者】
【氏名】上原 一剛
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/007380(WO,A1)
【文献】特表2005-501593(JP,A)
【文献】米国特許第05133360(US,A)
【文献】特開2004-230139(JP,A)
【文献】特表2006-518646(JP,A)
【文献】特開2008-206996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/02
A61B 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
前記注射針形状の開口の開口壁の表面又は前記中空の針部の内部壁には環状の溝が形成されており、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の外部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられているか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の外部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の開口壁の後端側には、前記環状の溝と前記中空の針部の外部壁との間に直線状の溝が形成されており、前記ワイヤーは前記直線状の溝内に嵌合・固定されていることを特徴とする、生検針。
【請求項2】
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
前記注射針形状の開口の開口壁の表面又は前記中空の針部の内部壁には環状の溝が形成されており、
前記中空の針部の外部壁には、前記注射針形状の開口の後端側の近傍に、前記中空の針部の内外を貫通する貫通孔が少なくとも一つ設けられており、
前記ワイヤーは前記貫通孔及び前記中空の針部の内部を経て前記中空の針部の後端側まで延在され、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の前記貫通孔を経て、前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられるか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の前記貫通孔を経て、前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の開口壁の後端側には、前記環状の溝と前記中空の針部の前記貫通孔との間に直線状の溝が形成されており、前記ワイヤーは前記直線状の溝内に嵌合・固定されていることを特徴とする、生検針。
【請求項3】
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
前記注射針形状の開口の開口壁の表面には環状の溝が形成されており、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられるか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の後端側の前記環状の溝には前記中空の針部の内部との間に貫通孔が設けられており、
前記ワイヤーは、前記貫通孔及び前記中空の針部の内部を経て、前記中空の針部の後端側まで延在されることを特徴とする、生検針。
【請求項4】
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
記中空の針部の内部壁には環状の溝が形成されており、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられているか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の後端側には、前記環状の溝と前記中空の針部の内部壁との間にU字状ないしJ字状の貫通孔が形成されており、前記ワイヤーは、前記貫通孔及び前記中空の針部の内部を経て、前記中空の針部の後端側まで延在されることを特徴とする、生検針。
【請求項5】
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
前記注射針形状の開口の開口壁の表面には環状の溝が形成されており、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の前端側から前記中空の針部の外部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられるか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の前端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の前端側から前記中空の針部の外部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の前端側の前記環状の溝には前記中空の針部の内部との間に貫通孔が設けられており、
前記ワイヤーは、前記貫通孔及び前記中空の針部の外部を経て、前記中空の針部の後端側まで延在されることを特徴とする、生検針。
【請求項6】
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
前記中空の針部の内部壁には環状の溝が形成されており、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の前端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられているか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の前端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の前端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の前端側には、前記環状の溝と前記中空の針部の内部壁との間にU字状ないしJ字状の貫通孔が形成されており、前記ワイヤーは、前記貫通孔及び前記中空の針部の内部を経て、前記中空の針部の後端側まで延在されることを特徴とする、生検針。
【請求項7】
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
前記注射針形状の開口の開口壁の表面には環状の溝が形成されており、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の前端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられているか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の前端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の前端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の前端側には、前記環状の溝と前記中空の針部の内部壁との間にU字状ないしJ字状の貫通孔が形成されており、前記ワイヤーは、前記貫通孔及び前記中空の針部の内部を経て、前記中空の針部の後端側まで延在されることを特徴とする、生検針。
【請求項8】
前記ワイヤーは、前記環状の溝が形成されている壁面と実質的に同一面を形成するように、前記環状の溝内に嵌合・固定されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の生検針。
【請求項9】
前記ワイヤーは、前記環状の溝内に易剥離性接着剤により固定されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の生検針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の一部を採取するための生検針、特に超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)で用いられる生検針に関する。
【背景技術】
【0002】
EUS-FNAは、目的とする臓器(例えば、膵臓)を超音波下で観察しつつ、消化管内から生検針を穿刺して腫瘤内部の組織を採取する手技であり、従来から大手の医療機器メーカーを中心にこのEUS-FNAで用いられる生検針の開発が進められてきている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平11-226024号公報)には、生検針内に切除ワイヤー(スネア)を閉じた状態で挿入しておき、生検針の先端が所定の組織に近接した際にスネアを押出してスネアの自己拡張作用によって生検針の先端側に拡開させ、その状態で拡開されたスネア及び生検針の先端側を生体組織に当接させ、生検針内部を負圧に維持することにより生体組織を拡開されたスネア及び生検針の先端側を経て生検針内に吸引し、その後にスネアを生検針内に引き込んで収納することにより生体組織を緊縛及び切除し、生体組織片を生検針内に採取する構成の生検針が開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2011-030913号公報)には、斜め前方に向いて最先端部まで開口する長方形状の組織採取開口面を備えた楔状の組織格納室と、可撓性シースの基端側からの操作により組織採取開口面に沿って進退する可動薄刃とが設けられ、組織採取開口面の最先端側に沿って、組織採取開口面の全幅にわたり水平に配置された先端固定刃を有する生検針であって、この生検針を生体組織内に挿通した際に組織格納室内に入った生体組織を可動薄刃によって切除することにより、組織格納室内に生体組織片を採取する構成の生検針が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されている生検針では、切除ワイヤー(スネア)を拡径した状態で生体組織内に穿刺する必要があるが、穿刺時の抵抗が大きいためにスネアに不具合が生じるおそれがある。また、特許文献2に開示されている生検針では、針先端部に引き込んだ組織しか採取できず、検体採取量が不十分で確定診断に至らない場合があり、より効率的に組織が採取できる新しい生検針が求められていた。
【0006】
このような従来の生検針の問題点を解決するため、発明者等は、特許文献3(特許第6183858号公報)に開示されているような、注射針形状の開口の開口壁上にワイヤー(糸)を装着した構成の生検針を開発した。この生検針の概略を、図15を用いて説明する。なお、図15Aは従来例の生検針の平面図であり、図15B図15Aの部分縦断面図である。
【0007】
この生検針100は、中空の針部101の先端側の注射針形状の開口102の開口壁102a上に、組織を切断するための切断手段として、ワイヤー103が設けられている。また、中空の針部101には、注射針形状の開口102の後端側に中空の針部101の壁を貫通する貫通孔104、105が設けられている。
【0008】
ワイヤー103は、一方側の端部が貫通孔104と注射針形状の開口102とを通されて中空の針部101に固定されており、一方の端部から延在している部分が注射針形状の開口の開口壁102a上にループ状に容易に易剥離性接着材で固定されているとともに、他方側の端部が中空の針部101の内部を経て、中空の針部101の後端に形成された開孔106より外部に延在するように挿通されている。
【0009】
このような構成の生検針によれば、ワイヤー103が注射針形状の開口102の開口壁102a上にループ状に固定されているため、特許文献1ないし特許文献2に開示されている生検針と比すると穿刺時の抵抗が小さく、穿刺時に中空の針部101内に生体組織を引き込んだ後にワイヤー103を引っ張るのみで、中空の針部101の先端側の注射針形状の開口102の部分において生体組織を容易に切断でき、中空の針部101内に採取する生体組織片の採取量を多くできるとともに効率的に回収することが可能となるという優れた効果を奏するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-226024
【文献】特開2011-030913号公報
【文献】特許第6183858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献3に開示されている生検針100では、ワイヤー103が注射針形状の開口102の開口壁102a上にループ状に固定されていることにより、ワイヤー103が存在しない場合と比すると、穿刺時の抵抗が大きくなって切れ味が悪くなることがあること、ワイヤーは易剥離性接着材で固定されているが穿刺時に剥がれる危険性があること等の課題が存在していた。発明者等は、このような特許文献3に開示されている生検針の課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、本発明を完成するに至ったのである。
【0012】
すなわち、本発明は、ワイヤーを用いた、特にEUS-FNAに最適な生検針であって、穿刺抵抗が小さく、穿刺時にワイヤーが生検針から剥離し難く、またワイヤーによる生体組織の切断を行い易い生検針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様の生検針は、
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
前記注射針形状の開口の開口壁の表面又は前記中空の針部の内部壁には環状の溝が形成されており、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の外部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられているか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の外部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の開口壁の後端側には、前記環状の溝と前記中空の針部の外部壁との間に直線状の溝が形成されており、前記ワイヤーは前記直線状の溝内に嵌合・固定されていることを特徴とする。
【0014】
第1の態様の生検針によれば、ワイヤーが注射針形状の開口の開口壁の表面又は前記中空の針部の内部壁に形成された環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定されているため、ワイヤーが注射針形状の開口の開口壁から突出し難くなる。これにより、第1の態様の生検針を生体組織に穿刺した際には、抵抗が少なくなるので、穿刺が容易となって中空の針部内へ導入される生体組織片の量を多くすることができるようになる。加えて、第1の態様の生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されているワイヤーの両端側を牽引する( 引っ張る)場合には、容易にワイヤーは環状の溝から外れて後端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
加えて、ワイヤーの一方側の端部が注射針形状の開口の開口壁の後端側近傍で環状の溝内に固着され、他方の端部が注射針形状の開口の開口壁の後端側から中空の針部の内部又は外部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、中空の針部の後端側から操作可能に設けられている場合には、生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されている一本のワイヤーを操作する(引っ張る)ことにより、容易にワイヤーは環状の溝から外れて後端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
また、ワイヤーが注射針形状の開口の後端側の開口壁を乗り越える部分にも溝が設けられているので、この部分でもワイヤーが突出しなくなり、生検針を生体組織内に穿刺する際の抵抗がより小さくなり、上記の効果がより良好に奏されるようになる。
【0015】
また、本発明の第2の態様の生検針は、
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
前記注射針形状の開口の開口壁の表面又は前記中空の針部の内部壁には環状の溝が形成されており、
前記中空の針部の外部壁には、前記注射針形状の開口の後端側の近傍に、前記中空の針部の内外を貫通する貫通孔が少なくとも一つ設けられており、
前記ワイヤーは前記貫通孔及び前記中空の針部の内部を経て前記中空の針部の後端側まで延在され、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の前記貫通孔を経て、前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられるか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の前記貫通孔を経て、前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の開口壁の後端側には、前記環状の溝と前記中空の針部の前記貫通孔との間に直線状の溝が形成されており、前記ワイヤーは前記直線状の溝内に嵌合・固定されていることを特徴とする。
【0016】
第2の態様の生検針によれば、第1の態様の生検針と同様に、ワイヤーが注射針形状の開口の開口壁の表面又は前記中空の針部の内部壁に形成された環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定されているため、ワイヤーが注射針形状の開口の開口壁から突出し難くなる。これにより、第2の態様の生検針を生体組織に穿刺した際には、抵抗が少なくなるので、穿刺が容易となって中空の針部内へ導入される生体組織片の量を多くすることができるようになる。加えて、第2の態様の生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されているワイヤーの両端側を牽引する( 引っ張る)場合には、容易にワイヤーは環状の溝から外れて後端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
加えて、ワイヤーの一方側の端部が注射針形状の開口の開口壁の後端側近傍で環状の溝内に固着され、他方の端部が注射針形状の開口の開口壁の後端側から中空の針部の内部又は外部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、中空の針部の後端側から操作可能に設けられている場合には、生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されている一本のワイヤーを操作する(引っ張る)ことにより、容易にワイヤーは環状の溝から外れて後端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
また、ワイヤーの環状の溝から延在されている部分が中空の針部の外部壁側に位置する長さを短くでき、環状の溝から延在されているワイヤーの大部分を中空の針部の内部に挿通されている状態とすることができる。これにより、中空の針部の後端側まで延在されているワイヤーの端部を操作した際に、注射針形状の開口の開口壁の環状の溝内に嵌合・固定されているワイヤーの中間部分まで力を伝達させやすくなるので、より容易にワイヤーを環状の溝から外させて注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができるようになる。
【0017】
また、本発明の第3の態様の生検針は、
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
前記注射針形状の開口の開口壁の表面には環状の溝が形成されており、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられるか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の後端側の前記環状の溝には前記中空の針部の内部との間に貫通孔が設けられており、
前記ワイヤーは、前記貫通孔及び前記中空の針部の内部を経て、前記中空の針部の後端側まで延在されることを特徴とする。
【0018】
第3の態様の生検針によれば、第1の態様の生検針と同様に、ワイヤーが注射針形状の開口の開口壁の表面に形成された環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定されているため、ワイヤーが注射針形状の開口の開口壁から突出し難くなる。これにより、第3の態様の生検針を生体組織に穿刺した際には、抵抗が少なくなるので、穿刺が容易となって中空の針部内へ導入される生体組織片の量を多くすることができるようになる。加えて、第3の態様の生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されているワイヤーの両端側を牽引する( 引っ張る)場合には、容易にワイヤーは環状の溝から外れて後端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
加えて、ワイヤーの一方側の端部が注射針形状の開口の開口壁の後端側近傍で環状の溝内に固着され、他方の端部が注射針形状の開口の開口壁の後端側から中空の針部の内部又は外部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、中空の針部の後端側から操作可能に設けられている場合には、生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されている一本のワイヤーを操作する(引っ張る)ことにより、容易にワイヤーは環状の溝から外れて後端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
また、ワイヤーが中空の針部の外部壁側に一切露出しないようにできるので、中空の針部の後端側まで延在されているワイヤーの端部を操作した際に、注射針形状の開口の開口壁の環状の溝内に嵌合・固定されているワイヤーの中間部分まで力を伝達させやすくなるので、より容易にワイヤーを環状の溝から外させて注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができるようになる。
【0019】
また、本発明の第4の態様の生検針は、
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
記中空の針部の内部壁には環状の溝が形成されており、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられているか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の後端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の後端側には、前記環状の溝と前記中空の針部の内部壁との間にU字状ないしJ字状の貫通孔が形成されており、前記ワイヤーは、前記貫通孔及び前記中空の針部の内部を経て、前記中空の針部の後端側まで延在されることを特徴とする。
【0020】
第4の態様の生検針によれば、第1の態様の生検針と同様に、ワイヤーが中空の針部の内部壁に形成された環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定されているため、ワイヤーが注射針形状の開口の開口壁から突出し難くなる。これにより、第4の態様の生検針を生体組織に穿刺した際には、抵抗が少なくなるので、穿刺が容易となって中空の針部内へ導入される生体組織片の量を多くすることができるようになる。加えて、第4の態様の生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されているワイヤーの両端側を牽引する(引っ張る)場合には、容易にワイヤーは環状の溝から外れて後端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
加えて、ワイヤーの一方側の端部が注射針形状の開口の開口壁の後端側近傍で環状の溝内に固着され、他方の端部が注射針形状の開口の開口壁の後端側から中空の針部の内部又は外部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、中空の針部の後端側から操作可能に設けられている場合には、生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されている一本のワイヤーを操作する(引っ張る)ことにより、容易にワイヤーは環状の溝から外れて後端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
また、中空の針部の内部壁に注射針形状の開口の後端側から中空の針部の後端側まで直線状の溝が形成されているので、この溝内にワイヤーを配置することができ、しかも、中空円筒状の針部の開口側から見た場合、中空の針部の内部壁側には一切のワイヤーが突出しないようにできるので、ワイヤーの摩擦が小さくなって操作性がより良好となるという付加的な効果も奏するようになる。また、ワイヤーの両端部を牽引する際には、U字状の貫通孔が支点となってワイヤーのループの径が小さくなるので、環状の溝に沿って中空の針部内に入り込んだ生体組織を効率よく切断することができるようになる。
【0021】
また、本発明の第5の態様の生検針は、
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
前記注射針形状の開口の開口壁の表面には環状の溝が形成されており、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の前端側から前記中空の針部の外部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられるか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の前端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の前端側から前記中空の針部の外部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の前端側の前記環状の溝には前記中空の針部の内部との間に貫通孔が設けられており、
前記ワイヤーは、前記貫通孔及び前記中空の針部の外部を経て、前記中空の針部の後端側まで延在されることを特徴とする。
【0022】
の態様の生検針によれば、ワイヤーが注射針形状の開口の開口壁の表面に形成された環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定されているため、ワイヤーが注射針形状の開口の開口壁から突出し難くなる。これにより、第の態様の生検針を生体組織に穿刺した際には、抵抗が少なくなるので、穿刺が容易となって中空の針部内へ導入される生体組織片の量を多くすることができるようになる。加えて、第の態様の生検針によれば、ワイヤーの両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の先端側から外部壁又は内部壁との間を連通する貫通孔を通されて中空の針部の内部又は外部を後端側まで延在されているので、第の態様の生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されているワイヤーの両端側を牽引する(引っ張る)ことにより、容易にワイヤーは環状の溝から外れて先端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
加えて、第の態様の生検針では、ワイヤーの一方側の端部が注射針形状の開口の開口壁の先端側近傍で環状の溝内に固着され、他方の端部が注射針形状の開口の開口壁の先端側から外部壁又は内部壁との間を連通する貫通孔を通されて中空の針部の内部又は外部を後端側まで延在されているので、第の態様の生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されている一本のワイヤーを牽引する(引っ張る)ことにより、容易にワイヤーは環状の溝から外れて先端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
ワイヤーを、一旦貫通孔を通した後は中空円筒状の針部の外部壁に沿って配置すればすむので組立が容易となるとともに、実質的に第1の態様の生検針と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、第5の態様の生検針を生体組織に穿刺して生検針の中空円筒状の針部内に生体組織が入り込んだ後、ワイヤーの両端側を同時に、ないし細かく往復動させながら牽引する操作を行うと、注射針形状の開口の環状の溝から徐々に離脱して第1の態様の生検針の場合とは反対側の先端側に向かってループの径が小さくなり、それに伴って注射針形状の開口の環状の溝に沿って生体組織の深部が切断されていく。そして、ワイヤーのループが貫通孔に達して閉じた状態となると、注射針形状の開口部分に位置している生体組織は実質的に全て切断された状態となる。
【0023】
さらに本発明の第6の態様の生検針は、
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
前記中空の針部の内部壁には環状の溝が形成されており、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の前端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられているか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の前端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の前端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の前端側には、前記環状の溝と前記中空の針部の内部壁との間にU字状ないしJ字状の貫通孔が形成されており、前記ワイヤーは、前記貫通孔及び前記中空の針部の内部を経て、前記中空の針部の後端側まで延在されることを特徴とする。
【0024】
の態様の生検針によれば、ワイヤーが中空の針部の内部壁に形成された環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定されているため、ワイヤーが注射針形状の開口の開口壁から突出し難くなる。これにより、第の態様の生検針を生体組織に穿刺した際には、抵抗が少なくなるので、穿刺が容易となって中空の針部内へ導入される生体組織片の量を多くすることができるようになる。加えて、第の態様の生検針によれば、ワイヤーの両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の先端側から外部壁又は内部壁との間を連通する貫通孔を通されて中空の針部の内部又は外部を後端側まで延在されているので、第の態様の生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されているワイヤーの両端側を牽引する(引っ張る)ことにより、容易にワイヤーは環状の溝から外れて先端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
加えて、第の態様の生検針では、ワイヤーの一方側の端部が注射針形状の開口の開口壁の先端側近傍で環状の溝内に固着され、他方の端部が注射針形状の開口の開口壁の先端側から外部壁又は内部壁との間を連通する貫通孔を通されて中空の針部の内部又は外部を後端側まで延在されているので、第の態様の生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されている一本のワイヤーを牽引する(引っ張る)ことにより、容易にワイヤーは環状の溝から外れて先端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
また、操作部側からワイヤーの両端部を牽引する場合には、ワイヤーのループは後端側から先端側に向かって小さくなっていく。このような生検針によっても、中空の針部の内部に入った生体組織を効率よく切断することができるようになる。また、1本のワイヤーを操作する場合にも、中空の針部の内部に入った生体組織を効率よく切断することができるようになる。
【0025】
また、本発明の第7の態様の生検針は、
先端に前端側から後端側へ傾きを有する注射針形状の開口を有する中空の針部と、
前記中空の針部の先端側に設けられた前記注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断するためのワイヤーからなる切断手段と、
を備えた、生体組織内に穿刺して前記中空の針部の内部に生体組織の一部を取り込んで採取するための生検針であって、
前記注射針形状の開口の開口壁の表面には環状の溝が形成されており、
前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の前端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられているか、又は、前記ワイヤーは、中間部が前記環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定され、一方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の前端側近傍で前記環状の溝内に固着され、他方の端部が前記注射針形状の開口の開口壁の前端側から前記中空の針部の内部を通されて前記中空の針部の後端側まで延在され、前記中空の針部の後端側から操作可能に設けられており、
前記注射針形状の開口の前端側には、前記環状の溝と前記中空の針部の内部壁との間にU字状ないしJ字状の貫通孔が形成されており、前記ワイヤーは、前記貫通孔及び前記中空の針部の内部を経て、前記中空の針部の後端側まで延在されることを特徴とする。
【0026】
の態様の生検針によれば、ワイヤーが注射針形状の開口の開口壁の表面に形成された環状の溝内に取り外し可能に嵌合・固定されているため、ワイヤーが注射針形状の開口の開口壁から突出し難くなる。これにより、第の態様の生検針を生体組織に穿刺した際には、抵抗が少なくなるので、穿刺が容易となって中空の針部内へ導入される生体組織片の量を多くすることができるようになる。加えて、第の態様の生検針によれば、ワイヤーの両端側がともに前記注射針形状の開口の開口壁の先端側から外部壁又は内部壁との間を連通する貫通孔を通されて中空の針部の内部又は外部を後端側まで延在されているので、第の態様の生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されているワイヤーの両端側を牽引する(引っ張る)ことにより、容易にワイヤーは環状の溝から外れて先端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
加えて、第の態様の生検針では、ワイヤーの一方側の端部が注射針形状の開口の開口壁の先端側近傍で環状の溝内に固着され、他方の端部が注射針形状の開口の開口壁の先端側から外部壁又は内部壁との間を連通する貫通孔を通されて中空の針部の内部又は外部を後端側まで延在されているので、第の態様の生検針を生体組織に穿刺した後に中空の針部の後端側まで延在されている一本のワイヤーを牽引する(引っ張る)ことにより、容易にワイヤーは環状の溝から外れて先端部へ向かって環の径が小さくなり、注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができ、中空の針部内へ多くの生体組織片を採取することができるようになる。
また、第6の態様の生検針と同様に、操作部側からワイヤーの両端部を牽引する場合には、ワイヤーのループは後端側から先端側に向かって小さくなっていく。このような生検針によっても、中空の針部の内部に入った生体組織を効率よく切断することができるようになる。また、1本のワイヤーを操作する場合にも、中空の針部の内部に入った生体組織を効率よく切断することができるようになる。
【0027】
また、本発明の第8の態様の生検針は、第1~第のいずれかの態様の生検針において、前記ワイヤーは、前記環状の溝が形成されている壁面と実質的に同一面を形成するように、前記環状の溝内に嵌合・固定されていることを特徴とする。
【0028】
第8の態様の生検針によれば、ワイヤーが環状の溝が形成されている壁面と実質的に同一面を形成するように嵌合・固定されているので、生検針を生体組織に穿刺した際には抵抗がより少なくなくなる。なお、本発明における「実質的に同一面」という用語は、完全に同一面となっていることが望ましいが、通常のワイヤーの断面は円形状であるので、完全に注射針形状の開口の開口壁の表面又は中空の針部の内部壁と同一面とすることは困難なため、環状の溝から突出していなければ、一部窪んでいる箇所があってもよいことを示す意味で用いられている。
【0029】
また、本発明の第の態様の生検針は、第1~第のいずれかの態様の生検針において、前記ワイヤーは、前記環状の溝内に易剥離性接着剤により固定されていることを特徴とする。
【0030】
の態様の生検針によれば、生検針を生体組織内に穿刺する際にはワイヤーが環状の溝から外れることが少なくなり、中空の針部の後端側まで延在されているワイヤーの端部を操作することにより、容易にワイヤーを環状の溝から外させて注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができるようになる。
【発明の効果】
【0045】
以上述べたように、本発明の生検針によれば、穿刺抵抗が小さく、穿刺時にワイヤーが生検針から取れがたく、またワイヤーによる生体組織の切断を行い易い、特にEUS-FNAに最適な生検針となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1AはEUS-FNAで使用するための超音波内視鏡と本発明の生検針とを組み合わせた状態の斜視図であり、図1Bは粘膜下腫瘍に対してEUS-FNAを適用した際の模式図であり、図1Cは膵臓腫瘍に対してEUS-FNAを適用した際の模式図である。
図2図2Aは実施形態1の生検針の平面図であり、図2A図1の縦断面図である。
図3図3Cは実施形態1の生検針の第1変形例の平面図であり、図3Dは同じく第2変形例の平面図である。
図4図4Aは実施形態2の生検針の平面図であり、図4B図4Aの縦断面図である。
図5図5Aは実施形態3の生検針の平面図であり、図5B図5Aの縦断面図であり、図5Cは図5BのVC-VC断面図である。
図6図6Aは実施形態4の生検針の平面図であり、図6B図6Aの縦断面図である。
図7図7Aは実施形態5の生検針の平面図であり、図7B図7Aの縦断面図である。
図8図8Aは実施形態6の生検針の平面図であり、図8B図8Aの縦断面図であり、図8Cは図8BのVIIIC-VIIIC断面図である。
図9図9Aは実施形態7の生検針の平面図であり、図9Bは実施形態8の生検針の平面図である。
図10図10Aは実施形態9の生検針の平面図であり、図10B図10Aの縦断面図である。
図11図11aは実施形態10の生検針の平面図であり、図11B図11aの縦断面図である。
図12図12Aは実施形態11の生検針の平面図であり、図12B図12Aの縦断面図である。
図13図13Aは実施形態12の生検針の平面図であり、図13B図13Aの縦断面図である。
図14図14Aは実施形態13の生検針の平面図であり、図14B図14Aの縦断面図である。
図15図15Aは従来例の生検針の平面図であり、図15B図15Aの部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の生検針を、各種実施形態を参照して詳細に説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための生検針の例を示すものであって、本発明をこの実施形態に限定することを意図するものではない。本発明は、特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、概略構成を模式的に示すものであるため、各部材について必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0048】
まず、EUS-FNAで使用するための、本発明の生検針を超音波内視鏡装置に適用した例を、図1を用いて説明する。超音波内視鏡装置1は、先端側に超音波プローブ2を備えており、後端側には、図示省略したが、各種操作部及び表示部等が設けられており、この操作部を介して超音波プローブ2で撮像した画像データが表示部等に表示されるようになっている。光学式内視鏡装置は光学撮像センサーにより撮影された画像を表示するものであるため、高分解能であって生体組織の表面の観察には適しているが、深さ方向の観察はできない。それに対して超音波内視鏡は、光学式内視鏡装置よりも解像度は劣るが、深さ方向の観察が可能であるため、生体組織の深部の観察に適している。
【0049】
この超音波内視鏡装置1には鉗子口3が設けられており、操作部側からシース4を介して生検針10が挿入され、この生検針10は超音波プローブ2に対向する位置まで延在されている。また、超音波内視鏡装置1の鉗子口3の近傍には生検針偏角手段5が設けられており、この生検針偏角手段5により生検針10と超音波内視鏡装置1との間のなす角度を適宜に変更することができるようになっている。なお、生検針10は、硬質プラスチックで形成されており、操作部側まで延在している。そして、生検針10の超音波内視鏡装置1の先端側の突出長さは操作部側で任意に調節可能となっている。
【0050】
このような構成の超音波内視鏡装置1を用いて,例えば胃6の粘膜層6aと粘膜下層6bとの間に存在している粘膜下腫瘍組織6cから腫瘍組織片を採取する状態が図1Bに示されている。当初、生検針10を超音波内視鏡装置1内に収納した状態で、画像を注視しながら胃6内の採取すべき粘膜下腫瘍組織6cが存在する位置に超音波プローブ2対向するように、超音波内視鏡装置1を挿入する。次いで、操作部から操作することにより、生検針10を押出すとともに生検針10を適切に偏角させ、生検針10の先端が粘膜下腫瘍組織6c内の所定位置に達するまで穿刺する。
【0051】
次いで、生検針10の内部を負圧にすることによって粘膜下腫瘍組織6cの一部を生検針10内に収納し、所定の切断手段を作動させて生検針10の先端近傍に位置する腫瘍組織を切断し、生検針10内に腫瘍組織片を採取する。その後、生検針10自体を超音波内視鏡装置1から抜き去ることにより所定の腫瘍組織片を回収することができる。このようにして回収されたた腫瘍組織片は、生検部門へ回され、生検部門で適宜に細胞診断が行われる。このような粘膜下腫瘍の場合には、光学内視鏡装置で明瞭に観察が可能であるため、光学内視鏡装置に対して生検針を組み合わせることは一応可能である。
【0052】
しかしながら、図1Cに示したような、例えば膵臓7の内部に生じた膵臓腫瘍8を十二指腸9内に挿入した光学内視鏡装置により検出し、膵臓腫瘍8の組織を採取することは、病変部が十二指腸の筋層9c、粘膜下層9b及び粘膜層9aを介して十二指腸9側から検出できない限り、困難である。それに対し、超音波内視鏡装置1によれば、十二指腸9の粘膜層9a側から膵臓腫瘍8の位置及び大きさを検知することが可能なため、有効に膵臓腫瘍8に対して生検針10を穿刺することができ、所定の膵臓腫瘍8の組織片を回収することができる。
【0053】
[実施形態1]
実施形態1の生検針10を、図2を用いて説明する。なお、図2Aは実施形態1の生検針の平面図であり、図2A図1の縦断面図である。
【0054】
実施形態1の生検針10は、中空円筒状の針部11の一方側の端部に、端部が斜めに切断された注射針形状の開口12が形成されている。注射針形状の開口12の開口壁13には、ほぼ中央部に、環状の溝14が形成されている。この環状の溝14の深さは後述するワイヤー15の径と同じかそれよりも僅かに深くされており、ワイヤー15が開口壁13よりも突出しないようになされている。また、環状の溝14の幅はワイヤー15の径と同じか僅かに大きくされている。
【0055】
注射針形状の開口12の開口壁13の後端側には、ワイヤー15の2本分の幅で、ワイヤー15の径と同じか僅かに深い、短溝16が、環状の溝14の後端側と接続するように形成されている。また、中空円筒状の針部11の側面には、短溝16と同じ深さ及び同じ幅の直線状の溝17が形成されており、この直線状の溝17は中空円筒状の針部11の後端部(図示省略)まで延在されている。すなわち、環状の溝14、短溝16及び直線状の溝17はそれぞれ同一の深さとされ、短溝16及び直線状の溝17は同一の幅とされ、全てつながるように形成されている。
【0056】
そして、環状の溝14内にワイヤー15の中間部がループ状に嵌合されており、ワイヤー15の両端側は互いに合流されて、短溝16及び直線状の溝17を経て、図示省略した超音波内視鏡装置の操作部まで延在されて、操作部より外部に取り出されている。なお、ワイヤー15としては、ナイロン糸やテグス、ステンレス鋼系、チタン系ないし炭素繊維系の糸、タンパク質製の合成蜘蛛の糸等、細径かつ柔軟性がありながら高強度のものを適宜選択して使用し得る。そして、少なくとも環状の溝14内に嵌合されたワイヤー15は、易剥離性接着剤(図示省略)によって、環状の溝14内に固定されている。このワイヤー15が本発明の切断手段に対応する。
【0057】
なお、易剥離性接着剤としては、生検針10を組織内に穿刺した際にはワイヤー15が注射針形状の開口12の環状の溝14から剥離せず、ワイヤー15を両端側から引っ張った場合にワイヤー15が注射針形状の開口12の環状の溝14から外れていく程度の接着性があり、かつ生体親和性が良好なものであればよく、例えば水糊、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0058】
この生検針10の使用方法は、以下のとおりである。まず、図1Bないし図1Cに示したように、超音波内視鏡装置1を所定位置まで挿入する。生検針10の中空円筒状の針部11内に開口が形成されていない内針(図示省略)を挿入し、生検針10の注射針形状の開口12内に生体組織が侵入しない状態とする。この状態の生検針10と内針とを同時に生体組織に穿刺し、目的とする部位の近傍に位置するようにする。その後、内針を固定した状態で生検針10をさらに目的とする部位まで挿入するか、あるいは、内針を少し引いた後に生検針10をさらに目的とする部位まで挿入する。そうすると、生検針10の中空円筒状の針部11内に生体組織が入り込む。
【0059】
この状態では、生検針10の中空円筒状の針部11内に入り込んだ生体組織のうち、生検針10の中空円筒状の針部11の内部壁11aに接している側面は切断されているが、注射針形状の開口12側に位置している生体組織は切断されていない。この状態のまま生検針10を内針とともに引き抜くと、中空円筒状の針部11の内部が負圧になることに起因して生体組織の深部が引きちぎられて中空円筒状の針部11内に残留することがあるが、多くは中空円筒状の針部11から抜け出てしまうため、生体組織の回収率が低くなる。
【0060】
そこで、実施形態1の生検針10では、生検針10の中空円筒状の針部11内に生体組織が入り込んだ後、ワイヤー15の両端側を同時に、ないし細かく往復動させながら牽引する操作を行う。そうすると、ワイヤー15は他方の端部側へ引っ張られるに従って注射針形状の開口12の環状の溝14から徐々に離脱してループの径が小さくなり、それに伴って注射針形状の開口12の環状の溝14に沿って生体組織の深部が切断されていく。そして、ワイヤー15のループが閉じた状態では注射針形状の開口12部分に位置している生体組織は実質的に全て切断された状態となる。
【0061】
この状態で、生検針10を内針とともに引き抜くと、生体組織が切断されているために、採取された生体組織片は中空円筒状の針部11内に留まったまま取り出すことができるので、生体組織片の回収率が高くなる。なお、生検針10を内針とともに引き抜く際に、先に内針を引き抜いていてから注射器をつけて吸引をかけると、中空円筒状の針部11の内部が陰圧になるので、生体組織片が中空円筒状の針部11の奥側に位置するようになり、生体組織片の回収率が向上する。その際、注射器の引く容量によって陰圧の強さを調節できるが、実施形態1の生検針10では生体組織が切断されているために、従来法に比べ弱い陰圧で組織を回収することが可能になる。したがって、生体組織がバラバラに分断される確率も低くなる。
【0062】
なお、実施形態1の生検針10は、そのまま周知の注射筒に接続して単独で用いてもよく、あるいは超音波内視鏡装置だけでなく、光学内視鏡装置と組み合わせて用いることも可能である。実施形態1の生検針10を超音波内視鏡装置だけでなく、光学内視鏡装置と組み合わせて用いる場合には、それぞれの操作部と生検針10の注射針形状の開口12の部分までの長さが非常に長くなるが、このような状態であっても、生検針10を生体組織の目的とする部位まで穿刺した後にワイヤー15を操作部側から牽引すると、注射針形状の開口12部分に位置している生体組織を容易に切断することができるようになる。特に、ワイヤー15の両端側が操作部まで延在されているので、ワイヤー15の両端側をそれぞれ異なる方向に細かく往復動させることによりワイヤー15をのこぎりのように作動させることができるため、生体組織の切断が容易となる。
【0063】
また、実施形態1では、生検針10と内針とを組み合わせて用いた例を示した。このような構成を採用すると、生検針10の注射針形状の開口12が所望の深さに到達するまでは生検針10の中空円筒状の針部11内に侵入し難くなるので、目的とする生体組織片を容易に採取することができるようになる。なお、表面の生体組織片を採取する場合には、内針を用いることなく生検針10を単独で用いてもよいが、この場合においても内針を用いることによって吸引生検と同様の作用効果を奏させることができるので、生体組織片の採取効率が向上する。
【0064】
なお、実施形態1の生検針10においては、注射針形状の開口12の開口壁13の後端側には短溝16を環状の溝14の後端側と接続するように形成した例を示したが、この短溝16は生検針10の作動に必ずしも必要な構成ではない。しかしながら、この短溝16がないと、ワイヤー15が注射針形状の開口12の開口壁13の後端側を乗り越える部分が開口壁13の表面から突出するため、生検針10の穿刺時に抵抗が大きくなったり、ワイヤー15がずれたりする可能性がある。それに対し、短溝16を設けると、ワイヤー15が注射針形状の開口12の開口壁13の後端側を乗り越える部分で開口壁13の表面から突出することがなくなり、生検針10の穿刺時の抵抗が小さくなるとともに、ワイヤー15の両端側が短溝16内に嵌合・固定されているので、生検針10の穿刺時にワイヤー15がずれることがなくなる。
【0065】
また、実施形態1の生検針10においては、中空円筒状の針部11の側面に短溝16と同じ深さ及び同じ幅の直線状の溝17を形成した例を示したが、この直線状の溝17も生検針10の作動には必ずしも必要な構成ではない。しかしながら、このような直線状の溝17を設けると、ワイヤー15の両端側がそれぞれ中空円筒状の針部11の側面から突出しないようにできるので、生検針10を内視鏡装置の鉗子口内に挿通する際に抵抗が少なくなり、スムーズに挿入することができるようになる。なお、直線状の溝17内に配置されているワイヤー15は、直線状の溝17内で容易に摺動可能させることができる程度に嵌合されていればよい。
【0066】
さらに、実施形態1の生検針10としては、中空円筒状の針部11の注射針形状の開口12として、図2Bに示したように、側面視直線状となっているものを用いた例を示したが、これに限らず側面視凹状となっているいわゆるメンギーニ形状となっているものも使用することができる。このようなメンギーニ形状となっているものを使用すると、本質的に側面視直線状となっているものよりも穿刺時の抵抗が小さくなるので、より良好に生体組織片を採取することができるようになる。なお、中空円筒状の針部11の注射針形状の開口12の形状がメンギーニ形状となっているものは、以下に示す変形例1及び2、実施形態2~13の場合においても同様に採用することができる。
【0067】
[変形例1及び2]
ここで、実施形態1の生検針10の変形例を、図3を用いて説明する。なお、図3Aは実施形態1の生検針の第1変形例の平面図であり、図3Bは同じく第2変形例の平面図である。また、図3A及び図3Bにおいては、図2A及び図2Bに示した実施形態1の生検針10と同じ構成部分には同じの参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0068】
実施形態1の生検針10では、注射針形状の開口12の開口壁13のほぼ中央部に環状の溝14を形成した例を示したが、変形例1の生検針10Aは、図3Aに示したように、環状の溝14を注射針形状の開口12の開口壁13の外部壁に形成したものである。同じく、変形例2の生検針10Bは、図3Bに示したように、環状の溝14を注射針形状の開口12の開口壁13の内周側に形成したものである。変形例1及び2のいずれの生検針10A、10Bであっても、実質的に実施形態1の生検針の場合と同様の作用・効果を奏する。
【0069】
[実施形態2]
実施形態2の生検針10Cを、図4を用いて説明する。なお、図4Aは実施形態2の生検針10Cの平面図であり、図4B図4Aの縦断面図である。また、図4A及び図4Bにおいては、図2A及び図2Bに示した実施形態1の生検針10と同じ構成部分には同様の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0070】
実施形態1の生検針10では、注射針形状の開口12の開口壁13のほぼ中央部に環状の溝14を形成した例を示したが、実施形態2の生検針10Cは、環状の溝14Cを生検針10Cの中空円筒状の針部11の内部壁11aに形成したものである。この環状の溝14Cの最先端部14aは、注射針形状の開口12の先端側12aから僅かに内部に入った箇所から注射針形状の開口12の後端側12bに対応する箇所まで設けられている。
【0071】
この場合の短溝16aは、注射針形状の開口12の開口壁13における後端側を横断するように形成されている。このような構成を備える実施形態2の生検針10Cによれば、中空円筒状の針部11の開口12側から見た場合、ワイヤー15が中空円筒状の針部11の内部壁11a側に突出することがなくなるとともに、注射針形状の開口12の開口壁13には短溝16a以外に何等の構成も備えていないため、穿刺時の挿入抵抗が小さくなって生体組織片の採取効率が向上する。
【0072】
また、実施形態2の生検針10Cにおいては、中空円筒状の針部11の側面に短溝16と同じ深さ及び同じ幅の直線状の溝17を形成した例を示したが、実施形態1の生検針10の場合と同様に、この直線状の溝17も生検針10Cの作動には必ずしも必要な構成ではない。
【0073】
[実施形態3]
実施形態3の生検針10Dを、図5を用いて説明する。なお、図5Aは実施形態3の生検針の平面図であり、図5B図5Aの縦断面図であり、図5Cは図5BのVC-VC断面図である。また、図5A図5Cにおいては、図4A及び図4Bに示した実施形態2の生検針10Cと同じ構成部分には同様の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0074】
実施形態2の生検針10Cでは、環状の溝14Cを注射針形状の開口12の先端側12aから僅かに内部に入った箇所から注射針形状の開口12の後端側12bに対応する箇所まで設けられているが、実施形態3の生検針10Dでは環状の溝14Cが注射針形状の開口12の先端側12aから僅かに内部に入った箇所から注射針形状の開口12の後端側から僅かに入った箇所まで設けられている。そして、実施形態3の生検針10Dでは、中空の針部11の外部壁に短溝16及び直線状の溝17は設けず、また、中空の針部11の内部壁11aに、注射針形状の開口12の後端側から僅かに入った箇所にワイヤー15よりも僅かに大径のU字状ないしJ字状(以下、単に「U字状」ということがある。)の貫通孔17bが設けられており、また、中空の針部11の内部壁11aに、U字状の貫通孔17bに連なり、中空の針部11の後端側まで延在する溝17aが形成されている。
【0075】
なお、この貫通孔17bは、環状の溝14C側から見ると直線状とみることもできるが、ここでは図5Bの記載から見て、あえてU字状ないしJ字状と表現している。また、このU字状ないしJ字状の貫通孔17bに換えて、環状の溝14Cから中空円筒状の針部11の外部壁に向けて第1の貫通孔を形成し、さらに外部壁から内部壁11aに向けて第2の貫通孔を形成し、ワイヤー15を環状の溝14Cから第1の貫通孔を経て外部壁側へ出し、さらに外部壁側から第2の貫通孔を経て中空円筒状の針部11の内部壁11a側に至るようにすることも可能である。しかしながら、このような構成を採用すると、ワイヤー15の摩擦抵抗が大きくなるため、ワイヤー15が外部壁側に露出しないようにする方が好ましい。
【0076】
このU字状の貫通孔17bは、一方の端部が中空の針部11の内部壁11a側に開通し、中空の針部11の壁の内部を通って、他方側の端部が前述した一方の端部とは後端側の異なる位置で中空の針部11の内部壁11a側に開通している。そして、ワイヤー15は、中間部を環状の溝14C内に嵌合・固定し、両端部を揃えてU字状の貫通孔17bを通され、次いで中空の針部11の内部壁に形成された溝17a内に嵌合・固定されて中空の針部11の後端側まで延在されたものである。
【0077】
中空の針部11の内径は小さく、また、中空の針部11には生検針10Dの使用時に内針が挿入されるが、中空の針部11の内面と内針との間のすき間も非常に小さくなるので、通常はワイヤーと中空の針部の内面及び内針の外面との間の摩擦も大きくなり、ワイヤーの操作性が悪化する。それに対し、実施形態3の生検針10Dによれば、中空の針部11の内部壁11aに注射針形状の開口12の後端側12bから中空の針部11の後端側まで直線状の溝17aが形成されているので、この溝17a内にワイヤー15を配置することができ、しかも、中空円筒状の針部11の開口12側から見た場合、中空の針部11の内部壁11a側には一切のワイヤー15が突出しないようにできるので、ワイヤー15の摩擦が小さくなって操作性がより良好となるという付加的な効果も奏するようになる。また、ワイヤー15の両端部を牽引する際には、U字状の貫通孔が支点となってワイヤー15のループの径が小さくなるので、環状の溝14Cに沿って中空の針部11内に入り込んだ生体組織を効率よく切断することができるようになる。
【0078】
なお、実施形態3の生検針10Dにおいて、中空の針部11の内部壁11aに直線状の溝17aを形成しない場合には、図示省略した内針の外部壁に直線状の溝を形成すると、実質的に中空の針部11の内部壁11aに直線状の溝17aを形成した場合と同様の効果を奏することができる。
【0079】
[実施形態4]
実施形態4の生検針10Eを、図6を用いて説明する。なお、図6Aは実施形態4の生検針の平面図であり、図6B図6Aの縦断面図である。また、図6A及び図6Bにおいては、図2A及び図2Bに示した実施形態1の生検針10と同じ構成部分には同様の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0080】
実施形態4の生検針10Eは、実施形態1の生検針10において、実質的に直線状の溝17を削除し、短溝16が中空円筒状の針部11の側面と交わる場所の近傍に中空の針部11の側壁を貫通する貫通孔18を形成し、ワイヤー15の両端側を、短溝16を経て直ちに貫通孔18を挿通させ、中空円筒状の針部11の内部壁11aに沿って操作部まで延在させた点である。
【0081】
このような構成を備える実施形態4の生検針10Eによれば、ワイヤー15の両端側が中空円筒状の針部11の側面を実質的に通っておらず、しかも生検針10Eの生体組織への穿刺時には、上述したように内針が挿入されているので、ワイヤー15の両端側は、ともに内針と中空円筒状の針部11の内部壁11aとの間に挟持された状態となるので、安定した状態に保持される。これにより、穿刺時の挿入抵抗が小さくなって生体組織片の採取効率が向上するとともに、ワイヤー15がずれてしまうことが抑制され、生体組織片の採取効率が向上する。
【0082】
なお、実施形態4の生検針10Eにおいても、図示省略したが、実施形態3の生検針10Dの場合と同様に、中空の針部11の内部壁11aに注射針形状の開口12の後端側から中空の針部11の後端側まで溝17aを形成し、ワイヤー15の環状の溝14Cから延在されている両端側をそれぞれ中空の針部11の内部壁に形成された溝17a内に嵌合・固定して中空の針部11の後端側まで延在させた構成を採用することもできる。この場合も、中空円筒状の針部11の開口12側から見た場合、ワイヤー15が中空円筒状の針部11の内部壁11a側に突出することがなくなるので、溝17aを形成しない場合よりも操作性が良好となる。
【0083】
[実施形態5]
実施形態5の生検針10Fを、図7を用いて説明する。なお、図7Aは実施形態5の生検針の平面図であり、図7B図7Aの縦断面図である。また、図7A及び図7Bにおいては、図2A及び図2Bに示した実施形態1の生検針10と同じ構成部分には同様の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0084】
実施形態5の生検針10Fが実施形態1の生検針10と構成が相違する点は、実施形態1の生検針10の直線状の溝17を設けず、環状の溝14のワイヤー15の両端側が合流する点に中空の円筒状の針部11の内部と連通する貫通孔19を形成し、ワイヤー15の両端側を直接貫通孔19に挿通し、中空円筒状の針部11の内部壁11aに沿って操作部まで延在させた点である。
【0085】
このような構成を備える実施形態5の生検針10Fによれば、ワイヤー15の両端側が中空円筒状の針部11の外側面を実質的に通っておらず、しかも生検針10Fの生体組織への穿刺時には、上述したように内針が挿入されているので、実施形態1の生検針10の場合と同様にワイヤー15の両端側は、ともに内針と中空円筒状の針部11の内部壁11aとの間に挟持された状態となるので、安定した状態に保持される。これにより、穿刺時の挿入抵抗が小さくなって生体組織片の採取効率が向上するとともに、ワイヤー15がずれてしまうことが抑制され、生体組織片の採取効率が向上する。
【0086】
[実施形態6]
実施形態6の生検針10Gを、図8を用いて説明する。なお、図8Aは実施形態6の生検針の平面図であり、図8B図8Aの縦断面図であり、図8Cは図8BのVIIIC-VIIIC断面図である。また、図8A図Cにおいては、図7A及び図7Bに示した実施形態5の生検針10Fと同じ構成部分には同様の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0087】
実施形態5の生検針10Fでは、環状の溝14のワイヤー15の両端側が合流する点に中空の円筒状の針部11の内部と連通する貫通孔19を形成し、ワイヤー15の両端側を直接貫通孔19に挿通し、中空円筒状の針部11の内部壁11aに沿って操作部まで延在させたが、実施形態6の生検針10Gでは、中空の針部11の内部壁11aに、貫通孔19から中空の針部11の後端側まで直線状の溝17aを形成し、ワイヤー15の環状の溝14から延在されている両端側をそれぞれ中空の針部11の内部壁に形成された直線状の溝17a内に嵌合・固定して中空の針部11の後端側まで延在させたものである。
【0088】
このような構成を備える実施形態6の生検針10Fによれば、中空の針部11の内部壁11aに注射針形状の開口12の後端側12bから中空の針部11の後端側まで溝17aが形成されているので、この溝17a内にワイヤー15を配置することができ、しかも、中空円筒状の針部11の開口12側から見た場合、中空の針部11の内部壁11a側には一切のワイヤー15が突出しないようにできるので、実施形態5の生検針10Fが奏する効果に加えて、ワイヤー15の摩擦が小さくなって操作性がより良好となるという付加的な効果も奏するようになる。
【0089】
[実施形態7及び8]
実施形態7及び8の生検針10H及び10Iをそれぞれ図9A及び図9Bを用いて説明する。なお、図9Aは実施形態7の生検針の平面図であり、図9Bは実施形態8の生検針の平面図である。
【0090】
実施形態7の生検針10Hが実施形態1の生検針10と構成が相違する点は、実施形態1の生検針10では、環状の溝14内にワイヤー15の中間部がループ状に嵌合されており、ワイヤー15の両端側は互いに合流されて、短溝16及び直線状の溝17を経て、中空の針部11の後端側まで延在されているのに対し、実施形態7の生検針10Hでは、短溝16の近傍の環状の溝14内で、ワイヤー15の一方側の端部が接着材20によって固定され、ワイヤー15の他方側のみが短溝16及び直線状の溝17を経て、中空の針部11の後端側まで延在されている点である。
【0091】
また、実施形態8の生検針10Iが実施形態5の生検針10Fと構成が相違する点は、実施形態5の生検針10Fでは、環状の溝14内にワイヤー15の中間部がループ状に嵌合・固定されており、ワイヤー15の両端側が直接貫通孔19に挿通されて、中空円筒状の針部11の内部壁11aに沿って操作部まで延在されているのに対し、実施形態8の生検針10Iでは、ワイヤー15の一方側の端部が貫通孔19の近傍の環状の溝14内で接着材20によって固定され、ワイヤー15の他方側のみが貫通孔19及び中空の針部11の内部を経て、中空の針部11の後端側まで延在されている点である。
【0092】
このような構成の実施形態7の生検針10H及び実施形態8の生検針10Iによれば、両者とも1本のワイヤー15を操作するのみで注射針形状の開口部分に位置する生体組織を切断することができるので、ワイヤー15の両端側を中空の針部11の後端側まで延在させた場合よりもワイヤー15の摩擦が小さくなって操作性が良好となる。
【0093】
なお、実施形態7の生検針10Hでは、短溝16及び直線状の溝17は必ずしも必要な構成ではないが、短溝16及び直線状の溝17を設けた方が穿刺時の抵抗が小さくなり、生体組織片の採取効率が良好となる。また、実施形態8の生検針10Iにおいては、実施形態6の生検針10Gの場合と同様に、中空の針部11の内部壁11aに、注射針形状の開口12の後端側から中空の針部11の後端側まで直線状の溝17aを形成し、環状の溝14から延在されている1本のワイヤー15を中空の針部11の内部壁11aに形成された溝17a内に嵌合・固定して中空の針部11の後端側まで延在させるようにすることもできる。
【0094】
[実施形態9]
実施形態9の生検針10Jを、図10を用いて説明する。なお、図10Aは実施形態9の生検針10Jの平面図であり、図10B図10Aの縦断面図である。また、図10A及び図10Bにおいては、図5A及び図5Bに示した実施形態5の生検針10Fと同じ構成部分には同様の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0095】
実施形態5の生検針10Fでは、図7に示したように、注射針形状の開口12の開口壁13に形成された環状の溝14の後端側12bに貫通孔19を形成し、この貫通孔19によって環状の溝14の内部と中空円筒状の針部11の内部との間を連通させ、ワイヤー15の両端側を貫通孔19に挿通し、中空円筒状の針部11の内部壁11aに沿って操作部まで延在させている。それに対し、実施形態9の生検針10Jでは、図10に示したように、注射針形状の開口12の開口壁13に形成された環状の溝14の先端側に貫通孔19aを形成し、この貫通孔19aによって環状の溝14の内部と中空円筒状の針部11の外部壁とを連通させ、ワイヤー15の両端側を貫通孔19aに挿通させ、中空円筒状の針部11の外部壁に沿って操作部まで延在させたものである。
【0096】
このような構成の実施形態9の生検針10Jによれば、ワイヤー15を、一旦貫通孔19を通した後は中空円筒状の針部11の外部壁に沿って配置すればすむので組立が容易となるとともに、実質的に実施形態1の生検針10と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、実施形態9の生検針10Jを生体組織に穿刺して生検針10の中空円筒状の針部11内に生体組織が入り込んだ後、ワイヤー15の両端側を同時に、ないし細かく往復動させながら牽引する操作を行うと、注射針形状の開口12の環状の溝14から徐々に離脱して実施形態1の生検針10の場合とは反対側の先端側に向かってループの径が小さくなり、それに伴って注射針形状の開口12の環状の溝14に沿って生体組織の深部が切断されていく。そして、ワイヤー15のループが貫通孔19aに達して閉じた状態となると、注射針形状の開口12部分に位置している生体組織は実質的に全て切断された状態となる。
【0097】
このような構成を備える実施形態9の生検針10Jにおいても、実施形態1の生検針10の場合と同様に中空円筒状の針部11の側面に直線状の溝を形成してもよく、実施形態7の生検針10Hないし実施形態8の生検針10Iの場合と同様に、環状の溝14内の貫通孔19aの近傍でワイヤー15の一方側の端部を接着剤によって固定し、ワイヤー15の他方側の端部のみを貫通孔19aを通して中空円筒状の針部11の外部壁に沿って操作部まで延在させてもよい。さらには、実施形態2の生検針10Cの場合と同様に、環状の溝を中空円筒状の針部11の内部壁に形成してもよい。
【0098】
[実施形態10]
実施形態10の生検針10Kを、図11を用いて説明する。なお、図11aは実施形態10の生検針の平面図であり、図11B図11aの縦断面図である。また、図11a及び図11Bにおいては、図5A図5Cに示した実施形態3の生検針10Dと同じ構成部分には同様の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0099】
実施形態10の生検針10Kが実施形態3の生検針10Dと構成が相違する点は、U字状の貫通孔17bを、実施形態3の生検針10Dでは環状の溝14Cの注射針形状の開口12の後端側から僅かに入った箇所に設けているのに対し、実施形態10の生検針10Kでは逆に環状の溝14Cの注射針形状の開口12の先端側に設けている点、及び、ワイヤーの両端部を、実施形態3の生検針10Dでは注射針形状の開口12の後端側から中空の針部11の内部壁11aに設けられた直線状の溝17aに嵌合・固定して操作部側まで延在刺せているのに対し、実施形態10の生検針10Kでは、注射針形状の開口12の先端側から中空の針部11の内部壁11aに設けられた直線状の溝17aに嵌合・固定して操作部側まで延在させている点である。
【0100】
すなわち、操作部側からワイヤー15の両端部を牽引すると、ワイヤー15のループは、実施形態3の生検針10Dでは先端側から後端側に向かって小さくなっていくが、実施形態10の生検針10Kでは後端側から先端側に向かって小さくなっていく。このような構成の実施形態10の生検針10Kによっても、中空の針部11の内部に入った生体組織を効率よく切断することができるようになる。
【0101】
[実施形態11]
実施形態11の生検針10Lを、図12を用いて説明する。なお、図12Aは実施形態11の生検針の平面図であり、図12B図12Aの縦断面図である。また、図12A及び図12Bにおいては、図11a及び図11Bに示した実施形態10の生検針10Kと同じ構成部分には同様の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0102】
実施形態11の生検針10Lが実施形態9の生検針10Kと構成が相違する点は、実施形態9の生検針10Kでは、環状の溝14内にワイヤー15の中間部がループ状に嵌合されており、ワイヤー15の両端側は先端側で互いに合流されて、U字状の貫通孔17bを通されて、中空の針部11の内部壁11aに形成された直線状の溝17a内を後端側まで延在されているのに対し、実施形態11の生検針10Lでは、U字状の貫通孔17bの近傍の環状の溝14内で、ワイヤー15の一方側の端部が接着材20によって固定され、ワイヤー15の他方側のみがU字状の貫通孔17b及び直線状の溝17を経て、中空の針部11の後端側まで延在されている点である。
【0103】
このような構成の実施形態11の生検針10Lによれば、1本のワイヤー15を操作するのみで中空の針部11の内部に入った生体組織を効率よく切断することができるようになる。なお、実施形態11の生検針10Lにおいても、直線状の溝17を形成しない場合には、図示省略した内針の外部壁に直線状の溝を形成することにより同様の作用効果を奏させることができるようになる。
【0104】
[実施形態12]
実施形態12の生検針10Mを、図13を用いて説明する。なお、図13Aは実施形態12の生検針の平面図であり、図13B図13Aの縦断面図である。また、図13A及び図13Bにおいては、図11a及び図11Bに示した実施形態10の生検針10Kと同じ構成部分には同様の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する
【0105】
実施形態10の生検針10Kでは、環状の溝14Cが注射針形状の開口12の先端側12aから僅かに内部に入った箇所から注射針形状の開口12の後端側12bから僅かに入った箇所まで設けられており、注射針形状の開口12の先端側12aから僅かに入った箇所にU字状の貫通孔17bが設けられている。また、中空の針部11の内部壁11aに、U字状の貫通孔17bに連なり、中空の針部11の後端側まで延在する直線状の溝17aが形成されている。
【0106】
それに対し、実施形態12の生検針10Mは、注射針形状の開口12の開口壁13の内周側に環状の溝14が形成され、環状の溝14の先端側にU字状の貫通孔17bが形成され、環状の溝14内にワイヤー15の中間部がループ状に嵌合されており、ワイヤー15の両端側は互いに合流されて、U字状の貫通孔17bを通されて、中空円筒状の針部11の内部壁11aに沿って操作部まで延在されて、操作部より外部に取り出されている。なお、実施形態12の生検針10Mでは、中空の針部11の内部壁11aに直線状の溝は形成されていない。
【0107】
このような構成の実施形態12の生検針10Mによれば、中空の針部11の内部壁11aに直線状の溝が形成されていないことにより、ワイヤー15の操作時の摩擦が大きくなる点があるとしても、その他の点においては実質的に実施形態10の生検針10Kと同様の作用効果を奏する。なお、ワイヤー15の操作時の摩擦が大きくなる点は、外周面に直線状の溝を形成した内針を用いることにより克服することができる。
【0108】
[実施形態13]
実施形態13の生検針10Nを、図14を用いて説明する。なお、図14Aは実施形態13の生検針の平面図であり、図14B図14Aの縦断面図である。また、図14A及び図14Bにおいては、図13A及び図13Bに示した実施形態12の生検針10Mと同じ構成部分には同様の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する
【0109】
実施形態13の生検針10Nが実施形態12の生検針10Mと構成が相違する点は、実施形態12の生検針10Mでは、環状の溝14内にワイヤー15の中間部がループ状に嵌合されており、ワイヤー15の両端側は先端側で互いに合流されて、U字状の貫通孔17bを通されて、中空の針部11の内部壁11aに沿って中空の針部11の後端側まで延在されているのに対し、実施形態13の生検針10Nでは、U字状の貫通孔17bの近傍の環状の溝14内で、ワイヤー15の一方側の端部が接着材20によって固定され、ワイヤー15の他方側のみがU字状の貫通孔17bを経て、中空の針部11の後端側まで延在されている点である。
【0110】
このような構成の実施形態13の生検針10Nによれば、1本のワイヤー15を操作するのみで中空の針部11の内部に入った生体組織を効率よく切断することができるようになる。なお、実施形態13の生検針10Nにおいても、直線状の溝17を形成しない場合には、図示省略した内針の外部壁に直線状の溝を形成することにより同様の作用効果を奏させることができるようになる。
【符号の説明】
【0111】
1…超音波内視鏡装置 2…超音波プローブ
3…鉗子口 4…シース
5…生検針偏角手段 6…胃
6a…粘膜層 6b…粘膜下層
6c…粘膜下腫瘍組織 7…膵臓
8…膵臓腫瘍 9…十二指腸
9a…粘膜層 9b…粘膜下層
9c…筋層 10、10A~10N…生検針
11…中空円筒状の針部 11a…(中空円筒状の針部の)内部壁
12…注射針形状の開口 12a…開口壁13の先端側
12b…開口壁13の後端側 13…開口壁
14、14C…環状の溝 14a…(環状の溝の)最先端部
15…ワイヤー 16、16a…短溝
17、17a…直線状の溝 17b…U字状ないしJ字状の貫通孔
18、19、19a…貫通孔 20…接着剤
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