(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】移動体取付具、安全具、安全装置、運搬体取付具及び昇降装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20221020BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20221020BHJP
E04G 5/00 20060101ALI20221020BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
E04G21/32 D
E04G21/16
E04G5/00 301Z
A62B35/00 F
(21)【出願番号】P 2018098871
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2021-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年11月28日に開催された中小企業 新ものづくり・新サービス展
(73)【特許権者】
【識別番号】599057858
【氏名又は名称】有限会社 ステップアップ
(74)【代理人】
【識別番号】100111659
【氏名又は名称】金山 聡
(72)【発明者】
【氏名】浜野 雅之
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-240327(JP,A)
【文献】特開2014-152467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/00
E04G 5/14
E04G 5/16
E04G 7/00
E04G 21/16
E04G 21/32
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状部材に沿って移動する移動体を該棒状部材に移動可能に取り付ける移動体取付具であって、
前記移動体取付具は、
間隙部を有するリング状の一体物であるフレームと、
前記フレームに設けられた係合部であって、前記移動体を前記フレームに係合させる係合部と、
前記棒状部材に当接可能なように前記フレームのフレーム本体に嵌め込まれた一対の円筒状の回転体であって、第1の最小間隔で向き合うように配置された第1の回転体と、
前記第1の回転体が前記棒状部材に当接する位置と前記棒状部材の中心を挟んで対向する位置において前記棒状部材に当接可能なように前記フレームに取り付けられた一対の円筒状の回転体であって、第2の最小間隔で向き合うように配置された第2の回転体と
を備え、
前記フレームの内径は、前記棒状部材の外径より大きく、
前記間隙部の最小長さは、前記棒状部材の外径より小さく、
前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔は、前記棒状部材の外径より小さく、
隣り合う前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔より大きく、
対向する前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記棒状部材の外径より大きいこと
を特徴とする移動体取付具。
【請求項2】
前記係合部は前記リング状のフレームにおける前記間隙部と対向する位置に設けられ、
前記第1の回転体は、前記係合部を挟むようにして配置され、
前記第2の回転体は、前記間隙部を形成する前記フレームの端部に配置されていることを特徴する請求項1記載の移動体取付具。
【請求項3】
棒状部材に沿って移動する安全帯と、該棒状部材に該安全帯
を取り付ける安全帯取付具を備えた安全具であって、
前記安全帯取付具は、
間隙部を有するリング状の一体物であるフレームと、
前記フレームに設けられた係合部であって、前記安全帯を前記フレームに係合させる係合部と、
前記棒状部材に当接可能なように前記フレームのフレーム本体に嵌め込まれた一対の円筒状の回転体であって、第1の最小間隔で向き合うように配置された第1の回転体と、
前記第1の回転体が前記棒状部材に当接する位置と前記棒状部材の中心を挟んで対向する位置において前記棒状部材に当接可能なように前記フレームに取り付けられた一対の円筒状の回転体であって、第2の最小間隔で向き合うように配置された第2の回転体と
を備え、
前記フレームの内径は、前記棒状部材の外径より大きく、
前記間隙部の最小長さは、前記棒状部材の外径より小さく、
前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔は、前記棒状部材の外径より小さく、
前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔より大きく、
対向する前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記棒状部材の外径より大きいこと
を特徴とする安全具。
【請求項4】
前記係合部は前記リング状のフレームにおける前記間隙部と対向する位置に設けられ、
前記第1の回転体は、前記係合部を挟むようにして配置され、
前記第2の回転体は、前記間隙部を形成する前記フレームの端部に配置されていることを特徴する請求項3記載の安全具。
【請求項5】
支持部材と、該支持部材で支持された棒状部材と、該棒状部材に沿って移動する安全帯と、該棒状部材に該安全帯
を取り付ける安全帯取付具を備えた安全装置であって、
前記安全帯取付具は、
間隙部を有するリング状の一体物であるフレームと、
前記フレームに設けられた係合部であって、前記安全帯を前記フレームに係合させる係合部と、
前記棒状部材に当接可能なように前記フレームのフレーム本体に嵌め込まれた一対の円筒状の回転体であって、第1の最小間隔で向き合うように配置された第1の回転体と、
前記第1の回転体が前記棒状部材に当接する位置と前記棒状部材の中心を挟んで対向する位置において前記棒状部材に当接可能なように前記フレームに取り付けられた一対の円筒状の回転体であって、第2の最小間隔で向き合うように配置された第2の回転体と
を備え、
前記フレームの内径は、前記棒状部材の外径より大きく、
前記間隙部の最小長さは、前記支持部材の幅より大きくて前記棒状部材の外径より小さく、
前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔は、前記棒状部材の外径より小さく、
前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔より大きく、
対向する前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記棒状部材の外径より大きいこと
を特徴とする安全装置。
【請求項6】
垂直棒状部材に沿って昇降する運搬体を該垂直棒状部材に昇降可能に取り付ける運搬体取付具であって、
前記運搬体取付具は、
間隙部を有するリング状の一体物であるフレームと、
前記フレームに設けられた係合部であって、前記運搬体を前記フレームに係合させる係合部と、
前記垂直棒状部材に当接するように前記フレームのフレーム本体に嵌め込まれた一対の円筒状の回転体であって、第1の最小間隔で向き合うように配置された第1の回転体と、
前記第1の回転体が前記垂直棒状部材に当接する位置と前記垂直棒状部材の中心を挟んで対向する位置において
前記垂直棒状部材に当接するように前記フレームに取り付けられた一対の円筒状の回転体であって、第2の最小間隔で向き合うように配置された第2の回転体と
を備え、
前記フレームの内径は、前記垂直棒状部材の外径より大きく、
前記間隙部の最小長さは、前記垂直棒状部材の外径より小さく、
前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔は、
前記垂直棒状部材の外径より小さく、
前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔より大きいこと
を特徴とする運搬体取付具。
【請求項7】
垂直棒状部材と、該垂直棒状部材に沿って昇降する運搬体と、該運搬体を前記垂直棒状部材に昇降可能に取り付ける運搬体取付具を備えた昇降装置であって、
前記運搬体取付具は、
間隙部を有するリング状の一体物であるフレームと、
前記フレームに設けられた係合部であって、前記運搬体を前記フレームに係合させる係合部と、
前記垂直棒状部材に当接するように前記フレームのフレーム本体に嵌め込まれた一対の円筒状の回転体であって、第1の最小間隔で向き合うように配置された第1の回転体と、
前記第1の回転体が前記垂直棒状部材に当接する位置と前記垂直棒状部材の中心を挟んで対向する位置において前記垂直棒状部材に当接するように前記フレームに取り付けられた一対の円筒状の回転体であって、第2の最小間隔で向き合うように配置された第2の回転体と
を備え、
前記フレームの内径は、前記垂直棒状部材の外径より大きく、
前記間隙部の最小長さは、前記垂直棒状部材の外径より小さく、
前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔は、
前記垂直棒状部材の外径より小さく、
前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔より大きいこと
を特徴とする昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場等を構成するパイプ等の棒状部材に沿って移動する安全帯等の移動体を棒状部材に取り付けるための移動体取付具、この移動体取付具を利用した安全具、安全装置、垂直パイプに沿って昇降する運搬籠等の運搬体を垂直パイプ等の垂直棒状部材に取り付けるための運搬体取付具、昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築工事では各種足場が使用されるが、足場を構成する手摺等のパイプや支柱に取り付けた垂直パイプに移動体を取り付け、この移動体をパイプに沿って移動させることも行われ、移動体としては、安全帯、資材を運搬する運搬籠等が挙げられる。この移動体の中でも安全帯は作業者の安全を図る上で重要であり、足場等で作業をする作業者は、安全帯を身に着け、足場板等を踏み外しても地面に落下しないようにしている。
この場合、安全帯を身に着けた作業者が自由に移動できるように、安全帯のロープ部の一端はパイプからなる手摺等に移動可能に取り付けられる。
例えば、特許文献1(特開2008-25254号公報)には、上部横材と、この上部横材の両側下部に垂設した正面上向きでコ字状に成形した下部横材と、この下部横材の両側に抱合せて回転自在に結合した左右一対の縦材と、上記上部横材の両端に形成した先細のガイド部とからなる手摺が開示され、上部横材には命綱取付用のガイドGがスライド自在に挿入されることが記載されている。
特許文献2(特開2012-193532号公報)には、手摺の棒状の手摺枠部に着脱自在に取り付けられる、長手方向に空隙部を有する、略筒状の本体部を備えた緩着部材と、安全帯に掛止する掛止部材と、これらを繋ぐロープ状部材とから構成され、本体部は、複数の接合部材からなり、接合部材は、本体部の一方の側面の周縁部から他方の側面の周縁部に繋がる切断面により切断した形状の嵌着体部と、切断面又は/及び切断面の周縁部に設けられた接合部とから成り、本体部は複数の接合部材を接合部により接合することによって、手摺枠部に移動可能に緩く取り付けられ、接合により形成された空隙部の間隔は、手摺枠部の、中心軸方向に垂直な断面において、最も短い長さよりも小さく、手摺を支える支持部材の幅よりも大きくなるように構成した安全具が開示され、緩着部材の内壁面の表面には、複数の回転体が配設され、この回転体が回転することによって、安全具が手摺の手摺枠部を移動することが記載されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の手摺に挿入される命綱取付用のガイドGは、断面が略矩形の筒状本体を有し、筒状本体には、その上壁と内壁に上部ガイドローラ及び前後一対のガイドローラが設けられ、この3個のガイドローラーの組が、筒状本体の長手方向に沿って中央部、左右側部の3箇所に設けられ、合計9個のガイドローラーが設けられた複雑な構造である。
そして、筒状本体の下側の内壁にはガイドローラーが設けられていないことから、筒状本体の上部にある命綱取付用ブラケットに取り付けられた命綱によって、ガイドGが斜め上方に引っ張られた場合、筒状本体が持ち上げられてその下側の内壁が上部横材の外周面に接触して、ガイドGが上部横材に沿ってスライドせず(あるいはスライドしてものその抵抗が大きくなり)、命綱を付けた作業者の移動を妨げるという問題がある。
また、特許文献1の手摺において、ガイドGは、左右方向に長い筒状本体を有しているため、ガイドGが挿入された上部横材に湾曲した部分がある場合、ガイドGがその湾曲した部分を通過できないという問題がある。
次に、特許文献2の安全具は、嵌着体部と接合部からなる接合部材同士を接合した略筒状の本体部を備えた緩着部材を有し、緩着部材の内壁面の複数の回転体が配設された複雑な構造である。
そして、特許文献1のガイドGと同様に、略筒状の本体部を備えた緩着部材の内壁面の下部には、回転体が配設されていないことから、ロープ状部材によって緩着部材が上方に引っ張られた場合、緩着部材の内壁面の下部が手摺枠部の外周面に接触して緩着部材が手摺枠部に沿って移動せず(あるいは移動してもその抵抗が大きくなり)、安全具を付けた作業者の移動を妨げるという問題がある。
また、特許文献2の安全具においても、緩着部材が備えている本体部は略筒状であるため、手摺枠部に湾曲した部分がある場合、緩着部材がその湾曲した部分を通過できないという問題がある。
【0004】
一方、特許文献3(特許第5935111号公報)には、足場に安全帯を取り付けるために使用される足場用安全帯取付具であって、足場用パイプと同軸に前記足場用パイプの先端に取り付けられる管状の管状部と、前記管状部に設けられると共に前記足場を構成する部材に取り付けられる取付板部とを備える取付部材と、前記管状部の軸方向に沿って移動自在に前記管状部に係止可能な係止部と、前記係止部が前記管状部に係止した際に前記管状部に対して間隔を有して対向すると共に前記安全帯が係合可能な係合部とを備え、前記管状部に着脱自在に懸架される金具とを有する足場用安全帯取付具が開示され、前記金具は、その係合部に安全帯が取り付けられた状態で、手摺となる足場用パイプに沿って移動することが記載されている。
この特許文献3において、金具は、U字状で係止部と係合部とからなるきわめて単純な構造であり、手摺となる足場用パイプに湾曲した部分があっても、安全帯を取り付けた金具がその湾曲した部分を通過できる。
しかしながら、特許文献3においては、金具の係止部が突起部を備え、この突起部が足場用パイプ等と点接触をするが、金具を足場用パイプ等に沿って移動させる場合、金具(係止部の突起部)と足場用パイプは滑り接触することから、転がり接触に比べて抵抗が大きくなり、安全帯を引っ張る方向によっては、金具が足場用パイプ等を滑るときの抵抗が大きくなり、作業者が安全帯に引っ張られて移動するのに負荷がかかるという問題が生ずる。
また、特許文献3の金具を長期間使用した場合は、金具の突起部が足場用パイプ等との接触によって摩耗し、金具の係止部と足場用パイプ等が点接触をせず面接触をし、金具が足場用パイプを滑るときの抵抗が大きくなり、作業者の移動を妨げるという問題も生ずる。
【0005】
ところで、中高層の足場においては、各種作業を行うのに必要な資材等を高所まで運搬するために、ウインチ等により垂直パイプ等の走行レールに沿って昇降する資材運搬用昇降装置が用いられることがある。
例えば、特許文献4(特開2015-78041号公報)には、仮設足場の垂直パイプに取付け手段を介して設置され、間隔を有して平行に連結された2本の円筒管を備える垂直配置された走行レールと、前記走行レールの前記円筒管の周面に当接する複数のガイド車輪が設けられ、前記走行レールに沿って走行する第1、第2の走行手段と、前記第1の走行手段に第1の垂直配置軸を中心として回動自在に設けられ、資材の運搬を行う運搬用籠と、前記第1の走行手段に接続され、前記運搬用籠を前記走行レールに沿って昇降させる第1の昇降手段と、前記第2の走行手段に第2の垂直配置軸を中心として回動自在に設けられ、前記第1の昇降手段を取付ける支持部材と、前記走行レールの上部に設けられ、前記支持部材を前記走行レールに沿って昇降させる第2の昇降手段とを有する資材運搬用昇降装置が開示されている。
しかしながら、特許文献4においては、走行レールは間隔を有して平行に連結された2本の円筒管からなり、第1の走行手段として、運搬籠を走行レールに沿って走行させる台車は、2本の円筒管を囲むように配置されたフレームと、このフレームに回転軸を介して取り付けられた合計6個のガイド車輪等を備えた複雑な構造であり、運搬用籠を走行レールに取り付けるのにも手数がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-25254号公報
【文献】特開2012-193532号公報
【文献】特許第5935111号公報
【文献】特開2015-78041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、足場等を構成する手摺等の棒状部材に沿って移動する安全帯等の移動体を取付具によって棒状部材に取り付け、その取付具を転がり接触によって棒状部材に沿って移動させるに際し、取付具に上方あるいは斜め上方に引っ張る力が作用しても、取付具と棒状部材が滑り接触をせずに転がり接触によって抵抗なく移動することができ、また、棒状部材に湾曲した部分があっても、取付具が移動することができ、取付具と安全帯を連結した安全具を身に着けた作業者が自由に移動できるようにすることであり、さらに、垂直方向に設けられた棒状部材に沿って昇降される運搬籠等の運搬体を、簡単な構造の取付具により手間をかけることなく、棒状部材に取り付けられるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、棒状部材に沿って移動する移動体を該棒状部材に移動可能に取り付ける移動体取付具であって、前記移動体取付具は、間隙部を有するリング状の一体物であるフレームと、 前記フレームに設けられた係合部であって、前記移動体を前記フレームに係合させる係合部と、前記棒状部材に当接可能なように前記フレームのフレーム本体に嵌め込まれた一対の円筒状の回転体であって、第1の最小間隔で向き合うように配置された第1の回転体と、前記第1の回転体が前記棒状部材に当接する位置と前記棒状部材の中心を挟んで対向する位置において前記棒状部材に当接可能なように前記フレームに取り付けられた一対の円筒状の回転体であって、第2の最小間隔で向き合うように配置された第2の回転体とを備え、前記フレームの内径は、前記棒状部材の外径より大きく、前記間隙部の最小長さは、前記棒状部材の外径より小さく、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔は、前記棒状部材の外径より小さく、隣り合う前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔より大きく、対向する前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記棒状部材の外径より大きいこと移動体取付具を提供して、上記課題を解決するものである。
【0009】
請求項2の発明は、前記係合部は前記リング状のフレームにおける前記間隙部と対向する位置に設けられ、前記第1の回転体は、前記係合部を挟むようにして配置され、前記第2の回転体は、前記間隙部を形成する前記フレームの端部に配置されている移動体取付具を提供して、上記課題を解決するものである。
【0010】
請求項3の発明は、棒状部材に沿って移動する安全帯と、該棒状部材に該安全帯を取り付ける安全帯取付具を備えた安全具であって、前記安全帯取付具は、間隙部を有するリング状の一体物であるフレームと、前記フレームに設けられた係合部であって、前記安全帯を前記フレームに係合させる係合部と、前記棒状部材に当接可能なように前記フレームのフレーム本体に嵌め込まれた一対の円筒状の回転体であって、第1の最小間隔で向き合うように配置された第1の回転体と、前記第1の回転体が前記棒状部材に当接する位置と前記棒状部材の中心を挟んで対向する位置において前記棒状部材に当接可能なように前記フレームに取り付けられた一対の円筒状の回転体であって、第2の最小間隔で向き合うように配置された第2の回転体とを備え、前記フレームの内径は、前記棒状部材の外径より大きく、前記間隙部の最小長さは、前記棒状部材の外径より小さく、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔は、前記棒状部材の外径より小さく、前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔より大きく、対向する前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記棒状部材の外径より大きい安全具を提供して、上記課題を解決するものである。
【0011】
請求項4の発明は、前記係合部は前記リング状のフレームにおける前記間隙部と対向する位置に設けられ、前記第1の回転体は、前記係合部を挟むようにして配置され、前記第2の回転体は、前記間隙部を形成する前記フレームの端部に配置されている安全具を提供して、上記課題を解決するものである。
【0012】
請求項5の発明は、支持部材と、該支持部材で支持された棒状部材と、該棒状部材に沿って移動する安全帯と、該棒状部材に該安全帯を取り付ける安全帯取付具を備えた安全装置であって、前記安全帯取付具は、間隙部を有するリング状の一体物であるフレームと、前記フレームに設けられた係合部であって、前記安全帯を前記フレームに係合させる係合部と、前記棒状部材に当接可能なように前記フレームのフレーム本体に嵌め込まれた一対の円筒状の回転体であって、第1の最小間隔で向き合うように配置された第1の回転体と、前記第1の回転体が前記棒状部材に当接する位置と前記棒状部材の中心を挟んで対向する位置において前記棒状部材に当接可能なように前記フレームに取り付けられた一対の円筒状の回転体であって、第2の最小間隔で向き合うように配置された第2の回転体とを備え、前記フレームの内径は、前記棒状部材の外径より大きく、前記間隙部の最小長さは、前記支持部材の幅より大きくて前記棒状部材の外径より小さく、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔は、前記棒状部材の外径より小さく、前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔より大きく、対向する前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記棒状部材の外径より大きい安全装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【0013】
請求項6の発明は、垂直棒状部材に沿って昇降する運搬体を該垂直棒状部材に昇降可能に取り付ける運搬体取付具であって、前記運搬体取付具は、間隙部を有するリング状の一体物であるフレームと、前記フレームに設けられた係合部であって、前記運搬体を前記フレームに係合させる係合部と、前記垂直棒状部材に当接するように前記フレームのフレーム本体に嵌め込まれた一対の円筒状の回転体であって、第1の最小間隔で向き合うように配置された第1の回転体と、 前記第1の回転体が前記垂直棒状部材に当接する位置と前記垂直棒状部材の中心を挟んで対向する位置において前記垂直棒状部材に当接するように前記フレームに取り付けられた一対の円筒状の回転体であって、第2の最小間隔で向き合うように配置された第2の回転体とを備え、前記フレームの内径は、前記垂直棒状部材の外径より大きく、前記間隙部の最小長さは、前記垂直棒状部材の外径より小さく、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔は、前記垂直棒状部材の外径より小さく、前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔より大きい運搬体取付具を提供して、上記課題を解決するものである。
【0014】
請求項7の発明は、垂直棒状部材と、該垂直棒状部材に沿って昇降する運搬体と、該運搬体を前記垂直棒状部材に昇降可能に取り付ける運搬体取付具を備えた昇降装置であって、前記運搬体取付具は、間隙部を有するリング状の一体物であるフレームと、前記フレームに設けられた係合部であって、前記運搬体を前記フレームに係合させる係合部と、前記垂直棒状部材に当接するように前記フレームのフレーム本体に嵌め込まれた一対の円筒状の回転体であって、第1の最小間隔で向き合うように配置された第1の回転体と、前記第1の回転体が前記垂直棒状部材に当接する位置と前記垂直棒状部材の中心を挟んで対向する位置において前記垂直棒状部材に当接するように前記フレームに取り付けられた一対の円筒状の回転体であって、第2の最小間隔で向き合うように配置された第2の回転体とを備え、前記フレームの内径は、前記垂直棒状部材の外径より大きく、前記間隙部の最小長さは、前記垂直棒状部材の外径より小さく、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔は、前記垂直棒状部材の外径より小さく、前記第1の回転体と前記第2の回転体の距離は、前記第1の最小間隔と前記第2の最小間隔より大きい昇降装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明の移動体取付具においては、移動体取付具に上方あるいは斜め上方に引っ張る力が作用しても、移動体取付具と棒状部材が滑り接触をせずに転がり接触によって抵抗なく移動することができ、また、棒状部材に湾曲した部分があっても、移動体取付具が移動することができるという効果を奏する。
【0016】
請求項2に記載の発明の移動体取付具は、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏する。
【0017】
請求項3に記載の発明の安全具においては、安全帯取付具に上方あるいは斜め上方に引っ張る力が作用しても、安全帯取付具と棒状部材が滑り接触をせずに転がり接触によって抵抗なく移動することができ、また、棒状部材に湾曲した部分があっても、安全帯取付具が移動することができ、安全具を身に着けた作業者が自由に移動できるという効果を奏する。
【0018】
請求項4に記載の発明の安全具は、請求項3に記載の発明と同様の効果を奏する。
【0019】
請求項5に記載の発明の安全装置においては、安全帯取付具に上方あるいは斜め上方に引っ張る力が作用しても、安全帯取付具と棒状部材が滑り接触をせずに転がり接触によって抵抗なく移動することができ、また、棒状部材に湾曲した部分があっても、安全帯取付具が移動することができ、安全具を身に着けた作業者が自由に移動できるという効果を奏する。
【0020】
請求項6に記載の発明の運搬体取付具においては、垂直方向に設けられた棒状部材に沿って昇降される運搬体を、簡単な構造の取付具により手間をかけることなく、棒状部材に取り付けられるという効果を奏する。
【0021】
請求項7に記載の発明の昇降装置においては、垂直方向に設けられた棒状部材に沿って昇降される運搬体を、簡単な構造の取付具により手間をかけることなく、棒状部材に取り付けられるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の移動体取付具をパイプに取り付けた状態の正面図、
図2は、
図1に示す移動体取付具をパイプに取り付けた状態の平面図である。
【
図2】
図1に示す移動体取付具をパイプに取り付けた状態の平面図である。
【
図3】
図1に示す移動体取付具をパイプに取り付けた状態の左側面図である。
【
図5】移動体取付具1、パイプ6、支持板7における各部の大きさ、位置関係等を説明するための説明図である。
【
図6】第1ボールベアリング3(3a、3b)と第2ボールベアリング4(4a、4b)がパイプ6に当接する状態を説明する説明図である。
【
図7】パイプ6上における移動体取付具1の傾き状態を説明するための説明図である。
【
図8】作業者が安全具を身に着けた状態の左側面図である。
【
図10】本発明の昇降装置をくさび式足場の支柱に取り付けた状態の平面図である。
【
図12】昇降装置を支柱から取り外し、昇降装置を一部を取り外した状態の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[移動体取付具の構成]
図1は、本発明の移動体取付具をパイプに取り付けた状態の正面図、
図2は、
図1に示す移動体取付具をパイプに取り付けた状態の平面図、
図3は
図1に示す移動体取付具をパイプに取り付けた状態の左側面図、
図4は、
図2のX-X断面図である。
図中、1は移動体取付具、2はフレーム、2a(2a1、2a2)はフレーム本体、2b(2b1、2b2)は端部、2cはリング部、2dは穴、3(3a、3b)は第1ボールベアリング、4(4a、4b)は第2ボールベアリング、5(5a、5b)は割りピン、6はパイプ、6tは凸条部、7は支持板、8は移動体のフック部、GAは間隙部である。
図に示すように移動体取付具1は、C字状のフレーム2、一対の第1ボールベアリング3(3a、3b)、一対の第2ボールベアリング4(4a、4b)、割りピン5(5a、5b)を備えた簡単な構造となっている。
フレーム2は、本発明のリング状のフレームとなるもので、断面が円形のフレーム本体2a(2a1、2a2)、端部2b(2b1、2b2)、端部2bと対向する位置にあるリング部2cから構成され、リング部2cには穴2dが形成されている。
左側のフレーム本体2a1の端部2b1と右側のフレーム本体2a2の端部2b2は、離間して間隙部GAを形成している。
リング部2cは、本発明の係合部となるもので、穴2dに移動体のフック部8が引っ掛けられ、リング部2cに移動体が取り付けられるが、本発明の係合部は、リング部2cのようなリング形状のものに限定されず、下側が開放されたU字形状のものであってもよい。
本実施形態においては、フレーム2は、鉄等の金属の鋳物に亜鉛メッキ等を施した一体物となっているが、フレーム本体2aを金属棒とし、この金属棒を曲げ加工して金属製のリング部2cに溶接等で接合したものをフレーム2としてもよい。
また、フレーム2のC字状は、図に示すような円弧形状に限定するものではなく、五角形、六角形、八角形等の多角形の一頂点が離れているものであってもよい。
【0024】
第1ボールベアリング3(3a、3b)は、本発明の第1の回転体となるもので、一方の第1ボールベアリング3aが左側のフレーム本体2a1のリング部2c側に嵌め込まれ、他方の第1ボールベアリング3bが右側のフレーム本体2a2のリング部2c側に嵌め込まれ、第1ボールベアリング3aと3bが向き合うように配置されている。
本実施形態においては、
図4に示すように第1ボールベアリング3の内径はフレーム本体2aの外径より僅かに大きくなっており、第1ボールベアリング3はフレーム本体2aに嵌め込まれているだけであるが、フレーム本体2aが湾曲していることから、第1ボールベアリング3は、フレーム本体2aの嵌め込んだ位置に固定される。
この場合、フレーム本体2a側にスナップリングや割ピンを取り付けて第1ボールベアリング3をフレーム本体2aへ確実に固定してもよい。
第2ボールベアリング4(4a、4b)は、本発明の第2の回転体となるもので、一方の第2ボールベアリング4aが、フレーム本体2a1の端部2b1にはめ込まれ、他方の第2ボールベアリング4bが、フレーム本体2a1の端部2b2にはめ込まれ、第2ボールベアリング4aと4bが向き合うように配置されている。
この場合、端部2bの外径は、フレーム本体2aの外径より若干小さく、端部2bが段付き部となり、第2ボールベアリング4がフレーム本体2a側に移動しないようになっている。
割りピン5は、第2ボールベアリング4の脱落を防止するもので、一方の割りピン5aが、端部2b1の先端部に設けられたピン穴に挿入され、他方の割りピン5bが、端部2b2の先端部に設けられたピン穴に挿入されている。
本発明の第1の回転体と第2の回転体は、ボールベアリング3、4に限定されるものでなく、円筒状の回転体であればよく、例えば、ローラーベアリング、スリーブベアリング等であってもよい。
なお、本実施形態では、フレーム2の端部2bが段付き部とし、端部2bに先端部に割りピン5を挿入して、第2ボールベアリング4が軸方向へ移動しないようにしているが、スナップリング等により第2ボールベアリング4が軸方向へ移動しないようにしてもよい。
【0025】
パイプ6は、本発明の棒状部材となるもので、金属製の長尺状の円管であり、移動体取付具1をパイプ6に取り付けた状態で、
図1に示すようにフレーム2の内側にパイプ6が位置している。
そして、第1ボールベアリング3a、3bと第2ボールベアリング4a、4bは、パイプ6に当接可能となっており、いずれか一方のみ、パイプ6に当接するようになっている。図においては、第1ボールベアリング3a、3bがパイプ6の外周面に跨った状態となってパイプ6に当接し、第2ボールベアリング4a、4bがパイプ6から離れている。
また、パイプ6の外周面上部には、パイプ6の長手方向に沿って凸条部6tが設けられている。凸条部6tは、金属製の線材等をパイプ6の外周面上部に溶接等により接合したもので、移動体取付具1がパイプ6の円周方向に傾いた場合、第1ボールベアリング3a、3bが凸条部6tに当たるようになっており、移動体取付具1は、移動体取付具1が大きく傾かないようにするストッパー(回り止め)の役目を果たすものである。
パイプ6としては、足場の幅木の上部に取り付けられるパイプ、足場の手摺等として設置される水平材としてのパイプ、各種階段の手摺として設置されるパイプ等が挙げられる。
なお、本発明の棒状部材は、パイプ6のような金属製の長尺状の円管に限定されるものではなく、プラスチック製のものでもよく、中実丸棒であってもよい。
ボールベアリング3a、3bがパイプ5の外周面に跨った状態となっている。
【0026】
支持板7は、金属製の板からなり、パイプ6の長手方向に沿ってその下部の外周面に支持板7の上面が溶接等により接合されている。
支持板7は、パイプ6を下側から支持し、移動体取付具1をパイプ6に取り付けた状態で、
図1に示すようにフレーム本体2a1の端部2b1と右側のフレーム本体2a2の端部2b2の間(間隙部GA)に支持板7が位置している。
これにより、フレーム本体2aの端部2bあるいは第2ボールベアリング4が、支持板7に接触せずに、移動体取付具1がパイプ6に沿って移動することができる。
支持板7は、プラスチック製のものであってもよく、長尺状の1枚の板であってもよく、一定の間隔で配置された複数の板であってよい。
支持板7としては、足場の足場板に取り付けられる巾木、階段の手摺(パイプ)を支持するブラケット等が挙げられる。
【0027】
[移動体取付具1等における各部の大きさ、位置関係等]
図5は、移動体取付具1、パイプ6、支持板7における各部の大きさ、位置関係等を説明するための説明図であり、同図(a)は移動体取付具1の各部の大きさを示し、同図(b)はパイプ6と支持板7の大きさを示している。図において、A1a、A1bは第1ボールベアリング3a、3bの回転軸、A2a、A2bは第2ボールベアリング4a、4bの回転軸、d0は間隙部GAの最小長さ、d1は第1ボールベアリング3aと第1ボールベアリング3bの最小間隔である第1の最小間隔、d2は第2ボールベアリング4aと第2ボールベアリング4bの最小間隔である第2の最小間隔、d3は隣り合う第1ボールベアリング3a(3b)と第2ボールベアリング4a(4b)の距離、d4は対向する第1ボールベアリング3a(3b)と第2ボールベアリング4b(4a)の距離、D1はフレーム2の内径、D2はパイプ6の外径、t1は凸条部6tの左右方向の幅、t2は支持板7の左右方向の幅(厚み)である。
図5(a)に示すように、第1ボールベアリング3aの回転軸A1aと第1ボールベアリング3bの回転軸A1bは交差し、両ベアリングの間隔は、フレーム2の内側(下側)から外側(上側)にかけて広がって(大きくなって)おり、両ベアリングの下端で第1の最小間隔d1となる。
同様に第2ボールベアリング4aの回転軸A2aと第2ボールベアリングdbの回転軸A2bも交差し、両ベアリングの間隔は、フレーム2の内側(上側)から外側(下側)にかけて広がって(大きくなって)おり、両ベアリングの上端で第2の最小間隔d2となる。
間隙部GAも第2ボールベアリング4aと同様に、フレーム2の内側(上側)から外側(下側)にかけて広がっており、その上端で最小長さd0となる。
そして、フレーム2の内径D1は、パイプ6の外径D2より大きく、間隙部GAの最小長さd0は、パイプ6の外径D2より小さく、第1の最小間隔d1と第2の最小間隔d2は、パイプ6の外径D2より小さく、隣り合う第1ボールベアリング3a(3b)と第2ボールベアリング4a(4b)の距離d3は、第1の最小間隔d1と第2の最小間隔d2より大きく、対向する第1ボールベアリング3a(3b)と第2ボールベアリング4b(4a)の距離d4は、パイプ6の外径D2より大きくなっている。
これによって、移動体取付具1をパイプ6に取り付けた状態で、第1ボールベアリング3(3a、3b)と第2ボールベアリング4(4a、4b)がパイプ6に当接可能となり、移動体取付具1は、第1ボールベアリング3(3a、3b)と第2ボールベアリング4(4a、4b)のいずれか一方がパイプ6に当接して、パイプ6上を移動することができる。
また、第1の最小間隔d1は、凸条部6tの左右方向の幅t1より大きく、間隙部GAの最小長さd0と第2の最小間隔d2は、支持板7の左右方向の幅(厚み)t2より大きくなっている。
これにより、第1ボールベアリング3a、3bの間に凸条部6tが位置し、第2ボールベアリング4a、4bの間と間隙部GAに支持板7が位置した状態で、移動体取付具1がパイプ6上を移動することなる。
なお、第1ボールベアリング3a、3bの外径は、第2ボールベアリング4a、4bの外径より大きくなっている。これは、フレーム2のリング部2cの下端が凸条部6tに当たらないように第1ボールベアリング3a、3bの外径はある程度大きくする必要があり、また、第2ボールベアリング4a、4bの外径はできるだけ小さくして、フレーム本体2aをパイプ6に近づけ、フレーム2の内径D1をできるだけ小さくして、移動体取付具1をできるだけコンパクトなものとするためである。
【0028】
図6は、第1ボールベアリング3(3a、3b)と第2ボールベアリング4(4a、4b)がパイプ6に当接する状態を説明する説明図であり、同図(a)は第1ボールベアリング3(3a、3b)がパイプ6に当接する状態を示し、同図(b)は第3ボールベアリング4(4a、4b)がパイプ6に当接する状態を示しており、図においてPOはパイプ6の中心である。
移動体取付具1の穴2dに移動体のフック部8が引っ掛けられ、リング部2cに移動体が取り付けられた状態で、移動体取付具1がパイプ6上を移動する際、フック部8から移動体取付具1を下方又は横方向に引っ張る力が加わり、上方に引っ張る力が加わらない場合、
図6(a)に示すように、第1ボールベアリング3a、3bが位置P1a、P1bにおいてパイプ6に当接し、移動体取付具1がパイプ6上を移動する。
一方、フック部8から移動体取付具1を上方に引っ張る力が加わった場合、
図6(b)に示すように、移動体取付具1が持ち上げられ、第1ボールベアリング3a、3bがパイプ6から離れて、第2ボールベアリング4a、4bが位置P2a、P2bにおいてパイプ6に当接し、移動体取付具1がパイプ6上を移動する。
そして、第1ボールベアリング3a、3bがパイプ6に当接する位置P1a、P1bと、第2ボールベアリング4a、4bがパイプ6に当接する位置P2a、P2bとは、パイプ6の中心POを挟んで対向している。
これにより、移動体から移動体取付具1に上方以外の方向に引っ張る力が加わった場合は、第1ボールベアリング3a、3bがパイプ6に当接し、移動体から移動体取付具1に上方に引っ張る力が加わった場合は、第2ボールベアリング4a、4bがパイプ6に当接して、すなわち、移動体から移動体取付具1にどのような方向の力が加わったとしても、常に第1ボールベアリング3a、3bと第2ボールベアリング4a、4bのいずれか一方がパイプ6に当接して、移動体取付具1がパイプ6上を移動することとなる。
【0029】
[移動体取付具1の傾き]
図7は、パイプ6上における移動体取付具1の傾き状態を説明するための説明図であり、同図(a)は、移動体取付具1がパイプ5の円周方向に傾かない場合、同図(b)は、移動体取付具1がパイプ6の円周方向の左側に最も傾いた場合、同図(c)は、移動体取付具1がパイプ6の円周方向の右側に最も傾いた場合を示している。
ここで、パイプ6の中心を通る鉛直方向(上下方向)の軸をY0とし、移動体取付具1は左右対称であるからその対称軸をY1とし、移動体取付具1の最大傾き角をαとする。
移動体取付具1は、第1ボールベアリング3a、3bが凸条部6tに当たるまでパイプ6の円周方向に傾くことができる。
よって、移動体取付具1は、第1ボールベアリング3bが凸条部6tに当たるまでパイプ6の円周方向の左側に傾くことができ、
図7(b)に示すように、移動体取付具1がパイプ6の円周方向の左側に傾いて、対称軸Y1が軸Y0に対して最大傾き角αとなっても、第2ボールベアリング4a、4bとフレーム2の端部2b(2b1、2b2)は、支持板7に当たらないようになっている。
また、移動体取付具1は、第1ボールベアリング3aが凸条部6tに当たるまでパイプ6の円周方向の右側に傾くことができ、
図7(c)に示すように、移動体取付具1がパイプ6の円周方向の右側に傾いても、対称軸Y1が軸Y0に対して最大傾き角αとなっても、第2ボールベアリング4a、4bとフレーム2の端部2b(2b1、2b2)は、支持板7に当たらないようになっている。
このため、パイプ6に取り付けられた移動体取付具1は、パイプ6の円周方向に傾いても、支持板7に当たらずにパイプ6上を移動することができる。
なお、最大傾き角αは、第1の最小間隔d1と凸条部6tの左右方向の幅t1を調整することにより、適切な角度、例えば10度~20度に設定することができる。
【0030】
以上のように移動体取付具1は、C字状のフレーム2に一対の第1ボールベアリング3(3a、3b)が取り付けられ、これと対向する位置に一対の第2ボールベアリング4(4a、4b)が取り付けられた構造であるため、移動体を取り付けた移動体取付具1が支持板7で支持されたパイプ6上移動するに際し、パイプ6が湾曲していても、移動体取付具1に上方あるいは斜め上方に引っ張る力が作用しても、移動体取付具1がボールベアリングの転がり接触によってパイプ6上を移動することができる。
【0031】
[安全具、安全装置]
次に、本発明の移動体取付具を利用した安全具、安全装置ついて説明する。
図8は、作業者が安全具を身に着けた状態の左側面図であり、図において、10は安全具、20は安全帯、21はベルト、22はベルト金具、23はロープ、24はフック部、30は安全帯取付具、40は足場部、41は足場板、42はパイプ、42tは凸条部、43は巾木、WOは作業者である。
図8に示すように、安全具10は、安全帯20と安全帯取付具30を備え、安全帯20は、ベルト21、ベルト金具22、ロープ23及びフック部24を備えている。
安全帯20においては、作業者WOの胴部に巻き付けられたベルト21とロープ23の一端がベルト金具22によって連結され、ロープ23の他端はフック部24に取り付けられている。
図9は、フック部24の左側面図であり、図において24aはフック部本体、24bは閉じ金具、24cはロープ取付金具である。
フック部24においては、フック部本体24aの上部に閉じ金具24bが回動自在に取り付けられ、フック部本体24aの上部に設けられた穴にロープ取付金具24cが取り付けられている。
閉じ金具24bはバネ(図示せず)によってその先端部がフック部本体24aの先端部に閉じ合されるようになっており、ロープ取付金具24cにはロープ23が取り付けられている。
安全帯取付具30は、
図1等に示す移動体取付具1と同じ構成であり、C字状のフレーム2、一対の第1ボールベアリング3(3a、3b)、一対の第2ボールベアリング4(4a、4b)等を備えている。
足場部40は、足場において作業者WOが作業する場所となるもので、足場板41、パイプ42及び巾木43を備えている。
足場部40においては、足場を構成する水平材(図示せず)に踏板が取り付けられて足場板41が形成され、作業者の安全を図って足場板41には巾木43が取り付けられ、巾木43の上端部には、溶接等によってパイプ42が接合され、パイプ42の上部には凸条部42tが設けられている。
この場合、パイプ42、凸条部42t、巾木43は、それぞれ
図1等に示すパイプ6、凸条部6t、支持板7と同じ構成となっている。
そして、パイプ42には安全帯取付具30が取り付けられ、安全帯取付具30のリング部2cには、安全帯20のフック部24が引っ掛けられ、これにより、安全帯20、安全帯取付具30、パイプ42及び巾木43を備えた本発明の安全装置が構成される。
【0032】
本発明の安全装置においては、安全帯20を身に着けた作業者WOが移動すると、これに追随して安全帯取付具30が、ボールベアリングの転がり接触によってパイプ42上を移動し、安全帯取付具30に上方あるいは斜め上方に引っ張る力が作用しても同様であり、作業者WOは抵抗なく自由に移動することができる。
【0033】
[運搬体取付具、昇降装置]
次に、本発明の移動体取付具を利用した運搬体取付具、昇降装置ついて説明する。
図10は、本発明の昇降装置をくさび式足場の支柱に取り付けた状態の平面図、
図11は
図10に示す昇降装置の左側面図、
図12は、昇降装置を支柱から取り外し、昇降装置を一部を取り外した状態の左側面図である。
図において、50は運搬籠、52は連結部材、52aは連結口、53はボルト、54はナット、60は運搬籠取付具、70は垂直パイプ、71は支持部材、71aは支持板部、72bはくさび部、80はくさび式足場の支柱、81は支柱パイプ、82(82a、82b、82c、82d)はポケット金具、GRは地面であり、同一のものには同一の符号を付してある。
運搬籠50は、本発明の運搬体となるもので、直方体形状の枠体である籠本体51と、籠本体51の背面の上下左右の4箇所に設けられた連結部材52、連結部材52と運搬籠取付具60を連結固定するボルト53、ナット54を備えている。
運搬籠取付具60は、本発明の運搬体取付具となるもので、
図1等に示す移動体取付具1と同じ構成であり、C字状のフレーム2、一対の第1ボールベアリング3(3a、3b)、一対の第2ボールベアリング4(4a、4b)等を備えている。
図12に示すように、運搬籠50と運搬籠取付具60の連結固定においては、フレーム2のリング部2cを連結部材52の連結口52aを差し込み、ボルト53を連結部材52とリング部2cに挿通させナット54で締め付けることにより、運搬籠50と運搬籠取付具60を連結固定することができる。
垂直パイプ70は、本発明の垂直棒状部材となるもので、
図1等に示すパイプ6に相当するが、その外径は、パイプ6と異なり、対向する第1ボールベアリング3a(3b)と第2ボールベアリング4b(4a)の距離d4と同じである。これは、第1ボールベアリング3a、3bと第2ボールベアリング4b、4aの両方が垂直パイプ70の周面を転がるようにするためである。
支持部材71は、平面視T字状であり、支持板部71aとくさび部72bからなり、支持板部71a側が溶接あるいはクランプ金具等によって所定の間隔で垂直パイプ70に取り付けられている。
支柱80は、くさび式足場の支柱となるもので、支柱パイプ81と支柱パイプの円周方向に溶接取付された4個のポケット金具82(82a、82b、82c、82d)を備え、ジャッキベース(図示せず)を介して地面GRに立設されている。
図12に示すように、支持部材71のくさび部72bを支柱80のポケット金具82(82a)に挿入する(打ち込む)ことにより、垂直パイプ70が支柱80に取り付けられる。
そして、運搬籠50、運搬籠取付具60及び垂直パイプ70により本発明の昇降装置が構成され、運搬籠50に資材を載せ、ウインチ等の巻き上げ機(図示せず)を利用して(巻き上げ機のフック部を運搬籠50に掛け渡したロープに引っ掛ける等して)運搬籠50を垂直パイプ70に沿って昇降させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の移動体取付具、安全具、安全装置、運搬体取付具及び昇降装置は、棒状部材に沿って移動する移動体を取付具によって棒状部材に取り付け、その取付具を転がり接触によって棒状部材に沿って移動させるに際し、取付具に上方あるいは斜め上方に引っ張る力が作用しても、取付具と棒状部材が滑り接触をせずに転がり接触によって抵抗なく移動することができ、また、棒状部材に湾曲した部分があっても、取付具が移動することができ、取付具と安全帯を連結した安全具を身に着けた作業者が自由に移動でき、さらに、垂直方向に設けられた棒状部材に沿って昇降される運搬籠等の運搬体を、簡単な構造の取付具により手間をかけることなく、棒状部材に取り付けることができ、足場の移動体取付具、安全具、安全装置、運搬体取付具及び昇降装置として利用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 移動体取付具
2 フレーム
2a、2a1、2a2 フレーム本体
2b、2b1、2b2 端部
2c リング部
2d 穴
3、3a、3b 第1ボールベアリング
4、4a、4b 第2ボールベアリング
5、5a、5b 割りピン
6 パイプ
6t 凸条部
7 支持板
8 移動体のフック部
10 安全具
20 安全帯
21 ベルト
22 ベルト金具
23 ロープ
24 フック部
30 安全帯取付具
40 足場部
41 足場板
42 パイプ
42t 凸条部
43 巾木
50 運搬籠
52 連結部材
52a 連結口
53 ボルト
54 ナット
60 運搬籠取付具
70 垂直パイプ
71 支持部材
71a 支持板部
72b くさび部
80 支柱
81 支柱パイプ
82、82a、82b、82c、82d ポケット金具
GA 間隙部である。
GR 地面
PO 中心
WO 作業者