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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】トルク測定装置および保護部材
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/24 20060101AFI20221020BHJP
   B25B 23/14 20060101ALI20221020BHJP
   G01L 1/26 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G01L5/24
B25B23/14 640W
G01L1/26 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019047003
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020148653
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(72)【発明者】
【氏名】中田 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 喜晴
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161690(JP,A)
【文献】特開2015-119465(JP,A)
【文献】特開2011-094994(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0196497(US,A1)
【文献】特開平06-167401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/24
B25B 23/14
G01L 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱体形状の起歪体と、
前記起歪体の軸方向における一端に設けられ、締付工具を装着する装着部と、
前記起歪体の軸方向における他端に設けられ、締付部材の締め付けに用いられる締め付け部と、
前記締付工具の締結操作による前記起歪体の歪み量を検出する歪み量検出部と、
前記歪み量検出部で検出された前記歪み量に関する情報を通信先に送信する通信部と、
前記起歪体の外形部に設けられた前記歪み量検出部および前記通信部のそれぞれを内包する筐体カバーと、
前記起歪体の軸方向における前記装着部と前記筐体カバーとの間に設けられた第1の保護部材と、前記起歪体の軸方向における前記締め付け部と前記筐体カバーとの間に設けられた第2の保護部材とからなる一対の保護部材と、
を備え、
前記一対の保護部材は、
対辺寸法が前記筐体カバーの幅方向の寸法よりも大きく、前記第1の保護部材と前記第2の保護部材とによって前記筐体カバーを保護する、
トルク測定装置。
【請求項2】
前記保護部材は、多角形状を成す一対の部材である、
請求項1記載のトルク測定装置。
【請求項3】
前記保護部材は、金属によって成形され、1または複数の孔部を有し、
前記歪み量に関する情報の前記軸方向への送信を、前記孔部を介して行うことが可能である
請求項1または2記載のトルク測定装置。
【請求項4】
前記保護部材は、弾性体からなるカバーが装着されている、
請求項3に記載のトルク測定装置。
【請求項5】
前記保護部材は、
前記起歪体における前記筐体カバーの上端と前記装着部との間に装着される前記第1の保護部材である上側保護部材と、
前記起歪体における前記筐体カバーの下端と前記締め付け部との間に装着される前記第2の保護部材である下側保護部材と
で構成され、
前記起歪体に対し、前記上側保護部材の1辺の面および前記下側保護部材の1辺の面が共に前記締付工具を載置する載置面に対して平行となるように設けられる、
請求項4に記載のトルク測定装置。
【請求項6】
柱体形状の起歪体と、
前記起歪体の軸方向における一端に設けられ、締付工具に装着される装着部と、
前記起歪体の軸方向における他端に設けられ、締付部材の締め付けに用いられる締め付け部と、
前記締付工具の締結操作による前記起歪体の歪み量を電気的に検出する歪み量検出部と、
前記歪み量検出部で検出された前記歪み量に関する情報を通信先に送信する通信部と、
前記起歪体の外形部に設けられた前記歪み量検出部および前記通信部のそれぞれを内包する筐体カバーと、
を備えるトルク測定装置に装着される第1の保護部材と第2の保護部材とを備える保護部材であって、
前記第1の保護部材および前記第2の保護部材は、対辺寸法が前記筐体カバーの軸方向と直交する幅方向の寸法よりも大きく、一部に孔部が形成された多角形状を成す金属板から成り、
前記第1の保護部材を前記起歪体の軸方向における前記装着部と前記筐体カバーとの間に設け、前記第2の保護部材を前記起歪体の軸方向における前記締め付け部と前記筐体カバーとの間に設け、前記第1の保護部材と前記第2の保護部材とによって前記筐体カバーを保護する、
保護部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク測定装置および保護部材に関する。
【背景技術】
【0002】
レンチ、ドライバなどの締付工具でボルトやナットなどの締付部材を締め付けた締結トルク値を計測するトルク測定装置が知られている。このトルク測定装置は、締付工具と締付部材との間に装着して使用する。このトルク測定装置は締付工具と着脱が可能である。
【0003】
また、このトルク測定装置には、測定した締付トルク値を外部の情報処理装置で管理するために無線通信機能や電力供給部を備えたものがある。
【0004】
この締付トルク値を測定するトルク測定装置として、例えば、特許文献1にしめすような技術がある。この特許文献1には、入力部および出力部を有する本体、本体に設けられる検知に用いるセンサおよびセンサと電気的に接続された無線送信装置とを備える無線通信式接続ロッドを備えたことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-119465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなトルク測定装置は、レンチ、ドライバなどの締付工具に取り付けて使用するものであって、その取り付け状態、使用状態によっては脱落の可能性がある。また、使用しない場合は、締付工具から取り外して保管しており、不注意等によりトルク測定装置が、落下してしまう可能性もある。
【0007】
脱落や落下等により強い衝撃がトルク測定装置に加えられると、正確なトルク値を計測することができなくなるばかりか、最悪のケースでは破損してしまうこととなる。
【0008】
その一方で、脱落しても計測不能、破損しないように、そのトルク測定装置の強度をアップするような場合がある。例えば、無線通信機能や電力供給部を保護するために金属製の保護カバーを使用することも考えられるが、重量の増加、コストの大幅アップ等に繋がってしまう。
【0009】
筐体部分を金属製にすると、このほかにも、電波が伝播しにくくなる(或いは、電波が遮蔽される)という現象が生じることとなるため、無線通信機能が有効に働かなくなる虞がある。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、外部からの衝撃の伝達を最小限に抑制して耐久性を向上させたトルク測定装置および保護部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のトルク測定装置は、柱体形状の起歪体と、前記起歪体の軸方向における一端に設けられ、締付工具を装着する装着部と、前記起歪体の軸方向における他端に設けられ、締付部材の締め付けに用いられる締め付け部と、前記締付工具の締結操作による前記起歪体の歪み量を検出する歪み量検出部と、前記歪み量検出部で検出された前記歪み量に関する情報を通信先に送信する通信部と、前記起歪体の外形部に設けられた前記歪み量検出部および前記通信部のそれぞれを内包する筐体カバーと、前記起歪体の軸方向における前記装着部と前記筐体カバーとの間に設けられた第1の保護部材と、前記起歪体の軸方向における前記締め付け部と前記筐体カバーとの間に設けられた第2の保護部材とからなる一対の保護部材と、を備え、前記一対の保護部材は、対辺寸法が前記筐体カバーの幅方向の寸法よりも大きく、前記第1の保護部材と前記第2の保護部材とによって前記筐体カバーを保護する。
【0012】
好適には、トルク測定装置に装着される前記保護部材の本体は、多角形状を成す一対の部材である。
【0013】
好適には、前記保護部材は、金属によって成形され、1または複数の孔部を有し、歪み量に関する情報の前記軸方向への送信を、前記孔部を介して行うことが可能である。
【0014】
好適には、前記保護部材は、弾性体からなるカバーが装着されている。
【0015】
好適には、前記保護部材は、前記起歪体における前記筐体カバーの上端と前記装着部との間に装着される前記第1の保護部材である上側保護部材と、前記起歪体における前記筐体カバーの下端と前記締め付け部との間に装着される前記第2の保護部材である下側保護部材とで構成され、前記起歪体に対し、前記上側保護部材の1辺の面および前記下側保護部材の1辺の面が共に前記締付工具を載置する載置面に対して平行となるように設けられる。
【0016】
本発明に係る保護部材は、柱体形状の起歪体と、前記起歪体の軸方向における一端に設けられ、締付工具に装着される装着部と、前記起歪体の軸方向における他端に設けられ、締付部材の締め付けに用いられる締め付け部と、前記締付工具の締結操作による前記起歪体の歪み量を電気的に検出する歪み量検出部と、前記歪み量検出部で検出された前記歪み量に関する情報を通信先に送信する通信部と、前記起歪体の外形部に設けられた前記歪み量検出部および前記通信部のそれぞれを内包する筐体カバーと、を備えるトルク測定装置に装着される第1の保護部材と第2の保護部材とを備える保護部材であって、前記第1の保護部材および前記第2の保護部材は、対辺寸法が前記筐体カバーの軸方向と直交する幅方向の寸法よりも大きく、一部に孔部が形成された多角形状を成す金属板から成り、前記第1の保護部材を前記起歪体の軸方向における前記装着部と前記筐体カバーとの間に設け、前記第2の保護部材を前記起歪体の軸方向における前記締め付け部と前記筐体カバーとの間に設け、前記第1の保護部材と前記第2の保護部材とによって前記筐体カバーを保護する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外部からの衝撃の伝達を最小限に抑制して耐久性を向上させることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態におけるトルク測定装置およびそのトルク測定装置に装着された締付工具の概略構成を示す図。
図2】同装置の内部構造を正面側からみた平面図。
図3】同装置の内部構造を背面側からみた背面図。
図4】同装置の分解斜視図。
図5】同装置の組み立て後の斜視図。
図6】同装置に装着される保護部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態によって本発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範疇に含まれるものとする。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態におけるトルク測定装置およびそのトルク測定装置に装着された締付工具の概略構成を示す図である。
【0021】
以下の説明においては、説明の便宜上、3次元直交座標系としてXYZ座標系を設定する。このXYZ座標系において、Z軸方向は、図2に示すトルク測定装置1の中心軸Lの軸方向(上下方向)と平行な方向であって、トルク測定装置1の長手方向(上下方向)とする。Y軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって、図2に示すトルク測定装置1の短手方向(左右方向)とする。X軸方向は、Y軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、図2における紙面の手前・奥行方向(前後方向)とする。よって、X軸とY軸は、水平面に延びる軸であり、X軸とY軸で規定される平面(X-Y平面)は水平面と一致する。
【0022】
図1は、トルク測定装置1の使用例を示したものであって、このトルク測定装置1の一端に、締付工具の一例であるラチェットハンドル100を取り付けた状態を示している。このラチェットハンドル100は、あくまでも一例であって、このほかT形ハンドルやスピンナハンドル等であってもよい。このほか、これらとトルク測定装置1との間にユニバーサルジョイントやエクステンションバーなどを設けるような構成とすることも可能である。
【0023】
本発明は、トルク測定装置1に関するものであることから、説明の都合上、トルク測定装置1を主体として、このトルク測定装置1にラチェットハンドル100が取り付けられるものとして説明する。
【0024】
ラチェットハンドル100は、長尺のハンドル本体101の一端側に設けられるヘッド部102と、ハンドル本体101の一端側に作業者が把持するハンドル部103とを備える。
【0025】
ヘッド部102には、ラチェット機構を介して取り付けられたドライブ部104が設けられている。ハンドル本体101の内部には、トルクリミッターとしてのトグル機構、設定トルク値を設定するトルク設定機構などが収容されている。
【0026】
ドライブ部104は、トルク測定装置1の一端側に設けられている、後述するハンドル装着部3の嵌合凹部3aに挿入され嵌合する。これにより、トルク測定装置1にラチェットハンドル100が装着された状態となる。
【0027】
ラチェットハンドル100は、作業者がハンドル部103を把持した状態で締結操作を行う際に所定方向に回動されると、ハンドル部103からの締付トルクがヘッド部102を介して締付部材に伝達されて締め付けが行われる。締結操作時や締結完了時の締付トルク値は、トルク測定装置1の、後述する通信部6から所定の通信先に送信される。
【0028】
次に、本発明に係るトルク測定装置1を図2から図5を用いて説明する。図2から図5に示すように、本発明の実施の形態におけるトルク測定装置1は、起歪体2と、ハンドル装着部3と、締め付け部4と、歪み量検出部5と、通信部6と、電源部7と、保護部材8とを備えている。
【0029】
起歪体2は、金属製の柱体形状(円柱体、角柱体など)によって形成されており、締付トルク値を計測するための基部となる。この起歪体2は、軸方向(長手方向)(Z軸方向)の一端にハンドル装着部3が設けられ、他端に締め付け部4が設けられている。
【0030】
起歪体2の略中央部分は、ハンドル装着部3が設けられている一端、および締め付け部4が設けられている他端よりも、軸方向と直交する幅方向(短手方向)(Y軸方向)が肉薄となるように形成されており、締結操作時の締付トルクが加わることで歪みが生じる部分である。このため、起歪体2の略中央部分は、歪み発生部2aとも称する。この歪み発生部2aの外形は、多面構造からなり、その一面は、締結操作時に発生した起歪体2の歪み量を検出することが可能な歪み量検出部5の取り付けが可能な取付面である。
【0031】
ハンドル装着部3は、起歪体2の一端に設けられており、ラチェットハンドル100のヘッド部102を装着する装着部である。このハンドル装着部3の軸方向先端部の上面には、ヘッド部102のドライブ部104が挿入される嵌合凹部3aが設けられている。この嵌合凹部3aは、その軸がトルク測定装置1の中心軸L上に位置するように設けられており、その開口寸法はドライブ部104の外寸と略同一が好ましい。
【0032】
このハンドル装着部3は、ラチェットハンドル100を用いて作業者により締結操作された際に発生した締付トルクを、起歪体2を介して締め付け部4に伝達する。つまり、ハンドル装着部3は、締結操作による締付トルクが中心軸Lに沿って入力される入力部として機能する。
【0033】
続いて、締め付け部4は、起歪体2の一端に設けられており、締付部材の種類や寸法に応じた係合部材の装着が可能であって、締付部材の締め付けを行うために用いられるものである。この締め付け部4は、ハンドル装着部3とは反対の他端に設けられている。そのため、このハンドル装着部3を入力部としたとき、締め付け部4は、出力部として機能する。入力部から入力された締付トルクが伝達されて出力部から出力される。
【0034】
また、この締め付け部4には、係合部材の嵌合凹部に挿入される嵌合凸部4aが設けられている。嵌合凸部4aは、その軸中心が中心軸L上に位置するように設けられており、その外寸(対辺寸法)は、係合部材の嵌合凹部の開口寸法と略同一が好ましい。嵌合凸部4aは、ラチェットハンドル100のドライブ部104と同一形状、同サイズとなる。
【0035】
締め付け部4は、ハンドル装着部3から起歪体2を介して伝達された締結操作時の締付トルクを係合部材を介して締付部材に伝達する。締め付け部4は、起歪体2を通じてハンドル装着部3から伝達された締付トルクを中心軸Lに沿って係合部材に出力する出力部として機能する。
【0036】
この締め付け部4に装着する係合部材は、ボルト・ナット等の締付部材の種類や寸法に応じたソケットなどによって構成される。このソケットとトルク測定装置1との間にエクステンションバーを設けるような構成であってもよい。
【0037】
この締め付け部4にソケットを取り付けた場合、ソケットを介して締付部材に締付トルクが伝達されることとなる。このように、締め付け部4は、ソケットを取り付けることが可能であることから「装着部」とも称することがあり、上記のハンドル装着部3と区別するために、ハンドル装着部3を「第1装着部」、締め付け部4を「第2装着部」と称することがある。
【0038】
そして、歪み量検出部5、通信部6および電源部7は、起歪体2の外形部である取付面に設置される電子機器9である。図5では、合成樹脂製の筐体カバー1aでこれらの電子機器9を内包するように覆われている。これによって、電子機器9に対して外力が直接、加わらないようになっている。この筐体カバー1aの外形は、多角形状、円筒形状等のいずれの構成であってもよい。図5に示すトルク測定装置1では、説明の都合上、円筒形状を示しているが、これに限定されない。
【0039】
また、図4に示す例では、この筐体カバー1aを2つに分割した形態を示している。この形態についても電子機器9の全体を内包して起歪体2の一部または全部を覆うような形状であればよい。
【0040】
歪み量検出部5は、歪みゲージとも称され、図2図4に示すように起歪体2の歪み発生部2aに設置されることによって締結操作時に生じる起歪体2の変形に伴う歪み量を電気的に検出する。この歪み量検出部5は、締結操作時に伝達される締付トルクに応じた歪み量を検出すると、その歪み量に関する情報(電気抵抗値)を通信部6に出力する。本実施形態において、歪み量検出部5は、トルク測定装置1に対して単一のものを設けているが、これに限定されることなく、複数の歪み量検出部5を設けた構成としてもよい。後者の場合、歪み量検出部5それぞれが、検出した歪み量を通信部6に出力する。
【0041】
通信部6は、所定のプロトコルに従って、他の装置との間で通信ネットワークを介して無線通信を制御するネットワークインターフェースで構成される。通信部6は、例えばBluetooth(登録商標)、Wi-Fiなどの通信距離が数メートルから数十メートル程度とする近距離無線通信、或いは通信事業者が提供するキャリア回線網を利用した無線通信など、通信先との間で通信可能な機能を備えていればよい。
【0042】
この通信部6は、歪み量検出部5で検出された歪み量に関する情報(電気抵抗値)を通信先に送信する。このときの通信先は、所定のプロトコルにしたがってリンクされた機器(端末)であって、例えば、締付部材に設定した設定トルク値とその締付部材を締結する際に加えた締付トルクとを対応付けて管理する管理端末がある。この管理端末では、通信部6を介してトルク測定装置1から受信した締付トルク値を取得して記憶することが可能である。
【0043】
また、電源部7は、通信部6に対して通信に用いる電力を供給する電源である。より詳細には、この電源部7は、外部電源を用いて充電可能な二次電池(充電池)で構成される。電源部7は、図4に示すように筐体カバー1aに設けられた充電端子1bと接続可能とされており、この充電端子1bに接続された不図示の充電ケーブルを介して外部装置から供給された電力を蓄電する。
【0044】
なお、この電源部7の充電方法は、充電ケーブルによる充電を行うことに限られず、例えば、着脱可能な電池を充電時に取り外して充電することも可能である。
【0045】
保護部材8は、本体部が多角形状を成す一対の部材で構成されたものである。この保護部材8の詳細な構成については図6に示しており、後述する。
【0046】
トルク測定装置1は、保護部材8として、第1の保護部材である上側保護部材81と、第2の保護部材である下側保護部材82とを有している。
【0047】
この第1の保護部材である上側保護部材81は、ハンドル装着部3と筐体カバー1aの上端との間に設けられている。また、第2の保護部材である下側保護部材82は、締め付け部4と筐体カバー1aの下端との間に設けられている。この上側保護部材81と下側保護部材82とが略同一の形状によって対を成して設けられており、この上側保護部材81と下側保護部材82の対辺寸法は、筐体カバー1aの幅方向の寸法よりも大きく、この筐体カバー1aを保護している。
【0048】
保護部材8は、上記に示すように、所定の厚みを有する板状の部材であって、外形が多角形状からなることからトルク測定装置1を載置面に載置したとき、保護部材8の厚み部分(の一辺)が載置面と接する。このため、トルク測定装置1は、保護部材8が載置面と接することによって所定位置に留まることが可能となっている。
【0049】
なお、この保護部材8は、着脱が可能であって、筐体カバー1aを軸方向に沿って上下方向の端部から挟むように起歪体2に装着することが可能である。
【0050】
この保護部材8の詳細な構造を図6を用いて説明する。
保護部材8の本体部8aの略中央部分には、その内径が起歪体2の装着部分の幅寸法と略同一となる装着孔8bが形成されている。保護部材8は、この装着孔8bが起歪体2と接合している。上記のように、この保護部材8を着脱可能とするときは、この起歪体2に対して軸方向(Z軸方向)に圧入して装着される。もちろん、装着形態としてはこの圧入の形態に限られず、装着孔8bの垂直方向に雌ねじを設け、また、起歪体2の装着部分にザグリを設けて雄ねじを取り付けることで、保護部材8を起歪体2に固定することも可能である。このほか、保護部材8と起歪体2に穴を設け、ピンにより固定することも可能である。
【0051】
保護部材8の本体部8aの対辺寸法は、筐体カバー1aの軸方向(Z軸方向)と直交する幅方向(Y軸方向)の外寸(直径)よりも大きく設定されている。つまり、保護部材8の幅方向(Y軸方向)の長さは、筐体カバー1aのそれよりも長い。
【0052】
例えば、図6に示すように、保護部材8を六角形とした場合、対向する2辺の対辺寸法Aは、円筒形を成す筐体カバー1aの直径よりも大きい。よって、2つの保護部材8によって載置面に載置したとき、筐体カバー1aは、その載置面に接触しない状態となる。このような構成とすることによって、トルク測定装置1の長手方向を略水平とした状態で落下した際、保護部材8が、床面などの平面着地面に衝突するため、筐体カバー1aに直接的な落下衝撃力が加わることはない。そのため、落下時における筐体カバー1aと、この筐体カバー1aに内包される電子機器9とを破損から守ることができる。
【0053】
本実施形態において、保護部材8の本体部8aの「対辺寸法」とは、奇数の辺に囲まれた多角形(例えば五角形)の場合、1頂点に対して、その頂点と対向する反対側にある辺との間の寸法(長さ)であり、また、偶数の辺に囲まれた多角形(例えば六角形)の場合、1辺に対して、その辺と対向する反対側の辺との間の寸法(長さ)である。
【0054】
この保護部材8は、上側保護部材81と下側保護部材82の起歪体2に対する取り付け姿勢を一致させておくことが好ましい。
取り付け姿勢としては、上側保護部材81の1辺の面と、下側保護部材82の1辺の面とが共に締付工具を載置する載置面(略水平面)に対して平行となるように装着するのが好ましい。これにより、上側保護部材81の1辺の面と、下側保護部材82の1辺の面とが共に載置面と接するため、ラチェットハンドル100を載置した際により安定して載置することができる。
【0055】
図6に示すように、保護部材8の本体部8aには、その外周縁と装着孔8bとの間に、本体部8aの一部を肉抜きとした孔部8c(「肉抜き部」とも称する)が複数、設けられている。保護部材8の本体部8aは、任意の材料から成形される部材であり、この材料として金属を用いて成形されることが可能であるが、これに限定されることなく、弾性体を用いて成形してもよい。
【0056】
保護部材8が、金属を用いて成形されている場合、この孔部8cを設けることで軸方向の通信が良好となる。また、この孔部8cを適切な箇所に形成することで、保護部材8の強度を維持しつつ軽量化が図れるため、締結操作を行う際の重量負担を軽減させることが可能となる。その一方で、保護部材8が、弾性体を用いて成形されている場合、金属を用いて成形されている場合に比べて、軸方向の通信が良好となり、孔部8cを設ければ、さらに軸方向の通信が良好となる。
【0057】
なお、孔部8cの形状や形成数は、図6に示す形状に限定されず、保護部材8の強度を保ちつつ軽量化が可能な形状であればよい。
【0058】
また、図6に示すように、保護部材8の外周面には、締結操作時に締付対象物と接触して締付対象物が損傷することを防止するためのカバー8dが装着されている。カバー8dは、締付対象物に対する接触時の損傷を防止すると共に落下時の落下衝撃力が吸収できるように、ゴムやエラストマーなどの弾性体により成形されている。カバー8dは、保護部材8に対して着脱可能であるため、経年劣化により劣化した場合は交換可能である。なお、保護部材8が、弾性体によって成形されている場合はカバー8dを装着せずとも、保護部材8そのものによって同様の効果を得ることが可能である。よって、このカバー8dは、保護部材8が金属によって成形されている場合に特に有効である。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態に係るトルク測定装置1は、搭載される電子機器9を内包して保護する筐体カバー1aが起歪体2の外周の一部または全部を覆うように取り付けられ、筐体カバー1aに対し、筐体カバー1aの幅方向からの外力が加わらないようにするための一対の保護部材8が、起歪体2の軸方向に沿って筐体カバー1aの上下位置にそれぞれ取り付けられている。
【0060】
保護部材8は、起歪体2におけるハンドル装着部3と筐体カバー1aの一端との間に装着される上側保護部材81と、起歪体2における締め付け部4と筐体カバー1aの他端との間に装着される下側保護部材82とで構成され、上側保護部材81および下側保護部材82の対辺寸法は、何れも筐体カバー1aの軸方向と直交する幅方向の外寸よりも大きく設定されている。
【0061】
これにより、トルク測定装置1が不意に落下したとしても、落下時に筐体カバー1aが床面などの平面着地面に衝突する前に保護部材8が衝突して落下衝撃力が筐体カバー1aに直接加わらないため、落下による筐体カバー1aおよび筐体カバー1aに内包される電子機器9の破損を防止することができる。
【0062】
また、本実施形態に係るトルク測定装置1は、保護部材8の外周面にカバー8dを装着しているため、任意の対象物に対しても損傷させる虞を最小限に抑制することができる。また、保護部材8にカバー8dを装着させることで、落下した際の落下衝撃力を吸収することができる。
【0063】
[その他]
上述の実施形態において、トルク測定装置1は、特許請求の範囲に記載された「トルク測定装置」の一例に該当する。筐体カバー1aは、特許請求の範囲に記載された「筐体カバー」の一例に該当する。起歪体2は、特許請求の範囲に記載された「起歪体」の一例に該当する。ハンドル装着部3は、特許請求の範囲に記載された「装着部」の一例に該当する。締め付け部4は、特許請求の範囲に記載された「締め付け部」の一例に該当する。歪み量検出部5は、特許請求の範囲に記載された「歪み量検出部」の一例に該当する。通信部6は、特許請求の範囲に記載された「通信部」の一例に該当する。保護部材8は、特許請求の範囲に記載された「保護部材」の一例に該当する。本体部8aは、特許請求の範囲に記載された「本体」の一例に該当する。孔部8cは、特許請求の範囲に記載された「孔部」の一例に該当する。カバー8dは、特許請求の範囲に記載された「カバー」の一例に該当する。上側保護部材81は、特許請求の範囲に記載された「第1の保護部材」、「上側保護部材」の一例に該当する。下側保護部材82は、特許請求の範囲に記載された「第2の保護部材」、「下側保護部材」の一例に該当する。ラチェットハンドル100は、特許請求の範囲に記載された「締付工具」の一例に該当する。ヘッド部102は、特許請求の範囲に記載された「ヘッド部」の一例に該当する。
【符号の説明】
【0064】
1 トルク測定装置
1a 筐体カバー
1b 充電端子
2 起歪体
2a 歪み発生部
3 ヘッド装着部
3a 嵌合凹部
4 締め付け部
4a 嵌合凸部
5 歪み量検出部
6 通信部
7 電源部
8 保護部材
8a 本体部
8b 装着孔
8c 孔部
8d カバー
81 上側保護部材
82 下側保護部材
9 電子機器
100 ラチェットハンドル
101 ハンドル本体
102 ヘッド部
103 ハンドル部
104 ドライブ部
L 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6