(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】不織布製フィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20221020BHJP
B01D 46/10 20060101ALI20221020BHJP
B01D 39/18 20060101ALI20221020BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D46/10 B
B01D39/18
B01D39/20 B
B01D39/20 Z
B01D39/20 C
(21)【出願番号】P 2019094545
(22)【出願日】2019-05-20
【審査請求日】2022-05-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394025186
【氏名又は名称】株式会社日本デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】品川 宏史
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-015297(JP,A)
【文献】実開平05-039979(JP,U)
【文献】特開2003-058279(JP,A)
【文献】特開2005-270967(JP,A)
【文献】特開平10-028825(JP,A)
【文献】特開平09-220418(JP,A)
【文献】登録実用新案第3151505(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/54
B01D 39/00-39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状で不織布製のフィルタ本体と、
このフィルタ本体の一面に粘着剤を介して重ね合わされた剥離紙とを備えた不織布製フィルタであって、
上記フィルタ本体の外周縁の一部には、この外周縁から外方に向かって突出した突起部が形成され、この突起部に上記剥離紙の一部または全部を複数部分に分離するための所定形状の切れ込みが形成された不織布製フィルタ。
【請求項2】
シート状で不織布製のフィルタ本体と、
このフィルタ本体の一面に粘着剤を介して重ね合わされた剥離紙とを備え、
上記フィルタ本体の外周縁の一部には、この外周縁から外方に向かって突出した突起部が形成され、
この突起部に、上記剥離紙の一部または全部を複数部分に分離するためのU字形状の切れ目が形成された不織布製フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は不織布製フィルタ、例えば上着に装着された電動ファンのケースに貼り付けて使用される不織布製フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、換気口に貼り付けて使用されるフィルタとしては、例えば特許文献1に記載のものが知られていた。このものは、住宅の壁にある換気口の室内側に、接着剤の付いたフィルタを貼り付けることにより、換気口から侵入してくる外気の汚れや、アレルギーの原因となる花粉を取り除くことができるようにしたシール状のエアフィルタである。汚れを十分吸着したフィルタは、簡単に換気口から剥がすことができる使い捨て型のエアフィルタである。
具体的には、空気清浄機などに用いられるガーゼ状の素材を換気口の形状に合わせて加工し、それを換気口に貼り付けるため弱粘性の接着剤を塗布したものである。エアフィルタに接着剤を塗布したものを住宅の換気口の室内側壁面などに貼り付けて使用する。使用後は剥がして捨てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のエアフィルタは接着剤をガーゼに塗布し、直接、壁面の換気口に貼り付ける構成のため、剥離紙を有しておらず、保存、運搬などの取り扱いできわめて不便であるという問題を有していた。
また、貼付タイプではなく、袋状に構成したフィルタを換気口枠に被せるフィルタについても知られていたが、これには取付枠が必要であることから使い勝手が悪いという欠点が生じていた。
【0005】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、不織布製のフィルタ本体の裏面に粘着剤を介して剥離紙を重ねるとともに、本体外周縁部に切れ目を設けることにより、切れ目から剥離紙を簡単に剥がしてフィルタ本体を換気口形成材に直接貼り付けることができることを知見し、この発明を完成させた。
【0006】
すなわち、この発明は、剥離紙を剥がすだけで直接貼り付けることができるとともに、この剥離紙を不織布フィルタ材から簡単に剥がすことができる不織布製フィルタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、シート状で不織布製のフィルタ本体と、このフィルタ本体の一面に粘着剤を介して重ね合わされた剥離紙とを備えた不織布製フィルタであって、上記フィルタ本体の外周縁の一部には、この外周縁から外方に向かって突出した突起部が形成され、この突起部に上記剥離紙の一部または全部を複数部分に分離するための所定形状の切れ込みが形成された不織布製フィルタである。
【0008】
不織布製フィルタは、不織布製のフィルタ本体の一面(表面または裏面)に粘着剤(接着剤)を塗布してあり、この粘着剤層を介してフィルタ本体とは同一形状または異なる形状の剥離紙(離型紙)が重ね合わされて積層された構成である。フィルタ本体は、所定厚さのシート状で外形は任意だが円形、角形とすることができる。
不織布製のフィルタ本体がシート状であるとは、フィルタ本体が薄い紙のようなもの、また所定面積を有する平面状のものであることを意味する。
この場合の不織布製フィルタ本体は、その用途に応じた面積、形状に形成されている。例えば上着(作業用ジャンパなど)に内蔵の電動ファンの空気吸入口に使用する場合は、その電動ファンの空気吸入口部分の大きさに合わせた面積の円形とされる。また、エアコンの空気吸入口部分にはり付ける場合は、矩形とする。その形状は、角形(四角形)でも、丸形(円形)でも用途に対応した形状とする。
ここでの不織布とは、繊維を織らずに絡み合わせたシート状のものをいう。不織布は繊維を熱・機械的または化学的な作用によって接着または絡み合わせることで布にしたものを指す。ここではその製法などは問わない。
剥離紙は、例えばフィルタ本体と同一形状で所定の厚さを有し、フィルタ本体(不織布)の一面に粘着剤を介して重ね合わされて粘着されている。剥離紙としては市販品を用いることができる。
この不織布製フィルタの外周縁部分には、所定長さの切れ目または切れ込みが形成されている。これらの切れ目または切れ込みは、上記剥離紙の一部または全部を複数部分に分離するためのものである。不織布製フィルタは、フィルタ本体の一面に同一サイズ・同一形状の剥離紙を重ね合わせて形成されているところから、上記切れ目または切れ込みは、フィルタ本体および剥離紙に対して、少なくとも剥離紙を切断して分離可能な程度の深さ、形状に形成されている。
この場合の切れ込みとは、切り口、V字形状のノッチ、細長いスリットを含むものとする。
この切れ目または切れ込みは、不織布製フィルタの外周縁部分に形成される。不織布製フィルタの形状は、例えば円形、四角形、三角形、長円形などの他、フィルタ本体および剥離紙が円形とした場合その外周縁の一部から半円形の突起部が突出したものなどが想定される。この場合、この突起部に切れ目または切れ込みを形成することもできる。
この切れ目または切れ込みは、直線または曲線、さらに外周縁から本体の中心に向かって例えば直線的に延びる所定長さに設定されている。または、半円形、ジグザグ形、カギ型など所定形状に形成することができる。さらには、半月形、V字形状のノッチなどであってもよい。
また、この切れ目または切れ込みは、例えば剥離紙と本体との積層されたものにおいて、その表面から裏面まで貫通するものとする。フィルタ本体および剥離紙が切断されるものである。この場合、少なくとも剥離紙は切断されている。すなわち、不織布の厚さが大きい場合でも、少なくとも剥離紙には切れ目(切断されている)が形成されている必要がある。剥離紙が複数部分に分離されることにより、フィルタ本体から剥離紙を剥がすことが容易となるからである。
【0009】
上記切れ目は突起部の外周縁から所定長さだけ放射内方の位置を開始点とし放射内方に向かって所定長さだけ延びているように形成することができる。または、突起部が形成されていない場合はフィルタ本体の外周縁から非切断部分を介して内側位置から放射方向の内方に向かって所定長さ分だけ切断・形成されることもできる。すなわち、突起部がある場合は突起部の外縁からわずかな長さだけは切れ目を入れずに、切れ目なしの余長部分(非切断部分)を有している。これはフィルタ本体が突起部を有しない場合も同じであり、切れ目が外縁にまで延長されていないことを意味している。
なお、切れ目は直線状または緩やかな曲線状であってもよく、その長さについても任意であるが、少なくとも指でつまんで剥離可能な程度の長さを必要とする。
切れ目は、連続した1本の線で形成する他、ミシン目で形成することもできる。切れ目はフィルタ本体が真円形の場合は円中心に向って延在する。突起部が半円形であればその円中心に向かうこととなる。
また、切れ目の数は単数に限られない。例えば円形のフィルタ本体としたとき突起部を円周方向において180度離間した円周方向の反対側にも設け、それぞれに切れ目を形成してもよい。その切れ目についても例えば突起部に平行して2本の切断線で形成することもできる。
なお、突起部については半円形であっても矩形であってもよい。矩形突起部の場合切れ目は本体の中心に向かって延在させることが好ましい。
【0010】
上記不織布製フィルタは、例えば電動ファンの空気吸入口部分に取り付けられる。電動ファンのカバーであるケーシングに直接貼り付けることができる。なお、電動ファンだけではなく、エアコンの吸気部分、電動ファンを有しない通気口壁に通気口を覆うように取り付けることもできる。また、パソコンの冷却ファンの空気取り入れ口にセットすることもできる。
さらには、この発明にあっては、エアフィルタとしてだけで無く、例えば水を濾過するフィルタにも適用することができる。例えば排水口フィルタとしての適用を妨げるものではない。
【0011】
また、上記電動ファンは上着(衣服)に取り付けられた場合、またはヘルメットや帽子に取り付けられた場合も含むこととなる。いわゆる空調服として市販されている作業用上着に内蔵された電動ファンのほこり・花粉などの除去用のフィルタとしても適用することが可能である。
【0012】
不織布製フィルタは、シート状で不織布製のフィルタ本体と、このフィルタ本体の一面に粘着剤を介して重ね合わされた剥離紙とを備えている。このフィルタ本体の外周縁の一部には、この外周縁から突出した突起部が形成されている。この突起部には、外周縁から中心に向かって延びるとともに、フィルタ本体および剥離紙で構成される不織布製フィルタの表面から裏面まで貫通する所定長さの切れ目または切れ込みが形成されている。
切れ目または切れ込みは少なくとも突起部に形成され、突起部から延長されてフィルタ本体に設けられることを妨げるものではない。切れ目は剥離紙の表裏面を少なくとも貫通、すなわち剥離紙を切断するものである。不織布部分(フィルタ本体)についても切断することが好ましいが、剥離紙のみの切断であってもこの発明の外延に含まれるものとする。切れ込みは例えばV字形状のノッチなどである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、シート状で不織布製のフィルタ本体と、このフィルタ本体の一面に粘着剤を介して重ね合わされた剥離紙とを備え、上記フィルタ本体の外周縁の一部には、この外周縁から外方に向かって突出した突起部が形成され、この突起部に、上記剥離紙の一部または全部を複数部分に分離するためのU字形状の切れ目が形成された不織布製フィルタである。
なお、不織布製フィルタの製造は、大面積で例えばロール状に製造した不織布に対してその裏面に粘着剤をスプレーし、スプレー面に剥離紙を重ね合わせ粘着する。そして、一体となった剥離紙および不織布本体を所定の形状にプレスすることで、切り取り製造することとなる。このプレスにおいて突起部および切れ目(切れ込み)は同時に形成(製造)することができる。すなわち、これまでの製造プロセスからの工程増加などは発生しない。
【0014】
切れ目については、始端が外周縁からではなく、外周縁に非切断部分を残した外周縁のわずかに内方位置から開始するものも含まれる。
この場合、フィルタ本体から剥離紙を剥離する手順にあっては、切れ目について剥離紙が手前側にあるようにフィルタ本体を保持し、この切れ目から剥離紙とフィルタ本体とを一体として破り、切れ目を外周縁まで延びるようにする。その結果としてフィルタ本体の外周縁部に十分な長さの切れ目が形成される。さらに、指で切れ目の右側と左側とを異なる方向に、すなわち切れ目の右側を押し、左側を引くように同時に行うことで、フィルタ本体から剥離紙が分離する(一部分が剥がれる)こととなる。一部が剥離した剥離紙をつまんで引きはがすことによりきれいに不織布製のフィルタ本体から剥離紙全体を剥離することができる。
【0015】
上記不織布製フィルタは、電動ファンの空気吸入口部分に取り付けられる。
不織布製フィルタを電動ファン(この場合は扇風機を含む概念とする)、例えば各種機器(エアコンを含む)内蔵の小型ファンの空気吸入口部分、また換気扇ファンの室内側、レンジフードの室内側に配置することができる。不織布フィルタ本体については、それらの用途に応じてその目付、大きさ、厚みなどが設計される。
【0016】
上記電動ファンは上着を含む衣類に取り付けられる。
いわゆる空調服(作業用上着の一種)に内蔵の電動ファンに対してその吸気口に配設する電動ファン用フィルタとしてこの不織布製フィルタを用いることができる。ほこり、花粉などの除去するために、不織布での除去・ブロック性能を高めることもできる。用途に応じて不織布製のフィルタ本体の設計(通気率など)を行うものとする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1~2に記載の各発明によれば、シート状の不織布製フィルタ本体と一体に粘着して積層された剥離紙をこの切れ目または切れ込みからきわめて簡単に剥離することができる。その結果、フィルタ本体を容易に例えば空気吸入口部分に粘着(貼り付け)することができる。使い勝手が飛躍的に向上した不織布製フィルタを提供することができる。
特に、上記フィルタ本体の外周縁の一部に突起部を形成し、この突起部に上記切れ目または切れ込みを配設することにより、その剥離紙の剥離作業(両手または片手での作業)がさらに簡単になる。
また、上記切れ目は外周縁からはわずかに放射内方位置を開始点として放射内方に向かって延びるように形成したため、通常の運搬、保管などの動作ではフィルタ本体から剥離紙が容易に剥がれることがないが、所定の手順での作業(操作)により小さな切れ目を大きくすることができ、剥離紙を剥離する際の作業性(操作性)をさらに高めることができる。
【0018】
これらの発明によれば、不織布製のフィルタ本体で粘着剤を塗布したその一面を貼り付けの対象となる機器壁面などに容易に粘着することができる。その際の作業性を高めることができる。
また、フィルタ本体の取着に際して両面テープやその他の接着剤、取り付け用の磁石、面状フィルタなどを使用する必要がなく、コストダウンに資する。また、不織布フィルタ本体の縁部にゴムを配置して対象となる機器類に被せるような手間も排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の
参考例に係る不織布製フィルタを示す平面図(a)および一部側面断面図(b)である。
【
図2】この発明の
参考例に係る不織布製フィルタの小突起部を示す拡大図(a)および小突起部がない場合の不織布製フィルタの部分図(b)である。
【
図3】この発明の
参考例に係る不織布製フィルタの使用例を示す部分図である。
【
図4】この発明の
参考例に係る不織布製フィルタの小突起部を示す拡大図である。
【
図5】この発明の実施例3に係る不織布製フィルタの小突起部を示す拡大図である。
【
図6】この発明の実施例4に係る不織布製フィルタの小突起部を示す拡大図である。
【
図7】この発明の実施例5に係る不織布製フィルタの小突起部を示す拡大図である。
【
図8】この発明の実施例6に係る不織布製フィルタの小突起部を示す拡大側面図(A)および拡大正面図(B)である。
【
図9】この発明の実施例7に係る不織布製フィルタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施例を、図面を参照して具体的に説明する。
【実施例】
【0021】
図1~
図3において、10は不織布製フィルタを示す。この不織布製フィルタ10は、空調服ファン用のフィルタとして使用される例である。したがって、不織布製フィルタ10は、その厚さが1.5~3mmでその直径が10cm程度の真円形の不織布製のフィルタ本体11を有しており、このフィルタ本体11の裏面にはスプレーされた粘着剤を介して同一大きさ・形状の剥離紙12が重ね合わされて貼り付けられている。フィルタ本体11は大略真円形の外周縁の一部に半円形の突起部13が突出して形成されている。
【0022】
突起部13には、その中央部に半径方向に延びる所定長さの切れ目14が形成されている。切れ目14は、
図2(a)に示すように、突起部13の外周縁から所定長さの余長部分(非切断部分)15だけ半径方向内方において真円中心に向かって所定長さCだけ形成されている。この切れ目14は不織布製のフィルタ本体11および剥離紙12をともに切れ込んでフィルタ本体および剥離紙の積層体の表裏面を貫通した形状で形成されている。同図中aは余長部分(非切断部分)15の長さを、bは半円形の突起部13での切れ目14の始点と突起部中心との距離を、cは切れ目14の半径方向に延びる長さを、dは突起部13の横幅をそれぞれ示している。因みに、余長部15の長さは0.5mm~1.0mmが好ましい。切れ目14の長さcは5mm、切れ目14の始端から突起部13の中心までの距離bも10mmとしている。突起部13の半径eは10.5~11mmとなる。また、突起部13の突出した幅(真円から突出した部分の外周長さ)dは20mm程度とする。
【0023】
切れ目14が5mmの長さであるのに対してその切れ目の延長線上にある余長部15の長さを上記0.5mm程度としたため、不織布本体14の当該突起部13では不織布がすぐに破れるのではなく剥離紙12から剥がされる形となりその後に余長部15が破断することとなる。すなわち、剥離紙12が本体不織布から剥がれやすくなっている。
なお、
図2(b)には突起部を形成していない真円形の不織布本体11に切れ目14aを形成した場合を示す。この場合も切れ目14は半径方向に延びており積層体を上下に切断し、切断していない余長部が切れ目始端と真円の外周縁との間に例えば0.5mm程度の長さで設けられている。その他の構成は同じとする。
【0024】
また、ここで使用する不織布本体14は、ポリエステル・モダアクリル繊維で構成されているが、この他にもロックウール・ガラスなどの無機繊維、綿・麻などの天然繊維、レーヨン・ナイロン・エステル・ビニロン・塩化ビニールなどの合成繊維が使用されることがある。難燃性・不燃性が特に要求されるフィルタとしてはモダアクリル、難燃レーヨン・ビニロン・エステルさらにカーボン繊維が使用される。今回は空調服ファン用フィルタとして使用するため、厚さ方向での弾力性、火気使用場所での使用を考慮し、ポリエステル・モダアクリルの混合繊維を使用した。
不織布製フィルタ本体11の重量は、20~100g/m2、特に50g/m2としてある。
さらに、使用する粘着剤としては、空調服ファンの樹脂成型品に対して軽く接着し、かつ脱落がない程度の接着力を有するアクリル酸エステル樹脂製粘着剤を使用した。この場合の樹脂の量は5~20g/m2、好ましくは10g/m2とする。
なお、粘着剤の不織布への付着方法としては、プリント法、含浸法、転写法などがあるが、今回は通気性を確保するためにスプレー法により不織布本体11の裏面に粘着剤を塗布した。
【0025】
本不織布製フィルタの製造方法としては、一枚の不織布(例えばロール状不織布)の裏面にスプレー法により粘着剤を被着させる。スプレーとしたのは不織布の通気性を損なわないためである。次いで、同じ広さの所定の剥離紙を粘着剤塗布面に重ね合わせることで不織布シートの裏面全面に剥離紙を積層した(積層体)。さらに、この積層したフィルタ本体/剥離紙をプレス加工により所定形状すなわち、真円形の外周縁の一部に突起を形成した形状で、かつこの突起部13に所定位置に切れ目14を形成することとする。
以上の工程を経て本件不織布製フィルタ10が製造されることとなる。
【0026】
図3を参照して突起部13から剥離紙12を本体不織布11から剥離する手順について説明する。この図に示すように、突起部13を右手指でつまんで右側半分を押すと同時に左側半分を左手指で手前に引っ張るものとする。その結果、剥離紙14が不織布11から剥がれながら余長部分15が破れて破断する。
そして、剥がれた部分の剥離紙14の一部をつまんでフィルタ本体11である不織布から剥離紙12全体を順に剥がすこととなる。この操作はきわめて容易となり、誰でも簡単に剥離紙12を素早くはがすことができる。
剥離紙12を剥がしたフィルタ本体11は、空調服のファンを囲う骨状のケース(プラスチック製のスペーサ)にその粘着剤により貼着される。その吸気口部分に簡単に貼り付けることができる。
【0027】
以上のように、この参考例に係る不織布製フィルタ10は円形でその外周縁から突出する半円形の突起部13を有しており、この突起部13には半径方向に延びる切れ目14が形成されている。上記突起部13は約半径10mmの半円形であって、切れ目14は周縁部(端部)より切れ目がない(切断されていない)0.5mm~1.0mm程度の余長部15を残して長さ4~5mmの切れ目14を入れたものである。
しかしながら、本体形状、突起(耳)の有無などについては適宜変更可能な範囲であり、本発明にあっては、所定長さの切れ目を半径方向(中心に向かう方向)に形成しておくことで、本体不織布から剥離紙を剥がしやすくしたものである。この目的に適う構成上の変更は適宜とすることができる。切れ目の長さ変更、切れ目の数(2条の平行切れ目とすることなど)、これをミシン目とするなどもこの発明の範囲とする。また、不織布製本体の厚さ切れ目の有無は問わないので、少なくとも切れ目には切り込みが形成され切断されていることが必要となる。
【0028】
図4は、この発明の
参考例に係る不織布製フィルタ20の小突起部21を示す拡大図である。
この
参考例においては、小突起部21において切れ目22としてミシン目による直線を形成してある。直線は本体の中心に向かって放射方向に所定長さだけ延びて形成されている(小突起部全体を2分できる長さ)。ミシン目22は剥離紙だけでなくフィルタ本体にも併せて形成されている。
その他の構成は上記
参考例と同等である。
この
参考例に係る不織布製フィルタ20にあっては、指で摘まんだ小突起部21を左右にずれるように力を入れると、その切れ目22(ミシン目)から剥離紙を左右2つの部分に分割、分離させることができる。剥離紙をフィルタ本体から容易に分離、剥離することができる。その他の作用は上記
参考例と同等となる。
【0029】
図5は、この発明の実施例3に係る不織布製フィルタ30の小突起部31を示す拡大図(シート状フィルタの一部の平面図)である。
この実施例にあっては、小突起部31にV字形状のノッチ(切れ込み)32を形成してある。フィルタ本体、剥離紙のいずれにもノッチが形成されている。例えば小突起部付きの円形の不織布製フィルタ30を製造した後、その表裏方向のスタンピングによりこれらを打ち抜き、V字ノッチ32を小突起部31のみに形成してある。V字ノッチ32は円中心方向に向かって形成されている。ノッチ(切れ込み、カット)32の開口幅は任意とするが、小突起部31の半円周の半分以下とする(円形の本体に切れ込みが及ばない程度の深さとする)。
したがって、この実施例においては、小突起部31のノッチ形成部をつまんで左右に指をずらすことで剥離紙の一部がフィルタ本体から剥離し、剥離紙全体の知る他本体からの剥離が容易となる。
その他の構成作用は上記
参考例と同等とする。なお、ノッチ形状、ノッチサイズは適宜に形成する。
【0030】
図6は、この発明の実施例4に係る不織布製フィルタ40の小突起部41を示す拡大図である。この実施例では、小突起部41においてU字形状の打ち抜きによる切れ目42を形成してある。この切れ目42においては、U字の開口側が放射外方に向かって位置するように形成されており、この形成部をつまんでこの打ち抜きによる切れ目(U字形)42から剥離紙をフィルタ本体から剥離する。剥離紙は不織布(フィルタ本体)から容易に分離する。打ち抜かれた切れ目42の内側の剥離紙部分自体は、その他の部分から破れて分離することとなる。したがって、剥離が容易、確実となる。その他の構成は上記実施例と同様である。
【0031】
図7は、この発明の実施例5に係る不織布製フィルタ50の小突起部51を示す拡大図である。この実施例では三日月形状の打ち抜きによる空隙(スリット;切れ込み)52を小突起部51の根元(円形本体との連結部)に円周方向に沿って形成してある。この実施例に係る切れ込み52では小突起部51をつまんで放射外方に向かって引っ張ると、剥離紙のみが容易に破れて剥がれることとなる。その他の構成は上記実施例と同様である。
【0032】
図8は、この発明の実施例6に係る不織布製フィルタ60の小突起部61を示す拡大側面図(A)および拡大正面図(B)である。この実施例に係る剥離紙は小突起部61またはフィルタ本体から剥離紙の一部が切れ込み62とされオーバハングした形状に形成されている点である。この剥離紙63のオーバハング部分62を摘まむことで極めて容易に剥離紙63を不織布本体64から剥がすことができる。また、迅速にこの作業を行える。すなわち、フィルタ本体64の突起部61の形状をあらかじめ半円形状がカットされた形状に形成しておき、半円形の小突起部付きの円形剥離紙63を重ね合わせた不織布製フィルタ60である。
この実施例に係る切れ込み付きフィルタ本体により剥離紙の一部のみが突出してあり、この部分を摘まんで簡単に剥離作業を進めることができる。矢印は剥離紙の一部(オーバハング部)を剥がす際の方向を示す。
その他の構成および作用効果については、上記実施例のそれと同じとする。
【0033】
図9は、この発明の実施例7に係る不織布製フィルタ70およびその小突起部71を示す斜視図である。
この実施例ではフィルタ本体72を矩形形状に形成してエアコンの空気吸入口部分にはり付けて使用するタイプのフィルタ70である。本体72の長辺の中間部に半円形の小突起部71が形成されており、この小突起部71には本体中心に向かってV字ノッチ73が形成されている。ノッチ73は不織布である矩形の本体72および本体裏面の剥離紙74を切り取るように形成されている。
この実施例に係る切れ込み73では小突起部71を両手の指でつまんでノッチ外方に向かって引っ張ると、剥離紙74のみが容易に破れて剥がれることとなる。その他の構成は上記実施例と同様である。なお、本体裏面の粘着剤層を外周縁部分にのみ帯状(矩形)に配設し、これに伴い剥離紙も粘着剤層部分と同じ形状とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、例えば電動ファン用不織布製フィルタについての技術として有用である。
【符号の説明】
【0035】
10 フィルタ
11 フィルタ本体、
12 剥離紙、
13 突起部、
14 切れ目、
15 余長部(非切断部)。