(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B27K 3/36 20060101AFI20221020BHJP
B27K 3/34 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B27K3/36
B27K3/34 B
(21)【出願番号】P 2019548970
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(86)【国際出願番号】 FI2018050173
(87)【国際公開番号】W WO2018162804
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-01-29
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】519322093
【氏名又は名称】パロノット オイ
【氏名又は名称原語表記】PALONOT OY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ヤリ クッコネン
(72)【発明者】
【氏名】ティモ ニッシネン
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-091409(JP,A)
【文献】特開2016-007822(JP,A)
【文献】特開2015-143224(JP,A)
【文献】特表平04-506366(JP,A)
【文献】特公平08-022809(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0088590(US,A1)
【文献】特開平10-278003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0201621(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102732368(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 3/00 - 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材製品の処理用難燃性組成物であって、
ビスホスホン酸と、アルカノールアミンと、任意にアルカリ剤との混合物または反応生成物の水溶液を含み、
少なくとも75モル%の前記アルカノールアミンが遊離形態で添加されており、
前記組成物は、3.0~9.0の範囲のpHを有する、木材製品の処理用難燃性組成物。
【請求項2】
前記ビスホスホン酸が、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
酸形態で前記水溶液中に存在するビスホスホネートを含み、少なくとも50モル%の前記ビスホスホネートが、酸形態で存在する、
請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の溶解成分の量から計算して、0.1~50重量%の1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸を、任意に他のビスホスホネートもしくは有機ホスホネートまたはそれらの組合せとの混合物で含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
アルカリ剤の塩の形態で、前記組成物の溶解成分の量から計算して、0.1~70重量%の、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸または1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸
、他のビスホスホン酸
、ビスホスホネートおよ
び他の有機ホスホネート
から選択される少なくとも2つの混合物;および
前記組成物の溶解成分の量から計算して、1~30重量%のアルカノールアミンまたはアルカノールアミンの混合物、
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、4.0~7.0のpHを有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルカリ剤が、カルシウムを含まない無機水酸化物および炭酸塩、アンモニア、水酸化アンモニウムならびにそれらの混合物の群から選択される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記アルカリ剤が、前記1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸の前記水溶液のpHを4.0~7.0の範囲の値に調節するのに十分な量で存在する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記アルカリ剤が、前記
水溶液の0.1~40重量%の量で存在する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記アルカリ剤が、アンモニアであり、1~25重量%の水中のアンモニアの水溶液の形態で添加されている、
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記アルカノールアミンが、式
NR
1R
2R
3 I
を有するアミンから選択され、
式中、
R
1、R
2およびR
3は、水素ならびに1~6個の炭素原子を有し、ヒドロキシル基、モノ-、ジ-およびトリ-アルカノールアミンから選択される少なくとも1つの置換基で任意に置換されているアルキルから独立して選択される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記アルカノールアミンが、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノ-sec-ブタノールアミン、ジエタノールアミン、ジ-イソプロパノールアミン、ジ-sec-ブタノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリイソプロパノールアミンならびにそれらの混合物の群から選択される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記アルカノールアミンが
、メチルエタノールアミン、ブチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミンおよびエチルジエタノールアミンおよびそれらの混合物の群
を含むアルキルアルカノールアミンの群から選択される、
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記アルカノールアミンが、請求項12のアルカノールアミンと、請求項13のアルキルアルカノールアミンとの混合物を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物の溶解成分の量から計算して、1~30重量%のアルカノールアミンまたはアルカノールアミンの混合物を含む、
請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記アルカリ剤が、アンモニアを含み、前記ビスホスホ
ン酸が、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸を含み、前記アルカノールアミンが、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンまたはその混合物を含む、
請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
6か月を超える貯蔵寿命を有する、
請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
95重量%以下の水を含む、
請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
10~35重量%の水を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
アルカリ剤、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸およびアルカノールアミンからなり、これらがすべて水に溶解または分散している、
請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
リン酸アンモニウム、ホウ酸塩、ホウ酸およびそれらの混合物の群から選択されるさらなる難燃剤を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
エチレンジアミンコハク酸、イミノジコハク酸、N-ビス-[2-(1,2-ジカルボキシエトキシ)-エチル]-アスパラギン酸、エチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸ならびにそれらの混合物の群から選択される錯化剤を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、M1分類および建築材料の化学および官能試験プロトコル、バージョン22.1.2015に記載されている0.03mg/m
2時未満のアンモニア放出速度を示す、
請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物の乾燥重量から計算して:
30~50重量部の、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸または1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホネート;
1~10重量部の、アルカノールアミンまたはその混合物(前記アルカノールアミンは遊離形態で添加されている);
0.1~40重量部のアルカリ剤;および
水、
を含む、
請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
アルカリ剤の塩の形態の1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸と、アルカノールアミンと
の混合物である、
請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
遊離形態のカルボン酸を含まない、または前記
アルカノールアミンもしくは前記アルカリ
剤に結合したカルボン酸を含まない、成分
の混合物である、
請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
木材製品の処理用難燃性組成物の製造方法であって、
前記組成物は、ビスホスホン酸と、アルカノールアミンと、任意にアルカリ剤との混合物または反応生成物の水溶液を含み、
前記方法は、
10~60重量部のビスホスホン酸と;
1~10重量部のアルカノールアミンまたはその混合物(少なくとも75モル%の前記アルカノールアミンが遊離形態で添加される)と;
任意に0.1~40重量部のアルカリ剤と;
水、とを一緒に混合して、3.0~9.0の範囲のpHを有する組成物を提供することを含む、木材製品の処理用難燃性組成物の製造方法。
【請求項28】
前記アルカノールアミンと前記アルカリ剤との塩基当量の合計量が、前記ビスホスホン酸の酸当量の少なくとも50%になる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
35~40重量部の1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸を、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノ-sec-ブタノールアミン、ジエタノールアミン、ジ-イソプロパノールアミン、ジ-sec-ブタノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリイソプロパノールアミンならびにそれらの混合物から選択される3~8重量部のアルカノールアミンと、水に溶解した2~10重量部のアンモニアと、任意に0.1~5重量部のイオン性界面活性剤と混合する、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
35~40重量部の1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸を、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノ-sec-ブタノールアミン、ジエタノールアミン、ジ-イソプロパノールアミン、ジ-sec-ブタノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリイソプロパノールアミンならびにそれらの混合物から選択される3~8重量部のアルカノールアミンと、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸のアンモニウム塩の形態で添加される2~10重量部のアンモニアと、任意に0.1~5重量部のイオン性界面活性剤と混合する、請求項27または28に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、遊離形態のカルボン酸を含まない、または前記
アルカノールアミンもしくは前記アルカリ
剤に結合したカルボン酸を含まない、成分を一緒に混合することにより製造される、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
10~100℃の温度で混合を行うことを含む、請求項27~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
M1分類および建築材料の化学および官能試験プロトコル、バージョン22.1.2015に記載されている0.03mg/m
2時未満のアンモニア放出速度および4.0~7.0のpHを示す組成物を製造することを含む、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
木材製品に難燃性を付与するための木材製品の処理方法であって、前記木材製品を請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含む、木材製品の処理方法。
【請求項35】
前記木材製品上に、10~500g/m
2の前記難燃性組成物を適用することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記木材製品を請求項1~18または20~23のいずれか一項に記載の組成物と接触させるステップを含み、前記組成物を、スプレーによって前記木材製品上に適用する、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記木材製品を請求項1~18または20~26のいずれか一項に記載の組成物と接触させるステップを含み、前記組成物を、加圧含浸によって適用する、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記木材製品を前
記組成物に浸漬することによって、前記木材製品を前記組成物と接触させるステップを含む。請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記木材製品が、木材(ランバー)
、人工木材製品ならびに他の木質系ボード、ファイバーボードおよび配向ストランドボードの群から選択される、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
複合構造体を形成するために、前記組成物を、2つ以上の木材プライを結合するために使用される接着剤と混合する、請求項34~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
難燃性を示し、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸およびアルカノールアミンを含む木材製品であ
り、少なくとも75モル%の前記アルカノールアミンが、遊離形態で
前記木材製品に添加されて
いる木材製品の製造方法であって、請求項34~40のいずれか一項に記載の方法
を行うことを含む、木材製品
の製造方法。
【請求項42】
前記木材製品が、木材(ランバー)
、人工木材製品ならびに他の木質系ボード、ファイバーボード、配向ストランドボードおよび音響ボードから選択される、また
はセルロース系繊維もしくはセルロース系材料から選択される、請求項41に記載の木材製品
の製造方法。
【請求項43】
前記木材製品が、B-s1、d0による火災クラス要件を満たす、請求項41または42に記載の木材製品
の製造方法。
【請求項44】
1つのまたは同時に複数の有害な環境要因に対する木材の保護のための木材製品の処理方法であって、前記複数の要因が、火災に加えて、カビ、腐敗、青変病、木材を攻撃す
る昆虫、寸法変化または環境の影響によるそれらの組み合わせであり、前記木材製品を請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含む、木材製品の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材材料の防火に関する。特に、本発明は、木材材料の処理方法ならびに防火用組成物およびそのような組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は、その外観と低密度でのその高強度のために建設材料として評価されている、最も豊富な非毒性、リサイクル可能および生分解性の天然素材である。最近の建築動向には、クロスラミネート木材(CLT)、単板積層材(LVL)、グルード ラミネーテッド ティンバー(Glulam)、合板または屋外パネル材料として使用される無垢材などの名前で呼ばれる人工木材で構成された構造コンポーネントを備えたますます高くなる建物の設計と建設が含まれる。
【0003】
現在、オーストラリアのメルボルンにある10階建てマンションの建設が進められており、ノルウェー、オーストリア、バンクーバーおよびフィンランドでは最大30階建ての高層建築が設計中である。これらの建物は、再生可能な建築材料として木材を使用することから生じる持続可能性の利点から表彰されている。
【0004】
他方、建築物に木材を使用する際の重要な欠点は、火災に対する適切な耐性の欠如である。したがって、EUならびに米国、日本およびオーストラリアなどの国々を含む世界中の建築基準では、適切な難燃剤で処理された木材のみを壁、床および屋根のアセンブリに使用することが要求されている。木材を適切に保護することによって、煙と炎の広がりを抑えることができ、建物からの避難に必要な時間が確保され、人が安全に移動するのを助ける時間が延びる。
【0005】
例えば、米国特許第9132569B2号およびそこで引用されている特許文献に記載されている種類の、多くの難燃性組成物は、木材への難燃剤の加圧含浸に基づいている。あるいは、記載されている化学組成物は、無機リン酸塩、例えば、APP、MAPおよびDAPなどのリン酸のアンモニウム塩、またはホウ酸塩もしくはホウ酸などのホウ素含有薬剤を含むが、それらは環境的に許容されない、または低い保持レベルでB-s1、d0火災クラスを満たすのに十分に強力ではない。さらに、APP、MAPおよびDAPタイプの難燃剤で処理された木材製品は、その処理された製品が水分を吸収すると、物理的および化学的に劣化する傾向がある。
【0006】
いくつかの非常に最新の特許と1つの文献レビューでは、無機ホスフェートまたはホウ素化合物の代わりに、有望な難燃剤としてHEDP酸のアンモニウム塩などの有機ホスフェートの使用が記載されている。
【0007】
HEDPは、ビスホスホネート化合物、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸の略称であり、エチドロン酸という名前でも知られている。HEDPは、抗酸化特性を有するキレート剤である。
【0008】
例えば、Birgit Ostmanらは、「Innovative eco-efficient high fire performance wood products for demanding applications」という題名の報告(Vinnova-TekesプロジェクトInnoFireWoodの最終報告。SP Wood Technology SP REPORT 2006:30)で、HEDP酸のアンモニウム塩を木製品目の難燃剤として使用することを提案している。
【0009】
この報告は、マツ辺材および熱変性トウヒに対する難燃剤としてのHEDPを含む有機ホスホネートの使用について説明している。その火災試験での液体濃度は、アンモニアで中和する前に20、40および60重量%であると述べられている。試験液のpH値は、記載されていない。マツ辺材の場合、難燃剤の平均保持率(100重量%濃度として)は、それぞれ、89kg/m3(20重量%)、181kg/m3(40重量%)および290kg/m3(60重量%)であった。処理技術は、30分間の‐92kPa(標準圧力より92kPa低い)での真空と、それに続く120分間の1.0MPaの絶対圧力での加圧含浸であった。その含浸の前後および23℃、相対湿度50%でのコンディショニング後に、すべての木材試料の重量を測定した。50kw/m2の熱流束を使用して行ったコーンカロリー計テストでは、加圧含浸したマツ辺材サンプルについて、火災クラスBおよび場合によってはクラスCを示した。熱変性トウヒを40重量%アンモニア処理HEDPを使用して加圧含浸したところ、その保持力は、110kg/m2であった。50kw/m2の熱流束を使用して行ったコーンカロリー計テストでは、使用された火災クラス予測モデルに応じて、火災クラスBまたはCを示した。
【0010】
米国特許第8361210B2号(AhlnasおよびKukkonen)は、木材を液体または水溶性有機アンモニウムカルボキシレートと無脊椎動物を忌避する活性成分との混合物と接触させる木材の処理方法を開示している。この公知の技術の目的は、木材を処理するための方法および組成物を提供することであり、その組成物は、十分に吸収され、良好な保持力を有する。最も有利な実施形態では、有機アンモニウムカルボキシレートは、ギ酸とモノエタノールアミンの塩または錯体、およびプロピオン酸とモノエタノールアミンの塩または錯体を含む群から選択される。
【0011】
米国特許第8361210B2号によれば、上述のアンモニウムカルボキシレートと組み合わせて使用される木材防腐活性成分は、キレート剤を含むことができ、そのキレート剤は、アミノポリカルボン酸もしくはその塩、ヒドロキシ酸もしくはその塩、もしくはホスホネート(すなわち有機ホスホネート、すなわちオルガノホスフェート)またはそれらの混合物を含む群から選択される。好ましくは、この特許に係るキレート剤は、鉄およびマンガンイオンを結合することができ、その分子構造中にリン(P)を含むキレート剤である。そのような分子は、HEDPである。
【0012】
米国特許第8361210B2号の例によれば、その組成物は、トウヒまたはカバノキで作られた合板ボードの表面に塗布された。その組成物は、一度塗布すると、約250g/m2で木材によく吸収された。その処理された木材は、規格EN5660に基づく火災試験で防火特性を示した。
【0013】
米国特許第9125404B2号(VuoriおよびNissinen)は、その使用および貯蔵の特性を改善するために木材を処理する方法を開示している。この方法において、処理される木材は、モノエステル、ジエステルもしくはトリエステル、または平衡溶液としての水溶性C1~C10アルコールおよびギ酸によって形成されるそれらの混合物を含む処理組成物と接触される。この組成物は、木材の処理のためにギ酸のギ酸エステルを、好ましくはギ酸グリセリルとして含有し、それは、HEDPまたはHEDPの塩を含有することがある。木材を火から保護するために米国特許第9125404B2号に記載されている組成物は、グリセロールと水の総量に対して、ギ酸グリセリル1~50重量%、遊離ギ酸1~10重量%、HEDPまたはその塩1~50重量%を含む。この溶液を含浸させることにより、耐火性クラスが可能な限り最高で、腐朽剤およびシロアリに対して非常に耐久性のある木材製品が得られる。
【0014】
フィンランド共和国特許第121917B(Mertaniemiら)は、木材の劣化に対する活性剤として少なくとも1つのC1~C7モノカルボン酸塩またはC1~C7モノカルボン酸またはそれらの混合物を含有する木質材料を処理するための組成物を開示している。組成物は、C1~C7モノカルボン酸塩またはC1~C7モノカルボン酸またはそれらの混合物と同じ水性液体担体中に、高不飽和脂肪酸含量のアルキドエマルションおよび/またはポリギ酸アルミニウムの形態のアルミニウムイオン含有化合物も含む。組成物は、補助的な木材防腐助剤として遷移金属を結合可能な錯化剤をさらに含むことがある。補助的な木材防腐助剤として使用される錯化剤は、特にアミノポリカルボン酸もしくはその塩、ヒドロキシ酸もしくはその塩、またはホスホネート(すなわち有機ホスホネート、すなわちオルガノホスフェート、すなわちHEDP)もしくはそれらの混合物である。その発明者らによれば、組成物のpHは主に中性またはわずかにアルカリ性であり、これは、強酸性の木材保存または難燃性組成物は、時間の経過とともに木材の構造を容易に損傷するからである。好ましくは、pHは、溶液から直接測定して、6~11、理想的には7~10の範囲にある。
【0015】
フィンランド共和国特許第122723B号(Kukkonen、NissinenおよびAksela)は、少なくとも1つのC1~C7モノカルボン酸もしくは塩、またはそれらの混合物、および少なくとも1つのキレート剤を含む組成物で処理された木材材料を記載している。この特許によれば、木材を火災から保護するための組成物は、HEDPなどのキレート剤を5~20重量%の含有量で含むべきである。圧力を使用して溶液を木材に含浸させ、防火剤の全浸透量、176.2kg/m3に相当する木材の22.7%の総濃度有効剤をもたらした。含浸された試験サンプルの耐火性は、ISO 5660火災試験に従って評価され、それに基づいて火災クラスBが達成された。
【0016】
既知の技術に関連する多くの問題がある。
【0017】
安全性データシートおよび市販のアンモニア処理HEDP製品(製品名Cublen K 3543で販売されているHEDP酸のアンモニウム塩)の製品仕様によれば、その製品の最小pH値は、6.0で、最大値は、7.0および乾燥残留物含有量(すなわち、HEDP酸のアンモニウム塩の量)は、34~38重量%であり、これはHEDP酸自体の量が28~32重量%であることを意味する。HEDP酸を6~7のpH値に中和するために必要なアンモニアの量は、約6重量%である。上記の種類のアンモニア処理HEDP溶液の場合、未満のpH値は、保存温度に応じて数週間の保存後、結晶が溶液に沈殿する。特に約6℃未満の温度では、数日以内でも沈殿物の形成が起こり得る。
【0018】
特に7.0より高いpH値では、空気中へのアンモニアの蒸発が著しく増加するため、アンモニアの強い臭いがある。6.0よりわずかに高いpH値でも、アンモニアの明確な臭いがする。いわゆるM1分類の屋内条件で許容される空気中のアンモニアの最大量は非常に少ないため、pH値が6.0より高いHEDP溶液のアンモニウム塩は、基準を満たさない。M1分類は、難燃処理木材などの建設および建築製品を販売するほとんどの顧客によって要求される。これはすべて、ZschimmerおよびSchwarz Cublen K 3543製品情報によるHEDP酸のアンモニウム塩からなる単純な化学物質、またはSP Wood Technology SP REPORT 2006:30もしくはフィンランド共和国特許第122723号およびフィンランド共和国特許第121917号などの引用特許に提示されている化学組成物を意味し、商用利用には不向きである。6.0未満のpHでは、HEDPのアンモニウム塩は不安定であり、保管中にそれは結晶を形成して沈殿し、約6.0よりも高いpHでは、それはアンモニアの蒸発のため、M1基準を満たさない。
【0019】
リン酸アンモニウム(APP)、MAP、DAP、ホウ酸塩またはホウ酸などの従来の無機難燃剤を使用した加圧含浸の主な問題は、加圧含浸装置への投資による高いコスト、火災クラスBのために要求される大量の難燃剤、および煙の生成である。
【0020】
木材メーカーから加圧含浸が外部委託されている場合、難燃処理のために物流は、コストと遅延を引き起こし、したがって、難燃処理された木製品目の価格を引き上げる。さらに、大量の難燃剤は、有毒な煙の発生を増大させ[Wangら。(2014)。「Fire performance of plywood」 BioResources 9(3),4934-4945]、これは望ましくなく、屋内用途に必要なB-s1、d0などの耐火クラス要件を満たさない。
【0021】
加圧含浸は、木材、特にCLT、LVLおよび合板などのいわゆる接着木材製品と呼ばれる人工木材製品の機械的および物理的特性も弱める。
【0022】
無機MAP、DAP、ホウ酸塩およびホウ酸の難燃剤は、加圧含浸プロセスで使用される場合にのみBクラスを満たし、これは、これらの難燃剤は、ブラッシングまたはスプレーなどの表面処理プロセスに十分な効果がないためである。表面処理プロセスでは、加圧含浸プロセスと比較して、より少ない化学物質を木製品目に適用できる。
【0023】
さらに、ホウ砂およびホウ酸含有難燃剤は、EUの化学物質の禁止リストに含まれているため、ほとんどの顧客は、それらをさらに使用することを望んでいない。
【0024】
最も費用対効果の高い難燃剤処理は、スプレー装置またはローラーなどの通常の表面処理装置を使用して難燃剤溶液を木製品目に広げ、個別の乾燥処理なしでストックで乾燥させることである。MAP、DAPならびにホウ酸およびホウ酸系難燃剤は、容易に処理された木製品目上に沈殿物を形成する。固体沈殿物が合板などの木製品目の上に形成する場合、処理された合板パネルは、乾燥後に互いに分離することができない。沈殿物は、パネル間の接着剤として機能する。パネルを個別に乾燥させると、処理のコストが著しく増加する。
【発明の概要】
【0025】
本発明の目的は、その技術に関連する問題の少なくとも一部を除去することである。
【0026】
特に、本発明は、難燃剤またはその成分として有用なビスホスホネートを含む新規で改善された難燃性組成物を提供することを目的とする。
【0027】
本発明において、驚くべきことに、アルカリ剤およびアルカノールアミン、特に主に遊離形態で溶液に添加されるアルカノールアミンと組み合わせてHEDPを含む水性組成物を製造することにより、それで処理された木材製品では良好な難燃性特性を達成することができる新規な種類の難燃性組成物が得られることが見出された。対照的に、上記引用技術のアンモニアの有機酸塩は、発煙率を増加させ、pH値が6に近い場合でもアンモニア放出(アンモニア臭)を増大させ、さらにpHが6より低くなると化学的安定性を失うことがわかった。
【0028】
本組成物は、成分を一緒に混合し、任意に反応させることにより製造することができる。
【0029】
組成物は、木材および木質系製品を処理する方法ならびにしたがって、新規な木材および木質系製品の製造方法に使用することができ、これは、HEDP、アルカノールアミンおよび任意にさらなるアルカリ剤を含み、良好な耐火性を示す。
【0030】
より具体的には、本発明は、独立請求項の特徴部分に記載されていることを特徴とする。
【0031】
本発明によってかなりの利点が得られる。本発明によれば、最も費用効率が高く、安全で、環境に優しい方法で、難燃剤処理された木製品目を製造することが可能である。その処理された木材は、煙の発生またはアンモニアの放出のない優れた耐火性を備えており、本発明による難燃処理木製品目は、例えば、EU領域における最も厳しいB-s1、d0火災クラスを満たす。
【0032】
この組成物は、良好な安定性と延長された貯蔵寿命を達成できるpH値でアンモニア臭が実質的にない。この利点は、製造中および保管中の両方で達成される。したがって、その組成物は、典型的には、M1分類および建築材料の化学的および官能的試験のプロトコル、バージョン22.1.2015に記載されている0.03mg/m2時未満のアンモニア放出速度を示す。
【0033】
本発明の組成物は、中性pH範囲またはわずかに酸性の範囲のpH値でも安定であり、特に製品は、7.0未満のpH、例えば、4.0~6.2のpH、最も好ましくは5.0~6.2または5.2~6.0のpHで安定である。組成物は、6か月を超える長い貯蔵寿命を有する。したがって、少なくとも6か月より長い間、組成物は、示された目的に使用可能なままである。典型的には、組成物は、6か月を超える期間、7.0未満のpH範囲内、例えば、pH4.0~6.2、最も好ましくはpH5.0~6.2または5.2~6.0のpHを有するだろう。
【0034】
さらに、驚くべきことに、この新規組成物は、木材浸透性に優れていることがわかった。それらは、処理された木製品目によく吸収され、優れた保持力を発揮する。
【0035】
さらに、本発明の組成物が合板の処理に使用される場合、合板の強度特性の損失がない、または実質的に損失がないことがわかった。
【0036】
本発明の組成物は、安定性を損なうことなく、優れた貯蔵寿命を有しながら、高濃度の活性物質に調製することができ、これにより、低い適用量でも耐火性の向上を達成できるという利点が得られ、これによって、適用に従来の接着または適用技術を使用することが可能である。希釈溶液を使用する場合、加圧含浸の技術も可能であるが、加圧含浸に頼る必要はない。
【0037】
適用後に個別の乾燥ステップは、必要ない。
【0038】
さらなる特徴および利点は、実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明の詳細な説明】
【0039】
上記で簡単に説明したように、本組成物は、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸から選択されるビスホスホン酸と、アルカノールアミンと、任意にアルカリ剤との混合物または反応生成物の水溶液を含み、前記組成物は、3.0~9.0の範囲、好ましくは4.0~7.0の範囲のpHを有する。
【0040】
一実施形態では、HEDPは、アルカノールアミンおよび/またはアルカリ剤と塩(酸塩)を形成する。その酸塩は、酸(すなわちHEDP)と塩基(すなわちアルカノールアミンおよび/またはアルカリ剤)から、関連する酸(すなわちHEDP)からの水素イオンの部分的な置換のみによって形成され、ある程度の酸性を残した塩である。
【0041】
したがって、一実施形態において、HEDP、アルカリ剤および主に遊離形態で溶液に添加されてpH4~7を与えるアルカノールアミンを含む難燃性組成物は、主にまたは少なくとも部分的にプロトン化された形態でHEDPを含むようである。しかし、これは単なる提案であり、本技術の範囲はその説明に限定されない。
【0042】
別の実施形態において、アルカリ剤は、HEDPの塩の形態で添加される。したがって、酸形態のHEDPおよび少なくとも1つのアルカリ剤から形成されるHEDPの塩は、水の存在下でアルカノールアミンと混合され、ビスホスホン酸と、アルカリ剤と、アルカノールアミンとの混合物または反応生成物を含み、3.0~9.0の範囲、好ましくは4.0~7.0の範囲のpHを有する水性組成物を提供する。
【0043】
一実施形態によれば、アルカリ剤とHEDPをはじめに一緒に反応させることにより、アルカリ剤は、遊離溶液として最終溶液にとどまることなく、より効率的に反応する。この中和反応により、溶液のpHが上昇し、その後アルカノールアミンを添加してpHを適切なレベルに調節し、アミン-HEDP錯体を形成することができる。HEDPの塩の形態でのアルカリ剤は、そのままプロセスに持ち込む、またはプロセスの一部として製造することができる。
【0044】
本技術によって達成される組成物は、それで処理された木材製品に対して良好な難燃性を達成することができる。対照的に、上記引用技術におけるアンモニウムカルボキシレートなどのアンモニアの有機酸塩は、煙の発生率を増加させ、6に近いpH値でもアンモニア放出(アンモニア臭)を増大させ、さらにpHが6未満に低下したときそれらは化学的安定性を失うことがわかった。
【0045】
好ましい実施形態によれば、組成物は、遊離形態の、またはアミンまたはアルカリ成分に結合したカルボン酸を含まない。
【0046】
別の実施形態によれば、組成物は、カルボン酸を本質的に含まない、すなわち、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下のカルボン酸を含む。
【0047】
本文脈において、用語「ビスホスホン酸」は、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸成分、すなわちHEDPを指すために使用され、「ビスホスホネート」は、そのアニオンを指すために使用される。明らかに、組成物のpHに応じて、HEDPは、塩として添加された場合でも、解離した形態(すなわち、プロトン化された形態)で部分的にまたは全体的に存在するだろう。
【0048】
塩は、無機または有機、好ましくは無機であり得る。特に、塩は、アンモニアから形成されるが、アルカリ金属およびアルカリ土類金属塩も可能である。
【0049】
本文脈において、用語「ビスホスホネート成分」は、ビスホスホン酸およびビスホスホネートアニオンまたは「種」の両方を包含する。
【0050】
同様に、本明細書で使用される略語「HEDP」および名称「1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸」は、ビスホスホン酸自体および対応するビスホスホネートアニオンの両方を包含する。
【0051】
組成物の「pH」は、溶液、特に水溶液から直接測定される。
【0052】
本技術で使用できる他のビスホスホネートおよびビスホスホン酸のそれぞれの例には、クロドロネート、チルドロネート、パミドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、アレンドロネート、イバンドロネート、リセドロネートもしくはゾレドロネート、またはアミノメチルホスホン酸(AMPA)、ビニルホスホン酸、ジメチルメチルホスホネート(DMMP)、アミノトリスメチレンホスホン酸(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、テトラメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(TDTMP)、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(HDTMP)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、N-ホスホノメチルイミノ二酢酸(PMIDA)、2-カルボキシエチルホスホン酸(CEPA)、2-ヒドロキシホスホノカルボン酸(HPAA)、アミノトリスメチレンホスホン酸(AMP)、N,N-ビスホスホノメチルグリシン(BPMG)などの有機ホスホネートが含まれる。
【0053】
本発明は、主に、HEDPをビスホスホン酸として利用する組成物および方法に関するが、HEDPは、後述するものなど別のビスホスホン酸またはビスホスホン酸の混合物によって、または組成物の他の成分と組み合わせてHEDPと同じように機能する他の酸によって、部分的にまたは全体的に置き換えることができることを理解されたい。
【0054】
したがって、一実施形態において、本技術は、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸、クロドロネート、チルドロネート、パミドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、アレンドロネート、イバンドロネート、リセドロネートもしくはゾレドロネート、またはアミノメチルホスホン酸(AMPA)、ビニルホスホン酸、ジメチルメチルホスホネート(DMMP)、アミノトリスメチレンホスホン酸(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、テトラメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(TDTMP)、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(HDTMP)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、N-ホスホノメチルイミノ二酢酸(PMIDA)、2-カルボキシエチルホスホン酸(CEPA)、2-ヒドロキシホスホノカルボン酸(HPAA)、アミノトリスメチレンホスホン酸(AMP)、N,N-ビスホスホノメチルグリシン(BPMG)およびこれらの組合せなどの有機ホスホネートから選択されるビホスホン酸と、アルカノールアミンと、任意にアルカリ剤との混合物または反応生成物の水溶液を含む木材製品の処理用難燃性組成物を提供し、前記組成物は、3.0~9.0、特に4.0~7.0の範囲のpHを有する。
【0055】
本文脈において、用語「アルカノールアミン」には、以下で議論される「アルキルアルカノールアミン」が含まれる。
【0056】
水溶液中の1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸は、主に酸の形態で存在し、好ましくは少なくとも50モル%のビスホスホネートが酸として存在する。
【0057】
一実施形態では、本組成物は、
組成物の溶解成分の量から計算して、0.1~50重量%、好ましくは1.0~40重量%、例えば、20~40重量%の、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸、または1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸と、他のビスホスホン酸もしくはビスホスホネートおよび/または他の有機ホスホネートおよび/または他のビスホスホン酸またはビスホスホネートとの混合物、
組成物の溶解成分の量から計算して、1~30重量%のアルカノールアミンまたはアルカノールアミンの混合物、および
組成物の溶解成分の量から計算して、1~30重量%のアルカリ剤を含む。
【0058】
あるいは、アルカリ剤がアンモニアである場合、上記のように、ビスホスホン酸をその塩の形態で(「ビスホスホネート」として)添加することにより、それは、少なくとも部分的に導入することができる。したがって、一実施形態では、本組成物は、
組成物の溶解成分の量から計算して、アンモニアなどのアルカリ剤の塩の形態で、0.1~70重量%、好ましくは1.0~60重量%、例えば、20~50重量%の、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸、または1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸と、他のビスホスホン酸もしくはビスホスホネートおよび/または他の有機ホスホネートとの混合物;および
組成物の溶解成分の量から計算して、1~30重量%のアルカノールアミンまたはアルカノールアミンの混合物を含む。
【0059】
ビスホスホン酸の塩の形態でアルカリ剤としてアンモニアを添加すると、遊離アンモニアの量が減少し、したがって最終溶液のアンモニア臭が減少し、溶液の着色が防止される。
【0060】
好ましい一実施形態では、アルカノールアミンは、式
NR1R2R3 I
を有するアミンから選択され、
式中、
R1、R2およびR3は、水素ならびに1~6個の炭素原子を有し、ヒドロキシル基、モノ-、ジ-およびトリ-C1~6-アルカノールアミンなどのモノ-、ジ-およびトリ-アルカノールアミンから選択される少なくとも1つの置換基で任意に置換されているアルキルから独立して選択される。
【0061】
例えば、アルカノールアミンは、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノ-sec-ブタノールアミン、ジエタノールアミン、ジ-イソプロパノールアミン、ジ-sec-ブタノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリ-イソプロパノールアミンおよびそれらの混合物の群から選択することができる。
【0062】
別の実施形態では、アルカノールアミンは、C1~6-アルキル-C1~6-アルカノールアミンなどのアルキルアルカノールアミンの群から、特にメチルエタノールアミン、ブチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミンおよびエチルジエタノールアミンおよびその混合物の群から、選択される。
【0063】
アルカノールアミンは、アルカノールアミンとアルキルアルカノールアミンとの混合物も含むことができる。
【0064】
典型的な塩基性アルカノールアミンは、ビスホスホネート成分およびアルカノールアミンに加えて、組成物のpHを調節するが、組成物は、典型的には別個のまたは第2のアルカリ剤も含む。
【0065】
一実施形態において、アルカリ剤は、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物および炭酸塩、アンモニア、水酸化アンモニウムならびにそれらの混合物などの無機水酸化物および炭酸塩の群から選択され、アルカリ剤は、好ましくはアンモニアの水溶液である。
【0066】
一実施形態では、アルカリ剤は、1~25重量%、例えば10~25重量%の水に溶解したアンモニアを含むアンモニアの水溶液から選択される。特に、アンモニアに関して飽和している水溶液が使用される。一実施形態では、少なくとも約8.5、例えば9~13のpHを有するアンモニアの水溶液が使用される。
【0067】
無機水酸化物または炭酸塩が使用される場合、カルシウムイオンがビスホスホネートと不溶性の錯体を形成することがあるため、カルシウムを含まない成分を使用することが好ましい。アルカリ剤は、通常、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸とアルカノールアミンとの水溶液のpHを3.0~9.0の範囲、例えば4.5~8.0、特に4.0~7.0、最も好ましくは5.0~6.0の範囲の値に調節するのに十分な量で存在する。
【0068】
一実施形態では、アルカリ剤は、溶液の0.1~40重量%、特に溶液の1~30重量%の量で存在する。
【0069】
一実施形態では、組成物は、4.0~7.0、最も好ましくは5.0~6.5の範囲、例えば5.2~6.0の範囲のpHを有する。
【0070】
上記特に好ましい一実施形態に基づいて、アルカリ剤は、アンモニア水を含み、ビスホスホネート成分は、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸を含み、アルカノールアミンは、モノエタノールアミンもしくはトリエタノールアミンまたはそれらの混合物を含む。
【0071】
上記のように、一実施形態では、20~90重量%、例えば30~80重量%のビスホスホネート成分をアンモニウム塩の形態で添加し、アルカノールアミンおよび任意に水と混合して、上記の範囲4.0~7.0、特に約5.0~6.5、例えば5.2~6.2のpHを有する水溶液を提供する。
【0072】
一実施形態では、上記実施形態のいずれか1つによる組成物は、良好な安定性を有し、典型的には、貯蔵寿命は、少なくとも6か月まで、好ましくはそれ以上延長される。
【0073】
組成物は、さまざまな適用方法のために処方することができる。
一実施形態では、水性組成物の含水量は、35重量%以上、典型的には95重量%以下の値に調節される。これにより、単純なスプレーまたはローリングなどの他の表面処理技術によって簡単に適用できる組成物が得られる。別の実施形態では、水性組成物の含水量は、40重量%未満、特に35重量%以下、例えば10~35重量%の値に調節される。
【0074】
本発明の組成物に添加され得る保持剤および/または疎水化剤など、組成物に組み込まれるさらなる成分が存在し得る。適切な保持剤は、脂肪酸、デンプン、セルロースまたはその誘導体などのポリマー、キトサンおよびケイ素化合物であり得る。疎水化剤には、樹脂およびその誘導体、アルキルケテンダイマー(AKD)またはアルケニルコハク酸(ASA)などの表面サイズ、トール油およびその誘導体が含まれる。AKD、ASAおよび/またはトール油およびそれらの誘導体は、好ましくは疎水化剤として使用され、その好ましい量は、0.01~5.0重量%である。
【0075】
別の実施形態では、組成物は、液体の表面張力を低下させ、より容易に広がり、そして2つの液体間の界面張力を低下させる、界面活性剤を含む。界面活性剤は、その頭部に外見的に帯電した基が存在することで分類できる。非イオン性界面活性剤は、その頭部に電荷基を有しない。イオン性界面活性剤の頭部は、正味の電荷を帯びている。電荷が負の場合、界面活性剤は、より具体的にはアニオン性と呼ばれ;電荷が正の場合、カチオン性と呼ばれる。界面活性剤が2つの反対に帯電した基を持つ頭部を含む場合、双性イオンと呼ばれる。
【0076】
一実施形態において、組成物は、さらなる難燃剤、例えば、リン酸アンモニウム、ホウ酸塩およびホウ酸ならびにそれらの混合物またはリン酸第二鉄の群から選択されるものを含む。
【0077】
例えば、前述のものと組み合わせることができる別の実施形態では、組成物は、錯化剤を含み、特にさらなる錯化剤は、エチレンジアミンコハク酸、イミノジコハク酸、N-ビス-[2-(1,2-ジカルボキシエトキシ)-エチル]-アスパラギン酸、エチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸およびそれらの混合物の群から選択される。
【0078】
さらに別の実施形態では、組成物は、前述の3つの成分、すなわち、アルカリ剤、1-ヒドロキシエタン 1,1-ジホスホン酸およびアルカノールアミンのみからなり、これらはすべて、水に溶解または少なくとも分散している。
【0079】
実施形態の1つの重要な利点は、それらにアンモニア性の煙および臭いがないまたは実質的にないことである。一実施形態において、組成物は、建築材料の化学的および官能的試験のためのM1分類およびプロトコル バージョン22.1.2015に記載される0.03mg/m2時未満のアンモニア放出速度を示す。
【0080】
本組成物は、HEDPをアルカノールアミンまたはアルカノールアミンの混合物と、任意に水中のアンモニアなどのアルカリ剤と混合することにより製造することができる。
【0081】
一実施形態では、難燃性組成物を製造する方法は、
10~60重量部、例えば、30~50重量部のHEDPと;
1~10重量部のアルカノールアミンまたはその混合物(前記アルカノールアミンは、遊離形態で添加される)と;
任意に、0.1~40重量部のアルカリ剤、好ましくはアンモニアまたはアルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩の水溶液などの水性アルカリ剤と;
任意に水と、を一緒に混合して、3~9の範囲のpH、例えば、4~7のpHを有する組成物を提供することを含む。
【0082】
別の実施形態では、ビスホスホン酸と、アルカノールアミンと、任意にアルカリ剤との混合物または反応生成物の水溶液を含む、木材製品の処理用難燃性組成物の製造方法は、
10~60重量部、例えば、30~50重量部のビスホスホン酸と;
1~10重量部のアルカノールアミンまたはその混合物(前記アルカノールアミンは、遊離形態で添加される)と;
任意に、0.1~40重量部のアルカリ剤と;
水と、を一緒に混合して、3.0~9.0の範囲のpHを有する組成物を提供することを含む。
【0083】
成分の混合は、10~100℃、好ましくは100℃未満、特に約10~60℃の温度で行われる。
【0084】
典型的には、組成物は、全組成物の60重量%以下の含水量を有する。添加される成分は、典型的には水を含むが、追加の水が添加されて、全組成物から計算して、例えば50重量%以上の所定の固形物含有量を得る。
【0085】
この方法の実施形態では、アルカノールアミンの塩基当量とアルカリ剤の合計量は、HEDPまたは他のビスホスホン酸の酸当量の少なくとも50%になる。言い換えれば、アミンおよび任意のアルカリ剤は、溶液のpHをHEDPまたは他のビスホスホン酸の第1および第2酸基のpKa値よりも高い値に調節するのに十分な量で添加される。
【0086】
一実施形態では、特に興味深い組成物は、水溶液の形態で提供される35~40重量部のHEDPと、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノ-sec-ブタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジ-sec-ブタノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリイソプロパノールアミンおよびそれらの混合物から選択される4~8重量部のアルカノールアミンと、水に溶解した2~10重量部のアンモニアとを一緒に混合することにより得られる。さらに、任意に水溶液の形態で提供される、0.1~5重量部のイオン性界面活性剤が任意に混合される。必要に応じて水が追加される。
【0087】
実施形態は、木材製品を上記の実施形態のいずれかによる組成物と接触させることを含む、木材製品に難燃性を付与するための木材製品を処理する方法も含む。
【0088】
表面処理ステップによって、木材製品上に10~500g/m2、例えば100~300g/m2の量の難燃性組成物が適用される。加圧含浸プロセスでは、10~200kg/m3、例えば25~100kg/m3の量の難燃性組成物が適用される。
【0089】
適用は、それ自体既知の方法により実施することができる。一実施形態において、組成物は、スプレーまたはローリングにより木材製品に適用される。前述のものと組み合わせることができる別の実施形態では、組成物は、加圧含浸によって適用される。さらに別の実施形態では、木材製品を水性組成物に浸漬することによって木材製品を組成物と接触させる。
【0090】
本発明は、木材材料を容易で費用効率の高い方法で処理することを可能にし、この処理は、木材処理の他の現在のステップに容易に含めることができる。このプロセスは、連続するステップを含む木材または木製の物体の処理ラインの1つのステップである場合がある。本発明の組成物は、例えばアンモニアガスのような強い刺激臭を発しないため、扱いやすい。以下では、木材の処理に処理組成物を使用する方法、および木材処理用のミルの木材材料処理ラインに処理を統合する方法の実用的な例を示す。
【0091】
1)加圧含浸
【0092】
木材に大量の含浸物質を入れ、それによって異なるステップ(負圧と過圧、高温)によって最も効果的な処理を提供する従来の方法。この方法により、組成物の最良の浸透性が得られ、木材は、そのコアまで、通常、含浸させることができる。本発明による組成物は、非常に良好な浸透性を有し、従来のCCA含浸に使用される負圧/過圧を減らすことが可能であり、それによってプロセスの費用対効果を向上することが可能である。また、トウヒなどのよりきめの細かいタイプの木材に、本発明による組成物を加圧含浸することができ、これは従来使用されている物質では不可能であった。
【0093】
2)浸漬含浸
【0094】
本発明による組成物の浸透性は良好であり、場合によっては、単なる浸漬含浸も可能である。この方法は簡単だが、それは個別の浸漬槽を必要とし、加圧含浸のようなバッチプロセスで実行される。
【0095】
3)スプレーまたはローリング
【0096】
本発明による組成物は、木材の表面上、例えば、製材された木材の平削りに関連して、噴霧するまたは広げることができる。
【0097】
4)塗装またはその他の表面処理ライン
【0098】
本発明による組成物は、塗装または別の表面処理ラインに関連して木材に添加することもできる。木板は、塗料投与タンクから別の塗装ユニットを通して、過圧または負圧下で溶液を含浸させることができる。ラインの圧力と速度に応じて、この方法により、良好な浸透性およびそれにより良好な耐火性を達成することができる。
【0099】
木材の処理の前に、処理組成物を水で希釈して、処理に適した濃度にすることができる。
【0100】
特定の適用方法に関して、前述のように、水の濃度は変わり得る。したがって、加圧含浸の場合、典型的には、95質量%以下の水を含む組成物を使用でき;好ましくは、水の濃度は、約60~90質量%である。同様に、スプレーまたはローリングの場合、55~90質量%など、質量で大部分の水を含む組成物が典型的に使用される。浸漬の場合、水分含有量は、典型的には80質量%未満、例えば10~70質量%または20~60質量%である。
【0101】
組成物は、例えば含浸、浸漬、スプレー、気化(噴霧)によって、またはブラシを用いた適用によって、処理される木材の厚さ全体にわたってまたは処理される木材の表面から特定の深さまで、処理される木材に吸収され得る。さまざまな代替手段が存在するため、処理は、木材の他の処理中に、適切なポイントで、例えば、木材の最終乾燥中に実行することができる。粘度などの組成物の物理的特性は、処理のタイプと目的に応じて調節することができる。
【0102】
一実施形態では、溶液の温度および/または難燃剤溶液の濃度を増加させることにより、保持および防火が向上することに留意されたい。
【0103】
細胞壁浸透物質による木材の含浸は、木材の細胞レベルでの拡散に依存する。拡散速度は、拡散係数、温度および化学物質の濃度に依存する。木材が膨潤状態にあるとき、木材の細胞壁の内部への最大のアクセス性が達成され、これは、その材料の水飽和によって最も容易に達成される。
【0104】
細胞壁に永久的な毛細血管はない。乾燥中に水が取り除かれると、細胞壁のミクロフィブリルが互いに近づく(収縮)。再湿潤後、ミクロフィブリルは再び離れる(膨潤する)が、必ずしも以前と同じ位置に移動するとは限らず、ミクロフィブリル間のすべての空間が水で占められている。
【0105】
第1の実施形態では、乾燥木材または木材材料を、上記実施形態のいずれかによる組成物と接触させる。化学物質が木材の大部分に含浸する必要がある場合、乾燥木材または木材材料が適切な材料であることがわかった。
【0106】
しかし、化学物質が木材の細胞壁内に拡散する必要がある場合、細胞壁が水を含むことが重要である。したがって、第2の実施形態では、湿潤木材を、上記実施形態のいずれかによる組成物と接触させる。用語「湿潤木材」は、水分含有量が2重量%を超える、特に20重量%を超える木材を意味する。一実施形態では、生木材を、上記実施形態のいずれかによる組成物と接触させる。
【0107】
適用前に、組成物は、複合構造体を形成するための、2つ以上の木材プライの結合に使用される接着剤と混合することができる。
【0108】
典型的には、この組成物は、木材製品の特性を改質するために使用される。
【0109】
本文脈において、用語「木材製品」は、例えば、機械的に製造された塊状構造、層、チップまたは削りくずの形態の木材材料を含む任意の構造または物品であって、それ自体として使用されるまたは特に共に接着された層(ベニア)、チップまたは削りくずを含む二次構造に成型されている構造または物品を指す。
【0110】
一実施形態では、本組成物と接触する木材製品は、木材(ランバー)および人工木材製品ならびに多層木材製品およびパネルの群から選択することができる。例には、クロスラミネート木材、ラミネート単板材、木質プラスチック複合材および合板ならびにパーティクルボード、中密度および高密度ファイバーボードを含むファイバーボードおよび配向ストランドボードなどの他の木質系ボードおよびパネルが含まれる。
【0111】
さらに、本発明の組成物および方法は、少なくとも部分的に木材材料、例えば、任意に再生木材繊維から得られる、フィブリル化繊維の形態で構成される、音響板の処理に使用できる。
【0112】
本発明の組成物および方法は、セルロース誘導体などのセルロース系物質を含む材料の改質にも使用できる。したがって、本組成物をカルボキシメチルセルロースと混合して、壁紙などの紙製品、段ボールなどの厚紙製品ならびにパネルおよびボードなどの多層木材製品用の接着剤として使用できる組成物を提供することができる。変性セルロース誘導体は、通常、粘度調整剤および増粘剤として使用できる。
【0113】
本発明による木材処理剤は、1つのまたは同時に複数の有害な環境要因に対して木材を保護するために使用することができる。火災の他の上記の要因には、主に、カビ、腐敗、青変病、木材を攻撃するシロアリなどの昆虫、寸法変化または環境の影響によるそれらの組み合わせが含まれる。
【0114】
組成物は、必要な優先順位付けされたそれぞれの保護に応じて調整することができる。好ましくは、いくつかの異なる有害な環境影響に対して十分な活性を同時に有する組成物が提供される。
【実施例】
【0115】
以下の試験溶液および難燃剤処理は、本発明を説明するために実施したものであり、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0116】
溶液1(米国特許第8361210B2号 AhlnasおよびKukkonenによる参照溶液)は、以下の混合した成分を含む:
49.2重量% HEDP酸(60重量%溶液)、すなわち29.5重量%HEDP;
10重量% ギ酸2-ヒドロキシエチルアンモニウム、すなわちギ酸モノエタノールアンモニウム、すなわちカルボン酸アンモニウム;
20.6重量% アンモニア水(24.5重量%);
3.6重量% イオン性界面活性剤;および
16.6重量% 水。
【0117】
溶液から直接測定して、溶液のpHは、5.8だった。
【0118】
250g/m2の量の溶液1をトウヒ製の合板の表面に塗布した。
【0119】
溶液2(本発明の溶液)は、以下の混合した成分を含む:
60.8重量% HEDP酸(60重量%溶液)、すなわち36.5重量%HEDP;
5.8重量% モノエタノールアミン;
23.4重量% アンモニア水(24.5重量%);
3.5重量% イオン性界面活性剤;および
5.5重量% 水。
【0120】
溶液から直接測定して、溶液のpHは、6.2だった。
【0121】
250g/m2の量の溶液2をトウヒ製の合板の表面に塗布した。
【0122】
溶液3(本発明の溶液)は、以下の混合した成分を含む:
60.8重量% HEDP酸(60重量%溶液)、すなわち36.5重量%HEDP;
5.8重量% モノエタノールアミン;
24.2重量% アンモニア水(24.5重量%);
3.5重量% イオン性界面活性剤;および
4.7重量% 水。
【0123】
溶液から直接測定して、溶液のpHは、5.5だった。
【0124】
250g/m2の量の溶液3をトウヒ製の合板の表面に塗布した。
【0125】
溶液4(本発明の溶液)は、以下の混合した成分を含む:
60.8重量% HEDP酸(60重量%溶液)、すなわち36.5重量%HEDP;
5.8重量% モノエタノールアミン;
20.0重量% アンモニア水(24.5重量%);
3.4重量% イオン性界面活性剤;および
9.0重量% 水。
【0126】
溶液から直接測定して、溶液のpHは、5.2だった。
【0127】
257g/m2の量の溶液4をトウヒ製の合板の表面に塗布した。処理は、合板工場の既存の市販の表面処理装置を使用して行った。
【0128】
溶液5(参照溶液):
89.29重量% Cublen K 3543(HEDP酸のアンモニウム塩、pH=7.0);および
10.71重量% HEDP酸(60重量%溶液)。
【0129】
溶液から直接測定して、溶液のpHは、5.58だった。
【0130】
Cublen K 3543溶液は、フィンランドのOy Celego Abから購入した。
【0131】
溶液5のHEDP酸(100重量%として)の総量は、34.82重量%である。
【0132】
溶液6(本発明の溶液)は、以下の混合した成分を含む:
77.52重量% Cublen K 3543(HEDP酸のアンモニウム塩、pH=7.0);
18.60重量% HEDP酸(60重量%溶液);および
3.88重量% モノエタノールアミン。
【0133】
溶液から直接測定して、溶液のpHは、5.58だった。
【0134】
Cublen K 3543溶液は、フィンランドのOy Celego Abから購入した。
【0135】
溶液6のHEDP酸(100重量%として)の総量は、35.81重量%である。
【0136】
溶液7(米国特許第8361210B2号 AhlnasおよびKukkonenによる参照溶液):
80.65重量% Cublen K 3543(HEDP酸のアンモニウム塩、pH=7.0);
9.68重量% HEDP酸(60重量%溶液);および
9.68重量% ギ酸2-ヒドロキシエチルアンモニウム、すなわちギ酸モノエタノールアンモニウム、すなわちカルボン酸アンモニウム。
【0137】
溶液から直接測定して、溶液のpHは、5.71だった。
【0138】
Cublen K 3543溶液は、フィンランドのOy Celego Abから購入した。
【0139】
溶液7のHEDP酸(100重量%として)の総量は、31.45重量%である。
【0140】
実施例1 放出測定[研究レポート番号VTT-S-00351-17およびTyоterveyslaitosレポート338763]
【0141】
規格参照:
1. 建築材料の化学および官能試験のプロトコル。バージョン22.1.2015(www.rts.fi)
2. SFS-EN SIO 16000-9 建築製品および家具からの揮発性有機化合物の排出量の測定。放出試験チャンバー法。
3. ISO 16000-6 Texax-TA吸着剤のアクティブサンプリング、熱脱着およびMSまたはMS-FIDを使用したガスクロマトグラフィーによる、室内および試験室の空気中の揮発性有機化合物の測定。
4. EN 717-1 木質系パネル-ホルムアルデヒド放出の測定-パート1:チャンバー法によるホルムアルデヒド放出 2004年10月。
5.社内方式。 分光測定アセチルアセトン法を用いたホルムアルデヒドの測定。
6.社内方式。 室内空気中のアンモニウム濃度の測定(VTT)。
7.社内方式。 AR2303-TY-015、OSHA ID-188からの変更 室内空気中のアンモニウム濃度の測定(Tyоterveyslaitos)。
【0142】
難燃剤処理された合板の揮発性有機化合物(VOC、TVOC)、発がん物質、アンモニア、およびホルムアルデヒドの放出測定を、標準条件で4週間調整された試験片に対して行った[1]。温度は、23℃、相対湿度は、50%であった。
【0143】
VOCは、Texax TA吸収剤に吸着した[2]。VOCサンプルは、熱脱着後にガスクロマトグラフで分析した[3]。ガスクロマトグラフは、炎イオン化検出器(FID)と質量選択検出器(MSD)を備える。
【0144】
VOC(TVOC)の合計量は、モデルルームで5μg/m3を超える濃度で、ヘキサンとヘキサデカンの間のガスクロマトグラフィーカラムから溶出する同定化合物および未同定化合物の個々の濃度を合計して測定し、すべてトルエン相当として計算した。単一のVOVは、Wiley 275スペクトルライブラリーを使用して質量選択検出器の全イオンクロマトグラムから特定し、トルエン等価物としてFIDクロマトグラムから定量した。ホルムアルデヒドとアンモニアは希硫酸に吸収された。ホルムアルデヒドは、アセチルアセトン法による分光測光法で分析した[4~5]。アンモニアは、アンモニア固有電極を使用して電位差計で分析した[6~7]。
【0145】
【0146】
本発明によるすべての溶液は、参照溶液よりも低いアンモニア放出速度を示す。結果は驚くべきものである。本発明による試験溶液は、試験溶液1(参照溶液)と同じ(試験溶液4)またはさらに多量のアンモニア水(試験溶液1~3)を含む。したがって、アンモニアの放出は、参照溶液よりも本発明による溶液の方が高いと予想されるはずである。公開文献によると、アンモニアの量が多いほど、また溶液のpHが高いほど、アンモニアの排出量は多くなる。
【0147】
実施例2 EN-ISO 5660-1:2002による耐火性試験
【0148】
試験片は、試験前に室温23℃および相対湿度50%で一定質量に調整した。50kW/m2の入射熱でのコーンカロリー計試験での試験片の着火時間と最大発熱速度を表2に示す。
【0149】
【0150】
本発明による溶液3は、処理された合板の耐火性を著しく増大させた。
【0151】
実施例3 EN 13823:2010に基づく耐火性能に対する反応の測定とEN 13501-1:2007+A1:2009に基づく火災に対する反応の分類[分類報告番号VTT-S-03751-16]
【0152】
本発明の溶液で処理されたトウヒ合板を、火災試験し、35~40mmの空隙で火災分類した。合板の厚さは、15mmであり、難燃剤の保持力は、240g/m2であった。その製品は、B-s1、d0分類を達成した。公開文献は、難燃剤溶液、すなわち空隙を有してB-s1、d0分類を達成する液体で表面処理された木製材料について言及していないし、記載がない。典型的には、空隙は、火災分類をBからCに落とす。
【0153】
実施例4 長期保存安定性
本発明による溶液2、3および4は、通常の室内条件で1年以上保管され、沈殿物の形成は観察されなかった。とりわけ、溶液のpH値が6.0未満の試験溶液3および4の場合、沈殿物の形成が観察されることが予想されるため、結果は驚くべきものである。
【0154】
溶液5、6および7を2016年12月30日に作成し、+12℃の温度で50日間保管した。本発明による溶液6(pH=5,58)は、完全に透明かつ均質であったが、参照溶液5(pH=5.58)および7(pH=5.71)は、多くの結晶および沈殿物を含み、濁っていた。さらに、溶液5と7を50℃の温度に2時間温めた場合でも、溶液の結晶と沈殿物は、溶液に溶解しなかった。
【0155】
実施例5 留め具の耐腐食性に対する難燃剤の影響[研究レポート番号VTT-S-00090-17]
【0156】
規格EN 1995-1-1:2004のサービスクラス1、2および3の留め具の耐腐食性に対する難燃剤の影響を調査した。4つのトウヒの合板サンプルを、難燃剤(溶液4、保持257g/m2)で表面処理し、2つの参照合板サンプルを、追加の処理なしで何の処理も行わずに、試験に使用した。コーティングのない炭素鋼釘、亜鉛電気めっきを施した炭素鋼釘および溶融亜鉛めっきを施した炭素鋼釘を留め具として使用した。そのサンプルを、規格SFS-EN ISO 6270に基づく凝縮テストで試験した。試験期間は、次のとおりであった:5日間の結露(T=40℃、湿度=100%RH)、その後、2日間の設定(チャンバーのドアを閉じ、加熱オフ)。
2つの同様のこの種類のサイクルを実行した。1つは、環境クラス1をシミュレートし、もう1つは、クラス2をシミュレートした。
【0157】
未被覆の釘、亜鉛電気コーティングの釘および溶融亜鉛めっきの釘の結果によると、難燃剤で処理した合板では、処理なしの参照合板よりも腐食がわずかに少なかった。すべてのサービスクラスで、調査した対応する留め具は、耐火処理された合板に関連して安全に使用できる。
【0158】
試験溶液4はわずかに酸性pH値を有するため、留め具の腐食がわずかに増えることが予想されるため、結果は驚くべきものである。通常、低いpHでは、腐食はより深刻である。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本技術は一般に木製品の処理に適用できる。代表的な例には、上記のように、木材、クロスラミネート木材などの加工木材製品、ラミネート単板木材などの複合製品、木材プラスチック複合材および合板ボード、パーティクルボードなどの他の木材ベースのボードが含まれる。繊維板、配向ストランド板および音響板、およびセルロース系繊維またはセルロース絶縁材料などの材料。本技術、方法、および組成物は、例えば紙製品、厚紙製品、および一般的に粘度調整剤および増粘剤の接着剤として使用できるセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース物質の改質にも使用できる。一般に、防火に関する厳しい要件を満たす木材製品が提供され、通常、本製品は、B-s1.d0.38による火災クラス要件を満たしている。本技術は、木材を火から保護するだけでなく、あるいは、カビ、腐敗、青い汚れ、木材へのシロアリの攻撃などの昆虫、寸法変化、または環境の影響によるそれらの組み合わせからも保護するために使用できる。
【0160】
引用リスト
特許文献
米国特許第9132569B2号(Saari)
米国特許第8361210B2号(AhlnasおよびKukkonen)
米国特許第9125404B2号(VuoriおよびNissinen)
フィンランド共和国特許第121917B(Mertaniemiら)
フィンランド共和国特許第122723B(Kukkonen,NissinenおよびAksela)
非特許文献
Birgit Ostmanら,「Innovative eco-efficient high fire performance wood products for demanding applications」,Vinnova-TekesプロジェクトInnoFireWoodの最終報告。 SPウッドテクノロジーSP REPORT 2006:30,ストックホルム 2006.
ワングら(2014)。「Fire performance of plywood」、BioResources 9(3)、4934-4945.ISO 5660-1:2015(英)-火炎反応試験。ZschimmerおよびSchwarz Inc.、Cublen K60の製品データシート。
研究報告番号VTT-S-00090-17
建築材料の化学および官能試験のプロトコル。バージョン22.1.2015(www.rts.fi)
SFS-EN SIO 16000-9建築製品および家具からの揮発性有機化合物の排出量の測定
ISO 16000-6 Texax-TA吸着剤のアクティブサンプリング、熱脱着およびMSまたはMS-FIDを使用したガスクロマトグラフィーによる、室内および試験室の空気中の揮発性有機化合物の測定
EN 717-1 木質系パネル-ホルムアルデヒド放出の測定-パート1:チャンバー法によるホルムアルデヒド放出2004年10月
OSHA ID-188 室内空気(Tyоterveyslaitos)のアンモニウム濃度の測定