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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】環状プラスメニルエタノールアミン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/675 20060101AFI20221020BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61K31/675
A61P43/00 111
A61P19/08
A61P25/28
A61P25/16
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019554776
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 CA2018050291
(87)【国際公開番号】W WO2018191812
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】62/486,037
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】318016685
【氏名又は名称】メッド-ライフ ディスカバリーズ エルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】スミス タラ
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/071418(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105646587(CN,A)
【文献】The 140th Annual Meeting of the Pharmaceutical Society of Japan (Kyoto).,2020年03月,「27Q-am001S」欄
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象における少なくとも1つのプラスマロゲンレベルの上昇剤であって、
式A:
【化1】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含み、
前記上昇剤の投与後に、前記環状プラスメニルエタノールアミンが、少なくとも1つのプラスマロゲンに変換され、それによって前記対象における前記プラスマロゲンレベルを上昇させる、
前記上昇剤。
【請求項2】
、R又は両方が、置換されていてもよいC-C28炭化水素基である、請求項1に記載の上昇剤。
【請求項3】
、R又は両方が、それぞれ独立して、6個までの二重結合を含む、請求項1又は2に記載の上昇剤。
【請求項4】
、R又は両方が、脂肪アルコール又は脂肪酸の炭化水素鎖である、請求項1~3のいずれかに記載の上昇剤。
【請求項5】
対象が、プラスマロゲン欠乏症を患っている、請求項1~4のいずれかに記載の上昇剤。
【請求項6】
対象が、ペルオキシソーム生合成障害を患っている、請求項1~5のいずれかに記載の上昇剤。
【請求項7】
対象が、肢根型点状軟骨異形成症(RCDP)又はツェルウェーガースペクトラム障害に罹っている、請求項1~6のいずれかに記載の上昇剤。
【請求項8】
少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミンが、
【化2】
の1若しくは2以上、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む、請求項1~7のいずれかに記載の上昇剤。
【請求項9】
それを必要とする対象における少なくとも1つのプラスマロゲンレベルを上昇させるための医薬の製造における、式A:
【化3】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の使用であって、
前記環状プラスメニルエタノールアミンが、前記対象への投与に続いて、少なくとも1つのプラスマロゲンに変換され、それによって前記対象における前記プラスマロゲンレベルを上昇させるためのものである、
前記使用。
【請求項10】
、R又は両方が、置換されていてもよいC-C28炭化水素基である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
、R又は両方が、それぞれ独立して、6個までの二重結合を含む、請求項9又は10に記載の使用。
【請求項12】
、R又は両方が、脂肪アルコール又は脂肪酸の炭化水素鎖である、請求項9~11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
対象が、プラスマロゲン欠乏症を患っている、請求項9~12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
対象が、ペルオキシソーム生合成障害を患っている、請求項9~13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
対象が、肢根型点状軟骨異形成症(RCDP)又はツェルウェーガースペクトラム障害に罹っている、請求項9~14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミンが、
【化4】
の1若しくは2以上、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む、請求項9~15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
少なくとも1つの請求項1~8のいずれかに記載の環状プラスメニルエタノールアミンと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項18】
細胞又はそれを必要とする対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させるためのキットであって、
式A:
【化8】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、並びに
前記環状プラスメニルエタノールアミンを、前記細胞又は対象に投与するための使用説明書
を含む、前記キット。
【請求項19】
対象が、アルツハイマー病又はパーキンソン病に罹っている、請求項1~4のいずれかに記載の上昇剤。
【請求項20】
対象が、アルツハイマー病又はパーキンソン病に罹っている、請求項9~12のいずれかに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、プラスマロゲンに関する。より具体的には、本発明は、プラスマロゲン前駆体及び環状プラスメニルエタノールアミンに関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソームは、実質的に身体のすべての細胞に存在する細胞内膜結合型細胞小器官である。複数の重要な代謝反応が、ペルオキシソーム中で独占的に行われる。ペルオキシソーム中で行われる最も重要な反応の1つは、プラスマロゲンの生合成である。プラスマロゲンは、グリセロリン脂質のクラスであり、sn-1位でのビニルエーテル連結アルキル鎖、sn-2位でのエステル連結長鎖脂肪酸、及びリン酸ジエステル連結によってsn-3位に結合した頭部基によって特徴付けられる。これらの分子についての一般式は、式(I):
【0003】
【化1】
【0004】
によって表される。
【0005】
ヒトにおいて、sn-1位(R基が組み込まれる)は、最も一般的には、C16:0、C18:0又はC18:1脂肪アルコールに由来する。sn-2(R基が組み込まれる)位は、飽和、モノ飽和又はポリ不飽和の脂肪酸に由来し得る一方で、sn-3は、頭部基、最も一般的には、ホスホエタノールアミン又はホスホコリンである。
【0006】
プラスマロゲンは、ヒト身体全体にわたる組織中に存在し、細胞膜の総リン脂質含有量のおよそ15~20%に相当する。この割合は、最も高いレベルを有する脳、心臓、好中球及び好酸球を含む、組織の種類によって広く変化する。プラスマロゲンは、細胞膜の構造構成成分、二次メッセンジャー、膜融合、イオン輸送、コレステロール流出及び抗酸化剤を含む、いくつかの多様な生理学的機能において役割を果たす(Farooqui AA, Horrocks LA (2001) Plasmalogens: workhorse lipids of membranes in normal and injured neurons and glia. Neuroscientist 7: 232-245、Braverman NE, Moser AB (2012) Functions of plasmalogen lipids in health and disease. Biochim Biophys Acta 1822: 1442-1452)。プラスマロゲンレベルの変化は、ペルオキシソーム生合成障害、ツェルウェーガースペクトラム障害(Braverman, N. E., et al. (2016). ''Peroxisome biogenesis disorders in the Zellweger spectrum: An overview of current diagnosis, clinical manifestations, and treatment guidelines.'' Mol Genet Metab 117(3): 313-321)、肢根型点状軟骨異形成症(Braverman N, Chen L, Lin P, Obie C, Steel G, et al. (2002) Mutation analysis of PEX7 in 60 probands with rhizomelic chondrodysplasia punctata and functional correlations of genotype with phenotype. Hum Mutat 20: 284-297、Itzkovitz B, Jiralerspong S, Nimmo G, Loscalzo M, Horovitz DD, et al. (2012) Functional characterization of novel mutations in GNPAT and AGPS, causing rhizomelic chondrodysplasia punctata (RCDP) types 2 and 3. Hum Mutat 33: 189-197)、アルツハイマー病(Goodenowe DB, Cook LL, Liu J, Lu Y, Jayasinghe DA, et al. (2007) Peripheral ethanolamine plasmalogen deficiency: a logical causative factor in Alzheimer's disease and dementia. J Lipid Res 48: 2485-2498、Han X, Holtzman DM, McKeel DW, Jr. (2001) Plasmalogen deficiency in early Alzheimer's disease subjects and in animal models: molecular characterization using electrospray ionization mass spectrometry. J Neurochem 77: 1168-1180、Kou J, Kovacs GG, Hoftberger R, Kulik W, Brodde A, et al. (2011) Peroxisomal alterations in Alzheimer's disease. Acta Neuropathol 122: 271-283)、パーキンソン病(Fabelo N, Martin V, Santpere G, Marin R, Torrent L, et al. (2011) Severe alterations in lipid composition of frontal cortex lipid rafts from Parkinson's disease and incidental Parkinson's disease. Mol Med 17: 1107-1118、Dragonas C, Bertsch T, Sieber CC, Brosche T (2009) Plasmalogens as a marker of elevated systemic oxidative stress in Parkinson's disease. Clin Chem Lab Med 47: 894-897)、ダウン症(Murphy EJ, Schapiro MB, Rapoport SI, Shetty HU (2000) Phospholipid composition and levels are altered in Down syndrome brain. Brain Res 867: 9-18)及びゴーシェ病(Moraitou M, Dimitriou E, Dekker N, Monopolis I, Aerts J, et al. (2014) Gaucher disease: plasmalogen levels in relation to primary lipid abnormalities and oxidative stress. Blood Cells Mol Dis 53: 30-33)を含む、異なるヒト疾患において報告されている。
【0007】
プラスマロゲンの生合成は、小胞体内でビニルエーテルに還元されるエーテル結合を作る、一連の非冗長性ペルオキシソーム特異的酵素によって、ペルオキシソーム中で開始する。ペルオキシソーム生合成障害(PBD、peroxisomal biogenesis disorder)は、関連するが、不完全なペルオキシソーム機能をもたらす、異種の遺伝子系の病状のグループを示す。これらの欠損は、ペルオキシソーム系機能に関与する単一酵素中、又はペルオキシソームの構築及び生合成のために重要な遺伝子の1つ中のいずれかに存在し得る。これらの状態の臨床所見及び重症度は、内在する遺伝子的原因に応じて、広範囲にわたる。プラスマロゲンのレベルの減少は、大多数のペルオキシソーム生合成障害における中心であり、病的状態の主な原因であると考えられる。一般に、プラスマロゲンレベルは、症状の重症度及び予後と直接的に相関する。
【0008】
肢根型点状軟骨異形成症(RCDP、Rhizomelic chondrodysplasia punctata)は、骨の短縮、知的障害、重度の発育遅延、際立った顔の特徴及び/又は呼吸の問題によって特徴付けられる、ペルオキシソーム生合成障害のサブグループである。診断は、通常、白内障の存在及び他の臨床的特徴に起因して、出生後直ぐに気付かれるが、遺伝子検査によって確認される。RCDPの5つの報告されているサブタイプがあり、すべてが、識別不能な臨床的特徴を有しているが、異なる遺伝子の変異から生じる;Pex7(RCDP1)(Braverman N, Steel G, Obie C, Moser A, Moser H, et al. (1997) Human PEX7 encodes the peroxisomal PTS2 receptor and is responsible for rhizomelic chondrodysplasia punctata. Nat Genet 15: 369-376、Motley AM, Hettema EH, Hogenhout EM, Brites P, ten Asbroek AL, et al. (1997) Rhizomelic chondrodysplasia punctata is a peroxisomal protein targeting disease caused by a non-functional PTS2 receptor. Nat Genet 15: 377-380、Purdue PE, Zhang JW, Skoneczny M, Lazarow PB (1997) Rhizomelic chondrodysplasia punctata is caused by deficiency of human PEX7, a homologue of the yeast PTS2 receptor. Nat Genet 15: 381-384)、GNPAT(RCDP2)(Wanders RJ, Schumacher H, Heikoop J, Schutgens RB, Tager JM (1992) Human dihydroxyacetonephosphate acyltransferase deficiency: a new peroxisomal disorder. J Inherit Metab Dis 15: 389-391)、AGPS(RCDP3)(Wanders RJ, Dekker C, Hovarth VA, Schutgens RB, Tager JM, et al. (1994) Human alkyldihydroxyacetonephosphate synthase deficiency: a new peroxisomal disorder. J Inherit Metab Dis 17: 315-318)、FAR1(RCDP4)(Buchert, R., et al. (2014). ''A peroxisomal disorder of severe intellectual disability, epilepsy, and cataracts due to fatty acyl-CoA reductase 1 deficiency.'' Am J Hum Genet 95(5): 602-610)及びPex5(RCDP5)(Baroy, T., et al. (2015). ''A novel type of rhizomelic chondrodysplasia punctata, RCDP5, is caused by loss of the PEX5 long isoform.'' Hum Mol Genet 24(20): 5845-5854)。GNPAT及びAGPSはプラスマロゲンの生合成に関与する酵素であり、FAR1はプラスマロゲン合成の脂肪アルコール前駆体の生合成に関与し、Pex7及びPex5はペルオキシソームの生合成に関与する。5つの種類のすべてが、プラスマロゲンレベルの増加と正の相関がある予後を伴う、プラスマロゲンレベルが枯渇している(Braverman N, Chen L, Lin P, Obie C, Steel G, et al. (2002) Mutation analysis of PEX7 in 60 probands with rhizomelic chondrodysplasia punctata and functional correlations of genotype with phenotype. Hum Mutat 20: 284-297、Itzkovitz B, Jiralerspong S, Nimmo G, Loscalzo M, Horovitz DD, et al. (2012) Functional characterization of novel mutations in GNPAT and AGPS, causing rhizomelic chondrodysplasia punctata (RCDP) types 2 and 3. Hum Mutat 33: 189-197)。患者数は、100,000生児出生あたり1人と推定される。出生後最初の数カ月を生存した患者では、5歳までわずか50%しか生存せず、大半が青年までに疾患に倒れる。呼吸器の問題に対する続発性として報告されている、再発性呼吸器感染症は、通常、過去6カ月生存した患者の80%が死亡する(White AL, Modaff P, Holland-Morris F, Pauli RM (2003) Natural history of rhizomelic chondrodysplasia punctata. Am J Med Genet A 118A: 332-342)。現在米国において報告されている100未満の症例があるが、この障害は実際より少なく報告されていると考えられる。
【0009】
RCDPに利用可能な疾患修飾療法は現在存在しない。食事でのプラスマロゲン前駆体によってプラスマロゲンレベルを増加させる試みは、中程度の有効性を示しているが、しかしながら、プラスマロゲンレベルを上昇させるのに必要な非常に高用量及び長期にわたる時間的経過に起因して、臨床では最終的に失敗している(Braverman N, Zhang R, Chen L, Nimmo G, Scheper S, et al. (2010) A Pex7 hypomorphic mouse model for plasmalogen deficiency affecting the lens and skeleton. Mol Genet Metab 99: 408-416、Brites P, Ferreira AS, da Silva TF, Sousa VF, Malheiro AR, et al. (2011) Alkyl-glycerol rescues plasmalogen levels and pathology of ether-phospholipid deficient mice. PLoS One 6: e28539、Das AK, Holmes RD, Wilson GN, Hajra AK (1992) Dietary ether lipid incorporation into tissue plasmalogens of humans and rodents. Lipids 27: 401-405、Holmes RD, Wilson GN, Hajra AK (1987) Oral ether lipid therapy in patientes with peroxisomal disorders. J Inherit Metab Dis 10: 239-241)。
【0010】
【化2】
【0011】
他のプラスマロゲン前駆体(バチルアルコール及びPPI-1011)による歴史的な研究は、PBD若しくはRCDPに罹っている個体又は動物がこれらの前駆体を望ましいプラスマロゲン種に効果的に代謝しないことを示唆している。このプロセスが効果的に機能しない理由は明らかではないが、進行の初めから終わりまでプラスマロゲンレベルの大幅な低下又は欠如の効果が、この機能障害をもたらす可能性が高い。
【0012】
代替の、追加的な及び/又は改善されたプラスマロゲン前駆体が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【文献】Farooqui AA, Horrocks LA (2001) Plasmalogens: workhorse lipids of membranes in normal and injured neurons and glia. Neuroscientist 7: 232-245
【文献】Braverman NE, Moser AB (2012) Functions of plasmalogen lipids in health and disease. Biochim Biophys Acta 1822: 1442-1452
【文献】Braverman, N. E., et al. (2016). ''Peroxisome biogenesis disorders in the Zellweger spectrum: An overview of current diagnosis, clinical manifestations, and treatment guidelines.'' Mol Genet Metab 117(3): 313-321
【文献】Braverman N, Chen L, Lin P, Obie C, Steel G, et al. (2002) Mutation analysis of PEX7 in 60 probands with rhizomelic chondrodysplasia punctata and functional correlations of genotype with phenotype. Hum Mutat 20: 284-297
【文献】Itzkovitz B, Jiralerspong S, Nimmo G, Loscalzo M, Horovitz DD, et al. (2012) Functional characterization of novel mutations in GNPAT and AGPS, causing rhizomelic chondrodysplasia punctata (RCDP) types 2 and 3. Hum Mutat 33: 189-197
【文献】Goodenowe DB, Cook LL, Liu J, Lu Y, Jayasinghe DA, et al. (2007) Peripheral ethanolamine plasmalogen deficiency: a logical causative factor in Alzheimer's disease and dementia. J Lipid Res 48: 2485-2498
【文献】Han X, Holtzman DM, McKeel DW, Jr. (2001) Plasmalogen deficiency in early Alzheimer's disease subjects and in animal models: molecular characterization using electrospray ionization mass spectrometry. J Neurochem 77: 1168-1180
【文献】Kou J, Kovacs GG, Hoftberger R, Kulik W, Brodde A, et al. (2011) Peroxisomal alterations in Alzheimer's disease. Acta Neuropathol 122: 271-283
【文献】Fabelo N, Martin V, Santpere G, Marin R, Torrent L, et al. (2011) Severe alterations in lipid composition of frontal cortex lipid rafts from Parkinson's disease and incidental Parkinson's disease. Mol Med 17: 1107-1118
【文献】Dragonas C, Bertsch T, Sieber CC, Brosche T (2009) Plasmalogens as a marker of elevated systemic oxidative stress in Parkinson's disease. Clin Chem Lab Med 47: 894-897
【文献】Murphy EJ, Schapiro MB, Rapoport SI, Shetty HU (2000) Phospholipid composition and levels are altered in Down syndrome brain. Brain Res 867: 9-18
【文献】Moraitou M, Dimitriou E, Dekker N, Monopolis I, Aerts J, et al. (2014) Gaucher disease: plasmalogen levels in relation to primary lipid abnormalities and oxidative stress. Blood Cells Mol Dis 53: 30-33
【文献】Braverman N, Steel G, Obie C, Moser A, Moser H, et al. (1997) Human PEX7 encodes the peroxisomal PTS2 receptor and is responsible for rhizomelic chondrodysplasia punctata. Nat Genet 15: 369-376
【文献】Motley AM, Hettema EH, Hogenhout EM, Brites P, ten Asbroek AL, et al. (1997) Rhizomelic chondrodysplasia punctata is a peroxisomal protein targeting disease caused by a non-functional PTS2 receptor. Nat Genet 15: 377-380
【文献】Purdue PE, Zhang JW, Skoneczny M, Lazarow PB (1997) Rhizomelic chondrodysplasia punctata is caused by deficiency of human PEX7, a homologue of the yeast PTS2 receptor. Nat Genet 15: 381-384
【文献】Wanders RJ, Schumacher H, Heikoop J, Schutgens RB, Tager JM (1992) Human dihydroxyacetonephosphate acyltransferase deficiency: a new peroxisomal disorder. J Inherit Metab Dis 15: 389-391
【文献】Wanders RJ, Dekker C, Hovarth VA, Schutgens RB, Tager JM, et al. (1994) Human alkyldihydroxyacetonephosphate synthase deficiency: a new peroxisomal disorder. J Inherit Metab Dis 17: 315-318
【文献】Buchert, R., et al. (2014). ''A peroxisomal disorder of severe intellectual disability, epilepsy, and cataracts due to fatty acyl-CoA reductase 1 deficiency.'' Am J Hum Genet 95(5): 602-610
【文献】Baroy, T., et al. (2015). ''A novel type of rhizomelic chondrodysplasia punctata, RCDP5, is caused by loss of the PEX5 long isoform.'' Hum Mol Genet 24(20): 5845-5854
【文献】White AL, Modaff P, Holland-Morris F, Pauli RM (2003) Natural history of rhizomelic chondrodysplasia punctata. Am J Med Genet A 118A: 332-342
【文献】Braverman N, Zhang R, Chen L, Nimmo G, Scheper S, et al. (2010) A Pex7 hypomorphic mouse model for plasmalogen deficiency affecting the lens and skeleton. Mol Genet Metab 99: 408-416
【文献】Brites P, Ferreira AS, da Silva TF, Sousa VF, Malheiro AR, et al. (2011) Alkyl-glycerol rescues plasmalogen levels and pathology of ether-phospholipid deficient mice. PLoS One 6: e28539
【文献】Das AK, Holmes RD, Wilson GN, Hajra AK (1992) Dietary ether lipid incorporation into tissue plasmalogens of humans and rodents. Lipids 27: 401-405
【文献】Holmes RD, Wilson GN, Hajra AK (1987) Oral ether lipid therapy in patientes with peroxisomal disorders. J Inherit Metab Dis 10: 239-241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、それを必要とする細胞又は対象における少なくとも1つのプラスマロゲンのレベルを上昇させるためのプラスマロゲン前駆体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの実施形態において、対象における少なくとも1つのプラスマロゲンレベルを上昇させる方法を提供する。本方法は、対象に、薬学的有効量の式A:
【0016】
【化3】
【0017】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含み、
投与の後に、環状プラスメニルエタノールアミンが、少なくとも1つのプラスマロゲン種に変換され、それによって対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させる。
【0018】
ある特定の実施形態において、Rは、sn-1位のために望ましい脂肪アルコール基の炭化水素鎖を提供するために(鎖長及び飽和レベルで)選択されてもよく、Rは、sn-2位のために望ましい脂肪酸基の炭化水素鎖を提供するために(鎖長及び飽和レベルで)選択されてもよい。ある特定の実施形態において、脂肪酸、脂肪アルコール又は両方は、脂肪酸及び/又は脂肪アルコールを内因的に生じてもよい。
【0019】
ある特定の実施形態において、R、R又は両方は、アルカン、アルケン又はアルキン炭化水素基であってもよい、置換されていてもよいC-C28炭化水素基であってもよい。ある特定の実施形態において、R、R又は両方は、それぞれ独立して、6個までの二重結合を有していてもよい。ある特定の実施形態において、R、R又は両方は、ヒドロキシル化されていてもよく(すなわち、1又は2以上の
【0020】
【化4】
【0021】
の置換基を特徴とする)、1又は2以上のアルケン及び/又はアルキン官能基を含み、1又は2以上のケトン官能基を含み、1又は2以上の低級アルキル(C-C)炭化水素基を含む、C-C28炭化水素基又はこれらのいかなる組み合わせであってもよい。
【0022】
ある特定の実施形態において、R、R又は両方は、置換されていてもよいC-C26炭化水素基であってもよい。
【0023】
典型的には、Rは、sn-1位のために望ましい脂肪アルコール基の炭化水素鎖を提供するために(鎖長及び飽和レベルで)選択され、Rは、sn-2位のために望ましい脂肪酸基の炭化水素鎖を提供するために(鎖長及び飽和レベルで)選択される。脂肪アルコール又は脂肪酸は、天然由来であってもよく、又は合成的に製造されてもよい。
【0024】
本記載の方法の他の実施形態において、対象は、プラスマロゲン欠乏症、ペルオキシソーム生合成障害又は両方を患っていてもよい。例えば、対象は、肢根型点状軟骨異形成症(RCDP)、ツェルウェーガースペクトラム障害(Zellweger spectrum disorder)又は他のプラスマロゲン欠乏障害を患っていてもよい。さらに別の実施形態において、対象は、アルツハイマー病(AD、Alzheimer’s disease)又はパーキンソン病(PD、Parkinson’s disease)に罹っている対象であってもよい。
【0025】
特定の実施形態において、環状プラスメニルエタノールアミンは、
【0026】
【化5】
【0027】
又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物、
或いはこれらのいかなる組み合わせであってもよい。
【0028】
また、それを必要とする対象における少なくとも1つのプラスマロゲンレベルを上昇させるための、上記に記載の式Aを有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミンの使用であって、環状プラスメニルエタノールアミンが、対象への投与に続いて、少なくとも1つのプラスマロゲン種に変換され、それによって対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させるためのものである、前記使用を本明細書において記載する。式Aの環状プラスメニルエタノールアミンは、記載のようなプラスマロゲンレベルを上昇させるための医薬の製造においても使用され得る。
【0029】
さらなる実施形態において、式A:
【0030】
【化6】
【0031】
[式中、R及びRは、上記に記載の通りである]
を有するプラスマロゲン前駆体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物も提供する。
【0032】
プラスマロゲン前駆体、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む、医薬組成物も提供する。記載のプラスマロゲン前駆体を含むキットも記載し、ここで、キットは、細胞又はそれを必要とする対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させるためのものである。ある特定の実施形態において、このようなキットは、プラスマロゲン前駆体を、細胞若しくは対象に、処方及び/又は投与するための使用説明書を含んでいてもよく、並びに/或いはプラスマロゲン前駆体のための容器を含んでいてもよい。
【0033】
別の実施形態において、ニューロン間の長期増強(LTP、long term potentiation)を向上させる方法であって、
ニューロンを、式A:
【0034】
【化7】
【0035】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物で処置することを含む、前記方法を本明細書において提供する。
【0036】
別の実施形態において、それを必要とする対象における長期増強(LTP)を向上させる方法であって、
前記対象に、式A:
【0037】
【化8】
【0038】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、前記方法を本明細書において提供する。
【0039】
ある特定の実施形態において、対象は、アルツハイマー病又はパーキンソン病を有していてもよい。
【0040】
別の実施形態において、それを必要とする対象におけるアルツハイマー病若しくはパーキンソン病を治療又は予防する方法であって、
前記対象に、式A:
【0041】
【化9】
【0042】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、前記方法を本明細書において提供する。
【0043】
さらに別の実施形態において、それを必要とする対象におけるプラスマロゲン欠乏神経変性疾患を治療又は予防する方法であって、
前記対象に、式A:
【0044】
【化10】
【0045】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、前記方法を本明細書において提供する。
【0046】
別の実施形態において、プラスマロゲン欠乏神経変性疾患は、アルツハイマー病又はパーキンソン病であってもよい。
【0047】
また別の実施形態において、それを必要とする対象における少なくとも1つのプラスマロゲンレベルを上昇させる方法であって、
前記対象に、式A’:
【0048】
【化11】
【0049】
[式中、Rは、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
の少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含み、
投与の後に、前記化合物が、少なくとも1つのプラスマロゲン種に変換され、それによって対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させる、前記方法を本明細書において提供する。
【0050】
また別の実施形態において、Rは、置換されていてもよいC-C28炭化水素基であってもよい。さらに別の実施形態において、Rは、6個までの二重結合を含んでいてもよい。別の実施形態において、Rは、脂肪アルコール又は脂肪酸の炭化水素鎖であってもよい。
【0051】
さらに別の実施形態において、対象は、プラスマロゲン欠乏症を患っている対象であってもよい。別の実施形態において、対象は、ペルオキシソーム生合成障害に罹っている対象であってもよい。さらに別の実施形態において、対象は、肢根型点状軟骨異形成症(RCDP)又はツェルウェーガースペクトラム障害に罹っている対象であってもよい。さらに別の実施形態において、対象は、アルツハイマー病又はパーキンソン病に罹っている対象であってもよい。
【0052】
別の実施形態において、それを必要とする対象における少なくとも1つのプラスマロゲンレベルを上昇させるための、式A’の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の使用であって、前記化合物が、対象への投与に続いて、少なくとも1つのプラスマロゲン種に変換され、それによって対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させるためのものである、前記使用を本明細書において提供する。
【0053】
別の実施形態において、それを必要とする対象における少なくとも1つのプラスマロゲンレベルを上昇させるための医薬の製造における、式A’の少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の使用であって、前記化合物が、対象への投与に続いて、少なくとも1つのプラスマロゲン種に変換され、それによって対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させるためのものである、前記使用を本明細書において提供する。
【0054】
また別の実施形態において、それを必要とする対象における少なくとも1つのプラスマロゲンレベルを上昇させる使用のための、式A’:
【0055】
【化12】
【0056】
[式中、Rは、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物であって、前記化合物が、対象への投与に続いて、少なくとも1つのプラスマロゲン種に変換され、それによって対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させるためのものである、前記化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を本明細書において提供する。
【0057】
さらに別の実施形態において、式A’:
【0058】
【化13】
【0059】
[式中、Rは、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有するプラスマロゲン前駆体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を本明細書において提供する。
【0060】
別の実施形態において、本明細書において定義される少なくとも1つの化合物、環状プラスメニルエタノールアミン又はプラスマロゲン前駆体、及び任意の少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む、医薬組成物を本明細書において提供する。
【0061】
別の実施形態において、細胞又はそれを必要とする対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させるためのキットであって、
キットが、式A’:
【0062】
【化14】
【0063】
[式中、Rは、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つのプラスマロゲン前駆体又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、並びに
プラスマロゲン前駆体を、細胞又は対象に投与するための使用説明書
を含む、前記キットを本明細書において提供する。
【0064】
また別の実施形態において、式A’:
【0065】
【化15】
【0066】
[式中、Rは、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を本明細書において提供する。
【0067】
別の実施形態において、ニューロン間の長期増強(LTP)を向上させる方法であって、
ニューロンを、式A’:
【0068】
【化16】
【0069】
[式中、Rは、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
の少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物で処置することを含む、前記方法を本明細書において提供する。
【0070】
さらに別の実施形態において、それを必要とする対象における長期増強(LTP)を向上させる方法であって、
前記対象に、式A’:
【0071】
【化17】
【0072】
[式中、Rは、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
の少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、前記方法を本明細書において提供する。
【0073】
別の実施形態において、対象は、アルツハイマー病又はパーキンソン病に罹っている対象であってもよい。
【0074】
また別の実施形態において、それを必要とする対象におけるアルツハイマー病若しくはパーキンソン病を治療又は予防する方法であって、
前記対象に、式A’:
【0075】
【化18】
【0076】
[式中、Rは、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
の少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、前記方法を本明細書において提供する。
【0077】
さらに別の実施形態において、それを必要とする対象におけるプラスマロゲン欠乏神経変性疾患を治療又は予防する方法であって、
前記対象に、式A’:
【0078】
【化19】
【0079】
[式中、Rは、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
の少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、前記方法を本明細書において提供する。
【0080】
また別の実施形態において、プラスマロゲン欠乏神経変性疾患は、アルツハイマー病又はパーキンソン病であってもよい。
【0081】
別の実施形態において、
本明細書に記載の式(A);
本明細書に記載の式(A’);及び/若しくは
本明細書に記載の式(B)
から選択される2又は3以上の化合物、或いはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む、医薬組成物を本明細書において提供する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
これらの特徴及び他の特徴は、添付の図面を参照する以下の説明からより明らかになるだろう。
図1】エタノールアミンプラスマロゲン生合成経路を示し、代謝ステップ及び関与する細胞小器官の概要を述べる図である。PPI-1040を含む、プラスマロゲン交換の例は、それぞれの前駆体が代謝経路に入る点を示す矢印に沿って右側に列挙する。
図2】PPI-1011(経口)又はPPI-1040(腹腔内)のいずれかで2週間処置された対照及びPex7ハイポモルフ(hypomorphic:HO)マウスを比較する、血漿中でのプラスマロゲン増大を示すグラフである。両方の治療の標的のプラスマロゲンは、16:0/22:6エタノールアミンプラスマロゲン(PlsEtn)である。すべての16:0プラスマロゲン種の合計は、総16:0PlsEtnプールで表される。データを、平均±SEM、n=3~6、p<0.05、対野生型対照として表す。
図3】2週間処置されたPex7ハイポモルフ(HO)マウスの血漿中におけるPPI-1040(腹腔内)を使用するプラスマロゲン(PlsEtn)増大の後のsn-2位での再構造化を示すグラフである。データを、平均±SEM、n=3~6、p<0.05、対野生型対照として表す。
図4】PPI-1011(経口)又はPPI-1040(腹腔内)のいずれかで2週間処置された対照及びPex7ハイポモルフ(HO)マウスを比較する、肝臓中でのプラスマロゲン増大を示すグラフである。両方の治療の標的のプラスマロゲンは、16:0/22:6エタノールアミンプラスマロゲン(PlsEtn)である。すべての16:0プラスマロゲン種の合計は、総16:0PlsEtnプールで表される。データを、平均±SEM、n=4~6、p<0.05、対野生型対照として表す。
図5】9週間の腹腔内PPI-1040処置(1週あたり3回投与)の後の血漿中でのプラスマロゲン増大を示すグラフである。PPI-1040処置の標的のプラスマロゲンは、16:0/22:6エタノールアミンプラスマロゲン(PlsEtn)である。すべての16:0プラスマロゲン種の合計は、総16:0PlsEtnプールで表される。データを、平均±SEM、n=3~6、p<0.05、対野生型対照として表す。
図6】9週間の腹腔内PPI-1040処置(1週あたり3回投与)の後の肝臓中でのプラスマロゲン増大を示すグラフである。PPI-1040処置の標的のプラスマロゲンは、16:0/22:6エタノールアミンプラスマロゲン(PlsEtn)である。すべての16:0プラスマロゲン種の合計は、総16:0PlsEtnプールで表される。データを、平均±SEM、n=4~6、p<0.05、対野生型対照として表す。
図7】9週間の腹腔内PPI-1040処置(1週あたり3回投与)の後の肺中でのプラスマロゲン増大を示すグラフである。PPI-1040処置の標的のプラスマロゲンは、16:0/22:6エタノールアミンプラスマロゲン(PlsEtn)である。すべての16:0プラスマロゲン種の合計は、総16:0PlsEtnプールで表される。データを、平均±SEM、n=4~6、p<0.05、対野生型対照として表す。
図8】インビボでプラスマロゲンレベルを増大させるために設計されたプラスマロゲン前駆体の化学構造を示す図である。星印は、標識化合物における13C分子の場所を表す。
図9】ビニルエーテル結合の酸不安定性を試験するための増加した酸性条件下でのPPI-1040の安定性を示すグラフである。A)環状エタノールアミン基の開環は、水又は酸への曝露ですぐに生じ、その結果、最小限のインタクト(intact)なPPI-1040が観察される。B)環の開環の後、生じた16:0/22:6エタノールアミンプラスマロゲンは、pH2まで安定なままである。C)ビニルエーテル結合の切断から生じるsn-1エーテル基の喪失は、pH2で開始することが観察され、pH1まで分子は大部分が分解するように見える。平均±SD、n=3。
図10】野生型動物における単回経口処置の後、血清中のPPI-1050の組み込み(incorporation)を示すグラフである。A)その他の点では完全にインタクトなPPI-1050の開環した環状エタノールアミン基を表す、標的の16:0/22:6プラスマロゲン。B)sn-2の場所での再構造化の後、16:0プラスマロゲンプールへのsn-1のビニルエーテル及びグリセロール主鎖の組み込み。平均±SD、n=3。
図11】媒体(vehicle)又はPPI-1040で処置されたPex7ハイポモルフ/ヌルマウスからの血漿中のプラスマロゲンレベルを示すグラフである。すべてのプラスマロゲン種は、媒体及びPPI-1011中でベースラインを有意に下回った。平均±SD、n=4~6、-p<0.05、対媒体。4つのバーの各セットにおいて左から右への移動は、以下の、野生型対照、Pex7ハイポ+媒体、Pex7ハイポ+PPI-1011、Pex7ハイポ+PPI-1040の順序で示す。
図12】媒体又はPPI-1040で処置されたPex7ハイポモルフ/ヌルマウスからの組織中のプラスマロゲンレベルを示すグラフである。A)肝臓、B)骨格筋、C)小腸、D)肺、E)腎臓、F)皮質、G)小脳。すべてのプラスマロゲン種は、媒体及びPPI-1011中でベースラインを有意に下回った。平均±SD、n=4~6、-p<0.05、対媒体。3つのバーの各セットにおいて左から右への移動は、以下の、野生型対照、Pex7ハイポ+媒体、Pex7ハイポ+PPI-1040の順序で示す。媒体又はPPI-1040で4週間(1週あたり5回投与)経口処置された野生型及びPex7ハイポモルフマウスを比較する。
図13】オープンフィールド行動試験の結果を示す図である。A)媒体又はPPI-1040で処置された野生型対照及びPex7ハイポモルフ/ヌルからの、測定された距離及び可動時間(time mobile)データの棒グラフ。B)オープンフィールドにおける動物の動きの代表的な追跡データ。C)オープンフィールド試験における対照に対する、媒体、PPI-1040で処置されたPex7ハイポモルフ/ヌル動物の、血漿プラスマロゲンレベルと活動性レベルとの相関を示す。血漿PlsEtn16:0/22:6と移動距離(distance travelled)(R=0.36、F=7.93、p=0.014)及び活動時間(time active)(R=0.54、F=16.37、p=0.0012)との相関グラフ、並びに総16:0PlsEtnレベルと移動距離(R=0.37、F=8.37、p=0.011)又は活動時間(R=0.55、F=17.28、p=0.00096)との相関グラフ。n=4~6、-p<0.05、**-p<0.01を示す。
図14】媒体又はPPI-1040のいずれかで処置された野生型マウスの海馬脳切片で行われた長期増強(LTP)の結果を示すグラフである。青色(上側の曲線)は、0.5μMのPPI-1040条件(4頭、9切片、37電極)を示し、黒色(下側の曲線)は、対照の0.2%のDMSO条件(4頭、9切片、40電極)を示す。
図15図10において示したデータから強調されるように、PPI-1050(100mg/kg)の経口投薬の後にビニルエーテル結合がインタクトなままであることを確認する、血漿中でのsn-1での[13]-パルミチン及び[13]-グリセロールを有する標的の16:0/22:6の組み込み%における時間依存性の増加を示すグラフである。
図16図10において示したデータから強調されるように、PPI-1050(100mg/kg)の経口投薬の後、sn-2がすぐに再構築される間に、ビニルエーテル結合がインタクトなままであることを確認する、血漿中でのsn-1での[13]-パルミチン及び[13]-グリセロールを有する16:0プラスマロゲンの組み込み%における時間依存性の増加を示すグラフである。3つのバーの各セットにおいて左から右への移動は、以下の、1時間、3時間、及び6時間の順序で示す。
図17】sn-1の[13]-パルミチン又は[13]-グリセロールを有する血漿16:0プラスマロゲン種への[13]-PPI-1050の組み込みを示し、sn-2位の再置換の間にビニルエーテル結合が壊れないことを示すグラフである。PPI-1050は、強制経口によって100mg/kgで投薬された。3つのバーの各セットにおいて左から右への移動は、以下の、1時間、3時間、及び6時間の順序で示す。
図18】100mg/kgのPPI-1050での経口処置の後に増加を示さない、[13]標識化(16:0(L):22:6VAG(L))又は[13]標識化(16:0:22:6VAG(L))のレベルを示すグラフである。3つのバーの各セットにおいて左から右への移動は、以下の、1時間、3時間、及び6時間の順序で示す。
図19】PPI-1038(100mg/kg)の経口投薬の後に、sn-1での[13]-パルミチン、sn-2での[13]-DHA及び[13]-グリセロールを有する標的の16:0/22:6プラスマロゲンへの組み込みパーセント、並びに他の標識化された基の配置を示すグラフである。3つのバーの各セットにおいて左から右への移動は、以下の、完全にインタクト、主鎖及びsn-1がインタクト、並びに主鎖(backbone)及びsn-2がインタクトの順序で示す。
図20】媒体又はPPI-1011で4週間(1週あたり5回投与)経口処置された野生型及びPex7ハイポモルフマウスを比較する、肝臓プラスマロゲンレベルを示すグラフである。3つのバーの各セットにおいて左から右への移動は、以下の、野生型対照、Pex7ハイポ+媒体、及びPex7ハイポ+PPI-1011の順序を示す。
図21】オープンフィールド試験において、対照に対して、媒体、PPI-1011又はPPI-1040で処置されたPex7ハイポモルフ/ヌル動物の活動性レベルを示すグラフである(PPI-1040のデータは図13にも示す)。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本明細書において、環状プラスメニルエタノールアミン及びプラスマロゲン前駆体を記載する。プラスマロゲン欠乏症の治療における方法及びその使用も記載する。実施形態及び実施例が、当業者に対して意図する例証の目的のために提供され、決して限定することを意味しないことは明らかであろう。
【0084】
1又は2以上の現在の好ましい実施形態を例として記載する。特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、いくつかの変形及び改変を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
【0085】
本明細書において詳細に記載するように、環状プラスメニルエタノールアミンは、内因性プラスマロゲン種又はそのミミックに変換され得るプラスマロゲン前駆体のクラスとして開発されている。環状プラスメニルエタノールアミンは、ある特定の実施形態において、ビニルエーテル結合の安定性を改善し得る、sn-3位の環状エタノールアミン官能基を特徴とする(式Aを参照のこと)。
【0086】
【化20】
【0087】
以下の項目で提供される実験例は、環状プラスメニルエタノールアミンが内因的に利用可能なプラスマロゲンを提供し、プラスマロゲン前駆体であるPPI-1011と有利に比較されることを示す。同様に、環状プラスメニルエタノールアミンは、非常に後の段階でエタノールアミンプラスマロゲン生合成経路に入り得、これは、バチルアルコール及びキミルアルコールを含むアルキルグリセロールと比較して、望ましくあり得(図1を参照のこと)、追加的な酵素処置に関与する。
【0088】
環状プラスメニルエタノールアミンの合成は、カナダ特許第2,812,178号明細書に記載されており、これは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0089】
ある特定の実施形態において、それを必要とする対象における少なくとも1つのプラスマロゲンレベルを上昇させる方法であって、
前記対象に、式A:
【0090】
【化21】
【0091】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含み、
投与の後に、前記環状プラスメニルエタノールアミンが、少なくとも1つのプラスマロゲン種に変換され、それによって対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させる、
前記方法を本明細書において提供する。
【0092】
また、それを必要とする対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させるための、式A:
【0093】
【化22】
【0094】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の使用であって、
前記環状プラスメニルエタノールアミンが、対象への投与に続いて、少なくとも1つのプラスマロゲン種に変換され、それによって対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させるためのものである、前記使用を本明細書において提供する。
【0095】
ある特定の実施形態において、Rは、sn-1位のために望ましい脂肪アルコール基の炭化水素鎖を提供するために(鎖長及び飽和レベルで)選択されてもよく、Rは、sn-2位のために望ましい脂肪酸基の炭化水素鎖を提供するために(鎖長及び飽和レベルで)選択されてもよい。ある特定の実施形態において、脂肪酸、脂肪アルコール又は両方は、脂肪酸及び/又は脂肪アルコールを内因的に生じてもよい。内因性及び/又は天然に存在する脂肪酸/脂肪アルコールの例は、例えば、LipidWebのウェブサイトである、
・http://lipidhome.co.uk/lipids/fa-eic/fa-sat/index.htm、
・http://aocs.files.cms-plus.com/LipidsLibrary/images/Importedfiles/lipidlibrary/Lipids/fa_mono/file.pdf、及び
・http://www.lipidhome.co.uk/lipids/fa-eic/fa-poly/index.htm;
The Lipid Handbook, Second Edition, Gunstone et al. (1994), Chapman & Hall;
“The Nomenclature of Lipids” published in the Journal of Lipid Research, volume 19, 1978, pages 114-128;並びに
Food Lipids: Chemistry, Nutrition, and Biotechnology, 2nd Edition, Marcel Dekker, Inc., CRC, 2002, Chapter 1, by O’Keefe
に見ることができ、これらのそれぞれは、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0096】
ある特定の実施形態において、R、R又は両方は、アルカン、アルケン又はアルキン炭化水素基であってもよい、置換されていてもよいC-C28炭化水素基であってもよい。ある特定の実施形態において、R、R又は両方は、それぞれ独立して、6個までの二重結合を有していてもよい。ある特定の実施形態において、R、R又は両方は、ヒドロキシル化され(すなわち、1又は2以上の
【0097】
【化23】
【0098】
の置換基を特徴とする)、1又は2以上のアルケン及び/又はアルキン官能基を含み、1又は2以上のケトン官能基を含み、1又は2以上の低級アルキル(C-C)炭化水素基を含む、C-C28炭化水素基又はこれらのいかなる組み合わせであってもよい。
【0099】
ある特定の実施形態において、R、R又は両方は、置換されていてもよいC-C26炭化水素基であってもよい。
【0100】
ある特定の実施形態において、式(A)の環状プラスメニルエタノールアミンは、R、R又は両方が、置換されていてもよいC-C28炭化水素基であるものを含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、R、R又は両方は、それぞれ独立して、6個までの二重結合を含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、R、R又は両方は、本明細書においてさらに詳細に記載する、内因性の脂肪アルコール又は脂肪酸などの脂肪アルコール又は脂肪酸の炭化水素鎖を含んでいてもよい。
【0101】
本明細書において記載される方法及び使用の別の実施形態において、対象は、プラスマロゲン欠乏症を患っている対象であってもよい。例として、対象は、肢根型点状軟骨異形成症(RCDP)又はツェルウェーガースペクトラム障害などのペルオキシソーム生合成障害を患っていてもよい。
【0102】
ある特定の実施形態において、環状プラスメニルエタノールアミンは、
【0103】
【化24】
【0104】
1-(((Z)-ヘキサデカ-1-エン-1-イル)オキシ)-3-((2-オキシド-1,3,2-オキサザホスホリジン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イル(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエノエート(PPI-1040);
【0105】
【化25】
【0106】
1-(((Z)-オクタデカ-1-エン-1-イル)オキシ)-3-((2-オキシド-1,3,2-オキサザホスホリジン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イル(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエノエート(PPI-1054);
【0107】
【化26】
【0108】
1-(((1Z,9Z)-オクタデカ-1,9-ジエン-1-イル)オキシ)-3-((2-オキシド-1,3,2-オキサザホスホリジン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イル(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエノエート(PPI-1056);
【0109】
【化27】
【0110】
1-(((1Z,9Z)-オクタデカ-1,9-ジエン-1-イル)オキシ)-3-((2-オキシド-1,3,2-オキサザホスホリジン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イルパルミテート(PPI-1063);
【0111】
【化28】
【0112】
1-(((Z)-ヘキサデカ-1-エン-1-イル)オキシ)-3-((2-オキシド-1,3,2-オキサザホスホリジン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イルオレエート(PPI-1045);若しくは
【0113】
【化29】
【0114】
1-(((Z)-オクタデカ-1-エン-1-イル)オキシ)-3-((2-オキシド-1,3,2-オキサザホスホリジン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イルオレエート(PPI-1046)
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物
或いはこれらのいかなる組み合わせ
であってもよい。
【0115】
理解されるように、ある特定の実施形態において、環状プラスメニルエタノールアミンのR及び/又はR基は、例えば、内因性プラスマロゲンなどの、対象における所望の特定のプラスマロゲンの好都合な上昇になるように、選択され得る。例えば、所望のプラスマロゲンが、16:0/22:6エタノールアミンプラスマロゲン(PlsEtn)である場合、R及びR基は、したがって、
【0116】
【化30】
【0117】
として選択され得る。
【0118】
式(A)によって表されるような一般的なプラスマロゲン構造中に存在するビニルエーテル二重結合は、「プラスマロゲン」という用語に包含され、そのため、sn-1位に含まれる置換基のために使用される専門用語には含まれないことが、当業者によって認識されるであろう。この二重結合を含めないことは一般的な命名規則である。したがって、例えば、上記で例証したPPI-1040の実施形態において、sn-1位の16:0側鎖は、合計で16個の炭素を含み、ビニルエーテル部分に存在する二重結合に加えてさらなる二重結合は含まない。
【0119】
及びR位のために選択される基は、対象における上昇させることが最も望ましいものに基づいて選択することができる。したがって、これは、プラスマロゲンが個体において最も大幅に減少しているもの、又は機能的効果が個体において必要とされるものに基づいて、調整することができる。例えば、本発明の1つの実施形態において、sn-1及びsn-2に18:0/18:1を有する分子は、これが、ミエリン構造に最も一般的に組み込まれる内因性プラスマロゲンであるので、ミエリンのレベルを増加させるために選択することができる。一方、DHAなどのポリ不飽和のsn-2置換体は、小胞の機能及び膜タンパク質の機能を改善するために、さらなる実施形態において選択することができる。
【0120】
及び/又はR位のために選択される基は、対象において上昇させることが望ましいものに基づいて選択されてもよい。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、特定の対象、対象群又は疾患若しくは状態のために、どのプラスマロゲンが上昇させるために枯渇若しくは望ましいかに基づいて、及び/又はどのプラスマロゲンが特定の適用において有益である可能性が高いかに基づいて、調整されてもよい。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の2又は3以上の異なる化合物を含んでいてもよく、この化合物は、調整される処置を提供するために選択される。ある特定の実施形態において、化合物は、式(A)、(A’)及び(B)のいずれかから選択されてもよい。ある特定の実施形態において、2又は3以上の化合物は、一緒又は別々の投与のためであってもよい。ある特定の実施形態において、2又は3以上の化合物は、同時に(混ぜ合わされた混合物として、又は実質的に同時に投与される別々の製剤としてのいずれか)、又は連続しての投与のためであってもよい。
【0121】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の医薬組成物は、式(A)、式(A’)及び/若しくは式(B)から選択される2又は3以上の化合物、或いはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含んでいてもよい。
【0122】
理解されるように、且つ理論によって限定されることを望まないが、限定されるものではないが、ヒトの血液循環又は消化管において見られるものを含む、水性又は酸性環境に曝露されると、式Aの化合物中に見られる環化したエタノールアミン環が開環ホスホエタノールアミン頭部基(式B)に加水分解され得る。ある特定の実施形態において、このような開環ホスホエタノールアミンは、内因性の開環ホスホエタノールアミンであり得る。次いで、式Bの化合物は、例えば、インビボ又はインビトロで、内因性プラスマロゲン種として作用し得る。
【0123】
【化31】
【0124】
また理解されるように、式Bの化合物に対する本明細書における言及、及び式(A)の環状プラスメニルエタノールアミン又はプラスマロゲン前駆体に対する言及、式A’の化合物に対する言及、並びにPPI-1040、PPI-1054、PPI-1056、PPI-1063、PPI-1045及びPPI-1046などの例に対する言及は、これらの薬学的に許容される塩及び溶媒和物を包含するものとしても理解される。ある特定の実施形態において、塩は、例えば、ナトリウム塩又はカリウム塩などのいかなる適切なアルカリ金属塩も含み得る。ある特定の実施形態において、塩は、例えば、塩化物の塩、又は他の適切なハロゲンの塩を含み得る。ある特定の実施形態において、溶媒和物は、油、又は例えば、Neobee媒体などのエマルションを含み得る。
【0125】
理解されるように、ある特定の非限定的な実施形態において、本明細書に記載の化合物は、1又は2以上の不斉中心を含有していてもよい。典型的には、このような化合物は、ラセミ混合物として調製され得る。しかしながら、必要に応じて、このような化合物は、純粋な立体異性体として、すなわち、個々のエナンチオマー若しくはジアステレオマーとして、又は立体異性体が濃縮された混合物として、調製又は単離され得る。式A、A’及びBの化合物のすべてのこのような立体異性体(及び濃縮された混合物)は、本明細書の範囲内に含まれる。純粋な立体異性体(又は濃縮された混合物)は、例えば、本技術分野において公知の光学活性な出発原料又は立体選択的試薬を使用して調製され得る。或いは、このような化合物のラセミ混合物は、例えば、キラルカラムクロマトグラフィー、キラル分割剤などを使用して分離され得る。本明細書に記載の化学物質は、(+)及び(-)立体異性体の両方、又は(+)若しくは(-)立体異性体のいずれかを含み得る。決して限定されることを意図しない、ある特定の好ましい実施形態において、記載の化合物は、純粋なシス又はR立体異性体として、調製又は単離され得る。
【0126】
ある特定の実施形態において、式(A)、(A’)及び/又は(B)におけるグリセロール部分の中心炭素は、鏡像異性体的に純粋なR、鏡像異性体的に純粋なSであり得、鏡像異性体的に濃縮されたR、鏡像異性体的に濃縮されたSであり得、又はラセミであり得る。
【0127】
理解されるように、ある特定の実施形態において、式(A)のR及びR基の一方又は両方は、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素系基であり得る。R及びR基が1又は2以上の二重結合を含有する場合、二重結合は、すべてシス、すべてトランス、又はシス及びトランスの混合であってもよい。ある特定の実施形態において、例えば、R及びR基に存在するすべての二重結合は、シスであってもよい。本明細書に記載の環状プラスメニルエタノールアミン又はプラスマロゲン前駆体の調製物は、純粋な調製物、濃縮された調製物として、又は調製物内でのR及びR基の立体化学が変更されている混合物として、提供され得る。
【0128】
ある特定の実施形態において、放射標識されたか、同位体標識されたか、又は他のもので標識された、PPI-1040、PPI-1054、PPI-1056、PPI-1063、PPI-1045及びPPI-1046などの式(A)の環状プラスメニルエタノールアミン又はプラスマロゲン前駆体、並びに式(A’)及び/又は(B)の化合物も本明細書において提供されることがさらに理解されるだろう。このような標識された化合物は、例えば、投与後の分布を研究又は追跡するために使用され得る。例として、ある特定の実施形態において、本明細書に記載の式(A)の環状プラスメニルエタノールアミン又はプラスマロゲン前駆体は、1若しくは2以上の重水素又は三重水素標識を含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、例えば、本明細書に記載の、式(A)の環状プラスメニルエタノールアミン若しくはプラスマロゲン前駆体、又は式(A’)若しくは(B)の化合物は、1又は2以上の13C標識又は14C標識を含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、標識は、例えば、32P標識などをsn-3位に含んでいてもよい。理解されるように、ある特定の実施形態において、標識は、例えば、sn-1及び/若しくはsn-2及び/若しくはグリセロール部分に1又は2以上の標識を組み込むことによって、環状プラスメニルエタノールアミン又はプラスマロゲン前駆体の個々の部分の追跡を可能にするように、配置されてもよい。理解されるように、ある特定の実施形態において、標識は、例えば、適した市販の標識化出発原料及び/又は試薬を使用することによって、環状プラスメニルエタノールアミン又はプラスマロゲン前駆体の合成の間に導入されてもよい。
【0129】
本明細書で下記に記載する実験において、式(A)の環状プラスメニルエタノールアミンのsn-2の置換基を、細胞及び/又は対象への導入の後に修飾し得ることが確認されている。したがって、結果は、sn-2グリセロールヒドロキシル部分において異なる基を挿入するための処置が生じてもよいことを示す。このように、ある特定の実施形態において、式A’の化合物が、式A:
【0130】
【化32】
【0131】
の化合物に代えて、又は組み合わせて、使用され得ることが本明細書において検討される。
【0132】
同様に、ある特定の実施形態において、式A及び/又は式A’の化合物が、互いに組み合わせて、及び/又は1又は2以上の式(B)の化合物と組み合わせて、使用され得ることが検討される。
【0133】
本明細書にも記載されるように、式(A)の化合物の環状プラスメニルエタノールアミンの環は、開環し得、このようにして、式(B)の化合物が生成する。ある特定の実施形態において、したがって、式(A)の化合物の調製は、経時的に式Bの化合物の量を蓄積させてもよく、ある特定の実施形態において、このようにして、式(A)の化合物は、本明細書に記載の方法において式(B)の化合物と組み合わせて使用され得る。
【0134】
アルキル/アシル脂肪酸及び脂肪アルコール、並びに生物学的に活性な化合物、医薬組成物及び方法を記載する場合、以下の用語は、他に規定のない限り、以下の意味を有する。
【0135】
脂肪酸としては、動物若しくは植物の油脂又はワックス中のエステル化形態に由来するか、又は含有される、脂肪族のモノカルボン酸が挙げられる。天然の脂肪酸は、通常、4~28個の炭素鎖を有し(通常、枝分かれしておらず、偶数である)、これは、飽和又は不飽和であり得る。これらは、非環状の脂肪族のカルボン酸として公知である。
【0136】
飽和脂肪酸の意味のうち、「飽和」という用語は、(最初のカルボキシ[-COOH]基を除いて)可能な限り多くの水素を含有する炭素を指す。言い換えれば、「飽和」という用語は、3個の水素原子を含有するオメガ(ω)末端(CH-)及び2個の水素原子を含有する鎖内の炭素が存在する形態を指す。
【0137】
不飽和脂肪酸は、1又は2以上のアルケニル官能基が鎖に沿って存在することを除き、飽和脂肪酸と同様の形態のものであり、それぞれのアルケンは、鎖の単結合の-CH-CH-部分が二重結合の-CH=CH-部分によって(すなわち、別の炭素に対して結合した炭素二重結合が)置換されている。これらは、シス/トランス及びC:Dとして称され、Cは炭素原子の数を表し、Dは二重結合を表す。
【0138】
脂肪アルコールは、4~28個の炭素の範囲であり得、典型的には、天然の油脂に由来する。正確な鎖長は、その起源によって変化する。これらは、通常、高分子量の、直鎖の一級アルコールであるが、枝分かれすることもできる。脂肪アルコールは、通常、偶数の炭素原子、及び末端の炭素に結合した唯一のアルコール基(-OH)を有する。これらは、本明細書でさらに記載するように、飽和又は不飽和であり得る。いくつかの商業的に重要な脂肪アルコールは、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール及びオレイルアルコールである。これらは、無色の油状液体(より少ない炭素数について)又はワックス状固体であるが、不純な試料は、黄色に見える場合がある。
【0139】
医薬品又は薬物とは、対象に適切に投与された場合に、望ましい治療効果又は予防効果などの能力がある、化学物質又は組成物を指す。
【0140】
有効量という用語は、例えば、研究者又は臨床医によって求められている、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する、薬物又は医薬品の量を意味する。さらにまた、治療有効量という用語は、そのような量を受けていない対応する対象と比較して、疾患、障害若しくは副作用の、改善された治療、治癒、予防、又は寛解、或いは疾患又は障害の進行の速度の減少をもたらす、いかなる量も意味する。この用語は、その範囲内に、正常な生物学的機能を増強するために有効な量も含む。
【0141】
本明細書における他の化学用語は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (1985)及びthe Condensed Chemical Dictionary (1981)によって例示されるような、本技術分野における慣用的な使用法に従って使用される。
【0142】
薬剤として用いられる場合、本明細書に記載の化合物は、典型的には、医薬組成物の形態で投与される。このような組成物は、医薬分野において周知の手順を使用して調製され得、少なくとも1つの活性化合物を含む。
【0143】
一般に、化合物は、薬学的有効量で投与され得る。実際に投与される化合物の量は、典型的には、治療される状態、選択された投与経路、実際に投与される化合物、個々の患者の年齢、体重及び応答、患者の症状の重症度などを含む、関連する状況の観点から決定され得る。
【0144】
本明細書に記載の化合物及び組成物は、対象、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトに、例として、経口、局所、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、経鼻等を含むいかなる適切な経路によっても、疾患を治療及び/又は予防するために、投与され得る。対象となる送達の経路に応じて、化合物は、好ましくは、経口組成物、局所組成物又は注射可能組成物のいずれかとして製剤化され得る。
【0145】
経口投与のための医薬組成物は、原体の液体溶液若しくは懸濁液、又は原体の粉末の形態をとってもよい。しかしながら、より一般的には、このような組成物は、正確な投薬を容易にする単位剤形で存在し得る。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物のための単位投薬量として適切な、物理的に別々の単位を指し、それぞれの単位は、適切な医薬賦形剤の協力によって、望ましい治療効果をもたらすために計算された所定量の活性物質を含有する。典型的な単位剤形としては、液体組成物のあらかじめ充填され、前処理されたアンプル若しくはシリンジ、又は固体組成物の場合では丸剤、錠剤、カプセル剤などが挙げられる。
【0146】
経口投与のために適切な液体形態は、緩衝剤、懸濁化剤又は分散剤、着色料、香味料などとともに、適切な水性又は非水性媒体を含み得る。単独の形態は、例えば、以下の成分又は同様の性質の化合物のいずれかを含み得る:微結晶性セルロース、トラガカントガム若しくはゼラチンなどの結合剤;デンプン若しくはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、プリモゲル若しくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロース若しくはサッカリンなどの甘味剤;及び/又はペパーミント、サリチル酸メチル若しくはオレンジ香味料などの香味剤。
【0147】
局所組成物は、典型的には、一般に、約0.01~20重量%、好ましくは、約0.1~約10重量%、より好ましくは、約0.5~約15重量%の範囲の量で、活性成分を含有する、局所軟膏又はクリームとして製剤化され得る。軟膏として製剤化される場合、活性成分は、典型的には、パラフィン又は水混和性軟膏基剤のいずれかと組み合わされ得る。或いは、活性成分は、例えば、水中油型クリーム基剤を用いてクリームに製剤化され得る。このような局所製剤は、一般に、活性成分若しくは製剤の皮膚浸透性又は安定性を増強するための追加成分を含み得る。すべてのこのような公知の局所製剤及び成分が本明細書に含まれる。
【0148】
化合物はまた、経皮デバイスによって投与されてもよい。したがって、局所投与は、リザーバー若しくは多孔質膜型のいずれかのパッチ、又は固体マトリックスの種類を使用して達成されてもよい。
【0149】
注射可能組成物は、典型的には、注射可能無菌生理食塩水若しくはリン酸緩衝生理食塩水、又は本技術分野において公知の他の注射可能担体に基づいていてもよい。
【0150】
経口投与可能及び局所投与可能又は注射可能な組成物のための上記に記載の構成成分は、単なる代表である。他の物質及び処理技術などは、参照によって本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences 18th edition, 1990, Mack Publishing Company, Easton Pennsylvania, 18042のPart 8において説明されている。
【0151】
本発明の化合物はまた、持続放出形態で、又は持続放出薬物送達システムから投与されてもよい。代表的な持続放出物質の説明は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに組み込まれた物質において見られ得る。
【0152】
理解されるように、本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されているような、1又は2以上の薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤を含んでいてもよい。
【0153】
医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、液剤、注射可能性剤又は軟膏に製剤化されてもよい。しかしながら、本主題は、以下の医薬組成物に限定されない。例えば、さらに、決して限定されることを望まないが、式Aの化合物は、例えば、およそ5mg/mLの適した濃度に、緩衝化された無菌の生理食塩水の注射可能な水性媒体に溶解されてもよい。
【0154】
また、動物に対する薬学的活性薬剤の投与を簡略化し得るキットも本明細書において提供する。典型的なキットは、本明細書に記載の医薬組成物又は化合物の単位剤形を含み得る。1つの実施形態において、単位剤形は、容器(例えば、バイアル、パウチ、チューブ、シリンジなど)であってもよく、これは、本明細書に記載の医薬組成物を含有して無菌にするのに有利であり得る。キットは、状態を治療又は予防するための薬学的活性薬剤の使用を指示するラベル又は印刷された使用説明書をさらに含んでいてもよい。別の実施形態において、キットは、本明細書に記載の医薬組成物の単位剤形、及びこの医薬組成物を投与するための点滴器、シリンジ又は他のアプリケーションを含んでいてもよい。典型的には、キットの構成成分、例えば、単位剤形及び使用説明書は、適切な包装材料内に含有され得る。
【0155】
本明細書において提供される実験例において、sn-1に置換されたパルミチン酸(16:0)及びsn-2に置換されたドコサヘキサエン酸(22:6)を有する環状プラスメニルエタノールアミン(すなわち、PPI-1040)は、肢根型点状軟骨異形成症のPex7ハイポモルフ動物モデルにおいて、生物学的に利用可能なプラスマロゲン前駆体であることを示す。したがって、肢根型点状軟骨異形成症のPex7ハイポモルフ動物モデルに対する本明細書に記載の化合物の投与は、標的の内因性エタノールアミンプラスマロゲンの組織濃度を増加させた。これらの化合物は、プラスマロゲン生合成経路を迂回するために設計された。ペルオキシソーム生合成ステップ(図1を参照のこと)を少なくとも部分的に迂回するが、治療上の成功を制限しない、他のプラスマロゲン前駆体が試験されている。
【0156】
理論に縛られることを望まないが、本明細書に記載の化合物は、ペルオキシソームエーテル脂質生合成経路を迂回する能力を有し得、プラスマロゲンが欠乏する対象におけるプラスマロゲンレベルの回復を可能にし得ると考えられる。したがって、本明細書に記載の化合物は、限定されないが、肢根型点状軟骨異形成症及び/若しくはツェルウェーガースペクトラム障害などのペルオキシソーム生合成障害を含むプラスマロゲンのレベルの減少に関連する疾患を治療又は予防するために使用され得る。
【0157】
sn-1のビニルエーテル結合がインビボで比較的安定であり得ること;式Aの化合物の環状エタノールアミン頭部基がインビボで加水分解されて、内因性の標的のエタノールアミンプラスマロゲンを生じ得ること;並びにsn-2の脂肪酸置換基がインビボで脱アシル化及び他の脂肪酸に再アシル化を受けることが可能であり得ることも、本明細書において観察されている。
【0158】
本明細書に記載の式Aの化合物は、プラスマロゲン生合成能力が正常に機能しない動物モデルにおいて、エタノールアミンプラスマロゲン種に変換され得る。証拠は、このような化合物が、プラスマロゲン生合成能力が正常に機能する動物において見られるレベルに、又は上回るレベルに、プラスマロゲン生合成能力が正常に機能しない動物モデルにおける組織のレベルを効果的に上昇させることが可能であり得ることを示す。
【0159】
これらの結果は、プラスマロゲン前駆体に関する先行技術に対して、顕著な改善を提示する。1-アルキル,2-ヒドロキシグリセロール(キミルアルコール、バチルアルコール、サラキルアルコール)及び1-アルキル,2-アシルグリセロール(すなわち、PPI-1011)は、プラスマロゲン欠乏動物モデルにおいてプラスマロゲンレベルを中程度に増加させることを示したが、長期間及び高投薬量を含み;さらに、このような増加した時間及び投薬量にもかかわらず、組織中のレベルは、プラスマロゲン欠乏動物において、対照レベルにさえ上昇しなかった。
【0160】
理解されるように、方法、化合物、組成物及びキットは、それを必要とする対象におけるプラスマロゲンレベルを上昇させる使用のために、本明細書において提供される。実施例1~3において、マウスモデルは、PPI-1040で処置され、このマウスモデルは、本明細書に記載のプラスマロゲン欠乏症を患っている対象の例としての肢根型点状軟骨異形成症(RCDP)のモデルである。RCDPは一例であるが、プラスマロゲンレベルの低下は、アルツハイマー病(Goodenowe DB, Cook LL, Liu J, Lu Y, Jayasinghe DA, et al. (2007) Peripheral ethanolamine plasmalogen deficiency: a logical causative factor in Alzheimer's disease and dementia. J Lipid Res 48: 2485-2498、Han X, Holtzman DM, McKeel DW, Jr. (2001) Plasmalogen deficiency in early Alzheimer's disease subjects and in animal models: molecular characterization using electrospray ionization mass spectrometry. J Neurochem 77: 1168-1180、Kou J, Kovacs GG, Hoftberger R, Kulik W, Brodde A, et al. (2011) Peroxisomal alterations in Alzheimer's disease. Acta Neuropathol 122: 271-283、Wood PL, Mankidy R, Ritchie S, Heath D, Wood JA, et al. (2010) Circulating plasmalogen levels and Alzheimer Disease Assessment Scale-Cognitive scores in Alzheimer patients. J Psychiatry Neurosci 35: 59-62)、パーキンソン病(Fabelo N, Martin V, Santpere G, Marin R, Torrent L, et al. (2011) Severe alterations in lipid composition of frontal cortex lipid rafts from Parkinson's disease and incidental Parkinson's disease. Mol Med 17: 1107-1118、Dragonas C, Bertsch T, Sieber CC, Brosche T (2009) Plasmalogens as a marker of elevated systemic oxidative stress in Parkinson's disease. Clin Chem Lab Med 47: 894-897)、統合失調症(Kaddurah-Daouk R, McEvoy J, Baillie R, Zhu H, J KY, et al. (2012) Impaired plasmalogens in patients with schizophrenia. Psychiatry Res 198: 347-352)、ダウン症(Murphy EJ, Schapiro MB, Rapoport SI, Shetty HU (2000) Phospholipid composition and levels are altered in Down syndrome brain. Brain Res 867: 9-18)及びゴーシェ病(Moraitou M, Dimitriou E, Dekker N, Monopolis I, Aerts J, et al. (2014) Gaucher disease: plasmalogen levels in relation to primary lipid abnormalities and oxidative stress. Blood Cells Mol Dis 53: 30-33)を含む神経変性疾患などのいくつかの状態において報告されていることがさらに理解されるだろう。1又は2以上のこれらの疾患におけるプラスマロゲン欠乏は、疾患の発症及び進行に直接関与し得る。したがって、欠乏個体においてプラスマロゲンレベルを増大させる治療剤が、このような疾患を治療、予防及び/又は寛解させるために使用され得ると仮定される。長期増強(LTP)及び脳切片における可塑性を調査する、実施例4に記載されるものなどの、本明細書において行われた研究は、このような仮定を裏付ける。
【0161】
実際に、アルツハイマー病及びパーキンソン病のいくつかのモデルが作成されているが、しかしながら、これらは、多数の潜在的なオフターゲットの効果を有する神経毒を使用して、又は疾患の間に蓄積することが公知のタンパク質の発現を遺伝的に含むかのいずれかで、作られる。これは、プラスマロゲン欠乏症の表現型を再現しない神経変性疾患のために利用可能な動物モデルとしての主要な挑戦を提示し、これらがプラスマロゲン増大の実行可能性を試験するための適切なモデルになるのを妨げる。これは、中枢神経系におけるプラスマロゲン前駆体処置の機能的な帰結の明確な理解も妨げる。この問題点に対処するために、遺伝的なプラスマロゲン欠乏モデル系(Pex7ハイポモルフ/ヌルモデル)が、プラスマロゲンレベルを正常化する機能的な帰結を評価するための疾患特異的モデルの代わりに使用し得ることを本明細書において検討する。このように、RCDPと主に関連しているが、下記の実施例1~3に記載される実験の知見は、RCDPを越えて、プラスマロゲン欠乏症に関連する他の疾患又は状態に拡張され得る。例として、Pex7ハイポモルフ/ヌル動物モデルの活動亢進性表現型は、中枢神経系の正常な機能におけるプラスマロゲンの重要性を裏付ける。実施例3に記載されるように、このプラスマロゲン欠乏動物モデルを使用して、本明細書に記載の研究は、プラスマロゲンレベルの正常化が経口でのプラスマロゲン補充療法(PPI-1040)を使用して可能であるだけでなく、プラスマロゲンレベルの正常化がCNS系行動的表現型も正常化することを実証することが可能であった。このデータは、プラスマロゲンの増大が、(限定されるものではないが)アルツハイマー病及び/又はパーキンソン病などのプラスマロゲン欠乏が実証されている神経変性疾患における治療の選択肢を提示し得ることを裏付ける。
【0162】
ある特定の実施形態において、ニューロン間の長期増強(LTP)を向上させる方法であって、
ニューロンを、薬学的有効量の式A:
【0163】
【化33】
【0164】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物で処置することを含む、前記方法を本明細書において提供する。
【0165】
さらに別の実施形態において、それを必要とする対象における長期増強(LTP)を向上させる方法であって、
前記対象に、式A:
【0166】
【化34】
【0167】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、前記方法を本明細書において提供する。
【0168】
さらに別の実施形態において、それを必要とする対象におけるアルツハイマー病若しくはパーキンソン病を治療又は予防する方法であって、
前記対象に、式A:
【0169】
【化35】
【0170】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、前記方法を本明細書において提供する。
【0171】
また別の実施形態において、それを必要とする対象におけるプラスマロゲン欠乏神経変性疾患を治療又は予防する方法であって、
前記対象に、式A:
【0172】
【化36】
【0173】
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、飽和、不飽和又はポリ不飽和の、置換されていてもよい炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの環状プラスメニルエタノールアミン又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む、前記方法を本明細書において提供する。
【0174】
ある特定の実施形態において、プラスマロゲン欠乏神経変性疾患は、アルツハイマー病又はパーキンソン病であってもよい。
【0175】
以下の実施例は、当業者を対象とした例証の目的のために提供され、決して限定することを意図するものではない。
[実施例]
動物研究
【実施例1】
【0176】
プラスマロゲン前駆体の2週間の比較
Pex7ホモ接合性ハイポモルフ動物(Pex7neo/neo)を肢根型点状軟骨異形成症(RCDP)のモデルとして使用した。マウスに、PPI-1011又はPPI-1040のいずれかを、それぞれ100mg/Kg及び89.7mg/Kgの等モル濃度で投薬した。PPI-1011は、12.5mg/mLの濃度でNeobee M-5中で製剤化し、最初の処置日まで-20℃で保管し、その時点の後、残った製剤を4℃で保管した。強制経口容積を、100mg/kg用量を保証するように、マウスの体重によって調整した。PPI-1040は、使用直前まで、アルゴンガス下、ジクロロメタンでの溶液で、密封されたアンプル中で保管した。処置の時に、アンプルを開封し、ジクロロメタンを窒素ガス下で10分間蒸留去した。次いで、Neobee M-5を添加し、溶液をボルテックス(vortex)して、22.4mg/mLの製剤を作成した。動物に、それぞれの動物に対して89.7mg/Kg用量を保証するように、体重によって調整した用量で、腹腔内注射を介して投薬した。動物を9回の処置(1週目は月曜日から金曜日、2週目は月曜日から木曜日)の24時間後、屠殺した。血液試料をEDTAチューブに収集し、次いで、臨床の遠心分離で遠沈した。血漿試料を分析のために解凍するまで-80℃で保管した。組織試料を採取し、液体窒素中で急速凍結させ、次いで、-80℃で保管した。すべての組織試料を、液体窒素を使用してホモジナイズし、微粉末を作成した。
【0177】
20μLの血漿の一定分量を分析した一方、組織は、分析前に、帯電防止ポリプロピレン使い捨てミリグラムスクープで等分した。水(200μL)を添加し、試料を、600μLの酢酸エチルの添加前に、30分間氷浴で超音波処理した。試料を2000rpmで15分間混合し、続いて、3500rpmで10分間遠心分離した。組織試料を、標識化内部標準[13C-PlsEtn(C37 1374NOP)及び13C-PtdEtn(C24 131974NOP)]を含有する酢酸エチルに希釈した(1:4)。水(80μL)を添加し、試料を再び2000rpmで15分間撹拌し、続いて、3500rpmで2分間遠心分離した。ハイスループット分析法は、イオン対についての1つの親/断片の推移の複数の反応モニタリングに基づき、液体クロマトグラフィー-質量分析を使用して行った。
【0178】
図2に示されるように、PPI-1040による処置は、血漿中の標的プラスマロゲン(16:0/22:6)のレベルを、上記の対照の2倍のレベルに増加させた。この増大は、等モル用量のPPI-1011による処置から観察される増加を抑制した。加えて、両方の前駆体は、脱アシル化/再アシル化反応によるsn-2でのリモデリングを受け、sn-1にパルミチン酸置換基を有する多数のプラスマロゲン種の増大をもたらし(図3)、しかしながら、PPI-1040のみが、対照レベルに総16:0プラスマロゲンを増大させた(図2)。
【0179】
肝臓組織の分析(図4)は、PPI-1040処置が、処置2週間内に、プラスマロゲン欠乏動物における標的プラスマロゲンレベルを対照を超えたレベルに増大させたことを明確に例証した。血漿の結果に反して、PPI-1011処置は、対照レベルにレベルを増大させることは不可能であった。さらに、PPI-1040は、肝臓における16:0プラスマロゲンのプールを対照レベルに増大させたが、このプールにおける増加は、PPI-1011処置の後に観察されなかった。
【0180】
これらの結果は、この条件下で、試験されたPPI-1040が、マウスにおいて生物学的に利用可能であり、内因性エタノールアミンプラスマロゲンにインビボで変換されることを示す。これらは、プラスマロゲン欠乏動物の組織におけるプラスマロゲンレベルを増大させるPPI-1040の能力も実証する。
【実施例2】
【0181】
PPI-1040による亜慢性投薬
Pex7ホモ接合性ハイポモルフ動物(Pex7neo/neo)を、9週間の亜慢性投薬の後、欠乏系におけるプラスマロゲンレベルを増大させるPPI-1040の能力をさらに試験するための肢根型点状軟骨異形成症のモデルとして使用した。PPI-1040は、使用直前まで、アルゴンガス下、ジクロロメタンでの溶液で、密封されたアンプル中で保管した。処置の時に、アンプルを開封し、ジクロロメタンを窒素ガス下で10分間蒸留去した。次いで、Neobee M-5を添加し、溶液をボルテックスして、22.4mg/mLの製剤を作成した。動物に、それぞれの動物に対して89.7mg/Kg用量を保証するように、体重によって調整した用量で、腹腔内注射を介して投薬した。動物に週3回用量を投与する9週間の処置(月曜日、水曜日及び金曜日)の後、屠殺した。血液試料をEDTAチューブに収集し、次いで、臨床の遠心分離で遠沈した。血漿試料を分析のために解凍するまで-80℃で保管した。組織試料を採取し、液体窒素中で急速凍結させ、次いで、-80℃で保管した。すべての組織試料を、液体窒素を使用してホモジナイズし、微粉末を作成した。抽出及びLC-MS/MSによるプラスマロゲンの分析を上記に記載のようにして行った。
【0182】
結果は、プラスマロゲン欠乏症のモデルにおける組織及び血漿のプラスマロゲンレベルを増大させるPPI-1040の能力を実証した。血清中の標的の16:0/22:6エタノールアミンプラスマロゲンのプラスマロゲンレベルは、対照よりも有意に高いレベルに上昇した(図5)。加えて、16:0プラスマロゲンのプールも対照を有意に上回るレベルに上昇した。
【0183】
標的のプラスマロゲン(16:0/22:6)の肝臓レベル及び総16:0のプラスマロゲンのプールの両方とも、9週間のPPI-1040処置の後、対照を上回るレベルに上昇した(図6)。
【0184】
標的のプラスマロゲン(16:0/22:6)の肺レベル及び総16:0のプラスマロゲンのプールの両方とも、9週間のPPI-1040処置の後、対照レベルに上昇した(図7)。
【0185】
これらの結果は、試験された条件下で肢根型点状軟骨異形成症の動物モデルの組織内のプラスマロゲンレベルを効果的に増大させるPPI-1040の能力を示す。
【0186】
プラスマロゲン欠乏動物モデルにおける肺プラスマロゲンレベルを増大させる能力は、ある特定の実施形態において、肺機能が、頻発する呼吸器感染又は慢性反応性気道疾患のいずれかによる肢根型点状軟骨異形成症に罹っている患者において負の影響を受けるという観察に起因して、特に興味深くあり得る(White AL, Modaff P, Holland-Morris F, Pauli RM (2003) Natural history of rhizomelic chondrodysplasia punctata. Am J Med Genet A 118A: 332-342、Braverman NE, Moser AE, Steinberg SJ (2012) Rhizomelic chondrodysplasia punctata type 1. In: Pagon RA, Adam MP, Bird TD, R. DC, Fong CT, editors. GeneReviews. University of Washington, Seattle)。実際に、RCDPの患者の主な死亡(80%)は、呼吸困難に続発する(Farooqui AA, Horrocks LA (2001) Plasmalogens: workhorse lipids of membranes in normal and injured neurons and glia. Neuroscientist 7: 232-245)。
【0187】
データの統計解析をMicrosoft(商標) Office Excel 2010を使用して行った。スチューデントのt検定を使用して、処置及び対照の間の差異を解析した。
【実施例3】
【0188】
RCDP1のPex7ハイポモルフマウスモデルにおける、PPI-1040の経口での生物学的利用率、並びにプラスマロゲンレベルの回復及び活動亢進の低下
本明細書において議論するように、肢根型点状軟骨異形成症(RCDP)は、プラスマロゲン生合成に必須のペルオキシソーム遺伝子の変異によって引き起こされる壊滅的でまれな遺伝性障害である。プラスマロゲンは、sn-1位の脂肪アルコールに連結したビニルエーテルによって特徴付けられるグリセロリン脂質のクラスである。ビニルエーテル結合は、それらが、小胞輸送、膜タンパク質機能及びフリーラジカルスカベンジングなどの膜媒介機能を正常化するために絶対的であるように、プラスマロゲンに特有の生理化学的性質を与える。以下の研究において、環状ホスホエタノールアミンのビニルエーテルプラスマロゲン前駆体中間体であるPPI-1040の経口での生物学的利用率を研究して、RCDP1のPex7ハイポモルフモデルにおいてプラスマロゲンレベルを増大させ、行動的表現型を正常化するPPI-1040の能力を調査した。
【0189】
下記で詳細に議論するように、PPI-1040の経口での生物学的利用率を、分子のC13標識化バージョンでの対照動物の処置の後に確認した。加えて、PPI-1040は、血漿中のプラスマロゲンレベルを正常化し、Pex7ハイポモルフマウスの肝臓、小腸及び骨格筋を含む末梢器官において、さまざまな程度に標的プラスマロゲンレベルを増加させた。増大は、皮質脳組織では観察されなかったが、PPI-1040で処置されたマウスは、モデルの典型的な活動亢進性表現型において有意な改善を示し(p<0.05)、行動及び血漿プラスマロゲンレベルの間の強い相関が観察された(R2=0.37)。
【0190】
本研究は、PPI-1040が、RCDPに罹っている個体を含む、欠乏個体におけるプラスマロゲンレベルを増大させるための興味深い治療の選択肢を提示し得ることを示す。処置の後に観察された行動の正常化は、これらの研究において、プラスマロゲンレベルを正常化することで、インビボで機能改善をもたらし得ることを裏付ける。
【0191】
RCDPは、有病率が100,000人に1人未満と推定される遺伝性障害のクラスである(Stoll C, Dott B, Roth MP, Alembik Y (1989) Birth prevalence rates of skeletal dysplasias. Clin Genet 35: 88-92)。RCDPは、骨格形成異常、先天性白内障、並びに深刻な成長及び発育の遅延によって臨床的に特徴付けられる。骨格形成異常は、関節の可動性の制限をもたらす、長骨の基部の短縮(近節短縮)及び成長板での異常で、速すぎるか又は遅延したミネラル化(点状軟骨異形成症)を含む。劇的な平均余命の低下は、RCDPの患者にとって一般的であり、しかしながら、生存期間は、症状の重症度によって大きく異なる。人生の最初の月を過ぎて生存した個体のうち、50%のみが5歳を超えて生存し、大半が青年期の前に疾患に倒れる。これらの死の大部分(80%)は、呼吸器の問題に続発するとして報告されている(White AL, Modaff P, Holland-Morris F, Pauli RM (2003) Natural history of rhizomelic chondrodysplasia punctata. Am J Med Genet A 118A: 332-342)。エタノールアミンプラスマロゲン(PlsEtn)がないか、又は大幅に減少したレベルは、すべてのRCDPの症例の特徴である。RCDPの5つの報告されているサブタイプがあり、すべてが、識別不能な臨床的特徴を有しているが、異なる遺伝子の変異から生じる;Pex7(RCDP1)(Braverman N, Steel G, Obie C, Moser A, Moser H, et al. (1997) Human PEX7 encodes the peroxisomal PTS2 receptor and is responsible for rhizomelic chondrodysplasia punctata. Nat Genet 15: 369-376、$13、Purdue PE, Zhang JW, Skoneczny M, Lazarow PB (1997) Rhizomelic chondrodysplasia punctata is caused by deficiency of human PEX7, a homologue of the yeast PTS2 receptor. Nat Genet 15: 381-384)、GNPAT(RCDP2)(Wanders RJ, Schumacher H, Heikoop J, Schutgens RB, Tager JM (1992) Human dihydroxyacetonephosphate acyltransferase deficiency: a new peroxisomal disorder. J Inherit Metab Dis 15: 389-391)、AGPS(RCDP3)(Wanders RJ, Dekker C, Hovarth VA, Schutgens RB, Tager JM, et al. (1994) Human alkyldihydroxyacetonephosphate synthase deficiency: a new peroxisomal disorder. J Inherit Metab Dis 17: 315-318)、FAR1(RCDP4)(Buchert, R., et al. (2014). ''A peroxisomal disorder of severe intellectual disability, epilepsy, and cataracts due to fatty acyl-CoA reductase 1 deficiency.'' Am J Hum Genet 95(5): 602-610)及びPex5(RCDP5)(Baroy, T., et al. (2015). ''A novel type of rhizomelic chondrodysplasia punctata, RCDP5, is caused by loss of the PEX5 long isoform.'' Hum Mol Genet 24(20): 5845-5854)。GNPAT及びAGPSはプラスマロゲンの生合成に関与する酵素であり、FAR1はプラスマロゲン合成の脂肪アルコール前駆体の生合成に関与し、Pex7及びPex5はペルオキシソームの生合成に関与する。5種類のRCDPは、識別不能の表現型を有し、すべての場合において、表現型の重症度及び残留プラスマロゲンレベルの間に直接の相関がある(Braverman N, Chen L, Lin P, Obie C, Steel G, et al. (2002) Mutation analysis of PEX7 in 60 probands with rhizomelic chondrodysplasia punctata and functional correlations of genotype with phenotype. Hum Mutat 20: 284-297、Itzkovitz B, Jiralerspong S, Nimmo G, Loscalzo M, Horovitz DD, et al. (2012) Functional characterization of novel mutations in GNPAT and AGPS, causing rhizomelic chondrodysplasia punctata (RCDP) types 2 and 3. Hum Mutat 33: 189-197)。
【0192】
プラスマロゲンは、sn-1位のビニルエーテル結合によって特徴付けられるグリセロリン脂質のクラスである。生合成は、小胞体(ER)内でビニルエーテルに還元されるエーテル結合を作る、一連の非冗長性ペルオキシソーム特異的酵素によって、ペルオキシソーム中で始まる。プラスマロゲンは、それらが小胞輸送、膜タンパク質活性において役割を果たし、且つ抗酸化性を有することが示されている、脂質膜の必須の構成成分である((Braverman NE, Moser AB (2012) Functions of plasmalogen lipids in health and disease. Biochim Biophys Acta 1822: 1442-1452)に概説)。プラスマロゲンレベルの低下はまた、アルツハイマー病(Goodenowe DB, Cook LL, Liu J, Lu Y, Jayasinghe DA, et al. (2007) Peripheral ethanolamine plasmalogen deficiency: a logical causative factor in Alzheimer's disease and dementia. J Lipid Res 48: 2485-2498、Han X, Holtzman DM, McKeel DW, Jr. (2001) Plasmalogen deficiency in early Alzheimer's disease subjects and in animal models: molecular characterization using electrospray ionization mass spectrometry. J Neurochem 77: 1168-1180、Kou J, Kovacs GG, Hoftberger R, Kulik W, Brodde A, et al. (2011) Peroxisomal alterations in Alzheimer's disease. Acta Neuropathol 122: 271-283、Wood PL, Mankidy R, Ritchie S, Heath D, Wood JA, et al. (2010) Circulating plasmalogen levels and Alzheimer Disease Assessment Scale-Cognitive scores in Alzheimer patients. J Psychiatry Neurosci 35: 59-62)、パーキンソン病(Fabelo N, Martin V, Santpere G, Marin R, Torrent L, et al. (2011) Severe alterations in lipid composition of frontal cortex lipid rafts from Parkinson's disease and incidental Parkinson's disease. Mol Med 17: 1107-1118、Dragonas C, Bertsch T, Sieber CC, Brosche T (2009) Plasmalogens as a marker of elevated systemic oxidative stress in Parkinson's disease. Clin Chem Lab Med 47: 894-897)、統合失調症(Kaddurah-Daouk R, McEvoy J, Baillie R, Zhu H, J KY, et al. (2012) Impaired plasmalogens in patients with schizophrenia. Psychiatry Res 198: 347-352)、ダウン症(Murphy EJ, Schapiro MB, Rapoport SI, Shetty HU (2000) Phospholipid composition and levels are altered in Down syndrome brain. Brain Res 867: 9-18)及びゴーシェ病(Moraitou M, Dimitriou E, Dekker N, Monopolis I, Aerts J, et al. (2014) Gaucher disease: plasmalogen levels in relation to primary lipid abnormalities and oxidative stress. Blood Cells Mol Dis 53: 30-33)を含む他の神経変性疾患においても報告されている。
【0193】
いくつかのPex7変異マウスモデルが、プラスマロゲン欠乏症の効果を特徴付け、RCDPのための可能性がある治療剤を試験するために開発されている(Brites P, Motley AM, Gressens P, Mooyer PA, Ploegaert I, et al. (2003) Impaired neuronal migration and endochondral ossification in Pex7 knockout mice: a model for rhizomelic chondrodysplasia punctata. Hum Mol Genet 12: 2255-2267、Braverman N, Zhang R, Chen L, Nimmo G, Scheper S, et al. (2010) A Pex7 hypomorphic mouse model for plasmalogen deficiency affecting the lens and skeleton. Mol Genet Metab 99: 408-416、Brites P, Ferreira AS, da Silva TF, Sousa VF, Malheiro AR, et al. (2011) Alkyl-glycerol rescues plasmalogen levels and pathology of ether-phospholipid deficient mice. PLoS One 6: e28539、Wood PL, Khan MA, Smith T, Ehrmantraut G, Jin W, et al. (2011) In vitro and in vivo plasmalogen replacement evaluations in rhizomelic chrondrodysplasia punctata and Pelizaeus-Merzbacher disease using PPI-1011, an ether lipid plasmalogen precursor. Lipids Health Dis 10: 182)。成長の減少及び活性の増加をもたらす、プラスマロゲン合成の重大な機能障害を示す、最近作成されたPex7ハイポモルフ/ヌルマウスを用いた。
【0194】
バチルアルコール及びアルキル-グリセロールを含むプラスマロゲン前駆体であるPPI-1011は、中程度の結果を有する他のPex7変異動物において試験されている。バチルアルコール(1-O-オクタデシル-racグリセロール)は、C18:0アルキルグリセロールであり、エーテル結合の存在が、プラスマロゲン合成のために必要なペルオキシソーム特異的代謝反応を迂回することを可能にする。50mg/kg/日で2カ月間のPex7ハイポモルフ動物の処置は、赤血球中のプラスマロゲン含有量の部分的な増加をもたらしたが、臨床の改善とは関連しなかった(Braverman N, Zhang R, Chen L, Nimmo G, Scheper S, et al. (2010) A Pex7 hypomorphic mouse model for plasmalogen deficiency affecting the lens and skeleton. Mol Genet Metab 99: 408-416)。別の研究は、非常に高用量のバチルアルコール(3000mg/kgを超える)でPex7ヌル動物を補充し、赤血球及び末梢組織におけるプラスマロゲンレベルの増大を認めたが、脳及び神経系組織における増加は非常に限られていた(Brites P, Ferreira AS, da Silva TF, Sousa VF, Malheiro AR, et al. (2011) Alkyl-glycerol rescues plasmalogen levels and pathology of ether-phospholipid deficient mice. PLoS One 6: e28539)。これらの研究は、プラスマロゲンレベルを上昇させる治療的介入の能力を実証しているが、これらの変化を誘導するために必要な高用量及び長い処置の経過に起因する困難さに直面した。
【0195】
上記で議論したように、PPI-1011は、sn-1、sn-2及びsn-3のそれぞれが、パルミチン酸、DHA及びリポ酸で構成される、アルキル-ジアシルプラスマロゲン前駆体である(図8)。これは、経口的に生物学的に利用可能であり、健康な動物における血漿及び組織のPlsEtnレベルを増大させる能力を有することが示されている(Wood PL, Khan MA, Smith T, Ehrmantraut G, Jin W, et al. (2011) In vitro and in vivo plasmalogen replacement evaluations in rhizomelic chrondrodysplasia punctata and Pelizaeus-Merzbacher disease using PPI-1011, an ether lipid plasmalogen precursor. Lipids Health Dis 10: 182、Wood PL, Smith T, Lane N, Khan MA, Ehrmantraut G, et al. (2011) Oral bioavailability of the ether lipid plasmalogen precursor, PPI-1011, in the rabbit: a new therapeutic strategy for Alzheimer's disease. Lipids Health Dis 10: 227)。PPI-1011の13C標識化バージョンで処置されたPex7ハイポモルフマウスは、標識化されたプラスマロゲンが、末梢組織、並びに新皮質及び眼に組み込まれたことを実証した(Wood PL, Khan MA, Smith T, Ehrmantraut G, Jin W, et al. (2011) In vitro and in vivo plasmalogen replacement evaluations in rhizomelic chrondrodysplasia punctata and Pelizaeus-Merzbacher disease using PPI-1011, an ether lipid plasmalogen precursor. Lipids Health Dis 10: 182)。神経系組織への組み込みは低かったが、末梢組織中よりもプラスマロゲンの代謝回転速度が遅いことを示唆した。これらの結果は有望であったが、組み込みは望まれるよりも低かった。背景のバチルアルコールの結果と総合したこのデータは、これらの経口の前駆体をインタクトなプラスマロゲン種に効果的に代謝するRCDP動物の能力による潜在的な問題点を示唆している。ERの構造及び機能に対する深刻なプラスマロゲン欠乏症の効果が報告されており(Thai TP, Rodemer C, Jauch A, Hunziker A, Moser A, et al. (2001) Impaired membrane traffic in defective ether lipid biosynthesis. Hum Mol Genet 10: 127-136、Brodde A, Teigler A, Brugger B, Lehmann WD, Wieland F, et al. (2012) Impaired neurotransmission in ether lipid-deficient nerve terminals. Hum Mol Genet 21: 2713-2724)、これは、これらの前駆体を最終のプラスマロゲン種へ変換することを必要とする。
【0196】
他方で、PPI-1040は、インビボでの酵素代謝のための要件を打ち消すように設計された直接のプラスマロゲン前駆体である。PPI-1040は、sn-1にビニルエーテル基、及びsn-3の構成物質として環状ホスホエタノールアミン基を含有する(図8)。循環の間又は胃中などの水性環境に曝露されると、環構造が開環し、内因性の種と識別不能の完全にインタクトな16:0/22:6エタノールアミンプラスマロゲンが生じる。以下の研究は、安定性、経口での生物学的利用率及びPPI-1040による処置の機能的効果を実証する。
【0197】
方法
薬物:
PPI-1011、PPI-1040及びPPI-1050を、0.1%のチオグリセロール(99%、Sigma社)を有するNeobee M-5(Stepan Liquid Nutrition)中、10mg/mL又は25mg/kg(PPI-1050)の濃度で製剤化した。PPI-1011は-4℃で保管したが、PPI-1040及びPPI-1050は、安定性の低下に起因して-80℃で保管した。PPI-1050は、図8において「」で示される位置が13Cで標識化された、PPI-1040の13C標識化バージョンである。薬物の製剤は、処置の前に室温に平衡化させた。強制経口容積を、示されたmg/kg用量を保証するように、マウスの体重によって調整した。
【0198】
インビトロの酸安定性:
胃の酸性の性質に耐えるPPI-1040中のビニルエーテルの能力を試験するために、化合物を幅広い酸の強度(pH1~5)に曝露した。ビニル結合の安定性を、(上記に示すようにして製剤化した)PPI-1040を1~5のpH範囲に曝露することによって試験した。このpHの溶液は、pH4に達するまで、HPLCグレードの水中の1MのHCLの10倍の連続希釈によって作製した。純粋なHPLCグレードの水を対照溶液として使用した。最終希釈は、20μlの一定分量を200μlのPPI-1040製剤に添加することによって完了し、1~5のpH範囲をもたらした(それぞれの条件を三反復で試験した)。混合物を室温で1時間ボルテックスした。1時間のインキュベーションの後、それぞれの溶液を酢酸エチルに再懸濁させて、10μl/mlの溶液を得て、これを、Agilent 1100 HPLCポンプ及びオートサンプラーと連結されたAPI4000(商標)質量分析計(Applied Biosystems社)におけるフローインジェクションタンデム質量分析(FI-MS/MS)を使用して分析した。
【0199】
経口での生物学的利用率の研究:
PPI-1050と呼ばれるPPI-1040の13C標識化バージョンを作成し、腸の境界を通過し、血流にインタクトで入る、インタクトな化合物の能力を調べた。PPI-1050は3個のグリセロール炭素及びsn-1パルミチン酸の3個の炭素に炭素-13標識を含有する。野生型C57/Bl6マウスを、100mg/kgの(0.1%のチオグリセロールを有するNeobee-M5中で製剤化された)PPI-1050又は媒体の単回経口投与で処置した。次いで、動物を屠殺し、血液を、処置の1、3及び6時間後に心穿刺によって採取した(n=3)。次いで、血清を、グリセロ脂質への標識の組み込みの存在について分析した。血清の抽出を、1.4mlのThermoマトリックスチューブで20μlの一定分量に対して行った。脂質を、それぞれの血清試料にHPLCグレードの水(50μl)及び酢酸エチル(500μl)を添加することによって抽出し、次いで、1750rpmで1時間混合し、続いて、相分離のために3500rpmで2分間遠心分離した。酢酸エチル層の100μlの一定分量を、Agilent 1100 HPLCポンプ及びオートサンプラーと連結されたAPI4000(商標)質量分析計(Applied Biosystems社)におけるFI-MS/MSを使用して分析した。それぞれの推移を、試料あたり2分の総捕捉時間で50ミリ秒間スキャンした。600μL/分の流速で、80:15:5の酢酸エチル:メタノール:水の比を、移動相として使用した。親のPlsEtnの質量を、定量的MS/MSの推移ペアを得るために、対応する娘イオン(sn2の脂肪酸の喪失)と一緒に予測される親における13C標識のインタクトな数を組み込むことによって決定した。吸収の際にエタノールアミン基がインタクトなままであることを確認するために、我々は、ポジティブモードでFI-MS/MS分析を使用して、標識化アルキル-アシル及びビニル-アシルグリセロールの存在について、血清も分析した。すべての測定された推移を下記の表1に見ることができる。
【0200】
【表1】
【0201】
Pex7ハイポモルフ/ヌル動物の処置:
Pex7ハイポモルフ/ヌルモデルは、混合バックグラウンド(C57BL/6NCrl及び129S6/SvEvTac)におけるハイポモルフ(B6;129S6-Pex7tm2.3Brav/s9)マウスモデルである。Pex7ハイポモルフ/ヌルにおける発現低下アレルは、イントロン2、及びエクソン3周辺のloxPサイトへの逆neoカセットを挿入することによって作成した。Pex7ヌルアレルは、(B6.C-Tg(cmv-cre)1Cgn/J)マウスを使用して作成した。Pex7ハイポモルフ/ヌルマウスモデルは、90%の生存率、0.016~0.257%の野生型Pex7のmRNAレベル及び20~30%のプラスマロゲンレベルのPex7ハイポモルフ/ヌルマウス(3~4カ月)を有しており、野生型動物の雄及び雌を処置及び行動試験に含めた。Pex7ハイポモルフ/ヌルマウスを、ベースラインのオープンフィールド試験の後、無作為に、PPI-1040、PPI-1011及び媒体対照の3つの処置群に割り当てた(群あたりn=6マウス)。50mg/kgのPPI-1011又はPPI-1040を、週5日(月曜日~金曜日)、4週間、強制経口によって与えた。処置期間の間、動物は、毎週体重を測定し、苦痛の兆候について観察した。オープンフィールド試験を処置の終わりに行った。選択バイアスを回避するために、データ解析を研究の終わりにのみ行った。動物を、最終投薬の後、24時間後に屠殺した。組織をLC/MSMS分析のために採取した。
【0202】
オープンフィールド試験:
オープンフィールド試験は、正常な環境に応答して、マウスの一般活動性、探索行動及び不安様行動を調べるために使用される行動試験である。動物を、40×40×40cmの寸法の特注の正方形の灰色のアクリレートボックスの内側に置き、オーバーヘッドカメラ(カメラモデル)によって記録しながら、5分間自由に動き回らせた。映像を、総移動距離(メートル)及び活動性(秒での移動度)時間について、自動追跡システム(Any-maze Video Tracking Software、Stoelting Co社、Wood Dale、IL、USA)によって解析した。総移動距離は、試験の間に動物が移動した総距離であり、活動性は、動物が試験の間に活動的であった時間の量を測定する。
【0203】
Pex7ハイポモルフ組織及び血漿試料におけるプラスマロゲン及び代謝物の定量化:
液体窒素中に沈めることによって凍結させた組織試料を、Covaris Cryoprepを使用してホモジナイズして、微粉末を得た。次いで、粉末を、帯電防止ポリプロピレン使い捨てミリグラムスクープ(TWD Tradewinds社)を使用して等分し、1.4mlのThermoマトリックスチューブあたり4~6mgの組織とした。重量を記録し、代謝物レベルを、組織1mgあたりで正規化した。HPLCグレードの水(50μl)をそれぞれのチューブに添加し、試料を液体窒素中で瞬間凍結し、次いで、抽出まで-80℃で保管した。抽出の日に、組織試料を室温に解凍し、氷浴中で15分間超音波処理した後、2000rpmで5分間混合し、次いで、600μLの酢酸エチルを添加した。脂質を、1750rpmで1時間混合し、続いて3500rpmでの10分間の遠心分離によって、酢酸エチルに抽出して、透明な酢酸エチル層を得た。組織の脂質抽出物を、標識化内部標準[13C-PlsEtn(C37 1374NOP)]を含有する酢酸エチルストックに希釈した(脳領域を1:10で希釈、末梢組織を1:5で希釈)。水(40μL)を希釈した抽出物に添加し、試料を1500rpmで1時間撹拌し、続いて、3500rpmで2分間遠心分離した。
【0204】
血漿の抽出を、1.4mlのThermoマトリックスチューブ中の20μlの一定分量に対して行った。脂質を、それぞれの血漿試料にHPLCグレードの水(50μl)、及び標識化内部標準[13C-PlsEtn(C37 1374NOP)]を0.2μg/mLで含有する酢酸エチル(500μl)を添加することによって抽出し、次いで、1750rpmで1時間混合し、続いて、相分離のために3500rpmで2分間遠心分離した。
【0205】
100μLの一定分量の酢酸エチル層を、Agilent 1100 HPLCポンプ及びオートサンプラーと連結されたAPI4000(商標)質量分析計(Applied Biosystems社)におけるFI-MS/MSを使用して分析した。それぞれの推移を、試料あたり2分の総捕捉時間で50ミリ秒間スキャンした。600μL/分の流速で、80:15:5の酢酸エチル:メタノール:水の比を、移動相として使用した。使用したすべての標準及び安定同位体は、95%を超える純度であり、Med-Life Discoveries LP社によって製造された。上記で使用したすべての溶媒はHPLCグレードであった。すべての試料は、三反復で分析して、機器の変動から生じるいかなる変動も管理した。それぞれの被験物質についての安定同位体比を、すべての組織試料及び血漿試料について計算した(表2)。
【0206】
【表2】
【0207】
統計解析:
データは平均±SDで表す。チューキーの事後検定を使用する一元配置分散分析(ANOVA)を使用して、プラスマロゲンレベル及び行動データを解析した。基本の線形回帰を使用して、プラスマロゲンレベルと行動スコアを比較した。0.05未満のp値を、統計学的に有意であるとみなした。
【0208】
結果
PPI-1040の酸安定性:
プラスマロゲンレベルを増大させるための経口療法としてPPI-1040をさらに調査するために、酸性条件下でのビニルエーテル結合の酸安定性を研究した。PPI-1040を、水性条件(対照)及び酸性条件(pH1~5)の両方に1時間曝露して、胃の環境をシミュレーションした。PPI-1040のsn-3位の環化されたエタノールアミン基は、環化型のレベルはインキュベーション後にすべての試料においてほとんど検出されず、水性環境又は酸性環境に曝露されると容易に開環することを示した(図9A)。PPI-1040の開環バージョンは、内因性のPlsEtn16:0/22:6として特定され、pH2で観察され、pH1での非常に少量が検出されるわずかな低下で、pH3まで安定であり、低pHでのビニル結合の分解を示唆している(図9B)。sn-1のビニルエーテル結合の切断を受けたPPI-1040の開環のレベルを分析することによって、制御条件及びpH3~5の下で、sn-1基の最小の喪失が存在したことを確認した。しかしながら、ビニル基の切断は、pH2で開始が広まり、pH1まで、分子の全体的な分解があるように見える(図9C)。
【0209】
13C標識化PPI-1040の取り込み:
経口での生物学的利用率を、PPI-1050と呼ばれるPPI-1040の13C標識化バージョンを野生型マウスに投薬し、インタクトな標識化合物について血清を調べることによって、研究した。加えて、薬物の代謝を、置換されたsn-2構成物を有するPlsEtnを測定することによって追跡した。インタクトな閉環を有するPPI-1040は、いかなる試料中でも検出可能ではなく(データは示さない)、摂取の際に、環が自発的に開環しないことを示す。明確な時間依存性の増加が、標的の13標識化PlsEtn16:0/22:6において観察された(図9A)。sn-2構成物のリモデリングが直ぐに生じることが報告され、したがって、sn-1に16:0を有する13標識化PlsEtn、及び5つの最も一般的に生じるsn-2構成物が測定された(図9B)。すべての種は、標的のPlsEtnとともに見られる時間依存性の増加を反映した。ビニルエーテル結合が、加水分解されないか、又はsn-1での再配置に付されないことを検証するために、同じPlsEtn種のレベルを測定したが、ビニルエーテルが壊れ、且つ標識化されたままのsn-1のパルミチン若しくはグリセロールのみか、両方ともそうではない場合に予測される13標識化物であった。媒体対照に対して、いかなる時点でもいかなる種の増加も観察されず、ビニルエーテル結合がインタクトなままで残っていることを確認した。最後に、sn-3のホスホエタノールアミン基が吸収の前に除去されなかったことを確認するために、ビニル-アシル及びアルキル-アシルの16:0/22:6の存在を試験し、このいずれもが対照に対して上昇しなかった。これらのデータの組み合わせは、PPI-1040が経口で生物学的に利用可能であり、腸の内壁をインタクトで通過し、予測されるsn-2の再配置のみが生じたことを例証する。
【0210】
PPI-1040で処置されたPex7ハイポモルフ/ヌルマウスにおけるプラスマロゲンレベルの増大:
媒体、PPI-1011又はPPI-1040の経口投与の4週間後、血漿及び組織レベルを、プラスマロゲンレベルについて試験した。Pex7ハイポモルフ/ヌル動物は、測定されたすべてのプラスマロゲンの有意に減少したレベルを有し、平均で、野生型対照レベルのおよそ25%であった。50mg/kgのPPI-1011での処置は、測定されたいかなるプラスマロゲン種の有意な増大をもたらさなかった。しかしながら、PPI-1040の処置は、プラスマロゲンレベルを増大させることが可能であった。標的の16:0/22:6プラスマロゲンのレベルを正常化することに加えて、sn-2位での再配置は、16:0/22:4を除くすべての測定された16:0プラスマロゲンにおける増加を生じ、これは、少ない割合の総16:0プラスマロゲンのプールを表す(図10)。sn-1に18:0及び18:1を含有するプラスマロゲンも測定したが、予想されたように、これらの種のいずれにおいても増大は観察されなかった。加えて、試料を、ホスホエタノールアミン基が除去された場合に増加すると予測される、ビニル-アシル及びアルキル-アシルグリセロールのレベルについて分析した。アルキル-アシル又はビニル-アシルグリセロール種は、処置された動物において増加しなかった。
【0211】
さまざまな末梢組織及び脳組織もプラスマロゲンレベルについて分析した。血漿において見られたように、PPI-1011は、試験されたいずれの組織においてもいかなるプラスマロゲン種のレベルも増加させなかった(データは示さない)。PPI-1040は、肝臓、骨格筋及び小腸において観察される増大とともに、末梢組織においてさまざまな程度で組織を増大させることが可能であった。肝臓において、すべてのプラスマロゲン種(16:0/22:4を除く)のレベルは、レベルの増加の傾向を示し、16:0/18:1、16:0/18:2及び16:0/22:6種における増加は統計学的有意に達する(図10A)。増大はまた、骨格筋において、16:0/20:5、16:0/22:6及び総16:0プラスマロゲンプールレベルの統計的な増加を伴って、観察された(図10B)。小腸の試料は、解釈を困難にする高い程度の動物間の変動を示した。16:0/20:5種のレベルは、定量のレベルを下回り、したがって、提示しない。いくつかの種のレベルは、増大の傾向があるように思われ、16:0/18:1及び16:0/18:2種は、統計学的に有意な増加に達する(図10C)。血漿について報告されたように、sn-1に18:0及び18:1を有するプラスマロゲンは増大しなかった。対照的に、肺及び腎臓は、処置の後、いかなるプラスマロゲン種においても明確な増大を示さなかった(図10D、E)。最後に、皮質及び小脳組織を試験し、PPI-1040で処置された動物において増大を示さなかった(図10F、G)。
【0212】
Pex7ハイポモルフ/ヌルマウスの行動評価:
Pex7ハイポモルフ/ヌルマウスをオープンフィールド内で追跡して、総移動距離(メートル)及び活動時間(秒)によって測定される活動性のレベルを評価した。媒体処置動物は、いずれかの測定によって評価されるように、野生型対照に対して、有意なレベルの活動亢進を示した。PPI-1040での処置は、活動時間及び移動距離の両方によって評価されるように、活動亢進性表現型の正常化をもたらした(図11A)。それぞれの処置群についての代表的な追跡画像を示す。加えて、血漿プラスマロゲンレベルは、行動的表現型と強く相関することを示した。標的の16:0/22:6プラスマロゲンの血漿レベルは、移動距離(R=0.36、F=7.93、p=0.014)及び活動時間(R=0.54、F=16.37、p=0.0012)の両方と相関があった(図11C)。血漿中の総16:0プラスマロゲンレベルは、処置後に増大するプラスマロゲンの総プールの評価を可能にし、移動距離(R=0.37、F=8.37、p=0.011)及び活動時間(R=0.55、F=17.28、p=0.00096)の両方とも相関があった。
【0213】
議論:
酸安定性の研究及びC13標識化PPI-1050経口処置研究に基づいて、ビニルエーテル結合が胃の酸性環境において安定であり、経口投与後にGI管から直ぐに吸収されることは明らかである。加えて、C13標識化PPI-1050のデータは、望ましい環状ホスホエタノールアミン環の開環以外に、分子の構造がインタクトで吸収されることを実証する。Pex7ハイポモルフ/ヌルマウスの肝臓、小腸及び骨格筋を含む末梢器官におけるさまざまな程度への血漿中でのプラスマロゲンレベルの正常化及びプラスマロゲンレベルの増加は、欠乏個体におけるプラスマロゲンレベルの増大が、PPI-1040処置によって可能であり得るという仮定を裏付ける。皮質脳組織においてプラスマロゲンの増大を検出することは可能ではなかったにもかかわらず、PPI-1040で処置されたマウスは、モデルの典型的な活動亢進性表現型において有意な改善を示し(p<0.05)、行動及び血漿プラスマロゲンレベルの間の強い相関が観察された。
【実施例4】
【0214】
マウス海馬脳切片における長期増強(LTP)研究
脳のプラスマロゲンレベルが神経伝達に影響を与えると仮定されている。したがって、この研究において、野生型マウスの海馬脳切片を、媒体又はPPI-1040のいずれかを含有する人工脳脊髄液中でインキュベートした。切片を、100μm離れて電極を有する、マルチ電極アレイ(MEA、multi-electrode array)上でインキュベートした。単一電極を選択して、放射状層の興奮性シナプス後場電位(fEPSP、field excitatory post-synaptic potential)を作動させるシェファー側枝細胞を刺激した。対照の記録の10分後、PPI-1040又は媒体のいずれかの存在中で、長期増強(LTP)を、200ミリ秒の間隔でそれぞれ100Hzの4つの刺激で構成される10バーストの単一列によって誘導した。次いで、誘発反応の増強を60分間監視した。PPI-1040(0.5μM)で処置された切片は、60分の間にわたって媒体で処置された対照と比較して、LTPが向上し、向上したプラスマロゲンレベルが神経可塑性を向上させることを示唆し、神経機能におけるプラスマロゲンの重要性を裏付ける。結果を図14に示す。
【0215】
長期増強は、アルツハイマー病(AD)に罹っているヒト及び動物の脳(特に海馬)(Koffie RM, Hyman BT, Spires-Jones TL (2011) Alzheimer's disease: synapses gone cold. Mol Neurodegener 6: 63)並びにパーキンソン病(PD)の動物モデル(Costa et al., 2012, Brain, 135:1884-1899)において易感染性であることが公知である。AD(Han X, Holtzman DM, McKeel DW, Jr. (2001) Plasmalogen deficiency in early Alzheimer's disease subjects and in animal models: molecular characterization using electrospray ionization mass spectrometry. J Neurochem 77: 1168-1180、Goodenowe DB, Cook LL, Liu J, Lu Y, Jayasinghe DA, et al. (2007) Peripheral ethanolamine plasmalogen deficiency: a logical causative factor in Alzheimer's disease and dementia. J Lipid Res 48: 2485-2498、Wood PL, Khan AM, Mankidy R, Smith T, Goodenowe D (2011) Plasmalogen Deficit: A New and Testable Hypothesis for the Etiology of Alzheimer's Disease. In: De La Monte S, editor. Alzheimer's Disease Pathogenesis-Core Concepts, Shifting Paradigms and Therapeutic Targets: InTech、Tajima Y, Ishikawa M, Maekawa K, Murayama M, Senoo Y, et al. (2013) Lipidomic analysis of brain tissues and plasma in a mouse model expressing mutated human amyloid precursor protein/tau for Alzheimer's disease. Lipids Health Dis 12: 68、Wood PL, Barnette BL, Kaye JA, Quinn JF, Woltjer RL (2015) Non-targeted lipidomics of CSF and frontal cortex grey and white matter in control, mild cognitive impairment, and Alzheimer's disease subjects. Acta Neuropsychiatr 27: 270-278)及びPD脳(Dragonas C, Bertsch T, Sieber CC, Brosche T (2009) Plasmalogens as a marker of elevated systemic oxidative stress in Parkinson's disease. Clin Chem Lab Med 47: 894-897、Fabelo N, Martin V, Santpere G, Marin R, Torrent L, et al. (2011) Severe alterations in lipid composition of frontal cortex lipid rafts from Parkinson's disease and incidental Parkinson's disease. Mol Med 17: 1107-1118、Marin R, Fabelo N, Martin V, Garcia-Esparcia P, Ferrer I, et al. (2017) Anomalies occurring in lipid profiles and protein distribution in frontal cortex lipid rafts in dementia with Lewy bodies disclose neurochemical traits partially shared by Alzheimer's and Parkinson's diseases. Neurobiol Aging 49: 52-59、Guedes LC, Chan RB, Gomes MA, Conceicao VA, Machado RB, et al. (2017) Serum lipid alterations in GBA-associated Parkinson's disease. Parkinsonism Relat Disord)において報告されているプラスマロゲン欠乏症と一緒に、マウス脳におけるベースラインLTPを改善するPPI-1040の能力は、プラスマロゲン欠乏神経変性疾患の治療におけるプラスマロゲンの増大のための役割を示唆する。
【実施例5】
【0216】
PPI-1011及びPPI-1040の比較
PPI-1011及びPPI-1040は両方とも、内因性16:0/22:6エタノールアミンプラスマロゲン種に変換されるように設計されたプラスマロゲン前駆体である。両方の分子は、グリセロール骨格とsn-1位にパルミチルアルコール(16:0)及びsn-2位にDHA(22:6)脂肪酸で構成される。
【0217】
【化37】
【0218】
【化38】
【0219】
PPI-1011は、グリセロール骨格及び16:0脂肪アルコールに連結されたsn-1位のエーテル結合を有する。インビボで、これは、酵素的にプラスマロゲンの特徴であるビニルエーテル結合に小胞体中で変換される必要がある。PPI-1040は、sn-1位に既にインタクトなビニルエーテル結合を有して設計され、インビボでの代謝の要件を完全に排除している。加えて、PPI-1011は、sn-3位にリポ酸を有する。これは、分子を安定化し、sn-1及びsn-2部分の移動を防ぐために存在する。リポ酸は、腸内で切断され、アルキル-アシルグリセロール分子のみが腸内壁を通過することが示されている。インビボで、アルキル-アシルグリセロールは、ホスホエタノールアミン基の付加を受けなければならず、これは、再び小胞体中で酵素によって生じる。対照的に、PPI-1040は、sn-3位に環化したホスホエタノールアミン基を有する。この基は、ビニルエーテル結合を切断から保護して、より長期間の安定性を可能にするために環化されている。水性又は酸性環境(胃など)へのPPI-1040薬物製品の曝露の際に、環状ホスホエタノールアミン基は、加水分解反応を受けて、エタノールアミンプラスマロゲンにおいて見られる天然に存在するホスホエタノールアミン基に開環する。これらの相違は、非常に異なる点で代謝経路に入るプラスマロゲン前駆体をもたらす。PPI-1011は、2ペルオキシソーム特異的酵素反応の後、早期に経路に入る。PPI-1040は、経路の最後で入り、最終プラスマロゲン生成物は、環状ホスホエタノールアミン基の自発的加水分解の後、腸内壁を通って吸収される分子である。
【0220】
PPI-1011又はPPI-1040が16:0/22:6エタノールアミンプラスマロゲン種に変換されると、これは、身体の天然の代謝経路に入る。ホスホリパーゼ2酵素は、身体内でその他の脂肪酸分子と置き換わることができる、sn-2位の脂肪酸、最も一般的には、18:1、18:2、20:4、205:5、22:4を除去することが知られている。したがって、標的のプラスマロゲン(16:0/22:6)を増大させることに加えて、PPI-1011及びPPI-1040による処置は、sn-1のパルミチル基を有するエタノールアミンプラスマロゲンのファミリーを増大させることも知られている。
【0221】
PPI-1040のPKデータ
インビボでのPPI-1040の変換を調査し、生成したPlsEtnが血清中で検出され得ることを確認するために、PPI-1040の13C標識化バージョンを設計し、PPI-1050と指定した。PPI-1050は、[13]パルミチン酸及び[13]グリセロールで標識化される。
【0222】
C57Bl/6マウスは、媒体(0.1%のチオグリセロールを有するNeobee-M5)又はPPI-1050のいずれかを、100mg/kgの濃度で、経口で急速投与を受けた。動物を安楽死させ、血清を、1、3又は6時間後に採取した(n=3)。経口でのインタクトなプラスマロゲンの提供が、腸内に存在する低pHでのビニルエーテル結合の切断をもたらし得、sn-1脂肪アルコールの喪失をもたらす危険性があるので、研究は、経口投与の実現可能性を確認するために行った。グリセロール主鎖及びsn-1の16:0脂肪アルコールにおける13C標識の存在は、ビニルエーテル結合が消化管を通ってインタクトなまま残っていたことの確認を可能にした。フローインジェクションタンデム質量分析を使用して、[13]パルミチン酸及び[13]グリセロールで標識化された標的の16:0/22:6プラスマロゲン(親/娘の推移は752.5/327.2)は、処置された動物の血清中において、時間依存的な方法でのレベルの増加を伴って検出された(図15)。閉環したホスホエタノールアミン環を有するインタクトなPPI-1050分子(親/娘の推移は736.5/613.5)は、処置されたいかなる動物の血清中でも検出されず、経口投与の後、環が直ぐに開環することを確認した。
【0223】
13]パルミチン酸及び[13]グリセロールと、sn-2にさまざまな一般的な脂肪酸を有するプラスマロゲンのレベルの測定は、ビニルエーテル結合がインタクトなままである間にsn-2位がすぐにリモデリングされ、試験されるすべての他の16:0プラスマロゲンのレベルが時間依存的な方法で増加することを確認した(図16)。
【0224】
13]の追加のみを有するプラスマロゲン種の測定は、ビニルエーテル結合がインタクトなまま残っていることのさらなる確認を可能にした。グリセロールのみで標識化された種を、パルミチルのみで標識化された種から識別することは、両方とも質量の同じ増加をもたらしたので、できなかった。しかしながら、標識化されたグリセロール又はパルミチルのいずれかを有する16:0プラスマロゲン種の増加がなかったことは明らかであった(図17)。理論に縛られることを望まないが、観察された低レベルは、大部分は、干渉する代謝物の結果である可能性が高い。加えて、処置の後、未標識の内因性16:0プラスマロゲンレベルの増加は観察されなかった(データは示さない)。
【0225】
ホスホエタノールアミン基が、経口投与の後、sn-3位から失われなかったことを確認するために、ビニル-アシルグリセロールのレベルも測定した。二重で標識化されたか([13]パルミチン酸及び[13]グリセロール)、又は単独で標識化された([13]パルミチン酸又は[13]グリセロール)16:0/22:6ビニル-アシルグリセロールにおいて、増加は観察されなかった(図18)。加えて、[13]パルミチン酸及び[13]グリセロールのアルキル-アシルグリセロール種について試験したが、検出不能であった(データは示さない)。
【0226】
PPI-1050の代謝産物の追跡は、プラスマロゲン前駆体がマウスにおいて経口で生物学的に利用可能であることを確認した。PPI-1050の閉環体の検出の欠如は、環が、摂取の際に、すぐに開環することを示した。単独で標識化されたバージョンではなく、標識化されたパルミチン酸及びグリセロール両方を有する16:0プラスマロゲンの時間依存的な増加は、ビニルエーテル結合がインタクトなままであることを確認した。ビニル-アシル又はアルキル-アシルグリセロールのいずれかにおいて組み込みを示さなかったことは、エタノールアミン基が、経口投与の後、インタクトなまま残るという仮定を裏付ける。併せて、このデータは、プラスマロゲン欠乏症のための治療剤としてのPPI-1040の経口投与のための裏付けを提供する。
【0227】
PPI-1011のPKデータ
インビボでのPPI-1011の変換を検証するために、PPI-1011の13C標識化バージョンを設計し、PPI-1038と指定した。PPI-1038は、PPI-1050と同様に、[13]パルミチン酸及び[13]グリセロールで標識化されるが、追加で、sn-2のDHAにおいて[13]標識化された。この追加は、PPI-1050処置動物において行わなかった、投与の後のsn-2基における追跡を可能にした。
【0228】
C57Bl/6マウスに、Neobee-M5中で製剤化したPPI-1038を、100mg/kgの濃度で、1日1回、3日間、経口で投薬した。次いで、動物を安楽死させ、組織を採取した(n=6)。タンデム質量分析を使用して、[13]パルミチン酸、[13]グリセロール及び[13]DHAで標識化された標的の16:0/22:6プラスマロゲン(親/娘の推移は768.5/330.2)を、処置された動物の各種の組織において検出したが、レベルは非常に低かった(図19における、完全にインタクトな基)。sn-2の基が除去され、グリセロール主鎖及びsn-1の基がインタクトなまま残っている場合に、より高い程度の組み込みが、標的の16:0/22:6プラスマロゲンについて見られた。標識を含有するグリセロール主鎖及びsn-2が表す、組織内への標的のプラスマロゲンの組み込みも存在した。理論に縛られることを望まないが、これはsn-1位の直接のリモデリングから生じることが可能であるが、sn-1のリモデリングがすぐに生じないことを示唆する他の研究には反し得る。これは、デノボでプラスマロゲンを合成するための標識化されたDHA及びグリセロール基の再環化の結果である可能性がより高い。
【0229】
PPI-1011は、組織に完全にインタクトで組み込まれるように設計しなかった。sn-3のリポ基は、腸内で切断されて、アルキル-アシルグリセロールの吸収をもたらすように設計した。その結果、これは、sn-3位にホスホエタノールアミン基を追加し、sn-1にビニルエーテル結合を作ることによって、前駆体を代謝するための内因性酵素を必要とする。
【0230】
欠乏動物におけるプラスマロゲンの増大
上記に記載したPPI-1040及びPPI-1011のPKプロファイルにおいて見られた相違に加えて、2つの分子は、欠乏動物モデルにおけるプラスマロゲンレベルを増大させる異なる能力を示す。欠乏マウスへの媒体、PPI-1011又はPPI-1040の経口投与の4週間後、血漿及び組織レベルを、プラスマロゲンレベルについて試験した。媒体で処置されたPex7ハイポモルフ/ヌル動物は、測定されたすべてのプラスマロゲンの有意に減少したレベルを有し、平均で、野生型対照レベルのおよそ25%であった。過去の研究において、PPI-1011は、動物においてプラスマロゲンレベルを増大させる中程度の能力を実証したが、Pex7ハイポモルフ/ヌルマウスにおける50mg/kgのPPI-1011での処置は、プラスマロゲンレベルの増大に無効であり、標的プラスマロゲン又は試験されたその他の16:0プラスマロゲン種において変化がなかった。しかしながら、PPI-1040の処置は、プラスマロゲンレベルを効果的に増大させた。標的の16:0/22:6プラスマロゲンのレベルを正常化することに加えて、sn-2位での再配置は、16:0/22:4を除くすべての測定された16:0プラスマロゲンにおける増加を生じ、これは、少ない割合の総16:0プラスマロゲンのプールを表す(図20)。sn-1に18:0及び18:1を含有するプラスマロゲンも測定したが、思った通り、これらの種においても増大は観察されなかった。最後に、試料を、sn-3のホスホエタノールアミン基が除去された場合に増加すると予測される、ビニル-アシル及びアルキル-アシルグリセロールのレベルについて分析した。測定されたアルキル-アシル又はビニル-アシルグリセロール種は、処置された動物において増加せず、上記に示したPPI-1040のPKデータと一致した。
【0231】
さまざまな末梢組織及び脳組織もプラスマロゲンレベルについて分析した。血漿において見られたように、PPI-1011は、試験された肝臓(図20)又はいずれの組織においてもいかなるプラスマロゲン種のレベルも増加させなかった(データは示さない)。PPI-1040は、肝臓、骨格筋及び小腸において観察される増大とともに、末梢組織において、さまざまな程度に組織を増大させることが可能であった。肝臓において、すべてのプラスマロゲン種(16:0/22:4を除く)のレベルは、レベルの増加の傾向を示し、16:0/18:1、16:0/18:2及び16:0/22:6種における増加が統計学的有意に達した(図12A)。増大はまた、骨格筋において、16:0/20:5、16:0/22:6及び総16:0プラスマロゲンプールレベルの統計的な増加を伴って、検出可能であった(図12B)。小腸の試料は、解釈をより困難にする高い程度の動物間の変動を示した。16:0/20:5種のレベルは、定量のレベルを下回り、したがって、提示しない。この研究において、いくつかの種のレベルは、増大の傾向があるように思われるが、16:0/18:1及び16:0/18:2のみが、有意性に達した(図12C)。血漿について報告されたように、sn-1に18:0及び18:1を有するプラスマロゲンは増大しなかった。対照的に、末梢組織である肺及び腎臓は、処置の後、いかなるプラスマロゲン種においても有意なレベルの増大を示さなかった(図12D、E)。最後に、皮質及び小脳組織を試験し、PPI-1040で処置された動物においても増大を示さなかった(図12F、G)。
【0232】
処置後の血漿及び組織のプラスマロゲンレベルの分析は、PPI-1040が、等用量のPPI-1011よりも欠乏個体におけるプラスマロゲンの増大のための優れたプラスマロゲン前駆体であることを明確に例証した。
【0233】
Pex7ハイポモルフ/ヌルマウスの行動評価
Pex7ハイポモルフ/ヌルマウスをオープンフィールド内で追跡して、総移動距離(メートル)及び活動時間(秒)によって測定される活動性のレベルを評価した。媒体処置動物は、時間又は距離のいずれかによって評価されるように、対照に対して、有意なレベルの活動亢進を示した。PPI-1011による処置は、いずれかの測定によって評価されるように、活動性レベルの減少をもたらさなかった。対照的に、PPI-1040での処置は、活動時間及び移動距離の両方によって評価されるように、活動性の有意な減少及び活動亢進性表現型の正常化をもたらした(図21)。
【0234】
対照、媒体及びPPI-1040動物を比較すると、血漿プラスマロゲンレベルは、行動的表現型と相関した。標的の16:0/22:6プラスマロゲンの血漿レベルは、移動距離(R=0.36、F=7.93、p=0.014)及び活動時間(R=0.54、F=16.37、p=0.0012)の両方と相関があった(図13C)。血漿中の総16:0プールを、プラスマロゲンの増大の全体的な効果を調べるために使用し、移動距離(R=0.37、F=8.37、p=0.011)及び活動時間(R=0.55、F=17.28、p=0.00096)の両方と強く相関することも示した(図21)。プラスマロゲンレベルと行動的表現型の相関は、プラスマロゲンの増大が、実行可能な治療剤であり得るという仮定を裏付ける。プラスマロゲンレベルを増大させるPPI-1040の観察された優れた能力は、治療学的展望から特に注目に値し得る。
【0235】
1又は2以上の例証的な実施形態を例として記載する。特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、いくつかの変形及び改変を行ってもよいことは、当業者に理解されるであろう。
【0236】
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【0237】
本項目及び本明細書のどこかで引用されるすべての参照は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
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