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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/023 20060101AFI20221020BHJP
   F16F 9/20 20060101ALI20221020BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20221020BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
F16F15/023 A
F16F9/20
F16F9/32 J
F16F9/32 N
E04H9/02 321Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021116078
(22)【出願日】2021-07-14
【審査請求日】2022-08-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521312581
【氏名又は名称】株式会社マック
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】青嶋 秀男
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-17173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/023
F16F 9/20
F16F 9/32
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を支える躯体を構成して揺れに際して互いに相対的に変位する第1部材と第2部材との間に配置されて同躯体の揺れを減衰する制振装置であって、
流体を収容して前記第1部材および前記第2部材のうちの一方に取り付けられるシリンダの両端部からそれぞれ突出する第1ロッドおよび第2ロッドが前記シリンダに対して一体的に同シリンダの軸線方向に往復変位する両ロッド直動ダンパと、
前記第1ロッドの先端部より内側に位置するように前記第1部材および前記第2部材のうちの他方に取り付けられて前記第1部材と前記第2部材とが互いに相対変位した際に前記第1ロッドを前記軸線方向の外側に押す第1ロッド押圧部と、
前記第2ロッドの先端部より内側に位置するように前記第1部材および前記第2部材のうちの他方に取り付けられて前記第1部材と前記第2部材とが互いに相対変位した際に前記第2ロッドを前記軸線方向の外側に押す第2ロッド押圧部とを備え、
前記第1ロッドおよび前記第2ロッドは、
前記第1ロッド押圧部および前記第2ロッド押圧部に対向する第1受け部および第2受け部をそれぞれ有することを特徴とする制振装置。
【請求項2】
請求項1に記載した制振装置において、
前記第1ロッド押圧部と前記第2ロッド押圧部とを一体的に繋ぐ中間体を備えていることを特徴とする制振装置。
【請求項3】
請求項2に記載した制振装置において、
前記中間体は、
前記シリンダを覆う形状に形成されていることを特徴とする制振装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した制振装置において、さらに、
前記両ロッド直動ダンパを水平姿勢となるように前記シリンダを下方から支持するシリンダ支持部を備え、
前記シリンダ支持部は、
水平平面内における前記軸線方向に直交する軸直交方向に前記シリンダよりも大きな幅に形成されて同シリンダを前記軸直交方向に変位可能な状態で収容しており、
前記第1ロッド押圧部および前記第2ロッド押圧部は、
前記第1ロッドおよび前記第2ロッドに対して前記軸直交方向に開口する第1開口部および第2開口部をそれぞれ有していることを特徴とする制振装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した制振装置において、
前記第1部材と前記第2部材とが互いに相対変位していない状態で前記第1ロッド押圧部と前記第1受け部との間、および前記第2ロッド押圧部と前記第2受け部との間には、それぞれ隙間が形成されていることを特徴とする制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物を支える躯体の揺れを減衰する制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物を支える躯体を構成して揺れに際して互いに相対的に変位し得る第1部材と第2部材との間に配置されて同躯体の揺れを減衰する制振装置がある。例えば、下記特許文献1には、基礎側に固定されたシリンダの両端部からそれぞれ棒状に延びるロッド本体が免振構造体にそれぞれ連結された構成の長ストローク用ダンパが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-17173号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたダンパにおいては、基礎に対して免振構造体が揺れた際にロッド本体に軸線方向に押圧力が作用するため、ロッド本体の太さを太くする、またはロッド本体の長さが制限されるという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、シリンダの両端部からそれぞれ延びるロッドに押圧力を作用させないことでロッドの太さおよび長さの制限を緩和することができる制振装置を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、建物を支える躯体を構成して揺れに際して互いに相対的に変位する第1部材と第2部材との間に配置されて同躯体の揺れを減衰する制振装置であって、流体を収容して第1部材および第2部材のうちの一方に取り付けられるシリンダの両端部からそれぞれ突出する第1ロッドおよび第2ロッドがシリンダに対して一体的に同シリンダの軸線方向に往復変位する両ロッド直動ダンパと、第1ロッドの先端部より内側に位置するように第1部材および第2部材のうちの他方に取り付けられて第1部材と第2部材とが互いに相対変位した際に第1ロッドを軸線方向の外側に押す第1ロッド押圧部と、第2ロッドの先端部より内側に位置するように第1部材および第2部材のうちの他方に取り付けられて第1部材と第2部材とが互いに相対変位した際に第2ロッドを軸線方向の外側に押す第2ロッド押圧部とを備え、第1ロッドおよび第2ロッドは、第1ロッド押圧部および第2ロッド押圧部に対向する第1受け部および第2受け部をそれぞれ有することにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、制振装置は、両ロッド直動ダンパにおける第1ロッドおよび第2ロッドをシリンダの軸線方向の外側に押す第1ロッド押圧部および第2ロッド押圧部をそれぞれ備えているため、第1ロッドおよび第2ロッドには引張荷重のみが作用して圧縮荷重が作用しないことから、第1ロッドおよび第2ロッドの太さおよび長さの制限を緩和することができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記制振装置において、第1ロッド押圧部と第2ロッド押圧部とを一体的に繋ぐ中間体を備えていることにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、制振装置は、第1ロッド押圧部と第2ロッド押圧部とを一体的に繋ぐ中間体を備えているため、第1ロッド押圧部および第2ロッド押圧部の取り付け作業、保管または輸送などの取り扱いを容易にすることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記制振装置において、中間体は、シリンダを覆う形状に形成されていることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、制振装置は、中間体がシリンダを覆う形状に形成されているため、シリンダ、第1ロッドおよび第2ロッドへの異物の付着を抑制して両ロッド直動ダンパの円滑な作動を長期に亘って維持することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記制振装置において、さらに、両ロッド直動ダンパを水平姿勢となるようにシリンダを下方から支持するシリンダ支持部を備え、シリンダ支持部は、水平平面内における前記軸線方向に直交する軸直交方向にシリンダよりも大きな幅に形成されて同シリンダを軸直交方向に変位可能な状態で収容しており、第1ロッド押圧部および第2ロッド押圧部は、第1ロッドおよび第2ロッドに対して軸直交方向に開口する第1開口部および第2開口部をそれぞれ有していることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、制振装置は、シリンダ支持部、第1開口部および第2開口部によって両ロッド直動ダンパが軸直交方向に変位が許容された状態で支持されているため、建物の躯体に捩じれなどの変形が生じた場合においても両ロッド直動ダンパ、第1ロッド押圧部および第2ロッド押圧部に無理な力が作用することを防止することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記制振装置において、第1部材と第2部材とが互いに相対変位していない状態で第1ロッド押圧部と第1受け部との間、および第2ロッド押圧部と第2受け部との間には、それぞれ隙間が形成されていることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、制振装置は、第1部材と第2部材とが互いに相対変位していない状態において第1ロッド押圧部と第1受け部との間、および第2ロッド押圧部と第2受け部との間にそれぞれ隙間が形成されているため、第1部材と第2部材との相対変位に対して両ロッド直動ダンパが作動しない不感帯を設けることができる。また、制振装置は、両ロッド直動ダンパと第1ロッド押圧部および第2ロッド押圧部との組み付け作業を容易にすることができる。また、制振装置は、建物の躯体に捩じれなどの変形が生じた場合においても両ロッド直動ダンパと第1ロッド押圧部および第2ロッド押圧部との間で無理な力が作用することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る制振装置の外観構成および内部構成の概略を示す一部破断片側断面図である。
図2図1に示す制振装置の主要部の構成を拡大して示す一部破断片側拡大断面図である。
図3図1に示す制振装置を構成する両ロッド直動ダンパの外観構成の概略を示す正面図である。
図4図1に示す制振装置を構成するダンパ支持体におけるシリンダ支持部の外観構成の概略を拡大して示す斜視図である。
図5図1に示す制振装置を構成する押圧体における中間体の外観構成の概略を上下を反転させた状態で拡大して示す斜視図である。
図6図2に示す制振装置について躯体の第2部材が図示右側に変位したことで両ロッド直動ダンパにおける第1ロッドが図示右側に変位した状態を拡大して示す一部破断片側拡大断面図である。
図7】本発明の他の変形例に係る制振装置の主要部の構成を拡大して示す一部破断片側拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る制振装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る制振装置100の外観構成および内部構成の概略を示す一部破断片側断面図である。また、図2は、図1に示す制振装置100の主要部の構成を拡大して示す一部破断片側拡大断面図である。この制振装置100は、家屋、事務所、工場またはビルなどの建物を構成する躯体90に設置されて建物の揺れまたは振動を減衰するための機械装置である。
【0018】
制振装置100の説明をする前に、この制振装置100が取り付けられる躯体90について説明しておく。躯体90は、図示しない家屋などの建物を構成する部品であり、鉄などの金属材または木材で構成された4つの棒材からなる第1部材91、第2部材92、第3部材93および第4部材94を正面視で方形に組んだ枠状に形成されている。
【0019】
この場合、第1部材91および第2部材92は、互いに上下方向に離隔した位置に互いに水平方向に平行に延びる姿勢で配置されている。一方、第3部材93および第4部材94は、互いに水平方向に離隔した位置に互いに上下方向に平行に延びる姿勢で配置されており、第1部材91上で第2部材92を支えている。つまり、第1部材91は土台であり、第2部材92は梁であり、第3部材93および第4部材94はそれぞれ柱である。
【0020】
(制振装置100の構成)
制振装置100は、主として、両ロッド直動ダンパ101、ダンパ支持体110および押圧体120をそれぞれ備えている。両ロッド直動ダンパ101は、躯体90における第1部材91と第2部材92との相対的な水平方向の往復振動からなる運動エネルギを減衰するための器具である。この両ロッド直動ダンパ101は、図3に示すように、主として、シリンダ102、第1ロッド105および第2ロッド106を備えて構成されている。
【0021】
シリンダ102は、作動油(図示せず)を液密的に収容しながら第1ロッド105および第2ロッド106をそれぞれ摺動自在に支持する部品であり、両端部が閉塞された金属製の円筒体で構成されている。このシリンダ102には、両端部から第1ロッド105および第2ロッド106がそれぞれ軸線方向(図示X軸方向)に往復変位可能な状態で突出しているとともに、外周部にストッパ103a,103bがそれぞれ形成されている。
【0022】
ストッパ103a,103bは、シリンダ102が後述するシリンダ支持部113から脱落することを防止するための部品であり、金属材を平板環状に形成して構成されている。すなわち、ストッパ103a,103bは、シリンダ102の外周部からフランジ状に張り出して形成されている。これらのストッパ103a,103bは、シリンダ支持部113に対してシリンダ102の軸線方向(図示X軸方向)の外側の位置にそれぞれ設けられている。この場合、ストッパ103a,103bの各内側の側面には、接触プレート104a,104bがそれぞれ設けられている。
【0023】
接触プレート104a,104bは、シリンダ支持部113とストッパ103a,103bとの間で衝突による衝撃および損傷を低減させるとともに擦れによる摩耗を低減させるための部品であり、樹脂材または弾力性を有するエラストマ材を平板環状に形成して構成されている。この接触プレート104a,104bは、ストッパ103a,103bに対してネジまたは接着剤で固定されている。
【0024】
第1ロッド105は、第2部材92から第1ロッド押圧部122を介して受ける外力をシリンダ102内の作動油に伝達するための部品であり、金属製の棒体で構成されている。また、第2ロッド106は、第2部材92から第2ロッド押圧部123を介して受ける外力をシリンダ102内の作動油に伝達するための部品であり、金属製の棒体で構成されている。
【0025】
これらの第1ロッド105と第2ロッド106とは、シリンダ102内において互いに連結されており、一体的な棒体を構成している。このため、第1ロッド105および第2ロッド106は、シリンダ102に対してシリンダ102の軸線方向(図示X軸方向)に一体的に往復変位する。この一体化された第1ロッド105および第2ロッド106には、シリンダ102の内部にピストン(図示せず)を備えている。
【0026】
ピストンは、シリンダ102内の作動油の収容空間内を2つに仕切りつつこれらの2つの収容空間の容積を液密的にそれぞれ増減させるための部品であり、金属材を円柱状に形成して構成されている。このピストンは、仕切った2つの収容空間の間でこれらの収容空間の断面積よりも小さな断面積に形成された作動油の流通路を構成するオリフィス(図示せず)を備えている。これにより、両ロッド直動ダンパ101は、第1ロッド105および第2ロッド106がシリンダ102に対して往復変位する際に第1ロッド105および第2ロッド106に作用している力を減衰する。
【0027】
また、第1ロッド105および第2ロッド106の各先端部には第1受け部107および第2受け部108がそれぞれ設けられている。第1受け部107および第2受け部108は、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123によってそれぞれ押される部分であり、金属材を平板環状に形成して構成されている。この場合、第1受け部107および第2受け部108は、第1ロッド105および第2ロッド106の外径よりも大きな外径に形成されている。
【0028】
すなわち、第1受け部107および第2受け部108は、第1ロッド105および第2ロッド106の外表面からフランジ状に張り出して形成されている。これらの第1受け部107および第2受け部108は、第1ロッド105および第2ロッド106の各先端部に対してボルト109a,109bによって取り付けられている。
【0029】
ダンパ支持体110は、躯体90の第1部材91上で両ロッド直動ダンパ101を支持する器具であり、主として、ベース板111、支柱112およびシリンダ支持部113を備えて構成されている。ベース板111は、支柱112を第1部材91に取り付けるための部品であり、金属材を帯状に延びる板状に形成して構成されている。
【0030】
支柱112は、躯体90の第2部材92の近傍で両ロッド直動ダンパ101を支持するための部品であり、ベース板111上から上方に向かって延びる2つの金属製の棒状体で構成されている。この場合、支柱112を構成する前記2つの棒状体は、上端部が互いに接近して連結されており、この連結部分にシリンダ支持部113が取り付けられている。すなわち、支柱112は、正面視で略三角形状に形成されている。この支柱112は、ベース板111上にボルトによって固定されている。
【0031】
シリンダ支持部113は、図4に示すように、両ロッド直動ダンパ101におけるシリンダ102を下方から支持する部品であり、主として、載置台113aおよび側板113b,113cを備えて構成されている。載置台113aは、両ロッド直動ダンパ101のシリンダ102が載置される部分であり、金属材をシリンダ102の軸線方向(図示X軸方向)に延びる平板状に形成して構成されている。この場合、載置台113aは、前記2つのストッパ103a,103b(接触プレート104a,104b)の間隔よりも狭い長さに形成されている。
【0032】
側板113b,113cは、載置台113a上に載置されたシリンダ102がシリンダ102の軸線方向(図示X軸方向)に直交する軸直交方向(図示Y軸方向)から脱落することを防止するための部品であり、載置台113aの長手方向に延びる端部から起立する金属製の板状体で構成されている。この場合、側板113b,113cは、シリンダ102の高さの少なくとも半分以上の高さに形成される。
【0033】
また、2つの側板113bと側板113cとは、シリンダ102の太さ以上の間隔を介して配置されており、シリンダ102の軸直交方向(図示Y軸方向)への変位を許容している。この場合、2つの側板113bと側板113cとの間隔は、シリンダ102の太さ以上かつ第1部材91および第2部材92の軸直交方向(図示Y軸方向)の太さ以下、またはシリンダ102の太さの1.2倍以上かつ2倍以下がよい。本実施形態においては、2つの側板113bと側板113cとの間隔は、シリンダ102の外径の1.4倍の長さに形成されている。
【0034】
また、これらの側板113b,113cは、前記2つのストッパ103a,103b(接触プレート104a,104b)の間隔よりも狭い長さに形成されている。本実施形態においては、2つの側板113b,113cは、載置台113aの長さよりも短い長さに形成されることで2つのストッパ103a,103b(接触プレート104a,104b)に接触することを防止することができる。これらの側板113b,113cは、載置台113aに対して溶接によってそれぞれ固定されている。
【0035】
押圧体120は、図5に示すように、躯体90における第2部材92の変位を両ロッド直動ダンパ101に伝達するための部品であり、主として、中間体121、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123をそれぞれ備えて構成されている。中間体121は、第1ロッド押圧部122と第2ロッド押圧部123とを一体的に支持してこれらを第2部材92に取り付けるための金属製の部品である。
【0036】
より具体的には、中間体121は、主として、第1架設部121aおよび第2架設部121b,121cをそれぞれ備えて構成されている。第1架設部121aは、第2部材92に取り付けられるとともに第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123をそれぞれ支持する部分であり、第2部材92に沿って延びる平板状に形成されている。この場合、第1架設部121aは、第1受け部107および第2受け部108に第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123をそれぞれ配置できる長さに形成せれる。また、第1架設部121aは、第2部材92の幅(図示Y軸方向)よりも狭い幅に形成される。
【0037】
第2架設部121b,121cは、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123をそれぞれ支持するとともに両ロッド直動ダンパ101の側面を覆う部分であり、第1架設部121aに沿って延びる平板状に形成されている。これらの第2架設部121b,121cは、第1架設部121aの2つの長辺からそれぞれ下垂した壁状に形成されている。すなわち、この中間体121は、平面視で長方形状の一枚の金属板の2つの長辺部分をそれぞれ直角に折り曲げることで成形されている。
【0038】
第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123は、第1ロッド105および第2ロッド106の各先端部に設けられた第1受け部107および第2受け部108をそれぞれ軸線方向(図示X軸方向)に押すための部品であり、それぞれ金属製の板状体で構成されている。より具体的には、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123は、2枚ずつの金属板で構成されており、中間体121の両端部に溶接を介して固定されている。
【0039】
この場合、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123をそれぞれ構成する2枚の金属板は、上下方向(図示Z軸方向)に離隔して軸直交方向(図示Y軸方向)に延びて設けられている。すなわち、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123は、2枚の金属板の間に軸直交方向(図示Y軸方向)に延びて開口する第1開口部124および第2開口部125をそれぞれ備えている。
【0040】
第1開口部124および第2開口部125は、第1ロッド105および第2ロッド106の各軸直交方向(図示Y軸方向)の変位を許容しつつ第1受け部107および第2受け部108がそれぞれ貫通しない隙間で第1ロッド105および第2ロッド106をそれぞれ貫通させる部分である。つまり、第1開口部124および第2開口部125は、第1ロッド105および第2ロッド106の各外径以上でかつ第1受け部107および第2受け部108の各外径以下の隙間で第2架設部121bと第2架設部121cとの間隔と同じ長さで延びる隙間で構成されている。
【0041】
また、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123は、躯体90における第1部材91と第2部材92とが相対変位していない状態において、第1受け部107との間および第2受け部108との間にそれぞれ隙間S1,S2が形成される位置に設けられている。この隙間S1,S2は、制振装置100の仕様に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されるものではないが、躯体90が最も捩じられた状態であっても制振装置100が円滑に作動できる隙間であって可能な限り少ない隙間が良い。この場合、隙間S1,S2は、一般的な家屋においては10mm以下が好適である。本実施形態においては、隙間S1,S2は、それぞれ5mmに設定されている。
【0042】
(制振装置100の組み付け)
次に、上記のように構成された制振装置100の躯体90への組み付けについて説明する。まず、作業者は、両ロッド直動ダンパ101、ダンパ支持体110および押圧体120をそれぞれ用意する。
【0043】
次に、作業者は、押圧体120を躯体90に取り付ける。具体的には、作業者は、押圧体120における第1架設部121aを躯体90の第2部材92に対してボルトを介して固定する。この場合、作業者は、押圧体120が躯体90の内側の空間に位置するように第2部材92の下面に第1架設部121aを取り付ける。
【0044】
次に、作業者は、ダンパ支持体110を躯体90に取り付ける。具体的には、作業者は、ダンパ支持体110におけるシリンダ支持部113上に両ロッド直動ダンパ101のシリンダ102を載置する。この場合、作業者は、シリンダ102におけるストッパ103aとストッパ103bとの間の部分をシリンダ支持部113の載置台113a上に載置する。
【0045】
次いで、作業者、シリンダ支持部113上に両ロッド直動ダンパ101が載置されたダンパ支持体110におけるベース板111を躯体90の第1部材91に対してボルトを介して固定する。この場合、作業者は、ダンパ支持体110が躯体90の内側の空間に位置するように第1部材91の上面にベース板111を固定する。
【0046】
また、作業者は、両ロッド直動ダンパ101における第1受け部107および第2受け部108を第1ロッド105および第2ロッド106の各先端部から外しておく。これにより、作業者は、両ロッド直動ダンパ101を押圧体120内に配置する際に第1ロッド105を第1ロッド押圧部122における第1開口部124に貫通させることができるとともに、第2ロッド106を第2ロッド押圧部123における第2開口部125に貫通させることができる。また、作業者は、ダンパ支持体110の図X軸方向の中央部と押圧体120における長手方向(図示X軸方向)の中央部とが一致する位置にダンパ支持体110を取り付ける。
【0047】
次に、作業者は、両ロッド直動ダンパ101を押圧体120に連結する。具体的には、作業者は、第1開口部124および第2開口部125からそれぞれ張り出した第1ロッド105および第2ロッド106の各先端部に第1受け部107および第2受け部108をボルト109a,109bをそれぞれ介して取り付ける。これにより、作業者は、躯体90における第1部材91と第2部材92との間に制振装置100を取り付けることができる。すなわち、躯体90は、制振装置100を介して第1部材91と第2部材92とが連結される。
【0048】
(制振装置100の作動)
上記のように構成した制振装置100の作動について説明する。制振装置100は、躯体90に対して図示X軸方向の揺れが生じた際に機能する。具体的には、制振装置100は、図6に示すように、第1部材91と第2部材92と図示X軸方向に相対変位していない正規状態から第2部材92が第1部材91に対して相対的に図示右側に変位した場合には(破線矢印参照)、押圧体120の第1ロッド押圧部122が両ロッド直動ダンパ101の第1受け部107を図示右側に押圧する。この場合、押圧体120における第2ロッド押圧部123は、両ロッド直動ダンパ101の第2受け部108から図示右側方向に離隔する。
【0049】
したがって、両ロッド直動ダンパ101は、第1ロッド105および第2ロッド106が一体的に図示右側に引かれた状態で変位する。この場合、第1ロッド105および第2ロッド106は、第1ロッド押圧部122による押圧力による引張力によって変位するため、第1ロッド105および第2ロッド106の全体に軸線方向に圧縮力が作用せず座屈することが防止される。また、両ロッド直動ダンパ101は、シリンダ102内のピストンが作動油内を変位することで発生する減衰力によって第1ロッド105および第2ロッド106を変位させる引張力を減衰させる。
【0050】
そして、第2部材92が第1部材91に対して図示左側に変位して元の正規状態に戻ろうとする際には、制振装置100は、押圧体120の第2ロッド押圧部123が両ロッド直動ダンパ101の第2受け部108を図示左側に押圧する。この場合、押圧体120における第1ロッド押圧部122は、両ロッド直動ダンパ101の第1受け部107から図示左側方向に離隔する。
【0051】
したがって、両ロッド直動ダンパ101は、第1ロッド105および第2ロッド106が一体的に図示左側に引かれた状態で変位する。この場合、第1ロッド105および第2ロッド106は、第2ロッド押圧部123による押圧力による引張力によって変位するため、第1ロッド105および第2ロッド106の全体に軸線方向に圧縮力が作用せず座屈することが防止される。また、両ロッド直動ダンパ101は、シリンダ102内のピストンが作動油内を変位することで発生する減衰力によって第1ロッド105および第2ロッド106を変位させる引張力を減衰させる。
【0052】
一方、第1部材91および第2部材92が前記正規状態から第2部材92が第1部材91に対して相対的に図示左側に変位する場合については、前記図示右側に変位する場合とは逆の動きによって両ロッド直動ダンパ101は第1ロッド105および第2ロッド106を変位させる引張力を減衰させる。これらによって、制振装置100は、第1部材91と第2部材92とが図示X軸方向に相対的に変位する揺れを減衰することができる。
【0053】
上記作動からも理解できるように、上記実施形態によれば、制振装置100は、両ロッド直動ダンパ101における第1ロッド105および第2ロッド106をシリンダ102の軸線方向の外側に押す第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123をそれぞれ備えているため、第1ロッド105および第2ロッド106には引張荷重のみが作用して圧縮荷重が作用しないことから、第1ロッド105および第2ロッド106の太さおよび長さの制限を緩和することができる。
【0054】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記に示す各変形例においては、上記各実施形態と同様の構成部分には対応する符号を付して、その説明は省略する。
【0055】
例えば、上記実施形態においては、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123は、中間体121を介して一体的に連結されて構成されている。これにより、作業者は、中間体121を第2部材92に取り付けることで第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123を簡単に第2部材92に取り付けることができる。しかし、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123は、互いに連結せず互いに別体で構成することもできる。例えば、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123は、図8に示すように、金属板を逆L字状に成形して第2部材92の下面に直接取り付けることができる。
【0056】
また、上記実施形態においては、中間体121は、下方が開口した箱型に形成されてシリンダ102、第1ロッド105および第2ロッド106をそれぞれ覆うように構成した。これにより、中間体121は、シリンダ102、第1ロッド105および第2ロッド106への異物の付着を抑制して両ロッド直動ダンパ101の円滑な作動を長期に亘って維持することができる。しかし、中間体121は、第1ロッド押圧部122と第2ロッド押圧部123と連結するように構成されていればよく必ずしもシリンダ102、第1ロッド105および第2ロッド106をそれぞれ覆う必要はない。したがって、中間体121は、第1架設部121a、第2架設部121bおよび第2架設部121cのうちの少なくとも1つで構成することができる。
【0057】
また、上記実施形態においては、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123は、軸直交方向に延びて開口する第1開口部124および第2開口部125をそれぞれ備えて構成した。これにより、制振装置100は、建物の躯体90に捩じれなどの変形が生じた場合においては第1ロッド105および/または第2ロッド106が第1開口部124内および/または第2開口部125内を変位することで両ロッド直動ダンパ101、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123に無理な力が作用することを防止することができる。
【0058】
この場合、第1開口部124および第2開口部125は、上記実施形態のように貫通孔状に形成されていてもよいし、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123をそれぞれ構成する2枚の金属板のうちの一方を省略することで構成することもできる。しかし、第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123は、第1ロッド105および/または第2ロッド106が軸直交方向に変位不能な大きさに形成することもできる。これによれば、制振装置100は、両ロッド直動ダンパ101の軸線方向への変位を規制して躯体90の振動時における変位に起因する異音の発生を防止することができる。なお、制振装置100は、側板113bと側板113cとの間隔をシリンダ102が軸直交方向に変位不能な間隔に形成することでも両ロッド直動ダンパ101の軸線方向への変位を規制することができる。
【0059】
また、上記実施形態においては、制振装置100は、第1部材91と第2部材92とが互いに相対変位していない状態において第1ロッド押圧部122と第1受け部107との間、および第2ロッド押圧部123と第2受け部108との間にそれぞれ隙間S1,S2が形成されている。これにより、制振装置100は、第1部材91と第2部材92との相対変位に対して両ロッド直動ダンパ101が作動しない不感帯を設けることができる。また、制振装置100は、両ロッド直動ダンパ101と第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123との組み付け作業を容易にすることができる。また、制振装置100は、建物の躯体90に捩じれなどの変形が生じた場合においても両ロッド直動ダンパ101と第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123との間で無理な力が作用することを防止することができる。
【0060】
しかし、制振装置100は、第1部材91と第2部材92とが互いに相対変位していない状態において第1ロッド押圧部122と第1受け部107との間および/または第2ロッド押圧部123と第2受け部108との間にそれぞれ隙間S1,S2を形成することなく互いを密着させることもできる。これにより、制振装置100は、第1部材91と第2部材92との相対変位に対して両ロッド直動ダンパ101を直ちに作動させて揺れに対して敏感にすることができる。
【0061】
また、上記実施形態においては、第1受け部107および第2受け部108は、第1ロッド105および第2ロッド106に対して別体で構成してボルト109a,109bによって着脱自在に構成した。しかし、第1受け部107および第2受け部108は、第1ロッド105および第2ロッド106に対して一体的に形成されていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、制振装置100は、両ロッド直動ダンパ101がシリンダ支持部113上にて軸線方向(図示X軸方向)に変位可能に構成した。この場合、両ロッド直動ダンパ101は、ストッパ103a,103bによって軸線方向(図示X軸方向)における変位可能な量が規制されている。これにより、制振装置100は、第1部材91と第2部材92との相対変位に対して両ロッド直動ダンパ101が作動しない不感帯を設けることができる。また、制振装置100は、建物の躯体90に捩じれなどの変形が生じた場合においても両ロッド直動ダンパ101と第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123との間で無理な力が作用することを防止することができる。制振装置100は、両ロッド直動ダンパ101がシリンダ支持部113上にて軸線方向(図示X軸方向)に変位不能に構成した。
【0063】
この場合、制振装置100は、ストッパ103a,103bによってシリンダ102を挟むように構成してもよい。また、制振装置100は、シリンダ102自体を直接または間接的に載置台113a上に固定してもよい。これによれば、制振装置100は、ストッパ103a,103bおよび接触プレート104a,104bを省略することができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、制振装置100は、ダンパ支持体110を介して両ロッド直動ダンパ101を第1部材91に取り付けた。しかし、両ロッド直動ダンパ101は、第1部材91と第2部材92とが互いに近い位置に設けられている場合には、第1部材91に直接取り付けることもできる。すなわち、制振装置100は、ダンパ支持体110を省略して構成することもできる。なお、制振装置100は、両ロッド直動ダンパ101をダンパ支持体110を介して第2部材92に取り付けるとともに、押圧体120を第1部材91に取り付けて構成することもできる。また、制振装置100は、第3部材93と第4部材94との間に取り付けることもできる。この場合、両ロッド直動ダンパ101は、シリンダ102が上下方向(図示Z軸方向)に変位しないように第3部材93または第4部材94に対して固定される。
【0065】
また、上記実施形態においては、両ロッド直動ダンパ101は、シリンダ102内に油からなる作動油を収容して構成した。しかし、シリンダ102内には、流体が収容されていればよい。したがって、両ロッド直動ダンパ101は、シリンダ102内に水などの液体または空気などの気体からなる各種流体を収容して構成することができる。
【符号の説明】
【0066】
S1…第1ロッド押圧部と第1受け部との間の隙間、S2…第2ロッド押圧部と第2受け部との間の隙間、
90…躯体、91…第1部材、92…第2部材、93…第3部材、94…第4部材、
100…制振装置、101…両ロッド直動ダンパ、102…シリンダ、103a,103b…ストッパ、104a,104b…接触プレート、105…第1ロッド、106…第2ロッド、107…第1受け部、108…第2受け部、109a,109b…ボルト、
110…ダンパ支持体、111…ベース板、112…支柱、113…シリンダ支持部、113a…載置台、113b,113c…側板、
120…押圧体、121…中間体、121a…第1架設部、121b,121c…第2架設部、122…第1ロッド押圧部、123…第2ロッド押圧部、124…第1開口部、125…第2開口部。
【要約】
【課題】シリンダの両端部からそれぞれ延びるロッドに押圧力を作用させないことでロッドの太さおよび長さの制限を緩和することができる制振装置を提供する。
【解決手段】制振装置100は、両ロッド直動ダンパ101、ダンパ支持体110および押圧体120を備えている。両ロッド直動ダンパ101は、シリンダ102の両端部から第1ロッド105および第2ロッド106が軸線方向に往復変位可能な状態でそれぞれ張り出している。第1ロッド105および第2ロッド106には、各先端部に第1受け部107および第2受け部108がそれぞれ設けられている。ダンパ支持体110は、第1部材91に対して両ロッド直動ダンパ101を第2部材92の近い位置で支持している。押圧体120は、第1受け部107および第2受け部108を軸線方向外側に押圧する第1ロッド押圧部122および第2ロッド押圧部123を備えて第2部材92に取り付けられている。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
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図6
図7