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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】方向切替構造を有するソケットレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/46 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
B25B13/46 D
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021128620
(22)【出願日】2021-08-04
(65)【公開番号】P2022051510
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】63/080,032
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511314186
【氏名又は名称】優鋼機械股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】謝 智慶
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-015676(JP,A)
【文献】特表2019-529146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0272506(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状表面を有するシャフトであって、
前記シャフトの前記柱状表面上に設けられた第1収容溝と、
前記シャフトの前記柱状表面上に設けられた第2収容溝と、を含み、且つ前記第1収容溝と前記第2収容溝とは、前記シャフトの軸方向に沿って異なる位置に位置する、シャフトと、
前記シャフトに摺動可能に套設されたスリーブ部材であって、
前記シャフトに套設するのに用いられ、前記スリーブ部材の一端に位置する収容端を含み、
前記収容端は、前記収容端の内壁から内径方向に向かって突出した歯状部を含み、
前記スリーブ部材はさらに、被締結部材に套設するのに用いられ、且つ前記スリーブ部材の他端に位置する駆動端を含む、スリーブ部材と、
前記第1収容溝内に設けられ、且つ第1噛合部を含み、前記第1噛合部は、前記シャフトの前記柱状表面の半径方向に向かって突設されている、第1噛合部材と、
前記第2収容溝内に設けられ、且つ第2噛合部を含み、前記第2噛合部は、前記シャフトの前記柱状表面の半径方向に向かって突設されている、第2噛合部材と、を含み、
前記スリーブ部材の前記歯状部は、前記第1噛合部材と前記第2噛合部材のどちらか一方と選択的に噛合する、方向切替構造を有するソケットレンチ。
【請求項2】
前記第1収容溝及び前記第2収容溝中に設けられ、且つ前記第1噛合部材及び前記第2噛合部材と当接するのに用いられる、複数の第1弾性部材をさらに含む、請求項1に記載の方向切替構造を有するソケットレンチ。
【請求項3】
前記スリーブ部材が前記シャフトに対して軸方向に第1位置まで移動したとき、前記第1噛合部材が前記スリーブ部材の前記歯状部と噛合し、前記スリーブ部材が前記シャフトに対して軸方向に第2位置まで移動したとき、前記第2噛合部材が前記スリーブ部材の前記歯状部と噛合する、請求項1に記載の方向切替構造を有するソケットレンチ。
【請求項4】
前記シャフトは、
前記柱状表面上に設けられた位置決め溝と、
前記位置決め溝内に設けられた位置決め部材と、
前記位置決め溝中に設けられ、且つ前記位置決め部材と当接するのに用いられる、第2弾性部材と、をさらに含む、請求項1に記載の方向切替構造を有するソケットレンチ。
【請求項5】
前記スリーブ部材は、
それぞれ前記収容端の前記内壁の軸方向に沿って異なる位置に位置する複数の溝をさらに含み、前記位置決め部材は前記溝のうちの1つに嵌入される、請求項4に記載の方向切替構造を有するソケットレンチ。
【請求項6】
前記第1噛合部材及び前記第2噛合部材は、各々が2つの突起部を含み、前記突起部はそれぞれ前記第1噛合部材及び前記第2噛合部材の2つの側に設けられ、且つ前記突起部はそれぞれ前記第1収容溝の内壁及び前記第2収容溝の内壁と当接するのに用いられる、請求項1に記載の方向切替構造を有するソケットレンチ。
【請求項7】
各前記突起部の2つの端部は、それぞれが円弧面を有する、請求項6に記載の方向切替構造を有するソケットレンチ。
【請求項8】
前記収容端は、
前記収容端の前記内壁に位置し、且つ前記スリーブ部材の前記一端から前記歯状部よりも近い、平滑部をさらに含む、請求項1に記載の方向切替構造を有するソケットレンチ。
【請求項9】
前記シャフトは、
前記柱状表面上に設けられ、且つ前記シャフトの一端から前記第1収容溝及び前記第2収容溝よりも離れた、外側溝をさらに含む、請求項1に記載の方向切替構造を有するソケットレンチ。
【請求項10】
前記シャフトは、
前記シャフトの軸方向に沿って前記第1収容溝と前記第2収容溝との間に設けられ、前記柱状表面から半径方向に突出した係合部をさらに含み、前記スリーブ部材の前記歯状部は、前記第1噛合部材、前記第2噛合部材及び前記係合部のうちの1つと選択的に噛合する、請求項1に記載の方向切替構造を有するソケットレンチ。
【請求項11】
前記シャフトは、前記柱状表面に設けられ、且つそのエンティティは前記第1収容溝と前記第2収容溝のうちの少なくとも一方と接触する、少なくとも1つの結合溝をさらに含む、請求項1に記載の方向切替構造を有するソケットレンチ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの結合溝に設けられ、且つそのエンティティが前記第1噛合部材と前記第2噛合部材のうちの少なくとも一方と接触する、少なくとも1つの結合部材をさらに含む、請求項11に記載の方向切替構造を有するソケットレンチ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの結合部材は、
エンティティが前記第1噛合部材と前記第2噛合部材のうちの少なくとも一方の一端と接触する、第1結合端と、
前記シャフトの前記柱状表面に係着固定される、第2結合端と、を含む、請求項12に記載の方向切替構造を有するソケットレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容はソケットレンチに関し、特に方向切替構造を有するソケットレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
ソケットレンチは、広く使用されている手工具の1つであり、使用者は、ソケットレンチを用いて被締結部材を便利に締結したり取り外したりすることができる。ソケットレンチは、ラチェット式と固定式に分類することができる。ラチェット式のソケットレンチは、締結や取り外し過程中、トグルスイッチを一方向に回すことにより、方向を切り替える機能を実現することができる。
【0003】
しかし、従来のラチェット式レンチは、構造が堅固ではなく、切り替えにくいという欠点があり、ラチェット式レンチの使用には一定の制限があった。そのため、方向切り替えを便利にし得る方向切替構造を開発し、それをソケットレンチに応用することで、方向切替構造を有するソケットレンチを得ることは、産業において重要且つ速やかに解決されるべき課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示内容が提供する、方向切替構造を有するソケットレンチは、スリーブ部材の歯状部を第1噛合部材と第2噛合部材のどちらか一方と選択的に噛合させることにより、方向切替構造を有するソケットレンチの操作の利便性を向上させている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示内容に基づく1つの実施形態として提供する、方向切替構造を有するソケットレンチは、シャフト、スリーブ部材、第1噛合部材及び第2噛合部材を含む。シャフトは、柱状表面を有し、且つ第1収容溝と第2収容溝を含む。第1収容溝と第2収容溝は、シャフトの柱状表面上に設けられ、且つ第1収容溝と第2収容溝とは、シャフトの軸方向に沿って異なる位置に位置している。スリーブ部材は、シャフトに摺動可能に套設され、且つ収容端と駆動端を含む。収容端は、シャフトに套設するのに用いられ、スリーブ部材の一端に位置し、且つ歯状部を含む。歯状部は、収容端の内壁から内径方向に向かって突出している。駆動端は、被締結部材に套設するのに用いられ、且つスリーブ部材の他端に位置している。第1噛合部材は、第1収容溝内に伸縮可能に設けられ、且つ第1噛合部を含み、第1噛合部は、シャフトの柱状表面の半径方向に向かって突設されている。第2噛合部材は、第2収容溝内に伸縮可能に設けられ、且つ第2噛合部を含み、第2噛合部は、シャフトの柱状表面の半径方向に向かって突設されている。スリーブ部材の歯状部は、第1噛合部材と第2噛合部材のどちらか一方と選択的に噛合する。
【0006】
上述の実施形態に基づく方向切替構造を有するソケットレンチは、複数の第1弾性部材をさらに含むことができ、第1弾性部材は、第1収容溝及び第2収容溝中に設けられ、且つ第1噛合部材及び第2噛合部材と当接するのに用いられる。
【0007】
上述の実施形態に基づく方向切替構造を有するソケットレンチは、スリーブ部材がシャフトに対して軸方向に第1位置まで移動したとき、第1噛合部材がスリーブ部材の歯状部と噛合することができ、スリーブ部材がシャフトに対して軸方向に第2位置まで移動したとき、第2噛合部材がスリーブ部材の歯状部と噛合することができる。
【0008】
上述の実施形態に基づく方向切替構造を有するソケットレンチにおいて、シャフトは、位置決め溝、位置決め部材及び第2弾性部材をさらに含むことができる。位置決め溝は、柱状表面上に設けられている。位置決め部材は、位置決め溝内に伸縮可能に設けられている。第2弾性部材は、位置決め溝中に設けられ、且つ位置決め部材と当接するのに用いられる。
【0009】
上述の実施形態に基づく方向切替構造を有するソケットレンチにおいて、スリーブ部材は、複数の溝をさらに含むことができ、溝はそれぞれ収容端の内壁の軸方向に沿って異なる位置に位置しており、且つ位置決め部材は溝のうちの1つに嵌入される。
【0010】
上述の実施形態に基づく方向切替構造を有するソケットレンチにおいて、第1噛合部材及び第2噛合部材は、各々が2つの突起部を含むことができ、突起部はそれぞれ第1噛合部材及び第2噛合部材の2つの側に設けられ、且つ突起部はそれぞれ第1収容溝の内壁及び第2収容溝の内壁と当接するのに用いられる。
【0011】
上述の実施形態に基づく方向切替構造を有するソケットレンチにおいて、各突起部の2つの端部は、それぞれが円弧面を有することができる。
【0012】
上述の実施形態に基づく方向切替構造を有するソケットレンチにおいて、収容端は、平滑部をさらに含むことができ、平滑部は、収容端の内壁に位置し、且つスリーブ部材の一端から歯状部よりも近い。
【0013】
上述の実施形態に基づく方向切替構造を有するソケットレンチにおいて、シャフトは、外側溝をさらに含むことができ、外側溝は、柱状表面上に設けられ、且つシャフトの一端から第1収容溝及び第2収容溝よりも離れている。
【0014】
上述の実施形態に基づく方向切替構造を有するソケットレンチにおいて、シャフトは、係合部をさらに含むことができ、係合部は、シャフトの軸方向に沿って第1収容溝と第2収容溝との間に設けられ、柱状表面から半径方向に突出しており、且つスリーブ部材の歯状部は、第1噛合部材、第2噛合部材及び係合部のうちの1つと選択的に噛合する。
【0015】
上述の実施形態に基づく方向切替構造を有するソケットレンチにおいて、シャフトは、少なくとも1つの結合溝をさらに含むことができ、結合溝は、柱状表面に設けられ、且つそのエンティティは第1収容溝と第2収容溝のうちの少なくとも一方と接触する。
【0016】
上述の実施形態に基づく方向切替構造を有するソケットレンチは、少なくとも1つの結合部材をさらに含むことができ、結合部材は結合溝に設けられ、且つそのエンティティは第1噛合部材と第2噛合部材のうちの少なくとも一方と接触する。
【0017】
上述の実施形態に基づく方向切替構造を有するソケットレンチにおいて、結合部材は、第1結合端と第2結合端をさらに含むことができる。第1結合端のエンティティは、第1噛合部材と第2噛合部材のうちの少なくとも一方の一端と接触する。第2結合端は、シャフトの柱状表面に係着固定される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の1つの実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチの分解図である。
図2図1の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチの横断面図である。
図3図1の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチの一部透視図である。
図4図1の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチの別の一部透視図である。
図5図1の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチの一部断面図である。
図6】本発明の1つの実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチの一部断面図である。
図7図6の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチの別の一部断面図である。
図8図6の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチのさらに別の一部断面図である。
図9】本発明の1つの実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチの一部概念図である。
図10図9の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチの横断面図である。
図11図9の実施形態における、シャフトの概念図である。
図12図9の実施形態における、第1噛合部材の概念図である。
図13図9の実施形態における、結合部材の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
図1を参照されたい。それは、本発明の1つの実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチ100の分解図である。図1から分かるように、方向切替構造を有するソケットレンチ100は、シャフト110、スリーブ部材120、第1噛合部材130及び第2噛合部材140を含む。
【0020】
シャフト110は、柱状表面111を有し、且つ第1収容溝112と第2収容溝113を含み、第1収容溝112は、シャフト110の柱状表面111上に設けられ、第2収容溝113は、シャフト110の柱状表面111上に設けられ、且つ第1収容溝112と第2収容溝113とは、シャフト110の軸方向に沿って異なる位置に位置している。
【0021】
スリーブ部材120は、シャフト110に摺動可能に套設され、且つ収容端121と駆動端122を含む。収容端121は、シャフト110に套設するのに用いられ、スリーブ部材120の一端に位置し、且つ歯状部1211を含み、歯状部1211は、収容端121の内壁から内径方向に向かって突出している。駆動端122は、被締結部材(図示しない)に套設するのに用いられ、且つスリーブ部材120の他端に位置している。被締結部材は、ボルト又はネジでよいが、これらに限定されない。
【0022】
第1噛合部材130は、第1収容溝112内に伸縮可能に設けられ、且つ第1噛合部131を含み、第1噛合部131は、シャフト110の柱状表面111の半径方向に向かって突設されている。第2噛合部材140は、第2収容溝113内に伸縮可能に設けられ、且つ第2噛合部141を含み、第2噛合部141は、シャフト110の柱状表面111の半径方向に向かって突設されている。さらに、スリーブ部材120の歯状部1211は、第1噛合部材130と第2噛合部材140のどちらか一方と選択的に噛合する。これにより、方向切替構造を有するソケットレンチ100の操作の利便性を向上せしめる。
【0023】
方向切替構造を有するソケットレンチ100は、複数の第1弾性部材150をさらに含むことができ、第1弾性部材150は、第1収容溝112及び第2収容溝113中に設けられ、且つ第1噛合部材130及び第2噛合部材140と当接するのに用いられる。これにより、歯状部1211が第1噛合部材130と第2噛合部材140のどちらか一方と選択的に噛合するときに、緩衝の作用を果たすことができる。図1の実施形態では、第1弾性部材150の数は4つであり、第1弾性部材150のうちの2つは第1収容溝112の収容穴1121中に設けられ、第1弾性部材150のうちの他の2つは第2収容溝113の収容穴1131(図2に示す)中に設けられているが、これに限定されない。
【0024】
方向切替構造を有するソケットレンチ100は、さらにハンドル160を含み、ハンドル160は、シャフト110の一端に接続されている。具体的には、ハンドル160はT字形又はL字形でよく、図1の実施形態では、ハンドル160はT字形であるが、これに限定されない。これにより、使用者は、方向切替構造を有するソケットレンチ100を便利に使用することができる。
【0025】
図2図4を参照されたい。図2は、図1の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチ100の横断面図であり、図3は、図1の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチ100の一部透視図であり、図4は、図1の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチ100の別の一部透視図である。図2図4から分かるように、スリーブ部材120がシャフト110に対して軸方向に第1位置まで移動したとき、第1噛合部材130がスリーブ部材120の歯状部1211と噛合することができ、スリーブ部材120がシャフト110に対して軸方向に第2位置まで移動したとき、第2噛合部材140がスリーブ部材120の歯状部1211と噛合することができる。つまり、シャフト110とスリーブ部材120の相対的位置を軸方向の移動によって変えることにより、歯状部1211の噛合する対象を変えることができる。
【0026】
例を挙げると、スリーブ部材120がシャフト110に対して軸方向に第1位置まで移動し、且つシャフト110が第2方向D2に沿って回転した場合には、歯状部1211の第2咬合面1211bが第1噛合部材130を付勢して第1弾性部材150を押動させ、これにより第1噛合部材130が第2咬合面1211bから離れる。シャフト110が第1方向D1に沿って回転した場合には、歯状部1211の第1咬合面1211aと第1噛合部材130とで相殺されるため、第1弾性部材150の弾性抵抗力を克服できず、第1噛合部材130が歯状部1211と噛合し、シャフト110がスリーブ部材120を連動させて第1方向D1沿いに回転させられるようになる。スリーブ部材120がシャフト110に対して軸方向に第2位置まで移動し、且つシャフト110が第1方向D1に沿って回転した場合には、歯状部1211の第1咬合面1211aが第2噛合部材140を付勢して第1弾性部材150を押動させ、これにより第2噛合部材140が第1咬合面1211aから離れる。シャフト110が第2方向D2に沿って回転した場合には、歯状部1211の第2咬合面1211bと第2噛合部材140とで相殺されるため、第1弾性部材150の弾性抵抗力を克服できず、第2噛合部材140が歯状部1211と噛合し、シャフト110がスリーブ部材120を連動させて第2方向D2沿いに回転させられるようになる。
【0027】
また、第1方向D1は、時計回り方向と反時計回り方向のどちらか一方でよく、かつ第2方向D2は時計回り方向と反時計回り方向のうちの他方でよい。図2の実施形態では、第1方向D1は反時計回り方向であり、第2方向D2は時計回り方向である。
【0028】
図1図3及び図4から分かるように、シャフト110は、位置決め溝114、位置決め部材115及び第2弾性部材116をさらに含み、位置決め溝114は、柱状表面111上に設けられ、位置決め部材115は、位置決め溝114内に伸縮可能に設けられ、第2弾性部材116は、位置決め溝114中に設けられ、且つ位置決め部材115と当接するのに用いられる。また、スリーブ部材120は、複数の溝1231、1232をさらに含み、溝1231、1232はそれぞれ収容端121の内壁に位置し、溝1231、1232どうしは間隔を有しており、且つ位置決め部材115は溝1231、1232のうちの1つに嵌入される。これにより、スリーブ部材120の歯状部1211が第1噛合部材130と第2噛合部材140のどちらか一方と選択的に噛合したとき、位置決め部材115がシャフト110とスリーブ部材120との間を固定する咬合強度をより一層強化せしめる。図1の実施形態中、位置決め部材115の数は2つであり、第2弾性部材116の数は2つであるが、これらに限定されない。
【0029】
図1から分かるように、第1噛合部材130及び第2噛合部材140は、各々が2つの突起部を含み、第1噛合部材130は突起部132を含み、第2噛合部材140は突起部142を含む。突起部132は第1噛合部材130の2つの側に設けられ、突起部132は第1収容溝112の内壁と当接するのに用いられる。突起部142は第2噛合部材140の2つの側に設けられ、且つ突起部142は第2収容溝113の内壁と当接するのに用いられる。これにより、第1噛合部材130及び第2噛合部材140が第1収容溝112及び第2収容溝113から外れないよう防止することができる。さらに、突起部132、142の2つの端部は、それぞれが円弧面を有する。これにより、第1噛合部材130及び第2噛合部材140を第1収容溝112及び第2収容溝113において若干揺動させることができ、これによって第1収容溝112、第2収容溝113中における突起部132、142の回転の滑らかさを増加させている。
【0030】
図5を参照されたい。それは、図1の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチ100の一部断面図である。図1及び図5から分かるように、収容端121は平滑部1212をさらに含み、平滑部1212は収容端121の内壁に位置しており、且つ平滑部1212はスリーブ部材120の一端から歯状部1211よりも近い。
【0031】
図1図3図4及び図5から分かるように、シャフト110は外側溝をさらに含み、外側溝は柱状表面111上に設けられ、且つ外側溝はシャフト110の一端から第1収容溝112及び第2収容溝113よりも離れている。図1の実施形態中、シャフト110は、第1外側溝1171と第2外側溝1172を含み、第1外側溝1171はシャフト110の一端から第2外側溝1172よりも離れており、且つ第1外側溝1171と第2外側溝1172との間は間隔を有している。具体的には、第1外側溝1171と第2外側溝1172との間の間隔は、溝1231、1232どうしの間隔と対応させることができるが、これに限定されない。
【0032】
さらに、第1噛合部材130がスリーブ部材120の歯状部1211と噛合したとき、第1外側溝1171は収容端121の縁部に位置しており、且つ第2外側溝1172はスリーブ部材120内に位置している。第2噛合部材140がスリーブ部材120の歯状部1211と噛合したとき、第2外側溝1172は収容端121の縁部に位置しており、且つ第1外側溝1171は収容端121から離れている。これにより、第1外側溝1171及び第2外側溝1172によって、現在スリーブ部材120の歯状部1211が噛合しているのは第1噛合部材130か、又は第2噛合部材140かを判断することができる。
【0033】
具体的には、第1位置は、図3及び図5に示す通り、第1噛合部材130は歯状部1211に位置し、第2噛合部材140は溝1231、1232の間に位置し、位置決め部材115は溝1231に嵌入され、且つ第1外側溝1171は収容端121の縁部に位置している。第2位置は、図4に示す通り、第2噛合部材140は歯状部1211に位置し、第1噛合部材130は平滑部1212に位置し、位置決め部材115は溝1232に嵌入され、且つ第2外側溝1172は収容端121の縁部に位置している。
【実施例2】
【0034】
図6図8を参照されたい。図6は、本発明の1つの実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチ200の一部断面図であり、図7は、図6の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチ200の別の一部断面図であり、図8は、図6の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチ200のさらに別の一部断面図である。図6図8から分かるように、方向切替構造を有するソケットレンチ200は、シャフト210、スリーブ部材220、第1噛合部材230及び第2噛合部材240を含む。
【0035】
シャフト210は柱状表面(図示しない)を有し、且つ第1収容溝(図示しない)と第2収容溝(図示しない)を含み、第1収容溝は、シャフト210の柱状表面上に設けられ、第2収容溝は、シャフト210の柱状表面上に設けられ、且つ第1収容溝と第2収容溝とは、シャフト210の軸方向に沿って異なる位置に位置している。
【0036】
スリーブ部材220は、シャフト210に摺動可能に套設され、且つ収容端221と駆動端222を含む。収容端221は、シャフト210に套設するのに用いられ、スリーブ部材220の一端に位置し、且つ歯状部2211を含み、歯状部2211は、収容端221の内壁から内径方向に向かって突出している。駆動端222は、被締結部材(図示しない)に套設するのに用いられ、且つスリーブ部材220の他端に位置している。
【0037】
第1噛合部材230は、第1収容溝内に伸縮可能に設けられ、且つ第1噛合部(図示しない)を含み、第1噛合部は、シャフト210の柱状表面の半径方向に向かって突設されている。第2噛合部材240は、第2収容溝内に伸縮可能に設けられ、且つ第2噛合部(図示しない)を含み、第2噛合部は、シャフト210の柱状表面の半径方向に向かって突設されている。さらに、スリーブ部材220の歯状部2211は、第1噛合部材230と第2噛合部材240のどちらか一方と選択的に噛合する。これにより、方向切替構造を有するソケットレンチ200の操作の利便性を向上せしめる。
【0038】
シャフト210は、係合部218をさらに含むことができ、係合部218は、シャフト210の軸方向に沿って第1収容溝と第2収容溝との間に設けられ、柱状表面から半径方向に突出しており、且つスリーブ部材220の歯状部2211は、第1噛合部材230、第2噛合部材240及び係合部218のうちの1つと選択的に噛合する。
【0039】
シャフト210は、位置決め溝(図示しない)、位置決め部材215及び第2弾性部材(図示しない)をさらに含み、位置決め溝は、柱状表面上に設けられ、位置決め部材215は、位置決め溝内に伸縮可能に設けられ、第2弾性部材は、位置決め溝中に設けられ、且つ位置決め部材215と当接するのに用いられる。また、スリーブ部材220は、複数の溝2231、2232、2233をさらに含み、溝2231、2232、2233はそれぞれ収容端221の内壁に位置し、溝2231、2232、2233のうち、2つの間は間隔を有しており、且つ位置決め部材215は溝2231、2232、2233のうちの1つに嵌入される。これにより、スリーブ部材220の歯状部2211が第1噛合部材230、第2噛合部材240及び係合部218のうちの1つと選択的に噛合したとき、位置決め部材215がシャフト210とスリーブ部材220との間を固定する咬合強度をより一層強化せしめる。
【0040】
シャフト210は外側溝をさらに含み、外側溝は柱状表面上に設けられ、且つシャフト210の一端から第1収容溝212及び第2収容溝213よりも離れている。図6の実施形態中、シャフト210は、第1外側溝2171、第2外側溝2172及び第3外側溝2173を含み、第1外側溝2171はシャフト210の一端から第2外側溝2172よりも離れており、第2外側溝2172はシャフト210の一端から第3外側溝2173よりも離れており、且つ第1外側溝2171、第2外側溝2172及び第3外側溝2173の間は間隔を有している。具体的には、第1外側溝2171と第2外側溝2172との間の間隔は、溝2231、2232どうしの間隔と対応させることができ、且つ第2外側溝2172と第3外側溝2173との間の間隔は、溝2232、2233どうしの間隔と対応させることができるが、これらに限定されない。
【0041】
さらに、図6に示す通り、第1噛合部材230がスリーブ部材220の歯状部2211と噛合したとき、第1外側溝2171は収容端221の縁部に位置しており、且つ位置決め部材215は溝2231に嵌入される。図7に示す通り、係合部218がスリーブ部材220の歯状部2211と噛合したとき、第1噛合部材230は収容端221の平滑部2212に位置し、第2外側溝2172は収容端221の縁部に位置しており、且つ位置決め部材215は溝2232に嵌入される。図8に示す通り、第2噛合部材240がスリーブ部材220の歯状部2211と噛合したとき、第1噛合部材230と係合部218は収容端221に位置する平滑部2212に位置し、第3外側溝2173は収容端221の縁部に位置しており、且つ位置決め部材215は溝2233に嵌入される。これにより、第1外側溝2171、第2外側溝2172及び第3外側溝2173によって、現在スリーブ部材220の歯状部2211が噛合しているのは第1噛合部材230か、第2噛合部材240か、又は係合部218かを判断することができる。
【0042】
なお、説明すべき点として、係合部218がスリーブ部材220の歯状部2211と噛合したとき、シャフト210がスリーブ部材220に対して回転させられることはない。
【0043】
また、図6の実施形態は、図1の実施形態の他の構成部品の構造及び配置関係とすべて同じであり、ここでは説明を省略する。
【実施例3】
【0044】
図9図11を参照されたい。図9は、本発明の1つの実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチ300の一部概念図であり、図10は、図9の実施形態における、方向切替構造を有するソケットレンチ300の横断面図であり、図11は、図9の実施形態における、シャフト310の概念図である。図9図11から分かるように、方向切替構造を有するソケットレンチ300は、シャフト310、スリーブ部材320、第1噛合部材330及び第2噛合部材340を含む。
【0045】
シャフト310は、柱状表面311を有し、且つ第1収容溝312と第2収容溝313を含み、第1収容溝312は、シャフト310の柱状表面311上に設けられ、第2収容溝313は、シャフト310の柱状表面311上に設けられ、且つ第1収容溝312と第2収容溝313とは、シャフト310の軸方向に沿って異なる位置に位置している。
【0046】
スリーブ部材320は、シャフト310に摺動可能に套設され、且つ収容端(図示しない)と駆動端(図示しない)を含む。収容端は、シャフト310に套設するのに用いられ、スリーブ部材320の一端に位置し、且つ歯状部3211を含み、歯状部3211は、収容端の内壁から内径方向に向かって突出している。駆動端は、被締結部材(図示しない)に套設するのに用いられ、且つスリーブ部材320の他端に位置している。
【0047】
第1噛合部材330は、第1収容溝312内に伸縮可能に設けられ、且つ第1噛合部331を含み、第1噛合部331は、シャフト310の柱状表面311の半径方向に向かって突設されている。第2噛合部材340は、第2収容溝313内に伸縮可能に設けられ、且つ第2噛合部341を含み、第2噛合部341は、シャフト310の柱状表面311の半径方向に向かって突設されている。さらに、スリーブ部材320の歯状部3211は、第1噛合部材330と第2噛合部材340のどちらか一方と選択的に噛合する。これにより、方向切替構造を有するソケットレンチ300の操作の利便性を向上せしめる。
【0048】
方向切替構造を有するソケットレンチ300は、複数の第1弾性部材350をさらに含むことができ、第1弾性部材350は、第1収容溝312及び第2収容溝313中に設けられ、且つ第1噛合部材330及び第2噛合部材340と当接するのに用いられる。これにより、緩衝の作用が果たされる。
【0049】
図9から分かるように、第1噛合部材330及び第2噛合部材340は、各々が2つの突起部を含み、第1噛合部材330は突起部332(図12に示す)を含み、第2噛合部材340は突起部342を含む。突起部332は第1噛合部材330の2つの側に設けられ、突起部332は第1収容溝312の内壁と当接するのに用いられる。突起部342は第2噛合部材340の2つの側に設けられ、且つ突起部342は第2収容溝313の内壁と当接するのに用いられる。これにより、第1噛合部材330及び第2噛合部材340が第1収容溝312及び第2収容溝313から外れないよう防止することができる。さらに、突起部332、342の2つの端部は、それぞれが円弧面を有する。これにより、第1噛合部材330及び第2噛合部材340を第1収容溝312及び第2収容溝313において若干揺動させることができ、これによって第1収容溝312、第2収容溝313中における突起部332、342の回転の滑らかさを増加させている。
【0050】
シャフト310は、係合部318をさらに含むことができ、係合部318は、シャフト310の軸方向に沿って第1収容溝312と第2収容溝313との間に設けられ、柱状表面311から半径方向に突出しており、且つスリーブ部材320の歯状部3211は、第1噛合部材330、第2噛合部材340及び係合部318のうちの1つと選択的に噛合する。
【0051】
図11から分かるように、シャフト310は、少なくとも1つの結合溝319をさらに含み、柱状表面311に設けられ、且つそのエンティティは第1収容溝312と第2収容溝313のうちの少なくとも一方と接触する。また、方向切替構造を有するソケットレンチ300は、少なくとも1つの結合部材370をさらに含み、結合部材370は結合溝319に設けられ、且つそのエンティティは第1噛合部材330と第2噛合部材340のうちの少なくとも一方と接触する。図9の実施形態では、結合部材370の数は2つであり、且つそれぞれのエンティティが第1噛合部材330及び第2噛合部材340と接触している。
【0052】
図12及び図13を参照されたい。図12は、図9の実施形態における、第1噛合部材330の概念図であり、図13は、図9の実施形態における、結合部材370の概念図である。図12及び図13から分かるように、結合部材370は、第1結合端371と第2結合端372を含み、第1結合端371のエンティティは、第1噛合部材330と第2噛合部材340のうちの少なくとも一方の一端と接触し、且つ第2結合端372は、シャフト310の柱状表面311に係着固定される。具体的には、第1噛合部材330を例とすると、第1結合端371のエンティティは、第1噛合部材330の結合端333と接触する。結合部材370が第1噛合部材330、第2噛合部材340のエンティティと接触することにより、第1噛合部材330及び第2噛合部材340が第1収容溝312及び第2収容溝313から外れないよう、より一層防止することができる。
【0053】
また、図9の実施形態は、図1の実施形態、図6実施形態の他の構成部品の構造及び配置関係とすべて同じであり、ここでは説明を省略する。
【0054】
要約すると、本開示内容の方向切替構造を有するソケットレンチによって、方向切替構造を有するソケットレンチの操作の利便性を向上させ得るだけでなく、シャフトとスリーブ部材との間の咬合強度が向上するため、方向切替構造を有するソケットレンチのトルク強度が増加する。これにより、方向切替構造を有するソケットレンチの使用の幅広さが向上する。
【0055】
本発明を上記の実施形態により開示したが、それらは本発明を限定するものではなく、いずれの技術分野における当業者も本発明の精神及び範囲を逸脱することなく幾らかの変更や修飾を行うことが可能であり、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲が定めるところに準ずるものとする。
【符号の説明】
【0056】
100、200、300 方向切替構造を有するソケットレンチ
110、210、310 シャフト
111、311 柱状表面
112、212、312 第1収容溝
1121、1131 収容穴
113、213、313 第2収容溝
114 位置決め溝
115、215 位置決め部材
116 第2弾性部材
1171、2171 第1外側溝
1172、2172 第2外側溝
120、220、320 スリーブ部材
121、221 収容端
1211、2211、3211 歯状部
1212、2212 平滑部
122、222 駆動端
1231、1232、2231、2232、2233 溝
130、230、330 第1噛合部材
131、331 第1噛合部
132、142、332、342 突起部
140、240、340 第2噛合部材
141、341 第2噛合部
150、350 第1弾性部材
160 ハンドル
2173 第3外側溝
218、318 係合部
319 結合溝
333 結合端
370 結合部材
371 第1結合端
372 第2結合端
D1 第1方向
D2 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13