(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】環境形成装置、及び環境形成装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20221020BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
F24F6/00 A
G01N17/00
(21)【出願番号】P 2022000692
(22)【出願日】2022-01-05
【審査請求日】2022-03-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596034931
【氏名又は名称】エタックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下重 高史
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-166748(JP,A)
【文献】特開2016-008784(JP,A)
【文献】特開2008-298358(JP,A)
【文献】国際公開第2020/032055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境形成を行う環境形成室内を加湿可能な加湿器を備える環境形成装置において、
前記加湿器に供給する水を貯水する給水槽と、
前記給水槽に貯水された水の残量を計測するための残量センサと、
前記環境形成室内の温湿度設定と単位時間あたりに消費される水の推定消費水量との関係を示すデータと前記残量、または、単位時間あたりに消費された水の実消費水量と前記残量とに基づいて前記給水槽の水がなくなるまでの残り時間を算出し、前記残り時間
に対して一定時間短い時間を、水を給水するまでの補充時間として報知
し、前記補充時間における給水が必要になる下限管理残量を前記温湿度設定に応じて変化させる水量管理部と、
を備えることを特徴とする環境形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の環境形成装置であって、
前記残量センサは、水を貯水する前記給水槽の重量を計測する重量センサであって、
前記水量管理部は、計測された前記重量に基づいて前記残量を算出することを特徴とする環境形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の環境形成装置であって、
前記環境形成室内の前記温湿度設定を表示可能な表示装置をさらに備え、
前記水量管理部は、前記補充時間を前記表示装置に表示することを特徴とする環境形成装置。
【請求項4】
環境形成を行う環境形成室内を加湿可能な加湿器を備える環境形成装置に用いる環境形成装置用プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記加湿器に供給する水を貯水する給水槽の水の残量を、残量センサを用いて計測させ、
前記環境形成室内の温湿度設定と単位時間あたりに消費される水の推定消費水量との関係を示すデータと前記残量、または、単位時間あたりに消費された水の実消費水量と前記残量とに基づいて前記給水槽の水がなくなるまでの残り時間を算出させ、
前記残り時間
に対して一定時間短い時間を、水を給水するまでの補充時間として報知さ
せ、前記補充時間における給水が必要になる下限管理残量を前記温湿度設定に応じて変化させることを特徴とする環境形成装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境形成装置、及び環境形成装置用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境形成室内の温度ばらつきを小さくする環境形成装置や、湿度制御の乱れが発生することを抑制する環境形成装置がある(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-032601号公報
【文献】特開2021-032537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境形成装置においては、温度とともに湿度を安定して制御する上で、加湿器に供給する水の残量を管理することが重要である。しかしながら従来の水の残量管理は作業者の経験に基づいて行われており改善の余地があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、加湿器に供給する水の残量を容易に管理できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、環境形成を行う環境形成室内を加湿可能な加湿器を備える環境形成装置において、前記加湿器に供給する水を貯水する給水槽と、前記給水槽に貯水された水の残量を計測するための残量センサと、前記環境形成室内の温湿度設定と単位時間あたりに消費される水の推定消費水量との関係を示すデータと前記残量、または、単位時間あたりに消費された水の実消費水量と前記残量とに基づいて前記給水槽の水がなくなるまでの残り時間を算出し、前記残り時間に対して一定時間短い時間を、水を給水するまでの補充時間として報知し、前記補充時間における給水が必要になる下限管理残量を前記温湿度設定に応じて変化させる水量管理部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、加湿器に供給する水の残量を容易に管理できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態による環境形成装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態による環境形成装置の全体構成を説明する図である。
【
図3A】
図3Aは、本実施形態による残量センサに重量センサを用いる場合の例を説明する図である。
【
図3B】
図3Bは、本実施形態による残量センサに重量センサを用いる場合の別例を説明する図である。
【
図4】
図4は、水量管理システムの構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、給水槽53の水がなくなるまでの消費時間について説明するグラフである。
【
図6】
図6は、単位時間あたりに消費される水の推定消費水量と、環境形成室内の温湿度設定との関係を示すデータを説明するグラフである。
【
図7】
図7は、表示部の表示態様の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態による環境形成装置100の斜視図である。
【0011】
環境形成装置100は、本体としての筐体10と、筐体10に設けられ開閉可能な開閉扉20とを備えており、図示しない架台によって支持されている。
【0012】
開閉扉20は、開閉に用いる扉開閉ハンドル21を備える。また、開閉扉20には、電源スイッチや操作パネル等からなる操作部22と、温湿度等の状態や設定を表示可能なディスプレイとしての表示部23と、筐体10の内部を見るための窓部24と、これらを取り囲み収容する化粧カバー25と、が設けられる。
【0013】
次に、
図2を参照して環境形成装置100の構成をより詳細に説明する。
図2は、本実施形態による環境形成装置100の全体構成を説明する図である。
【0014】
筐体10の内部、すなわち筐体10と開閉扉20とによって構成される断熱層によって区画された空間が、環境形成室10aを形成する。
【0015】
開閉扉20は、外部から環境形成室10a内を見るための窓部24と、環境形成室10a内を照らすLEDユニット30と、筐体10との間で密閉を取るパッキン等のシール部26と、小型送風機としてのファン27と、を備える。
【0016】
窓部24は、断熱構造の複数層の窓ガラスからなる複層ガラス24aと、アクリル透明化粧カバーの観察窓24bと、窓部24を開閉扉20に取り付けるための窓ガラス取付枠24cと、窓枠ヒータ24dと、遮光板24eと、から構成される。
【0017】
複層ガラス24aは、結露防止用のフィルムヒータを両面に有する。また、窓枠ヒータ24dによって、開閉扉20の表面の結露を防止することもできる。フィルムヒータと窓枠ヒータ24dとともに、ファン27の送風を行うことで、結露をより防止し易くできる。
【0018】
遮光板24eは、LEDユニット30の光を遮り外部に漏れないようにする板部材である。LEDユニット30は、LED31と、LED31を支えるヒンジであるLED支持部32と、を有する。LED31のオン/オフは、例えば、ユーザが環境形成室10a内の試料を観察する際に、開閉扉20の操作部22の操作パネルで行うことができる。
【0019】
環境形成室10aの奥側には、開閉扉20との間で仕切板11を挟むように、ヒータ12、エバポレータ13、ファン14、および加湿器51が設けられる。このように、環境形成室10aは、仕切板11によって、試料を配置するための空間と、環境形成室10a内を所定の温湿度にする装置を配置するための空間とに区画される。
【0020】
ヒータ12は、環境形成室10a内で通過する空気を暖める。ヒータ12には、例えば、シーズヒータやPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータが用いられる。
【0021】
エバポレータ13は、環境形成室10a内で通過する空気を冷却する。具体的には、エバポレータ13は、空気の熱を、内部を循環する冷媒(例えばR-448AやR-469A)に吸収させる。エバポレータ13によって蒸発した冷媒は、冷媒回路を通って冷凍機ユニット17へ流れる。
【0022】
冷凍機ユニット17は、内部にコンプレッサと槽外熱交換器と膨張弁とを有している。エバポレータ13から流れてきた冷媒は、コンプレッサで圧縮された後、槽外熱交換器に流されて外部の空気と熱交換を行うことで冷却される。冷却され凝縮した冷媒は、膨張弁を通ることで減圧膨張し、さらに冷却された後、エバポレータ13へと流れることで、環境形成室10a内の空気を冷却するために再度使用される。
【0023】
また、ファン14は、筐体10外部に設けられたモータ15によって回転駆動され、環境形成室10a内の空気を循環させる。ファン14には、例えば、シロッコファンが用いられる。環境形成室10a内の空気は、
図2に矢印で示すように、試料を配置するための空間と、環境形成室10a内を所定の温湿度にする装置が配置された空間とを循環する。このように環境形成室10a内の空気を循環させることによって、環境形成室10a全体の温湿度ばらつきを略均一にできる。
【0024】
加湿器51は、環境形成室10a内を加湿する。加湿器51は、加湿パンからなる加湿水槽51aと、加湿水槽51a内の水を暖めて蒸発させる加湿ヒータ51bとを有する。
【0025】
加湿ヒータ51bには、例えばシーズヒータが用いられる。加湿水槽51aの水は、
図2に示すようにウォータポンプ52によって給水回路を通って、給水タンクとしての給水槽53から供給される。また、加湿器51の加湿水槽51aの水には、ミネラル分やカルキ、シリカ等の不純物が加湿ヒータ51bや給水回路に付着しないように、例えば伝導率10μS/cm以下の純水が使用される。このように、加湿器51とウォータポンプ52と給水槽53とは、加湿ユニット50として機能する。なお、給水槽53を加湿水槽51aよりも高い位置に配置し、ウォータポンプ52の代わりに重力によって水を落下させて供給するようにしてもよい。
【0026】
給水槽53には、残量センサ43が設けられる。残量センサ43は、給水槽53に貯水された水の残量を計測するためのセンサである。例えば、残量センサ43は、後述するように給水槽53の重量を計測するロードセル等の重量センサであるが、給水槽53の水の量(液面レベル)を計測するレベルセンサやフロートスイッチであってもよい。
【0027】
また、筐体10には、環境形成室10a内の温度や湿度を計測する室内センサ41(室内温湿度センサ)と、環境形成室10aの周囲の温度を計測する周囲温度センサ42とが設けられる。
【0028】
コントローラ40には、残量センサ43からの信号と、室内センサ41からの信号と、周囲温度センサ42からの信号等が入力される。コントローラ40(温湿度コントローラ)は、環境形成室10a内を所定の温度や湿度(温湿度)に制御することができる。
【0029】
コントローラ40は、演算/制御装置としてのCPU(Central Processing Unit)、および各種記憶装置を備えたコンピュータとして構成され、各種記憶装置に記憶されたプログラム(ソフトウェア)をCPUによって読み出すことで、環境形成装置100に各種機能を発揮させる。なお、各種記憶装置は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、及びハードディスク(磁気記憶装置)である。さらに、コントローラ40は、操作部22や表示部23とは別に、キーボード、マウス、タッチパネル、ディスプレイ、プリンタ、及びI/Oポート等といった入出力装置を備えてもよく、操作部22や表示部23がこれらの入出力装置を備えてもよい。そして、コントローラ40は、これら各ハードウェアを用いて環境形成室10a内を所定の温度や湿度(温湿度)に制御する環境形成装置100の制御部として機能する。
【0030】
続いて、
図3Aおよび
図3Bを参照して重量センサとしての残量センサ43の構成を説明する。
図3Aは、本実施形態による残量センサ43に重量センサを用いる場合の例を説明する図であり、
図3Bは、本実施形態による残量センサ43に重量センサを用いる場合の別例を説明する図である。
【0031】
残量センサ43は、例えば、
図3Aに示すように給水槽53の下面に置く圧縮式の重量センサであってもよく、
図3Bに示すように内部に給水槽53を配置したかご形状のケース55を吊り下げて計測する引っ張り式の重量センサであってもよい。
【0032】
図3Aに示すように、残量センサ43が圧縮式の重量センサである場合、給水槽53は、残量センサ43の上に取り付けられた計測台としてのケース55上に載置される。また、ばね54は、ケース55が傾かないようにケース55下面の四隅に上下に伸縮可能に取り付けられ、残量センサ43はこれらのばね54の中心に配置される。残量センサ43には上から給水槽53とケース55の荷重がかけられる。このように、残量センサ43上に給水槽53を直接配置することに代えて、ケース55上に載置することで、加湿ユニット50から給水槽53が取り外し易くなり、水を補充し易くできる。
【0033】
また、
図3Bに示すように、残量センサ43が引っ張り式の重量センサである場合、例えば給水槽53は、蓋56の取り付けられたケース55上に載置される。また、ばね54は、ケース55が傾かないようにケース55下面の四隅に上下に伸縮可能に取り付けられる。残量センサ43は、蓋56の上に取り付けられる。残量センサ43が蓋56を吊り下げることで、残量センサ43には、蓋56と給水槽53とケース55の荷重がかけられる。また、給水槽53の水の補充は、蓋56をケース55から取り外してから行われる。このように、引っ張り式の重量センサを用いても、圧縮式の重量センサを用いる場合と同様に加湿ユニット50から給水槽53が取り外し易くなり、水を補充し易くできる。
【0034】
図3Aおよび
図3Bに示すように、残量センサ43に重量センサを用いることによって、給水槽53が半透明であり目視確認する上での視認性が悪い場合でも、ロードセルが受けた重量から水の残量を簡単に監視できる。また、重量センサを用いることで、給水槽53内にレベルセンサ等を設ける必要がなく電気信号の配線接続等をなくせるので、作業者の作業負担を軽減できるとともに、コストを安価にできる。
【0035】
また、給水槽53の水は、環境形成室10a内の加湿に使用するために加湿水槽51aへ供給されることで減少し、一定の間隔で補充する必要がある。そのため、コントローラ40は、残量センサ43によって給水槽53の水の残量を監視し、水を給水するまでの補充時間を報知する水量管理部としても機能する。
【0036】
次に、
図4を参照して、水量管理部として機能するコントローラ40を用いた水量管理システムについて説明する。
図4は、水量管理システムの構成例を示すブロック図である。
【0037】
コントローラ40は、所定の信号受信間隔(例えば1分)で残量センサ43から給水槽53の重量に関する計測信号を受信すると、当該信号を受信した時刻(信号受信時刻)とともに重量を記憶装置に記憶する。
【0038】
そして、コントローラ40は、計測した重量とともに信号受信時刻を計測時刻として用いて、給水槽53の水がなくなる(枯渇する)までの残り時間(時間)を算出(予測)する。
【0039】
図5は、給水槽53の水がなくなるまでの残り時間について説明するグラフである。
【0040】
水の残量は、
図5に示すように、使用時間が長くなるにつれて残量H(High)から残量L(Low)に減少する。残量Hは、給水槽53が満水のときの残量(上限管理残量)である。残量Lは、水の給水が必要になる残量(下限管理残量)である。コントローラ40は、残量Lになる時間を、水を給水するまでの補充時間として設定するために以下の処理を行う。
【0041】
まず、コントローラ40は、計測時刻における計測した重量から水の残量(重量)を求める(「水の重量」=「計測した重量」-「給水槽53およびケース55の重量」)。なお、水の残量は、水の重量から求めることができる(例えば、水1Lは約1kgとなる)。
【0042】
次に、コントローラ40は、給水槽53の水がなくなるまでの残り時間(時間)を算出(予測)する。
図5に示すように、水の残量が少ないほど、水がなくなるまで(残量0になるまで)の残り時間、すなわち水切れ時間(枯渇時間)になるまでの時間は短く算出される。
【0043】
ここで、単位時間(例えば10分)あたりに消費される水の推定消費水量は、
図6に示すように、環境形成室10a内の温湿度設定に応じて変化する。
【0044】
図6は、単位時間(例えば10分)あたりに消費される水の推定消費水量と、環境形成室10a内の温湿度設定との関係を示すデータを説明するグラフである。コントローラ40は、単位時間あたりに消費される水の推定消費水量のデータを、温湿度設定ごとに記憶装置内に予め記憶しており、当該データを呼び出し(参照し)、水の残量とともに当該データに基づいて残り時間を算出する。
【0045】
例えば、
図6に示すように、低温/中湿度(例えば10℃/50%RH)に設定されているときよりも、高温/高湿(例えば85℃/85%RH)に設定されているときの方が、加湿水槽51aの水が蒸発し易くなり給水槽53の水の残量が急激に減少し易くなる。そのため、高温/高湿(例えば85℃/85%RH)の方が水の推定消費水量が多くなり(
図6の線の傾きの絶対値が大きくなり)、水がなくなるまでの残り時間が短くなる。
【0046】
続いて、コントローラ40は、水がなくなるまでの残り時間より所定時間(例えば5時間)早い時間を、水を給水するまでの補充時間として設定する。コントローラ40は、下限管理残量である残量Lを、環境形成室10aの温湿度設定に応じて変えることができる。具体的には、残量Lは、そのまま使用を続けた際に、所定時間(例えば5時間)後に給水槽53の水がなくなると予測される残量として設定される。このように、残量Lは、水切れまでの残り時間よりも所定時間(例えば5時間)短い時間の残量、すなわち水を給水するまでの補充時間における残量になる。なお、コントローラ40は、環境形成室10a内の温湿度設定に依らずに、残量Lを所定量(例えば5L)に設定してもよい。
【0047】
例えば、
図6に示すように、単位時間あたりの水の推定消費水量が多い高温/高湿(例えば85℃/85%RH)のときの残量Lhhは、低温/中湿度(例えば10℃/50%RH)のときの残量Llmよりも多くなる。すなわち、単位時間あたりの水の推定消費水量が多くなり水がなくなり易い高温/高湿の温湿度設定のときの方が、水の推定消費水量が少ない低温/中湿度の温湿度設定のときよりも残量Lが多くなる。一方で、次回の水を給水する補充時間は、単位時間あたりの水の推定消費水量の多さに関わらず、所定時間(例えば5時間)のままとなるので、ユーザが時間管理を行い易くできる。
【0048】
また、コントローラ40は、
図7に示すように、水の残量と、設定した補充時間とを、開閉扉20の表示部23に表示する。
【0049】
図7は、表示部23の表示態様の一例を説明する図である。水の残量は、バーグラフや比率表示(パーセント表示、割合表示、例えば「50%」)等の視認性のよい態様で表示できる。補充時間は、例えば「残り25時間」と表示される。補充時間とともに水がなくなるまでの残り時間(例えば「残り30時間」)を合わせて表示してもよい。また、現在時刻(例えば「2022/1/7(金) 12:00」)や補充予定時刻(例えば「2022/1/8(土) 13:00」)や水切れ予定時刻(例えば「2022/1/8(土) 18:00」)を合わせて表示してもよい。
【0050】
補充時間は、残り時間より所定時間(例えば5時間)短い時間になり、補充予定時刻は、水切れ予定時刻より所定時間(例えば5時間)早い時刻になる。また、現在時刻から補充時間(例えば25時間)だけ経過した時刻が補充予定時刻になり、残り時間(例えば30時間)だけ経過した時刻が水切れ予定時刻になる。なお、西暦や曜日等は適宜非表示としてよく、12時間表示(AM/PM表示)や年号等を表示させるようにしてもよい。また、温湿度設定(例えば「85℃/85%RH」)を表示してもよく、残量の経時変化をグラフ表示させてもよい。また、コントローラ40は、表示部23に補充時間等を表示することに加えて、補充時間になった場合に、水を給水するようにアラート報知(給水お知らせ)を行ってもよい。
【0051】
さらに、コントローラ40は、水の残量や補充時刻等の情報を、表示部23に表示するとともにユーザの端末に送信してもよい。コントローラ40は、LAN(Local Area Network)等の狭域ネットワーク及びインターネット等の広域ネットワークによって構成されるネットワークを介して、水の残量や補充時刻等の情報を、メール等によりユーザの端末に送信し報知することができる。ユーザの端末には、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末、またはノートパソコンやデスクトップ等のパーソナルコンピュータを用いることができる。
【0052】
また、コントローラ40は、水の残量や補充時刻等の情報をネットワーク上のサーバに送信してもよく、ユーザがWebブラウザやスマートフォン等のアプリによって所定のWebサイトやイントラサイトやデータベース等にアクセスしてこれらの情報を閲覧できるようにしてもよい。なお、ユーザが、コントローラ40の記憶装置内に記憶した水の残量や補充時刻等に直接アクセスできるようにしてもよい。
【0053】
このように環境形成装置100のコントローラ40は、ユーザの端末との間でネットワークを介して必要なデータを送受信可能に構成されることができる。また、ネットワークを介してユーザが水の残量や補充時刻等の情報を得られるようにすることによって、ユーザが環境形成装置100から離れていても水の残量を管理することができる。
【0054】
また、コントローラ40は、実測した水の残量(重量)の経時変化から単位時間(例えば10分)あたりに実際に消費された水の実消費水量を算出し、当該実消費水量と残量とに基づいて給水槽53の水がなくなるまでの残り時間を算出してもよい。このように、記憶装置に予め記憶されている水の推定消費水量に代えて、実際に消費された実消費水量を用いることによって、環境形成装置100の実使用状態に合わせた水の残量管理をより的確に行うことができる。
【0055】
例えば、環境形成装置100の環境形成室10a内の温湿度は、開閉扉20の開閉によって設定された温湿度から乖離し易くなる。また、環境形成装置100の周囲温度によっても、環境形成室10aを形成する筐体10や開閉扉20の内側での結露の生じ易さが変わり、環境形成室10a内を設定された温湿度に保つために、より多くの水が消費され易くなる場合がある。また、複数の温湿度設定に順次変化させていく場合においても、設定移行時の環境形成室10a内の温湿度変化が設定毎に変わり複雑となり易くなる。このような場合に、実際に消費された実消費水量を用いることによって水の残量管理を行い易くできる。
【0056】
そこで、コントローラ40は、単位時間(例えば10分)ごとに計測した複数の重量から、水の残量の変化量を実消費水量として算出することができる。そして、コントローラ40は、算出した実消費水量と水の残量とに基づいて、給水槽53の水がなくなるまでの残り時間を算出(予測)でき、算出された残り時間より所定時間(例えば5時間)短い時間を、水を給水するまでの補充時間として設定できる。なお、複数の重量には、例えば直近に単位時間間隔で計測された2つの重量(例えば10分前の重量と20分前の重量)が用いられる。また、直近の3つ以上の重量の平均(例えば2点平均)から実消費水量の移動平均を算出して、表示部23やユーザの端末にグラフ表示させて水の残量変化の傾向がより分かり易くなるようにしてもよい。
【0057】
なお、環境形成装置100が稼働した直後の期間(例えば20分未満)は、複数の重量の単位時間ごとの計測がまだ行われていないが、当該期間は記憶装置に予め記憶した水の推定消費水量のデータを用いて前述したように水がなくなるまでの残り時間を算出(予測)してもよい。このように、コントローラ40は、環境形成室10a内の温湿度設定と単位時間あたりに消費される水の推定消費水量との関係を示すデータと残量、または、単位時間あたりに消費された水の実消費水量と残量とに基づいて給水槽53の水がなくなるまでの残り時間を算出することができる。
【0058】
以上説明した本実施形態にかかる環境形成装置100によれば、以下の作用効果を奏する。
【0059】
本実施形態の環境形成装置100は、環境形成を行う環境形成室としての環境形成室10a内を加湿可能な加湿器51を備える。環境形成装置100は、加湿器51に供給する水を貯水する給水槽53と、給水槽53に貯水された水の残量を計測するための残量センサ43と、環境形成室10a内の温湿度設定と単位時間(例えば10分)あたりに消費される水の推定消費水量との関係を示すデータと前記残量、または、単位時間(例えば10分)あたりに消費された水の実消費水量と残量とに基づいて給水槽53の水がなくなるまでの残り時間を算出し、残り時間より所定時間(例えば5時間)短い時間を、水を給水するまでの補充時間として報知する水量管理部としてのコントローラ40、を備える。
【0060】
このような環境形成装置100によれば、加湿器に供給する水の残量を容易に管理できるようになる。その結果、水を補充する的確なタイミングを分かり易くできるので残量不足になることを回避し易くできる。
【0061】
さらに、本実施形態の環境形成装置100では、残量センサ43は、水を貯水する給水槽53の重量を計測する重量センサであって、水量管理部としてのコントローラ40は、計測された重量に基づいて水の残量を算出する。
【0062】
このような環境形成装置100によれば、視認性が悪い素材が給水槽53に使われている場合でも計測された重量に基づいて水の残量を簡単に監視することができる。また、給水槽53内にレベルセンサ等を設ける必要がなく電気信号の配線接続等をなくせるので、作業者の作業負担を軽減できるとともに、コストを安価にできる。
【0063】
また、本実施形態の環境形成装置100では、環境形成室10a内の温湿度設定を表示可能な表示装置としての表示部23をさらに備える。水量管理部としてのコントローラ40は、補充時間を表示部23に表示する。
【0064】
このような環境形成装置100によれば、表示部23に表示された補充時間をユーザが視認することで、簡単に給水槽53の水の残量を監視することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0066】
例えば、上記実施形態における環境形成装置100のコントローラ40の各ハードウェア構成及びソフトウェア構成は一態様であり、本発明の技術的範囲に含まれる範囲で任意に変更が可能である。一例として、コントローラ40の各ハードウェア構成及び各ソフトウェア構成は、一台のコンピュータで実現されても良いし、ネットワーク上などで適宜複数台のコンピュータの機能を統合させたシステムとして実現するようにしても良い。
【0067】
上記実施形態の構成は、論理的に矛盾しない範囲で相互に組み合わせることが可能である。
【0068】
また、コンピュータ(環境形成装置用のシステム)に、加湿器51に供給する水を貯水する給水槽53の水の残量を、残量センサ43を用いて計測させ、環境形成室としての環境形成室10a内の温湿度設定と単位時間あたりに消費される水の推定消費水量との関係を示すデータと残量、または、単位時間あたりに消費された水の実消費水量と残量とに基づいて給水槽53の水がなくなるまでの残り時間を算出させ、残り時間より所定時間(例えば3時間)短い時間を、水を給水するまでの補充時間として報知させる、環境形成装置100に用いる環境形成装置用プログラムも、出願時の本願の明細書等に開示された事項の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
10a 環境形成室
23 表示部
40 コントローラ(温湿度コントローラ、水量管理部)
43 残量センサ
50 加湿ユニット
51 加湿器
51a 加湿水槽(加湿パン)
51b 加湿ヒータ
52 ウォータポンプ
53 給水槽
100 環境形成装置
【要約】
【課題】加湿器に供給する水の残量を管理し、湿度をより安定して制御できるようにする。
【解決手段】環境形成を行う環境形成室内を加湿可能な加湿器を備える環境形成装置において、前記加湿器に供給する水を貯水する給水槽と、前記給水槽に貯水された水の残量を計測するための残量センサと、前記環境形成室内の温湿度設定と単位時間あたりに消費される水の推定消費水量との関係を示すデータと前記残量、または、単位時間あたりに消費された水の実消費水量と前記残量とに基づいて前記給水槽の水がなくなるまでの残り時間を算出し、前記残り時間より所定時間短い時間を、水を給水するまでの補充時間として報知する水量管理部と、を備える。
【選択図】
図1