IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北井産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-研削盤 図1
  • 特許-研削盤 図2
  • 特許-研削盤 図3
  • 特許-研削盤 図4
  • 特許-研削盤 図5
  • 特許-研削盤 図6
  • 特許-研削盤 図7
  • 特許-研削盤 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】研削盤
(51)【国際特許分類】
   B24B 3/34 20060101AFI20221020BHJP
   B23F 21/10 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B24B3/34
B23F21/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022068524
(22)【出願日】2022-04-18
【審査請求日】2022-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502246997
【氏名又は名称】北井産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】北井 正之
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-239441(JP,A)
【文献】特開昭58-040255(JP,A)
【文献】特開昭60-259363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/34
B23F 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピニオンカッターの切削歯のすくい面を研削する第1砥石、及びホブの切削歯のすくい面を研削する第2砥石が選択的に取り付けられるスピンドルを第1仮想線を中心として回転させる砥石駆動モータと、
前記第1砥石により研削される前記ピニオンカッター、及び前記第2砥石により研削される前記ホブの何れかが選択的に取り付けられ、かつ、鉛直線に沿った第1平面内で第2仮想線を中心として回転される研削対象支持部と、
前記砥石駆動モータを、前記鉛直線に対して垂直な第2平面内で前記第1仮想線と前記第2仮想線とが交差する第1の支持位置で支持し、かつ、前記研削対象支持部に対し前記第1仮想線に沿った方向に往復動できる第1マウント部と、
前記スピンドルに前記第2砥石が取り付けられる前記砥石駆動モータを、前記第2平面内における前記第1仮想線が、前記砥石駆動モータを前記第1マウント部で支持した場合の前記第1仮想線に対して交差し、かつ、前記第2仮想線から外れた位置になる第2の支持位置で支持し、かつ、支持した前記砥石駆動モータを、前記第2の支持位置に対応する前記スピンドルの前記第1仮想線に沿った方向の所定位置で保持する第2マウント部と、
前記第1砥石が取り付けられる前記砥石駆動モータを前記第1の支持位置で支持する前記第1マウント部を、前記第2平面内で、前記第1の支持位置に対応する前記スピンドルの前記第1仮想線に沿った方向に往復作動させる第1サーボモータと、
前記研削対象支持部を前記第2仮想線を中心として回転させる第2サーボモータと、
前記ホブが取り付けられている前記研削対象支持部を前記第2仮想線に沿った方向に往復動させる第1状態、及び前記ピニオンカッターが取り付けられている前記研削対象支持部を前記第2仮想線に沿った方向の所定位置に保持させる第2状態を備えた第3サーボモータと、
を有する、研削盤。
【請求項2】
請求項1記載の研削盤において、
前記第1平面内で、前記第2仮想線は、前記鉛直線に対して5.0度傾斜されている、研削盤。
【請求項3】
請求項1または2記載の研削盤において、
前記ピニオンカッターが前記研削対象支持部に取り付けられると、前記ピニオンカッターの切削歯は、前記第2仮想線を中心とする同一円周上に等間隔で複数配置される、研削盤。
【請求項4】
請求項1または2記載の研削盤において、
前記ホブが前記研削対象支持部に取り付けられると、前記ホブの切削歯は、前記第2仮想線を中心とする同一円周上に等間隔で複数配置される、研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホブの切削歯のすくい面、及びピニオンカッターの切削歯のすくい面を研削する研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車を切削加工する歯切盤には、ホブを回転させて歯車を加工するホブ盤、ピニオンカッターを往復動させて歯車を加工する型削り盤(ギヤシェーパ)等がある。ホブ盤のうち、縦型ホブ盤は、外周面に円周方向に沿って複数の切削歯が設けられた円筒状のホブを、その中心線が垂直となるように支持し、被加工材の中心線を水平とした状態において、ホブを回転させるとともに、ホブを中心線を中心とする円の半径方向に移動させることにより、被加工材の外周面を切削して歯車を製造するものである。
【0003】
型削り盤は、先端面に切削歯が設けられた円筒状のピニオンカッターを、その中心線に沿った方向に往復動させることにより、加工材の外周面、または内周面を切削加工して歯車を製造するものである。ホブの切削歯を研削して精密仕上げする研削盤が、特許文献1及び特許文献2に記載されている。また、円筒状のピニオンカッターの切削歯を研削して精密仕上げする研削盤が、特許文献3及び特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6693290号公報
【文献】特許第6110930号公報
【文献】特許第4763611号公報
【文献】特許第3080824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、特許文献1-特許文献4に記載された研削盤によると、ピニオンカッターの切削歯を研削する研削盤と、ボブの切削歯を研削する研削盤とが別々に設けられており、ユーザは、ピニオンカッターを研削する研削盤、及びホブを研削する研削盤を両方購入しなければならず、ユーザのコストが上昇し、かつ、研削盤の設置スペースが拡大する、という課題を認識した。
【0006】
本開示の目的は、ホブ及びピニオンカッターの両方を研削できることに加え、ユーザが購入するコストの上昇を抑制でき、かつ、設置スペースの拡大を抑制できる研削盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ピニオンカッターの切削歯のすくい面を研削する第1砥石、及びホブの切削歯のすくい面を研削する第2砥石が選択的に取り付けられるスピンドルを第1仮想線を中心として回転させる砥石駆動モータと、前記第1砥石により研削される前記ピニオンカッター、及び前記第2砥石により研削される前記ホブの何れかが選択的に取り付けられ、かつ、垂直な第1平面内で第2仮想線を中心として回転される研削対象支持部と、前記砥石駆動モータを、水平な第2平面内で前記第1仮想線上に前記第2仮想線を配置させる第1の支持位置で支持し、かつ、前記研削対象支持部に対し前記第1仮想線に沿った方向に往復動できる第1マウント部と、前記スピンドルに前記第2砥石が取り付けられる前記砥石駆動モータを、前記第2平面内における前記第1仮想線が、前記砥石駆動モータを前記第1マウント部で支持した場合の前記第1仮想線に対して交差し、かつ、前記第2仮想線から外れた位置になる第2の支持位置で支持し、かつ、支持した前記砥石駆動モータを、前記第2の支持位置に対応する前記スピンドルの前記第1仮想線に沿った方向の所定位置で保持する第2マウント部と、前記第1砥石が取り付けられる前記砥石駆動モータを前記第1の位置で支持する前記第1マウント部を、前記第2平面内で、前記第1の支持位置に対応する前記スピンドルの前記第1仮想線に沿った方向に往復作動させる第1サーボモータと、前記研削対象支持部を前記第2仮想線を中心として回転させる第2サーボモータと、前記ホブが取り付けられている前記研削対象支持部を前記第2仮想線に沿った方向に往復動させる第1状態、及び前記ピニオンカッターが取り付けられている前記研削対象支持部を前記第2仮想線に沿った方向の所定位置に保持させる第2状態を備えた第3サーボモータと、を有する、研削盤を構成した。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ホブ及びピニオンカッターの両方を研削できることに加え、ユーザが研削盤を購入するコストの上昇を抑制でき、かつ、研削盤の設置スペースの拡大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の研削盤であり、砥石によりピニオンカッターを研削する例を示す平面図である。
図2】研削盤であり、砥石によりピニオンカッターを研削する例を示す正面図である。
図3】研削盤の砥石でホブを研削する例を示す平面図である。
図4】研削盤の砥石でホブを研削する例を示す正面図である。
図5】第2駆動機構及び第3駆動機構を示す正面図である。
図6】第2駆動機構を示す底面図である。
図7】(A)は、ピニオンカッターの断面図、(B)は、ホブの正面図である。。
図8】(A)は、図2の部分的な拡大図、(B)は、図3の部分的な拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の研削盤の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。研削盤を説明する全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
[研削盤の概要]
図1図2図3図4図5図6に示すように、研削盤10は、ベッド11と、ベッド11に対して移動可能に設けられるモータダイ12と、モータダイ12をベッド11に対して移動させる第1駆動機構13と、モータダイ12に設けられる第1マウント部14及び第2マウント部15と、第1マウント部14及び第2マウント部15に選択的に取り付け及び取り外しができる砥石駆動モータ16と、を有する。
【0012】
また、研削盤10は、研削対象であるピニオンカッター17及びホブ18を支持する研削対象支持部19と、研削対象支持部19を第2仮想線A1を中心として回転させる第2駆動機構20と、研削対象支持部19を第2仮想線A1に沿った方向に往復動させる第3駆動機構21と、を有する。図1及び図3は、研削盤10を平面視した第2平面を表す。図2及び図4は、研削盤10を正面視した垂直な第1平面を表す。
【0013】
ベッド11は、工場内の床に設置される。ベッド11は、モータダイ12、第1マウント部14及び第2マウント部15を支持する。図1のように、ベッド11の上面には、複数のガイドレール22が相互に並行に、かつ、水平に設けられている。モータダイ12は、第1マウント部14及び第2マウント部15を支持する。モータダイ12は、ガイドレール22上に設けられたプレート形状の部材であり、モータダイ12の下面にスライダ23が、複数個固定されている。図2のように、スライダ23はガイドレール22上に載せられており、スライダ23は、ガイドレール22に沿って水平方向に往復移動できる。このため、モータダイ12は、ベッド11上で水平方向に、つまり、図2において左右方向に往復移動できる。
【0014】
第1駆動機構13は、モータダイ12をベッド11に対して水平方向に移動させる機構である。第1駆動機構13は、第1サーボモータ24と、第1サーボモータ24の回転軸に連結された駆動軸25と、モータダイ12の下面に取り付けられたナット26と、を有する。第1サーボモータ24は、回転軸を第1方向及び第2方向に回転させることができ、かつ、回転軸の回転角度を360度未満の範囲で微調整できる。駆動軸25の外周面には雄ねじが設けられており、駆動軸25とナット26とがねじ機構により連結されている。
【0015】
このため、第1サーボモータ24の回転軸が回転されると、モータダイ12がベッド11上で水平方向に移動される。また、第1サーボモータ24の回転軸の回転方向が第1方向と第2方向とに切り替えられると、モータダイ12がベッド11上で往復移動される。このように、第1サーボモータ24が駆動されると、図1に示す平面内で、モータダイ12及び第1マウント部14が、第1仮想線C1に沿った方向に往復作動される。
【0016】
第1マウント部14は、砥石駆動モータ16を図1に示す第1の支持位置で支持する。砥石駆動モータ16が第1の位置で支持されると、第1仮想線C1上に第2仮想線A1が配置される。また、第1マウント部14は、砥石駆動モータ16を支持した状態で、第1仮想線C1に沿った方向に往復動できる。第1マウント部14は、モータダイ12に固定される下台27と、下台27の上に設けられるクランプ28と、を有する。クランプ28は、支持穴30を有する。支持穴30の中心線B1は、水平であり、かつ、ガイドレール22の長手方向に沿って配置されている。図1のように研削盤10を平面視すると、第1マウント部14は、モータダイ12の配置領域内からモータダイ12の配置領域外に亘って配置されている。支持穴30は、モータダイ12の配置領域外に位置する。
【0017】
第2マウント部15は、砥石駆動モータ16を図3に示す第2の支持位置で支持する機構である。砥石駆動モータ16が第2の支持位置で支持された場合の第1仮想線C1(C1B)は、砥石駆動モータ16が第1の支持位置で支持された場合の第1仮想線C1(C1A)に対して所定角度で交差し、かつ、第1仮想線C1は第2仮想線A1から外れた位置に配置される。図3には、所定角度が90度である例が示されている。また、第2マウント部15により第2支持位置で支持される砥石駆動モータ16は、第1仮想線C1に沿った方向の所定位置に保持、つまり、停止される。
【0018】
図4のように、第2マウント部15は、モータダイ12に固定されるスライドガイド31と、スライドガイド31に取り付けられるクランプ32と、クランプ32に設けられた支持穴34と、を有する。図3に示す支持穴34の中心線B2は水平であり、研削盤10を平面視すると、中心線B1と中心線B2とが所定角度で交差して配置、例えば、90度で交差して配置されている。研削盤10を平面視すると、第2マウント部15は、モータダイ12の配置領域内に配置されている。さらに、クランプ32は、スライドガイド31に対して中心線B2に沿った方向に移動できる。スライドガイド31に位置調整機構70が設けられている。位置調整機構70は、ねじ機構71及びダイヤル72を有し、作業者がダイヤル72を操作すると、クランプ32がスライドガイド31に沿って移動される。
【0019】
砥石駆動モータ16は、電動モータであり、スピンドル36を有する。砥石駆動モータ16は、図1及び図3のように、配線37を介して制御部、例えばアンプに接続されている。作業者がアンプを操作することで、砥石駆動モータ16の回転、停止、回転方向、回転速度を制御することができる。スピンドル36にナット38が取り付けられており、ナット38を締め付けたり緩めたりすることにより、2種類の第1砥石39及び第2砥石40を選択的に取り付け及び取り外しすることができる。砥石駆動モータ16は、スピンドル36を第1仮想線C1を中心として回転させる。
【0020】
砥石駆動モータ16は、筒形状のシリンダを有している。作業者が、シリンダを2つの支持穴30または支持穴34の何れかに挿入することで、砥石駆動モータ16を取り付ける箇所を、第1マウント部14と第2マウント部15とで変更することができる。図1のように、砥石駆動モータ16を支持穴30に挿入し、砥石駆動モータ16をクランプ28に固定すると、スピンドル36の回転中心を示す第1仮想線C1(C1A)は、図2のように水平である。また、支持穴30の中心線B1と、スピンドル36の第1仮想線C1とが、同軸上、つまり、同一線上に位置する。これに対して、図3のように、砥石駆動モータ16をクランプ32の支持穴34に挿入して固定すると、スピンドル36の第1仮想線C1(C1B)は、水平方向に配置される。また、支持穴34の中心線B2と、スピンドル36の第1仮想線C1とが、同軸上、つまり、同一線上に位置する。
【0021】
研削対象支持部19は、ピニオンカッター17またはホブ18の何れかが選択的に取り付けられる。研削対象支持部19は、ハウジング41と、ハウジング41により第2仮想線A1を中心として回転可能に支持される主軸42と、主軸42に対して取り付け及び取り外しできる2種類の取り付けアーバ43,44と、を有する。第2仮想線A1は、主軸42の回転中心を示す仮想線である。研削盤10を図2のように正面視すると、第2仮想線A1線は、鉛直線G1に対して所定角度α1傾斜されている。所定角度α1は、4.9度から5.1度の範囲内、具体的には、5.0度である。所定角度α1を設定する意味は、後述する。
【0022】
取り付けアーバ43,44は、別部材であり、取り付けアーバ43,44は、主軸42に対して別々に取り付け及び取り外しされる。2種類の取り付けアーバ43,44のうち、図2に示す取り付けアーバ43には、ピニオンカッター17を取り付け及び取り外しできる。図4に示す取り付けアーバ44には、ホブ18を取り付け及び取り外しできる。
【0023】
第2駆動機構20は、研削対象支持部19を第2仮想線A1を中心として回転させるものである。図5及び図6に示す第2駆動機構20は、回転軸45を有する第2サーボモータ46と、回転軸45にカップリング47を介して連結された軸部材であるウォーム48と、ウォーム48に噛み合わされるウォームギヤ49と、を有する。第2サーボモータ46は、回転軸45を中心線D2を中心として第1方向及び第2方向に回転させることができ、かつ、回転軸45の回転角度を360度未満の範囲で微調整できる。中心線D2は、回転軸45の中心を通る仮想線である。ウォームギヤ49は、第2仮想線A1を中心として回転可能である。また、ウォームギヤ49と主軸42とを動力伝達できるように連結する伝達軸53が設けられている。伝達軸53は、第2仮想線A1を中心として回転可能である。第2サーボモータ46は、研削対象支持部19を、第2仮想線A1を中心として回転させ、かつ、停止させることができる。
【0024】
図5に示す第3駆動機構21は、研削対象支持部19及び第2駆動機構20を、第2仮想線A1に沿った方向に往復作動させ、かつ、停止させる。第3駆動機構21は、回転軸50を有する第3サーボモータ51と、第3サーボモータ51の回転軸50に連結された駆動軸52と、を有する。第3サーボモータ51は、回転軸50を第1方向及び第2方向に回転させることができ、かつ、回転軸50の回転角度を360度未満の範囲で微調整できる。回転軸50及び駆動軸52は、第3仮想線D1を中心として回転できるように同軸上に配置されている。第3仮想線D1と第2仮想線A1とは平行である。
【0025】
駆動軸52の外周面に雄ねじが設けられている。第2駆動機構20及び主軸42を支持するユニットベース29が設けられており、ユニットベース29にナット54が設けられている。ナット54と駆動軸52とがボールねじにより連結されている。このため、駆動軸52が回転されると、ユニットベース29は、第3仮想線D1に沿った方向に作動され、主軸42及び取り付けアーバ44は、第2仮想線A1に沿った方向に作動される。第3サーボモータ51の制御状態は、図2及び図4に示す研削対象支持部19を第2仮想線A1に沿った方向に往復動させる第1状態と、研削対象支持部19を第2仮想線A1に沿った方向の所定位置に保持させる第2状態と、を有する。研削対象支持部19が、所定位置、例えば、待機位置で保持されると、ホブ18の上端が第1仮想線C1より下方に位置する。なお、第1サーボモータ24、第2サーボモータ46、第3サーボモータ51を制御する制御盤が設けられており、作業者が制御盤を操作して第1サーボモータ24、第2サーボモータ46、第3サーボモータ51をそれぞれ別々に制御できる。
【0026】
[ピニオンカッター及びホブの構成例]
研削盤10で研削されるピニオンカッター17及びホブ18の構成例を説明する。図7(A)のように、ピニオンカッター17は、中心線E1を中心とする環状体の外周面に、円周方向に沿って多数の切削歯55を一定間隔で設けたものである。ピニオンカッター17は歯切り盤の回転軸に取り付けられ、ピニオンカッター17を中心線E1に沿った方向に移動させることで、ピニオンカッター17で被加工材を切削して歯車を製造できる。
【0027】
ピニオンカッター17は、切削歯55の先端に設けられるすくい面56と、中心線E1に対して直交する直線E2との間に、鋭角のすくい角α2が設定されている。すくい角α2は、4.9度から5.1度の範囲内、具体的には、5.0度に設定される。この5.0度は、日本産業規格(JIS)で定められた値である。なお、4.9度から5.1度の範囲とした意味は、ピニオンカッター17の加工誤差、寸法誤差を考慮してのことである。そして、図8(A)のように、所定角度α1とすくい角α2とが同一に設定されている。ピニオンカッター17の切削歯55のすくい面56は、使用により摩耗変形するため、ピニオンカッター17を歯切り盤から取り外し、研削盤10によってすくい面56を研削することにより、切削歯55の形状精度を維持することができる。
【0028】
ホブ18は、図7(B)のように、中心線F1を中心とする環状体の外周面に、円周方向に沿って多数の切削歯74を一定間隔で設けたものである。ホブ18は歯切り盤の回転軸に取り付けられ、ホブ18を回転させ、かつ、ホブ18を中心線F1を中心とする径方向に移動させることで、被加工材を切削して歯車を製造できる。ホブ18の切削歯74のすくい面57は、使用により摩耗変形するため、ホブ18を歯切り盤から取り外し、研削盤10によってすくい面57を研削することにより、切削歯74の形状精度を維持することができる。ピニオンカッター17及びホブ18の材質は、それぞれ一般鉄鋼、工具鋼、アルミニウム、銅、超硬合金等である。第1砥石39及び第2砥石40は、共に環状、または、円板状であり、それぞれダイヤモンド砥石、ビトリファイド砥石、レジノイド砥石等のうちの何れでもよい。第1砥石39及び第2砥石40の砥粒は、ピニオンカッター17及びホブ18の材質に応じて決定される。
【0029】
[ピニオンカッターを研削する例]
ピニオンカッター17を研削盤10で研削する例を説明する。作業者が図1及び図2のように、砥石駆動モータ16をクランプ28の支持穴30に挿入して固定する。スピンドル36の先端に円板状の第1砥石39が取り付けられ、ナット38が締め付けられている。なお、第2マウント部15に砥石駆動モータ16は取り付けない。さらに、図2のように取り付けアーバ43が主軸42に取り付けられる。そして、作業者が、図8(A)のように、ピニオンカッター17を、取り付けアーバ43の先端に取り付け、かつ、ナット58を締め付けると、ピニオンカッター17が取り付けアーバ43に固定される。つまり、ピニオンカッター17の複数の切削歯55は、第2仮想線A1を中心とする同一円周上に等間隔で配置される。
【0030】
そして、作業者が制御盤を操作し、第2サーボモータ46が一定方向に回転されると、回転軸45の回転力が、ウォーム48、ウォームギヤ49、伝達軸53を介して主軸42に伝達される。このため、図1に示す主軸42が時計回りに低速度で連続回転され、かつ、ピニオンカッター17が、時計回りに回転される。このようにして、ピニオンカッター17の複数の切削歯55が、中心線E1を中心としてそれぞれ公転する。図8(A)のように、第2仮想線A1と鉛直線G1との間に所定角度α1が設定されているため、ピニオンカッター17が1回転する間に、それぞれの切削歯55のすくい面56は、鉛直線G1に沿った方向における高さが変位する。
【0031】
そして、所定角度α1とすくい角α2とが同一であるため、鉛直線G1に沿った方向で最も低い位置を通過する切削歯55のすくい面56は、水平である。ここで、図8(A)のように、切削歯55のすくい面56を第1砥石39の外周面75で研削する。そして、鉛直線G1に沿った方向で、最も低い位置を通過する切削歯55のすくい面56の高さと、第1砥石39の外周面75のうち、鉛直線G1に沿った方向で最も低い箇所の高さとに応じて、すくい面56の研削深さが定まる。鉛直線G1に沿った方向で最も低い位置を通過する切削歯55のすくい面56の高さは、第3サーボモータ51の回転角度及び停止位置を制御して調整できる。
【0032】
一方、図1のように、研削盤10を平面視すると、スピンドル36の第1仮想線C1と、取り付けアーバ43の第2仮想線A1とが交差する位置にある。作業者がアンプを操作して第1サーボモータ24が駆動され、駆動軸25の回転方向が第1方向と第2方向とで交互に切り替えられる。このため、モータダイ12が、ベッド11上でガイドレール22に沿い、図1及び図2の左右方向に往復作動する。駆動軸25が第1方向に回転する角度、及び第2方向に回転する角度に応じて、モータダイ12がガイドレール22に沿って往復作動する範囲が定まる。
【0033】
上記のように、モータダイ12がガイドレール22に沿って往復作動すると、砥石駆動モータ16が、第1仮想線C1に沿った方向に往復作動する。つまり、図1に示すように、第1砥石39の一部が、ピニオンカッター17の配置範囲内に進入し、かつ、ピニオンカッター17の配置範囲外へ退出する動作を交互に繰り返す。このため、図2に示す第1砥石39の外周面のうち、鉛直線G1に沿った方向で最も低い箇所が、鉛直線G1に沿った方向で最も低い位置を通過する切削歯55のすくい面56に接触し、第1砥石39によりすくい面56が研削される。ピニオンカッター17は、第2仮想線A1を中心として回転されるため、全ての切削歯55のすくい面56が第1砥石39により研削される。
【0034】
[ホブを研削する例]
ホブ18を研削盤10で研削する例を説明する。作業者は、図3のように砥石駆動モータ16をクランプ32の支持穴34に挿入し、砥石駆動モータ16をクランプ32に固定する。スピンドル36の先端に第2砥石40が取り付けられ、ナット38が締め付けられる。さらに、作業者がダイヤル72を操作して、クランプ32をスライドガイド31に対し第1仮想線C1に沿った方向に移動させる。そして、図8(B)のように、第2砥石40の先端面73の延長線H1と、第2仮想線A1とが交差する位置で、クランプ32をスライドガイド31に対して停止させる。つまり、第2砥石40を支持した砥石駆動モータ16は、第1仮想線C1に沿った方向の所定位置で停止される。なお、第1マウント部14に砥石駆動モータ16は取り付けない。
【0035】
さらに、作業者は、図4のように取り付けアーバ44を主軸42に取り付ける。そして、ホブ18が取り付けアーバ44の先端に取り付けられ、かつ、ナット58が締め付け付けられる。このため、図8(B)のように、ホブ18の複数の切削歯74は、第2仮想線A1を中心とする同一円周上に等間隔で配置される。
【0036】
図4のように、第2砥石40がスピンドル36に取り付けられ、かつ、ホブ18が取り付けアーバ44に取り付けられた状態において、ホブ18は、第2砥石40の外周面から離間されており、ホブ18の上端は、第1仮想線C1より下方の待機位置にある。また、砥石駆動モータ16が、第1仮想線C1に沿った方向の所定位置で停止されている。このため、研削盤10を平面視すると、図8(B)のように、第2砥石40に最も近い位置にある切削歯74のすくい面57を延長線H1上に位置させた状態で、第2サーボモータ46が停止されている。さらに、第3サーボモータ51は、ホブ18の上端が第1仮想線C1より下方の待機位置にある状態で停止されている。
【0037】
そして、作業者がアンプを操作して、砥石駆動モータ16のスピンドル36が回転されると、第2砥石40が図4で時計回りに回転される。また、作業者が制御盤を操作して、第3サーボモータ51が第1方向に回転されると、図5のように、主軸42及び取り付けアーバ44が第2仮想線A1に沿った方向に上昇され、かつ、第3サーボモータ51が一旦停止される。次いで、第3サーボモータ51が第2方向に回転されて、主軸42及び取り付けアーバ44が第2仮想線A1に沿った方向に下降される。そして、ホブ18が待機位置に到達すると、第3サーボモータ51が停止される。このようにして、ホブ18が第2仮想線A1に沿った方向に上昇されて停止し、かつ、ホブ18が第2仮想線A1に沿った方向に下降される行程において、図8(B)のように、第2砥石40に最も近い位置にある切削歯74のすくい面57が、第2砥石40の先端面73によって研削される。
【0038】
さらに、下降するホブ18が待機位置に到達し、第3サーボモータ51が停止されると、第2サーボモータ46が所定方向に所定角度回転され、かつ、停止される。このため主軸42及び取り付けアーバ44が所定方向に所定角度回転され、図8(B)において、ホブ18が時計回りに所定角度θ1回転して停止される。所定角度θ1は、ホブ18の回転方向で研削された切削歯74より1個下流に位置する切削歯74のすくい面57が、延長線H1上に到達する値である。つまり、第2サーボモータ46が所定方向に回転される所定角度は、所定角度θ1に応じた値である。
【0039】
以後、第3サーボモータ51を第1方向に回転させて停止し、かつ、第3サーボモータ51を第2方向に回転させて停止する動作と、第2サーボモータ46を所定方向に所定角度回転させて停止させる動作とを交互に繰り返す。このようにして、ホブ18の外周面に設けられている全ての切削歯74のすくい面57を、第2砥石40により研削できる。なお、ホブ18を第2砥石40で研削する場合、第1仮想線C1に沿った方向における第2砥石40の先端面73の位置を調整し、切削歯74のすくい面57に対する研削深さを調整できる。さらに、ホブ18を第2砥石40で研削する場合、図1の第1サーボモータ24は停止されている。つまり、モータダイ12は、図4で左右方向に移動せずに停止している。
【0040】
[効果]
本開示の研削盤10によれば、作業者がピニオンカッター17またはホブ18の何れかを選択的に研削対象支持部19に取り付け、かつ、砥石駆動モータ16を、第1マウント部14または第2マウント部15に選択的に取り付け、第1砥石39または第2砥石40の何れかを選択してスピンドル36に取り付けることができる。したがって、1台の研削盤10により、ピニオンカッター17及びホブ18を別々に研削できる。したがって、ユーザが研削盤10を購入するコストの上昇を抑制でき、かつ、研削盤10の設置スペースの拡大を抑制できる。
【0041】
[補足説明]
本実施形態で説明した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。研削盤10は、研削盤の一例である。ピニオンカッター17は、ピニオンカッターの一例である。切削歯55は、ピニオンカッターの切削歯の一例である。すくい面56は、ピニオンカッターの切削歯のすくい面の一例である。第1砥石39は、第1砥石の一例である。ホブ18は、ホブの一例である。切削歯74は、ホブの切削歯の一例である。すくい面57は、ホブの切削歯のすくい面の一例である。第2砥石40は、第2砥石の一例である。スピンドル36は、スピンドルの一例である。第1仮想線C1,C1A,C1Bは、第1仮想線の一例である。砥石駆動モータ16は、砥石駆動モータの一例である。第2仮想線A1は、第2仮想線の一例である。研削対象支持部19は、研削対象支持部の一例である。
【0042】
第1マウント部14は、第1マウント部の一例である。第2マウント部15は、第2マウント部の一例である。第1サーボモータ24は、第1サーボモータの一例である。第2サーボモータ46は、第2サーボモータの一例である。第3サーボモータ51は、第3サーボモータの一例である。鉛直線G1は、鉛直線の一例である。研削盤10の正面図である図2及び図4は、鉛直線に沿った第1平面の一例である。研削盤10の平面図である図1図3及び図8(B)は、それぞれ、鉛直線に対して垂直な第2平面の一例である。本開示において、水平は、完全な水平に加え、略水平を含む。本開示において、垂直は、完全な垂直に加え、略垂直を含む。つまり、水平及び垂直は、それぞれ部品の加工誤差、寸法誤差、組付け誤差の範囲を含む。
【0043】
本実施形態の研削盤は、図面を用いて開示されたものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本実施形態において、研削対象でであるピニオンカッターの外径、及び切断歯の数は問わない。ホブの外径、及び切断歯の数は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本実施形態は、ホブ及びピニオンカッターの両方を研削できる研削盤として利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10…研削盤、14…第1マウント部、15…第2マウント部、16…砥石駆動モータ、17…ピニオンカッター、18…ホブ、19…研削対象支持部、24…第1サーボモータ、39…第1砥石、36…スピンドル、40…第2砥石、46…第2サーボモータ、51…第3サーボモータ、55,74…切削歯、56,57…すくい面、A1…第2仮想線、C1,C1A,C1B…第1仮想線、G1…鉛直線
【要約】
【課題】ホブ及びピニオンカッターの両方を研削でき、ユーザが購入するコストの上昇を抑制でき、かつ、設置スペースの拡大を抑制できる研削盤を提供する。
【解決手段】第1砥石39または第2砥石が選択的に取り付けられるスピンドル36を第1仮想線C1を中心として回転させる砥石駆動モータ16と、ピニオンカッター17またはホブの何れかが選択的に取り付けられる研削対象支持部19と、砥石駆動モータ16を第1の支持位置で支持する第1マウント部14と、砥石駆動モータ16を第2の支持位置で支持する第2マウント部15と、第1マウント部14を第1仮想線C1に沿った方向に往復作動させる第1サーボモータ24と、研削対象支持部19を第2仮想線A1を中心として回転させる第2サーボモータと、研削対象支持部19を第2仮想線A1に沿った方向に往復動及び停止させる第3サーボモータと、を有する研削盤10を構成した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8