(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】移動体通行管理システム、及び移動体通行管理方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221020BHJP
【FI】
G05D1/02 P
(21)【出願番号】P 2022120142
(22)【出願日】2022-07-28
【審査請求日】2022-07-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521453057
【氏名又は名称】株式会社Octa Robotics
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍋嶌 厚太
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-309406(JP,A)
【文献】特表2009-541177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、
前記移動体を管理する運行管理サーバとは別に設けられたリソース管理サーバが、
前記移動体の通行に必要なリソースをリソースデータとして記憶する記憶部と、
前記移動体に対する前記リソースの割り当て状況を管理するリソース管理部と、
前記移動体からの要求を受け付けて前記リソースの新規割り当てを行い、前記移動体による利用が終了した場合に前記リソースを解放する利用要求処理部と、
を備え
、
前記運行管理サーバは、前記リソース管理サーバから提供を受けた前記リソースデータと前記移動体の状況とを対応付けて、前記移動体の運行を管理することを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割したサブエリアに識別データを付与したデータであり、
前記サブエリアは、前記移動体の仕様及び/又はタスクに応じて異なる組合せで割り当てが可能であり、
前記移動体は、自らが利用するサブエリアを指定して割り当てを受けることを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割したサブエリアに識別データを付与したデータであり、
前記移動体は、自らが利用するサブエリアを指定して割り当てを要求し、
前記利用要求処理部は、
前記サブエリアに対して一度に一つの前記移動体にのみ利用許可を与える制御、
前記サブエリアに対して利用できる数を所定数に制限する制御、
前記サブエリアに対して特定の進入方向にのみ利用許可を与える制御のいずれかを行うことで、独立して稼働する複数の前記移動体の通行を交通整理することを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項4】
請求項2に記載の移動体通行管理システムであって、
前記リソース管理部は、前記リソースデータを前記移動体に提供し、
前記移動体は、前記リソースデータを用いて移動経路を探索し、前記移動経路を構成するサブエリアについて割り当てを要求することを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項5】
請求項2に記載の移動体通行管理システムであって、
前記移動体は、自らの仕様を示すスペックデータを記憶し、前記スペックデータに基づいて割り当てを要求するサブエリアを決定することを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記利用要求処理部は、前記リソースを前記移動体に割り当てる場合に、当該リソースの利用条件を前記移動体に通知
し、
前記利用条件は、最大制限速度、最大音量、最大光度、時刻によって変更される制限のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の移動体通行管理システムであって、
前記記憶部は、前記移動体が通行するエリアに配置されたマーカーの位置情報と当該マーカーの識別データとを対応付けたマーカーデータをさらに記憶し、
前記移動体から前記マーカーデータの識別情報を指定した問い合わせを受けた場合に、対応するマーカーの位置情報を提供するマーカー管理部をさらに備えたことを特徴とする移動体通行管理システム。
【請求項8】
自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理方法であって、
前記移動体を管理する運行管理サーバとは別に設けられ、前記移動体の通行に必要なリソースを
リソースデータとして記憶して管理するリソース管理サーバが、前記移動体から前記リソースの要求を受信するステップと、
前記リソース管理サーバが、他の移動体による利用状況を参照した結果、利用が可能である場合に前記要求されたリソースの利用を許可するステップと、
前記リソース管理サーバが、他の移動体による利用状況を参照した結果、利用が可能でない場合に前記要求されたリソースの利用を拒否するステップと、
を含
み、
前記運行管理サーバは、前記リソース管理サーバから提供を受けた前記リソースデータと前記移動体の状況とを対応付けて、前記移動体の運行を管理することを特徴とする移動体通行管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通行管理システム、及び移動体通行管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律走行する移動体が工場や物流倉庫などで利用されている。一例として、規定の走行経路を走行し、部品の運搬や荷役作業用を行う無人搬送車がある。自律走行する移動体の制御に関し、特許文献1が開示されている。この公報には、「予め設定された走行経路に応じて配置された平板標識と、前記走行経路に沿って自律走行する移動体と、を有する移動体システムであって、前記移動体に設けられ、所定の探索範囲に検出用光を走査することにより、前記移動体と前記探索範囲内に存在する物体までの距離及び方向を検出する距離方向検出装置と、前記距離方向検出装置の検出結果に基づいて前記移動体の進行方向を決定する進行方向決定手段と、を有し、前記平板標識は、鏡面と、入射光を拡散反射する割合が当該鏡面よりも高い拡散反射面と、を含む、移動体システム」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術のように、無人の工場等を想定した移動体の走行制御はすでに利用されている。このように限定された環境下では、多数の移動体の運行を一括して統合管理することができる。
しかし近年、労働人口の減少などを背景に、より汎用性の高い移動体の運用が求められている。例えば、運搬ロボット、掃除ロボット、警備ロボットなどを、人のいる商業施設の建物内で動作させる、といった運用である。
【0005】
このように多様な移動体が存在する環境下では、通行の調停が課題となる。複数のロボットが、自由に独自のタイミングで通行しようとすると、各種の問題が起こるためである。一例として、例えば、複数のロボットがエレベーターを待ち、互いに身動きが取れなくなるケースがある。また、あるロボットが狭い廊下を走行中に、向こうから別のロボットがやってきて、互いを障害物として認識して身動きがとれなくなるケースもある。
この課題を解決するため、従来は運行管理サーバを一元化する方法が取られている。しかし、それぞれのロボットをそのサーバの仕様に合わせる改修が必要となっており、時間的、金銭的なコストが高くなる。また、ロボットベンダーの保証範囲外となり、ロボット側の改修が難しい場合もあった。
【0006】
そこで、本発明では、自律して移動する移動体の通行を効率的に調停することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の移動体通行管理システムの一つは、自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、前記移動体の通行に必要なリソースをリソースデータとして記憶する記憶部と、前記移動体に対する前記リソースの割り当て状況を管理するリソース管理部と、前記移動体からの要求を受け付けて前記リソースの新規割り当てを行い、前記移動体による利用が終了した場合に前記リソースを解放する利用要求処理部と、を備えたことを特徴とする。
また、代表的な本発明の移動体通行管理方法の一つは、自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理方法であって、前記移動体の通行に必要なリソースを管理するリソース管理サーバが、前記移動体から前記リソースの要求を受信するステップと、前記リソース管理サーバが、他の移動体による利用状況を参照した結果、利用が可能である場合に前記要求されたリソースの利用を許可するステップと、前記リソース管理サーバが、他の移動体による利用状況を参照した結果、利用が可能でない場合に前記要求されたリソースの利用を拒否するステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、自律して移動する移動体の通行を効率的に調停できる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】移動体通行管理システムによる通行の調停の説明図
【
図5】リソースの割り当て処理を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、移動体通行管理システムによる通行の調停の説明図である。本実施例の移動体通行管理システムは、1又は複数のロボット30の通行を管理する。ロボット30は、自律して移動する移動体であり、運搬ロボット、掃除ロボット、警備ロボットなどである。ロボット30は、建物の内部を移動し、与えられたタスクを実行する。
【0012】
また、移動体通行管理システムは、建物のリソースを管理する建物リソース管理サーバ60を備える。建物リソース管理サーバ60は、ロボット30の通行に必要なリソースをリソースデータとして記憶し、ロボット30に対するリソースの割り当て状況をリソース管理データにより管理する。
【0013】
図1に例示したリソースデータは、建物のあるフロアにおいて、ロボット30が通行するエリアを分割したサブエリアに識別データ(ID)を付与したデータである。フロアの出入り口には、IDが「A1」であるサブエリアA1が設定されている。また、サブエリアA11~A14とサブエリア21~24は、フロア内の廊下の一部である。なお、サブエリアA11~A14は廊下の外周側であり、サブエリアA21~A24は廊下の内周側である。サブエリアA2は廊下と出入り口を接続する。サブエリアA41はエレベーターであり、サブエリア42はエレベーターホールである。
【0014】
建物リソース管理サーバ60は、リソースデータをロボット30に提供することができる。ロボット30は、リソースデータを地図データとして用い、自身の移動経路を探索する。そして、ロボット30は、移動経路を構成するサブエリアについて、建物リソース管理サーバ60に対してリソース利用要求を送信する。
【0015】
建物リソース管理サーバ60は、ロボット30からの要求を受け付けてリソースの新規割り当てを行い、移動体による利用が終了した場合にリソースを解放する。
【0016】
ここで、ロボット30は、自らのスペックやタスクの内容に基づいて、割り当てを要求するサブエリアを決定する。例えば、ロボット30のサイズが十分に小さければ、サブエリアA11又はサブエリアA21のいずれかについて割り当てを要求し、廊下を走行することができる。しかし、ロボット30のサイズが大きければ、サブエリアA11及びサブエリアA21の双方を同時に要求する必要が生じる。また、サイズが小さくとも廊下の清掃というタスクを実行するため、サブエリアA11及びサブエリアA21の双方を同時に要求することもあり得る。
【0017】
このように、建物リソース管理サーバ60が建物のリソースを管理することで、独立して稼働する複数のロボット30の通行が交通整理され、自律的に調停できる。
例えば、あるサブエリアIDに対して一度に一つしか利用許可を与えない場合、排他ロックの仕組みにより調停が達成される。
また、あるサブエリアIDに対して利用できる数をある数に制限する場合、計数セマフォの仕組みにより調停が達成される。
また、あるサブエリアIDに対して特定の進入方向にのみ利用許可を与える場合、信号機の仕組みにより調停が達成される。
なお、リソースを割り当てる際に、利用の条件を合わせて通知することもできる。利用の条件としては、最大制限速度、最大音量、最大光度等を含めることで、ロボットへの要求を加えることもできる。
【0018】
ロボット30は、移動したいサブエリアIDについて利用登録が行えたときのみ進入すればよい。建物の管理者が、その建物の「交通ルール」を柔軟に設定すれば、その設定に合わせた運行が可能になる。例えば、夜間は通行を禁止する、消音を要請する、低光量を要求する、一方通行にするなどが設定可能である。
【0019】
また、建物リソース管理サーバ60が建物のリソースを管理する構成では、複数のロボット30に行う改修を最小限にすることができる。
【0020】
図2は、移動体通行管理システムのシステム構成図であり、
図3は、移動体通行管理システムの構成要素の説明図である。
図2に示すように、ロボット30、建物リソース管理サーバ60、ロボット運行管理サーバ70を有する。
【0021】
建物リソース管理サーバ60は、どこに設置してもよい。建物リソース管理サーバ60は、建物のリソース(管理しなければならない、有限のもの)を管理するサーバである。リソースには、ロボット30が通行するエリアを分割したサブエリアを含むことができる。また、エレベーターをリソースとすることもできる。
【0022】
ロボット運行管理サーバ70は、どこに設置してもよい。ロボット運行管理サーバ70は、1台または複数台のロボット30の運行を管理するサーバである。一つの建物で、複数のロボット運行管理サーバ70が並行して動作していてもよい。
ロボット30は、建物の中に所在する。ロボット30は、建物内を移動し、タスクを行う物理的実体である。
【0023】
建物リソース管理サーバ60は、リソース管理データ及びリソースデータを記憶する。ロボット運行管理サーバ70は、ロボット管理データ及びリソースデータを記憶する。ロボット運行管理サーバ70が記憶するリソースデータは、建物リソース管理サーバ60から提供を受ける。ロボット管理データは、リソースデータと、各ロボット30の状況とを対応付けるデータである。
【0024】
ロボット30は、ロボットアカウント、スペックデータ及びリソースデータを記憶する。ロボット30が記憶するリソースデータは、建物リソース管理サーバ60から提供を受ける。ロボットアカウントは、ロボット30を一意に特定する識別情報である。建物リソース管理サーバ60及びロボット運行管理サーバ70は、ロボットアカウントによりロボット30を識別する。スペックデータは、ロボット30の仕様を示す。例えば、ロボット30の寸法、重量、旋回半径などをスペックデータに含めることができる。
【0025】
図4は、建物リソース管理サーバ60の構成図である。
図4に示すように、建物リソース管理サーバ60は、CPU(Central Processing Unit)61、メモリ62、通信部63及び記憶部64を備える。
【0026】
記憶部64は、プログラムや各種データを記憶する補助記憶装置である。記憶部64は、リソース管理データ64a、リソースデータ64b、利用条件データ64c、マーカーデータ64d及び詳細ログ64eを記憶する。
【0027】
リソース管理データ64aは、ロボット30に対するリソースの割り当て状況を示すデータである。
リソースデータ64bは、移動体の通行に必要なリソースを示す。具体的には、リソースデータは、建物においてロボット30が通行するエリアを分割したサブエリアにIDを付与したデータである。リソースデータ64は、フロアのマップデータとしても使用できる。
【0028】
利用条件データ64cは、リソースの使用条件を示す。例えば、最大制限速度、最大音量、最大光度等を利用条件として設定できる。利用条件データ64cは、いわば「交通ルール」であり、柔軟に定めることができる。例えば、夜間は通行を禁止する、消音を要請する、低光量を要求する、一方通行にするなどが設定可能である。
【0029】
マーカーデータ64dは、ロボット30が通行するエリアに配置されたマーカーの位置情報と当該マーカーの識別データとを対応付けたデータである。
詳細ログ64eは、自装置の動作の履歴を示す。この詳細ログを参照することで、建物リソース管理サーバ60がどのように動作をしたかを後から解析することができる。
【0030】
通信部63は、ロボット30及びロボット運行管理サーバ70と通信する際に使用する通信インタフェースである。
【0031】
CPU61は、記憶部64から読み出したプログラムを主記憶装置であるメモリ62に展開し、順次実行することで、リソース管理部61a、マーカー管理部61b及び利用要求処理部61cの機能を実現する。
【0032】
リソース管理部61aは、リソース管理データ64a及びリソースデータ64bを管理する。リソース管理部61aは、ロボット30やロボット運行管理サーバ70にリソースデータを提供することができる。また、リソース管理部61aは、ロボット30に対するリソースの割り当て状況が変化した場合に、リソース管理データ64aを更新する。
【0033】
マーカー管理部61bは、マーカーデータ64dを管理する。また、マーカー管理部61bは、ロボット30からマーカーデータの識別情報を指定した問い合わせを受けた場合に、対応するマーカーの位置情報を提供する。
【0034】
利用要求処理部61cは、ロボット30からの要求を受け付けてリソースの新規割り当てを行い、ロボット30による利用が終了した場合にリソースを解放する。また、利用要求処理部61cは、リソースを移動体に割り当てる場合に、当該リソースの利用条件を利利用条件データ64cから読み出して通知する。
【0035】
図5は、リソースの割り当て処理を説明するフローチャートである。利用要求処理部61cは、ロボット30からリソースの利用登録要求を受信すると、リソース管理データ64aを参照する(ステップS101)。参照の結果、要求されたリソースを他のロボットが利用中であれば(ステップS102;Yes)、利用要求処理部61cが要求元のロボット30に利用登録拒否を送信して、処理を終了する。
【0036】
一方、参照の結果、要求されたリソースを他のロボットが利用中でなければ(ステップS102;No)、リソース管理部61aがリソース管理データ64aを更新し(ステップS103)、利用要求処理部61cが要求元のロボット30に利用許可を送信して、処理を終了する。
【0037】
図5は、排他ロック型の処理動作を例示した。計数セマフォ型であれば、「他にそのリソースを利用しているロボットが何台居るか」及び「+1台したとき、設定上限を上回るか」を判定して、利用可否を決定すればよい。また、信号機型であれば、利用登録時に申告された移動方向と、今許可が出ている方向が合致すれば、利用許可を出すようにすればよい。
【0038】
また、既に説明したように、リソースに利用条件が設定されている場合は、利用要求処理部61cが要求元のロボット30に利用許可を送信するときに、利用条件を示すメッセージを合わせて送信する。
【0039】
図6は、ロボット30の構成図である。
図6に示すように、ロボット30は、CPU31、メモリ32、通信部33、記憶部34及び駆動部35を備える。
【0040】
駆動部35は、ロボット30を駆動するユニットであり、車輪やモータなどを含む。
記憶部34は、プログラムや各種データを記憶する補助記憶装置である。記憶部34は、ロボットアカウント34a、詳細ログ34b、リソースデータ34c及びスペックデータ34dを記憶する。
【0041】
ロボットアカウント34aは、ロボット30を一意に特定する識別情報である。
詳細ログ34bは、自装置の動作の履歴を示す。この詳細ログを参照することで、ロボット30がどのように動作をしたかを後から解析することができる。
リソースデータ34cは、建物リソース管理サーバ60から受信したデータである。
スペックデータ34dは、ロボット30の仕様を示す。例えば、ロボット30の寸法、重量、旋回半径などをスペックデータに含めることができる。
【0042】
通信部33は、建物リソース管理サーバ60やロボット運行管理サーバ70仲介サーバ10と通信する際に使用する通信インタフェースである。
【0043】
CPU31は、記憶部34から読み出したプログラムを主記憶装置であるメモリ32に展開し、順次実行することで、アカウント取得部31a、メッセージ送受信部31c、及び走行制御部31eの機能を実現する。
【0044】
アカウント取得部31aは、新規にアカウントを取得する処理を行う。具体的には、所定のサーバからロボットアカウントの発行を受け、発行されたロボットアカウント34aを記憶部34に格納する。アカウントの取得は、ロボット30をシステムに導入する際に初期設定として行えばよい。
【0045】
メッセージ送受信部31cは、建物リソース管理サーバ60とメッセージの送受信を行う処理部である。送受信するメッセージは、「リソースデータの受信」、「マーカーの識別データの送信」、「マーカーデータの受信」、「リソースの利用登録要求の送信」、「利用許可の受信」、「リソース開放要求の送信」等である。
【0046】
走行制御部31eは、送受信したメッセージに基づいて、駆動部35を制御し、ロボット30を走行させる。
この他、ロボット30は各種センサーや、タスク実行のための機構と処理部を備えるが、ここでは説明を省略する。
【0047】
図7は、ロボット30の動作を説明するフローチャートである。まず、メッセージ送受信部31cは、建物リソース管理サーバ60からリソースデータを取得し、記憶部34に格納する(ステップS201)。
【0048】
その後、メッセージ送受信部31cは、自装置周辺のマーカーを識別する(ステップS202)。メッセージ送受信部31cは、識別により得たマーカーの識別データを建物リソース管理サーバ60に送信し、マーカーの位置を示すマーカーデータを取得する(ステップS203)。マーカーの位置は、例えばリソースデータに対する相対的な位置であり、マーカーデータを取得したメッセージ送受信部31cは、自装置のリソースデータに対する位置関係を特定できる。
【0049】
走行制御部31eは、リソースデータと自装置の位置関係とを用い、ルート探索を行う(ステップS204)。その後、走行制御部31e及びメッセージ送受信部31cは、は、決定した移動経路に沿って走行制御する(ステップS205)。
【0050】
図8は、走行制御の詳細を示すフローチャートである。まず、メッセージ送受信部31cは、移動経路、ソースデータ34c及びスペックデータ34dに基づいて、要求するリソースを決定する(ステップS301)。メッセージ送受信部31cは、決定したリソースについて、建物リソース管理サーバ60に対して利用登録要求を送信する(ステップS302)。
【0051】
その後、建物リソース管理サーバ60から利用許可を受信したならば(ステップS303)、走行制御部31eは、許可されたリソースを利用して走行を行う(ステップS304)。メッセージ送受信部31cは、利用を終えたリソースの解放を建物リソース管理サーバ60に要求し(ステップ305)、ステップS301からの処理を繰り返す。
【0052】
上述してきたように、開示の移動体通行管理システムは、自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、前記移動体であるロボット30の通行に必要なリソースをリソースデータとして記憶する記憶部64と、前記移動体に対する前記リソースの割り当て状況を管理するリソース管理部61aと、前記移動体からの要求を受け付けて前記リソースの新規割り当てを行い、前記移動体による利用が終了した場合に前記リソースを解放する利用要求処理部61cと、を備えたことを特徴とする。
この構成及び動作により、移動体通行管理システムは、自律して移動する移動体の通行を効率的に調停できる。
【0053】
また、前記リソースデータは、建物において前記移動体が通行するエリアを分割したサブエリアに識別データを付与したデータであり、前記移動体は、自らが利用するサブエリアを指定して割り当てを受ける。
さらに、前記リソース管理部31aは、前記リソースデータを前記移動体に提供し、前記移動体は、前記リソースデータを用いて移動経路を探索し、前記移動経路を構成するサブエリアについて割り当てを要求する。
この構成及び動作により、移動体は、リソースデータを経路探索とリソース要求の双方に用いることができ、動作を効率化できる。
【0054】
また、前記移動体は、自らの仕様を示すスペックデータを記憶し、前記スペックデータに基づいて割り当てを要求するサブエリアを決定する。
このため、移動体に応じて取得するリソースを柔軟に決定できる。
【0055】
また、前記利用要求処理部61cは、前記リソースを前記移動体に割り当てる場合に、当該リソースの利用条件を前記移動体に通知する。
このため、移動体の通行に関するルールを詳細に決定し、柔軟に変更できる。
【0056】
また、前記記憶部64は、前記移動体が通行するエリアに配置されたマーカーの位置情報と当該マーカーの識別データとを対応付けたマーカーデータをさらに記憶し、前記移動体から前記マーカーデータの識別情報を指定した問い合わせを受けた場合に、対応するマーカーの位置情報を提供するマーカー管理部61bをさらに備える。
この構成及び動作によれば、移動体は、現在地から認識できるマーカーに基づいて自装置の位置を特定できる。
【0057】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、かかる構成の削除に限らず、構成の置き換えや追加も可能である。
例えば、上記の実施例では、建物内で作業を行なうロボットを例示したが、本発明は、屋外を移動する移動体にも適用可能である。また、移動の態様も、走行に限らず、飛行、航行などであってよい。
【符号の説明】
【0058】
30:ロボット、31:CPU、31a:アカウント取得部、31c:メッセージ送受信部、31e:走行制御部、32:メモリ、33:通信部、34:記憶部、34a:ロボットアカウント、34b:詳細ログ、34c:リソースデータ、34d:リソースデータ、35:駆動部、60:建物リソース管理サーバ、61:CPU、62:メモリ、63:通信部、64:記憶部、64a:リソース管理データ、64b:リソースデータ、64c:利用条件データ、64e:詳細ログ、70:ロボット運行管理サーバ
【要約】
【課題】自律して移動する移動体の通行を効率的に調停すること。
【解決手段】自律して移動する移動体の通行を管理する移動体通行管理システムであって、前記移動体の通行に必要なリソースをリソースデータとして記憶する記憶部と、前記移動体に対する前記リソースの割り当て状況を管理するリソース管理部と、前記移動体からの要求を受け付けて前記リソースの新規割り当てを行い、前記移動体による利用が終了した場合に前記リソースを解放する利用要求処理部と、を備える。
【選択図】
図1