(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01G 13/00 20130101AFI20221020BHJP
H01C 1/14 20060101ALI20221020BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20221020BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20221020BHJP
H01C 7/02 20060101ALN20221020BHJP
【FI】
H01G13/00 391B
H01C1/14 Z
H01G4/30 311E
H01F41/04 B
H01C7/02
(21)【出願番号】P 2022507065
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2020010448
(87)【国際公開番号】W WO2021181548
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-06-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318004501
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブコーティングス
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英児
(72)【発明者】
【氏名】坂本 仁志
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-059786(JP,A)
【文献】特表2005-537928(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013237(WO,A1)
【文献】特開2014-143362(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070093(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 13/00
H01C 1/14
H01G 4/30
H01F 41/04
H01C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品本体を導電性ペーストのディップ層に対して相対的に第1方向に移動させて、前記電子部品本体の端部を前記ディップ層に浸漬させる第1工程と、
前記電子部品本体を前記ディップ層に対して相対的に、前記第1方向とは逆向きの第2方向に移動させて、前記電子部品本体の前記端部を前記ディップ層から引き離す第2工程と、
前記電子部品本体の前記端部に塗布された前記導電性ペーストと前記ディップ層とのつながりを、前記電子部品本体の前記端部が前記ディップ層から引き離されることで自然に切断される前に、固体または流体である切断手段との接触により強制的に切断する第3工程と、
前記第3工程以降に、前記電子部品本体の前記端部に塗布された前記導電性ペーストのうち、余分なペースト材を除去する第4工程と、
を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記切断手段としてペースト除去部材を用い、
前記電子部品本体の前記端部に塗布された前記導電性ペーストが前記ディップ層とつながった状態にあるときに、前記電子部品本体を前記ペースト除去部材に対して相対的に、前記電子部品本体の前記端部の端面と平行な第3方向に移動させることにより、前記第3工程及び前記第4工程が同時に実施されて、前記余分なペースト及び前記ディップ層から切り離された導電性ペースト層を、前記電子部品本体の前記端部に形成することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記ペースト除去部材は、線材、第1板材のエッジ、または厚さ方向で貫通孔が形成された第2板材の前記貫通孔のエッジを、前記余分なペーストに接触させることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記電子部品本体を前記ペースト除去部材に対して相対的に、前記第3方向とは逆向きの第4方向に移動させて、前記ペースト除去部材により前記導電性ペースト層の一部のペーストを除去して、前記導電性ペースト層を整形する第5工程をさらに有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項5】
請求項2または4において、
前記第1工程及び前記第2工程の各々は、前記電子部品本体を含む複数の電子部品本体を保持する治具を前記ディップ層に対して相対的に、前記第1方向及び前記第2方向のいずれか一方に移動させる工程を含み、
前記第3工程及び前記第4工程は、前記治具を前記ペースト除去部材に対して相対的に、前記第3方向に移動させる工程を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記治具は、前記電子部品本体の前記端面と平行な面内で前記第3方向と交差する第5方向に沿ってM(Mは2以上の整数)個の前記電子部品本体を保持し、
前記第1工程~前記第4工程の各々は、前記M個の電子部品本体に対して同時に実施されることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記ペースト除去部材は、前記電子部品本体の前記端面と平行な板材と、前記板材の厚さ方向で貫通して形成されたスリットと、を含み、前記スリットは、前記第5方向に沿って延び、
前記第1工程及び前記第2工程の各々は、前記M個の電子部品本体の前記端部を、前記スリットを介して前記板材の上方と下方との間で相対的に移動させる工程を含み、
前記第3工程及び前記第4工程は、前記M個の電子部品本体の前記端部から前記余分なペーストを前記スリットの第1エッジにより同時に除去する工程を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項8】
請求項4に従属する請求項7において、
前記第5工程は、前記導電性ペースト層の前記一部のペーストを前記スリットの第2エッジで除去することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項9】
請求項6において、
前記ペースト除去部材は、前記第5方向に沿って延びる線材または板材を含み、
前記第1工程及び前記第2工程の各々は、前記M個の電子部品本体の前記端部を、前記線材または前記板材の高さ位置に対する上方と下方との間で相対的に移動させる工程を含み、
前記第3工程及び前記第4工程は、前記M個の電子部品本体の前記端部から前記余分なペーストを前記線材または前記板材のエッジにより除去する工程を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項10】
請求項6において、
前記治具は、前記第3方向に沿ってN(Nは2以上の整数)個の前記電子部品本体を保持し、
前記第1工程~前記第4工程の各々は、M×N個の電子部品本体に対して同時に実施されることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記ペースト除去部材は、前記M×N個の電子部品本体の前記端面と平行な板材と、前記板材の厚さ方向で貫通して形成されたN個のスリットと、を含み、前記N個のスリットは、前記第5方向に沿って平行に延び、かつ前記第3方向で間隔をあけて設けられ、
前記第1工程及び前記第2工程は、前記M×N個の電子部品本体の前記端部を、前記N個のスリットを介して前記板材の上方と下方との間で相対的に移動させる工程を含み、
前記第3工程及び前記第4工程は、前記M×N個の電子部品本体の前記端部から前記余分なペーストを前記N個のスリットの第1エッジにより除去する工程を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項12】
請求項4に従属する請求項11において、
前記第5工程は、前記導電性ペースト層の前記一部のペーストを前記N個のスリットの第2エッジにより除去することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項13】
請求項10において、
前記ペースト除去部材は、前記第5方向に沿って延び、前記第3方向で間隔をあけて設けられたN個の線材またはN個の板材を含み、
前記第1工程及び前記第2工程の各々は、前記M×N個の電子部品本体の前記端部を、前記N個の線材または前記N個の板材の同一高さ位置に対する上方と下方との間で相対的に移動させる工程を含み、
前記第3工程及び前記第4工程は、前記M×N個の電子部品本体の前記端部から前記余分なペーストを前記N個の線材または前記N個の板材のエッジにより除去する工程を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項14】
複数の電子部品本体の各々の端部に電極を形成する電子部品の製造装置において、
導電性ペーストのディップ層が塗布形成されるディップ層形成部と、
前記複数の電子部品本体の各々の前記端部が前記ディップ層と対向するように、前記複数の電子部品本体を保持する治具と、
前記複数の電子部品本体の各々の前記端部に塗布された前記導電性ペーストから余分なペーストを除去するペースト除去部材と、
前記治具を前記ディップ層形成部に対して相対的に、前記ディップ層形成部の主面の法線方向に沿って移動させる第1移動機構と、
前記治具を前記ペースト除去部材に対して相対的に、前記ディップ層形成部の前記主面と平行な方向に沿って移動させる第2移動機構と、
を有し、
前記第1移動機構は、前記治具を前記ディップ層形成部に対して相対的に前記法線方向に沿った第1方向に移動させて、前記複数の電子部品本体の各々の前記端部を前記ディップ層に浸漬させ、その後、前記治具を前記ディップ層形成部に対して相対的に前記第1方向とは逆向きの第2方向に移動させて、前記電子部品本体の前記端部を前記ディップ層から引き離し、
前記第2移動機構は、前記複数の電子部品本体の各々の前記端部に塗布された前記導電性ペーストが前記ディップ層とつながった状態にあるときに、前記治具を前記ペースト除去部材に対して相対的に前記ディップ層形成部の前記主面と平行な第3方向に移動させて、前記余分なペースト及び記ディップ層から切り離された導電性ペースト層を、前記電子部品本体の前記端部に形成することを特徴とする電子部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法及び装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサー、インダクター、サーミスター等の電子部品本体の端面には、導電性ペースト層をディップ塗布して、電子部品本体に外部電極を形成している。ディップ塗布されたままの導電性ペースト層の膜厚は均一化されない。そこで、導電性ペーストがディップ塗布された電子部品本体を、定盤面に形成されたディップ層から引き上げた後に、電子部品本体の端部に形成された導電性ペースト層を、ディップ層が除去された定盤面に接触させることも提案されている(特許文献1)。この工程は、電子部品本体側の余分な導電性ペーストを定盤により拭い取ることから、ブロット(blot)工程と称される。このブロット工程の実施により、電子部品本体の端部にほぼ均一の導電性ペースト層が形成されることが期待される。
【0003】
しかし、ブロット工程を実施しても、定盤から電子部品本体を引き上げると、電子部品本体の導電性ペースト層は、定盤に転写された導電性ペーストの表面張力により定盤側に引っ張られる。また、定盤上の導電性ペーストと電子部品本体の導電性ペーストとがつながる糸引き現象も生ずる。このような現象に起因して、電子部品本体の外部電極は、端面の中心付近を覆う部分は厚く周縁付近を覆う部分は薄くなる傾向がある。
【0004】
このような外部電極は、外部電極の表面の平坦性を阻害する上、外部電極の膜厚の不均一を生ずる。また、定盤に転写された導電性ペーストの表面張力により、特に電子部品本体の端面と側面とのコーナー部で、導電性ペースト層が定盤側に移動して、コーナー部の膜厚が薄くなる。このような外部電極を有する電子部品を基板に半田付けすると、はんだ付け品質が不安定となる。
【0005】
定盤を用いて、ディップ塗布工程とブロット工程とを実施するためには、ディップ塗布後に定盤上の導電性ペーストを除去し、その後に、再度、電子部品を定盤と接触させ、その後定盤より引き離さなればならない。
【0006】
そこで、本願出願人は、電子部品本体を定盤上のディップ層から引き離して、電子部品本体の端部に導電性ペースト層を形成した後に、電子部品本体の端面に塗布された導電性ペースト層を、音波例えば超音波により振動する線材に接触させて整形することを提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-45813号公報
【文献】WO2019/198710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子部品本体の端面に塗布された導電性ペースト層を、音波例えば超音波により振動する線材に接触させて整形すると、電子部品本体の端面の導電性ペースト層の膜厚はより均一化される。また、線材による整形工程は、塗布に用いられた定盤からディップ層を除去した後に行われる従来のブロット工程を必ずしも要しないため、工程時間の短縮が期待される。
【0009】
本発明の幾つかの態様は、電子部品の端部の端面だけでなく側面や角部に形成される外部電極の形状を改善することができる電子部品の製造方法を提供することを目的とする。本発明の他の幾つかの態様は、さらに工程時間を短縮することができる電子部品の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一態様は、
電子部品本体を導電性ペーストのディップ層に対して相対的に第1方向に移動させて、前記電子部品本体の端部を前記ディップ層に浸漬させる第1工程と、
前記電子部品本体を前記ディップ層に対して相対的に、前記第1方向とは逆向きの第2方向に移動させて、前記電子部品本体の前記端部を前記ディップ層から引き離す第2工程と、
前記電子部品本体の前記端部に塗布された前記導電性ペーストと前記ディップ層とのつながりを、前記電子部品本体の前記端部が前記ディップ層から引き離されることで自然に切断される前に、固体または流体である切断手段との接触により強制的に切断する第3工程と、
前記第3工程以降に、前記電子部品本体の前記端部に塗布された前記導電性ペーストのうち、余分なペースト材を除去する第4工程と、
を有する電子部品の製造方法に関する。
【0011】
本発明の一態様によれば、第1工程及び第2工程により、電子部品本体の端面と該端面に続く側面とを含む端部に、導電性ペーストが塗布される。第3工程で電子部品本体の端部に塗布された導電性ペーストとディップ層とのつながりが、固体または流体である切断手段との接触により強制的に切断される。さらに第4工程により、電子部品本体の端部に塗布された導電性ペーストのうち余分なペーストが除去される。この際、第3工程により電子部品本体の端部に塗布された導電性ペーストとディップ層とのつながりが強制的に切断された状態では、電子部品本体の側面や、側面と端面とを結ぶ角部において、導電性ペーストの十分な膜厚が確保されている。一方、電子部品本体の側面や、側面と端面とを結ぶ角部に塗布された導電性ペーストは、第2工程の実施により電子部品本体の端部とディップ層との間隔が広がるにつれて糸引き部分に移動する量が多くなる。そして、糸引き部分が自然に切れるほどに上記間隔が広がった時点で、電子部品本体の側面や角部の導電性ペースト層の膜厚はほぼ確定されるが、この時点では十分な膜厚が確保できないことが判明した。よって、糸引き部分が自然に切断される前のタイミングで第3工程を強制実施することにより、電子部品本体の側面や角部の導電性ペースト層の膜厚を従来よりも厚く確保することができる。電子部品本体の端面に塗布された導電性ペーストのうち余分なペーストを除去することで、平坦化された導電性ペースト層を形成することができる。
【0012】
(2)本発明の一態様(1)では、前記切断手段としてペースト除去部材を用い、前記電子部品本体の前記端部に塗布された前記導電性ペーストが前記ディップ層とつながった状態にあるときに、前記電子部品本体を前記ペースト除去部材に対して相対的に、前記電子部品本体の前記端部の端面と平行な第3方向に移動させることにより、前記第3工程及び前記第4工程が同時に実施されて、前記余分なペースト及び前記ディップ層から切り離された導電性ペースト層を、前記電子部品本体の前記端部に形成することができる。このように、導電性ペースト部材により第3工程及び第4工程を同時に実施しても良い。それにより、ディップ層が除去された後の例えば定盤に導電性ペースト層を接触させて整形するという従来のブロット工程の機能を超えた整形機能を、第3工程及び第4工程により代替することができる。また、従来のブロット工程では定盤上のディップ層が除去されるのを待つ必要があるのに対して、定盤上のディップ層が除去されるのを待たずにペースト除去部材を使用できるので、工程時間が短縮される。
【0013】
(3)本発明の一態様(2)では、前記ペースト除去部材は、線材、第1板材のエッジまたは厚さ方向で貫通孔が形成され第2板材の前記貫通孔のエッジを、前記余分なペーストに接触させることができる。つまり、ペースト除去部材は、電子部品本体に対して第3方向への相対的移動により余分なペーストと接触しながら除去することができるあらゆる形状を利用することができる。
【0014】
(4)本発明の一態様(2)では、前記ペースト除去部材を前記電子部品本体に対して相対的に、前記第3方向とは逆向きの第4方向に移動させて、前記ペースト除去部材により前記導電性ペースト層の一部のペーストを除去して、前記導電性ペースト層を整形する第5工程をさらに有することができる。それにより、第3工程及び第4工程によって電子部品本体の端面に整形して形成された導電性ペースト層の一部のペーストを、第5工程の実施により除去して、導電性ペースト層を再整形することができる。それにより、導電性ペースト層の平坦性をより向上させることができる。なお、ペースト除去部材を第3方向、第4方向に繰り返し相対移動させて、導電性ペースト層を3回以上整形してもよい。
【0015】
(5)本発明の一態様(2)または(4)では、前記第1工程及び前記第2工程の各々は、前記電子部品本体を含む複数の電子部品本体を保持する治具を前記ディップ層に対して相対的に、前記第1方向及び前記第2方向のいずれか一方に移動させる工程を含み、前記第3工程及び前記第4工程は、前記治具を前記ペースト除去部材に対して相対的に、前記第3方向に移動させる工程を含むことができる。治具を用いることで、複数の電子部品本体に導電性ペースト層を形成することができる。
【0016】
(6)本発明の一態様(5)では、前記治具は、前記電子部品本体の前記端面と平行な面内で前記第3方向と交差する第5方向に沿ってM(Mは2以上の整数)個の前記電子部品本体を保持し、前記第1工程~前記第4工程の各々は、前記M個の電子部品本体に対して同時に実施することができる。こうすると、第1工程~前記4工程の各々を、一次元配列されたM個の電子部品本体に対して同時に実施することができる。
【0017】
(7)本発明の一態様(5)では、前記ペースト除去部材は、前記電子部品本体の前記端面と平行な板材と、前記板材の厚さ方向で貫通して形成されたスリットと、を含み、前記スリットは、前記第5方向に沿って延び、前記第1工程及び前記第2工程の各々は、前記M個の電子部品本体の前記端部を、前記スリットを介して前記板材の上方と下方との間で相対的に移動させる工程を含み、前記第3工程及び前記第4工程は、前記M個の電子部品本体の前記端部から前記余分なペーストを前記スリットの第1エッジにより同時に除去する工程を含むことができる。こうすると、スリットを介して同時にM個の電子部品本体を相対的に移動させることで、第1及び第2工程の各々が実施され、M個の電子部品本体から余分なペーストをスリットの第1エッジにより同時に除去する第3工程及び第4工程を実施することができる。
【0018】
(8)本発明の一態様(4)に従属する態様(7)では、前記第5工程は、前記導電性ペースト層の前記一部のペーストを前記スリットの第2エッジで除去することができる。こうすると、M個の電子部品本体について導電性ペースト層を再整形することができる。
【0019】
(9)本発明の一態様(6)では、前記ペースト除去部材は、前前記第5方向に沿って延びる線材または板材を含み、前記第1工程及び前記第2工程の各々は、前記M個の電子部品本体の前記端部を、前記線材または前記板材の高さ位置に対する上方と下方との間で相対的に移動させる工程を含み、前記第3工程及び前記第4工程は、前記M個の電子部品本体の前記端部から前記余分なペーストを前記線材または前記板材のエッジにより除去する工程を含むことができる。こうすると、線材または板材と干渉させずに第1及び第2工程の各々を実施でき、M個の電子部品本体から余分なペーストを線材または板材のエッジにより同時に除去する第3工程及び第4工程を実施することができる。
【0020】
(10)本発明の一態様(6)では、前記治具は、前記第3方向に沿ってN(Nは2以上の整数)個の前記電子部品本体を保持し、前記第1工程~前記第4工程の各々は、M×N個の電子部品本体に対して同時に実施することができる。こうすると、第1工程~第4工程の各々を、二次元配列されたM×N個の電子部品本体に対して同時に実施することができる。
【0021】
(11)本発明の一態様(10)では、前記ペースト除去部材は、前記M×N個の電子部品本体の前記端面と平行な板材と、前記板材の厚さ方向で貫通して形成されたN個のスリットと、を含み、前記N個のスリットは、前記第5方向に沿って平行に延び、かつ前記第3方向で間隔をあけて設けられ、前記第1工程及び前記第2工程は、前記M×N個の電子部品本体の前記端部を、前記N個のスリットを介して前記板材の上方と下方との間で相対的に移動させる工程を含み、前記第3工程及び前記第4工程は、前記M×N個の電子部品本体の前記端部から前記余分なペーストを前記N個のスリットの第1エッジにより除去する工程を含むことができる。こうすると、N個のスリットを介して同時にM×N個の電子部品本体を相対的に移動させることで、第1及び第2工程の各々が実施され、M×N個の電子部品本体から余分なペーストをN個のスリットの第1エッジにより同時に除去する第3工程及び第4工程を実施することができる。
【0022】
(12)本発明の一態様(4)に従属する態様(11)では、前記第4工程は、前記導電性ペースト層の前記一部のペーストを前記N個のスリットの第2エッジにより除去することができる。こうすると、M×N個の電子部品本体について導電性ペースト層を再整形することができる。
【0023】
(13)本発明の一態様(10)では、前記ペースト除去部材は、前記第5方向に沿って延び、前記第3方向で間隔をあけて設けられたN個の線材またはN個の板材を含み、前記第1工程及び前記第2工程の各々は、前記M×N個の電子部品本体の前記端部を、前記N個の線材または前記N個の板材の同一高さ位置に対する上方と下方との間で相対的に移動させる工程を含み、前記第3工程及び前記第4工程は、前記M×N個の電子部品本体の前記端部から前記余分なペーストを前記N個の線材または前記N個の板材のエッジにより除去する工程を含むことができる。こうすると、N個の線材またはN個の板材と干渉させずに第1及び第2工程の各々を実施でき、M×N個の電子部品本体から余分なペーストをN個の線材またはN個の板材により同時に除去する第3工程及び第4工程を実施することができる。
【0024】
(14)本発明の他の態様は、
複数の電子部品本体の各々の端部に電極を形成する電子部品の製造装置において、
導電性ペーストのディップ層が形成されるディップ層形成部と、
前記複数の電子部品本体の各々の前記端部が前記ディップ層と対向するように、前記複数の電子部品本体を保持する治具と、
前記複数の電子部品本体の各々の前記端部に塗布された前記導電性ペーストから余分なペーストを除去するペースト除去部材と、
前記治具を前記ディップ層形成部に対して相対的に、前記ディップ層形成部の主面の法線方向に沿って移動させる第1移動機構と、
前記治具を前記ペースト除去部材に対して相対的に、前記ディップ層形成部の前記主面と平行な方向に沿って移動させる第2移動機構と、
を有し、
前記第1移動機構は、前記治具を前記ディップ層形成部に対して相対的に前記法線方向に沿った第1方向に移動させて、前記複数の電子部品本体の各々の前記端部を前記ディップ層に浸漬させ、その後、前記治具を前記ディップ層形成部に対して相対的に前記第1方向とは逆向きの第2方向に移動させて、前記電子部品本体の前記端部を前記ディップ層から引き離し、
前記第2移動機構は、前記複数の電子部品本体の各々の前記端部に塗布された前記導電性ペーストが前記ディップ層とつながった状態にあるときに、前記治具を前記ペースト除去部材に対して相対的に前記ディップ層形成部の前記主面と平行な第3方向に移動させて、前記余分なペースト及び記ディップ層から切り離された導電性ペースト層を、前記電子部品本体の前記端部に形成する電子部品の製造装置に関する。
【0025】
本発明の他の態様によれば、治具をディップ層形成部に対して相対的に、ディップ層形成部の主面の法線方向に沿って第1移動機構により移動させることで、本発明の一態様に係る方法発明の第1工程及び第2工程を実施することができる。それにより、複数の電子部品本体の各々の端面と、その端面に続く側面とを含む端部に、導電性ペーストを塗布することができる。また、治具をペースト除去部材に対して相対的に、ディップ層形成部の主面と平行な第3方向に沿って第2移動機構により移動させることで、本発明の一態様に係る方法発明の第3工程及び第4工程を同時に実施することができる。それにより、複数の電子部品本体の各々の側面や角部に形成される導電性ペースト層の膜厚を確保し、かつ、複数の電子部品本体の各々端面に形成された導電性ペースト層を平坦化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る電子部品の製造方法に用いられる電子部品本体と導電性ペースト層のディップ層とを概略的に示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の第1工程を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の第2工程を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の第3工程及び第4工程を示す図である。
【
図5】
図5(A)~
図5(C)は糸引き過程における電子部品本体の側面及び角部での導電性ペーストの膜厚の変化を示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の第5工程を示す図である。
【
図7】1本の線材に沿ってM個の電子部品本体を配置した第3工程を示す図である。
【
図8】N本の線材の各々に沿ってM個の電子部品本体を配置した第3工程を示す図である。
【
図9】
図7の1本の線材に代えて一つのスリットにより実施される第3工程を示す図である。
【
図10】
図8のN本の線材に代えてN個のスリットにより実施される第3工程を示す図である。
【
図11】
図10のN個のスリットに代えてM×N個の貫通孔を有するペースト除去部材の概略斜視図である。
【
図12】本発明の第2実施形態の第1工程の開始前の状態を示す部分拡大図である。
【
図13】本発明の第2実施形態の第1工程を示す部分拡大図である。
【
図14】本発明の第2実施形態の第2工程を示す部分拡大図である。
【
図15】本発明の第2実施形態の第3工程及び第4工程を示す図である。
【
図17】本発明の第3実施形態に係る電子部品の製造装置を示す図である。
【
図19】端部に外部電極が形成される電子部品の斜視図である。
【
図21】本発明の第3実施形態によって製造されるチップ三端子コンデンサーの概略斜視図である。
【
図22】
図21に示すチップ三端子コンデンサーの基板への実装を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の開示において、提示された主題の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態や実施例を提供する。もちろんこれらは単なる例であり、限定的であることを意図するものではない。さらに、本開示では、様々な例において参照番号および/または文字を反復している場合がある。このように反復するのは、簡潔明瞭にするためであり、それ自体が様々な実施形態および/または説明されている構成との間に関係があることを必要とするものではない。さらに、第1の要素が第2の要素に「接続されている」または「連結されている」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素と第2の要素とが互いに直接的に接続または連結されている実施形態を含むとともに、第1の要素と第2の要素とが、その間に介在する1以上の他の要素を有して互いに間接的に接続または連結されている実施形態も含む。また、第1の要素が第2の要素に対して「移動する」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素及び第2の要素の少なくとも一方が他方に対して移動する相対的な移動の実施形態を含む。
【0028】
1.第1実施形態
図1に、端部2を有する電子部品本体1と、ディップ層形成部例えば定盤5の主面5A上に均一厚に形成された導電性ペーストのディップ層3と、を模式的に示す。端部2は、端面2Aとそれに続く側面2Bと、端面2Aと側面2Bとの間の角部2Cとを含む。電子部品本体1の端部2に電極を形成して電子部品を製造する本実施形態に係る電子部品の製造方法は、以下に説明する第1~第4工程を少なくとも含む。
【0029】
図2~
図4に、第1実施形態に係る第1工程~第4工程を示す。なお、説明を分かり易くするために、図面中の一部の部材は寸法が誇張して描かれており、例えばディップ層3や導電性ペースト4及び導電性ペースト層4Bの寸法や形状は、他の部材の寸法や形状と比べて拡大されている。
【0030】
1.1.第1工程(塗布工程)
第1工程は、
図2に示すように、電子部品本体1を定盤5(ディップ層3)に対して相対的に、定盤5の主面5Aと交差する方向例えば主面5Aの法線方向(
図2の上下方向)と平行な第1方向A(Z-方向)に移動させる。こうして、電子部品本体1の端部2をディップ層3に浸漬させる。
図2では、電子部品本体1を第1方向(Z-方向)に下降させているが、定盤5を第1方向(Z+方向)に上昇させても良いし、電子部品本体1及び定盤5の双方を両者が互いに遠ざかる第1方向に移動させても良い。
【0031】
1.2.第2工程(塗布後の退避工程)
その後、
図3に示す第2工程では、電子部品本体1とディップ層3とを相対的に第1方向Aとは逆方向となる第2方向B(Z+方向)に移動させて、電子部品本体1の端部2をディップ層3から引き離す。それにより、電子部品本体1の端部2に導電性ペースト4が塗布されて形成される。
図3では、電子部品本体1を第2方向(Z+方向)に上昇させているが、定盤5を第1方向(Z-方向)に下降させても良いし、電子部品本体1及び定盤5の双方を、両者が互いに遠ざかる第2方向に移動させても良い。
【0032】
1.3.第3工程及び第4工程(ペースト切断・除去工程)
その後、
図4に示す第3工程(ペースト切断工程)及び第4工程(余分なペースト除去工程)の同時工程では、電子部品本体1の端面2Aに塗布された導電性ペースト4から、破線4Aより下方の余分なペースト材(以降、余分なペースト材4Aと称する)を、ペースト除去部材例えば線材6により除去する。線材6は、張力が付与されて張り渡されるものであれば種類は問わず、例えばピアノ線や銅線等を好適に用いることができる。ペースト除去部材6は、相対的な接触移動により余分なペースト材4Aを掻き取ることができる部材であればよい。ペースト除去部材6は、線材に限らず、ブレード等の第1板材や、あるいは厚さ方向で貫通された貫通孔を有する第2板材であってもよい。第1板材のエッジや第2板材に設けられた貫通孔のエッジが余分なペースト材4Aを掻き取ることができる。なお、
図4ではペースト除去部材6を第3方向C(X+方向)に水平移動させているが、電子部品本体1を第3方向(X-方向)に水平移動させても良いし、電子部品本体1及びペースト除去部材6の双方を両者が互いに逆向きの第3方向に移動させても良い。
【0033】
ここで、第3工程は、電子部品本体1の端部2に塗布された導電性ペースト4が定盤5上のディップ層3とつながった状態、つまりペースト3、4間が糸引き3Aでつながっている状態にあるときに実施される。この第3工程が必要な理由を
図5(A)~
図5(C)を用いて説明する。
図5(A)~
図5(C)は糸引き過程または糸引きの自然解消後における電子部品本体1の側面2B及び角部2Cでの導電性ペースト4の膜厚の変化を示す。
【0034】
図5(A)~
図5(C)は、第2工程中の電子部品本体1の端面2Aの定盤5に対する高さL1~L3が異なる状態を示している。第2工程初期の
図5(A)に示す最も低い高さL1では、ディップ層3と塗布後の導電性ペースト4とをつなぐ糸引き3Aが比較的太くかつ短い。第2工程中期の
図5(B)に示す中間の高さL2では、ディップ層3と塗布後の導電性ペースト4とをつなぐ糸引き3Aが比較的細くかつ長い。その後さらに第2工程を継続すると、
図5(C)に示す最も高い高さL3では、糸引き3Aは自然に切られて存在しない。
【0035】
ここで、電子部品本体1の端部2のうち端面2Aに塗布された導電性ペースト4の膜厚をT
Eとし、側面2Bに塗布された導電性ペースト4の膜厚をT
Sとし、角部2Cに塗布された導電性ペースト4の膜厚をT
Cとする。
図5(A)に示す状態での側面2B及び角部2Cの膜厚をT
S1、T
C1とし、
図5(B)に示す状態での各膜厚をT
S2、T
C2とし、
図5(C)に示す状態での各膜厚をT
S3、T
C3とする。各膜厚の関係は、T
S1>T
S2>T
S3、かつ、T
C1>T
C2>T
C3となる。つまり、側面2Bの膜厚T
S及び角部2Cの膜厚T
Cは、第2工程での端面2Aの高さL1~L3に依存して、高いほど薄くなる。この理由は、電子部品本体1の端部2に塗布された導電性ペースト4が、第2工程中に糸引き3Aに引っ張られて、糸引き3Aに移動して吸収されるからである。また、同じ理由から、
図5(A)及び
図5(B)において、破線より下方の余分なペースト4Aが除去された後の端面2Aの膜厚の関係は、T
E1>T
E2となる。
【0036】
本実施形態では、
図5(A)または
図5(B)に示すように糸引き3Aがある状態で第3工程及び第4工程が例えば同時に実施される。第3工程及び第4工程は、定盤5の主面5Aに対する法線方向から見た平面視で、ペースト除去部材6が電子部品本体1を少なくとも一回横切るように、電子部品本体1とペースト除去部材6とを相対的に第3方向Cに移動させる。例えば1本の線材6-1である線状のペースト除去部材6が電子部品本体1を一回横切るだけで、つまり、
図4に示す矢印C方向への相対移動のみで、
図4に示す破線より下方の余分な導電性ペースト4Aが除去される。こうして、
図5(C)に示すように糸引き3Aがない状態で第4工程を実施するよりも、
図5(A)または
図5(B)に示すように糸引き3Aがある状態で第3工程を強制実施した以降に第4工程を実施した方が、端面2Aの膜厚T
E、側面2Bの膜厚T
S及び角部2Cの膜厚T
Cを厚く確保することができる。換言すれば、第3工程の終了時点で、端面2Aの膜厚T
E、側面2Bの膜厚T
S及び角部2Cの膜厚T
Cがほぼ確定するので、糸引き3Aがある状態で第3工程を開始させることが肝要である。なお、糸引き3Aがない
図5(C)に示す電子部品本体1の端面2Aのペースト4は、例えば従来のブロット工程によって、定盤に接触させて整形される。こうすると、
図5(C)に示す電子部品本体1の端面2Aのペースト4は、余分なペースト4Aが定盤によってならされてほぼ均一になる。しかし、端面2Aのペースト4の膜厚は余分なペースト4Aが均された結果厚みを増し、例えば角部2Cの膜厚T
C3よりも厚くなってしまう。その点、本実施形態によれば、
図5(A)または
図5(B)に示す端面2A及び側面2Bに塗布されたペースト4の膜厚差を小さくすることができる。
【0037】
以上のことを踏まえると、第3工程(ペースト切断工程)及び第4工程(余分なペースト除去工程)は、本実施形態のように同時するものに限らず、第3工程の終了後に第4工程を実施しても良い。この場合、第3工程では例えばペースト切断部材(切断手段)を糸引き3Aと接触させて糸引き3Aを強制的に切断するだけで良く、第4工程はペースト除去部材により余分なペーストを除去すればよい。この場合、第3工程と分離して実施される第4工程は、必ずしもペースト除去部材6を用いずに、例えば余分なペーストを定盤に転写させる従来のブロット工程を用いても良い。また、切断手段は、固体であるペースト切断部材の他、余分なペーストを接触により切断できる気体または液体などの流体、特にジェット噴射される流体であっても良い。
【0038】
本実施形態では、電子部品本体1とペースト除去部材6とは、定盤5の主面5Aと平行な第3方向C(換言すれば電子部品本体1の端面2Aと平行な方向)に相対的に移動されるので、電子部品本体1の端面2Aに塗布された導電性ペースト4のうち余分なペースト4Aは、ペースト除去部材6により糸引き3Aと共に除去される。こうして、電子部品本体1の端面2Aに塗布された導電性ペースト4は
図4中の破線で示すように平坦化されて、膜厚が均一化される。なお、ペースト除去部材は、線材6に限らず、後述する通りスリット又は貫通孔が形成された板材7であっても良く、あるいはスリット又は貫通孔が形成されていない板材でもよい。
【0039】
以上の通り、第3工程及び第4工程の実施により、電子部品本体1の端面2Aに平坦化された導電性ペースト4と、電子部品本体1の側面2B及び角部2Cで比較的厚く確保された導電性ペースト4とにより、電子部品本体1の端部2に塗布形成される導電性ペースト層4Bの形状、膜厚が確定される。
【0040】
1.4.第5工程(二度目のペースト除去工程)
第4工程実施後に、必要により
図6に示す第5工程を実施しても良い。
図6では、
図4に示す第3方向C(X+方向)とは逆方向の第4方向D(X-方向)に、電子部品本体1に対してペースト除去部材6を相対的に移動させる。こうして、平面視で電子部品本体1を横切ってペースト除去部材6を1往復以上相対移動させることで、特に電子部品本体1の端面2Aに塗布された導電性ペースト層4Bの平坦性をより向上させても良い。
【0041】
2.第2実施形態
本発明の第2実施形態は、一列で配置される複数の電子部品本体1、あるいは複数列複数行で配列される複数の電子部品本体1について、第1~第4工程の各々を同時に実施する。
図7では、
図1~
図4に示す定盤5の主面5Aと平行なX-Y平面内で、例えばY方向(第5方向)に延びる1本の線材6が設けられる。図示しない治具に、Y方向に沿ってM(Mは2以上の整数)個の電子部品本体1-1~1-Mを保持する。線材6をM個の電子部品本体1に対して相対的に第3方向Cに移動させて、M個の電子部品本体1-1~1-Mついて第3工程及び第4工程を同時に実施することができる。一方、
図8では、
図1~
図4に示す定盤5の主面5Aと平行なX-Y平面内で、M×N(Nは2以上の整数)個の電子部品本体1-1~1-M×Nが図示しない治具に保持される。
図8に示すペースト除去部材6は、例えばY方向(第5方向)と平行にN(Nは2以上の整数)本の線材6-1~6-Nを有する。N本の線材6-1~6-Nは、例えば枠体6Aに支持される。N本の線材6-1~6-NをM×N個の電子部品本体1-1~N-Mに対して相対的に第3方向Cに移動させて、M×N個の電子部品本体1-1~N-Mついて第3工程及び第4工程を同時に実施することができる。第1及び第2工程は、M×N個の電子部品本体1-1~N-Mが、平面視でN本の線材6-1~6-N及び枠体6Aと干渉しない
図8に示す位置に設定して実施される。第1及び第2工程は、N本の線材6-1~6-Nの上方と下方との間でM×N個の電子部品本体1-1~N-Mが相対的に往復移動するようにして実施される。
【0042】
図9は、
図7の線材6に代えて、スリット7-1を有する板材7Aをペースト除去部材7として用いた例を示す。
図10は、
図8のN本の線材6-1~6-Nに代えて、N個のスリット7-1~7-Nを有する板材7Bをペースト除去部材7として用いた例を示す。
図9及び
図10において、ペースト除去部材7は板材の厚さ方向で貫通する1個のスリット7-1またはN個のスリット7-1~7-Nを有する。スリット7-1~7-Nの各々は、Y方向に沿って配列されたM個の電子部品本体1が、塗布の前後で通過できる大きさに形成される。なお、M個の電子部品本体1が通過できるのであれば、各一つのスリットをM個の貫通孔に変更しても良い。例えば、
図10のN個のスリット7-1~7-Nに代えて、
図11に示すように、M×N個の貫通孔7C1を有する板材7Cであるペースト除去部材7用いても良い。同様に、
図9のスリット7-1に代えて、M個の貫通孔7C1を用いても良い。なお、貫通孔7C1の形状は、電子部品本体1の端面2Aと相似形でも非相似形でも良い。以下、
図10のペースト除去部材7を用いたペースト塗布方法について説明する。
【0043】
2.1.第1工程(塗布工程)
塗布工程とは、キャリアプレート20に保持された複数の電子部品本体1の各々の端面2Aを含む端部2(
図1参照)を、定盤5の表面5Aに形成された導電性ペーストのディップ層3に浸漬させて、複数の電子部品本体1の各々の端部2に導電性ペーストを塗布する工程である。
【0044】
図12及び
図13は、塗布工程を示している。塗布工程前では、
図12に示すように、複数の電子部品本体1を支持したキャリアプレート20は、ペースト除去部材7B及び定盤5の上方に位置している。キャリアプレート20は、
図12に示す位置から定盤5に向けて第1方向A(Z-方向)に相対的に下降移動する。
【0045】
相対的な垂直移動により、キャリアプレート20に支持された複数の電子部品本体1は、対応するスリット7-kを通過する。
図13は、スリット7-kを追加した電子部品本体1の端部2が、定盤5上に形成されているペースト材のディップ層3と接触している塗布状態を示している。
【0046】
2.2.第2工程(塗布後の退避工程)
その後、キャリアプレート20が定盤5に対して相対的に第2方向(Z+方向)に上昇移動することにより、
図14に示すように、キャリアプレート20に支持された複数の電子部品本体1は、端部2に塗布された導電性ペースト4と共に、対応するスリット7-kを再通過する。この第2工程の終了時では、電子部品本体1の端部2に塗布された導電性ペースト4は、ディップ層3と繋がることで
図5(A)または
図5(B)に示す糸引き3Aとなるペースト材を含む余分なペースト材4Aを含んでいる。塗布工程の後に実施されるペースト除去工程は、塗布された導電性ペースト4中の余分なペースト材4Aが除去され、かつ、糸引き3Aと切り離された導電性ペースト層4Bを形成するために実施される。
【0047】
2.3.第3工程及び第4工程(ペースト切断・除去工程)
図15は第3工程及び第4工程を示し、
図16は
図15の部分拡大図である。ペースト除去工程は、電子部品本体1の端部2に塗布された導電性ペースト4が糸引き3Aを介してディップ層3と繋がっている状態のときに開始される。第3工程及び第4工程は、ペースト除去部材7をキャリアプレート20に対して相対的に第3方向C(X-方向)に水平移動させることで実施される。
図15及び
図16は、スリット7-kを再通過した電子部品本体1を相対的に左に水平移動させた状態を示している。このとき、導電性ペースト4の底面は板材7Bの上面7B1で均される。板材7Bの上面7B1よりも下方に垂れ下がっている余分なペースト材4Aは、スリット7-kの第1エッジ7B2で掻き取られる。掻き取られた余分なペースト材4Aは、スリット7-kを介して定盤5上のディップ層3に落下する。よって、余分なペースト材4Aは、使用済みのディップ層3と共に回収することができる。
【0048】
以上の第3工程及び第4工程の実施により、電子部品本体1の端部2に塗布された導電性ペースト層4Bは、板210の上面3B1で均されると共に、余分なペースト材4Aがスリット7-kの第1エッジ7B2で掻き取られることで、端面2Aに塗布された導電性ペースト4が整形された導電性ペースト層4Bとなる。この導電性ペースト層4Bは、電子部品本体1の側面2B及び角部2Cで比較的厚く確保されることは、上述の通りである。
【0049】
2.4.第5工程(二度目のペースト除去工程)
第4工程実施後に、
図6と同様にして第5工程を実施しても良い。
図16では、第3工程及び第4工程での相対的移動方向である第3方向C(X-方向)とは逆方向の第4方向D(X+方向)に、電子部品本体1をペースト除去部材6に対して相対的に移動させる。ここで、スリット7-kを区画する輪郭エッジには、第1エッジ7B2と対向する第2エッジ7B3が含まれる。第4工程は、第2エッジ7B3が導電性ペースト層4Bの下面と接触して、導電性ペースト層4Bをさらに整形することができる。それにより、特に電子部品本体1の端面2Aに塗布された導電性ペースト層4Bの平坦性をより向上させることができる。
【0050】
3.電子部品の製造装置
図17は本実施形態の実施に用いられる製造装置10を示し、
図18は制御系ブロック図を示している。この製造装置10は、キャリアプレート(治具)20と、移動機構50と、定盤5と、
図4、
図7、
図8~
図10のいずれかのペースト除去部材6,7と、を有する。
図17では直交三軸方向をX,Y,Zとする。なお
図17は、第1~第4工程終了後の電子部品本体1に、導電性ペースト層4Bが形成された状態を示している。
【0051】
複数の電子部品本体1を垂下して保持するキャリアプレート(治具)20は、複数の電子部品本体1を保持する。キャリアプレート20は、治具固定盤30に着脱自在に支持される。治具固定盤30の上方には基盤40が固定され、キャリアプレート20の下方には定盤5が配置される。さらに、本実施形態では、キャリアプレート20と定盤5との間に、固定または可動のペースト除去部材6(7)が配置される。本実施形態では、ペースト除去部材6(7)と定盤5とは固定であり、治具固定盤30が可動である。これとは異なり、治具固定盤30を固定し、ペースト除去部材6(7)と定盤5とを可動としても良い。また、ペースト除去部材6(7)と定盤5との距離は調整可能であることが好ましい。
【0052】
定盤5には、スキージ8A及びブレード8Bを備えたスキージユニット8が設けられる。スキージユニット8は定盤5上を移動する。スキージユニット8は、ブレード8Bを移動させることで、定盤5の表面5Aに導電性ペースト3Bによる高さHのディップ層3を形成することができる。スキージユニット8は、スキージ8Aを移動させることで、定盤5の表面5Aからディップ層3を掻き取って回収することができる。
【0053】
基盤40には、治具固定盤30を移動させる移動機構50が設けられる。ここで、移動機構50は、X軸駆動部60、Y軸駆動部70及びZ軸駆動部80を含むことができる。なお、本実施形態では、治具固定盤30、キャリアプレート20及び複数の電子部品本体1は、移動機構50により、定盤5及びペースト除去部材6(7)に対して相対的に、Z軸方向に移動されると共に、定盤5の主面5Aに平行なX-Y平面に沿って移動可能とされる。移動機構50により、上述の第1工程、第2工程、第3工程及び第4工程を実施することができ、必要により第5工程も実施することができる。移動機構50は、Z軸方向への相対的移動が可能な第1移動機構と、X-Y平面上での相対的移動が可能な第2移動機構と、を含む。
【0054】
X軸駆動部60は、X軸ガイド62に沿って基盤40に対してX軸方向に移動可能なXテーブルで構成することができる。Y軸駆動部70は、Y軸ガイド72に沿ってX軸駆動部60に対してY軸方向に移動可能なYテーブルで構成することができる。Z軸駆動部80は、例えばY軸駆動部70に固定され、Z軸82をZ軸方向に移動可能である。治具固定盤30は、Z軸82に固定される。なお、
図17では、X,Y,Z軸の駆動源である例えばモーター及びその駆動力伝達機構の図示は省略されている。
【0055】
図18に示すように、製造装置10は、X軸駆動部60、Y軸駆動部70及びZ軸駆動部80を制御する制御部90を有する。制御部90はキーボード等の操作入力部92に接続される。制御部90は記憶部91を含み、記憶部91には、操作入力部92を介して入力された操作情報や、予め登録されたプログラム等が記憶される。制御部90は、記憶部91に記憶されたデータやプログラムに従って、X軸駆動部60、Y軸駆動部70及びZ軸駆動部80を制御する。
【0056】
4.電子部品
図19は上述した製造方法により製造された電子部品1Aを示し、
図20は電子部品本体1に形成された電極4Bの断面を示している。ここで、本発明が適用される電子部品1Aの大きさに特に制約はないが、ダウンサイジングに従い超小型化された電子部品1Aに好適である。超小型の電子部品1Aとしては、
図19に示す例えば矩形(正方形または長方形)断面の一辺の最大長さをL1とし、矩形断面と直交する方向の長さをL2としたとき、L1=500μm以下でかつL2=1000μm以下である。好ましくはL1=300μm以下でかつL2=600μm以下、さらに好ましくはL1=200μm以下でかつL2=400μm以下、さらに好ましくはL1=125μm以下でかつL2=250μm以下である。なお、ここでいう矩形とは、二辺が交わるコーナーが厳密に90°であるものの他、コーナーが湾曲又は面取りされた略矩形も含むものとする。なお、本発明は矩形断面以外の電子部品1Aにも適用できることは言うまでもない。
【0057】
4.1.電極の膜厚
図20において、本実施形態によれば、第3工程及び第4工程の実施により端面2Aに形成された電極4Bの厚さT1を実質的に均一にすることができる。また、第3工程及び第4工程の実施により、側面2Bの膜厚T2も十分に確保することができる。例えば、厚さT1及びT2共に例えば40μm以上が確保され、従来はT1の半分程度であった膜厚T2を倍増させることができる。さらに、第3工程及び第4工程の実施により、角部2Cの電極4Bの膜厚T3も、従来10μm程度であったのが例えば20μmと、倍増させることができる。これらの膜厚T1~T3は、従来のブロット工程後の膜厚と明確に区別される。
【0058】
5.第3実施形態
図21は、本発明の第3実施形態により製造される電子部品100を示している。電子部品100は、例えばチップ三端子コンデンサーである。電子部品100は、電子部品本体101の長手方向X1の両端部に設けられた二端子の貫通電極102A,102Bと、電子部品本体101の短手方向Y1の両端部に設けられた2つのグランド電極103と、を有する。
【0059】
チップ三端子コンデンサー100は、
図22に示すように、三端子102A,102B,103が基板110の導電パターン上にはんだ112により接続されて実装される。その際、貫通電極102A,102Bと、グランド電極103との厚さに
図22に示すような差Dが生ずると、接続不良となる。
図22の例では、グランド電極103が、厚さが薄いために基板110と接続されていない。よって、
図22に示す差Dを解消する必要がある。
【0060】
ここで、貫通電極102A,102Bは
図2に示す塗布工程により形成されるのに対して、グランド電極103は、例えば
図23~
図26に示す凹版印刷によって、電子部品本体101の短手方向Y1の端部に局所的に形成される。先ず、
図23(A)(B)に示す第1工程では、ディップ層形成部例えばゴム板120の主面121に穿設された溝122にペーストのディップ層130が形成される。次に、
図24(A)(B)に示す第2工程では、例えば
図17に示す治具20に保持された電子部品本体101がゴム板120に対して相対的に移動されて、電子部品本体101がゴム板120を圧縮変形させることで、溝122内のディップ層130に電子部品本体101が局所的に浸漬される。その後、
図25(A)(B)に示す第3工程では、
図17に示す治具20に保持された電子部品本体101がゴム板120に対して相対的に移動されて、電子部品本体101とゴム板120との接触が解除される。それにより、
図21に示すように電子部品本体101の短手方向Y1の両端部にて、グランド電極103が局所的に形成される。
【0061】
従来、
図22に示す貫通電極102A,102Bは、
図20を用いて上述した通りコーナー部2Cの膜厚Т3が薄かったので、
図2に示す塗布工程を2回または3回実施する二度塗り又は三度塗りにより、コーナー部2Cの膜厚Т3を確保するようにしていた。そうすると、
図20に示す側面2Bの膜厚Т2が過度に厚くなってしまい、
図22に示す差Dが発生することがあった。
【0062】
本発明の第3実施形態では、
図21に示す貫通電極102A,102Bを形成する際に、例えば
図1~
図4に示す第1実施形態の塗布方法を適用する。それにより、
図20を用いて説明した通り、二度塗り又は三度塗りを必ずしも実施しなくてもコーナー部2Cの膜厚Т3を確保することができる。そのため、
図22に示す差Dを解消することができる。なお、本発明は二度塗り又は三度塗りを排除するものではない。必要により二度塗り又は三度塗りする場合には、最終の塗布工程を
図1~
図4に示すようにして実施すればよい。
【0063】
また、本発明は、
図19~
図21に示すものに限らず種々の電子部品の製造に適用することができ、ペースト層が形成される電子部品本体の端部とは、例えば
図21に示すように電子部品本体101の長手方向X1の端部であっても、電子部品本体101の短手方向Y1の端部であっても良い。
【0064】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。例えば、ペースト除去部材6、7は、繰り返し利用されるためにオンラインまたはオフラインにて、気体又は液体のジェット流の噴射等により、それに加えまたはそれに代えて、ペースト除去部材6、7を振動させることにより、付着しているペースト材を離脱させて洗浄するクリーニング工程を実施しても良い。
【符号の説明】
【0065】
1…電子部品本体、1A…電子部品、2…端部、2A…端面、2B…側面、2C…コーナー部、3…ディップ層、3A…糸引き、4…導電性ペースト、4A…余分なペースト、4B…導電性ペースト層(電極)、5…ディップ層形成部(定盤)、5A…主面、6、6-1~6-N…ペースト除去部材(線材)、6A…枠体、7、7A、7B、7C…ペースト除去部材(板材)、7C1…貫通孔、7-1~7-N…スリット、8…スキージユニット、10…製造装置、20…治具、30…治具固定板、20…治具(キャリアプレート)、30…治具固定盤、40…基盤、50…移動機構、60,70…水平駆動部、80…垂直駆動部、90…制御部、91…記憶部、92…操作入力部、100…電子部品(チップ三端子コンデンサー)、101…電子部品本体、102A,102B…貫通電極、103…グランド電極、110…基板、112…はんだ、120…ディップ層形成部(ゴム板)、121…主面、122…溝、130…ディップ層、A(Z-またはZ+)…第1方向、B(Z+またはZ-)…第2方向、C(X+またはX-)…第3方向、D(X-またはX+)…第4方向、Y…第5方向