(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】電熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/06 20060101AFI20221020BHJP
H05B 3/64 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H05B3/06 A
H05B3/64
(21)【出願番号】P 2022531198
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2020023962
(87)【国際公開番号】W WO2021255893
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592010106
【氏名又は名称】カンケンテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】花房 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智貴
(72)【発明者】
【氏名】大前 秀治
(72)【発明者】
【氏名】今村 啓志
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-29028(JP,A)
【文献】特許第5270688(JP,B2)
【文献】特開昭61-142685(JP,A)
【文献】特開平7-312278(JP,A)
【文献】実開昭59-26895(JP,U)
【文献】実開平2-143795(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の放射管(12)と、その放射管(12)内にて互いに平行するように配置される複数本のヒータ線(14)と、表面が絶縁体で被覆され、上記の放射管(12)の中心軸線上に配設されるヒータ固定軸(16)と、そのヒータ固定軸(16)に所定の間隔で取り付けられて上記ヒータ線(14)を支持するディスク状のセラミック碍子(18)とを備える、電熱装置であって、
上記セラミック碍子(18)は、その中心に上記ヒータ固定軸(16)が挿通される中央孔(20)及びその中央孔(20)と同じ中心を持つ円周上に均等に分布されたヒータ線保持孔(22)が穿設されると共に、常態において、上記の放射管(12)の軸方向から見た当該セラミック碍子(18)それ自身の外径もしくはその外接円の直径が、上記の放射管(12)の内径もしくはその内接円の直径よりも小さくなるように形成され、
前記セラミック碍子(18)の上面には、前記の中央孔(20)の外周方向にて互いに隣接する前記ヒータ線保持孔(22)の間の位置に凹溝(30)が堀設される、ことを特徴とする電熱装置。
【請求項2】
金属製の放射管(12)と、その放射管(12)内にて互いに平行するように配置される複数本のヒータ線(14)と、表面が絶縁体で被覆され、上記の放射管(12)の中心軸線上に配設されるヒータ固定軸(16)と、そのヒータ固定軸(16)に所定の間隔で取り付けられて上記ヒータ線(14)を支持するディスク状のセラミック碍子(18)とを備える、電熱装置であって、
上記セラミック碍子(18)は、その中心に上記ヒータ固定軸(16)が挿通される中央孔(20)及びその中央孔(20)と同じ中心を持つ円周上に均等に分布されたヒータ線保持孔(22)が穿設されると共に、常態において、上記の放射管(12)の軸方向から見た当該セラミック碍子(18)それ自身の外径もしくはその外接円の直径が、上記の放射管(12)の内径もしくはその内接円の直径よりも小さくなるように形成され、
前記セラミック碍子(18)は、前記の中央孔(20)周りが肉厚に形成されて、略垂直に切り立った段部(32)が形成される、ことを特徴とする電熱装置。
【請求項3】
金属製の放射管(12)と、その放射管(12)内にて互いに平行するように配置される複数本のヒータ線(14)と、表面が絶縁体で被覆され、上記の放射管(12)の中心軸線上に配設されるヒータ固定軸(16)と、そのヒータ固定軸(16)に所定の間隔で取り付けられて上記ヒータ線(14)を支持するディスク状のセラミック碍子(18)とを備える、電熱装置であって、
上記セラミック碍子(18)は、その中心に上記ヒータ固定軸(16)が挿通される中央孔(20)及びその中央孔(20)と同じ中心を持つ円周上に均等に分布されたヒータ線保持孔(22)が穿設されると共に、常態において、上記の放射管(12)の軸方向から見た当該セラミック碍子(18)それ自身の外径もしくはその外接円の直径が、上記の放射管(12)の内径もしくはその内接円の直径よりも小さくなるように形成され、
前記セラミック碍子(18)は、前記の中央孔(20)の外周方向にて互いに隣接する前記ヒータ線保持孔(22)の間が肉抜きされると共に、隣接する前記ヒータ線(14)のうち一方がその肉抜き部分に配設される、ことを特徴とする電熱装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの電熱装置において、
前記セラミック碍子(18)は、その周縁部のうち少なくとも前記の放射管(12)と接触する部分がR形状にて形成される、ことを特徴とする電熱装置。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかの電熱装置において、
前記セラミック碍子(18)が、平面視で回転対称な多角形状に形成される、ことを特徴とする電熱装置。
【請求項6】
(削除)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用電気炉で使用される電熱装置に関し、とりわけ熱源が放射管内に収容されたラジアントチューブヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電熱装置には、従来では、下記の特許文献1(日本国・特許第5270688号公報)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
放射管と、その放射管内に配置される発熱体とを備え、前記発熱体は、電熱線で構成されると共に、前記放射管の一端で電流取出口に接続される。また、前記発熱体は、支持体の支援を受けて前記放射管内に支持される。そして、前記放射管と前記発熱体との間には導電材料の保護挿入体が配置される。
【0003】
上記の従来技術によれば、放射管と発熱体との間に保護挿入体が配置されているので、素子故障の際に起こり得る発熱体残留物と溶融した金属とが重力の助けを借りて保護挿入体上に落下する。このため、放射管の無用な損傷を防止して、素子故障によって電熱装置が受ける被害を最小限に抑えることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術には次の課題がある。
すなわち、素子故障の際に起こり得る発熱体残留物や溶融した金属を重力に基づいて保護挿入体の上に落下させるためには、電気炉内において、上記の電熱装置を水平実装しなければならず、電熱装置の配設構造やその用途が限られるという問題があった。
また、上記の従来技術は、発熱体からの漏電などと言った素子故障それ自体を予防するものではないという大きな問題がある。
【0006】
それゆえに、本発明の主たる目的は、様々なトラブルの原因となる素子故障を低減させることによって、長期間の安定した稼働が可能な電熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
図1~
図2に示すように、電熱装置を次のように構成した。
すなわち、金属製の放射管12と、その放射管12内にて互いに平行するように配置される複数本のヒータ線14と、表面が絶縁体で被覆され、上記の放射管12の中心軸線上に配設されるヒータ固定軸16と、そのヒータ固定軸16に所定の間隔で取り付けられて上記ヒータ線14を支持するディスク状のセラミック碍子18とを備える。そして、上記セラミック碍子18は、その中心に上記ヒータ固定軸16が挿通される中央孔20及びその中央孔20と同じ中心を持つ円周上に均等に分布されたヒータ線保持孔22が穿設されると共に、常態において、上記の放射管12の軸方向から見た当該セラミック碍子18それ自身の外径もしくはその外接円の直径が、上記の放射管12の内径もしくはその内接円の直径よりも小さくなるように形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明者らは、この種の電熱装置、すなわち、ヒータ固定軸やセラミック碍子などの絶縁体とヒータ線とを金属製の放射管に収容して外部雰囲気から保護する電熱装置において、当該電熱装置の発熱作動時または停止冷却時に、各部材の熱膨張率の違いから、放射管の内面と、(主として)セラミック碍子の周縁とが接触・摺動し、放射管の内面に生成される金属酸化物が削り落とされてセラミック碍子上のヒータ線周りに堆積するようになる。そして、堆積した金属酸化物の量が増えると、隣接するヒータ線の間を短絡するようになる。これが素子故障の大きな原因であることを突きとめた。
そこで、本発明の電熱装置では、常態において、放射管12の軸方向から見たセラミック碍子18それ自身の外径もしくはその外接円の直径が、放射管12の内径もしくはその内接円の直径よりも小さくなるように形成されるので、当該電熱装置の発熱作動時または停止冷却時における放射管12の内面とセラミック碍子18の周縁部との接触を極小化することができ、両者の接触に伴う金属酸化物の削り落とし量を著しく低減させることができる。
【0009】
本発明において、前記セラミック碍子18は、その周縁部のうち少なくとも前記の放射管12と接触する部分がR形状にて形成されるのが好ましい。
この場合、仮に放射管12の内面とセラミック碍子18の周縁部とが接触した場合であっても、両者の接触に伴う金属酸化物の削り落とし量をより一層低減させることができる。
【0010】
また、本発明においては、
図3及び
図4に示すように、前記セラミック碍子18を、平面視で回転対称な多角形状に形成するのが好ましい。
この場合、放射管12の内面とセラミック碍子18の周縁部とが接触した場合であっても、両者の間に常に隙間を設けることができ、当該隙間を介して放射管12の内面から削り落とされた金属酸化物を下方へと排出させてセラミック碍子18上に堆積するのを低減させることができる。
【0011】
また、本発明では、
図5に示すように、前記セラミック碍子18の上面における前記の中央孔20の外周方向にて互いに隣接する前記ヒータ線保持孔22の間の位置に、凹溝30を堀設するのが好ましい。
この場合、放射管12の内面から削り落とされたり遊離・脱落してセラミック碍子18上に堆積する金属酸化物が当該凹溝30内に収容されるようになる。このため、隣接するヒータ線14同士がその金属酸化物によって短絡するのを著しく遅延させることができるようになる。
【0012】
さらに、本発明においては、
図6に示すように、前記セラミック碍子18の中央孔20周りを肉厚に形成することによって、略垂直に切り立った段部32を形成するのが好ましい。
この場合、放射管12の内面から削り落とされたり遊離・脱落した金属酸化物が段部32の上下に堆積するようになり、上述した凹溝30と同様に、隣接するヒータ線14同士がその金属酸化物によって短絡するのを著しく遅延させることができるようになる。
【0013】
そして、本発明では、
図7および
図8に示すように、前記セラミック碍子18は、前記の中央孔20の外周方向にて互いに隣接する前記ヒータ線保持孔22の間を肉抜きすると共に、隣接する前記ヒータ線14のうち一方をその肉抜き部分に配設するのが好ましい。
この場合、隣接するヒータ線14は、それぞれ別のセラミック碍子18で支持されるようになり、セラミック碍子18上に堆積する金属酸化物によって隣接するヒータ線14同士が短絡するのをほぼ完全に無くすことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明における一実施形態の電熱装置の概要を示す説明図(内部構造の一部を省略した垂直断面図)である。
【
図3】本発明における他の実施形態(第2実施形態)の電熱装置の概要を示す水平方向切断端面図である。
【
図4】本発明における他の実施形態(第3実施形態)の電熱装置の概要を示す水平方向切断端面図である。
【
図5】
図5Aは、本発明における他の実施形態(第4実施形態)のセラミック碍子を示す平面図である。
図5Bは、
図5AにおけるB-B’線切断端面図である。
【
図6】
図6Aは、本発明における他の実施形態(第5実施形態)のセラミック碍子を示す平面図である。
図6Bは、
図6AにおけるD-D’線断面図である。
【
図7】
図7Aは、本発明における他の実施形態(第6実施形態)のセラミック碍子の配置状態を示す平面図である。
図7Bは、
図7AにおけるE-E’線断面図(一部省略)である。
【
図8】
図8Aは、本発明における他の実施形態(第7実施形態)のセラミック碍子の配置状態を示す平面図である。
図8Bは、
図8AにおけるF-F’線断面図(一部省略)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、
図1および
図2を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の電熱装置10における内部構造の一部(具体的には正面側に配置されるヒータ線14など)を省略した垂直断面図である。本実施形態の電熱装置10は、様々な工業プロセスで使用される産業用電気炉の熱源として使用される装置であり、この図が示すように、放射管12,ヒータ線14,ヒータ固定軸16およびセラミック碍子18で大略構成される。
【0016】
放射管12は、長手方向一端が閉塞され、長手方向他端が開放されることによって、その内部にヒータ線14などの発熱ユニットが収納される金属製の管体である。この放射管12は、上記の発熱ユニットを外部雰囲気(=炉内環境)から保護すると共に、ヒータ線14が発した熱を外部(炉内)へと放射させるためのものである。
【0017】
放射管12を構成する金属材料は、電熱装置10の使用環境に応じて適宜選択される。例えば、この放射管12の外部環境が腐食性の強いガスが存在する場合には、ハステロイ(ヘインズ社登録商標;以下同じ)C22などのように、高耐食性の金属材料を用いるのが好適である。
【0018】
また、この放射管12の長手方向他端の開放端側には、管フランジ24が設けられており、この管フランジ24を介して、電熱装置10が電気炉の炉壁(図示せず)などに取着される。
なお、図示実施形態では、この放射管12を円筒体で構成する場合を示しているが、放射管12の形態はこれに限定されるものではなく、必要に応じて、例えば、多角筒体などであってもよい。
【0019】
ヒータ線14は、ニクロム線やカンタル(サンドビック社登録商標)線などの金属線のほかに、例えばSiCなどの発熱体を棒状に成形したもの等からなる長尺の発熱抵抗体であって、電流を流すことにより材料の種類等に応じて概ね800℃~1400℃程度まで昇温する。
図2に示すように、本実施形態では、このヒータ線14が、後述するヒータ固定軸16の軸周りに互いに等しい間隔をあけて12本設置されると共に、Ni(ニッケル)などの導電性と耐食性とに優れた材料で形成されたヒータ渡りプレート(図示せず)を介して電気的に直列にて接続される。そして、このヒータ線14の長手方向一端(
図1の実施形態では下端)にプラグ26が取り付けられ、このプラグ26の端子26aに図示しない電源からの配線が接続される。
なお、このヒータ線14を金属線で形成する場合、その形状は、図示実施形態のようにストレートな単線(棒状)であってもよいし、金属線を螺旋状に巻回した物であってもよい。
【0020】
ヒータ固定軸16は、後述するセラミック碍子18を介してヒータ線14を支持する長尺部材で、ステンレス丸棒材からなる芯材16aと、その芯材16aの表面を被覆する絶縁体として機能するセラミック製の絶縁被覆管16bとで構成される。
このヒータ固定軸16は、放射管12の中心軸線上に配設されると共に、所定の間隔をあけて後述する複数のセラミック碍子18が取り付けられる。
【0021】
セラミック碍子18は、ヒータ固定軸16と協働して放射管12内の所定位置でヒータ線14を絶縁固定するディスク状の器具である。本実施形態では、
図2に示すように、このセラミック碍子18が、平面視で真円形状に形成されると共に、
図1に示すように、その周縁の形状が、厚さ方向中央 “C”が最大外径となり、表裏両面側へ向かうに従ってその外径が漸次縮径するように形成される。つまり、周面全体がR形状にて形成されている。
【0022】
また、このセラミック碍子18には、その中心に上記ヒータ固定軸16が挿通される中央孔20と、その中央孔20と同じ中心を持つ円周上に均等に分布された12個のヒータ線保持孔22とが穿設されている。
そして特筆すべきは、このセラミック碍子18は、放射管12の軸方向から見たその外径が、放射管12の内径よりも小さく設定されており、ヒータ線14を作動させていない常温状態(すなわち、常態)において、両者が接触しない大きさとなっている。
【0023】
以上のように構成された本実施形態の電熱装置10によれば、ヒータ線14に通電して発熱させる際やヒータ線14への通電を停止して冷却させる際に、各部材の熱膨張率に違いが有ったとしても、放射管12の内面とセラミック碍子18の周縁とが接触・摺動するのを防止して放射管12の内面に生成される金属酸化物が削り落とされるのを抑制することができる。また、仮に放射管12の内面と(主として)セラミック碍子18の周縁とが接触・摺動して放射管12の内面に生成される金属酸化物が削り落とされるような場合であっても、セラミック碍子18の周面全体がR形状にて形成されるので、放射管12の内面とセラミック碍子18の周縁部とが接触した際に、セラミック碍子18の周縁部が放射管12の内面に与える応力を緩和して金属酸化物の削り落とし量を著しく低減させることができる。このため、様々なトラブルの原因となる素子故障の発生を最大限遅延させることができ、長期間の安定した稼働が可能となる。
【0024】
なお、上述の実施形態では、ヒータ線14やヒータ固定軸16として、丸棒状のものを用いる場合を示しているが、ヒータ線14やヒータ固定軸16の形状はこれに限定されるものではなく、例えば角棒状のものを用いるようにしてもよい。但し、その場合、セラミック碍子18の中央孔20やヒータ線保持孔22の形状も真円形状ではなく、角棒状のヒータ線14やヒータ固定軸16の外形に沿った形状のものとなる。
【0025】
上述の実施形態では、放射管12内において、ヒータ固定軸16に対して6個のセラミック碍子18が装着される場合を示しているが、このヒータ固定軸16に装着させるセラミック碍子18の数はこれに限定されるものではなく、例えば、5個以下であってもよいし、7個以上であってもよい。但し、ヒータ線14の発熱による熱量を吸収し当該電熱装置10の熱効率を阻害することの無いよう個数については配慮する必要がある。
【0026】
上述の実施形態では、放射管12内に12本のヒータ線14を配設する場合を示しているが(
図2参照)、放射管12内に配設するヒータ線14の本数はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜増減することができる。
【0027】
上述の実施形態では、放射管12を円筒体で構成すると共に、セラミック碍子18を平面視で真円形状に形成する場合を示したが、放射管12を多角筒体で構成すると共に、セラミック碍子18を後述するように平面視で多角形状に形成するようにしてもよい。又、セラミック碍子18を平面視で楕円形状に形成するようにしてもよい。尤も、これらのような場合であっても、常態において、放射管12の軸方向から見たセラミック碍子18の外接円の直径が、放射管12の内接円の直径よりも小さくなるように形成される。
【0028】
上述の実施形態では、
図1に示すように、管フランジ24やプラグ26を放射管12の下側に配置して、図示しない電気炉内で電熱装置10が立設される場合を示しているが、電気炉内における本発明の電熱装置10の設置態様はこれに限定されるものではなく、例えば、管フランジ24やプラグ26を、
図1のものとは天地を逆にした放射管12の上側に配置して、図示しない電気炉内で電熱装置10を垂設するようにしてもよい。また、電熱装置10への給電はプラグ26を介して行われるが、このプラグ26を放射管12の長手方向両端に設け、放射管12の長手方向両側から給電するようにしてもよい。更に、
図1の実施形態では、ヒータ線14の先端(上端)が放射管12の天井面に達している構造のものを示しているが、このヒータ線14の先端(上端)と放射管12の天井面との間にスペースが設けられる構造のものであってもよい。この点については、上述のように電熱装置10の天地が逆となる場合も同様である。
【0029】
また、上述の実施形態では、セラミック碍子18として、平面視で真円形状に形成されたものを用いているが、このセラミック碍子18は、例えば、
図3に示すような平面視で回転対称な星形多角形状に形成した物や、
図4に示すような平面視で正六角形状の物などのように、平面視で回転対称な多角形状とするのがより好ましい。又、上述したようにセラミック碍子18を平面視で楕円形状に形成するようにしてもよい。尤も、これらのような場合であっても、セラミック碍子18の周縁の形状は、周面全体又は放射管12の内面と接触する一部がR形状にて形成されていることが好ましい。
係る構成により、ヒータ線14の発熱によって放射管12の内面とセラミック碍子18の周縁部とが接触した場合であっても、両者の間に隙間を設けることができ、当該隙間を介して放射管12の内面から削り落とされた金属酸化物を下方へと排出させてセラミック碍子18上に堆積するのをより一層低減させることができるようになる。
【0030】
また、上述の実施形態では、セラミック碍子18の表面(上面)をプレーンに形成しているが、例えば、
図5に示すように、セラミック碍子18の上面における中央孔20の外周方向にて互いに隣接するヒータ線保持孔22の間の位置に、凹溝30を堀設するのが好ましい。
セラミック碍子18と放射管12の内面との擦れによる金属酸化物の発生は上述してきた技術により対応できるが、擦れ以外にも高温による金属表面の酸化を要因とする粉体が発生し、この金属酸化物の粉体が放射管12表面から遊離・脱落してセラミック碍子18表面上に堆積する場合がある。このような場合にも、セラミック碍子18に堆積した金属酸化物によって隣接するヒータ線14同士が短絡し、漏電の原因となる。
しかしながら、この実施形態のように、セラミック碍子18の上面における中央孔20の外周方向にて互いに隣接するヒータ線保持孔22の間の位置に、凹溝30を堀設することによって、隣接するヒータ線14同士がその金属酸化物粉体によって短絡するのを著しく遅延させることができる。
【0031】
さらに、上記の凹溝30に替えて、或いは、上記の凹溝30と共に、
図6に示すように、セラミック碍子18の中央孔20周りを肉厚に形成することによって、略垂直に切り立った段部32を形成するのが好ましい。この場合、略垂直に切り立った立ち上がり面には金属粉体が堆積しないことから、放射管12の内面から削り落とされたり遊離・脱落した金属酸化物が段部32の上下に堆積したとしても、上述した凹溝30と同様に、隣接するヒータ線14同士がその金属酸化物によって短絡するのを著しく遅延させることができる。
【0032】
そして、
図1に示された上述の実施形態では、各セラミック碍子18のそれぞれが、互いに平行するように配置される複数本(12本)のヒータ線14の全てをヒータ線保持孔22で保持する場合を示したが、例えば、
図7や
図8に示すように、セラミック碍子18の中央孔20外周方向にて互いに隣接するヒータ線保持孔22の間を肉抜きすると共に、隣接するヒータ線14のうち一方をその肉抜き部分に配設するようにするのが好ましい。係る構成により、隣接するヒータ線14は、それぞれ別のセラミック碍子18で支持されるようになり、セラミック碍子18上に堆積する金属酸化物によって隣接するヒータ線14同士が短絡するのをほぼ完全に無くすことができるようになる。
【0033】
なお、
図7及び
図8に示す例では、6つのヒータ線保持孔22が設けられた回転対称形のセラミック碍子18を用い、このセラミック碍子18を上下で30°ずつ回転させて配置することによって、12本のヒータ線14を保持する場合を示しているが、この実施形態は、セラミック碍子18の中央孔20外周方向にて互いに隣接するヒータ線保持孔22の間を肉抜きすると共に、隣接するヒータ線14のうち一方をその肉抜き部分に配設する態様であれば如何なるものであってもよく、上記図示のものに限定されるものではない。
【0034】
その他に、本発明は、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
10:電熱装置,12:放射管,14:ヒータ線,16:ヒータ固定軸,18:セラミック碍子,20:中央孔,22:ヒータ線保持孔,30:凹溝,32:段部.