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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】油圧圧縮機
(51)【国際特許分類】
   B30B 1/32 20060101AFI20221020BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20221020BHJP
   B21D 39/04 20060101ALN20221020BHJP
【FI】
B30B1/32 D
H01R43/048 Z
B21D39/04 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017068010
(22)【出願日】2017-03-30
(65)【公開番号】P2018167306
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-12-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹田 良太
(72)【発明者】
【氏名】岩田 光司
(72)【発明者】
【氏名】西澤 伸也
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】鈴木 貴雄
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】実用新案登録第2583310(JP,Y2)
【文献】特開2011-171130(JP,A)
【文献】特開2008-132516(JP,A)
【文献】実開平2-6127(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第104518391(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0051817(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0211635(US,A1)
【文献】米国特許第9166353(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 1/32
B21D 39/04
H01R 43/042
H01R 43/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダとピストンを保持する基部と、この基部の一側から前記ピストンの突出方向へ延出し前記ピストンに対向するダイス保持部を有するフック部と、前記基部と前記ダイス保持部との間が前記フック部の反対側へ開いた開放部とを有する本体と、
前記ピストン上に着脱自在に装着される可動ダイスと、
前記可動ダイスに対向して前記ダイス保持部に着脱自在に装着される固定ダイスとを具備し、
前記可動ダイスは、被圧縮物を受け入れて成形する型凹部と、この型凹部の両側に位置し圧縮動作時に前記固定ダイスに当接する一対の接合面と、前記フック部に沿う外側面から前記開放部側へ所定間隔を置いて前記フック部側の一方にのみ前記接合面から前記ピストン側へ下降して前記開放部側に向いたガイド面を有するガイド凹部とを具備し、
前記固定ダイスは、前記可動ダイスの型凹部との間に被圧縮物を受け入れる対応型凹部と、この対応型凹部の両側に位置し圧縮動作時に前記可動ダイスの接合面に当接する一対の対応接合面と、圧縮動作時に前記可動ダイスのガイド面に摺接するように前記フック部側に向いた対応ガイド面を有し前記ガイド凹部に係合するように前記フック部側の一方の前記対応接合面から突出するガイド突部とを具備し、
前記ガイド面と前記対応ガイド面は、圧縮動作中の被圧縮物の回転変形に伴い前記可動ダイスが前記本体の開放部側へ移動したとき、前記対応ガイド面が前記ガイド面と押し合って前記可動ダイスを前記フック部側へ押し戻すように相対位置が設定されることを特徴とする油圧圧縮機。
【請求項2】
前記可動ダイスのガイド面は、前記フック部に沿う外側面から前記本体の開放部側へ所定間隔を置いて、一方の前記接合面から直角に前記ピストン側へ下降することを特徴とする請求項1に記載の油圧圧縮機。
【請求項3】
前記可動ダイスのガイド面は、前記フック部に沿う外側面から前記本体の開放部側へ所定間隔を置いて、一方の前記接合面から傾斜して前記ピストン側へ下降することを特徴とする請求項1に記載の油圧圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線接続用の金属スリーブを圧縮して電線に接続するために用いられる油圧圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線接続用の金属スリーブを圧縮するための油圧圧縮機として特許文献1に記載のものが知られている。この圧縮機においては、ほぼC字形のクランプダイヘッドに固定ダイスと可動ダイスとが互いに対向して取付けられる。可動ダイスがクランプダイヘッドの根元側の油圧シリンダのピストンロッドで押し出されると、両ダイス間に配置された金属スリーブが圧縮される。ピストンロッドの先端部には、可動ダイスに突設された連結ピンを差し込む差込孔と、その差込孔から外側に貫通する係止孔が形成される。この係合孔に抜き差しされるピンの先端が連結ピンの係合凹部に係合することで、可動ダイスが抜け止めされる。クランプダイヘッドの上部には、固定ダイスに突設された連結ピンを差し込む差込孔と、そこから外側面に貫通するピン孔とが形成される。ピン孔に抜き差しされるピンの先端が連結ピンの係合凹部に係合することで、固定ダイスが抜け止めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第2583310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の油圧圧縮機を用いて、例えば断面C字状の金属スリーブを圧縮する場合、断面形状が圧縮軸に対して非対称であるため、圧縮過程でスリーブが軸周りに回転しながら変形し、その際に発生する水平分力が、ダイスを介してピストンを傾斜させるように作用する。この結果、ピストンが、摺動するシリンダー内の内周にかじり、金属スリーブを把持したまま、元位置に復帰しなくなる現象が生じる。ピストンの復帰をばね力で行う、いわゆる単動式の圧縮機においてこの現象が生じやすい。
このような現象が生じると、傾斜したピストンの前側をハンマー等で叩いたり、把持されたスリーブをピストンの下降方向に叩いたりして、ピストンの姿勢を矯正し、強制的にピストンを下降させる操作が必要となる。このような操作は、作業を遅延させるばかりでなく、打撃に伴うピストンやシリンダの損傷、被圧縮物であるスリーブの損傷を招くという問題点がある。
したがって、本発明は、スリーブ等を圧縮する際に発生する水平分力によってピストンが傾斜することのない油圧圧縮機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の油圧圧縮機1は、シリンダ3とピストン4を有する本体2と、これに装着される可動ダイス5と固定ダイス6とを具備する。本体2は、シリンダ3とピストン4を保持する基部7と、この基部7の一側から延出してピストン4に対向するダイス保持部9を有するフック部8とを具備する。可動ダイス5は、ピストン4上に着脱自在に装着される。固定ダイス6は、可動ダイス5に対向してフック部8のダイス保持部9に着脱自在に装着される。可動ダイス5は、型凹部5aと、接合面5bと、ガイド凹部5cとを具備する。型凹部5aは、被圧縮物を受け入れて所定の圧縮形状に成形する。接合面5bは、型凹部5aの両側に位置し、圧縮動作時に固定ダイス6に当接する。ガイド凹部5cは、フック部8に沿う外側面から内側へ所定間隔を置いて接合面5bから圧縮方向と反対側へ下降するガイド面5eを有する。固定ダイス6は、型凹部6aと、接合面6bと、ガイド突部6cとを具備する。型凹部6aは、可動ダイス5の型凹部5aとの間に被圧縮物を受け入れて所定の圧縮形状に成形する。接合面6bは、型凹部6aの両側に位置し、圧縮動作時に可動ダイス5の接合面5bに当接する。ガイド突部6cは、圧縮動作時に可動ダイス5のガイド面5eに摺接するガイド面6eを有し、ガイド凹部5cに係合する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の油圧圧縮機1においては、圧縮動作中にスリ-ブ等の被圧縮物が回転変形することにより、固定ダイス6が開放部と反対側へ押され、可動ダイス5が開放部側へ押される水平分力が作用すると、2つのダイス5,6のガイド面5e,6eが押し合ってこの水平分力を打ち消すことにより、ピストン4が開放部側へ傾斜するのを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る油圧圧縮機の一部を切欠した正面図である。
図2図1の油圧圧縮機における2つのダイスの正面図であり、(a)は圧縮動作前、(b)は圧縮動作時の状態を示す。
図3図1の油圧圧縮機における2つのダイスの斜視図である。
図4】他の実施形態のダイスの正面図であり、(a)は圧縮動作前、(b)は圧縮動作時の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
油圧圧縮機1は、シリンダ3とピストン4を有する本体2と、これに装着される可動ダイス5と固定ダイス6とを具備する。
【0009】
本体2は、シリンダ3とピストン4を保持する基部7と、この基部7の一側から概略C字状に延出し、他側側へ開放するフック部8とを具備する。フック部8は、ピストン4に対向するダイス保持部9を有する。
【0010】
可動ダイス5は、ピストン4上に着脱自在に装着される。固定ダイス6は、可動ダイス5に対向してダイス保持部9に着脱自在に装着される。
【0011】
可動ダイス5は、型凹部5aと、接合面5bと、ガイド凹部5cと、位置決め突部5dを具備する。
【0012】
型凹部5aは、被圧縮物を受け入れて、圧縮動作を行う時に、これを所定の圧縮形状に成形する。
【0013】
接合面5bは、型凹部5aの両側に位置し、圧縮動作時に、固定ダイス6に当接する。
【0014】
ガイド凹部5cは、フック部8の内側面に沿う外側面から内側へ所定間隔を置いて、接合面5bから直角に圧縮方向と反対側へ下降するガイド面5eを有する。
【0015】
位置決め突部5dは、圧縮方向と反対の側面からピストン4側へ突出し、ピストン4の嵌合凹部4aに嵌合する。
【0016】
また、可動ダイス5は、圧縮方向と反対側の端部の一側面に、係合凹部5fを具備する。一方、ピストン4は、係合凹部5fに対応する位置に図示しないピン挿通孔を有し、これに抜き差しされる図示しないストッパピンにより可動ダイス5がピストン4から抜け止めされる。
【0017】
固定ダイス6は、型凹部6aと、接合面6bと、ガイド突部6cと、位置決めと突部6dとを具備する。
【0018】
型凹部6aは、可動ダイス5の型凹部5aとの間に、被圧縮物を受け入れ、圧縮動作時に、可動ダイスと協働してこれを所定形状に圧縮成形する。
【0019】
接合面6bは、型凹部6aの両側に位置し、圧縮動作時に、可動ダイス5の接合面5bに当接する。
【0020】
ガイド突部6cは、接合面6bから圧縮方向に突出し、接合面6bに対して直角なガイド面6eを有する。ガイド突部6cは、圧縮動作時に、可動ダイス5のガイド凹部5cに係合する。ガイド面6eは、圧縮動作の過程で、可動ダイス5のガイド面5eに摺接する。
【0021】
位置決め突部6dは、固定ダイス6の圧縮方向と反対の側面からダイス保持部9側へ突出し、嵌合凹部9aに嵌合する。
【0022】
また、固定ダイス6は、圧縮方向と反対側の端部の一側面に係合凹部6fを具備する。一方、ダイス保持部9は、係合凹部6fに対応する位置に、図示しないピン挿通孔を有し、これに抜き差しされる図示しないストッパピンにより、固定ダイス6がダイス保持部9から抜け止めされる。
【0023】
油圧圧縮機1を用いて金属スリーブ等の被圧縮物の圧縮作業を行う場合、圧縮動作中に被圧縮物が回転変形することがある。例えば、図1においてダイス5,6間の金属スリーブが、圧縮時に左回転する力を受けた場合、固定ダイス6が左水平方向(フック部8側)の分力を受け、可動ダイス5が右水平方向(開放部側)の分力を受ける。このとき、2つのダイス5,6のガイド面5e,6eが押し合って、この水平分力を打ち消すことにより、可動ダイス5が右方向へ移動するのを阻止する。これにより、ピストン4が右方向へ傾斜するのを防止する。
【0024】
なお、被圧縮物が右回転する場合には、可動ダイス5が左方向の水平分力を受けるが、可動ダイス5の左側面がフック部8の内側面に当接して動かないので、ピストン4を傾斜させることはない。
【0025】
図4に示す他の実施形態の油圧圧縮機1においては、可動ダイス5のガイド面5eが、フック部8に沿う外側面から内側へ所定間隔を置いて接合面5bから傾斜してピストン4側へ下降している。これに対応して、固定ダイス6のガイド面6eも傾斜しており、ダイス5,6が突き合わされるとき、ガイド面5e,6eが互いに摺動して押し合うことにより、可動ダイス5が右方向へ移動するのを阻止する。
【符号の説明】
【0026】
1 油圧圧縮機
2 本体
3 シリンダ
4 ピストン
4a 嵌合凹部
5 可動ダイス
5a 型凹部
5b 接合面
5c ガイド凹部
5d 位置決め突部
5e ガイド面
6 固定ダイス
6a 型凹部
6b 接合面
6c ガイド凹部
6d 位置決め突部
6e ガイド面
7 基部
8 フック部
9 ダイス保持部
9a 嵌合凹部
図1
図2
図3
図4