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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】蓄熱建材、蓄冷建材
(51)【国際特許分類】
   F24S 20/63 20180101AFI20221020BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20221020BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20221020BHJP
   F24F 7/04 20060101ALI20221020BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20221020BHJP
   F24S 60/00 20180101ALI20221020BHJP
   F24S 90/00 20180101ALI20221020BHJP
【FI】
F24S20/63
E04B1/76 100C
E04B1/76 100Z
E04B1/76 300
F24F5/00 K
F24F7/04 B
F24F7/10 Z
F24S60/00
F24S90/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017088186
(22)【出願日】2017-04-27
(65)【公開番号】P2018185119
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2019-10-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】藤園 武史
(72)【発明者】
【氏名】大浦 豊
(72)【発明者】
【氏名】岡村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】三田村 輝章
【合議体】
【審判長】松下 聡
【審判官】丹治 和幸
【審判官】間中 耕治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-282942(JP,A)
【文献】実開昭59-57750(JP,U)
【文献】米国特許第4469087(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24S 10/50-10/55,20/63,20/66,60/00-60/30
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠と、枠の室外側に設けた透光パネルと、透光パネルの室内側に設けた集熱材と、集熱材の室内側に設けた蓄熱材と、透光パネルの室外側に設けた遮蔽材とを備え、透光パネルと集熱材、集熱材と蓄熱材、蓄熱材と蓄熱材の室内側に対向する壁の間を順に通って外気を室内に導入する外気導入経路と、透光パネルと集熱材との間の空間に外気を取り入れる外気導入口と、蓄熱材と蓄熱材の室内側に対向する壁との間の空間から外気を室内に取り入れる換気口を設けると共に、遮蔽材と透光パネルとの間に空間を設け、遮蔽材は、開閉自在なものであり、遮蔽材を開けたときには透光パネルが室外側に露出し、遮蔽材を閉めたときには透光パネルの室外側を覆うものであり、昼間は遮蔽材を開けた状態で外気導入口から外気を取り込み、外気導入経路を通じて外気を室内に導入し、夜間は遮蔽材を閉じて外部に熱が逃げるのを抑制した状態で外気導入口から外気を取り込み、外気導入経路を通じて外気が室内に導入されることにより、蓄熱材に蓄熱した熱で暖められた外気を室内に導入することを特徴とする蓄熱建材。
【請求項2】
枠と、枠の室外側に設けた透光パネルと、透光パネルの室内側に設けた集熱材と、集熱材の室内側に設けた蓄熱材と、透光パネルの室外側に設けた遮蔽材とを備え、透光パネルと集熱材、集熱材と蓄熱材、蓄熱材と蓄熱材の室内側に対向する壁の間を順に通って外気を室内に導入する外気導入経路と、外気導入経路に外気を取り込むための外気導入口と、蓄熱材と蓄熱材の室内側に対向する壁の間の空間から外気を室内に取り入れる換気口を設けると共に、遮蔽材と透光パネルとの間に空間を設け、遮蔽材は、開閉自在なものであり、遮蔽材を開けたときには透光パネルが室外側に露出し、遮蔽材を閉めたときには透光パネルの室外側を覆うものであり、夜間は遮蔽材を開けた状態で外気導入口から外気を取り込み、外気導入経路を通じて外気を室内に導入し、昼間は遮蔽材を閉じて外部からの熱の侵入を抑制した状態で外気導入口から外気を取り込み、外気導入経路を通じて外気が室内に導入されることにより、蓄熱材に蓄冷した冷熱により冷やされた外気を室内に導入することを特徴とする蓄冷建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房補助として利用できる蓄熱建材と、冷房補助として利用できる蓄冷建材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽熱集熱パネルが組み込まれ、外気を太陽熱集熱パネルで暖めて室内に導入する太陽熱利用建材が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この建材は、冬期の昼間に暖房の補助として利用できるのみで、夜間には暖房補助の効果はなかった。
また従来は、上述のように暖房の補助として利用できるものしかなく、冷房の補助として利用できるものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4829160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、昼間だけでなく夜間にも暖房の補助として利用できる蓄熱建材と、冷房の補助として利用できる蓄冷建材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による蓄熱建材は、枠と、枠の室外側に設けた透光パネルと、透光パネルの室内側に設けた集熱材と、集熱材の室内側に設けた蓄熱材と、透光パネルの室外側に設けた遮蔽材とを備え、透光パネルと集熱材、集熱材と蓄熱材、蓄熱材と蓄熱材の室内側に対向する壁の間を順に通って外気を室内に導入する外気導入経路と、透光パネルと集熱材との間の空間に外気を取り入れる外気導入口と、蓄熱材と蓄熱材の室内側に対向する壁との間の空間から外気を室内に取り入れる換気口を設けると共に、遮蔽材と透光パネルとの間に空間を設け、遮蔽材は、開閉自在なものであり、遮蔽材を開けたときには透光パネルが室外側に露出し、遮蔽材を閉めたときには透光パネルの室外側を覆うものであり、昼間は遮蔽材を開けた状態で外気導入口から外気を取り込み、外気導入経路を通じて外気を室内に導入し、夜間は遮蔽材を閉じて外部に熱が逃げるのを抑制した状態で外気導入口から外気を取り込み、外気導入経路を通じて外気が室内に導入されることにより、蓄熱材に蓄熱した熱で暖められた外気を室内に導入することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明による蓄冷建材は、枠と、枠の室外側に設けた透光パネルと、透光パネルの室内側に設けた集熱材と、集熱材の室内側に設けた蓄熱材と、透光パネルの室外側に設けた遮蔽材とを備え、透光パネルと集熱材、集熱材と蓄熱材、蓄熱材と蓄熱材の室内側に対向する壁の間を順に通って外気を室内に導入する外気導入経路と、外気導入経路に外気を取り込むための外気導入口と、蓄熱材と蓄熱材の室内側に対向する壁の間の空間から外気を室内に取り入れる換気口を設けると共に、遮蔽材と透光パネルとの間に空間を設け、遮蔽材は、開閉自在なものであり、遮蔽材を開けたときには透光パネルが室外側に露出し、遮蔽材を閉めたときには透光パネルの室外側を覆うものであり、夜間は遮蔽材を開けた状態で外気導入口から外気を取り込み、外気導入経路を通じて外気を室内に導入し、昼間は遮蔽材を閉じて外部からの熱の侵入を抑制した状態で外気導入口から外気を取り込み、外気導入経路を通じて外気が室内に導入されることにより、蓄熱材に蓄冷した冷熱により冷やされた外気を室内に導入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明による蓄熱建材、集熱材の室内側に蓄熱材を備えると共に、透光パネルの室外側に遮蔽材を備えており、昼間は遮蔽材を開けた状態で外気導入口から外気が取り込まれ、外気導入経路を通じて外気が室内に導入されることで、太陽熱を集熱材で効率よく集熱し外気を暖めて室内に導入すると共に蓄熱材に蓄熱し、夜間は遮蔽材を閉じて外部に熱が逃げるのを抑制した状態で外気導入口から外気が取り込まれ、外気導入経路を通じて外気が室内に導入されることにより、蓄熱材に蓄熱した熱で暖められた外気が室内に導入されるので、昼間だけでなく夜間も暖房の補助として利用できる。
【0008】
請求項2記載の発明による蓄冷建材、集熱材の室内側に蓄熱材を備えると共に、透光パネルの室外側に遮蔽材を備えており、夜間は遮蔽材を開けた状態で外気導入口から外気が取り込まれ、外気導入経路を通じて外気が室内に導入されることで、夜間の涼しい外気を室内に導入しつつ蓄熱材に蓄冷し、昼間は遮蔽材を閉じて外部からの熱の侵入を抑制した状態で外気導入口から外気が取り込まれ、外気導入経路を通じて外気が室内に導入されることにより、蓄熱材に蓄冷した冷熱により冷やされた外気が室内に導入されるので、夏期に冷房の補助として利用できる。蓄熱材の室外側に集熱材を有することで、夜間に集熱材の放射冷却により蓄熱材への蓄冷を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の蓄熱・蓄冷建材の一実施形態を示す縦断面図であって、冬期の夜間及び夏期の昼間の使用状態を示す。
図2】同蓄熱・蓄冷建材の室外側正面図である。
図3】同蓄熱・蓄冷建材の横断面図である。
図4】同蓄熱・蓄冷建材の縦断面図であって、夏期の夜間の使用状態を示す。
図5図4の使用状態における同蓄熱・蓄冷建材の室内側正面図である。
図6-1】本発明の蓄熱・蓄冷建材の使用状態を模式的に示す図であって、(a)は冬期の昼間の状態、(b)は冬期の夜間の状態を示す。
図6-2】本発明の蓄熱・蓄冷建材の使用状態を模式的に示す図であって、(c)は夏期の夜間の使用状態、(d)は夏期の昼間の使用状態を示す。
図7】実際の蓄熱・蓄冷建材を用いて行った実験結果を示すグラフであって、冬期における日射量、外気温度、PCM温度、流入空気温度の時間推移を示す。
図8】実際の蓄熱・蓄冷建材を用いて行った実験結果を示すグラフであって、夏期における日射量、外気温度、PCM温度、流入空気温度の時間推移を示す。
図9図10に示す標準住宅に蓄熱・蓄冷建材を5箇所に設置した場合に、国内の様々な地点において、暖房負荷と冷房負荷がどれだけ削減されるか計算した結果を示す表である。
図10図9の表の計算に用いた標準住宅の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1~3は、本発明の蓄熱・蓄冷建材の一実施形態を示している。本蓄熱・蓄冷建材は、冬期に暖房補助として利用できる蓄熱建材と、夏期に冷房補助として利用できる蓄冷建材を兼ねるものであって、図1,3に示すように、上枠10と下枠7と左右の縦枠11,11を枠組みしてなる枠1が外壁12に取付けられ、枠1内には室外側から順に透光パネル2、集熱材3、蓄熱材4が見込み方向に間隔をおいて設置してある。透光パネル2は、透明な板ガラスを用いている。集熱材3は、アルミ製のパネルで構成され、表面を黒く塗装して集熱効率を高めてある。このような集熱材3は、蓄熱建材として機能させる際には、昼間に日射熱を効率よく集めて蓄熱材4への蓄熱を促進し、蓄冷建材として機能させる際には、夜間に放射冷却により蓄熱材4への蓄冷を促進する。蓄熱材4は、パラフィン系の潜熱蓄熱材(PCM)を用いている。この蓄熱材4は、加熱・冷却のエネルギーが固体から液体、液体から固体への相変化に使われ、相変化の間、温度が一定で推移する特徴を有する。蓄熱材4の融点は、1℃刻みで変更することが可能である。
【0011】
透光パネル2と下枠7との間には、図1,2に示すように、透光パネル2と集熱材3との間の空間に外気を取り入れる外気導入口8が設けてある。集熱材3と上枠10との間には、通気孔13が設けてある。蓄熱材4と下枠7との間にも、通気孔14が設けてある。外壁12には、蓄熱材4と外壁12の間の空間から外気を室内に取り入れる換気口15が設けてある。これにより、透光パネル2と集熱材3、集熱材3と蓄熱材4、蓄熱材4と外壁12の間を通って外気を室内に導入する外気導入経路6が構成されている。よって、図示しない換気扇によって室内を負圧にすると、この外気導入経路6を通じて外気が室内に導入される。
なお、透光パネル2と集熱材3との間の空間に外気を取り入れる外気導入口8は、図1,2に示す実施形態では、蓄熱・蓄冷建材の下部に設けているが、蓄熱・蓄冷建材の上部(例えば、透光パネル2と上枠10との間)や側部(例えば、透光パネル2と縦枠11との間)に設けることもできる。もっとも、実施形態のように下部に外気導入口8を設けた場合には、蓄熱建材として働かせる際に、外気導入口8から入った外気が透光パネル2と集熱材3の間の空間を上昇し、次いで集熱材3と蓄熱材4の間の空間を下降し、集熱材3のまわりの外気の通り道が長くなることで、外気を集熱材3により十分暖めることができるので、暖房効果が高くなる。
【0012】
図1に示すように、下枠7は矩形断面の中空形材よりなり、下枠7の室外側面にも外気導入口9が設けてあり、下枠7の内周側面の集熱材3と蓄熱材4の間の位置と、蓄熱材4と外壁12の間の位置とに、通気孔16a,16bが設けてある。下枠7室外側面の外気導入口9は常時開いており、下枠7内周側面の通気孔16a,16bは、図示しない蓋を室内からスライド操作するなどして、開閉できるようになっている。図1に示す冬期の夜間及び夏期の昼間の使用状態では、下枠7内周側面の通気孔16a,16bは閉じられている。図4に示す夏期の夜間の使用状態では、下枠7内周側面の通気孔16a,16bは開けられ、下枠7室外側面の外気導入口9から流入した外気が、下枠7内周側面の通気孔16a,16bより集熱材3と蓄熱材4の間と、蓄熱材4と外壁12との間に導入される。
上枠10も矩形断面の中空形材よりなり、上枠10の室外側面と、上枠10の内周側面の集熱材3と蓄熱材4の間の位置とに、通気孔17,18が設けてある。上枠10室外側面の通気孔17は常時開いており、上枠10内周側面の通気孔18は、下枠7内周側面の通気孔16a,16bと同様に、開閉できるようになっている。図1に示す冬期の夜間及び夏期の昼間の使用状態では、上枠10内周側面の通気孔18は閉じられている。図4に示す夏の夜間の使用状態では、上枠10内周側面の通気孔18は開けられ、透光パネル2と集熱材3の間と、集熱材3と蓄熱材4の間を通って上昇してきた空気が、上枠10の通気孔17,18を通じて屋外に排出される。
【0013】
本蓄熱・蓄冷建材は、図1~3に示すように、枠1を室外側からすっぽり囲むようにシャッター5を設置してある。シャッター5は、室内に設置したボタンを操作することで、電動で開閉できるようになっている。
【0014】
次に、本蓄冷・蓄熱建材の使用状態とその働きについて説明する。図6-1は、冬期における蓄熱建材としての使用状態を示している。図6-1(a)は、冬期の昼間の使用状態を示しており、このときは、シャッター5は開けた状態にし、下枠7及び上枠10の通気孔16a,16b,18は閉じられている。図示しない換気扇により室内を負圧にすると、外気導入口8より外気が流入し、透光パネル2と集熱材3、集熱材3と蓄熱材4、蓄熱材4と外壁12の間を通って外気を室内に導入する外気導入経路6を通じて外気が室内に導入される。このとき、集熱材3が日射熱で高温(最高60~70℃)に熱せられ、外気導入口8より流入した外気は、集熱材3のまわりを通過する間に暖められて室内に入る。同時に、集熱材3で集めた熱が蓄熱材4に蓄熱される。
図6-1(b)は、冬期の夜間の使用状態を示している。このときは、シャッター5は閉じた状態とし、下枠7及び上枠10の通気孔16a,16b,18は閉じられている。図示しない換気扇により室内を負圧にすると、外気導入口8より外気が流入し、透光パネル2と集熱材3、集熱材3と蓄熱材4、蓄熱材4と外壁12の間を通って外気を室内に導入する外気導入経路6を通じて外気が室内に導入される。このとき、昼間の間に蓄熱材4に蓄熱した熱により冷たい外気が暖められて室内に入る。室外側に設けた透光パネル2とシャッター5の断熱効果により、集熱材3及び蓄熱材4が冷えるのを防ぐことができ、蓄熱効果が長時間持続する。このように本蓄熱建材は、昼間だけでなく夜間も暖房補助として用いることができる。
図6-2は、夏期における蓄冷建材としての使用状態を示している。図6-2(c)は、夏期の夜間の使用状態を示しており、このときは、シャッター5は開けた状態とし、下枠7及び上枠10の通気孔16a,16b,18は開けておく。図示しない換気扇により室内を負圧にすると、外気導入口8より冷たい外気が流入し、透光パネル2と集熱材3、集熱材3と蓄熱材4、蓄熱材4と外壁12の間を通って外気を室内に導入する外気導入経路6を通じて外気が室内に導入される。シャッター5が開いていること、集熱材3を備えていることで、蓄冷建材からの放射冷却が活発となり、蓄熱材4への蓄冷が促進される。
さらに、本実施形態の蓄冷建材は、図4に示すように、下枠7の外気導入口9より外気が流入し、下枠7内周側面に設けた通気孔16a,16bより集熱材3と蓄熱材4の間と、蓄熱材4と外壁12の間とに流れ、外壁12に設けた換気口15を通じて冷たい外気をそのまま室内に導入することができ、これによりより一層の冷房負荷軽減につながる。集熱材3と蓄熱材4の間に流れ込んだ外気は、上枠10内周側面に設けた通気孔18より上枠10内に入り、上枠10室外側面に設けた通気孔17より屋外に排出される。また、透光パネル2と下枠7の間の外気導入口8からも外気が流入し、透光パネル2と集熱材3の間を通り、上枠10の通気孔17,18を通じて屋外に排出される。このように本蓄冷建材は、夏期に夜間の冷たい外気を室内にそのまま導入することができ、同時に蓄熱材4に蓄冷することができる。集熱材3と蓄熱材4の間と、透光パネル2と集熱材3の間に冷たい外気を導入し、その後に上枠10の通気孔17,18を通じて屋外に排出することで、集熱材3と蓄熱材4の放熱、蓄冷をより一層促進することができる。
図6-2(d)は、夏期の昼間の使用状態を示している。このときは、シャッター5は閉じた状態とし、下枠7及び上枠10の通気孔16a,16b,18は閉じられている。図示しない換気扇により室内を負圧にすると、外気導入口8より外気が流入し、透光パネル2と集熱材3、集熱材3と蓄熱材4、蓄熱材4と外壁12の間を通って外気を室内に導入する外気導入経路6を通じて外気が室内に導入される。このとき、夜間に蓄熱材4に蓄冷した冷熱で外気を冷やして室内に導入できる。シャッター5により日射を遮断することで、集熱材3の温度上昇が最高でも30~50℃に抑えられるので、蓄冷効果を持続させられる。このように本蓄冷建材は、夏期に冷房補助として用いることができる。
【0015】
本蓄熱・蓄冷建材を実際に建物に設置し、日射量、外気温度、PCM(蓄熱材)温度、流入空気温度の時間推移を測定する実験を行った。実験は冬季と夏期とに富山県高岡市で行った。冬期の実験のときには、PCMの融点を20℃とした。夏期の実験のときには、PCMの融点を27℃とした。
【0016】
図7は、冬期の実験結果を示している。このグラフより明らかなように、18時から0時近くまでPCMの温度が相変化により融点の20℃付近に維持され、それにつられて流入空気温度も高い温度で推移している。晴天の日であれば、朝方まで蓄熱効果が得られる。
図8は、夏期の実験結果を示している。このグラフより明らかなように、深夜から午前11頃までPCMの温度が融点の27℃付近に維持され、流入空気温度はPCMの温度とほぼ同じ温度で推移している。午前8時頃から12時頃までは、流入空気温度が外気温度よりも低くなり、冷房の補助として機能することが分かる。
【0017】
次に、図10に示すような標準住宅に本蓄熱・蓄冷建材を1階に2箇所、2階に3箇所の計5箇所に設置した場合に、国内の様々な地点において、暖房負荷と冷房負荷がどれだけ削減されるかを計算によって求めた。比較のために、シャッターが無い場合の暖房負荷と冷房負荷の削減効果も計算した。計算結果を図9に示す。
【0018】
図9の表より明らかなように、本蓄熱・蓄冷建材は、シャッター無しの場合と比較して、暖房負荷削減効果が全ての地点において大きくなり、特に前橋、東京都千代田区、宮崎市においては、50%以上も暖房負荷を削減できることが分かった。冷房負荷は、シャッター無しの場合は削減効果がほぼゼロでむしろ増加するのに対し、本蓄熱・蓄冷建材によれば冷房負荷も削減できる。冷房負荷の削減効果は、内陸部で標高が高い地点ほど大きくなり、青森県の酸ケ湯、長野県の軽井沢、栃木県の日光では、5~8%冷房負荷を削減できることを確認した。また、群馬県前橋市、東京都千代田区、大分県の湯布院、宮崎市では、冷房負荷の削減効果は、割合としては1.7~4.2%と比較的小さいが、年間の冷房負荷自体が大きいので、金額としては割合の大きい青森県の酸ケ湯等よりも大きくなる。
【0019】
以上に述べたように本蓄熱建材、集熱材3の室内側に蓄熱材4を備えると共に、透光パネル2の室外側にシャッター5を備えており、昼間はシャッター5を開けた状態で外気導入口8から外気が取り込まれ、外気導入経路6を通じて外気が室内に導入されることで、太陽熱を集熱材3で効率よく集熱し外気を暖めて室内に導入すると共に蓄熱材4に蓄熱し、夜間はシャッター5を閉じて外部に熱が逃げるのを抑制した状態で外気導入口8から外気が取り込まれ、外気導入経路6を通じて外気が室内に導入されることにより、蓄熱材4に蓄熱した熱で暖められた外気が室内に導入されるので、昼間だけでなく夜間も暖房の補助として利用できる。
また本蓄冷建材、集熱材3の室内側に蓄熱材4を備えると共に、透光パネル2の室外側にシャッター5を備えており、夜間はシャッター5を開けた状態で外気導入口8,9から外気が取り込まれ、外気導入経路6を通じて外気が室内に導入されることで、夜間の涼しい外気を室内に導入しつつ蓄熱材4に蓄冷し、昼間はシャッター5を閉じて外部からの熱の侵入を抑制した状態で外気導入口8から外気が取り込まれ、外気導入経路6を通じて外気が室内に導入されることにより、蓄熱材4に蓄冷した冷熱により冷やされた外気が室内に導入されるので、夏期に冷房の補助として利用できる。蓄熱材4の室外側に集熱材3を有することで、夜間にシャッター5を開けることとあいまって集熱材3の放射冷却により蓄熱材4への蓄冷を促進できる。
【0020】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。集熱材、蓄熱材、遮蔽材等の具体的な構成は問わない。冬期の夜間と夏期の昼間において、遮蔽材は完全に閉め切ってもよいし、図1,2に示すように、少し開けてあってもよい。実施形態は、蓄熱建材と蓄冷建材を兼ねるものであったが、蓄熱建材としてのみ用いるもの、蓄冷建材としてのみ用いるものであってもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 枠
2 透光パネル
3 集熱材
4 蓄熱材
5 シャッター(遮蔽材)
6 外気導入経路
7 下枠
8,9 外気導入口
12 外壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10