IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三和テッキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電車線用ガス圧式張力調整装置 図1
  • 特許-電車線用ガス圧式張力調整装置 図2
  • 特許-電車線用ガス圧式張力調整装置 図3
  • 特許-電車線用ガス圧式張力調整装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】電車線用ガス圧式張力調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60M 1/26 20060101AFI20221020BHJP
   F16K 17/14 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B60M1/26 Z
F16K17/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018037908
(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公開番号】P2019151223
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】池田 国夫
(72)【発明者】
【氏名】山川 盛実
(72)【発明者】
【氏名】奈良場 勇人
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-130649(JP,A)
【文献】特開2002-350007(JP,A)
【文献】実開平06-024277(JP,U)
【文献】特開平11-182722(JP,A)
【文献】特開2006-040626(JP,A)
【文献】実開昭59-166363(JP,U)
【文献】特開平09-240328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/00 - 7/00
F16K 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持物に連結される固定部と、電車線に連結される可動部と、当該可動部を介して前記電車線に所定の張力を付与する張力付与手段とを具備し、当該張力付与手段が密閉空間に封入された圧縮ガスの圧力を利用したものであり、前記密閉空間がガス放出路により安全弁装置を介して外部に連通しているガス圧式張力調整装置であって、
前記安全弁装置は、前記ガス放出路上に配置され前記圧縮ガスの圧力が所定値に達すると破裂して前記ガス放出路を開く破裂板と、当該破裂板よりガス放出口側に位置して前記ガス放出路上に配置され常時は前記ガス放出路を閉じる安全弁と、前記破裂板の破裂を検出してこれを外部に表示する破裂インジケータとを具備し、
前記安全弁の吹き出し圧力は前記破裂板の破裂圧力より低い圧力に設定され、吹き止まり圧力は前記電車線に付与する張力が許容限度値内に維持される圧力に設定され、
前記破裂インジケータは、前記破裂板と前記安全弁との間に位置して内側端が前記ガス放出路に開口し外側端が外部に開口する摺動孔と、
前記摺動孔に気密に摺動自在に挿入され、常時は引き込まれた非作動位置に配置され、前記ガス放出路からの圧力で作動位置に移動して外部へ突出することにより前記破裂板の破裂を外部に目視可能に表示する表示突子と、
前記摺動孔の側部に組み込まれて作動位置の表示突子に係合し、前記破裂板の破裂圧力から前記安全弁の吹き止まり圧力に低下した前記ガス放出路の圧力により前記表示突子の作動位置から非作動位置への戻りを阻止するデテント機構とを具備することを特徴とする電車線用ガス圧式張力調整装置。
【請求項2】
前記固定部は、一端側に前記支持物への連結部を有し、他端側に貫通孔を有する中空のシリンダで構成され、
前記可動部は、一端側に前記電車線への連結部を有し、他端側が前記貫通孔から前記シリンダ内に軸線方向に移動自在に気密に挿入されかつ前記シリンダの内部を前記貫通孔側の油室と反対側の気室とに仕切るピストンロッドで構成され、
前記張力付与手段は、前記密閉空間に封入された圧縮ガスにより蓄圧された油圧を前記シリンダの油室に供給するアキュムレータで構成され、
前記アキュムレータは、内部に圧縮ガスが封入された気密な気室と圧力伝達用の伸縮可能な油室とが画定され、かつ当該油室が油通路を介して前記シリンダの油室に連通するシリンダケースを具備し、
前記シリンダケースの気室に前記安全弁装置が接続されることを特徴とする請求項1に記載の電車線用ガス圧式張力調整装置。
【請求項3】
前記シリンダケースの気室側の端蓋に通気路が形成され、前記安全弁装置のガス放出路は前記シリンダケースの通気路に接続されることを特徴とする請求項2に記載の電車線用ガス圧式張力調整装置。
【請求項4】
前記安全弁装置は、一端側において前記シリンダケースの通気路に連通し、他端側において前記ガス放出口に開放する前記ガス放出路を有するケーシングを具備し、
前記ケーシングの前記ガス放出路の途上に前記破裂板と、前記安全弁が設けられ、
前記破裂インジケータは、前記破裂板と前記安全弁との間に位置して前記ケーシングに固着されたガイド部材を具備し、
前記ガイド部材には、前記摺動孔を備え、前記表示突子と前記デテント機構とが組み込まれることを特徴とする請求項2または3に記載の電車線用ガス圧式張力調整装置。
【請求項5】
前記破裂インジケータは、前記破裂板と前記安全弁と間の前記ガス放出路からの圧力により電気信号を外部に送出して前記破裂板の破裂を外部に表示する圧力センサを含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電車線用ガス圧式張力調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車線のような架空線の張力を一定に保持するために用いられるガス圧式張力調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電車線(吊架線・補助吊架線・トロリ線)は、温度変化による伸縮や、クリープ、さらに経年による支持物の傾斜などにより、弛度張力が影響を受ける。電車線の張力の変化は、特に高速域での集電性能の向上を阻害するなど、電車の走行に影響を与えるため、張力を一定に保持する必要がある。
【0003】
従来、電車線の張力を常時一定に保持するための張力調整装置には、滑車を用いてウェイトにより張力をかける滑車式と、ばね力を用いるばね式が知られているが、いずれも、比較的大型で、据え付け工事も煩雑であることから、特に狭小な隧道内への設置には大きな問題点がある。そこで、装置の小型軽量化に貢献し得る張力調整装置として、密閉空間に封入された圧縮ガスの圧力を利用したガス圧式張力調整装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1に記載された架空線用テンショニング装置は、内部に高圧ガスが封入された気密な気室と圧力伝達用の伸縮可能な油室とが画定されたシリンダケースと、このシリンダケースに対して軸線方向に相対移動可能に一端が油室内に突入するシリンダロッドと、シリンダケース及びシリンダロッドを受容し、シリンダロッドの突出部分が内部に固定され、かつ一端が支持構造物に接続される筒状の外部ケーシングと、外部ケーシングの内部から外部に突出して架空線に一端で接続され、かつ他端でシリンダケースに接続される接続棒と有する。
【0005】
特許文献2に記載されたテンションバランサは、一端側に支持物への連結部を有し、他端側に貫通孔を有する中空のシリンダと、一端側に電車線への連結部を有し、他端側が貫通孔からシリンダ内に軸線方向に移動自在に気密に挿入されかつシリンダの内部を貫通孔側の油室と反対側の気室とに仕切るピストンロッドと、密閉空間に封入された圧縮ガスにより蓄圧された油圧をシリンダの油室に供給するアキュムレータとで構成される。アキュムレータは、内部に圧縮ガスが封入された気密な気室と圧力伝達用の伸縮可能な油室とが画定され、かつ当該油室が油通路を介してシリンダの油室に連通するシリンダケースを具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-240328号公報
【文献】特開2016-130649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記いずれの装置も、張力付与手段として気室に封入された圧縮ガスの圧力を利用するものであるため、火災等により気室内のガス圧が設定値以上になったとき、所定量のガスを放出する安全弁を気室側に設ける必要がある。ところが、従来の安全弁は、経年ににより高温や極低温の環境にさらされること等を原因として、シール材の劣化が生じるため、電車線用の張力調整装置に要求される30年程度の長期にわたる高い密閉度を維持することが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明のガス圧式張力調整装置1は、支持物に連結されるシリンダのような固定部2と、電車線のような架空線に連結されるピストンロッドのような可動部3と、当該可動部3を介して架空線に所定の張力を付与するアキュムレータのような張力付与手段4とを具備する。張力付与手段4は、密閉空間14に封入された圧縮ガスの圧力を利用したものであり、密閉空間14がガス放出路20により安全弁装置5を介して外部に連通している。安全弁装置5は、ガス放出路20上に配置され、圧縮ガスの圧力が所定値に達すると破裂してガス放出路20を開く破裂板24と、破裂板24よりガス放出口20a側に位置してガス放出路20上に配置され、常時はガス放出路20を閉じるばね式安全弁等の安全弁26と、破裂板24の破裂を検出してこれを外部に表示する破裂インジケータ22とを具備する。式安全弁26の吹き出し圧力は破裂板24の破裂圧力より低い圧力に設定され、吹き止まり圧力は、架空線が電車線であれば、これに付与する張力が電車の走行に支障を生じない値に維持される圧力に設定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガス圧式張力調整装置1においては、密閉空間である気室14を外部につなげるガス放出路20が、破裂板24により完全に密閉されるので、経年によるシール材の劣化等によるガス漏れの懸念がない。異常な高圧により破裂板24が破裂して気室14からガス放出路20に高圧ガスが放出されると、安全弁26が開き、放出されるガスの圧力が所定の吹き止まり圧力に達するまでガスを外部に放出する。気室14内のガスが完全に放出されることはなく、架空線の張力は、復旧工事までの間、電車線であれば電車の走行に支障を生じない許容限度値に維持される。破裂板24の破裂はインジケータ22により外部に目視可能に表示されるので、迅速な復旧工事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る電車線用のガス圧式張力調整装置の断面図である。
図2図1のガス圧式張力調整装置におけるアキュムレータの側面図である。
図3図1のガス圧式張力調整装置における安全弁装置の断面図である。
図4図1のガス圧式張力調整装置における安全弁装置の一部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して本発明を架空電車線の張力調整装置に適用する実施の形態を説明する。
図1に示すように、ガス圧式張力調整装置1は、支持物に連結される固定部としてのシリンダ2と、架空電車線に連結される可動部としてのピストンロッド3と、ピストンロッド3を介して電車線に所定の張力を付与する張力付与手段としてのアキュムレータ4と、アキュムレータ4に接続される安全弁装置5とを具備する。
【0012】
シリンダ2は、一端(右端)側の蓋6に支持物への連結部7を有し、他端(左端)側の蓋8に貫通孔8aを有する。
【0013】
ピストンロッド3は、一端(左端)側に電車線への連結部9を有し、他端側が貫通孔8aからシリンダ2内に軸線方向に移動自在に気密に挿入される。ピストンロッド3は、シリンダ2の内部をピストン10により、貫通孔8a側の油室11と反対側の気室12とに仕切る。気室12は外部に開放している。
【0014】
蓋8は、上方へ拡大してアキュムレータ4の一端側を支持するホルダ部8bとなっており、油室11とアキュムレータ4とを連通する油通路8cを有する。
【0015】
アキュムレータ4は、左端側においてホルダ部8bに支持されるシリンダケース13を具備する。シリンダケース13内は、高圧の窒素ガスが封入された気室14が画定されている。また、気室14内は、ベローズ16により、作動油が充填された油室17が画定されている。ベローズ16は、左端がシリンダケース13の蓋15に固定され、かつ軸線方向に伸縮可能である。
【0016】
ベローズ16により画定された油室17は、蓋15の油通路15a、蓋8(ホルダ部8b)の油通路8cを介してシリンダ2の油室11に連通する。したがって、アキュムレータ4は、気室14に封入された圧縮ガスにより蓄圧された油圧をシリンダ2の油室11に供給している。
【0017】
アキュムレータ4の右端側の蓋18の外側に安全弁装置5が取り付けられている。アキュムレータ4の気室14は、蓋18を貫通する通気路18aを介して安全弁装置5の放出路20(図3)に連通している。符号37はアキュムレータ4のカバーである。
【0018】
図2図3において、安全弁装置5は、一端側において蓋18に接続されるケーシング19に組み付けられる。ケーシング19は、ガス放出路20を具備する。ガス放出路20は、一端側が蓋18の通気路18a(図1)に連通し、他端側が放出口20aを介して外部に開放している。ガス放出路20の途上に、破裂板24と、破裂インジケータ22と、ばね式安全弁26が設けられる。
【0019】
ケーシング19は、本体21と、継ぎ手部材23と、弁ケース25とを具備し、この3部材間に放出路20が通っている。本体21は、破裂インジケータ22を保持し、継ぎ手部材23は、破裂板24を保持し、弁ケース25はばね式安全弁26を保持する。
【0020】
継ぎ手部材23は、一端側において接続部23aを介して蓋18の通気路18aに接続され、他端側においてねじ部23bを介して本体21に接続されシール溶接される。破裂板24は、周縁部においてホルダ27にシール溶接されたユニットとなっており、継ぎ手部材23の放出路20内に組み込まれる。継ぎ手部材23とホルダ27との間もシール溶接され、気密が保たれる。
【0021】
破裂インジケータ22は、ガイド部材28と、このガイド部材28に組み込まれた表示突子29及びデテント機構30とを具備する。ガイド部材28は、破裂板24とばね式安全弁26と間に位置してケーシング本体21に気密に螺合固定される。
【0022】
図3図4に示すように、ガイド部材28は、内側端がガス放出路20に開口し、外側端が外部に開口する摺動孔28aを具備する。表示突子29は、摺動孔28aに気密に摺動自在に挿入され、ガイド部材28内に引き込まれた非作動位置とガイド部材28から突出した作動位置との間を移動自在である。表示突子29は、常時は非作動位置に配置され、破裂板24が破裂したとき、ガス放出路20に放出されるガスの圧力で摺動孔28aから押し出されて作動位置(仮想線)に移動し、カバー37を貫通して外部に突出することにより、破裂板24の破裂を外部に目視可能に表示する。
【0023】
図4に示すように、ガイド部材28には、摺動孔28aに直交する直交孔28bが形成されている。直交孔26bには、デテント機構30を構成するストッパ突子31が移動自在に挿入され、その後方に、ばね32介してプラグ33が気密に螺合されている。
【0024】
ストッパ突子31は、常時はその先端が表示突子29の大径部29aに当接しているが、表示突子29が作動位置に突出すると、ばね32により突出して、小径部29bに係合し、表示突子29を作動位置に保持する。
【0025】
図3に示すように、ばね式安全弁26を保持するばねケース25は、ケーシング本体21に螺合されるねじ筒部25a一端側有し、中間の隔壁25bを介して他端側にばね受け部25cを具備する。ねじ筒部25aに放出路20と放出口20aが形成される。
【0026】
ばね式安全弁26は、放出路20を開閉すように放出路20上に移動自在に組み込まれた弁体34と、これを常時閉路側に押すように隔壁25bを摺動自在に貫通する弁棒35と、ばね受け部25c内において弁棒35を押す押しばね36とを具備する。ばね式安全弁26の吹き出し圧力は、破裂板24の破裂圧力より低い圧力に設定され、吹き止まり圧力は電車線に付与する張力が電車の走行に支障を生じない値に維持される圧力に設定される。なお、安全弁は、吹き止まり圧力を設定できるものであれば、ばね式安全弁に限定されるものではない。
【0027】
したがって、アキュムレータ4の気室14の圧力が火災等で異常に高まった結果、破裂板24が破裂してガスがばね式安全弁26を介して放出口20aから放出されても、ガス圧が所定値まで低下すると安全弁26が閉じて気室14内の圧力を一定値に保つので、電車線の張力が限度以下に低下して電車の走行に支障を来すことはない。破裂板24の破裂に伴う電車線の張力の低下は、インジケータ22により、目視可能に表示され、あるいは、インジケータの機械的な動作をリミットスイッチや光電スイッチ等により電気信号に変換し、遠隔の管理所等に通知されるので、ガス漏れを早期に確認し、短時間で復旧することができ。
【0028】
気室14を外部につなげるガス放出路20が、破裂板24により完全に密閉されるので、経年や極低温によるシール材の劣化等によるガス漏れの懸念がない。
【符号の説明】
【0029】
1 張力調整装置
2 シリンダ
3 ピストンロッド
4 アキュムレータ
5 安全弁装置
6 蓋
7 連結部
8 蓋
8a 貫通孔
8b ホルダ部
8c 油通路
9 連結部
10 ピストン
11 油室
12 気室
13 シリンダケース
14 気室
15 蓋
15a 油通路
16 ベローズ
17 油室
18 蓋
18a 通気路
19 ケーシング
20 放出路
21 本体
22 破裂インジケータ
23 継ぎ手部材
23a 接続部
23b ねじ部
24 破裂板
25 弁ケース
26 ばね式安全弁
27 破裂板ホルダ
28 ガイド部材
28a 摺動孔
28b 直交孔
29 表示突子
29a 大径部
29b 小径部
30 デテント機構
31 ストッパ突子
32 ばね
33 プラグ
34 弁体
35 弁棒
36 ばね
37 カバー
図1
図2
図3
図4