IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -ジョイスティック装置 図1
  • -ジョイスティック装置 図2
  • -ジョイスティック装置 図3
  • -ジョイスティック装置 図4
  • -ジョイスティック装置 図5
  • -ジョイスティック装置 図6
  • -ジョイスティック装置 図7
  • -ジョイスティック装置 図8
  • -ジョイスティック装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ジョイスティック装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 9/047 20060101AFI20221020BHJP
   G05G 5/05 20060101ALI20221020BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20221020BHJP
【FI】
G05G9/047
G05G5/05
G05G5/03 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018038236
(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公開番号】P2019153113
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 修一
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-164559(JP,A)
【文献】特開2014-181778(JP,A)
【文献】特開2017-173951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0014781(US,A1)
【文献】特表2011-522309(JP,A)
【文献】特表2011-519098(JP,A)
【文献】特開2013-218596(JP,A)
【文献】特開2004-36327(JP,A)
【文献】特表2019-530092(JP,A)
【文献】実開昭50-146257(JP,U)
【文献】特開2002-32134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 9/047
G05G 5/05
G05G 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材と、
前記操作部材を支持する操作部材支持部と、
を備え、
前記操作部材支持部は、
前記操作部材の動きに連動して第1の軸線回りに回動する第1支持部材と、
前記操作部材の動きに連動して前記第1の軸線と交差ないし直交する第2の軸線回りに回動する第2支持部材と、
を有し、
前記第1支持部材および前記第2支持部材の少なくとも一方に、当該支持部材に回動抵抗を付与する回動抵抗付与装置が接続され、
前記回動抵抗付与装置は、
内部に封入された磁気粘性流体と、
前記磁気粘性流体に印加する磁場を発生する磁場発生手段と、
を有するものである、
ジョイスティック装置であって、
前記操作部材を弾性材によって中立位置に付勢する機構と、
電磁石と、
前記弾性材から前記操作部材までの弾性力の伝達経路上に設けられた、少なくとも一部に磁性体を含む可動部材と、
をさらに備え、
前記可動部材から前記操作部材のユーザが把持する把持部までの弾性力の伝達経路上に前記弾性材と異なる弾性材を介在させることなく当該伝達経路が形成され、
前記可動部材は、前記電磁石が励磁状態のとき、前記弾性材の弾性力に抗して前記電磁石に吸着されて前記弾性力の伝達経路を切断し、前記電磁石が非励磁状態のとき、前記弾性材の弾性力によって前記電磁石から離れて前記弾性力の伝達経路を接続し、
前記弾性力の伝達経路が切断されているとき、前記操作部材を中立位置に付勢する力が消失するように構成された、ことを特徴とするジョイスティック装置。
【請求項2】
請求項に記載のジョイスティック装置において、
前記電磁石を励磁状態又は非励磁状態へ手動で切り替えるオンオフスイッチを更に備えることを特徴とするジョイスティック装置。
【請求項3】
操作部材と、
前記操作部材を支持する操作部材支持部と、
を備え、
前記操作部材支持部は、
前記操作部材の動きに連動して第1の軸線回りに回動する第1支持部材と、
前記操作部材の動きに連動して前記第1の軸線と交差ないし直交する第2の軸線回りに回動する第2支持部材と、
を有し、
前記第1支持部材および前記第2支持部材の少なくとも一方に、当該支持部材に回動抵抗を付与する回動抵抗付与装置が接続され、
前記回動抵抗付与装置は、
内部に封入された磁気粘性流体と、
前記磁気粘性流体に印加する磁場を発生する磁場発生手段と、
を有するものである、
ジョイスティック装置であって、
前記操作部材を弾性材によって中立位置に付勢する機構と、
電磁石と、
前記弾性材から前記操作部材までの弾性力の伝達経路上に設けられた、少なくとも一部に磁性体を含む可動部材と、
をさらに備え、
前記可動部材は、前記電磁石が励磁状態のとき、前記弾性材の弾性力に抗して前記電磁石に吸着されて前記弾性力の伝達経路を切断し、前記電磁石が非励磁状態のとき、前記弾性材の弾性力によって前記電磁石から離れて前記弾性力の伝達経路を接続し、
前記弾性力の伝達経路が切断されているとき、前記操作部材を中立位置に付勢する力が消失するように構成され、
前記電磁石を励磁状態又は非励磁状態へ切り替える制御装置を更に備え、
前記制御装置は、磁場付与手段が磁気粘性流体に印加する磁場も制御し、
前記制御装置は、操作部材の位置情報及び所定の制御手順に基づいて、次の(1)~(4)に示す4つの状態を相互に切り替えて実行する、ことを特徴とするジョイスティック装置。
(1)前記電磁石を励磁状態にするとともに、前記磁場付与手段により前記磁気粘性流体に磁場を付与する状態。
(2)前記電磁石を非励磁状態にするとともに、前記磁場付与手段により前記磁気粘性流体に磁場を付与する状態。
(3)前記電磁石を励磁状態にするとともに、前記磁場付与手段により前記磁気粘性流体に磁場を付与しない状態。
(4)前記電磁石を非励磁状態にするとともに、前記磁場付与手段により前記磁気粘性流体に磁場を付与しない状態。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部材を操作する際に所望の力覚を提示することのできるジョイスティック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~5には、操作レバーが直交する2軸に回動可能に支持されたジョイスティック装置が開示されている。このタイプのジョイスティック装置によれば、簡易な構造で操作レバーを前後方向および左右方向に傾倒操作させることができ、操作レバーの位置の検出も簡易な構造で容易に行うことができる。
【0003】
特許文献6に開示されているジョイスティック装置は、操作レバーにおいて、磁気粘性流体を用いて所望の力覚を提示させることのできるものである。このジョイスティック装置によれば、磁気粘性流体を利用して力覚を提示するので、電動モータ等のアクチュエータでは提示できない力覚を提示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭50-146257号公報
【文献】特開平10-283051号公報
【文献】特開2002-032134号公報
【文献】特開2002-108472号公報
【文献】特開2008-003704号公報
【文献】特開2014‐174726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、操作レバーが2軸の回りに回動可能に支持されたジョイスティック装置の利点を生かしつつ、磁気粘性流体を利用して、様々な種類の力覚を提示することのできるジョイスティック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るジョイスティック装置は、操作部材と、前記操作部材を支持する操作部材支持部と、を備える。前記操作部材支持部は、前記操作部材の動きに連動して第1の軸線回りに回動する第1支持部材と、前記操作部材の動きに連動して前記第1の軸線と交差ないし直交する第2の軸線回りに回動する第2支持部材と、を有する。前記第1支持部材および前記第2支持部材の少なくとも一方に、当該支持部材に回動抵抗を付与する回動抵抗付与装置が接続されている。前記回動抵抗付与装置は、内部に封入された磁気粘性流体と、前記磁気粘性流体に印加する磁場を発生する磁場発生手段と、を有するものである。
【0007】
かかる構成を備えるジョイスティック装置によれば、操作レバーが2軸に支持されたジョイスティック装置の利点を生かしつつ、磁気粘性流体を利用して様々な種類の力覚を提示することが可能となる。
【0008】
前記構成を備えるジョイスティック装置において、前記操作部材を弾性材によって中立位置に付勢する機構と、電磁石と、前記弾性材から前記操作部材までの弾性力の伝達経路上に設けられた、少なくとも一部に磁性体を含む可動部材と、を備え、前記可動部材は、前記電磁石が励磁状態のとき、前記弾性材の弾性力に抗して前記電磁石に吸着されて前記弾性力の伝達経路を切断し、前記電磁石が非励磁状態のとき、前記弾性材の弾性力によって前記電磁石から離れて前記弾性力の伝達経路を接続する、ものとしてもよい。
【0009】
かかる構成を備えるジョイスティック装置によれば、前記電磁石を励磁状態にすることで操作部材を中立位置に付勢する機能を無効にすることができる。これにより、回動抵抗付与装置のみによって操作部材の力覚を提示することができ、ジョイスティック装置の操作部材において提示できる力覚の自由度が広がる。また、必要なときは、前記電磁石を非励磁状態にすることで操作部材を中立位置に付勢することもできる。
【0010】
前記構成を備えるジョイスティック装置において、前記電磁石を励磁状態又は非励磁状態へ切り替える制御装置を更に備えるものとしてもよい。
【0011】
前記構成を備えるジョイスティック装置において、前記電磁石を励磁状態又は非励磁状態へ手動で切り替えるオンオフスイッチを更に備えるものとしてもよい。
【0012】
前記構成を備えるジョイスティック装置において、前記制御装置は、磁場付与手段が磁気粘性流体に印加する磁場も制御するものとしてもよい。
【0013】
前記構成を備えるジョイスティック装置において、前記制御装置は、操作部材の位置情報及び/又は所定の制御手順に基づいて、次の(1)~(4)の何れか2つ以上の状態を相互に切り替えて実行するものとしてもよい。
(1)前記電磁石を励磁状態にするとともに、前記磁場付与手段により前記磁気粘性流体に磁場を付与する状態。
(2)前記電磁石を非励磁状態にするとともに、前記磁場付与手段により前記磁気粘性流体に磁場を付与する状態。
(3)前記電磁石を励磁状態にするとともに、前記磁場付与手段により前記磁気粘性流体に磁場を付与しない状態。
(4)前記電磁石を非励磁状態にするとともに、前記磁場付与手段により前記磁気粘性流体に磁場を付与しない状態。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、操作レバーが2軸に支持されたジョイスティック装置の利点を生かしつつ、様々な種類の力覚を提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るジョイスティック装置の要部を前後方向から視た部分断面図であって、電磁石が励磁状態にある状態を示す図である。
図2】本実施形態に係るジョイスティック装置の要部を左右方向から視た部分断面図であって、電磁石が励磁状態にある状態を示す図である。
図3】(a)操作レバーの側面図である。(b)操作レバーの正面図である。
図4】(a)第1支持部材の側面図である。(b)第1支持部材の正面図である。
図5】(a)第2支持部材の側面図である。(b)第2支持部材の正面図である。
図6】本実施形態に係るジョイスティック装置の平面図である。但し、制御装置の図示は省略している。
図7】本実施形態に係るジョイスティック装置の要部を前後方向から視た部分断面図であって、電磁石が非励磁状態にある状態を示す図である。
図8】本実施形態に係るジョイスティック装置の要部を左右方向から視た部分断面図であって、電磁石が非励磁状態にある状態を示す図である。
図9】他の実施形態に係るジョイスティック装置の平面図である。但し、制御装置の図示は省略している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るジョイスティック装置について、図面を参照しつつ説明する。本発明の実施形態に係るジョイスティック装置100は、図1および図2に示すように、操作レバー1、操作レバー支持部2、ケース3、電磁石4、可動部材5、回動抵抗付与装置6、制御装置7等で構成されている。操作レバー1は、ユーザが操作する操作部材の1例である。なお、本明細書では、説明の便宜上、後述する第1の軸線N1(図1参照)の方向を左右方向、後述する第2の軸線N2(図2参照)の方向を前後方向、中立位置にある操作レバ1の長手方向を上下方向と仮定して説明する。
【0017】
操作レバー1は、前後方向および左右方向に傾倒操作できるように操作レバー支持部2に支持されている。本実施形態では、操作レバー1は、前後方向の傾倒操作と左右方向の傾倒操作を同時に行うことができる。つまり、操作レバー1は、前後方向と左右方向に対して斜め方向に傾倒操作することができる。操作レバー1は、例えば図3に示すように、棒状のレバー部9と、レバー部9の一端部に設けられた略球状の把持部10と、レバー部9の他端部両側に設けられた一対の軸部11を備えている。
【0018】
操作レバー支持部2は、操作レバー1を前後方向および左右方向に傾倒可能に支持する。本実施形態では、操作レバー支持部2は、第1支持部材13および第2支持部材14で構成されている。
【0019】
第1支持部材13は、図4に示すように、本体部13aおよび一対の軸部13bを備えている。本体部13aには、操作レバー1の軸部11を回転自在に支持する軸受部13cと、操作レバー1が通過する通路13dとが形成されている。また、本体部13aの下部には、後述する可動部材5が面接触することが可能な平坦面13eが形成されている。一対の軸部13bは、本体部13aの両側に形成されており、同一の軸線(本明細書において「第1の軸線N1」という。)上に形成されている。各軸部13bは、図1に示すように、ケース3の軸受部3aに回転自在に支持されている。第1支持部材13の通路13dは左右方向に細長く形成されている。また、通路13dの幅は、操作レバー1のレバー部9の直径と略同一であるため、操作レバー1を前後方向に傾倒操作すると、第1支持部材13は、操作レバー1とともに、軸線N1回りに回動する。
【0020】
第2支持部材14は、図5に示すように、本体部14aおよび一対の軸部14bを備えている。本体部14aは、第1支持部材13の本体部13aの外側に配されている。本体部14aには、操作レバー1が通過する通路14cが形成されている。また、本体部14aの下部には、後述する可動部材5が面接触することが可能な平坦面14dが形成されている。一対の軸部14bは、本体部14aの両側に形成されており、同一の軸線(本明細書において「第2の軸線N2」という。)上に形成されている。各軸部14bは、図2に示すように、ケース3の軸受部3aに回転自在に支持されている。第2支持部材14の通路14cは前後方向に細長く形成されている。また、通路14cの幅は、操作レバー1のレバー部9の直径と略同一であるため、操作レバー1を左右方向に傾倒操作すると、第2支持部材14は、操作レバー1とともに、軸線N2回りに回動する。なお、本実施形態では、第1の軸線N1と第2の軸線N2は直交しているが、必ずしも直交している必要はなく、直交に近い交差であってもよい。
【0021】
ケース3は、その内部に、操作レバー支持部2、電磁石4等を設置している。また、既述したように、ケース3には、第1支持部材13の軸部13b(図1参照)の軸受部3aと、第2支持部材14の軸部14b(図2参照)の軸受部3aが形成されている。
【0022】
可動部材5は、操作レバー支持部2と後述する電磁石4との間に設けられており、バネ18によって操作レバー支持部2側に付勢されている。本実施形態では、可動部材5は、磁性体からなり、円板部5aと、この円板部5aの下面中央に形成された円柱状の凸部5bとで構成されている。図7および図8に示すように、可動部材5の円板部5aの上面が第1支持部材13および第2支持部材14の平坦面13e,14dと面接触した状態で、操作レバー1が中立位置となる。なお、円板部5aの中央には、図1に示すように、操作レバー1の下端部の半球形状に対応した窪み5cが形成されている。
【0023】
電磁石4は、可動部材5の下方に設置されている。電磁石4が励磁されると、可動部材5は、図7および図8に示す状態から、バネ18の弾性力に抗して、第1支持部材13および第2支持部材14から離れて、図1および図2に示すように、電磁石4のヨーク21に吸着される。可動部材5が電磁石4のヨークに吸着した状態では、バネ18から操作レバー1に至るまでの弾性力の伝達経路が切断され、操作レバー1を中立位置に付勢する力が消失する。一方、電磁石が励磁されていないときは、可動部材5は、図1および図2に示す状態から、バネ18の弾性力によって電磁石4のヨーク21から離れて、図7および図8に示すように、第1および第2支持部材13,14の下部に押し付けられる。この状態では、バネ18から操作レバー1に至るまでの弾性力の伝達経路が接続され(成立し)、操作レバー1を中立位置に付勢する力が発生する。なお、可動部材5の凸部5bの円板部5aからの突出長さは、ヨーク21の内側の立ち上がり部21aの高さと、外側の立ち上がり部21bの高さの差と略同一になっている。
【0024】
図1等に例示する電磁石4は、ボビン19に巻き付けられたコイル20と、コイル20およびボビン19の底部から内周側および外周側で立ち上がったヨーク21とで主に構成されている。また、バネ18は、コイルスプリングからなり、ボビン19とヨーク21の内側の立ち上がり部21aとの間に設けられている。
【0025】
回動抵抗付与装置6は、各軸線N1,N2上に1つずつ設置されている。図1に示すように、一方の回動抵抗付与装置6の出力軸6aは、第1支持部材13の軸部13bおよび可変抵抗器23の入力軸23aに直列に連結されている。図2に示すように、もう一方の回動抵抗付与装置6の出力軸6aは、第2支持部材14の軸部14bおよび可変抵抗器23の入力軸23aに直列に連結されている。このように構成されることで、操作レバー1の何れの方向の傾動操作に対しても回動抵抗付与装置6による力覚(操作負荷、操作抵抗等)を付与することができるようになっている。なお、可変抵抗器23は、操作レバー1の操作位置に応じた値を制御装置7に出力する。
【0026】
本実施形態では、回動抵抗付与装置6として、磁気粘性流体を用いたものを採用している。この回動抵抗付与装置6は、磁気粘性流体に印加する磁場の強さに応じた回転抵抗を発生する。
【0027】
制御装置7は、電磁石4のコイル20への供給電流を制御することにより、操作レバー1を中立位置に付勢する機能を有効又は無効に切り替える。また、制御装置7は、回動抵抗付与装置6のコイルへの供給電流を制御することにより、回動抵抗付与装置6が発生する回転抵抗を制御し、ひいては、操作レバー1における操作抵抗や力覚を制御する。制御装置7は、可変抵抗器23の出力から求まる操作レバー1の位置情報と、所定の制御手順に基づいて、電磁石4および回動抵抗付与装置6に対する上記各種制御を実行する。なお、上記の所定の制御手順の一例として、制御装置7の記憶部に予め記憶されたプログラムに基づいて制御装置7の演算処理装置により実行されるものが挙げられる。
【0028】
次に、図1に例示する回動抵抗付与装置6の概略構成を説明する。なお、図2に示す回動抵抗付与装置6は、図1に示す回動抵抗付与装置6と同一であるため、以下では、図1に例示する回動抵抗付与装置6についてのみ説明を行う。
【0029】
図1に示す回動抵抗付与装置6は、回転軸31、円板32、ヨーク34,35、コイル37、磁気粘性流体38、ケーシング36等で構成されている。
【0030】
回転軸31は、その端部が円板32の裏面の中心部に垂直に接続されている。回転軸31はベアリング39を介してヨーク35に設けられた軸穴40に回転自在に支持されている。
【0031】
円板32は、磁性体からなり、回転軸31と一体に回転可能となっている。ケーシング36、ヨーク34,35等はケース3および可変抵抗器23に対して回転しないように所定の固定手段により固定されている。
【0032】
ヨークは、第1ヨーク34および第2ヨーク35で構成されている。第1ヨーク34は、円板32の表面32aに対して微小隙間を介して対向する円板状のもので構成されている。この第1ヨーク34は、円筒状のケーシング36に嵌め込まれて固定されている。
【0033】
第2ヨーク35は、円板32の裏面32bに対して微小隙間を介して対向する対向面35aを有する。この第2ヨーク35は、円筒状のケーシング36の内側に嵌め込まれて固定されている。
【0034】
符号41は、非磁性体からなる球体であり、第1ヨーク34の中心部に形成された凹部と、円板32の中心に形成された貫通穴と、回転軸31の端面の中心に形成された凹部とで形成されるスペースに収容されている。この球体41は、第1ヨーク34と円板32との隙間の設定を容易にするためのものであり、球体41の直径によって、当該隙間が定まる。
【0035】
コイル37は、第2ヨーク35に形成された環状の溝に沿って配設されている。このコイル37には、制御装置7から電流が供給される。
【0036】
磁気粘性流体38は、円板32と、第1ヨーク34および第2ヨーク35との隙間に封入されている。この磁気粘性流体38は、磁性粒子を分散媒に分散させてなる液体であり、特にその磁性粒子がナノサイズの金属粒子(金属ナノ粒子)からなるものが使用できる。磁性粒子は磁化可能な金属材料からなり、金属材料に特に制限はないが軟磁性材料が好ましい。軟磁性材料としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル及びパーマロイ等の合金が挙げられる。分散媒は、特に限定されるものではないが、一例として疎水性のシリコーンオイルを挙げることができる。磁気粘性流体における磁性粒子の配合量は、例えば3~40vol%とすればよい。磁気粘性流体にはまた、所望の各種特性を得るために、各種の
添加剤を添加することも可能である。
【0037】
上記構成を備える回動抵抗付与装置6において、コイル37に電流が印加されると、矢印Pに示す方向に沿って円板32、第1ヨーク34、第2ヨーク35内に磁路が形成される。この磁路は、円板32の表面32aと第1ヨーク34の対向面34aとの隙間や、円板32の裏面32bと第2ヨーク35の対向面35aとの隙間に介在する磁気粘性流体38を貫通する。これにより、磁気粘性流体38には、磁場の強さに応じた粘度(ずり応力)が発現し、円板32とヨーク34,35との間での伝達トルクが磁場の強さに応じて大きくなる。その結果、回転軸31の回転抵抗もコイル37に印加される電流値に応じて大きくなる。
【0038】
以上に説明した構成を備えるジョイスティック装置100において、制御装置7が電磁石4を励磁状態にすると、操作レバー1を中立位置に付勢する力が消失し、電磁石4を非励磁状態にすると、操作レバー1を中立位置に付勢する力が発生する。また、制御装置7が回動抵抗付与装置6のコイル37に印加する電流値に応じて、各回動抵抗付与装置6が第1支持部材13又は第2支持部材14を介して操作レバー1に操作抵抗や力覚を付与する。
【0039】
また、ジョイスティック装置100の制御装置7は、以下に説明する第1~第4の状態を自動的に切り替えることができる。
【0040】
<第1の状態>
制御装置7は、電磁石4を励磁状態にするとともに、一方又は双方の回動抵抗付与装置6のコイル37に電流を印加して回動抵抗付与装置6において回転抵抗を発生させることができる。この状態では、操作レバー1には、中立位置への付勢力が付与されることなく、一方又は双方の回動抵抗付与装置6による操作抵抗や力覚のみが付与される。
【0041】
<第2の状態>
制御装置7は、電磁石4を非励磁状態にするとともに、一方又は双方の回動抵抗付与装置6のコイル37に電流を印加して回動抵抗付与装置6において回転抵抗を発生させることができる。この状態では、操作レバー1には、中立位置への付勢力が付与されるとともに、一方又は双方の回動抵抗付与装置6による操作抵抗や力覚が付与される。
【0042】
<第3の状態>
制御装置7は、電磁石4を励磁状態にするとともに、双方の回動抵抗付与装置6のコイル37に電流を印加せずに回動抵抗付与装置6における回転抵抗を最小値にすることができる。この状態では、操作レバー1には、中立位置への付勢力が付与されることなく、回動抵抗付与装置6の基底トルクに応じた軽微な操作抵抗のみが付与される。
【0043】
<第4の状態>
制御装置7は、電磁石4を非励磁状態にするとともに、双方の回動抵抗付与装置6のコイル37に電流を印加せずに回動抵抗付与装置6における回転抵抗を最小値にすることができる。この状態では、操作レバー1には、中立位置への付勢力が付与されるとともに、回動抵抗付与装置6の基底トルクに応じた軽微な操作抵抗が付与される。
【0044】
上記第1~第4の状態の切替は、制御装置7により、操作レバー1の位置情報及び/又は所定の制御手順に基づいて自動的に行われるが、電磁石4の励磁状態又は非励磁状態の切替をユーザが手動で行えるようにしてもよい。例えば、制御装置7と電磁石4との間の給電線の途中に、電磁石4への電流をオン又はオフに切り替えるオンオフスイッチ25(図1参照)を設けることで可能となる。あるいは、電磁石4に対して制御装置7から電流を供給するのではなく、制御装置7とは別に、電流供給源を設けて、そこから電磁石4へ電流を供給し、当該電流供給源と電磁石4との間の給電線の途中に、オンオフスイッチを設けてもよい。
【0045】
以上に説明したジョイスティック装置100によれば、操作レバーが2軸に支持されたジョイスティック装置の利点を生かしつつ、様々な種類の力覚を提示することが可能となる。なお、操作レバーが2軸に支持されたジョイスティック装置の利点としては、例えば、簡易な構造で操作レバーを前後方向および左右方向に傾倒操作させることができる点、操作レバーの位置の検出も簡易な構造で容易に行うことができる点が挙げられる。
【0046】
また、ジョイスティック装置100によれば、電磁石4を励磁状態又は非励磁状態とすることで、操作レバー1を中立位置に付勢する機能を有効又は無効に切り替えることができる。例えば、操作レバー1を中立位置に付勢したいときは、第2又は第4の状態に切り替え、操作レバー1を中立位置に付勢したくないときは、第1又は第3の状態に切り替えることで、操作レバー1の中立位置付勢機能のメリットを享受しつつ、中立位置付勢機能のデメリットを解消することができる。
【0047】
[他の実施形態]
既述した実施形態では、各回動抵抗付与装置6の出力軸6aは、可変抵抗器23の入力軸23aを介して、第1支持部材13の軸部13b又は第2支持部材14の軸部14bに連結されていたが、例えば図9に示すように、可変抵抗器23が設置されていない位置に回動抵抗付与装置6を設置し、出力軸6aを直接第1支持部材13の軸部13b又は第2支持部材14の軸部14bに連結するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば、操作部材を操作する際に所望の力覚を提示するジョイスティック装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 操作レバー(操作部材)
2 操作レバー支持部(操作部材支持部)
4 電磁石
5 可動部材
6 回動抵抗付与装置
7 制御装置
13 第1支持部材
14 第2支持部材
18 バネ(弾性材)
25 オンオフスイッチ
38 磁気粘性流体
100 ジョイスティック装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9