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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】煙感知器試験装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/10 20060101AFI20221020BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G08B17/10 L
G08B17/00 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018059133
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019174883
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】湯地 定隆
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-517727(JP,A)
【文献】特開平06-309577(JP,A)
【文献】特開2013-167994(JP,A)
【文献】実開昭48-078786(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0063417(KR,A)
【文献】実開昭63-183693(JP,U)
【文献】特開2012-118962(JP,A)
【文献】特開平09-161171(JP,A)
【文献】特開2006-126897(JP,A)
【文献】実開昭54-086988(JP,U)
【文献】特開昭56-047897(JP,A)
【文献】特開平09-251589(JP,A)
【文献】特開2011-070590(JP,A)
【文献】特開2013-254365(JP,A)
【文献】特開2013-127766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0188296(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0020040(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00-17/12
G08B29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙感知器に煙を供給することで試験を行う煙感知器試験装置であって、
前記煙感知器試験装置は、試験状態で前記煙感知器の少なくとも検煙部を包囲した閉鎖空間を形成可能な感知器試験部を備え、
前記感知器試験部は、
前記試験状態で前記煙感知器の最低部より低い位置に配置され、内部に煙を流入させる煙流入口と、
前記試験状態で前記検煙部の最低部より高い位置に配置され、内部から煙を流出させる排気口と、
を備え、
前記試験状態で前記煙流入口から前記排気口に至る煙流経路が前記煙感知器の検煙部を通過するように、前記煙流入口と前記排気口とが当該検煙部を挟ん配置され
前記試験状態で前記煙感知器の検煙部と前記感知器試験部の底面との距離に応じて変位又は変形して、前記煙流経路を整流する整流部を備えたことを特徴とする煙感知器試験装置。
【請求項2】
請求項記載の煙感知器試験装置に於いて、
前記整流部は、前記煙流経路を整流する位置に起立する整流板であり、
前記整流板は、前記感知器試験部の底面に折り畳み可能又は着脱可能であることを特徴とする煙感知器試験装置。
【請求項3】
請求項記載の煙感知器試験装置に於いて、
前記整流部は、前記感知器試験部の底面に配置された整流板であり、
前記整流板は、前記煙感知器側への起立方向と前記底面側への倒伏方向とに起倒自在であり、起立方向に付勢され、前記試験状態で前記煙感知器の検煙部に押圧された場合に倒伏可能であることを特徴とする煙感知器試験装置。
【請求項4】
請求項記載の煙感知器試験装置に於いて、
前記整流部は、前記感知器試験部の底面に配置された蛇腹状の伸縮体であり、
前記伸縮体は、前記煙感知器側への伸長方向と前記底面側への短縮方向とに伸縮自在であり、前記伸長方向に付勢されて前記試験状態で前記煙感知器の検煙部に当接することを特徴とする煙感知器試験装置。
【請求項5】
煙感知器に煙を供給することで試験を行う煙感知器試験装置であって、
前記煙感知器試験装置は、試験状態で前記煙感知器の少なくとも検煙部を包囲した閉鎖空間を形成可能な感知器試験部を備え、
前記感知器試験部は、
前記試験状態で前記煙感知器の最低部より低い位置に配置され、内部に煙を流入させる煙流入口と、
前記試験状態で前記検煙部の最低部より高い位置に配置され、内部から煙を流出させる排気口と、
を備え、
前記試験状態で前記煙流入口から前記排気口に至る煙流経路が前記煙感知器の検煙部を通過するように、前記煙流入口と前記排気口とが当該検煙部を挟んで配置され、
前記試験状態で前記煙感知器の検煙部と前記感知器試験部の底面とが接触して前記閉鎖空間が形成できない場合に、前記煙感知器の少なくとも検煙部を包囲することで前記閉鎖空間を形成して前記煙流経路を確保する筒状の試験部伸長アダプタを装着可能であることを特徴とする煙感知器試験装置。
【請求項6】
請求項1又は5記載の煙感知器試験装置に於いて、
一端側に把持部が配置され、他端側に前記煙感知器の試験を行う装置本体が配置された支持棒と、
前記装置本体の重心位置より上方に配置され、前記支持棒の軸方向に対して直角方向に回動自在に支持される軸支部と、
を備え、
前記装置本体は、前記感知器試験部の開放側が常に上方に向くように、前記支持棒に対して自在に傾斜可能であることを特徴とする煙感知器試験装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙感知器の動作試験に用いられる煙感知器試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィス等の建物内には火災報知設備が設置されており、火災が発生した場合に、火災により発生した煙を煙感知器で検知して発報信号を受信機に送って火災警報を出力させ、消火、避難、消防活動を行うことができるようにしている。
【0003】
火災報知設備は、建物への設置後、定期的に点検が行われており、煙感知器については、天井面に設置された煙感知器を取外し、点検の際に持ち込んだ煙感知器試験装置を使用して煙感知器の動作試験を行っている。
【0004】
しかしながら、このような従来の煙感知器試験装置にあっては、煙感知器を取り外して動作試験を行う必要があるため、煙感知器の取り外し作業と取り付け作業に手間がかり、作業負担が大きいという問題があった。
【0005】
この問題を解決するため、先端に発煙部を備えた加煙試験器(煙感知器試験装置)が実用化されており、天井面に設置された煙感知器を取り外すことなく、支持棒の先端に支持した加煙試験器を下側から煙感知器を覆うように押し当てることで、動作試験を簡単に行うことを可能としている。
【0006】
このような従来の加煙試験器としては、スプレーにより煙状微粒子を含む試験用ガス(擬似煙)を発生させるもの(特許文献1)や、試験油を浸透させた浸透材を電気ヒータにより加熱して油煙を発生させて、この油煙を送風装置により強制的に上昇させるもの(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平03-042799号公報
【文献】特開平06-309577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のようなスプレーによる加煙試験器にあっては、フロンガスを使用しているため環境負荷が大きく、また、今後は代替フロンの入手困難や価格高騰などの問題がある。代替ガスとしてLPGを使用することもできるが、LPGは可燃性であり、低温で使用できないなどの問題がある。
【0009】
更に、このようなスプレー方式では、ガスの噴射量の制御が容易ではなく、高濃度の擬似煙が発生した場合は、煙感知器の発報後の復旧に時間がかかり、低濃度の擬似煙が発生した場合は、発報するまでに時間がかかり、何れの場合にも点検効率が悪くなる。
【0010】
また、特許文献2のような油煙式の加煙試験器にあっては、上向きに開放された試験器内に発煙装置及び送風装置を配置し、天井面の煙感知器に下から加煙試験器を押し当てた状態で、発煙装置から煙を加煙試験器内に放出させて試験発報させているが、煙を放出し始めてから煙濃度が上昇して煙感知器が試験発報するまで時間がかかり、その間、支持棒により加煙試験器を煙感知器に推し当てた状態を保持していなければならず、作業負担が大きいという問題がある。
【0011】
また、動作試験作業は、複数の煙感知器に対して設置場所を移動しながら動作試験を順次行うが、一度、動作試験を行って次の煙感知器の動作試験を行う場合、加煙試験器が上向きに開放されているため、移動している間に加煙試験器内に放出していた煙は外部に抜け出してしまい、次に煙を放出し始めてから煙濃度が上昇して煙感知器が試験発報するまで時間がかかり、また、発煙装置から放出された煙が無駄になるという問題がある。
【0012】
更に、発煙装置から煙を放出させてから加煙試験器内に煙が充満するまで煙感知器の検煙部に煙が流入しないため、発煙を開始してから試験発報するまで時間がかかるという問題もある。
【0013】
本発明は、天井面に設置された煙感知器に、支持棒により下から押し当てて試験を行う作業時間が短時間で済み、また、試験に使用する煙の浪費を防止する煙感知器試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[基本構成]
本発明は、煙感知器に煙を供給することで試験を行う煙感知器試験装置であって、
煙感知器試験装置は、試験状態で煙感知器の少なくとも検煙部を包囲した閉鎖空間を形成可能な感知器試験部を備え、
感知器試験部は、
試験状態で煙感知器の最低部より低い位置に配置され、内部に煙を流入させる煙流入口と、
試験状態で検煙部の最低部より高い位置に配置され、内部から煙を流出させる排気口と、
を備え、
試験状態で煙流入口から排気口に至る煙流経路が煙感知器の検煙部を通過するように、煙流入口と排気口とが当該検煙部を挟んで対角方向に配置されたことを特徴とする。
【0015】
[感知器試験部]
感知器試験部は、試験状態で煙感知器の検煙部と感知器試験部の底面との距離に応じて変位又は変形して、煙流経路を整流する整流部を備えている。
【0016】
ここで、整流部は、煙流経路を整流する位置に起立する整流板であり、
整流板は、感知器試験部の底面に折り畳み可能又は着脱可能である。
【0017】
または、整流部は、感知器試験部の底面に配置された整流板であり、
整流板は、煙感知器側への起立方向と底面側への倒伏方向とに起倒自在であり、起立方向に付勢され、試験状態で煙感知器の検煙部に押圧された場合に倒伏可能である。
【0018】
または、整流部は、感知器試験部の底面に配置された蛇腹状の伸縮体であり、
伸縮体は、煙感知器側への伸長方向と底面側への短縮方向とに伸縮自在であり、伸長方向に付勢されて試験状態で煙感知器の検煙部に当接する。
【0019】
あるいは、知器試験部は、試験状態で煙感知器の検煙部と感知器試験部の底面とが接触して閉鎖空間が形成できない場合に、煙感知器の少なくとも検煙部を包囲することで閉鎖空間を形成して煙流経路を確保する筒状の試験部伸長アダプタを装着可能である。
【0020】
[装置本体]
煙感知器試験装置は、煙感知器の試験を行う装置本体を備え、
装置本体は、
感知器試験部と、
煙を放出する発煙部と、
発煙部から放出された煙を溜める煙溜め部と、
感知器試験部と煙溜め部とを仕切り分離する隔壁と、
隔壁に形成されて煙流入口として機能する連通口と、
煙溜め部から連通口及び感知器試験部の排気口を経由して外部に至る気流経路と、
煙溜め部に形成された吸気口と発煙部との間に配置され、当該吸気口から外気を導入して気流経路に気流を発生させ、発煙部から放出された煙を当該気流に乗せて搬送する送風部と、
を備えている。
【0021】
[発煙部]
発煙部は、
上面が開口され、液体の発煙剤が貯留された容器と、
容器の開口部を閉鎖する配線基板と、
端部が配線基板に形成された通し穴に挿入され、当該端部が容器内の発煙剤に浸漬した不燃性の芯材と、
配線基板に接続され、芯材の前記配線基板から露出した部位に含侵された発煙剤を加熱して発煙させるヒータと、
を備えている。
【0022】
[制御部]
煙感知器試験装置は、送風部及び配線基板に接続され、所定の操作によりヒータに通電すると共に、ヒータに通電を開始して所定の条件に達したときに送風部を起動させる制御部を備えている。
【0023】
制御部は、所定の発煙量になるようにヒータの加熱温度を調整し、当該発煙量により煙溜め部に煙感知器の試験が可能な量の煙が溜まる時間経過後に送風部を起動させる。
【0024】
制御部は、煙溜め部の煙濃度を測定する煙濃度計を備え、ヒータの通電後に煙感知器の試験が可能な煙濃度に達した後に送風部を起動させるようにしてもよい。
【0025】
または、制御部は、感知器試験部の煙感知器への近接状態を検出する近接センサを備え、ヒータへの通電開始及び通電停止、並びに送風部の起動及び停止を近接状態に応じて制御する。
【0026】
[遠隔操作部]
煙感知器試験装置は、
一端側に把持部が配置され、他端側に装置本体が配置された支持棒と、
支持棒に内蔵又は着脱可能に配置され、制御部を遠隔操作する遠隔操作部と、
を備えている。
【0027】
[モード選択]
遠隔操作部は、試験モード及び排煙モードの何れかを選択して実行指示が可能であり、
制御部は、
遠隔操作部により試験モードの実行を指示された場合は、ヒータに通電して発煙させた後、感知器試験部の煙感知器への近接又は接触を検知したとき、或いは遠隔操作部により送風を指示されたときに送風部を起動させ、
遠隔操作部により排煙モードの実行を指示された場合は、送風部の作動を維持してヒータへの通電を停止し、煙溜め部及び感知器試験部内に滞留した煙を気流経路の気流に乗せて排出する。
【0028】
[装置本体]
煙感知器試験装置は、
一端側に把持部が配置され、他端側に装置本体が配置された支持棒と、
装置本体の重心位置より上方に配置され、支持棒の軸方向に対して直角方向に回動自在に支持される軸支部と、
を備え、
装置本体は、感知器試験部の開放側が常に上方に向くように、支持棒に対して自在に傾斜可能である。
【発明の効果】
【0029】
[基本的な効果]
本発明は、煙感知器に煙を供給することで試験を行う煙感知器試験装置であって、煙感知器試験装置は、試験状態で煙感知器の少なくとも検煙部を包囲した閉鎖空間を形成可能な感知器試験部を備え、感知器試験部は、試験状態で煙感知器の最低部より低い位置に配置され、内部に煙を流入させる煙流入口と、試験状態で検煙部の最低部より高い位置に配置され、内部から煙を流出させる排気口と、を備え、試験状態で煙流入口から排気口に至る煙流経路が煙感知器の検煙部を通過するように、煙流入口と排気口とが当該検煙部を挟んで対角方向に配置されたため、少量の煙で確実に試験発報させることができ、発煙部による煙の発生量を低減できることから、発煙部による試験可能回数が増加し、消耗品となる発煙剤のコストを低減可能とする。
【0030】
[感知器試験部の構造による効果]
試験状態で煙感知器の検煙部と感知器試験部の底面との距離に応じて変位又は変形して、煙流経路を整流する整流部として、折り畳み可能又は着脱可能な整流板や、起立方向に付勢されて試験状態で煙感知器の検煙部に押圧された場合に倒伏する整流板や、蛇腹状の伸縮体を感知器試験部の底面に配置したため、煙を搬送する煙流経路を効率的に形成することができ、発煙部による煙の発生量や送風部の作動時間を低減できることから、消耗品となる発煙剤や電池のコストを低減可能とする。
【0031】
[装置本体の構造による効果]
煙感知器の試験を行う装置本体を備え、装置本体は、感知器試験部と、煙を放出する発煙部と、発煙部から放出された煙を溜める煙溜め部と、感知器試験部と煙溜め部とを仕切り分離する隔壁と、隔壁に形成されて煙流入口として機能する連通口と、煙溜め部から連通口及び感知器試験部の排気口を経由して外部に至る気流経路と、煙溜め部に形成された吸気口と発煙部との間に配置され、当該吸気口から外気を導入して気流経路に気流を発生させ、発煙部から放出された煙を当該気流に乗せて搬送する送風部とを備えたため、煙感知器の試験を行う場合には、発煙部から供給された煙が煙溜め部に溜まった後に、溜まった煙を送風部により形成された気流経路に乗せて搬送することから、煙感知器が試験発報するまでの時間が短くて済み、作業負担を低減可能とする。
【0032】
また、試験発報後に送風部を停止することで、次の煙感知器への移動時や煙感知器の非試験中に、煙溜め部に溜まった煙は外部に放出されずに滞留し、次の煙感知器の試験に滞留している煙を利用することができ、発煙部による煙の発生量を低減できることから、発煙部による試験可能回数が増加し、消耗品となる発煙剤のコストを低減可能とする。
【0033】
[発煙部の構造による効果]
発煙部に、上面が開口され、発煙剤が収納された容器と、容器の開口部を閉鎖する配線基板と、端部が配線基板に形成された通し穴に挿入され、当該端部が容器内の発煙剤に浸漬した不燃性の芯材と、配線基板に接続され、芯材の配線基板から露出した部位に含侵された発煙剤を加熱して発煙させるヒータとを備えたため、容器に動作試験に必要な十分な量の発煙剤を入れておくことができ、使用により発煙剤が減少した場合には簡単に補充することができ、作業効率を向上可能とする。
【0034】
[制御部の構成による効果]
送風部及び配線基板に接続され、所定の操作によりヒータ及び送風部に通電する制御部を備え、所定の発煙量になるようにヒータの加熱温度を調整し、当該発煙量により煙溜め部に煙感知器の試験が可能な量の煙が溜まる時間経過後に、または、ヒータの通電後に煙溜め部が煙感知器の試験が可能な煙濃度に達した後に、送風部を起動させるようにしたため、次の煙感知器への移動時や煙感知器の非試験中に煙溜め部に煙を溜めることができ、装置本体を下から煙感知器に押し当てた後、煙感知器が試験発報するまでの時間が短くて済み、複数の煙感知器を連続して試験する際に効率的な作業を可能とする。
【0035】
制御部に、感知器試験部の煙感知器への近接状態を検出する近接センサを設け、ヒータへの通電開始及び通電停止、並びに送風部の起動及び停止を近接状態に応じて制御するようにしたため、煙感知器試験装置を操作不要に構成するようにしてもよい。
【0036】
[遠隔操作による効果]
制御部を遠隔操作する遠隔操作部を支持棒に内蔵又は着脱可能に備えたため、煙感知器に感知器試験部を押し当てる作業と、制御部を操作する作業とを複数の作業者により分担することができ、効率的な作業を可能とする。
【0037】
[モード選択による効果]
制御部は、遠隔操作部により試験モードが選択された場合、ヒータに通電して発煙させた後、感知器試験部の煙感知器への接触又は近接を検知したとき、或いは遠隔操作部により送風を指示されたときに送風部を起動させ、遠隔操作部により排煙モードが選択された場合、送風部の作動を維持してヒータへの通電を停止し、煙溜め部及び感知器試験部内に滞留した煙を気流経路の気流に乗せて排出するようにしたため、作業終了時に煙溜め部に溜まった煙を短時間で外部に排出することができ、効率的な作業を可能とする。
【0038】
[装置本体の構造による効果]
装置本体に、支持棒の軸方向に対して直角方向に回動自在に支持される軸支部を重心位置より上方に備え、感知器試験部の開放側が常に上方に向くように、支持棒に対して自在に傾斜可能としたため、試験時に作業者が煙感知器の直下に移動できない場合でも、感知器試験部を斜め下方から煙感知器に押し当てることができ、作業効率を向上可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明による煙感知器試験装置の第一実施形態を試験状態で示した説明図
図2図1の煙感知器試験装置を側面から示した説明図
図3】装置本体の詳細及び背の低い煙感知器を試験する場合の気流経路を示した説明図
図4図3の装置本体を平面で示した説明図
図5】背の高い煙感知器を試験する場合の気流経路を示した説明図
図6】本発明による煙感知器試験装置の第二実施形態を試験状態で示した説明図
図7】本発明による煙感知器試験装置の第三実施形態を試験状態で示した説明図
図8】本発明による煙感知器試験装置の第四実施形態を試験状態で示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0040】
[煙感知器試験装置の概要]
図1は、本発明の煙感知器試験装置の第一実施形態を正面からの部分断面で示した説明図、図2は、図1の煙感知器試験装置を側面から示した説明図である。
【0041】
本実施形態の煙感知器試験装置10は、装置本体12、支持棒14、リモコン装置(遠隔操作部)20及び電池パック(電池部)22で構成され、図1及び図2においては、天井面に設置された煙感知器100に、検煙部102を内包するように装置本体12が押し当てられた試験状態を示している。
【0042】
装置本体12は、支持棒14の先端側に設けられた支持部材16に、支持棒14の軸方向に対して直角方向に回動自在に支持され、支持棒14に対して矢印Aで示す方向に傾斜可能となっている。
【0043】
また、支持棒14の末端側となるグリップ18の上方には、モードスイッチ20a及び実行ボタン20bの操作により装置本体12の機能を無線通信で遠隔制御するリモコン装置20、及び充電して再使用可能な電池パック22が配置されている。
【0044】
本実施形態では、リモコン装置20及び電池パック22は、矢印Bで示すように支持棒14に着脱可能に配置されているが、支持棒14に固定された形態や支持棒14に内蔵された形態でも構わない。
【0045】
装置本体12は、本体ケース24の略中央部に内部を上下に仕切る隔壁26が配置され、隔壁26の上側には上方に開放した感知器試験部28、隔壁26の下側には下方を本体ケース24の底板部24aで塞がれた煙溜め部30が形成され、煙溜め部30には、上か順に発煙部32、電動ファン(送風部)34及び制御部36が収納されている。
【0046】
発煙部32は、液体の発煙剤を気化させた煙を煙溜め部30に放出し、発煙部32の下方に配置された電動ファン34は、底板部24aに形成された吸気口38から外気を導入して気流を発生させ、発煙部32から放出された煙をこの気流に乗せて搬送する。
【0047】
隔壁26には、煙溜め部30と感知器試験部28を繋ぐ連通口(煙流入口)40、感知器試験部28の上方、且つ連通口40に対して本体ケース24の径方向の反対側には、排気口42が形成されている。連通口40と排気口42とが煙感知器100の検煙部102を挟んで対角方向に配置されていることから、連通口40から煙感知器100の検煙部102を経由して排気口42に至る煙流経路44が形成される。
【0048】
また、隔壁26には、整流板46が設置されている。整流板46は、矢印Cで示す方向に起倒可能であるが、図1に示すように、試験状態で煙感知器100の検煙部102と隔壁26が所定の距離以上離れている場合に起立し、煙流経路44の連通口40から検煙部102までの部位を整流する。
【0049】
排気口42には、排気量を調整するための排気調整板48が設置されている。排気調整板48は、排気口42の開口面積を変化させるように、矢印Dで示す上下方向に移動可能であり、適切な排気量となる位置に蝶ナット48aで固定される。
【0050】
制御部36は、発煙部32及び電動ファン34にリード線50、52により接続され、電源ケーブル54を介して供給された電池パック22からの電源により作動し、リモコン装置20からの所定の操作指示に基づき、発煙部32及び電動ファン34を制御して煙感知器100の試験を行なう。また、試験時に煙溜め部30の煙濃度を測定する必要がある場合は、制御部36に煙濃度計を備えるようにしてもよい。
【0051】
本実施形態では、支持棒14をパイプ部材で構成し、電池パック22と制御部36とを繋ぐ電源ケーブル54を内部に通しているが、リモコン装置20を支持棒14に固定又は内蔵する形態とする場合には、電源ケーブル54に加えて制御ケーブルを支持棒14内に通すこともできる。
【0052】
また、装置本体12は、支持部材16に支持される軸支部56を重心位置より上方に配置して、感知器試験部28の開放側が常に上方に向くようにしている。これにより、試験時に作業者が煙感知器100の直下に移動できない場合でも、装置本体12を斜め下方から煙感知器100に押し当てることが可能となる。
【0053】
本体ケース24の上端部には、装置本体12が煙感知器100に押し当てられた際に、感知器試験部28の開口と煙感知器100とを密着させて、感知器試験部28を密閉するゴムパッキン58を備えている。
【0054】
更に、感知器試験部28の開放側には、感知器試験部28の煙感知器100への近接又は接触を検知する近接センサ60が設置され、近接センサ60は、リード線62により制御部36に接続されている。
【0055】
[装置本体の詳細及び気流経路の形成]
図3は、本発明による装置本体の第一実施形態において、背の低い煙感知器を試験する場合の気流経路を示した説明図であり、装置本体12の部分を拡大して示している。図3に示す試験状態では、煙感知器100の検煙部102と隔壁26が離れているためバネ46aの付勢により整流板46が傾斜状態で起立している。
【0056】
バネ46aは、隔壁26と整流板46で支持され、図3に示す状態では、煙感知器100の検煙部102に当接せずに、開放限界の位置で整流板46が保持されている。整流板46は、煙感知器100の検煙部102に上から押されるような場合には、バネ46aの付勢に抗して倒伏方向に回動する。
【0057】
この状態で、感知器試験部28には、煙溜め部30から連通口40、本体ケース24と整流板46とで形成される流路64及び煙感知器100の検煙部102を経由して排気口42の外部に至る気流経路66が形成される。
【0058】
ここで、図1に示す連通口40から排気口42に至る煙流経路44は、煙溜め部30から排気口42の外部に至る気流経路66の一部を形成し、これ以降の説明において記す「気流経路」には、全てこの「煙流経路」が含まれている。
【0059】
発煙部32の下方に配置された電動ファン34は、底板部24aに形成された吸気口38から外気を導入して気流68を発生させ、発煙部32から放出された煙を気流68に乗せて連通口40に向けて搬送する。気流68に乗った煙は、連通口40から気流経路66を通って検煙部102に達し、煙感知器100を試験発報させた後に排気口42から排出される。
【0060】
発煙部32は、液体の発煙剤70が貯留される容器72が設置され、容器72は、上部開口に配線基板74が接着固定されて閉鎖されている。配線基板74にはゴム製の発煙剤注入口キャップ76が設けられ、注射器等を使用することにより、発煙剤注入口キャップ76を介して容器72内に発煙剤70を注入して補充できるようになっている。
【0061】
また、容器72は、下方に配置された電動ファン34が吸気口38から導入した外気を容器72の外周側に整流するように、底部が上部開口よりも小径となる逆円錐台状に形成されている。
【0062】
図4は、図3の装置本体12を平面で示した説明図であり、図4(A)は、整流板46が起立した状態の隔壁26、図4(B)は、隔壁26の下方に配置された発煙部32、図4(C)は、発煙部32の下方に開始された電動ファン34を示している。
【0063】
図4(A)に示すように、隔壁26には、本体ケース24との間に連通口40が形成され、更に、本体ケース24と隔壁26に起立した整流板46とで連通口40の上方に流路64が形成されている(図3を参照)。
【0064】
また、隔壁26の上部(感知器試験部側)には、先端部にローラ46bを備えた整流板46が、軸部に配置されたバネ46aにより起立方向に付勢されて起倒自在に設置されている。
【0065】
図4(B)及び図3に示すように、配線基板74には、一対の液漏れ防止プラグ78が配置され、液漏れ防止プラグ78に紐状の芯材80の両端を通し、芯材80の両先端を容器72に貯留された発煙剤70に浸漬させている。芯材80は、毛細管現象により発煙剤70を吸い上げて含侵させている。
【0066】
芯材80としては、不燃性のガラス繊維、シリカ繊維、ステンレス撚り線等を使用する。また、発煙剤70としては、親水性を有し保水性が高い成分、例えば、グリセリン、プロピレングリコール等の成分のうち少なくとも一種類の成分を含む人体に無害な水溶性液体が用いられる。
【0067】
配線基板74の上面に位置する芯材80の水平露出部分には、ヒータ82が巻き回されている。ヒータ82は、ニクロム線、白金線等の金属線であり、例えば線径0.2~0.4mmのヒータ線を芯材80にコイル状に巻き回し、例えばコイル内径は1.0~3.0mmでコイル長さは10mm以下としている。
【0068】
ヒータ82は、コイル両端が配線基板74に起立した一対のヒータ支持ポスト84にネジ84aにより固定支持され、ヒータ支持ポスト84を介してコイル両端が配線基板74の配線パターンに電気的に接続され、更に、リード線50を介して制御部36に接続される。
【0069】
図4(C)に示すように、電動ファン34は、中央部にモータが内蔵されたハブ34a、ハブ34aから放射状にファン34bが配置されている。本体ケース24の底板部24aには、電動ファン34のハブ34aに対面する位置に制御部36が配置され、電動ファン34のファン34bに対面する位置に吸気口38が形成されている。
【0070】
図5は、本発明による装置本体の第一実施形態において、背の高い煙感知器を試験する場合の気流経路を示した説明図であり、装置本体12の構造は、図3に示す実施形態と同じであるが、図5に示す試験状態では、背の高い煙感知器200の検煙部202と隔壁26が接近しているため、整流板46は、ローラ46bが煙感知器100の検煙部102に上から押され、バネ46aの付勢に抗して倒伏している。
【0071】
この状態で、感知器試験部28には、煙溜め部30から連通口40及び煙感知器200の検煙部202を経由して排気口42の外部に至る気流経路86が形成される。発煙部32から放出された煙は、電動ファン34により発生した気流68に乗って連通口40に向けて搬送され、連通口40から気流経路86を通って検煙部202に達し、煙感知器200を試験発報させた後に排気口42から排出される。
【0072】
本実施形態では、整流板46の先端部にローラ46bを備え、煙感知器100の検煙部102に上から押された際に円滑に回動するように、また、検煙部102の底面を傷つけないようにしているが、ローラ46bを省略して、整流板46の先端部を回動軸に並行に延びる半円柱状に形成するようにしてもよい。
【0073】
[煙感知器試験装置による試験作業]
煙感知器試験装置10を使用した煙感知器100の動作試験は、図1及び図3に示すように整流板46が起立した状態で行われる。作業者がリモコン装置20のモードスイッチ20aにより試験モードを選択した状態で実行ボタン20bを操作すると、試験モードの実行を指示された制御部36は、発煙部32のヒータ82に通電して発煙させる。
【0074】
制御部36は、作業者が装置本体12を煙感知器100に近づけた場合や押し当てた場合の近接センサ60の検知信号に基づき、又は作業者の実行ボタン20bの操作に基づき、電動ファン34を起動して発煙部32から放出された煙を、気流経路66を経由して煙溜め部30から煙感知器100の検煙部102に搬送する。このとき、煙感知器100が正常に動作すれば試験発報し、試験発報がなければ煙感知器100が異常であると判断される。
【0075】
その後、次の煙感知器100の動作試験を行う場合は、作業者がリモコン装置20の実行ボタン20bを操作すると、制御部36は、ヒータ82への通電を維持して電動ファン34を停止する。この場合、発煙部32は引き続き煙を放出し、煙溜め部30に次の動作試験に必要な煙が溜まった状態となる。作業者が次の煙感知器100の設置場所に移動して、動作試験を開始するときには、上記の手順を再度実行する。
【0076】
次の煙感知器100の動作試験を行わない場合は、作業者がリモコン装置20のモードスイッチ20aにより排煙モードを選択した状態で実行ボタン20bを操作すると、制御部36は、電動ファン34の作動を維持してヒータ82への通電を停止する。この場合、煙溜め部30及び感知器試験部28に滞留した煙は、気流経路66を経由して排気口42から排出される。
【0077】
背の高い煙感知器200を動作試験する場合は、図5に示すように整流板46が倒伏した状態で行われる。他の作業は、背の低い煙感知器100の動作試験と同じであり、発煙部32から放出された煙を、気流経路86を経由して煙溜め部30から煙感知器100の検煙部102に搬送する。このとき、煙感知器200が正常に動作すれば試験発報し、試験発報がなければ煙感知器200が異常であると判断される。
【0078】
上記の試験作業において、制御部36は、電動ファン34の起動や停止を近接センサ60の検知信号や、リモコン装置20の実行ボタン20bの操作に基づいて行っているが、他の方法でも構わない。
【0079】
例えば、所定の発煙量になるようにヒータ82の加熱温度を調整し、この発煙量により煙溜め部30に煙感知器100、200の試験が可能な量の煙が溜まる時間経過後に電動ファン34を起動させるようにしてもよい。
【0080】
また、煙溜め部30の煙濃度を測定する煙濃度計を備えている場合は、ヒータ82の通電後に煙感知器100、200の試験が可能な煙濃度に達した後に電動ファン34を起動させるようにしてもよい。
【0081】
また、近接センサ60により、装置本体12が天井や煙感知器100、200に近づいたことを検出したときに、ヒータ82の通電により発煙部32を起動して発煙させ、更に近づいて煙感知器100、200の検煙部102、202を覆ったことを検出したら、電動ファン34を起動するようにしてもよく、装置本体12が天井や煙感知器100、200から遠ざかったことを検出したときには、発煙部32と電動ファン34を停止するようにしてもよい。これにより、煙感知器試験装置10をリモコン装置20による操作不要に構成することができる。
【0082】
[装置本体の他の実施形態]
図6は、本発明による煙感知器試験装置の第二実施形態を試験状態で示した説明図であり、第一実施形態の整流板46に替えて蛇腹状の伸縮体88を備えている点を除く構造は、第一実施形態と同じである。図6(A)は、背の低い煙感知器100を試験する場合を示し、図6(B)は、背の高い煙感知器200を試験する場合を示している。
【0083】
本実施形態において、蛇腹状の伸縮体88は、隔壁26に折り畳まれる短縮方向と煙感知器100、200側に伸ばされる伸長方向、すなわち矢印Eで示す上下方向に伸縮可能であり、図示していないバネ部材により伸長方向に付勢され、試験状態で煙感知器100、200の検煙部102、202に当接している。
【0084】
図6(A)に示すように、背の低い煙感知器100を試験する場合には、図3の第一実施形態と同様に、感知器試験部28には、煙溜め部30から連通口40、本体ケース24と伸縮体88とで形成される流路64及び煙感知器100の検煙部102を経由して排気口42に至る気流経路66が形成される。
【0085】
発煙部32から放出された煙は、電動ファン34により発生した気流68に乗って連通口40に向けて搬送され、連通口40から気流経路66を通って検煙部102に達し、煙感知器100を試験発報させた後に排気口42から排出される。
【0086】
また、図6(B)に示すように、背の高い煙感知器200を試験する場合には、図5の第一実施形態と同様に、感知器試験部28には、煙溜め部30から連通口40及び煙感知器200の検煙部202を経由して排気口42の外部に至る気流経路86が形成される。
【0087】
発煙部32から放出された煙は、電動ファン34により発生した気流68に乗って連通口40に向けて搬送され、連通口40から気流経路86を通って検煙部202に達し、煙感知器200を試験発報させた後に排気口42から排出される。
【0088】
図7は、本発明による煙感知器試験装置の第三実施形態を試験状態で示した説明図であり、後述する本体ケース24の高さ、ゴムパッキン58A、58B及び連通調整板90を除く構造は、第一実施形態及び第二実施形態と同じである。図7(A)は、背の低い煙感知器100を試験する場合を示し、図7(B)は、背の高い煙感知器200を試験する場合を示している。
【0089】
第一実施形態及び第二実施形態では、本体ケース24の高さは、背の高い煙感知器200に適応するように設定されているが、本実施形態においては、背の低い煙感知器100に適応するように設定され、第一実施形態の整流板46や第二実施形態の伸縮体88に相当する構造(整流部)を省略している。
【0090】
背の低い煙感知器100の試験時には、図7(A)に示すように、第一実施形態及び第二実施形態と同じ高さのゴムパッキン58Aを装着し、感知器試験部28には、煙溜め部30から連通口40及び煙感知器100の検煙部102を経由して排気口42の外部に至る気流経路92が形成される。なお、本実施形態では、第一実施形態及び第二実施形態でゴムパッキン58に配置されていた近接センサ60は省略されている。
【0091】
背の高い煙感知器200に試験時には、図7(B)に示すように、ゴムパッキン58Aに替えて、筒状の試験部伸長アダプタとして機能する、より背の高いゴムパッキン58Bを装着し、感知器試験部28には、図7(A)と同様に、煙溜め部30から連通口40及び煙感知器100の検煙部102を経由して排気口42の外部に至る気流経路92が形成される。
【0092】
また、第一実施形態及び第二実施形態の排気調整板48に替えて、連通口40を通過する煙の流量を調整するための連通調整板90が設置されている。連通調整板90は、連通口40の開口面積を変化させるように、矢印Fで示す水平方向に移動可能であり、適切な排気量となる位置にナット90aで固定される。
【0093】
図8は、本発明による煙感知器試験装置の第四実施形態を試験状態で示した説明図であり、ゴムパッキン58A、58Bに替えて伸縮フード94を装着した点、電池パック22と制御部36を本体ケース24の外部に配置している点、連通調整板90を省略した点、及び吸気口38の位置が異なる点を除く構造及び形成される気流経路92については、図7に示す第三実施形態と同じである。
【0094】
筒状の試験部伸長アダプタとして機能する伸縮フード94は、伸縮性を有する蛇腹状の構造となっており、無負荷では伸長限界の高さを維持するが、背の低い煙感知器100を試験する際には、図8(A)に示すように、装置本体12が天井面や煙感知器100の取付ベースに押し当てられることで短縮状態となり、背の高い煙感知器200を試験する際には、図8(B)に示すように、伸長限界よりも低い伸長状態となることで、感知器試験部28の開口と煙感知器100、200とを密着させ、自動的に感知器試験部28を密閉することで、試験部伸長アダプタを付替え不要にすることができる。
【0095】
また、図8に示すように、電池パック22及び制御部36は、本体ケース24の下方に着脱自在に装着された拡張ケース96内の回路基板98に配置されている。発煙部32からのケーブル50及び電動ファン34からのケーブル52は、回路基板98のコネクタ98aにより接続されているため、電池パック22を交換する場合の拡張ケース96の取り外しや取り付けを容易に行うことができる。
【0096】
本実施形態においては、電池パック22により電源供給される発煙部32、電動ファン34及び制御部36が、電池パック22が収納されている装置本体12側(本体ケース24及び拡張ケース96内)に配置されており、第一乃至第三実施形態のように、支持棒14側から本体ケース24側へ通された電源ケーブル54が存在しないため、支持棒14に対する装置本体12の傾斜動作を妨げるような因果がなく、更なる作業効率の向上が可能となる。
【0097】
[本発明の変形例]
(吸気口)
第一乃至第三実施形態において、吸気口38は、本体ケース24の底板部24aに形成されているが、制御部36の形状や位置等に応じて、第四実施形態と同様に、本体ケース24の筒状部の下端側に形成するようにしても構わない。また、吸気口38は、本体ケース24の底板部24aに円形穴が複数(4個)形成されているが、形状や個数は任意である。
【0098】
(開口面積)
第一及び第二実施形態では排気口42、第三実施形態では連通口40の開口面積を可変としているが、吸気口38の開口面積を可変としてもよく、吸気口38、連通口40及び排気口42の1又は複数を可変としてもよい。また、吸気口38、連通口40及び排気口42の何れも、開口面積を固定としても構わない。
【0099】
(排気調整板)
第一及び第二実施形態において、排気調整板48は、上下方向に移動して開口面積を可変としているが、他の方式、例えば左右方向に移動する方式でもよい。
【0100】
(近接センサ)
第一及び第二実施形態において、近接センサ60は、ゴムパッキン58側に設置されているが、本体ケース24側に設置するようにしても構わない。また近接センサ60に替えて接触式スイッチを設置するようにしてもよい。
【0101】
(整流板)
第一実施形態において、整流板46は、起立する方向に付勢しておき、背の高い煙感知器200の試験時に、装置本体12を煙感知器200に押し当てる際に検煙部202に押されて自動的に倒伏する方式であるが、別の形式を用いてもよい。
【0102】
例えば、バネに接続された複数の連結アームにより立体的に倒伏する整流板としてもよく、また、整流板を曲げ変形可能且つ復元可能な素材で構成して斜め方向に起立させておき、背の高い煙感知器200の試験時に、装置本体12を煙感知器200に押し当てる際に検煙部202に押されて自動的に曲げ変形され、煙感知器200が離れた際には元の形状に戻るようにしてもよい。
【0103】
また、バネ等による起立方向の付勢はせずに、作業者が隔壁26に折り畳んだり起立させたりする方式や着脱式にしてもよい。
【0104】
(試験部伸長アダプタ)
第三実施形態(図7)において、背の高い煙感知器200の試験時に、試験部伸長アダプタとして機能する、背の高いゴムパッキン58Bを装着しているが、背の低いゴムパッキン58Aと本体ケース24との間に、専用の試験部伸長アダプタとして筒状部材を装着するようにしてもよい。
【0105】
第四実施形態(図8)においては、付替え不要の試験部伸長アダプタとして、蛇腹状の伸縮フード90を装着しているが、背の低い煙感知器100を試験する際には短縮状態となり、背の高い煙感知器200を試験する際には伸長状態となる構造であれば他の方式、例えば、スライドする複数の筒状部材により構成される方式でもよい。
【0106】
(発煙部)
上記何れの実施形態においても、発煙部32は、液体の発煙剤を気化させて煙を発せさせる方式であるが、他の方式でもよい。
【0107】
(その他)
上記の実施形態において、取付状態の煙感知器に対して試験を行う煙感知器試験装置として記載しているが、感知器試験部については、煙感知器を取り外して専用の試験空間に設置して試験させる、例えば煙濃度に対する感度試験を行うような煙感知器試験装置として採用してもよい。
【0108】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0109】
10:煙感知器試験装置
12:装置本体
14:支持棒
16:支持部材
18:グリップ
20:リモコン装置(遠隔操作部)
22:電池パック(電池部)
24:本体ケース
26:隔壁
28:感知器試験部
30:煙溜め部
32:発煙部
34:電動ファン(送風部)
36:制御部
38:吸気口
40:連通口(煙流入口)
42:排気口
44:煙流経路
46:整流板
48:排気調整板
50、52、62:リード線
54:電源ケーブル
56:軸支部
58:ゴムパッキン
60:近接センサ
64:流路
66、86、92:気流経路
68:気流
70:発煙剤
72:容器
74:配線基板
76:発煙剤注入口キャップ
78:液漏れ防止プラグ
80:芯材
82:ヒータ
84:ヒータ支持ポスト
88:伸縮体
90:連通調整板
94:伸縮フード
96:拡張ケース
98:回路基板
100、200:煙感知器
102、202:検煙部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8