(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】表面保護基材付き封止材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221020BHJP
B32B 3/14 20060101ALI20221020BHJP
B32B 3/24 20060101ALI20221020BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20221020BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221020BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20221020BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20221020BHJP
C09K 3/10 20060101ALN20221020BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B3/14
B32B3/24 Z
B32B3/30
B32B27/32 Z
C09J7/40
E04F13/08 Y
C09K3/10 G
C09K3/10 N
C09K3/10 Q
C09K3/10 R
C09K3/10 Z
(21)【出願番号】P 2018081982
(22)【出願日】2018-04-23
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 学
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-094190(JP,A)
【文献】特開2017-193952(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056297(WO,A1)
【文献】特開平05-171702(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098647(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C09K 3/10 - 3/12
C09J 7/00 - 7/50
E04F 13/00 - 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化型の半固形状の封止材と、
前記封止材の両方の貼付面の内の少なくとも一方の貼付面に、剥離可能に備えるフィルム状の表面保護基材と、
を備え、
前記貼付面に備える前記表面保護基材の少なくとも1つを、
ポリエチレン製の伸縮性基材とし、
前記封止材の両方の貼付面にそれぞれ前記表面保護基材を備え、
一方の前記表面保護基材のみを前記伸縮性基材とし、
他方の前記表面保護基材を前記伸縮性基材より伸縮しない基材とする表面保護基材付き封止材。
【請求項2】
前記伸縮性基材は、複数枚の短冊状の基材を隣接する基材間で一部重なるように配置されている基材であって、前記短冊状の基材の配列方向に湾曲容易に構成されている請求項
1に記載の表面保護基材付き封止材。
【請求項3】
前記伸縮性基材は、蛇腹状の第1凹凸を有する基材であって、前記第1凹凸の配列方向に湾曲容易に構成されている請求項
1に記載の表面保護基材付き封止材。
【請求項4】
前記封止材は、前記伸縮性基材の前記第1凹凸に接する第2凹凸を備える請求項
3に記載の表面保護基材付き封止材。
【請求項5】
前記伸縮性基材は、一方向にスリットを複数個並列配置していて、前記スリットの並列配置方向に湾曲容易に構成されている請求項
1に記載の表面保護基材付き封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔、隙間あるいは窪み等をシールする封止材の両貼付面に表面保護基材を備える表面保護基材付き封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、未硬化の状態で自立した形状に賦形された封止材が知られている(例えば特許文献1を参照)。この種の封止材は、液状の接着剤とは異なり、使用直後から硬化までの間に液だれの問題が無く、またチューブ等の容器から適量の液状物を吐出させる手間も無い。このため、上記封止材は、例えばコンクリート製の建造物の施工時に生じる隙間をシールし、あるいは当該建造物の経年劣化に伴って発生する孔やヒビをシールするのに好適に用いられている。
【0003】
上記封止材の代表例は、湿気硬化型のシリコーンゴムであり、シート状あるいはそれより幅の狭い紐状に成形されている。封止材は、空気に晒されると、空気中の水分の作用にて硬化する性質を持っている。上記封止材は、一般的に、その両貼付面にフィルム状の表面保護基材を備える。表面保護基材を両面に備える封止材は、保存時には防湿袋に封入されており、使用時に防湿袋から取り出される。上記表面保護基材および防湿袋は、いずれも、封止材が湿気を吸収して硬化するのを防止する機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
封止材をコンクリート等の被着面に貼り付ける際には、封止材の片面側の表面保護基材を剥がし、他面側の表面保護基材を付けたまま、封止材の上記片面側をコンクリート等の被着面に貼り付けるのが一般的である。封止材の硬化後、残りの表面保護基材は剥がされる。このような貼り付け工程は、封止材の貼り付けから硬化までの間に、塵や埃が封止材に付着するのを防止するのに役立つ。
【0006】
しかし、上記のような使用に適した封止材には、さらなる改良が求められている。U字溝のような曲面を有する部位に封止材を貼り付ける際に、封止材の表面に残している表面保護基材の剛性が高いために、曲面を有する部位に封止材を密着させることが難しい場合がある。以下、その問題について図面を参照して説明する。
【0007】
図7は、従来の表面保護基材付き封止材の断面図(7A)および当該封止材の片面の表面保護基材を残したまま封止材の露出面を被着体の曲面に貼り付けた状態の断面図(7B)をそれぞれ示す。
【0008】
表面保護基材付き封止材100は、(7A)に示すように、半固形でシート状に成形された封止材110と、封止材110の両方の貼付面110a,110aにフィルム上の表面保護基材111,111を備えた構造を有する。表面保護基材111は、従来から、延伸ポリプロピレン(OPP)という伸びにくく剛性の高い樹脂から構成されている。封止材110を被着面Cに貼り付ける際には、封止材110の一方の貼付面110aから表面保護基材111を剥がして、もう一方の貼付面110aの表面保護基材111を残したまま、露出した方の貼付面110aを湾曲した被着面Cに貼り付ける。この際に、封止材110の外側の面に残した表面保護基材111は、それ自体が伸びにくい材質であるために、封止材110の伸びの抵抗となりやすい。その結果、(7B)に示すように、封止材110の露出した貼付面110aと被着面Cとの間に隙間Gを生じるリスクがある。
【0009】
本発明は、上記改良の要求に対応するためになされたものであり、曲面に封止材を貼付する際に接着界面に隙間の生じにくい表面保護基材付き封止材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)前記目的を達成するための一実施形態に係る表面保護基材付き封止材は、湿気硬化型の半固形状の封止材と、封止材の両方の貼付面の内の少なくとも一方の貼付面に、剥離可能に備えるフィルム状の表面保護基材とを備え、貼付面に備える表面保護基材の少なくとも1つを、平面視にて同面積で同厚さの延伸ポリプロピレン製の基材よりも伸縮容易な伸縮性基材としている。
【0011】
(2)別の実施形態に係る表面保護基材付き封止材では、好ましくは、上述の伸縮性基材は、ポリエチレン製の基材である。
【0012】
(3)別の実施形態に係る表面保護基材付き封止材は、好ましくは、上述のいずれかの表面保護基材付き封止材において、封止材の両方の貼付面にそれぞれ表面保護基材を備え、一方の表面保護基材のみを伸縮性基材とし、他方の表面保護基材を伸縮性基材より伸縮しない基材とする。
【0013】
(4)別の実施形態に係る表面保護基材付き封止材では、好ましくは、上述のいずれかの表面保護基材付き封止材における伸縮性基材は、複数枚の短冊状の基材を隣接する基材間で一部重なるように配置されている基材であって、短冊状の基材の配列方向に湾曲容易に構成されている。
【0014】
(5)別の実施形態に係る表面保護基材付き封止材では、好ましくは、上述のいずれかの表面保護基材付き封止材における伸縮性基材は、蛇腹状の第1凹凸を有する基材であって、第1凹凸の配列方向に湾曲容易に構成されている。
【0015】
(6)別の実施形態に係る表面保護基材付き封止材では、好ましくは、上述の封止材は、伸縮性基材の第1凹凸に接する第2凹凸を備える。
【0016】
(7)別の実施形態に係る表面保護基材付き封止材では、好ましくは、上述のいずれかの表面保護基材付き封止材における伸縮性基材は、一方向にスリットを複数個並列配置していて、スリットの並列配置方向に湾曲容易に構成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、曲面に封止材を貼付する際に接着界面に隙間の生じにくい表面保護基材付き封止材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る表面保護基材付き封止材の斜視図(1A)および該表面保護基材付き封止材を(1A)中のA-A線で切断した際のA-A線断面図(1B)をそれぞれ示す。
【
図2】
図2は、
図1の表面保護基材付き封止材から伸縮性基材以外の表面保護基材を剥がして、その剥がした貼付面を、曲面部位としての被着面Cに貼り付けた状態の断面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る表面保護基材付き封止材の(1B)と同様の断面図(3A)および当該表面保護基材付き封止材から伸縮性基材以外の表面保護基材を剥がして、その剥がした貼付面を、曲面部位としての被着面Cに貼り付けた状態の断面図(3B)をそれぞれ示す。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施形態に係る表面保護基材付き封止材の(1B)と同様の断面図(4A)および当該表面保護基材付き封止材から伸縮性基材以外の表面保護基材を剥がして、その剥がした貼付面を、曲面部位としての被着面Cに貼り付けた状態の断面図(4B)をそれぞれ示す。
【
図5】
図5は、本発明の第4実施形態に係る表面保護基材付き封止材の平面図(5A)、(1B)と同様の断面図(5B)および当該表面保護基材付き封止材から伸縮性基材以外の表面保護基材を剥がして、その剥がした貼付面を、曲面部位としての被着面Cに貼り付けた状態の断面図(5C)をそれぞれ示す。
【
図6】
図6は、本発明の第5実施形態に係る表面保護基材付き封止材の斜視図およびその一部Dの拡大図を示す。
【
図7】
図7は、従来の表面保護基材付き封止材の断面図(7A)および当該封止材の片面の表面保護基材を残したまま封止材の露出面を被着体の曲面に貼り付けた状態の断面図(7B)をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、当該各実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る表面保護基材付き封止材について説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態に係る表面保護基材付き封止材の斜視図(1A)および該表面保護基材付き封止材を(1A)中のA-A線で切断した際のA-A線断面図(1B)をそれぞれ示す。なお、本明細書において、「平面視」とは、封止材の最も広い面積を有する面の真上から封止材を見る状況を意味する。
【0022】
第1実施形態に係る表面保護基材付き封止材1は、湿気硬化型の半固形状の封止材10と、封止材10の両方の貼付面10a,10aに、剥離可能に備えるフィルム状の表面保護基材11,12と、を備える。表面保護基材11,12は、封止材10が空気中の湿気に接触するのを低減する役割を有する。使用前に封止材10が硬化する事態を防止するためである。表面保護基材11,12は、好ましくは、平面視にて、封止材10よりも大面積で封止材10を完全に覆うことのできる基材である。
【0023】
貼付面10a,10aに備える表面保護基材11,12の内の表面保護基材11は、延伸ポリプロピレン(以後、「OPP」)製の基材である。また、表面保護基材12は、平面視にて同面積で同厚さのOPP製の基材よりも伸縮容易な伸縮性基材である。伸縮性基材は、この実施形態では、OPPよりも柔軟で、伸縮性に富み、剛性の低いポリエチレン製の基材である。すなわち、表面保護基材付き封止材1は、封止材10の両方の貼付面10a,10aにそれぞれ表面保護基材11,12を備え、一方の表面保護基材12のみを伸縮性基材とし、他方の表面保護基材11を伸縮性基材より伸縮しない基材とする。なお、以後、表面保護基材12を「伸縮性基材12」と称する。また、この実施形態および以後の実施形態では、表面保護基材11と伸縮性基材とは、平面視にて同面積の矩形の形状を有するが、異なる面積で異なる形状でも良い。
【0024】
封止材10は、シート形状に賦形された半固形状(半硬化状ともいう)の湿気硬化型の封止材である。その材料または成分については特に制約はないが、一例として、以下の縮合反応型の硬化性のシリコーン系組成物若しくは変性シリコーン系組成物を挙げることができる。変性シリコーン系組成物は、一例としては、ポリエーテル系オリゴマーの分子末端をシリコーンで変性した組成物をいう。変性シリコーン系の封止材は、シリコーン系封止材と同様に、湿気によって硬化反応を生じる。なお、縮合反応型のシリコーン系または変性シリコーン系の組成物は、1液型縮合硬化式のシリコーンシーラント、または1液型縮合型の変性シリコーンシーラントと称しても良い。シール層10は、水分を吸収し、脱オキシム反応、脱アルコール反応、あるいは脱酢酸反応などを経て硬化する。封止材10を構成する上記の硬化性組成物の内の好適な例は、主に以下の成分から構成される。
【0025】
(a)オルガノポリシロキサン
縮合反応型の硬化性組成物の主剤成分であり、下記の化学式(1)または化学式(2)により表されるジオルガノポリシロキサンである。
【0026】
【0027】
【0028】
上記の化学式(1),(2)において、Rは一価の炭化水素基である。Rとしては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2-エチルブチル基、オクチル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルケニル基(ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、アリル基等)、アリール基(フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジフェニル基等)、アラルキル基(ベンジル基、フェニルエチル基等)、および、上記炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の少なくとも一部をハロゲンやシアノ基等で置換したもの(クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、2-シアノエチル基、3-シアノプロピル基等)から選択される一または複数の炭化水素基を挙げることができる。Rの炭素数としては、1~12であることが好ましく、1~10であることが一層好ましい。上記の化学式(1),(2)においては、Aは酸素原子または-(CH2)m-(mは1~8)で表されるポリメチレン基(メチレン基を含む)である。Aは、酸素原子またはエチレン基であることが好ましい。
【0029】
上記の化学式(1),(2)において、nは(a)成分の25℃における動粘度を100~1000000cm2/sの範囲内とする任意の数である。当該動粘度は、500~500000cm2/sの範囲内とすることが一層好ましい。
【0030】
上記の化学式(1),(2)において、Bは加水分解性基である。Bとしては、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、ケトオキシム基(ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基等)、アルケニルオキシ基(イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等)を挙げることができる。なお、上記の化学式(1),(2)におけるxは2または3である。
【0031】
上記(a)成分は、公知の方法(例えば、環状シロキサンまたは線状オリゴマーと酸触媒または塩基触媒とを用いた平衡反応による方法)により製造することができる。なお、(a)成分であるジオルガノポリシロキサンに分岐構造を導入する場合には、常法として、重合中にSiO3/2単位およびSiO4/2単位のうち少なくとも一方を含むシランまたはシロキサンをジオルガノポリシロキサンがゲル化しない程度に添加する方法を用いることができる。(a)成分については、汚れを低減するため、洗浄等により低分子シロキサンを除去してから用いることが好ましい。
【0032】
(b)架橋剤
架橋剤としては、加水分解性基を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するシラン、または、当該シランの部分加水分解縮合物を用いる。加水分解性基の例としては、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ケトオキシム基(ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基等)、アルケニルオキシ基(イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等)、アミノ基(N-ブチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基等)、アミド基(N-メチルアセトアミド基等)を挙げることができる。これらの中では、アルコキシ基、ケトオキシム基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基を用いることが好ましい。架橋剤の配合量は、(a)成分100質量部に対して1~50質量部の範囲内にあることが好ましく、2~30質量部の範囲内にあることが一層好ましく、5~20質量部の範囲内にあることがより一層好ましい。
【0033】
(c)硬化触媒
硬化触媒は必須ではないが、硬化触媒を用いることにより硬化を促進することができる。硬化触媒の例としては、アルキル錫エステル化合物(ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート等)、チタン酸エステルまたはチタンキレート化合物(テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等)、その他の適切な有機金属化合物(ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛-2-エチルオクトエート、鉄-2-エチルヘキソエート、コバルト-2-エチルヘキソエート、マンガン-2-エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物等)、アミノアルキル基置換アルコキシシラン(3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等)、アミン化合物またはその塩(ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン等)、第4級アンモニウム塩(ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等)、アルカリ金属の低級脂肪酸塩(酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸リチウム等)、のアルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジアルキルヒドロキシルアミン(ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等)、グアニジル基を有するシランまたはシロキサン(テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等)を挙げることができる。これらは、1種のみで用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。硬化触媒の配合量は、(a)成分100質量部に対して0~20質量部の範囲内にあることが好ましく、0.001~10質量部の範囲内にあることが一層好ましく、0.01~5質量部の範囲内にあることがより一層好ましい。
【0034】
(d)充填剤
充填剤は、必須ではないが、補強等の目的で好適に用いることができる。充填剤の例としては、補強剤(ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、これらのシリカの表面を有機珪素化合物で疎水化処理したシリカ、石英粉末、タルク、ゼオライト、ベントナイト等)、繊維質充填剤(アスベスト、ガラス繊維、有機繊維等)、塩基性充填剤(炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、セライト等)を挙げることができる。これらの中では、シリカ、炭酸カルシウムおよびゼオライトを用いることが好ましく、表面を疎水化処理したヒュームドシリカおよび炭酸カルシウムを用いることが一層好ましい。上記充填剤の配合量は、目的や充填剤の種類により選択することができるが、(a)成分に対して1~90体積%の範囲内にあり、5~60体積%の範囲内にあることが好ましい。
【0035】
(e)接着性付与成分
接着性付与成分は必須ではないが好適に用いられる。接着性付与成分の例としては、アミノ基含有オルガノアルコキシシラン(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシ基含有オルガノアルコキシシラン(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、メルカプト含有オルガノアルコキシシラン(γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等)、アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物を挙げることができる。接着性付与成分の配合量は、(a)成分100質量部に対して0.1~5質量部の範囲内にあることが好ましい。
【0036】
図2は、
図1の表面保護基材付き封止材から伸縮性基材以外の表面保護基材を剥がして、その剥がした貼付面を、曲面部位としての被着面Cに貼り付けた状態の断面図を示す。
【0037】
貼付面10aは、平滑な面である。封止材10を被着面Cに貼り付ける際には、OPP製の表面保護基材11を封止材10から剥がして露出した貼付面10aを被着面Cのカーブに沿って湾曲させる。伸縮性基材12は、封止材10に付着したままである。封止材10は、半硬化状態のシート成形品であるため、被着面Cに沿って変形可能である。伸縮性基材12は、表面保護基材11と異なり、柔軟性および伸縮性に富むため、封止材10の変形に追随して湾曲できる。さらに、伸縮性基材12は、表面保護基材11と異なり低剛性であるため、平滑な板の状態に戻る反力は小さい。このため、伸縮性基材12は、封止材10を被着面Cから剥がすほどの力を持たない。したがって、封止材10を被着面Cに密着若しくは密着に近い状態に保持できる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る表面保護基材付き封止材について説明する。第2実施形態において、第1実施形態と共通する部分については、重複説明を省略する。
【0039】
図3は、本発明の第2実施形態に係る表面保護基材付き封止材の(1B)と同様の断面図(3A)および当該表面保護基材付き封止材から伸縮性基材以外の表面保護基材を剥がして、その剥がした貼付面を、曲面部位としての被着面Cに貼り付けた状態の断面図(3B)をそれぞれ示す。
【0040】
第2実施形態に係る表面保護基材付き封止材1aは、伸縮性基材12aを除き、第1実施形態に係る表面保護基材付き封止材1と共通した構造を有する。このため、封止材10および表面保護基材11の各説明については、第1実施形態の説明をかりて、ここでは重複した説明を省略する。
【0041】
伸縮性基材12aは、複数枚の短冊状の基材15を、隣接する基材15,15間で一部重なるように配置されている基材であって、短冊状の基材15の配列方向、すなわち(3A)の左右方向に湾曲容易に構成されている。伸縮性基材12aは、複数枚の短冊状の基材15から構成されている。短冊状の基材15は、その一部を封止材10の貼付面10aに接するように傾斜させて、封止材10に剥離可能に備えられている。
【0042】
伸縮性基材12aは、一枚のフィルムではなく、複数枚の短冊状の基材15を一部重複させて構成されている。このため、(3B)に示すように、封止材10の変形に追随して湾曲しやすい。伸縮性基材12aは、平面視にて同面積で同厚さの延伸ポリプロピレン製の基材よりも伸縮容易であればその構成材料については特に制約はなく、例えばOPPでも良いが、好ましくはポリエチレンである。
【0043】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る表面保護基材付き封止材について説明する。第3実施形態において、前述の各実施形態と共通する部分については、重複説明を省略する。
【0044】
図4は、本発明の第3実施形態に係る表面保護基材付き封止材の(1B)と同様の断面図(4A)および当該表面保護基材付き封止材から伸縮性基材以外の表面保護基材を剥がして、その剥がした貼付面を、曲面部位としての被着面Cに貼り付けた状態の断面図(4B)をそれぞれ示す。
【0045】
第3実施形態に係る表面保護基材付き封止材1bは、伸縮性基材12bを除き、前記各実施形態に係る表面保護基材付き封止材1,1aと共通した構造を有する。このため、封止材10および表面保護基材11の各説明については、第1実施形態または第2実施形態の説明をかりて、ここでは重複した説明を省略する。
【0046】
伸縮性基材12bは、蛇腹状の第1凹凸16を有する基材であって、第1凹凸16の配列方向、すなわち(4A)の左右方向に湾曲容易に構成されている。また、封止材10は、伸縮性基材12bの第1凹凸16に接する第2凹凸10bを備える。すなわち、封止材10の表面保護基材11側の面は平滑な面であるが、伸縮性基材12b側の面は第2凹凸10bを備える面である。伸縮性基材12bは、封止材10の第2凹凸10bに密着するように蛇腹状に構成されている。
【0047】
伸縮性基材12bは、平滑なフィルムではなく、蛇腹状にライン上の襞を複数配置した形状を有する。封止材10の伸縮性基材12b側の貼付面も同様である。このため、(4B)に示すように、伸縮性基材12bは、封止材10の変形に追随して湾曲しやすい。伸縮性基材12bは、平面視にて同面積で同厚さの延伸ポリプロピレン製の基材よりも伸縮容易であればその構成材料については特に制約はなく、例えばOPPでも良いが、好ましくはポリエチレンである。
【0048】
変形例として、伸縮性基材12bを備える側の封止材10の貼付面は、第2凹凸10bを備えない平滑な面であっても良い。このような場合、当該平滑な面と伸縮性基材12bとの間にわずかに隙間が生じる。しかし、その隙間が過度に大きくなければ、封止材10が不本意に硬化するリスクが低いため、封止材10の使用に支障はない。
【0049】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る表面保護基材付き封止材について説明する。第4実施形態において、前述の各実施形態と共通する部分については、重複説明を省略する。
【0050】
図5は、本発明の第4実施形態に係る表面保護基材付き封止材の平面図(5A)、(1B)と同様の断面図(5B)および当該表面保護基材付き封止材から伸縮性基材以外の表面保護基材を剥がして、その剥がした貼付面を、曲面部位としての被着面Cに貼り付けた状態の断面図(5C)をそれぞれ示す。
【0051】
第4実施形態に係る表面保護基材付き封止材1cは、伸縮性基材12cを除き、前記各実施形態に係る表面保護基材付き封止材1,1a,1bと共通した構造を有する。このため、封止材10および表面保護基材11の各説明については、前記各実施形態の説明をかりて、ここでは重複した説明を省略する。
【0052】
伸縮性基材12cは、一方向(5Aでは左右方向、または長さ方向)にスリット20を複数個並列配置していて、スリット20の並列配置方向(5Aでは左右方向、または長さ方向)に湾曲容易に構成されている。スリット20は、伸縮性基材12cの幅方向(5Aでは上下方向)に細長い形状を有しており、伸縮性基材12cの幅よりも短い。スリット20の形態は、好ましくは、切り代のない形態、すなわち、伸縮性基材12cを曲げていない状態ではスリット20の対向切断面が接触している形態である。未使用時に、封止材10に空気中の湿気が接触しにくくするためである。スリット20の配置は、一方向に配列していれば、どのように伸縮性基材12cに形成されていても良い。例えば、伸縮性基材12cの幅方向に一本だけのスリット20を形成し、伸縮性基材12cの長さ方向に一列に配置することもできる。また、伸縮性基材12cの幅方向に二本のスリット20を直列に形成し、それぞれ伸縮性基材12cの長さ方向に配列して合計二列に配置することもできる。二列を三列以上にしても良い。
【0053】
伸縮性基材12cは、複数のスリット20を有する基材であって、伸縮性基材12cの表面上においてスリット20の長さ方向と直交する方向に湾曲容易に構成されている。また、封止材10の表面保護基材11側および伸縮性基材12c側の両面は平滑な面である。伸縮性基材12cは、(5C)に示すように、封止材10の変形に追随して湾曲しやすい。伸縮性基材12cは、平面視にて同面積で同厚さの延伸ポリプロピレン製の基材よりも伸縮容易であればその構成材料については特に制約はなく、例えばOPPでも良いが、好ましくはポリエチレンである。
【0054】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る表面保護基材付き封止材について説明する。第5実施形態において、前述の各実施形態と共通する部分については、重複説明を省略する。
【0055】
図6は、本発明の第5実施形態に係る表面保護基材付き封止材の斜視図およびその一部Dの拡大図を示す。
【0056】
第5実施形態に係る表面保護基材付き封止材1dは、湿気硬化型の半固形状の封止材10と、封止材10の両方の貼付面の内の一方の貼付面に、剥離可能に備えるフィルム状の表面保護基材12(伸縮性基材12)と、を備える。伸縮性基材12は、第1実施形態と同様、平面視にて同面積で同厚さの延伸ポリプロピレン製の基材よりも伸縮容易な基材である。表面保護基材付き封止材1dは、一方の貼付面のみに伸縮性基材12を備え、伸縮性基材12を外側にするように巻いた形態を有する。伸縮性基材12を備えていない貼付面は、当該形態において伸縮性基材12に接しているため、空気中の湿気に晒されるリスクは低い。
【0057】
伸縮性基材12は、好ましくはポリエチレン製の基材であり、伸縮性に富む。このため、表面保護基材付き封止材1dを使用する際には、第1実施形態と同様、伸縮性基材12は封止材10の湾曲変形に追随して変形しやすく、封止材10に対して、封止材10を水平状態に戻す方向の力を生じさせにくい。したがって、封止材10は、湾曲した被着面Cに沿って、隙間を生じさせない若しくは隙間を生じさせたとしてもわずかな隙間に留まる状況で固定される。
【0058】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されることなく、種々変形を施して実施可能である。
【0059】
例えば、上述の各実施形態では、表面保護基材付き封止材1,1a,1b,1c,1d(「表面保護基材付き封止材1等」という)は、その貼付面の両面に伸縮性基材12,12a,12b,12c(「伸縮性基材12等」という)を備えていない。しかし、両方の貼付面に伸縮性基材12等を備えても良い。その際に、両方の貼付面に同じ伸縮性基材12等を備えても良く、あるいは互いに異なる種類の伸縮性基材12等を備えても良い。
【0060】
第5実施形態に係る表面保護基材付き封止材1dの伸縮性基材12に代えて、第2~第4実施形態における伸縮性基材12a,12b,12cを用いても良い。第1~第5の各実施形態の構成要素は、互いに組み合わせることのできない場合を除き、任意に組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えば、封止材として用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
1,1a,1b,1c,1d・・・表面保護基材付き封止材、10・・・封止材、10a・・・貼付面、10b・・・第2凹凸、11・・・表面保護基材、12,12a,12b,12c・・・伸縮性基材(表面保護基材の一例)、15・・・短冊状の基材、16・・・第1凹凸、20・・・スリット。