(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】レンズ特性測定装置及びレンズ特性測定装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/02 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
G01M11/02 B
(21)【出願番号】P 2018135145
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2017185271
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】雜賀 誠
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-275971(JP,A)
【文献】特表2010-518407(JP,A)
【文献】特開平11-125582(JP,A)
【文献】特開2016-157141(JP,A)
【文献】特開2001-037761(JP,A)
【文献】特開2014-167443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/02
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検レンズの表面を線状光束で走査する走査光学系と、
前記被検レンズを透過した前記線状光束が投影されるスクリーンと、
前記被検レンズと前記スクリーンとの間の前記線状光束の光学的距離を複数設定する設定部と、
前記スクリーンに対して前記走査光学系とは反対側に設けられ、前記走査光学系により前記線状光束の走査が実行されている間、前記スクリーンの撮影を行う撮影光学系と、
前記設定部により設定される前記光学的距離ごとに、前記走査光学系による共通の走査パターンでの前記線状光束の走査と、前記撮影光学系による前記スクリーンの撮影と、を実行させる制御部と、
前記走査光学系による前記線状光束の走査速度を制御して、前記撮影光学系により撮影される前記スクリーンの撮影画像に含まれる前記線状光束による点像の数を調整する点像数調整部と、
を備えるレンズ特性測定装置。
【請求項2】
前記撮影光学系により前記光学的距離ごとに撮影された前記スクリーンの撮影画像を解析して、前記スクリーンに投影された前記線状光束の投影位置を取得する位置取得部であって、且つ前記線状光束による前記被検レンズの表面の走査位置ごとに、同一の前記走査位置を透過した前記線状光束の前記光学的距離ごとの前記投影位置を取得する位置取得部と、
前記設定部により複数設定される前記光学的距離と、前記位置取得部による前記投影位置の取得結果とに基づき、前記被検レンズの光学特性を取得する光学特性取得部と、
を備える請求項1に記載のレンズ特性測定装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記スクリーンを前記撮影光学系の光軸方向に移動自在に保持し且つ複数の前記光学的距離にそれぞれ対応した光軸方向位置に前記スクリーンを移動させる移動部であり、
前記制御部は、前記移動部により前記スクリーンが前記光軸方向位置に位置決めされるごとに、前記走査光学系による前記線状光束の走査と、前記撮影光学系による前記スクリーンの撮影と、を実行させる請求項1又は2に記載のレンズ特性測定装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記スクリーンと一体に前記撮影光学系を移動させる請求項3に記載のレンズ特性測定装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記被検レンズを透過した前記線状光束を複数の光路に分割する第1光分割部と、前記光路ごとに前記第1光分割部からの距離が異なる位置に設けられ、前記第1光分割部から前記線状光束がそれぞれ投影される複数の前記スクリーンと、を有し、
前記撮影光学系は、前記スクリーンごとに個別に設けられており、
前記制御部は、前記走査光学系による前記線状光束の1回走査と、前記スクリーンごとに設けられた前記撮影光学系による前記スクリーンの同時撮影と、を実行させる請求項1又は2に記載のレンズ特性測定装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記被検レンズと前記スクリーンとの間の前記線状光束の光路に対して、光透過性を有する光学部材を挿脱させる挿脱部であり、
前記制御部は、前記挿脱部により前記光学部材が前記光路上に配置された場合と、前記光学部材が前記光路外に配置された場合とにおいて、前記走査光学系による前記線状光束の走査と、前記撮影光学系による前記スクリーンの撮影と、を実行させる請求項1又は2に記載のレンズ特性測定装置。
【請求項7】
前記線状光束の走査範囲、前記線状光束の走査ピッチ、及び前記走査パターンの種類の少なくともいずれかの設定を行う走査設定部を備え、
前記走査光学系は、前記走査設定部での設定に従って前記線状光束の走査を行う請求項1から
6のいずれか1項に記載のレンズ特性測定装置。
【請求項8】
前記制御部が、前記走査光学系から出射される前記線状光束の走査角度を制御して、前記線状光束により前記被検レンズの表面を走査させる光学系制御部を有し、
前記走査光学系から前記被検レンズの表面に至る前記線状光束の光路の途中に設けられ、前記線状光束の一部の分割する第2光分割部と、
前記第2光分割部により分割された前記線状光束を受光する受光光学系と、
前記受光光学系により受光された前記線状光束の受光位置に基づき、前記走査角度の測定値を取得する測定値取得部と、
予め取得した前記走査角度の指示値と、前記測定値取得部が取得した前記測定値と、を比較した結果に基づき、前記光学系制御部による前記走査角度の制御を補正する補正部と、
を備える請求項1から
7のいずれか1項に記載のレンズ特性測定装置。
【請求項9】
走査光学系が、被検レンズの表面を線状光束で走査するステップと、
設定部が、前記被検レンズと前記被検レンズを透過した前記線状光束が投影されるスクリーンとの間の前記線状光束の光学的距離を複数設定するステップと、
前記スクリーンに対して前記走査光学系とは反対側に設けられている撮影光学系が、前記走査光学系により前記線状光束の走査が実行されている間、前記スクリーンの撮影を行うステップと、
制御部が、前記設定部により設定される前記光学的距離ごとに、前記走査光学系による共通の走査パターンでの前記線状光束の走査と、前記撮影光学系による前記スクリーンの撮影と、を実行させるステップと、
前記走査光学系による前記線状光束の走査速度を制御して、前記撮影光学系により撮影される前記スクリーンの撮影画像に含まれる前記線状光束による点像の数を調整するステップと、
を有するレンズ特性測定装置の作動方法。
【請求項10】
前記制御部が、前記走査光学系から出射される前記線状光束の走査角度を制御して、前記線状光束により前記被検レンズの表面を走査させる光学系制御部を有し、
前記走査光学系から前記被検レンズの表面に至る前記線状光束の光路の途中において、前記線状光束の一部の分割する光分割ステップと、
前記光分割ステップにて分割された前記線状光束を受光する受光ステップと、
前記受光ステップで受光された前記線状光束の受光位置に基づき、前記走査角度の測定値を取得する測定値取得ステップと、
予め取得した前記走査角度の指示値と、前記測定値取得ステップで取得した前記測定値と、を比較した結果に基づき、前記光学系制御部による前記走査角度の制御を補正する補正ステップと、
を有する請求項
9に記載のレンズ特性測定装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検レンズの光学特性を測定するレンズ特性測定装置及びレンズ特性測定装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズ(被検レンズ)の光学特性を測定するレンズ特性測定装置が知られている。レンズ特性測定装置は、被検レンズに測定光を平行光束として照射する照明光学系と、被検レンズを透過した測定光が入射するハルトマンプレートと、ハルトマンプレートの多数のピンホールをそれぞれ透過した測定光が投影されるスクリーンと、スクリーンに投影された多数の測定光による点像を撮影する撮影光学系と、を備える(特許文献1参照)。
【0003】
このレンズ特性測定装置では、被検レンズがセットされていない場合、スクリーンに投影される各点像の間隔はハルトマンプレートの各ピンホールの間隔と等しくなる。また、被検レンズが凸レンズである場合、スクリーンに投影される各点像の間隔はハルトマンプレートの各ピンホールの間隔よりも狭くなる。さらに、被検レンズが凹レンズである場合、スクリーンに投影される各点像の間隔はハルトマンプレートの各ピンホールの間隔よりも広くなる。このため、レンズ特性測定装置では、撮影光学系により撮影されたスクリーンの撮影画像を解析して、スクリーンに投影された各点像の位置を取得することで、被検レンズの光学特性を得る。
【0004】
このようなレンズ特性測定装置では、被検レンズからスクリーンまでの距離が長いほど、被検レンズの屈折力が変化した際にスクリーン上での点像の移動量が大きくなるので、レンズ特性測定装置の感度(分解能)が向上する。しかし、被検レンズからスクリーンまでの距離を長くすると、レンズ特性測定装置によりプラスの強度数(焦点距離が短い)の被検レンズの光学特性を測定する場合に、ハルトマンプレートの互いに異なる2個のピンホールにそれぞれ対応するスクリーン上の2個の点像が重なったり或いは位置関係が反転したりする。このため、各点像の正確な位置を検出することができない。
【0005】
そこで、特許文献1には、ハルトマンプレートとスクリーンとの間の距離を変更可能なレンズ特性測定装置が開示されている。このレンズ特性測定装置では、プラスの弱度数の被検レンズ又はマイナス度数の被検レンズの光学特性を測定する場合には上記距離を長くし、且つプラスの強度数の被検レンズの光学特性を測定する場合には上記距離を短くすることにより、上記の点像の重なり及び位置関係の反転の発生を防止している。
【0006】
また、特許文献2には、ハルトマンプレート及び被検レンズの位置関係が特許文献1とは逆であるが、被検レンズとスクリーンとの間の距離を変更可能なレンズ特性測定装置が開示されている。このレンズ特性測定装置では、被検レンズとスクリーンとの間の距離を2つの異なる距離に変更し、個々の距離でスクリーンに投影される各点像を撮影光学系で撮影し、撮影により得られた距離ごとの撮影画像に基づき、被検レンズの光学特性を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-274473号公報
【文献】特開2006-275971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図23は、被検レンズ200の種類と、ハルトマンプレート201の互いに異なる2個のピンホールを通してスクリーン202上に投影される2つの測定光の点像203の投影位置との関係を説明するための説明図である。
図23の符号UAに示すように、被検レンズ200がプラスの弱度数のレンズである場合、スクリーン202上に投影される2つの点像203は分離している。また、
図23の符号UBに示すように、被検レンズ200がプラスの強度数のレンズである場合、スクリーン202上に投影される2つの点像203は重なっているため、これら2つの点像203を分離検出することは困難である。さらに
図23の符号UBに示すように、被検レンズ200が更にプラスの強度数のレンズである場合、2個のピンホールをそれぞれ透過した測定光がスクリーンの手前で交差するため、スクリーン上での2つの点像203の位置関係が反転してしまう。
【0009】
上記特許文献1に記載のレンズ特性測定装置では、被検レンズ200がプラスの弱度数のレンズ或いはマイナス度数のレンズである場合、ハルトマンプレート201とスクリーン202との間の距離を長くすることができる。しかし、このレンズ特性測定装置では、被検レンズ200が符号UB及び符号UCに示したプラスの強度数のレンズである場合、ハルトマンプレート201とスクリーン202との間の距離が短く設定されるため、被検レンズ200からスクリーン202までの距離が短くなる。このため、レンズ特性測定装置の感度(分解能)を向上させることができない。従って、特許文献1に記載のレンズ特性測定装置では、感度向上と度数の測定範囲(ダイナミックレンジ)の確保と、を両立することができない。
【0010】
特許文献2に記載のレンズ特性測定装置についても、感度向上と度数の測定範囲の確保との両立を図ることを技術課題として着目しておらず、この両立を図るための構成についても開示又は示唆されていない。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、感度向上と度数の測定範囲の確保とを両立可能なレンズ特性測定装置及びレンズ特性測定装置の作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を達成するためのレンズ特性測定装置は、被検レンズの表面を線状光束で走査する走査光学系と、被検レンズを透過した線状光束が投影されるスクリーンと、被検レンズとスクリーンとの間の線状光束の光学的距離を複数設定する設定部と、スクリーンに対して走査光学系とは反対側に設けられ、走査光学系により線状光束の走査が実行されている間、スクリーンの撮影を行う撮影光学系と、設定部により設定される光学的距離ごとに、走査光学系による共通の走査パターンでの線状光束の走査と、撮影光学系によるスクリーンの撮影と、を実行させる制御部と、を備える。
【0013】
このレンズ特性測定装置によれば、ハルトマンプレートを用いることなく被検レンズの表面上を線状光束で走査し、被検レンズを透過した線状光束を複数の光学的距離でスクリーンにそれぞれ投影して、光学的距離ごとにスクリーンを撮影するため、被検レンズの種類に関係なく、被検レンズの表面上の異なる走査位置を透過した線状光束を分離して検出できる。
【0014】
本発明の他の態様に係るレンズ特性測定装置において、撮影光学系により光学的距離ごとに撮影されたスクリーンの撮影画像を解析して、スクリーンに投影された線状光束の投影位置を取得する位置取得部であって、且つ線状光束による被検レンズの表面の走査位置ごとに、同一の走査位置を透過した線状光束の前記光学的距離ごとの前記投影位置を取得する位置取得部と、設定部により複数設定される光学的距離と、位置取得部による投影位置の取得結果とに基づき、被検レンズの光学特性を取得する光学特性取得部と、を備える。これにより、被検レンズの種類に関係なく、被検レンズの光学特性を測定することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係るレンズ特性測定装置において、設定部は、スクリーンを撮影光学系の光軸方向に移動自在に保持し且つ複数の光学的距離にそれぞれ対応した光軸方向位置にスクリーンを移動させる移動部であり、制御部は、移動部によりスクリーンが光軸方向位置に位置決めされるごとに、走査光学系による線状光束の走査と、撮影光学系によるスクリーンの撮影と、を実行させる。これにより、複数の光学的距離を設定することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係るレンズ特性測定装置において、設定部は、スクリーンと一体に撮影光学系を移動させる。これにより、撮影光学系による光学的距離ごとのスクリーンの撮影条件(撮影倍率等)を共通化することができる。
【0017】
本発明の他の態様に係るレンズ特性測定装置において、設定部は、被検レンズを透過した線状光束を複数の光路に分割する第1光分割部と、光路ごとに第1光分割部からの距離が異なる位置に設けられ、第1光分割部から線状光束がそれぞれ投影される複数のスクリーンと、を有し、撮影光学系は、スクリーンごとに個別に設けられており、制御部は、走査光学系による線状光束の1回走査と、スクリーンごとに設けられた撮影光学系によるスクリーンの同時撮影と、を実行させる。これにより、複数の光学的距離を設定することができ、且つ測定を短時間で完了することができる。
【0018】
本発明の他の態様に係るレンズ特性測定装置において、設定部は、被検レンズとスクリーンとの間の線状光束の光路に対して、光透過性を有する光学部材を挿脱させる挿脱部であり、制御部は、挿脱部により光学部材が光路上に配置された場合と、光学部材が光路外に配置された場合とにおいて、走査光学系による線状光束の走査と、撮影光学系によるスクリーンの撮影と、を実行させる。これにより、複数の光学的距離を設定することができ、且つレンズ特性測定装置の小型化が図れる。
【0019】
本発明の他の態様に係るレンズ特性測定装置において、走査光学系を制御して、撮影光学系により撮影されるスクリーンの撮影画像に含まれる線状光束による点像の数を調整する点像数調整部を備える。これにより、スクリーンの撮影画像に含まれる線状光束による点像の数を増加させることで光学特性の測定を短時間で完了することができ、逆にスクリーンの撮影画像に含まれる線状光束による点像の数を減少させることでスクリーンに投影される線状光束による点像が重なり及び位置関係の反転等の発生を防止することができる。
【0020】
本発明の他の態様に係るレンズ特性測定装置において、線状光束の走査範囲、線状光束の走査ピッチ、及び走査パターンの種類の少なくともいずれかの設定を行う走査設定部を備え、走査光学系は、走査設定部での設定に従って線状光束の走査を行う。これにより、眼鏡レンズの種類に応じて、線状光束の走査範囲及び走査ピッチを任意に変更することができる。
【0021】
本発明の他の態様に係るレンズ特性測定装置において、制御部が、走査光学系から出射される線状光束の走査角度を制御して、線状光束により被検レンズの表面を走査させる光学系制御部を有し、走査光学系から被検レンズの表面に至る線状光束の光路の途中に設けられ、線状光束の一部の分割する第2光分割部と、第2光分割部により分割された線状光束を受光する受光光学系と、受光光学系により受光された線状光束の受光位置に基づき、走査角度の測定値を取得する測定値取得部と、予め取得した走査角度の指示値と、測定値取得部が取得した測定値と、を比較した結果に基づき、光学系制御部による走査角度の制御を補正する補正部と、を備える。これにより、被検レンズの光学特性の測定精度及び光学特性のマッピング画像の再現性が向上する。
【0022】
本発明の目的を達成するためのレンズ特性測定装置の作動方法は、走査光学系が、被検レンズの表面上を線状光束で走査するステップと、設定部が、被検レンズと被検レンズを透過した線状光束が投影されるスクリーンとの間の線状光束の光学的距離を複数設定するステップと、スクリーンに対して走査光学系とは反対側に設けられている撮影光学系が、走査光学系により線状光束の走査が実行されている間、スクリーンの撮影を行うステップと、制御部が、設定部により設定される光学的距離ごとに、走査光学系による共通の走査パターンでの線状光束の走査と、撮影光学系によるスクリーンの撮影と、を実行させるステップと、を有する。
【0023】
本発明の他の態様に係るレンズ特性測定装置の作動方法において、制御部が、走査光学系から出射される線状光束の走査角度を制御して、線状光束により被検レンズの表面を走査させる光学系制御部を有し、走査光学系から被検レンズの表面に至る線状光束の光路の途中において、線状光束の一部の分割する光分割ステップと、光分割ステップにて分割された線状光束を受光する受光ステップと、受光ステップで受光された線状光束の受光位置に基づき、走査角度の測定値を取得する測定値取得ステップと、予め取得した走査角度の指示値と、測定値取得ステップで取得した測定値と、を比較した結果に基づき、光学系制御部による走査角度の制御を補正する補正ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、感度向上と度数の測定範囲の確保とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態のレンズ特性測定装置の外観斜視図である。
【
図4】左右の眼鏡レンズの光学特性の測定に用いられる一対の「走査光学系、スクリーン、及び撮影光学系」の一方を代表例として示した概略図である。
【
図5】移動部によるスクリーン及び撮影光学系の一体移動を説明するための説明図である。
【
図6】
図5の符号5B中の眼鏡レンズ及びスクリーンのみを示した斜視図である。
【
図7】第1実施形態の統括制御部の機能ブロック図である。
【
図8】画像情報、及びこの画像情報を基に位置取得部が取得する位置情報の説明図である。
【
図9】光学特性取得部による眼鏡レンズの光学中心位置(光軸)の取得と、バックフォーカスの取得とを説明するための説明図である。
【
図10】第1実施形態のレンズ特性測定装置による眼鏡フレームの左右の眼鏡レンズの光学特性の測定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】第2実施形態のレンズ特性測定装置の要部の構成を示した概略図である。
【
図12】第2実施形態の統括制御部の機能ブロック図である。
【
図13】第2実施形態のレンズ特性測定装置による眼鏡フレームの左右の眼鏡レンズの光学特性の測定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】第3実施形態のレンズ特性測定装置の要部の構成を示した概略図である。
【
図15】第3実施形態の統括制御部の機能ブロック図である。
【
図16】第3実施形態のレンズ特性測定装置による眼鏡フレームの左右の眼鏡レンズの光学特性の測定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図17】第4実施形態のレンズ特性測定装置の統括制御部の機能ブロック図である。
【
図18】ハルトマンプレート及びスクリーンを備える比較例のレンズ特性測定装置の概略図であって、且つ走査光学系による線状光束の走査範囲及び走査ピッチの設定により得られる効果を説明するための説明図である。
【
図19】撮影画像に含まれる線状光束による点像の点像数の調整を説明するための説明図である。
【
図20】第5実施形態のレンズ特性測定装置の走査光学系、スクリーン、及び撮影光学系の概略図である。
【
図21】第5実施形態のレンズ特性測定装置の統括制御部の機能ブロック図である。
【
図22】第5実施形態のレンズ特性測定装置による各ガルバノミラーの揺動角度の補正制御の流れを示すフローチャートである。
【
図23】被検レンズの種類と、ハルトマンプレートの互いに異なる2個のピンホールを通してスクリーン上に投影される2つの測定光による点像の投影位置との関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態のレンズ特性測定装置の構成]
図1は、第1実施形態のレンズ特性測定装置10の外観斜視図である。レンズ特性測定装置10は、眼鏡フレーム101に保持されている左右の眼鏡レンズ102(本発明の被検レンズに相当)の光学特性を、眼鏡フレーム101の置き換えを行うことなく測定する。この光学特性は、例えばバックフォーカスBf(
図9参照)、球面屈折力、円柱屈折力(乱視屈折力)、円柱軸角度(乱視軸角度)、及びプリズム値(プリズム屈折力及びプリズム基底方向)等である。
【0027】
眼鏡フレーム101は、左右の眼鏡レンズ102をそれぞれ保持する左右のリム104(レンズ枠ともいう)と、左右のリム104を接続するブリッジ部105と、左右のリム104にそれぞれ設けられた鼻当てパッド部106及びテンプル107と、を備える。
【0028】
レンズ特性測定装置10は、図中上下方向に間隔をあけて設けられた上側筐体11及び下側筐体12と、上側筐体11及び下側筐体12の背面側に設けられた背部筐体13と、を備える。
【0029】
上側筐体11の前面側には、眼鏡レンズ102の光学特性の測定結果等を表示するモニタ15と、レンズ特性測定装置10の各種操作を行う各種の操作スイッチ16と、を備える。また、上側筐体11の内部には、後述のセット部20に支持された眼鏡フレーム101の左右の眼鏡レンズ102に対してそれぞれ測定光である線状光束46(
図4参照)を照射する一対の走査光学系35(
図4参照)が設けられている。なお、一対の走査光学系35の一部は背部筐体13の内部に設けられている。
【0030】
下側筐体12の上面には、既述の上側筐体11の下方位置[上側筐体11からの線状光束46(
図4参照)の照射位置]にセット部20が設けられている。このセット部20には、光学特性の測定対象となる眼鏡フレーム101がセット及び支持される。
【0031】
下側筐体12及び背部筐体13の内部には、後述の
図4に示すように、セット部20にセットされた眼鏡フレーム101の左右の眼鏡レンズ102をそれぞれ透過した線状光束46が投影される一対のスクリーン36と、一対のスクリーン36をそれぞれ撮影する一対の撮影光学系37と、が設けられている。
【0032】
図2はセット部20の斜視図である。
図3はセット部20の上面図である。
図2及び
図3に示すように、セット部20には、一対の挟持部材21,22がレンズ特性測定装置10の前後方向に間隔をあけて配置されている。挟持部材21,22は、互いに接近する方向と互いに離間する方向とに変位可能であり、両者の間にセットされた眼鏡フレーム101を挟持する。これにより、眼鏡フレーム101の上下方向をレンズ特性測定装置10の前後方向に揃え、且つ眼鏡レンズ102の表面を上側筐体11に対向させることができる。なお、眼鏡レンズ102の裏面とは眼鏡フレーム101の使用者(装着者)の顔面に対向する面であり、その反対側の面が眼鏡レンズ102の表面である。
【0033】
また、セット部20には、眼鏡フレーム101の左右の眼鏡レンズ102の裏面側をそれぞれ支持する一対の支持ピン23が立設されている。各支持ピン23は、挟持部材21,22の前後方向の略中間点に配置されている。挟持部材21,22は、眼鏡フレーム101のフレーム中点が各支持ピン23を結んだ線上に配置されるように、眼鏡フレーム101の位置決めを行う。これにより、左右の眼鏡レンズ102をレンズ特性測定装置10による測定位置に位置合わせできる。なお、図中の符号OAは、左右の眼鏡レンズ102の光軸OA(光学中心位置)である。
【0034】
挟持部材21,22の左右の両側には、眼鏡フレーム101の一部に当接して、眼鏡フレーム101を安定した姿勢で維持するフレームサポート25,26が設けられている。
【0035】
また、挟持部材21,22の間であって、左右方向の略中央部には、前側の挟持部材21に対向する面が円柱周面として形成された鼻当て支持部材24が配置されている。この鼻当て支持部材24は、前後方向略中央位置から後方に摺動可能であって且つ不図示のバネ等により前方向に付勢されている。そして、鼻当て支持部材24は、挟持部材21,22により眼鏡フレーム101をその前後から挟持した場合に、眼鏡フレーム101の鼻当てパッド部106に当接する。
【0036】
背部筐体13には、セット部20よりも上方向側の位置において、一対のアーム27をそれぞれ回転自在に支持する一対の回転軸28が設けられている。各アーム27の先端部にはそれぞれ押えピン29が設けられている。各アーム27がそれぞれ回転軸28を中心として回転すると、各アーム27の各々の押えピン29が、支持ピン23に支持されている左右の眼鏡レンズ102の表面に当接して、各眼鏡レンズ102を下方向側へ押圧する。これにより、左右の眼鏡レンズ102が支持ピン23に押さえ付けられて固定される。
【0037】
各支持ピン23は、セット部20の底部に設けられた一対のカバーガラス30上に立設されている。各カバーガラス30は、各支持ピン23によりそれぞれ支持されている左右の眼鏡レンズ102をそれぞれ透過した線状光束46(
図4参照)が入射する位置に設けられている。各カバーガラス30にそれぞれ入射した線状光束46は、カバーガラス30の下方側に設けられているスクリーン36(
図4参照)に投影される。
【0038】
[走査光学系、スクリーン、及び撮影光学系]
図4は、左右の眼鏡レンズ102の光学特性の測定に用いられる一対の「走査光学系35、スクリーン36、及び撮影光学系37」の一方を代表例として示した概略図である。
【0039】
図4に示すように、走査光学系35は、光源40とレンズ41とスキャナ42とミラー43とコリメータ44とを備える。
【0040】
光源40は、例えばレーザ光源、SLD(Super luminescent diode)光源、及びLED(Light emitting diode)光源等が用いられ、可視波長域の測定光(検査光)として線状光束46(線状光、線光束、走査光束、又はビームともいう)を出射する。この線状光束46は、レンズ41、スキャナ42、ミラー43、及びコリメータ44を経て眼鏡レンズ102に照射される。
【0041】
スキャナ42は、例えばガルバノスキャナであり、互いに直交する揺動軸を中心として揺動する2枚のガルバノミラー42A(偏向ミラー)を近接配置した構造を有する。なお、線状光束46の進行方向下流側のガルバノミラー42Aは、コリメータ44の焦点位置に配置されている。
【0042】
各ガルバノミラー42Aの一方はその揺動角度θを多段階(無段階)で調整することで、線状光束46を第1方向xに走査する。また、各ガルバノミラー42Aの他方はその揺動角度φを多段階(無段階)で調整することで、線状光束46を第1方向xと直交する第2方向yに走査する。これにより、スキャナ42は、線状光束46をミラー43に向けて出射しながら、この線状光束46を2次元方向に高速走査できる。
【0043】
なお、スキャナ42は、ガルバノスキャナに限定されるものではなく、共振型スキャナ(レゾナントスキャナ)及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スキャナなどの線状光束46を2次元方向で高速走査可能な各種スキャナを用いてもよい。
【0044】
ミラー43は、スキャナ42から入射した線状光束46をコリメータ44に向けて反射する。コリメータ44は、ミラー43から入射した線状光束46を撮影光学系37の撮影光軸OBに平行な平行光とした後、支持ピン23上に支持されている眼鏡レンズ102に向けて出射する。これにより、眼鏡レンズ102の表面側に線状光束46が照射される。
【0045】
スキャナ42が線状光束46を2次元方向(第1方向x及び第2方向y)に走査することで、眼鏡レンズ102の表面上で線状光束46が2次元方向(第1方向X及び第2方向Y)に走査される。なお、本実施形態では第1方向x及び第1方向Xはレンズ特性測定装置10の左右方向であり、第2方向yはレンズ特性測定装置10の上下方向であり、第2方向Yはレンズ特性測定装置10の前後方向である。眼鏡レンズ102の表面上での線状光束46の走査により、この眼鏡レンズ102の表面上の複数の走査位置Pに線状光束46が順次照射される。そして、眼鏡レンズ102の各走査位置Pに照射された線状光束46は、それぞれカバーガラス30を透過してスクリーン36に投影される。
【0046】
また、本実施形態では、線状光束46が入射する走査位置Pの変位、すなわち2枚のガルバノミラー42Aの少なくとも一方の変位に連動して、光源40から間欠的(断続的)に線状光束46を出射する。この場合、眼鏡レンズ102の表面上の各走査位置Pは一定ピッチ間隔で離間する。
【0047】
なお、光源40から間欠的に線状光束46を出射する代わりに、光源40から連続的に線状光束46を出射してもよい。この場合、眼鏡レンズ102の表面上を線状光束46が一筆書きのように走査されるため、眼鏡レンズ102の表面上の各走査位置Pは連続している。
【0048】
スクリーン36は、カバーガラス30の下方側に設けられている。スクリーン36は、例えば砂掛けしたガラス基板等であり、拡散透過性を有している。このスクリーン36には、眼鏡レンズ102及びカバーガラス30を透過した線状光束46が投影される。そして、スキャナ42が線状光束46を2次元方向に走査し、眼鏡レンズ102の表面上の複数の走査位置Pに線状光束46が順次照射されるのに応じて、スクリーン36に投影される線状光束46の位置も変化する。
【0049】
撮影光学系37は、スクリーン36に対して走査光学系35とは反対側、すなわちスクリーン36の下方側に設けられており、線状光束46が投影されているスクリーン36をその下面側から撮影する。この撮影光学系37は、その上方側から下方側に向かって、フィールドレンズ48とカメラ50とを備える。フィールドレンズ48は、線状光束46が投影されているスクリーン36の像をカメラ50に入射する。
【0050】
カメラ50は、結像レンズ50Aと、CCD(Charge Coupled Device)型又はCMOS(complementary metal oxide semiconductor)型の撮像素子50Bと、を備える。結像レンズ50Aは、フィールドレンズ48を経て入射したスクリーン36の像を撮像素子50Bの撮像面に入射する。
【0051】
撮像素子50Bは、走査光学系35による線状光束46の走査が実行されている間、結像レンズ50Aを通して入射したスクリーン36の像を連続して撮像する。これにより、カメラ50により連続的に撮影されたスクリーン36の撮影画像52が、カメラ50から後述の統括制御部58へ出力される。
【0052】
移動部54は、本発明の設定部に相当するものであり、図中の矢印Mに示すように、スクリーン36及び撮影光学系37を、撮影光学系37の撮影光軸OBに沿って移動自在に保持し、スクリーン36及び撮影光学系37を撮影光軸OBに沿って一体的に移動させる。
【0053】
図5は、移動部54によるスクリーン36及び撮影光学系37の一体移動を説明するための説明図である。
図5に示すように、移動部54は、撮影光軸OBに沿ったスクリーン36の光軸方向位置が、符号5Aに示す第1光軸方向位置L1と符号5Bに示す第2光軸方向位置L2とに変位するように、スクリーン36及び撮影光学系37を一体的に移動させる。この際に、移動部54は、不図示のパルスモータのパルス数をカウントすることで、スクリーン36を予め定めた第1光軸方向位置L1及び第2光軸方向位置L2にそれぞれ正確に位置決めできる。なお、パルスモータのパルス数をカウントする代わりに、不図示の位置検出センサを用いて、スクリーン36の位置決めを行ってもよい。
【0054】
図6は、
図5の符号5B中の眼鏡レンズ102及びスクリーン36のみを示した斜視図である。
図6及び既述の
図5に示すように、スクリーン36及び撮影光学系37を、第1光軸方向位置L1と第2光軸方向位置L2とに位置決めすることで、眼鏡レンズ102とスクリーン36との間の光学的距離を、第1光学的距離LO1と第2光学的距離LO2とに変化させることができる。すなわち、光学的距離を2種類設定することができる。これにより、眼鏡レンズ102の表面上の走査位置Pを透過した線状光束46を、第1光学的距離LO1及び第2光学的距離LO2にそれぞれ設定されたスクリーン36に投影することができる。
【0055】
なお、光学的距離は、線状光束46の波長に対応した眼鏡レンズ102とスクリーン36との間に存在する媒質の屈折率と、眼鏡レンズ102とスクリーン36との間の実距離との積である。そして、本実施形態では実距離を変化させることで、第1光学的距離LO1と第2光学的距離LO2との切り替えを行っている。
【0056】
同一の走査位置Pを透過した線状光束46を、第1光学的距離LO1及び第2光学的距離LO2にそれぞれ設定されたスクリーン36に投影する場合、各スクリーン36に投影される線状光束46の投影位置Q1,Q2の位置座標は、撮影光軸OBに平行な方向においてΔLの差が生じ、且つ撮影光軸OBに垂直な方向においてΔHの差が生じる。従って、同一の走査位置Pから各光学的距離LO1,LO2に対応するスクリーン36にそれぞれ投影された線状光束46の投影位置Q1,Q2の位置座標を検出することで、この走査位置Pを透過した線状光束46の傾き角を検出できる。
【0057】
従って、本実施形態では、後述の統括制御部58の制御の下、スクリーン36が第1光軸方向位置L1と第2光軸方向位置L2とに位置決めされるごとに、走査光学系35による共通の走査パターンでの線状光束46の走査と、この走査が実行されている間のカメラ50によるスクリーン36の連続的な撮影と、を繰り返し実行する。これにより、眼鏡レンズ102の表面上の複数の走査位置Pをそれぞれ透過した線状光束46の傾き角を個別に検出できる。
【0058】
[統括制御部]
図7は、レンズ特性測定装置10の下側筐体12又は背部筐体13の内部に設けられている第1実施形態の統括制御部58の機能ブロック図である。
図7に示すように、統括制御部58は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はFPGA(field-programmable gate array)等を含む各種の演算部及びメモリ等から構成された演算回路であり、操作スイッチ16に入力された各種の操作指示に基づきレンズ特性測定装置10の各部を統括制御する。また、統括制御部58には記憶部59が接続されている。
【0059】
統括制御部58は、記憶部59内の不図示のソフトウェアプログラムを実行することで、移動制御部60、光学系制御部62、撮影制御部64、画像取得部66、位置取得部68、及び光学特性取得部70として機能する。なお、光学系制御部62及び撮影制御部64は、本発明の制御部として機能する。
【0060】
移動制御部60は、移動部54の駆動を制御する。移動制御部60は、操作スイッチ16への測定開始操作の入力に応じて、移動部54を駆動して、スクリーン36及び撮影光学系37を一体的に移動させることで、スクリーン36を第1光軸方向位置L1(第1光学的距離LO1)に位置決めする。そして、移動制御部60は、第1光軸方向位置L1での走査光学系35による線状光束46の走査と、カメラ50によるスクリーン36の連続的な撮影とが完了すると、移動部54を再び駆動して、スクリーン36及び撮影光学系37を一体的に移動させることで、スクリーン36を第2光軸方向位置L2(第2光学的距離LO2)に位置決めする。
【0061】
光学系制御部62は、走査光学系35の光源40による線状光束46の照射とスキャナ42の駆動とを制御する。光学系制御部62は、スクリーン36が第1光軸方向位置L1及び第2光軸方向位置L2に位置決めされるごとに、予め定めた線状光束46の共通の走査パターンに従って、2枚のガルバノミラー42Aの少なくとも一方を変位させながら、この変位に連動して光源40から間欠的に線状光束46を照射させる。これにより、スクリーン36が第1光軸方向位置L1及び第2光軸方向位置L2にそれぞれ位置決めされるごとに、眼鏡レンズ102の表面上で線状光束46が共通の走査パターンで2次元方向に走査され、眼鏡レンズ102の表面上の共通の複数の走査位置Pに対して線状光束46が順次照射される。
【0062】
撮影制御部64は、カメラ50によるスクリーン36の撮影を制御する。撮影制御部64は、スクリーン36の第1光軸方向位置L1及び第2光軸方向位置L2への位置決めに応じて、走査光学系35による線状光束46の走査が実行されている間、カメラ50によるスクリーン36の撮影を実行させる。
【0063】
具体的に撮影制御部64は、光源40から間欠的に線状光束46が照射されるごと、すなわち眼鏡レンズ102の表面上での線状光束46の走査位置Pが変位(各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φが変位)するごとに、カメラ50による撮影を繰り返し実行させる。これにより、カメラ50により撮影される個々の撮影画像52には、スクリーン36に投影された線状光束46による点像が1点ずつ含まれる。
【0064】
画像取得部66は、カメラ50から撮影画像52を逐次取得する。また同時に、画像取得部66は、撮影画像52の撮影時におけるスキャナ42の各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φを、光学系制御部62等から逐次取得する。この揺動角度θ,φは、眼鏡レンズ102の表面上において線状光束46が照射された走査位置Pを示す情報である。そして、画像取得部66は、カメラ50から取得した撮影画像52を、揺動角度θ,φとスクリーン36の各光軸方向位置L1,L2とをそれぞれ識別可能な状態で、記憶部59内の画像情報72に記憶させる。
【0065】
図8は、画像情報72、及びこの画像情報72を基に位置取得部68が取得する位置情報74の説明図である。
図8に示すように、画像情報72には、揺動角度θ,φごと、すなわち走査位置Pごとに、第1光軸方向位置L1(第1光学的距離LO1)でのスクリーン36の撮影画像52と、第2光軸方向位置L2(第2光学的距離LO2)でのスクリーン36の撮影画像52とがそれぞれ記憶されている。
【0066】
位置取得部68は、撮影画像52から、スクリーン36上に投影されている線状光束46の投影位置Q1又は投影位置Q2の位置座標を取得する。この位置取得部68は、各光軸方向位置L1,L2にそれぞれ対応した線状光束46の走査及びスクリーン36の撮影が完了した場合、記憶部59から画像情報72を取得する。そして、位置取得部68は、画像情報72内の各撮影画像52を解析して、スクリーン36上に投影されている線状光束46の投影位置Q1,Q2の位置座標を取得した結果に基づき、位置情報74を生成する。なお、投影位置Q1,Q2の位置座標は、例えばスクリーン36上で撮影光軸OBと交差する点を原点とした座標である。
【0067】
位置情報74には、揺動角度θ,φごと、すなわち走査位置Pごとに、第1光軸方向位置L1(第1光学的距離LO1)のスクリーン36に投影された線状光束46の投影位置Q1の位置座標と、第2光軸方向位置L2(第2光学的距離LO2)のスクリーン36に投影された線状光束46の投影位置Q2の位置座標とがそれぞれ記憶されている。すなわち、位置情報74には、同一の走査位置Pに対応した各光軸方向位置L1、L2(各光学的距離LO1,LO2)での線状光束46の投影位置Q1、Q2の位置座標が、走査位置Pごとに記憶されている。この位置情報74は、位置取得部68から光学特性取得部70へ出力される。
【0068】
なお、本実施形態では、スクリーン36及び撮影光学系37を一体に移動させているので、スクリーン36と撮影光学系37との間の距離は常に一定に保たれており、その結果、カメラ50によるスクリーン36の撮影条件(撮影倍率等)も一定である。このため、各光軸方向位置L1、L2(各光学的距離LO1,LO2)で撮影された撮影画像52からそれぞれ投影位置Q1、Q2を求める際に、撮影条件(撮影倍率等)の違いを補正する必要がない。このため、投影位置Q1、Q2を簡単に求めることができる。
【0069】
図7に戻って、光学特性取得部70は、第1光軸方向位置L1及び第2光軸方向位置L2に関する情報と、位置取得部68の位置取得結果である位置情報74とに基づき、眼鏡レンズ102の光学中心位置(光軸OA)及び光学特性[バックフォーカスBf(
図9参照)等]を取得する。
【0070】
図9は、光学特性取得部70による眼鏡レンズ102の光学中心位置(光軸OA)の取得と、バックフォーカスBfの取得とを説明するための説明図である。
図9に示すように、光学特性取得部70は、同一の走査位置Pに対応した各光軸方向位置L1,L2の投影位置Q1,Q2の位置座標に基づき、この走査位置Pを透過した線状光束46の傾き角を検出する検出処理を、走査位置Pごとに行う。これにより、光学特性取得部70は、撮影光軸OBと平行な線状光束46を射出する走査位置Pから、眼鏡レンズ102の光学中心位置、すなわち光軸OAの位置を取得(演算)することができる。
【0071】
また、第1光軸方向位置L1との第2光軸方向位置L2との間の距離ΔLは、ΔL=|L1-L2|の式から求められる。さらに、眼鏡レンズ102のセット位置は既知であるので、第1光軸方向位置L1に基づき、眼鏡レンズ102の裏面と第1光軸方向位置L1にあるスクリーン36との間の距離ΔLAも既知である。そして、位置情報74に基づき、第1光軸方向位置L1のスクリーン36に投影された線状光束46の投影位置Q1と、第2光軸方向位置L2のスクリーン36に投影された線状光束46の投影位置Q2との差(撮影光軸OBに対して垂直方向の差)であるΔHも、走査位置Pごとに演算可能である。従って、これらの情報に基づき、光学特性取得部70は、眼鏡レンズ102のバックフォーカスBfを取得(演算)することができる。
【0072】
なお、第1光軸方向位置L1のスクリーン36は、眼鏡レンズ102の光学特性を求める場合には、従来の装置のハルトマンプレートとみなすことができる。従って、各光軸方向位置L1,L2、及び走査位置Pごとの投影位置Q1,Q2の位置座標が既知であれば、光学特性取得部70は、ハルトマンプレートを備える従来の装置と同様の演算方法で、眼鏡レンズ102の光学中心位置及びバックフォーカスBfを求めることができる。
【0073】
また、光学特性取得部70は、バックフォーカスBf以外の眼鏡レンズ102の光学特性についても、各光軸方向位置L1,L2と走査位置Pごとの投影位置Q1,Q2の位置座標とに基づき、従来の装置と同様の演算方法で求めることができる。さらに、光学特性取得部70は、眼鏡レンズ102内での光学特性値の分布を示すマッピング画像についても、従来の装置と同様に取得することができる。
【0074】
光学特性取得部70は、取得した眼鏡レンズ102の光学中心位置(光軸OA)及び光学特性(バックフォーカスBf等)に関する情報をモニタ15に出力して表示させる。
【0075】
[第1実施形態のレンズ特性測定装置の作用]
図10は、第1実施形態のレンズ特性測定装置10による眼鏡フレーム101の左右の眼鏡レンズ102の光学特性の測定処理(レンズ特性測定装置の作動方法)の流れを示すフローチャートである。なお、レンズ特性測定装置10は、左右の眼鏡レンズ102の光学特性を同時もしくは時系列的に測定するが、ここでは左右の眼鏡レンズ102のいずれか一方の光学特性の測定を例に挙げて説明を行う。
【0076】
検者は、測定対象の眼鏡フレーム101をセット部20にセットして、挟持部材21,22により眼鏡フレーム101を挟持し、且つ支持ピン23により支持されている眼鏡レンズ102を押えピン29で押さえ付けて固定する(ステップS1)。なお、眼鏡フレーム101をセット部20にセットした後、操作スイッチ16での測定開始操作に応じて、挟持部材21、22、及び押えピン29を不図示のモータ駆動機構等で駆動して自動的に眼鏡フレーム101を固定してもよい。
【0077】
次いで、検者が操作スイッチ16で測定開始操作を入力すると、移動制御部60は、移動部54を駆動して、スクリーン36及び撮影光学系37を一体的に移動させながら、このスクリーン36を第1光軸方向位置L1(第1光学的距離LO1)に位置決めする(ステップS2)。
【0078】
スクリーン36が第1光軸方向位置L1に位置決めされると、光学系制御部62は、走査光学系35を制御して眼鏡レンズ102に対する線状光束46の走査を開始させる。具体的に、光学系制御部62は、予め定めた走査パターンに従って、2枚のガルバノミラー42Aの少なくとも一方を変位させながら、この変位に連動して光源40から間欠的に線状光束46を照射させる(ステップS3)。眼鏡レンズ102の表面上で線状光束46が既述の走査パターンで2次元方向に走査され、眼鏡レンズ102の表面上の複数の走査位置Pに対して線状光束46が順次照射される。
【0079】
また、線状光束46の走査が実行されている間、撮影制御部64は、カメラ50を制御して、眼鏡レンズ102の表面上での線状光束46の走査位置Pが変位するごとに、カメラ50によるスクリーン36の撮影を繰り返し実行させる(ステップS4)。
【0080】
そして、カメラ50により撮影されたスクリーン36の撮影画像52は、画像取得部66へ逐次出力され、この画像取得部66によって各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ及び第1光軸方向位置L1を識別可能な状態で、記憶部59内の画像情報72に逐次記憶される。
【0081】
走査光学系35による線状光束46の走査と、カメラ50によるスクリーン36の撮影とが完了すると、移動制御部60は、移動部54を再び駆動して、スクリーン36及び撮影光学系37を一体的に移動させながら、スクリーン36を第2光軸方向位置L2(第2光学的距離LO2)に位置決めする(ステップS5)。
【0082】
スクリーン36が第2光軸方向位置L2に位置決めされると、光学系制御部62は、走査光学系35を制御して、眼鏡レンズ102の表面に対して既述のステップS3と共通の走査パターンでの線状光束46の走査を実行させる(ステップS6)。これにより、既述のステップS3と共通の複数の走査位置Pに対して線状光束46が順次照射される。
【0083】
また、撮影制御部64は、線状光束46の走査が実行されている間、既述のステップS4と同様に、カメラ50によるスクリーン36の連続的な撮影を実行させる(ステップS7)。カメラ50により撮影されたスクリーン36の撮影画像52は、画像取得部66によって、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ及び第2光軸方向位置L2を識別可能な状態で画像情報72に逐次記憶される。
【0084】
走査光学系35による線状光束46の走査と、カメラ50によるスクリーン36の連続的な撮影とが完了すると、位置取得部68は、記憶部59に記憶されている画像情報72内の各撮影画像52を解析して、撮影画像52ごとに、スクリーン36上に投影されている線状光束46の投影位置Q1又は投影位置Q2の位置座標を取得する。この際に、本実施形態ではスクリーン36及び撮影光学系37を一体に移動させているので、各光軸方向位置L1,L2での撮影画像52の撮影条件は共通であり、投影位置Q1、Q2の位置座標を求める際に撮影条件の違いを補正する必要がない。その結果、位置取得部68は、既述の
図8に示した位置情報74を簡単に生成することができる(ステップS8)。そして、位置取得部68は、位置情報74を光学特性取得部70へ出力する。
【0085】
位置取得部68から位置情報74の入力を受けた光学特性取得部70は、この位置情報74と、各光軸方向位置L1,L2に関する情報とに基づき、眼鏡レンズ102の光学中心位置(光軸OA)及び光学特性[バックフォーカスBf等]を取得する(ステップS9)。この際に、第1光軸方向位置L1に位置決めされたスクリーン36を公知のハルトマンプレートとみなすことで、光学特性取得部70は従来の演算方法(解析方法)を用いて、眼鏡レンズ102の光学中心位置及び光学特性を求めることができる。光学特性取得部70による眼鏡レンズ102の光学特性等の測定結果は、モニタ15に出力されて表示される。
【0086】
[第1実施形態のレンズ特性測定装置の効果]
以上のように第1実施形態のレンズ特性測定装置10では、スクリーン36の光軸方向位置を変えながら、線状光束46の走査とスクリーン36の撮影とを並行して行うことで、眼鏡レンズ102の表面上の同一の走査位置Pに対応した各光学的距離LO1,LO2での投影位置Q1,Q2の位置座標を、走査位置Pごとに取得できる。これにより、眼鏡レンズ102の各走査位置Pをそれぞれ透過した線状光束46の傾き角、眼鏡レンズ102の光学中心位置(光軸OA)、及び眼鏡レンズ102の光学特性を求めることができる。
【0087】
従って、第1実施形態のレンズ特性測定装置10では、既述の
図23の符号UB及び符号UCに示したように、プラスの強度数の眼鏡レンズ102の光学特性等を測定する場合であっても、眼鏡レンズ102の表面上の異なる走査位置Pを透過した線状光束46を分離して検出できる。そして、特に本実施形態では、カメラ50により撮影される個々の1フレーム分の撮影画像52に、スクリーン36に投影される線状光束46による点像が1点ずつ含まれるようにスキャナ42等を制御している。このため、本実施形態では、スクリーン36上に投影される線状光束46による点像の重なり及び位置関係の反転といった問題は生じない。また、本実施形態では、各光軸方向位置L1,L2を眼鏡レンズ102に近い位置に設定しなくともプラスの強度数の眼鏡レンズ102の光学特性等を測定できるので、レンズ特性測定装置10の感度(分解能)を向上させることできる。その結果、レンズ特性測定装置10の感度向上と度数の測定範囲の確保とを両立できる。
【0088】
なお、上記第1実施形態では、移動部54によりスクリーン36及び撮影光学系37を一体に移動させているが、移動部54によりスクリーン36のみを移動させてもよい。この場合、カメラ50は、スクリーン36が各光軸方向位置L1,L2に移動されるごとにスクリーン36にフォーカスを合わせてスクリーン36の撮影を行う。また、この場合には、各光軸方向位置L1,L2でのカメラ50の撮影倍率をそれぞれ記憶しておく。これにより、位置取得部68が線状光束46の投影位置Q1、Q2の位置座標を求める場合に、各光軸方向位置L1,L2の撮影倍率の違いを補正することができる。
【0089】
[第2実施形態のレンズ特性測定装置]
図11は、第2実施形態のレンズ特性測定装置10Aの要部の構成を示した概略図である。上記第1実施形態のレンズ特性測定装置10は、移動部54によりスクリーン36及び撮影光学系37を第1光軸方向位置L1と第2光軸方向位置L2とに位置決めすることで、眼鏡レンズ102とスクリーン36との間における光学的距離を、第1光学的距離LO1と第2光学的距離LO2とに設定している。これに対して、第2実施形態のレンズ特性測定装置10Aは、眼鏡レンズ102を透過した線状光束46を2分割して、各線状光束46の光路長を異ならせることで、第1光学的距離LO1と第2光学的距離LO2との設定を行う。
【0090】
図11に示すように、第2実施形態のレンズ特性測定装置10Aは、眼鏡レンズ102等を透過した線状光束46の投影及び撮影を行う構成が異なる点を除いては、第1実施形態のレンズ特性測定装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0091】
第2実施形態のレンズ特性測定装置10Aは、眼鏡レンズ102等を透過した線状光束46の投影及び撮影を行う構成として、ハーフミラー76と、2種類のスクリーン36A,36Bと、2種類の撮影光学系37A,37Bと、を備える。なお、ハーフミラー76及びスクリーン36A,36Bは本発明の設定部として機能する。
【0092】
ハーフミラー76は、本発明の第1光分割部に相当するものであり、カバーガラス30の下方側に設けられている。ハーフミラー76は、眼鏡レンズ102及びカバーガラス30を透過した線状光束46を、第1光路OP1及び第2光路OP2に2分割する。
【0093】
スクリーン36A,36Bは、第1実施形態のスクリーン36と同じものである。スクリーン36A,36Bは、第1光路OP1と第2光路OP2とにそれぞれ個別に設けられており、ハーフミラー76で分割された各線状光束46がそれぞれ投影される。この際に、ハーフミラー76からスクリーン36Aまでの距離L1Aと、ハーフミラー76からスクリーン36Bまでの距離L2Aとを異ならせている。これにより、眼鏡レンズ102からスクリーン36Aまでの光学的距離を第1光学的距離LO1に設定し、眼鏡レンズ102からスクリーン36Bまでの光学的距離を第2光学的距離LO2に設定できる。
【0094】
撮影光学系37A,37Bは、第1実施形態の撮影光学系37と同じものである。撮影光学系37Aは、スクリーン36Aに対してハーフミラー76とは反対側に設けられており、線状光束46が投影されているスクリーン36Aを撮影して撮影画像52を出力する。また、撮影光学系37Bは、スクリーン36Bに対してハーフミラー76とは反対側に設けられており、線状光束46が投影されているスクリーン36Bを撮影して撮影画像52を出力する。この際にスクリーン36A,36Bには、ハーフミラー76を介して眼鏡レンズ102からの線状光束46が同時投影されるので、撮影光学系37A,37Bの各カメラ50はスクリーン36A,36Bの同時撮影を行う。
【0095】
図12は、第2実施形態の統括制御部58の機能ブロック図である。
図12に示すように、第2実施形態の統括制御部58は、第1実施形態で説明した移動制御部60としては機能せず、且つ光学系制御部62及び撮影制御部64の機能が一部異なる点を除いては、第1実施形態の統括制御部58と基本的に同じである。
【0096】
第2実施形態の光学系制御部62は、操作スイッチ16への測定開始操作の入力に応じて、予め定めた線状光束46の共通の走査パターンに従って、スキャナ42の2枚のガルバノミラー42Aの少なくとも一方を変位させながら、この変位に連動して光源40から間欠的(連続的でも可)に線状光束46を照射させる。これにより、眼鏡レンズ102の表面上の複数の走査位置Pをそれぞれ透過した線状光束46が、ハーフミラー76で第1光路OP1と第2光路OP2とに分割され、ハーフミラー76から距離L1Aだけ離れたスクリーン36Aと、ハーフミラー76から距離L2Aだけ離れたスクリーン36Bと、に投影される。その結果、眼鏡レンズ102から第1光学的距離LO1だけ離れた位置にあるスクリーン36Aと、第2光学的距離LO2だけ離れた位置にあるスクリーン36Bとに対して、同一の走査位置Pを透過した線状光束46が走査位置Pごとに順次投影される。
【0097】
なお、スクリーン36Bに投影される線状光束46は、ハーフミラー76で反射(屈折)されている。このため、既述の
図11に示したように、同一の走査位置Pに対応したスクリーン36A上での線状光束46の投影位置Q1の位置座標と、スクリーン36B上での線状光束46の投影位置Q2の位置座標とを比較した場合、両者の位置座標(X,Y)のいずれか一方(X座標又はY座標)の正負が反転している。
【0098】
第2実施形態の撮影制御部64は、走査光学系35による共通の走査パターンでの線状光束46の走査が実行されている間、撮影光学系37A,37Bの各々のカメラ50によるスクリーン36A,36Bの同時撮影を実行させる。
【0099】
なお、第2実施形態の画像取得部66は、撮影光学系37A,37Bの各々のカメラ50により撮影された撮影画像52を、スキャナ42の揺動角度θ,φと各光学的距離LO1,LO2とをそれぞれ識別可能な状態で、記憶部59内の画像情報72に記憶させる。
【0100】
また、第1実施形態と同様に、第2実施形態の位置取得部68は画像情報72に基づき位置情報74の生成を行い、第2実施形態の光学特性取得部70は眼鏡レンズ102の光学特性等を取得する。この際に、既述の通り投影位置Q1及び投影位置Q2の各々の位置座標(X,Y)のいずれか一方(X座標又はY座標)の正負が反転しているので、この正負の反転を補正した上で、線状光束46の傾き角及び眼鏡レンズ102の光学特性等を求める。
【0101】
図13は、第2実施形態のレンズ特性測定装置10Aによる眼鏡フレーム101の左右の眼鏡レンズ102の光学特性の測定処理の流れを示すフローチャートである。
図13に示すように、第2実施形態のレンズ特性測定装置10Aでは、ハーフミラー76と、スクリーン36A、36Bと、撮影光学系37A,37Bとを設けることにより、線状光束46の1回走査(ステップS3A)と、各撮影光学系37A、37Bによる同時撮影(ステップS4A)とを実行するだけで、ステップS8に移行できる。このため、短時間で眼鏡レンズ102の光学測定等が完了する。
【0102】
また、第2実施形態のレンズ特性測定装置10Aにおいても、上記第1実施形態と同様に、同一の走査位置Pに対応した各光学的距離LO1,LO2での投影位置Q1,Q2の位置座標を、走査位置Pごとに取得できるので、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0103】
[第3実施形態のレンズ特性測定装置]
図14は、第3実施形態のレンズ特性測定装置10Bの要部の構成を示した概略図である。上記第1実施形態のレンズ特性測定装置10は、移動部54によりスクリーン36を第1光軸方向位置L1と第2光軸方向位置L2とに位置決めすることで、既述の光学的距離を、第1光学的距離LO1と第2光学的距離LO2とに設定している。これに対して、第3実施形態のレンズ特性測定装置10Bでは、眼鏡レンズ102とスクリーン36との間の線状光束46の光路OP3の屈折率を変えることで、第1光学的距離LO1と第2光学的距離LO2との設定を行う。
【0104】
図14に示すように、第3実施形態のレンズ特性測定装置10Bは、第1実施形態の移動部54の代わりに、光路OP3の屈折率を変える構成を備える点を除けば、第1実施形態のレンズ特性測定装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0105】
第3実施形態のレンズ特性測定装置10Bは、第1実施形態の移動部54の代わりに、本発明の光学部材に相当するガラス板80と、挿脱部81とを備えている。なお、ガラス板80及び挿脱部81は本発明の設定部として機能する。
【0106】
ガラス板80は、空気よりも屈折率の大きい光透過性を有する光学部材である。このため、ガラス板80を光路OP3に挿入することで、眼鏡レンズ102からスクリーン36までの光学的距離を増加させることができる。なお、ガラス板80の代わりに、空気とは屈折率の異なる透光性の各種光学部材を光路OP3に挿入してもよい。
【0107】
挿脱部81は、例えば不図示のパルスモータ及び駆動伝達部により構成されている。この挿脱部81は、ガラス板80をスクリーン36に対して平行な方向に変位させることで、
図14の符号WAに示すようにガラス板80を光路OP3の光路外へ退避させたり、或いは
図14の符号WBに示すようにガラス板80を光路OP3の光路上に挿入させたりする。これにより、眼鏡レンズ102とスクリーン36との間の光学的距離を、第1光学的距離LO1と第2光学的距離LO2とに変化させることができる。その結果、第1実施形態と同様に、眼鏡レンズ102の表面上の各走査位置Pをそれぞれ透過した線状光束46を、第1光学的距離LO1に設定されたスクリーン36と、第2光学的距離LO2に設定されたスクリーン36とに投影することができる。
【0108】
図15は、第3実施形態の統括制御部58の機能ブロック図である。
図15に示すように、第3実施形態の統括制御部58は、第1実施形態の移動制御部60の代わりに挿脱制御部84として機能する点を除けば、第1実施形態の統括制御部58と基本的に同じである。
【0109】
挿脱制御部84は、挿脱部81の駆動を制御する。挿脱制御部84は、操作スイッチ16への測定開始操作の入力に応じて挿脱部81を駆動して、ガラス板80を光路OP3から退避又は光路OP3内に挿入のいずれか一方の状態に切り替える。そして、挿脱制御部84は、第1実施形態と同様に、走査光学系35による線状光束46の走査と、カメラ50によるスクリーン36の連続的な撮影とが完了すると、挿脱部81を駆動して、ガラス板80を光路OP3から退避又は光路OP3内に挿入のいずれか他方の状態に切り替える。
【0110】
図16は、第3実施形態のレンズ特性測定装置10Bによる眼鏡フレーム101の左右の眼鏡レンズ102の光学特性の測定処理の流れを示すフローチャートである。
図16に示すように、第3実施形態のレンズ特性測定装置10Bでは、既述の
図10に示した第1実施形態のスクリーン36等の移動(ステップS2,S5)の代わりに、ガラス板80の光路OP3から退避(ステップS2B)及びガラス板80の光路OP3内への挿入(ステップS5B)を行う点を除けば、第1実施形態と基本的に同じ処理を行う。なお、ステップS2BとステップS5Bの順序は入れ替えてもよい。
【0111】
このように第3実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、同一の走査位置Pに対応した各光学的距離LO1,LO2での投影位置Q1,Q2の位置座標を、走査位置Pごとに取得できる。このため、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第3実施形態では、光路OP3へのガラス板80の挿脱を行うだけでよいので、スクリーン36等を移動させる第1実施形態よりも装置構成を小型化できる。
【0112】
[第4実施形態のレンズ特性測定装置]
図17は、第4実施形態のレンズ特性測定装置10Cの統括制御部58の機能ブロック図である。この第4実施形態のレンズ特性測定装置10Cは、線状光束46の走査範囲、走査ピッチ、及び走査パターンの設定と、1フレーム分の撮影画像52に含まれる線状光束46による点像の点像数の調整と、を行う機能を有している。
【0113】
図17に示すように、第4実施形態のレンズ特性測定装置10Cは、統括制御部58が走査設定部88及び点像数調整部90として機能する点を除けば上記第1実施形態のレンズ特性測定装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0114】
走査設定部88は、操作スイッチ16に入力された走査設定操作に応じて、光学系制御部62に対して、線状光束46の走査範囲、走査ピッチ、及び走査パターンの設定指令を行う。この指令を受けて、光学系制御部62は、走査光学系35のスキャナ42の駆動を制御して、線状光束46の走査範囲、走査ピッチ、及び走査パターンの設定を行う。
【0115】
<走査範囲及び走査ピッチの設定>
図18は、ハルトマンプレート201及びスクリーン202を備える比較例のレンズ特性測定装置300の概略図であって、且つ走査光学系35による線状光束46の走査範囲及び走査ピッチの設定(変更)により得られる効果を説明するための説明図である。なお、
図18の符号RAは度数が0Dの眼鏡レンズ102Aの光学測定を行う例を示し、
図18の符号RBはプラス度数の眼鏡レンズ102Bの光学測定を行う例を示し、
図18の符号RCはマイナス度数の眼鏡レンズ102Cの光学測定を行う例を示す。
【0116】
図18に示すように、比較例のレンズ特性測定装置に設けられているハルトマンプレート201は、等間隔のピンホール(不図示)を有している。このため、
図18の符号RAに示すように、度数0Dの眼鏡レンズ102Aの光学測定を行う場合、眼鏡レンズ102A上での測定範囲SR及び測定ピッチSPはハルトマンプレート201の各ピンホールの形成範囲及びピッチに等しくなる。なお、測定範囲SRはレンズ特性測定装置10Cにおける線状光束46の走査範囲に相当し、測定ピッチSPはレンズ特性測定装置10Cにおける線状光束46の走査ピッチに相当する。
【0117】
一方、
図18の符号RBに示すように、プラス度数の眼鏡レンズ102Bの光学測定を行う場合、測定範囲SRは拡大されるものの、測定ピッチSPが粗くなるという問題が生じる。また逆に、
図18の符号RCに示すように、マイナス度数の眼鏡レンズ102Cの光学測定を行う場合、測定ピッチSPは細かくなるものの、測定範囲SRが狭くなるという問題が生じる。
【0118】
このような比較例に対して、第4実施形態のレンズ特性測定装置10Cは、ハルトマンプレート201を用いずに線状光束46を走査するスキャナタイプであるので、眼鏡レンズ102A~102Cの種類に応じて、走査光学系35による線状光束46の走査範囲及び走査ピッチを任意に設定できる。その結果、眼鏡レンズ102A~102Cの種類に関わらず、測定範囲SRを拡大し且つ測定ピッチSPを細かくすることができる。
【0119】
また、第4実施形態のレンズ特性測定装置10Cは、例えば眼鏡レンズ102が累進レンズである場合、この累進レンズの累進帯近傍では細かなピッチで線状光束46を走査し、且つ度数変化の小さな領域及び累進レンズの外周部などの累進レンズの光学性能に影響の少ない領域では粗いピッチで線状光束46を走査することができる。
【0120】
このように第4実施形態のレンズ特性測定装置10Cでは、眼鏡レンズ102,102A~102Cの種類に応じて、走査光学系35による線状光束46の走査範囲及び走査ピッチを設定(変更)可能である。このため、眼鏡レンズ102等のレンズ全体の度数あるいは部分的な度数変化に応じて線状光束46の走査ピッチを変更することにより、測定精度の向上及び走査範囲の拡大が可能である。
【0121】
<走査パターンの設定>
走査光学系35による線状光束46の走査パターンを、リング状あるいは他の特殊形状のパターンに設定(変更)可能にした場合、眼鏡レンズ102の透過前後の線状光束46のパターンの形状変化を測定することで、眼鏡レンズ102の度数分布の測定が可能となる。
【0122】
<点像数の調整>
図19は、撮影画像52に含まれる線状光束46による点像の点像数の調整を説明するための説明図である。
図17及び
図19に示すように、点像数調整部90は、操作スイッチ16に対する点像数の入力操作に応じて、光学系制御部62及び撮影制御部64に対して点像数の調整指令を行う。
【0123】
点像数の調整指令を受けた光学系制御部62は、走査光学系35のスキャナ42の走査速度を調整する。例えば1フレーム分の撮影画像52に含まれる点像数を増加させる場合にはスキャナ42の走査速度を増加させ、逆に点像数を減らす場合にはスキャナ42の走査速度を減少させる。
【0124】
また、点像数の調整指令を受けた撮影制御部64は、カメラ50の撮像素子50Bの駆動を制御して、撮像素子50Bの露光時間(シャッター速度)を調整する。例えば、撮像素子50Bは、スキャナ42の走査速度に基づき、点像数の調整指令で指定された数の線状光束46による点像が1フレーム分の撮影画像52に含まれるように、撮像素子50Bの露光時間を調整する。なお、撮像素子50Bの露光時間は固定して(撮像素子50Bの制御は行わずに)、スキャナ42の走査速度のみを調整してもよい。
【0125】
このようにスキャナ42及び撮像素子50Bを制御することで、
図19の符号TAに示すように、1フレーム分の撮影画像52に含まれる点像数を1個に調整したり、或いは
図19の符号TBに示すように、1フレーム分の撮影画像52に含まれる点像数を複数点に調整したりすることができる。特にスキャナ42の走査速度を増加させて、1フレーム分の撮影画像52に含まれる点像数を増加させるほど、眼鏡レンズ102の光学測定を短時間で完了することができる。
【0126】
なお、1フレーム分の撮影画像52に含まれる点像数を増加させた場合、既述の
図23の符号UB,UCに示したように、眼鏡レンズ102の種類(例えばプラスの強度数の凸レンズ)によっては、スクリーン36に投影される線状光束46による点像が重なったり或いは位置関係が反転したりするおそれがある。この場合、点像数調整部90を作動させて、スキャナ42の走査速度を低下させることで、撮影画像52に含まれる点像数を減少(例えば1点に減少)させる。
【0127】
また、スキャナ42の走査速度を低下させる代わりに、移動制御部60により移動部54を制御して、線状光束46による点像の重なり及び位置関係の反転が発生しない位置までスクリーン36を移動させたり、或いはスクリーン36を移動させることでその移動前後での点像の位置を確認したりしてもよい。
【0128】
なお、上記第2実施形態のレンズ特性測定装置10A及び第3実施形態のレンズ特性測定装置10Bにも、線状光束46の走査範囲、走査ピッチ、及び走査パターンの設定機能と、1フレーム分の撮影画像52に含まれる点像数の調整機能とを具備させてもよい。
【0129】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態のレンズ特性測定装置10D(
図20参照)について説明を行う。上記各実施形態のスキャナ42は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φを調整することにより、線状光束46が2次元方向に走査されるように線状光束46の走査角度(出射角度ともいう)を調整している。なお、線状光束46の走査角度とは、例えば、各ガルバノミラー42Aが揺動中心位置にある場合にスキャナ42から出射される線状光束46、すなわちスキャナ42の走査中心位置における線状光束46に平行な基準方向(
図20中の一点鎖線で表示)を基準とする角度(
図20中のxy方向の角度)である。
【0130】
この際に、スキャナ42の種類、例えばガルバノスキャナ及びMEMSスキャナ(2軸MEMSミラー)、特にMEMSスキャナでは、ミラーの揺動角度θ,φの再現性が低いという問題がある。ここでいう再現性が低いとは、既述の光学系制御部62によるミラーの揺動角度θ,φの指示値(制御値、設定値、指定値、又は目標値ともいう)と、実際のミラーの揺動角度θ,φとの間に乖離が生じることがある。
【0131】
このようにミラーの揺動角度θ,φの再現性が低くなると、ミラーの揺動角度θ,φの指示値は同じであっても、実際のミラーの揺動角度θ,φに変動が生じるため、これに応じてスキャナ42から出射される線状光束46の走査角度にも変動が生じてしまう。この場合には、既述の各走査位置Pがそれぞれ変動するため、光学特性取得部70による眼鏡レンズ102の光学特性の測定精度が低下したり、光学特性取得部70により取得される眼鏡レンズ102の光学特性のマッピング画像(SCAマッピング画像)の再現性が低下したりするという問題が発生する。なお、「SCA」のSは球面度数(spherical)、Cは乱視度数(cylinder)、及びAは乱視軸(Axis)である。
【0132】
また、眼鏡レンズ102の表面(レンズ面)の精度と、この表面上のごみ及び傷とを考慮した場合、ミラーの揺動角度θ,φの再現性、すなわちスキャナ42から出射される線状光束46の走査角度の再現性は高い方が望ましい。
【0133】
そこで、第5実施形態のレンズ特性測定装置10D(
図20参照)は、光学系制御部62による各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの制御(本発明の走査角度の制御に相当)の補正を行う。
【0134】
図20は、第5実施形態のレンズ特性測定装置10Dの走査光学系35、スクリーン36、及び撮影光学系37の概略図である。
図20に示すように、レンズ特性測定装置10Dは、ハーフミラー400及び受光光学系402を備える点を除けば、上記第1実施形態のレンズ特性測定装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0135】
ハーフミラー400は、本発明の第2光分割部に相当するものであり、コリメータ44と、セット部20にセットされた眼鏡レンズ102の表面との間に設けられている。このハーフミラー400は、コリメータ44から出射された線状光束46の一部を後述の受光光学系402に向けて反射し、線状光束46の残りをそのまま透過させて眼鏡レンズ102に向けて出射する。
【0136】
受光光学系402は、レンズ404、レンズ406、及びCCD型(CMOS型でも可)の撮像素子408を備える。レンズ404,406は、ハーフミラー400にて反射された線状光束46を撮像素子408の受光面に入射させる。
【0137】
撮像素子408は、ハーフミラー400からレンズ404,406を通して入射された線状光束46を受光する受光面を有している。そして、撮像素子408は、線状光束46を受光面で受光(撮像)して受光信号を統括制御部58へ出力する。この受光信号は、撮像素子408の受光面での線状光束46の受光位置(受光面内の画素の位置座標)を示す。
【0138】
ここで、撮像素子408の受光面にて受光される線状光束46の受光位置は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ、すなわちスキャナ42から出射される線状光束46の走査角度(θ,φ)ごとに異なる。このため、受光面上での線状光束46の受光位置と、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ(線状光束46の走査角度)との間には1対1の関係が成り立つ。従って、受光面上での線状光束46の受光位置から、各ガルバノミラー42Aの実際の揺動角度θ,φが求められる。
【0139】
図21は、第5実施形態のレンズ特性測定装置10Dの統括制御部58の機能ブロック図である。
図21に示すように、第5実施形態の統括制御部58は、前述の各部の他に測定値取得部410及び補正部412として機能する点を除けば、上記第1実施形態の統括制御部58と基本的に同じである。
【0140】
測定値取得部410は、撮像素子408から入力された受光信号と、記憶部59から取得した対応情報414とに基づき、各ガルバノミラー42Aの実際の揺動角度θ,φの測定値(実測値ともいう)を取得する。対応情報414は、既述の受光面上での線状光束46の受光位置と、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φとの対応関係を示す情報であり、予め実験又はシミュレーション等を行うことにより作成されている。これにより、測定値取得部410は、撮像素子408からの受光信号に基づき受光面内での線状光束46の受光位置を判別し、さらにこの受光位置に基づき対応情報414を参照することにより、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値を取得する。
【0141】
各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値は、本発明の走査角度の測定値に相当する。そして、測定値取得部410は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値に関する情報を補正部412へ出力する。
【0142】
補正部412は、光学系制御部62による各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの制御を補正する。補正部412は、測定値取得部410から各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値を取得すると共に、光学系制御部62から各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの指示値を取得する。この指示値は、本発明の走査角度の指示値に相当する。
【0143】
次いで、補正部412は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値と指示値とを比較した結果に基づき、各揺動角度θ,φの測定値が指示値に一致するように、光学系制御部62による揺動角度θ,φの制御を補正する。これにより、補正部412は、光学系制御部62による線状光束46の走査角度の制御を補正することができる。
【0144】
図22は、第5実施形態のレンズ特性測定装置10Dによる各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの補正制御の流れを示すフローチャートである。
図22に示すように、既述の
図10に示したステップS3,S6において、光学系制御部62が、走査光学系35を制御してスキャナ42から線状光束46を出射させると、この線状光束46がミラー43及びコリメータ44を介してハーフミラー400に入射する。そして、線状光束46の一部が、ハーフミラー400によって分割されると共に受光光学系402に向けて反射される(ステップS20、本発明の光分割ステップに相当)。
【0145】
ハーフミラー400によって反射された線状光束46は、受光光学系402の撮像素子408の受光面で受光される(ステップS21、本発明の受光ステップに相当)。これにより、撮像素子408から受光信号が測定値取得部410へ出力される。
【0146】
測定値取得部410は、撮像素子408から入力された受光信号が示す受光面上での線状光束46の受光位置に基づき、記憶部59から読み出した対応情報414を参照して、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値を取得する(ステップS22、本発明の測定値取得ステップに相当)。そして、測定値取得部410は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値を補正部412へ出力する。
【0147】
補正部412は、測定値取得部410から各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値を取得する。また、補正部412は、光学系制御部62から各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの指示値を取得する(ステップS23)。なお、この指示値の取得のタイミングは、ステップS22の後に限定されるものではなく、ステップS22の前であってもよい。
【0148】
そして、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値と指示値とを比較した結果に基づき、光学系制御部62による揺動角度θ,φの制御を補正する(ステップS24、本発明の補正ステップに相当)。これにより、各ガルバノミラー42Aの実際の揺動角度θ,φ(線状光束46の走査角度)がその指示値と一致する。
【0149】
このように第5実施形態のレンズ特性測定装置10Dでは、光学系制御部62による各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの制御を補正することで、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ(線状光束46の走査角度)の指示値に対する測定値の誤差を低減させることができる。これにより、指示値に対する各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの変動、すなわちスキャナ42から出射される線状光束46の走査角度の変動が低減される。その結果、既述の各走査位置Pの変動が抑えられるので、光学特性取得部70による眼鏡レンズ102の光学特性の測定精度及び光学特性のマッピング画像の再現性が向上する。
【0150】
上記第5実施形態では、コリメータ44と、セット部20にセットされた眼鏡レンズ102の表面との間にハーフミラー400を配置しているが、例えばスキャナ42とミラー43との間に配置したり、或いはミラー43とコリメータ44との間に配置したりしてもよい。また、ミラー43をハーフミラー400に置換してもよい。すなわち、スキャナ42から眼鏡レンズ102の表面に至る線状光束46の光路の途中位置であれば、ハーフミラー400の配置位置は特に限定はされない。
【0151】
上記第5実施形態で説明した各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの制御の補正は、スクリーン36の光軸方向位置ごとの線状光束46の走査で毎回行わなくてもよい。例えば、この補正を、既述の
図10に示したステップS3(線状光束46の1回目の走査)では行わずに、ステップS6(線状光束46の2回目の走査)で行ってもよい。
【0152】
この場合、補正部412は、線状光束46の1回目の走査で測定値取得部410から取得した各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値を、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの指示値として用いる。これにより、線状光束46の2回目の走査における各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φを、線状光束46の1回目の走査における各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値に合せることができる。その結果、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの再現性が低い場合でも、眼鏡レンズ102の表面上の同一の走査位置Pに対応した各光学的距離LO1,LO2での投影位置Q1,Q2の位置座標を、走査位置Pごとに取得することができる。
【0153】
上記第5実施形態では、第1実施形態のレンズ特性測定装置10に対して各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの制御を補正する機能を追加した例について説明しているが、第2実施形態から第4実施形態に対しても同様の機能を追加してもよい。
【0154】
[その他]
上記各実施形態では、眼鏡レンズ102とスクリーン36との間の光学的距離として、第1光学的距離LO1及び第2光学的距離LO2を設定しているが、光学的距離を3以上に複数設定してもよい。例えば、上記第1実施形態では、スクリーン36等を3以上の光軸方向位置に位置決めする。また、上記第2実施形態では、眼鏡レンズ102を透過した線状光束46を3以上の光路に分割すると共に3組以上のスクリーン36及び撮影光学系37を設ける。さらに、上記第3実施形態では、屈折率の異なる複数種類の光学部材を光路OP3に選択的に挿脱する。
【0155】
上記各実施形態では、眼鏡フレーム101の左右の眼鏡レンズ102の光学特性を眼鏡フレーム101の置き換えなしに測定するレンズ特性測定装置10等を例にあげて説明したが、例えば左右の眼鏡レンズ102の光学特性を片方ずつ測定するレンズ特性測定装置(レンズメータ)、及び生地レンズの光学特性を測定するレンズ特性測定装置(レンズメータ)等の各種の被検レンズを測定するレンズ特性測定装置に本発明を適用できる。また、眼鏡以外の各種用途の被検レンズの光学特性を測定するレンズ特性測定装置に対しても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0156】
10,10A,10B,10C,10D…レンズ特性測定装置,
35…走査光学系,
36,36A,36B…スクリーン,
37,37A,37B…撮影光学系,
40…光源,
42…スキャナ,
46…線状光束,
50…カメラ,
52…撮影画像,
54…移動部,
58…統括制御部,
60…移動制御部,
62…光学系制御部,
64…撮影制御部,
68…位置取得部,
70…光学特性取得部,
76…ハーフミラー,
80…ガラス板,
81…挿脱部,
84…挿脱制御部,
88…走査設定部,
90…点像数調整部,
101…眼鏡フレーム,
102…眼鏡レンズ