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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】遠心送風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/66 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
F04D29/66 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018137605
(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2020016152
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】盧 波
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-002395(JP,A)
【文献】特開2017-125405(JP,A)
【文献】特開2014-047750(JP,A)
【文献】特開2014-020235(JP,A)
【文献】特開2012-207600(JP,A)
【文献】特開2000-291590(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0270286(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0200187(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111852905(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107366626(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸中心側の内側空間と該内側空間の周囲に配置された複数の羽根を備え、回転することで前記内側空間から前記複数の羽根の間を介して遠心方向に排気を行うインペラと、
前記インペラを回転自在な状態で内側に納めた渦巻き形状のケーシングと、
前記ケーシングに設けられた吸込口と、
を備え、
前記吸込口は、前記インペラの前記内側空間を臨む位置に設けられた開口であり、
前記吸込口の内側には、前記インペラに向かって内径が漸次減少する空間を構成する第1の領域面と、
前記第1の領域面よりも前記インペラに近い側にあり、前記インペラに向かって内径が漸次増加する空間を構成する第2の領域面が形成され、
前記インペラは、前記複数の羽根と、前記複数羽根の端部を連結する環状の連結リングを備え、
前記複数の羽根は、前記吸込口と軸方向逆側へ向かうに従って内径が漸次減少する縮径部分を有し、
前記第2の領域面の前記インペラ側の前記端部から前記インペラの方向に延在する環状の凸部を備え、
前記環状の凸部は、前記連結リングの径方向内側に位置し、前記環状の凸部の先端は、前記縮径部分の縮径が始まる始端の軸方向位置よりも前記吸込口の軸方向逆側に位置するとともに、前記複数の羽根の前記縮径部分に僅かな隙間を隔てて対向して配置されている遠心送風機。
【請求項2】
前記吸込口の軸方向における長さをL1、
前記第2の領域面の軸方向における長さをL2とした場合、
L2>(1/2)L1である請求項1に記載の遠心送風機。
【請求項3】
前記第2の領域面の内側の空間の前記インペラ側でない端部の内径をR1、
前記第2の領域面の内側の空間の前記インペラ側の端部の内径をR2とした場合、
R2/R1<1.03である請求項1または2に記載の遠心送風機。
【請求項4】
前記吸込口の最上流側に前記ケーシングの軸方向外側に向って延在する環状の突起部が設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の遠心送風機。
【請求項5】
前記第1の領域面と前記環状の突起部との間に段差が設けられている請求項4に記載の遠心送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音を低減した遠心送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心送風機は、家電機器、OA機器、産業用や車両用の空気調和装置における送風、換気、冷却等に広く用いられている。これらの機器や装置に用いられる遠心送風機には、遠心送風機から発生する騒音を低くすることが望まれている。
【0003】
特許文献1に記載されている遠心送風機では、ケーシングに形成された空気吸入部411に、当該空気吸入部411の頂部413に沿って気流が流れるように運動量を付加する運動量付加機構43が設けられている。当該運動量付加機構43は、空気吸入部411における空気流れ上流側に向かって突き出た頂部413よりも外側の外側壁面部415の少なくとも一部に設けられている。これによって、騒音の低減、送風効率の向上を図っている。
【0004】
特許文献1の遠心送風機において、ケーシング4の空気吸入部411の内側壁面部414は、空気流れ上流側から下流側端部412に向かって径が徐々に小さくなっており、空気吸入部411の下流側端部412が内側壁面部414における最小径となる部位を構成している。そして、空気吸入部411における空気流れ上流側に突き出た頂部413から空気吸入部411における頂部413よりも外側の外側壁面部415の端部415aに至る外周側範囲に、外側壁面部415側からの気流が頂部413に沿って流れるように運動量を付加する運動量付加機構43が設けられている。
【0005】
この構造では、空気吸入部411の側方から流入する気流が、頂部413の手前に設けられた突起部431を乗り越える際に乱れ、突起部431を乗り越えた気流が、突起部431以降の空気吸入部411の表面に乱流境界層を形成する。乱流境界層では、空気吸入部411の表面に近い気流に対して、空気吸入部411の表面から離れた気流の運動量が付加される。このため、空気吸入部411の表面に近い気流と空気吸入部411の表面から離れた気流との速度差が縮小する。これにより、空気吸入部411の頂部413付近における気流の剥離が抑えられ、空気吸入部411における気流の剥離に起因する騒音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-125405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された遠心送風機は、外側壁面部415側からの気流が頂部413に沿って流れるように、頂部413よりも外側の外側壁面部415の端部415aに至る外周側範囲に運動量を付加する運動量付加機構43を設けたものである。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された遠心送風機において、ケーシング4の空気吸入部411の内側壁面部414は、空気流れ上流側から下流側端部412に向かって径が徐々に小さくなっており、空気吸入部411の下流側端部412が内側壁面部414における最小径となる部位を構成している。このため、空気吸入部における空気の流入に起因する騒音の低減が必ずしも十分ではない。
【0009】
本発明は、上記の観点に鑑み、ケーシングの空気吸入部の内側壁面の形状を工夫することによって、空気の流入に起因する騒音を低減できる遠心送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、軸中心側の内側空間と該内側空間の周囲に配置された複数の羽根を備え、回転することで前記内側空間から前記複数の羽根の間を介して遠心方向に排気を行うインペラと、前記インペラを回転自在な状態で内側に納めた渦巻き形状のケーシングと、前記ケーシングに設けられた吸込口と、を備え、前記吸込口は、前記インペラの前記内側空間を臨む位置に設けられた開口であり、前記吸込口の内側には、前記インペラに向かって内径が漸次減少する空間を構成する第1の領域面と、前記第1の領域面よりも前記インペラに近い側にあり、前記インペラに向かって内径が漸次増加する空間を構成する第2の領域面が形成され、前記インペラは、前記複数の羽根と、前記複数羽根の端部を連結する環状の連結リングを備え、前記複数の羽根は、前記吸込口と軸方向逆側へ向かうに従って内径が漸次減少する縮径部分を有し、前記第2の領域面の前記インペラ側の前記端部から前記インペラの方向に延在する環状の凸部を備え、前記環状の凸部は、前記連結リングの径方向内側に位置し、前記環状の凸部の先端は、前記縮径部分の縮径が始まる始端の軸方向位置よりも前記吸込口の軸方向逆側に位置するとともに、前記複数の羽根の前記縮径部分に僅かな隙間を隔てて対向して配置されている遠心送風機である。
【0011】
本発明において、前記吸込口の軸方向における長さをL1、前記第2の領域面の軸方向における長さをL2とした場合、L2>(1/2)L1である構造は好ましい。本発明において、前記第2の領域面の内側の空間の前記インペラ側でない端部の内径をR1、前記第2の領域面の内側の空間の前記インペラ側の端部の内径をR2とした場合、R2/R1<1.03である構造は好ましい。
【0012】
本発明において、前記吸込口の最上流側に前記ケーシングの軸方向外側に向って延在する環状の突起部が設けられている構造は好ましい。更にこの構造において、前記第1の領域面と前記環状の突起部との間に段差が設けられている構造は好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ケーシングの空気吸入部の内側壁面の形状を工夫することによって、空気の流入に起因する騒音を低減できる遠心送風機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の遠心送風機の斜視図である。
図2図1に示す実施例1の遠心送風機の断面図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】実施例2の遠心送風機の断面図である。
図5】実施例2の変形例の遠心送風機の断面図である。
図6】比較例の遠心送風機の断面図である。
図7】風量領域Aでの騒音の音圧レベルと周波数の関係を示す図である。
図8】風量領域Bでの騒音の音圧レベルと周波数の関係を示す図である。
図9】従来の遠心ファン(特許文献1)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施例1
図1は、実施例1の遠心送風機100の斜視図である。図2は、図1に示す遠心送風機100の断面図である。図3は、図2の部分拡大図である。
【0016】
(概要)
遠心送風機100は、軸中心側の内側空間と該内側空間の周囲の環状の部分に配置された複数の羽根121を備え、回転することで前記内側空間から複数の羽根121の間を介して遠心方向に排気を行うインペラ120と、インペラ120を回転自在な状態で内側に納めた渦巻き形状のケーシング110と、インペラ120の内側空間を臨む位置に設けられた開口であり、インペラ120の内側空間に空気を導く吸込口114とを備え、吸込口114の内側には、インペラ120に向かって徐々に内径が縮径する第1の領域を囲む上流側領域面118a(図2参照)と、上流側領域面118aよりもインペラ120に近い側にあり、インペラ120に向かって徐々に内径が拡径する第2の領域を囲む下流側領域面118bを備えている。
【0017】
(遠心送風機の構造)
図1には、実施形態の送風機100が示されている。送風機100は、ケーシング110を備えている。ケーシング110は、樹脂で成形した上ケーシング111と、樹脂で成形した下ケーシング112から構成されている。ケーシング110の内側には、複数の羽根121を備えたインペラ120が回転可能(回転自在)な状態で収納されている。
【0018】
ケーシング110の内側には、渦巻き状の流路113(図2参照)が形成されている。流路113は、インペラ120とケーシング110の間の隙間が最小となる部分を始端とし、そこから周方向に進むに従って断面積が徐々に大きくなる構造を有している。流路113の終端には、吐出口115が形成されている。すなわち、渦巻き状の流路113は、吐出口115に向かって徐々に断面積が拡大する構造を有している。
【0019】
上ケーシング111は、軸方向に開口する吸込口114を備えている。ここで、軸とは、インペラ120の回転軸のことであり、軸方向とはその延在方向のことである。下ケーシング112は他の装置や筐体に取り付けて固定するための固定脚(図示省略)を備えていると共に、インペラ120を回転させるためのモータ130(図2参照)が取り付けられている。
【0020】
図2に示すように、モータ130の回転軸(シャフト131)にインペラ120が固定され、モータ130が回転すると、インペラ120が回転する。インペラ120が回転すると、空気が吸込口114から吸い込まれ、インペラ120の内側(軸中心側の内部空間)に導かれる。この空気が羽根121の作用により、インペラ120の内側から遠心方向に吹き出される。インペラ120から吹き出された空気は、渦巻き状の流路113を図1の吐出口115に向かって流れ、吐出口115から排気される。
【0021】
(インペラの構造)
インペラ120は、底面を構成するカップ状のハブ122と、ハブ122上の外側の環状の部分に軸方向に立てた状態で配置された複数の羽根121と、複数の羽根121のハブ122と反対側の端部を連結する環状の連結リング123とを有している。羽根121はすべて同じ形状で、インペラ120の回転方向に対して凹んだ前向き羽根形状を有し、周方向に均等配置されている。複数の羽根121の内側(軸中心側)には内側空間が設けられ、インペラ120が回転すると、この内側空間から羽根121を介して遠心方向に空気が吹き出される。
【0022】
ハブ122は中央には凸形状に盛り上がったボス部124を有し、ボス部124には貫通孔が形成されている。この貫通孔にモータ130のシャフト131が圧入され、インペラ120がシャフト131に結合されている。シャフト131は、モータ130の回転軸であり、インペラ120と結合されることで、インペラ120の回転軸も兼ねている。ハブ122と複数の羽根121と連結リング123は樹脂で一体成形されて形成されている。
【0023】
(ケーシングの構造)
図1に示すように、ケーシング110は、上ケーシング111と下ケーシング112から構成されており、上ケーシング111と下ケーシング112を結合することで渦巻き構造のケーシング110が構成されている。上ケーシング111の中央には吸込口114となる開口が形成されている。
【0024】
吸込口114は、ケーシング110のインペラ120の内側空間(環状に配置された羽根の内側の空間)を臨む位置に設けられた開口である。インペラ120が回転すると、羽根121の内側(内側空間)から隣接する羽根121の間に形成された隙間を介して、遠心方向に空気が排出される。また、その際、吸込口114から羽根121の内側(内側空間)に空気が流入する。
【0025】
吸込口114は、円筒構造の円筒部116の円形の開口部分および円筒部116の内側の部分を利用して構成されている。円筒部116は、外側壁部117と内側壁部118を有し、内側壁部118で囲まれた略柱状の空間、言い換えると内側壁部118の内側の空間が吸込口114となっている。内側壁部118は、吸込口114に流入した空気をインペラ120の内側に案内する。
【0026】
内側壁部118は、内側壁部118の上端部から下端部に向かって内周側に凸部となる形状を有している。詳しく述べると、内側壁部118の上部(上流側)には、下流に行くに従って円筒部116の内径が漸減する上流側領域面118aが設けられている。また、内側壁部118の下部(下流側)には、下流に行くに従って円筒部116の内径が漸増する下流側領域面118bが設けられている。上流側領域面118aと下流側領域面118bとの境界の部分には、境界部119が設けられている。境界部119の部分で吸込口114の内径が最小となっている。すなわち、環状の上流側領域面118aの内側の空間が、インペラ120に近づくに従って内径が漸次縮径する第1の空間であり、環状の下流側領域面118bの内側の空間が、インペラ120に近づくに従って内径が漸次拡径する第2の空間となる。そして、2つの空間の境の部分が環状の境界部119で囲まれた部分となる。
【0027】
境界部119から上流側である上流側領域面118aは、吸込口114の入口から境界部119に向かって円筒部116の内径が漸次減少する曲面で形成されている。境界部119から下流側である下流側領域面118bは、下流に行くに従って(インペラ120に近づくに従って)円筒部116の内径が漸次増加する傾斜面(テーパー面)で形成されている。すなわち、吸込口114の部分は、入口から下流側に向かって、内径が漸次減少し、最小内径部分である境界部119に至り、そこから下流側に向かって内径が漸次増加する。
【0028】
図3に示すように、円筒部116の下部から、環状の凸部125がインペラ120の方向に延在している。環状の凸部125の内側は、下流側領域面118bの一部を構成している。環状の凸部125の先端は、インペラ120の内側に僅かに突出している。このため、下流側領域面118bの下端がインペラ120の内側に僅かに入り込んでいる。また、内側壁部118の下端部(環状の凸部125の先端)はR面取りが施されている。
【0029】
軸方向における吸込口114の全長L1(内側壁部118の軸方向における長さ)の部分に対して、内側壁部118の下端部(最下流部)から境界部119までの軸方向における長さL2の部分の上端は、吸込口114の全長L1の中点よりも上流側に位置することが好ましい。すなわち、L2>(1/2)L1となる関係が好ましい。なお、L2の最大値は、L2=(3/4)L1程度である。
【0030】
また、図3に示す境界部119、すなわち下流側領域面118bの上端における吸込口114の内径(吸込口114の最小内径)R1に対する下流側領域面118bの下端(インペラ120側の端部)における吸込口114の内径R2の比率は、103%以内にすることが好ましい。すなわち、R2/R1<1.03(但し、R1<R2)の関係とすることが好ましい。なお、(R2/R1)の最小値は、1.015程度である。ここで、R2はインペラ120に流入する開口となるため、R2が一定でR1を可変させたとき、R2/R1が1.03以上になると、吸込口114の最小内径となるR1が小さくなるため、吸込口114に流入する空気の流速が早くなる結果、騒音が大きくなって好ましくない。
【0031】
そして、内側壁部118の下端部のR面が施された最下端部を構成する環状の凸部125の先端部分は、インペラ120の連結リング123の内側に位置すると共に、羽根121の上面と僅かな隙間を隔てて対向している。この僅かな隙間によってラビリンスシール126を形成し、インペラ120の外周側に吹出された空気の流れの一部が、吸込口114の内側へ逆流することを防止している。
【0032】
遠心送風機を用いる機器や装置には、空気の流れを妨げる抵抗が存在する。この抵抗は、システムインピーダンス(または通風抵抗とも呼ばれる)と呼ばれる。所定のシステムインピーダンスを有する装置で遠心送風機を使用した場合、ある点を境に2つの風量領域(本実施の形態では、風量領域A、Bの2つの風量領域)に分けることができる。図7は、図2に示す実施例1の風量領域Aにおける騒音の音圧レベルと周波数の関係を示す図である。ここで、風量領域Aは、風量が70~100m/hの領域の場合である。図7において、破線は、図6に示す比較例の空気吸入部を採用した場合の特性である。
【0033】
図6には、空気吸入部を構成する吸気口151の内径が下流に行くに従って(インペラに近づくに従って)漸次縮径するテーパー形状の壁面152を有した遠心送風機150が示されている。図7から実施例1は、図6に示す比較例の構造に比べて全周波数帯域において、騒音レベルが低減していることがわかる。
【0034】
以下、騒音レベルが抑えられる理由について考察する。まず、上流側領域面118aがあることで、吸込口114の内側の径方向における流速の差が是正される。このため、内側壁面118からの気流の剥離が抑制され、騒音の発生が抑えられる。
【0035】
図6に示す比較例の構造では、空気吸入部を構成する吸気口151の内径が下流に行くに従って(インペラに近づくに従って)漸次縮径するテーパー形状の壁面152を有しているため、吸気口151に流入した空気の流速が速くなり、羽根の間に吸引される際、騒音のレベルが大きくなる要因となっていた。これに対して、本実施形態では、境界部119を過ぎると、徐々に拡径し、流路の断面積が増加する形状となっているので、境界部119を過ぎると、吸込口114に流入した空気の流速は低下する。このため、羽根の間に吸引される際に生じる騒音のレベルが抑制される。
【0036】
2.実施例2
図4に実施例2の断面図を示す。この例では、図2に示す実施例1の構造において、吸込口114の内側壁部118の上端に軸方向に突出する環状の突起部140が設けられている。この環状の突起部140を設けることによって、吸込口114に流入する空気によって生じる共鳴音を改善することができる。
【0037】
また、図5に示すように、吸込口114の内側壁部118の上端に設けられた環状の突起部140の内周側であって、環状の突起部140と内側壁部118との接合部に、平面状の段差部141を形成してもよい。この場合も吸込口114に流入する空気によって生じる共鳴音を改善することができる。
【0038】
図8は、風量領域Bにおける実施例1と実施例2の騒音の音圧レベルと周波数の関係を示す図である。ここで、風量領域Bは、風量が100~140m/hの領域の場合である。
【0039】
図8を見ると、図2の実施例1では、約500Hz付近で大きな音圧レベルを示している。この音は、吸込口に流入する空気によって生じる共鳴音と推測される。これに対して、実施例2は、約500Hz付近に見られる大きな音圧レベルが消滅し、全周波数帯域において、騒音レベルが低減していることがわかる。また、実施例2の変形例(図5)においても、図4と同様の結果が得られることが確認されている。
【符号の説明】
【0040】
100…送風機、110…ケーシング、111…上ケーシング、112…下ケーシング、113…流路、114…吸込口、115…吐出口、116…円筒部、117…外側壁部、118…内側壁部、118a…上流側領域面、118b…下流側領域面、119…境界部、120…インペラ、121…羽根、122…ハブ、123…連結リング、124…ボス部、125…環状の凸部、126…ラビリンスシール、130…モータ、131…シャフト、140…環状の突起部、141…段差部、150…遠心送風機、151…吸気口、152…壁面。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9