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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】軒天構造及び軒先側支持部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/30 20060101AFI20221020BHJP
   E04B 9/02 20060101ALI20221020BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20221020BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
E04B9/30 C
E04B9/02 300
E04B1/64 C
E04B1/70 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018184054
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2019108783
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2017242813
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390036722
【氏名又は名称】神島化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】田原 雅士
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄太
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-170312(JP,A)
【文献】実開昭54-043819(JP,U)
【文献】特開平09-105201(JP,A)
【文献】特開2000-080752(JP,A)
【文献】特開2007-297829(JP,A)
【文献】実開昭50-034966(JP,U)
【文献】韓国登録実用新案第20-0311204(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
E04B 1/64,1/70,1/94
E04D 13/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒天板の軒先側を支持する軒先側支持部材と、前記軒天板の軒元側を支持する軒元側支持部材と、前記軒先側支持部材に設けられており、前記軒天板を軒元側に押圧する押圧手段とを備え、前記押圧手段は、前記軒先側支持部材に形成された縦板部と、前記縦板部に形成された横向きの雌螺子部と、前記雌螺子部に螺合される螺子とからなることを特徴とする軒天構造。
【請求項2】
請求項に記載の軒天構造において、前記軒先側支持部材は、前記軒天板の軒先側の上側に位置する上側部と、前記軒天板の軒先側の下側に位置する下側部と、前記下側部に形成されており、前記軒天板を前記上側部の方向に付勢する付勢部と、を備えることを特徴とする軒天構造。
【請求項3】
請求項に記載の軒天構造において、前記軒先側支持部材は、前記軒天板の軒先側の上側に位置する上側部と、前記軒天板の軒先側の下側に位置する下側部と、前記上側部に形成されており、前記軒天板を前記下側部の方向に付勢する付勢部と、を備えることを特徴とする軒天構造。
【請求項4】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の軒天構造において、前記軒元側支持部材は、前記軒天板の軒元側の上側に位置する上側部と、前記軒天板の軒元側の下側に位置する下側部と、前記下側部に形成されており、前記軒天板を前記上側部の方向に付勢する付勢部と、を備えることを特徴とする軒天構造。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の軒天構造において、前記軒元側支持部材は、前記軒天板の軒元側の上側に位置する上側部と、前記軒天板の軒元側の下側に位置する下側部と、前記上側部に形成されており、前記軒天板を前記下側部の方向に付勢する付勢部と、を備えることを特徴とする軒天構造。
【請求項6】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の軒天構造において、前記軒先側支持部材は桁行方向に間隔をおいて複数配置されており、これら軒先側支持部材及び前記押圧手段が見切によって覆われており、前記見切に設けた通気孔形成部の通気孔を通して軒天裏と屋外とが連通することを特徴とする軒天構造。
【請求項7】
請求項に記載の軒天構造において、前記見切には、前記通気孔を通して浸入した水を下方に落とす水返しが形成されていることを特徴とする軒天構造。
【請求項8】
請求項または請求項に記載の軒天構造において、前記見切の内側には、火災時の熱で膨張する熱膨張防火材が、膨張時に前記通気孔を遮蔽するように配置されていることを特徴とする軒天構造。
【請求項9】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の軒天構造において、前記軒先側支持部材は、軒先側の建物下地の下面に固定されるとともに、前記軒先側の建物下地の屋内側面に固定された補強部材の下面にも固定されていることを特徴とする軒天構造。
【請求項10】
軒天板の軒先側を支持する軒先側支持部材であって、前記軒天板を軒元側に押圧する押圧手段を備え、前記押圧手段は、前記軒先側支持部材に形成された縦板部と、前記縦板部に形成された横向きの雌螺子部と、前記雌螺子部に螺合される螺子とからなることを特徴とする軒先側支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の軒天構造及びこの構造における軒天板の軒先側を支持する軒先側支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
軒天井板の施工においては、軒天板の表面から釘・螺子によって軒天板を建物側に固定するのが一般的である。その場合、釘・螺子部の補修が必要となり、その箇所が目立つという不具合がある。また、一部に固定金物を使用したとしても軒天板の下面から釘・螺子を一切使用しないというのは困難である。
【0003】
特許文献1には、軒天板の支持金物として、軒天板の上面と接触する上面接触部を有する上部支持片と、該軒天板の下面と接触する下面接触部を有する下部支持片とからなり、上部支持片と下部支持片との互いの対向部位にそれぞれ貫通すると共に、該上面接触部及び下面接触部を建物の外壁側に離隔または接近させる方向に沿って形成され、且つ鼻隠し材に固定するための固定具を挿通する切り欠き溝を有し、上面接触部と下面接触部との離間間隔が初期状態では軒天板の厚さよりも大きく設定され、固定具を切り欠き溝に挿入して鼻隠し材に締結するのに伴って上面接触部と下面接触部とが互いに接近し得るように構成をしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-7292号(特許第5777864号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記支持金物では、軒天板の軒元支持側から軒先支持側間の方向(軒の突出方向、梁間方向)における軒天板のガタツキを防止できない。つまり、ガタツキがあると、防火、防水、耐風圧の面で好ましくない。
【0006】
そこで、この発明は、軒天板の軒元支持側から軒先支持側間の方向における軒天板のガタツキを防止できる軒天構造及び軒先側支持部材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するこの発明の軒天構造は、軒天板の軒先側を支持する軒先側支持部材と、前記軒天板の軒元側を支持する軒元側支持部材と、前記軒先側支持部材に設けられており、前記軒天板を軒元側に押圧する押圧手段とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この構成であれば、押圧手段によって軒天板が軒元側に押圧されるので、軒天板の軒元支持側から軒先支持側間の方向における支持隙間の発生を防止して当該方向における軒天板のガタツキを防止できるようになる。
【0009】
前記押圧手段は、前記軒先側支持部材に形成された縦板部と、前記縦板部に形成された横向きの雌螺子部と、前記雌螺子部に螺合される螺子とからなっていてもよい。この構成であれば、螺子を回すという簡単な作業で軒天板を軒元側に押圧することができる。
【0010】
前記軒先側支持部材は、前記軒天板の軒先側の上側に位置する上側部と、前記軒天板の軒先側の下側に位置する下側部と、前記上側部に形成されており、前記軒天板を前記下側部の方向に付勢する付勢部と、を備えてもよい。この構成であれば、軒天板の軒先側における軒天板の厚み方向の支持隙間の発生も防止できるようになり、軒天板の軒先側での前記厚み方向のガタツキも防止でき、さらに、軒天板の厚みにバラツキがあったり、軒天板の厚みが経年変化により痩せが生じたりしても、軒天板を下方から見上げた際に、隣合う軒天板に段差が生じず、見栄えを良くすることができる。
【0011】
前記軒元側支持部材は、前記軒天板の軒元側の上側に位置する上側部と、前記軒天板の軒元側の下側に位置する下側部と、前記上側部に形成されており、前記軒天板を前記下側部の方向に付勢する付勢部と、を備えてもよい。この構成であれば、軒天板の軒元側での厚み方向のガタツキも防止でき、さらに、軒天板の厚みにバラツキがあったり、軒天板の厚みが経年変化により痩せが生じたりしても、軒天板を下方から見上げた際に、隣合う軒天板に段差が生じず、見栄えを良くすることができる。
【0012】
前記軒先側支持部材は桁行方向に間隔をおいて複数配置されており、これら軒先側支持部材及び前記押圧手段が見切によって覆われており、前記見切に設けた通気孔形成部の通気孔を通して軒天裏と屋外とが連通してもよい。この構成であれば、軒天裏の換気が行えるようになる。
【0013】
前記見切には、前記通気孔を通して浸入した水を下方に落とす水返しが形成されていてもよい。この構成であれば、軒天裏への雨水の浸入を抑制できる。
【0014】
前記見切の内側には、火災時の熱で膨張する熱膨張防火材が、膨張時に前記通気孔を遮蔽するように配置されていてもよい。この構成であれば、火災時において炎が前記通気孔から軒天裏に入り込むのを抑制できる。
【0015】
前記軒先側支持部材は、軒先側の建物下地の下面に固定されるとともに、前記軒先側の建物下地の屋内側面に固定された補強部材の下面にも固定されていてもよい。これによれば、前記軒先側支持部材の固定強度を高めることができる。
【0016】
また、この発明の軒先側支持部材は、軒天板の軒先側を支持する軒先側支持部材であって、前記軒天板を軒元側に押圧する押圧手段を備えることを特徴とする。この構成であれば、押圧手段によって軒天板を軒元側に押圧できるので、軒天板の軒元支持側から軒先支持側間の方向における支持隙間の発生を防止することができる。
【0017】
また、前記押圧手段は、前記軒先側支持部材に形成された縦板部と、前記縦板部に形成された横向きの雌螺子部と、前記雌螺子部に螺合される螺子とからなっていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、この発明であれば、軒天板の軒元支持側から軒先支持側間の方向(軒の突出方向、梁間方向)における支持隙間の発生を防止して当該方向における軒天板のガタツキを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態にかかる軒天構造の側面視による説明図である。
図2図1の軒天構造で用いられている軒元側見切の斜視図である。
図3】(a)は図1の軒天構造で用いられている軒元側支持部材の平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
図4図1の軒天構造で用いられている軒元側支持部材の斜視図である。
図5図1の軒天構造で用いられている軒先側支持部材及び釘を示した斜視図である。
図6図5のA-A矢視断面図である。
図7図4の軒先側支持部材の他の例を示した斜視図である。
図8】(a)は図1の軒天構造で用いられている軒先側見切の斜視図、(b)は軒先側見切の通気孔を示す正面図である。
図9図1の軒天構造で用いることができる軒先側見切の斜視図である。
図10図1の軒天構造で用いることができる軒先側見切の変形例の斜視図である。
図11】本発明の他の実施形態にかかる軒先側支持部材を示した斜視図である。
図12】同図(a)は図11の軒先側支持部材の平面図であり、同図(b)は同図(a)のB-B矢視断面図である。
図13】本発明の他の実施形態にかかる軒天構造の軒先側の側面視を示した説明図である。
図14図13の軒天構造で用いられている軒先側支持部材を示した立体図である。
図15図13の軒天構造の施工手順を示した説明図である。
図16】本発明の他の実施形態にかかる軒天構造の軒先側の側面視を示した説明図である。
図17図16の軒天構造で用いられている軒先側支持部材を示した斜視図である。
図18】本発明の他の実施形態にかかる軒天板を斜めに配置した軒天構造の軒元側の側面視を示した説明図である。
図19】(a)は図18の軒元側支持部材の平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
図20図19の軒元側支持部材の斜視図である。
図21】軒元側支持部材の他の変形例を用いた軒天構造の側面図である。
図22】(a)は図21の軒元側支持部材の側面図、(b)は斜視図、(c)は軒元側支持部材に用いられているバネ鋼製の付勢部の斜視図である。
図23】軒元側支持部材の他の変形例を用いた軒天構造の側面図である。
図24】(a)は図23の軒元側支持部材の側面図、(b)は斜視図、(c)は軒元側支持部材に用いられているバネ鋼製の付勢部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づき具体的に説明する。図1に示すように、この実施形態の軒天構造においては、軒元側見切1及び軒元側支持部材(金物)2が、軒元側軒天野縁5の下面から上向きに打ち込まれた釘(螺子釘でもよい)4によって、当該軒元側軒天野縁5に固定されている。前記軒元側軒天野縁5は、水平に打ち込まれた図示しない釘によって、外壁材及び外壁下地に固定されている。
【0021】
前記軒元側見切1は、桁行方向に長い長尺部材(例えば3000mm程度)とされるのに対し、前記軒元側支持部材2は桁行方向に間隔(例えば455mm間隔)を置いて配置される短尺部材とされる。前記釘4は、前記軒元側支持部材2及び前記軒元側見切1の上側部を貫通して前記軒元側軒天野縁5の下面に打ち込まれている。前記軒元側支持部材2は前記軒元側見切1ごと前記軒元側軒天野縁5に釘固定されている。
【0022】
前記軒元側見切1は、図2に示すように、上側部1aと、下側部1bと、これらを繋ぐ立上部1cとを備えて断面略コ字形状を有している。また、図3(a)、(b)、(c)及び図4に示すように、前記軒元側支持部材2も同様に、上側部21と、下側部22と、これらを繋ぐ立上部23とを備えて断面略コ字形状を有している。
【0023】
前記軒元側見切1は、前記軒元側支持部材2の外面を覆うことができるように、当該軒元側支持部材2よりも一回り大きくされている。この軒元側見切1の上側部1aは、前記軒元側軒天野縁5の下面に当接しており、前記立上部1cは外壁材あるいは外壁下地の表面に当接している。
【0024】
また、前記軒元側支持部材2の上側部21は、例えば水平配置される軒天板17の軒元側の上側に位置しており、下側部22は前記軒天板17の軒元側の下側に位置しており、立上部23には前記軒天板17の屋内側の端面が突き当てられる。
【0025】
そして、前記軒元側見切1の上側部1aの屋外側端は、下側に折り返されており、この折り返された部分は、前記軒元側支持部材2の上側部21の屋外側端に係止される。同様に、前記軒元側見切1の下側部1bの屋外側端は、上側に折り返されており、この折り返された部分は、前記軒元側支持部材2の下側部22の屋外側端に係止される。
【0026】
また、前記軒元側支持部材2における下側部22の屋外側端の両縁部には、一部が切り込まれて略中央部が上側に突出するように屈曲された山形形状のバネ性を有する付勢部2aが形成されている。前記付勢部2aの先端裾側は、下側部22と略面一の高さにあり、差し込まれる前記軒天板17の下面によって当該付勢部2aが徐々に下方に押されていくことになる。そして、この付勢部2aは、前記軒天板17の下面に押されて下方に撓むとともに、当該軒天板17を前記上側部21の方向(軒天板17の厚み方向)に押し上げる。
【0027】
一方、軒先側では、軒先側支持部材(金物)3が、軒先側の建物下地である鼻隠し下地12の下面側から上向きに打ち込まれた釘(螺子釘でもよい)18によって、前記鼻隠し下地12に固定されている。また、前記軒先側支持部材3を覆い隠すように軒先側見切14が取り付けられる。
【0028】
前記軒先側見切14は、図8(a)に示すように、上側部14aと、下側部14bと、これらを繋ぐ斜め立上部14cとを備えた断面略Z字形状をなしている。前記軒先側見切14の上側部14aの屋外側端は、上側に折り返されている。同様に、前記軒先側見切14の下側部14bの屋内側端も、上側に折り返されており、この折り返された部分を、前記軒先側支持部材3の下部側を越えたところに位置させている。
【0029】
また、前記軒先側見切14は、桁行方向に長い長尺部材(例えば3000mm程度)とされるのに対して、前記軒先側支持部材3は、桁行方向に間隔(例えば455mm間隔)を置いて配置される短尺部材とされる。そして、前記軒先側見切14は、前記鼻隠し下地12の下面側から上向きに打ち込まれた釘(螺子釘でもよい)19によって、前記鼻隠し下地12の下面に固定されている。前記鼻隠し下地12の屋外側には軒先側の建物部材である鼻隠し11が取り付けられる。前記鼻隠し11は、その下端部が前記軒先側見切14の下端よりも下方に突出するように設けられている。
【0030】
前記軒先側支持部材3は、図5及び図6にも示すように、上側部31と、下側部32と、これらを繋ぐ縦板部33とを備えている。上側部31は、鼻隠し下地12への取り付け部を成すとともに、前記軒天板17の軒先側の上側に位置する部位にもなる。また、前記取り付け部には、前記釘18を通す挿通孔3aが形成されている。
【0031】
また、前記軒先側支持部材3の前記縦板部33は、例えば、上側部31の一部を切り込んで縦方向(軒天板17の端面と平行となる方向)に折り曲げて成るものであり、また、前記下側部32は、例えば、前記縦板部33の端側が横方向に折り曲げられて、前記軒天板17の軒先側の下側に位置している。また、前記縦板部33の略中央位置には、バーリング加工等によって屋外方向に突出する円筒状部が形成されており、この円筒状部内に横方向の雌螺子部3bが形成されている。そして、前記雌螺子部3bには、屋外側から螺子6が螺合されており、この螺子6をドライバーや六角レンチ等によって回すことで、前記軒天板17を軒元側に押し込むことができる。
【0032】
なお、雌螺子部3bは前記のものに限らず、図7に示すように、屋内方向に突出する円筒状部をバーリング加工等によって形成し、この円筒状部内に横方向の雌螺子部3bを形成する形態としてもよいものである。この形態の場合、螺子6を雌螺子部3bに入れやすくなるという利点がある。また、図示はしないが、前記螺子6の先端と前記軒天板17の端面との間に板部材を介在させるようにしてもよい。
【0033】
前記軒天構造を施工する手順としては、例えば、前記軒元側支持部材2を前記軒元側見切1に装着した状態で、前記軒元側支持部材2を、所定ピッチとなる位置において釘4によって前記軒元側軒天野縁5に固定する(軒先側見切14を先付けした後で、軒元側支持部材2を固定する場合もある。)。そして、前記軒天板17の軒元側を前記軒元側支持部材2に差し込み、また、前記軒天板17の軒先側に前記軒先側支持部材3を仮装着した状態で、この軒先側支持部材3を、前記釘18によって前記鼻隠し下地12の下面に固定する。なお、前記の仮装着の状態では、前記螺子6を緩める方向に回しておく。そして、前記螺子6を締める方向に回すことにより、当該螺子6を軒元側に進行させて前記軒天板17を軒元側方向に押し付ける。その後に、前記軒先側見切14及び前記鼻隠し11を取り付ける。もちろん、施工手順はこのような順序に限らない。
【0034】
また、図1の他、図8(a)、(b)にも示すように、前記軒先側見切14、14Aの斜め立上部14cは、例えば、複数のスリット状の通気孔14dが形成された通気孔形成部を構成するようにしてもよい。前記通気孔14dを通して、軒天裏と屋外とが連通することになる。また、前記通気孔形成部は、前記鼻隠し下地12に対向して位置するとともに、下側ほど前記鼻隠し11に近づくように傾斜しており、軒下側から雨水が前記通気孔14dに入り難くなっている。さらに、前記軒先側見切14の内側には、火災時の熱で膨張する熱膨張防火材7が、膨張時に前記通気孔14dを遮蔽するように配置されている。例えば、前記熱膨張防火材7は、テープ状に形成されており、前記軒先側見切14の下側部の内面上で且つ前記通気孔14dの下方側となる位置において桁行方向に貼られている。
【0035】
なお、図9に示すように、軒先側見切14Aを用いることができる。この軒先側見切14Aは、上側部14aを上側から屋内側方向へと折り返すとともに、この折り返し部の端部を、前記通気孔14dからの気流の通過箇所に至らせている。すなわち、前記折り返し部の端部が水返し14eとして機能し、軒天裏への雨水の浸入を抑制できるようになっている。
【0036】
また、図10に示すように、前記の軒先側見切14、14Aよりも軒天裏と屋外との通気を向上させた軒先側見切14Bを使用することもできる。この軒先側見切14Bは、斜め立上部14cの通気孔形成部に設けた通気孔14d以外に、下側部14bの屋内側端の上側折返し部分に、通気孔14fを設けている。
【0037】
このような構成の軒天構造であれば、前記螺子6によって軒天板17が軒元側に押圧されるので、軒天板17の軒元支持側から軒先支持側間の方向(軒の突出方向、梁間方向)における支持隙間の発生を防止して当該方向における軒天板17のガタツキを防止できるようになる。また、押圧手段として前記螺子6を備えると、前記螺子6を回すという簡単な作業で軒天板17を軒元側に押さえつけることができる。
【0038】
また、前記軒先側支持部材3及び前記螺子6を前記軒先側見切14(14A、14B)によって覆う一方、前記軒先側見切14に設けた通気孔形成部の通気孔14d(14f)を通して軒天裏と屋外とを連通させることで、軒天裏の換気が行えるようになる。
【0039】
また、前記軒先側見切14の内側に熱膨張防火材7が配置されていると、火災時において炎が前記通気孔14d(14f)から軒天裏に入り込むのを抑制できる。
【0040】
また、前記軒元側支持部材2が、前記軒天板17を前記上側部21の方向に付勢するバネ性を有する付勢部2aを備えていると、軒天板17の軒元側における軒天板17の厚み方向の支持隙間の発生も防止できるようになり、軒天板17の軒元側での前記厚み方向のガタツキも防止できる。
【0041】
図11及び図12(a)、(b)に示すように、前記軒先側支持部材3についても、その下側部32の屋外側端の両縁部に、一部が切り込まれて略中央部が上側に突出するように屈曲された山形形状のバネ性を有する付勢部3cが形成されていてもよい。前記付勢部3cの先端裾側は、下側部32と略面一の高さにあり、差し込まれる前記軒天板17の下面によって当該付勢部3cが徐々に下方に押されていくことになる。この付勢部3cは、バネ性を備えており、前記軒天板17の下面に押されて下方に撓むとともに、当該軒天板17を前記上側部31の方向(軒天板17の厚み方向)に押し上げる。これによれば、軒天板17の軒先側における軒天板17の厚み方向の支持隙間の発生も防止できるようになり、軒天板17の軒先側での前記厚み方向のガタツキも防止できる。
【0042】
また、図13に示す形態の軒天構造とすることもできる。この軒天構造では、軒先側支持部材3Aを用いている。この軒先側支持部材3Aは、前記鼻隠し下地12の下面に釘18によって固定されるとともに、前記鼻隠し下地12の屋内側(裏側)の縦面に固定された補強部材81の下面側にも固定されている。前記補強部材81は、例えば、縦板部と横板部とを有した短尺のLアングルからなり、前記横板部の下面が前記鼻隠し下地12の下面と面一となるようにして、前記縦板部に横方向に打ち込まれた釘(螺子釘でもよい)82によって、前記鼻隠し下地12に固定される。ここに、前記補強部材81に加わる下方への荷重については、前記釘82が、その引き抜き方向ではなく、せん断方向に受けることになる。
【0043】
前記軒先側支持部材3Aの上側部31には、図14に示しているように、上向きに貫通する挿通孔3dが形成されている。そして、前記補強部材81の横板部には、螺子孔が形成されており、前記挿通孔3dに下から入れた螺子83を前記螺子孔にねじ込むことで、前記軒先側支持部材3Aを前記補強部材81に固定することができる。なお、前記軒先側支持部材3Aにおける上側部31の前記軒天板17の上側で対向する部分の突出長さ及び下側部32の突出長さを、前記軒先側支持部材3に比べて長くしている。また、前記軒先側支持部材3A及び前記補強部材81に、これらの位置決めのための凹凸を設けておくと、前記螺子83の装着作業が容易になる。
【0044】
前記の図13に示した形態の軒天構造であれば、前記補強部材81を備えたことで、前記軒先側支持部材3Aの軒先側での固定強度を高めることができる。
【0045】
また、前記軒天構造を施工する手順としては、例えば、図15に示すように、前記軒天板17の軒先側に前記軒先側支持部材3Aを仮装着した状態で、この軒先側支持部材3Aを、前記螺子83によって前記補強部材81に固定する。さらに、前記釘18によって前記軒先側支持部材3Aを前記鼻隠し下地12の下面に固定する。そして、前記螺子6を締める方向に回すことにより、当該螺子6を軒元側に進行させて前記軒天板17を軒元側方向に押し付けることができる。その後に、前記軒先側見切14及び前記鼻隠し11を取り付ける。もちろん、施工手順はこのような順序に限らない。
【0046】
また、図16に示す形態の軒天構造は、図13に示す形態の軒天構造における軒先側支持部材3Aに替えて、図17に示す軒先側支持部材3Bを用いている。
軒先側支持部材3Bは、上側部31の一部を切り込んで縦方向(軒天板17の端面と平行となる方向)に折り曲げて縦板部33が形成され、この縦板部33の端側が横方向に折り曲げられて軒天板17の軒先側の下側に位置する下側部32が形成されている。そして、上側部31の切り込みの両側に、軒天板17の軒先側の上側に位置する先端上側部311が形成され、軒天板17を下側部32に押し付けるバネ鋼製の付勢部312を設けている。バネ鋼製の付勢部312の軒先側の端部は、バーリングカシメ等によって先端上側部311の下面に接合されている。このバネ鋼製の付勢部312が、軒天板17を下側部32に押し付けることにより、軒天板17の厚みにバラツキがあったり、軒天板17の厚みが経年変化により痩せが生じたりしても、隣合う軒天板17の下面が揃うため、軒天板17を下方から見上げた際に、段差が生じず、見栄えがよい。
【0047】
また、図18に示すように、前記軒天板17を軒先側が低くなる傾斜配置で設けることもできる。この傾斜配置の構成で用いられる軒元側支持部材2Aは、図19(a)、(b)、(c)及び図20にも示すように、上側部21の端部が上側に折り曲げられた取り付け部24を有している。そして、この取り付け部24に釘4が挿通され、この釘4が斜め上方向に軒元側軒天野縁5に打ち込まれることで、当該軒元側支持部材2Aが軒元側軒天野縁5に固定されている。また、この傾斜配置の構成で用いられる軒元側見切1Aも、上側部の端部が上側に折り曲げられて前記取り付け部24に沿うようになっており、この曲げ部分に釘4が打ち込まれる。なお、軒先側においては、例えば、前記補強部材81の横板部を、前記軒天板17の傾斜角度に合わせて、屋内側ほど昇り傾斜するように形成してもよい。この形態において、軒元側支持部材2Aを軒元側見切1A(先付け)の後で固定する場合もある。
【0048】
次に、図21及び図22(a)、(b)、(c)に示すように、前記軒元側支持部材2に替えて、軒元側支持部材2Bを用いることができる。この軒元側支持部材2Bは、上側部21と、下側部22と、これらを繋ぐ立上部23とを備える断面略コ字形状の軒元側支持部材本体210と、この軒元側支持部材本体210の上側部21の下面に取り付けられた、軒天板17を下側部22に押し付けるバネ鋼製の付勢部220とからなる。このバネ鋼製の付勢部220は、軒天板17を軒元側支持部材本体210の下側部22に押し付けているので、軒天板17の厚みにバラツキがあったり、軒天板17の厚みが経年変化により痩せが生じたりしても、軒天板17を下方から見上げた際に、隣合う軒天板17に段差が生じず、見栄えが良い。バネ鋼製の付勢部220は、図22に示すように、軒先側から軒元側に向かって中央部が下面側に垂れ下がり、軒元側が上方に湾曲する一対のバネ片221と、この一対のバネ片221を繋ぐ連結部222とからなり、連結部222が上側部21の軒先側に、バーリングカシメ部223によって接合されている。軒元側支持部材本体210の上側部21の中央には、軒元側支持部材2Bを軒元側軒天野縁5に釘4によって固定するための釘孔224を設けている。
【0049】
次に、図23及び図24(a)、(b)、(c)に示すように、前記軒元側支持部材2に替えて、軒元側支持部材2Cを用いることができる。この軒元側支持部材2Cは、上側部21と、下側部22と、これらを繋ぐ立上部23とを備える断面略コ字形状の軒元側支持部材本体210と、この軒元側支持部材本体210の上側部21の下面に取り付けられた、軒天板17を下側部22に押し付けるバネ鋼製の付勢部220Aとからなる。上側部21の軒先側の端縁には、軒元側軒天野縁5の屋外側の縦面に当接し、水平に打ち込まれる釘(螺子でもよい)4によって軒元側軒天野縁5に固定される取り付け部24が設けられている。取り付け部24には、釘4の釘孔25を設けている。バネ鋼製の付勢部220Aは、軒先側から軒元側に向かって中央部が下面側に垂れ下がり、軒元側が上方に湾曲する形状のバネ部222と、バネ部222の軒先側の端部を上方へ屈曲させた取り付け板部223とからなり、取り付け板部223をバーリングカシメ部223Aによって取り付け部24に接合されている。
【0050】
この軒元側支持部材2Cを用いても、軒元側支持部材2Bと同様に、バネ鋼製の付勢部220Aが、軒天板17を軒元側支持部材本体210の下側部22に押し付けるので、軒天板17の厚みにバラツキがあったり、軒天板17の厚みが経年変化により痩せが生じたりしても、軒天板17を下方から見上げた際に、隣合う軒天板17に段差が生じず、見栄えを良くすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 :軒元側見切
1A :軒元側見切
1a :上側部
1b :下側部
1c :立上部
2、2A、2B、2C :軒元側支持部材
2a :付勢部
3、3A、3B :軒先側支持部材
3a :挿通孔
3b :雌螺子部
3c :付勢部
3d :挿通孔
4 :釘
5 :軒元側軒天野縁
6 :螺子
7 :熱膨張防火材
12 :下地
14、14A、14B :軒先側見切
14a :上側部
14b :下側部
14c :立上部
14d :通気孔
14e :水返し
14f :通気孔
17 :軒天板
18 :釘
21 :上側部
22 :下側部
23 :立上部
24 :取り付け部
25 :釘孔
31 :上側部
32 :下側部
33 :縦板部
81 :補強部材
82 :釘
83 :螺子
210 :軒元側支持部材本体
211 :上側部
212 :下側部
220、220A :付勢部
221 :バネ片
222 :連結部
223、223A :バーリングカシメ部
224 :釘孔
311 :先端上側部
312 :付勢部
図1
図2
図3
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図19
図20
図21
図22
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