(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】応答スイッチ及びそれを用いた聴覚検査装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/12 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
A61B5/12
(21)【出願番号】P 2018194849
(22)【出願日】2018-10-16
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】真木 善成
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0204694(US,A1)
【文献】特開2018-129167(JP,A)
【文献】特開2012-178291(JP,A)
【文献】特開2013-050973(JP,A)
【文献】特開2000-011791(JP,A)
【文献】国際公開第2011/083715(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/12
H01H 13/00 - 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する筐体と、該開口から押下操作部を露出させる押しボタンとを備え、該押下操作部を操作することによって該筐体内に配されたスイッチのON/OFF状態が切り替わるとともに該スイッチのON/OFF状態を本体部
に伝える聴覚検査用応答スイッチであって、
前記筐体は、外側に向けて湾曲する表面部と、該表面部に対向する平坦状の裏面部とを備え、
前記表面部は、前記開口を有し、
前記開口は、該開口が存在しない場合に前記裏面部を含む面に対して最も離隔する位置を含み、
前記押下操作部は、該押下操作部を最も押し下げた状態において、該押下操作部の天面部が前記表面部よりも突出
し、
前記押しボタンは、前記筐体に支持される固定部と、該固定部と前記押下操作部とを繋いで該押下操作部を該筐体に対して非接触状態で支持する弾性部と、を備え、
前記固定部は、前記押下操作部を間に挟む第一固定部と第二固定部とを含んで構成され、
前記弾性部は、前記第一固定部と前記押下操作部とを繋ぐ第一弾性部及び第二弾性部、並びに前記第二固定部と前記押下操作部とを繋ぐ第三弾性部及び第四弾性部を含んで構成され、
前記第一弾性部と前記第二弾性部の一端部はそれぞれ、前記押下操作部に連結する一方、該第一弾性部と該第二弾性部の他端部はそれぞれ、前記第一固定部における該押下操作部に対向する側とは逆側で該第一固定部に連結し、
前記第三弾性部と前記第四弾性部の一端部はそれぞれ、前記押下操作部に連結する一方、該第三弾性部と該第四弾性部の他端部はそれぞれ、前記第二固定部における該押下操作部に対向する側とは逆側で該第二固定部に連結する、ことを特徴とする聴覚検査用応答スイッチ。
【請求項2】
前記押下操作部を操作することによって前記筐体内に配された前記スイッチのON/OFF状態が切り替わるとともに該スイッチのON/OFF状態を無線通信で本体部
に伝える、ことを特徴とする請求項1に記載の聴覚検査用応答スイッチ。
【請求項3】
前記裏面部は、前記表面部に対向する平坦状の裏面部分を備え、
前記裏面部分は、前記開口の直下において前記筐体の短手方向に沿って延在する指かけ部を備えることを特徴とする請求項1
又は2に記載の聴覚検査用応答スイッチ。
【請求項4】
前記指かけ部は、前記筐体の外側に向けて凸状に湾曲する、ことを特徴とする請求項
3に記載の聴覚検査用応答スイッチ。
【請求項5】
前記裏面部は、該裏面部から前記表面部に向かって凹状をなすとともに前記筐体の短手方向に沿って延在する溝部を有し、
前記溝部は、前記開口の直下において前記筐体の短手方向に沿って延在する指かけ部を有する、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の聴覚検査用応答スイッチ。
【請求項6】
前記指かけ部は、前記筐体の外側に向けて凸状に湾曲する、ことを特徴とする請求項
5に記載の聴覚検査用応答スイッチ。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のうちいずれか1項記載の聴覚検査用応答スイッチを用いることを特徴とする聴覚検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の聴覚の検査に用いられるオージオメータ等の聴覚検査装置に関し、提示された検査音に対して被験者が応答する際に用いる応答スイッチ及びそれを用いた聴覚検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被験者の聴覚の検査に用いられるオージオメータは、検査者による操作や自動聴力検査プログラムに従って指令を出力することや、被験者からの応答状況に基づいて聴力レベルを算出することが可能な本体部と、本体部の指令に基づいて被験者に検査音を提示するイヤホンと、被験者が応答する際に用いる応答スイッチと、によって構成されている。応答スイッチには、検査音が聴こえたときに被験者が操作する押下操作部(ボタン)が設けられていて、押下操作部を操作すると応答スイッチのON/OFF状態が切り替わり、被験者の応答状況が伝わるようにしている。
【0003】
従来のオージオメータは、本体部、イヤホン、及び応答スイッチがケーブルで接続される有線式のものが一般的である。このような有線式オージオメータとして特許文献1には、本体部に対してイヤホンと応答スイッチがそれぞれケーブルで接続されたものが示されている。また、本体部、応答スイッチ、イヤホンの順でこれらが直列状にケーブルで接続される有線式オージオメータも知られている。
【0004】
一方最近は、特許文献2に示されているように、本体部、イヤホン、及び応答スイッチが無線通信で接続される無線式オージオメータが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5037735号公報
【文献】特許第6302127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のオージオメータの応答スイッチは、基本的に被験者が手に持って操作することが前提とされていた。そのため、手の指の動きに難があるような被験者は、聴力検査を行う場合に手で持って操作することが難しく、また机などに載置して指または指を使わずに掌や腕などで応答スイッチを操作する場合には、従来の応答ボタンは載置の安定性に欠けるため、正確に応答スイッチを操作できないなど検査結果に影響を及ぼす懸念があった。また、一部のオージオメータでは1台の本体部に対して複数組みのイヤホンと応答スイッチを接続して、複数の被験者に対して同時に聴力検査を行えるものも知られているが、その場合には、ある被験者が他の被験者の近くで応答スイッチを操作することが考えられる。この場合、ある被験者が押下操作部を操作したことにより生じる音によって、聴力検査に影響を及ぼす懸念がある。
また、応答スイッチの接続方式が有線式から無線式に変わると、ケーブルが不要になることに伴って、様々な点に影響が及ぶことが想定される。例えば、有線式オージオメータであれば、操作にあたって応答スイッチを保持する際、応答スイッチの筐体だけでなく、筐体に接続されたケーブルを掴むこともできるが、無線式オージオメータにおいて応答スイッチを保持することができる部分は筐体のみになるため、より持ちやすくなる工夫も必要である。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであって、従来のオージオメータが抱えていた課題や接続方式が有線から無線に変わることに伴う課題などの種々の不具合を改善することが可能であって、例えば机などに載置して聴力検査を行う場合に検査をより正確に行うことや、複数の被験者に対して同時に聴力検査を行う場合に検査をより正確に行うことや、持ちやすさに優れることなどが実現できる応答スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の聴覚検査用応答スイッチは、開口を有する筐体と、該開口から押下操作部を露出させる押しボタンとを備え、該押下操作部を操作することによって該筐体内に配されたスイッチのON/OFF状態が切り替わるとともに該スイッチのON/OFF状態を本体部に伝えるものであって、前記筐体は、外側に向けて湾曲する表面部と、該表面部に対向する平坦状の裏面部とを備え、前記表面部は、前記開口を有し、前記開口は、該開口が存在しない場合に前記裏面部を含む面に対して最も離隔する位置を含み、前記押下操作部は、該押下操作部を最も押し下げた状態において、該押下操作部の天面部が前記表面部よりも突出し、前記押しボタンは、前記筐体に支持される固定部と、該固定部と前記押下操作部とを繋いで該押下操作部を該筐体に対して非接触状態で支持する弾性部と、を備え、前記固定部は、前記押下操作部を間に挟む第一固定部と第二固定部とを含んで構成され、前記弾性部は、前記第一固定部と前記押下操作部とを繋ぐ第一弾性部及び第二弾性部、並びに前記第二固定部と前記押下操作部とを繋ぐ第三弾性部及び第四弾性部を含んで構成され、前記第一弾性部と前記第二弾性部の一端部はそれぞれ、前記押下操作部に連結する一方、該第一弾性部と該第二弾性部の他端部はそれぞれ、前記第一固定部における該押下操作部に対向する側とは逆側で該第一固定部に連結し、前記第三弾性部と前記第四弾性部の一端部はそれぞれ、前記押下操作部に連結する一方、該第三弾性部と該第四弾性部の他端部はそれぞれ、前記第二固定部における該押下操作部に対向する側とは逆側で該第二固定部に連結する、ことを特徴とする。
【0009】
このような応答スイッチは、前記押下操作部を操作することによって前記筐体内に配された前記スイッチのON/OFF状態が切り替わるとともに該スイッチのON/OFF状態を無線通信で本体部に伝えることが好ましい。
【0012】
また前記裏面部は、前記表面部に対向する平坦状の裏面部分を備え、前記裏面部分は、前記開口の直下において前記筐体の短手方向に沿って延在する指かけ部を備えることが好ましい。
【0013】
そして前記指かけ部は、前記筐体の外側に向けて凸状に湾曲することが好ましい。
【0014】
また前記裏面部は、該裏面部から前記表面部に向かって凹状をなすとともに前記筐体の短手方向に沿って延在する溝部を有し、前記溝部は、前記開口の直下において前記筐体の短手方向に沿って延在する指かけ部を有することが好ましい。
【0015】
そして前記指かけ部は、前記筐体の外側に向けて凸状に湾曲することが好ましい。
【0016】
また本発明は、上述した聴覚検査用応答スイッチを用いた聴覚検査装置でもある。
【発明の効果】
【0017】
本発明の応答スイッチによれば、筐体に、外側に向けて湾曲する表面部と、表面部に対向する平坦状の裏面部とを設け、表面部に、裏面部に対して最も離隔する位置に押下操作部を露出させる開口を設けるので、指を使わずに掌や腕などで押下操作部を押し下げることができるため、手の指の動きに難がある被験者に対しても、聴力検査を行うことができる。
また押しボタンの押下操作部は、筐体に対して非接触状態で支持されるため、応答スイッチを操作した際に筐体との接触音が生じることがない。このため、複数の被験者に対して同時に聴力検査を行う場合に、ある被験者が押下操作部を押し下げたことが他の被験者に対して接触音として理解されることがないため、検査をより正確に行うことができる。
そして筐体の裏面部に、裏面に対して筐体の短手方向に沿って延在する指かけ部を設ける場合は、片手で筐体を保持した際にこの指かけ部に人差し指をかけることができるため、より持ちやすくなる。
また、本発明の応答スイッチは無線式に限らず有線式で用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に従う応答スイッチの一実施形態を示した図であって、
図1(a)は平面図であり、
図1(b)は底面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1に示した応答スイッチの側面図であり、
図2(b)は、
図1(a)に示したA-Aに沿う断面図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1に示した応答スイッチを構成する押しボタンの平面図であって、
図3(b)は、
図3(a)に示したB-Bに沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に従う応答スイッチの一実施形態について説明する。なお、本明細書等においては便宜上、
図1(a)に示す側を「表」とし、
図1(b)に示す側を「裏」として説明する。また
図1(a)において、短手方向に延在する開口(前方開口16)が位置する側を「前」とし、前方開口16よりも短手方向の長さが短い開口(後方開口17)が位置する側を「後」として説明する。
【0020】
本実施形態の応答スイッチは、図示を省略する本体部及びイヤホンとともに、聴力検査を行うためのオージオメータを構成している。ここで本体部は、例えば検査者による操作や自動聴力検査プログラムに従ってイヤホンに指令を出力する機能や、応答スイッチを操作した際の応答状況に基づいて被験者の聴力レベルを算出する機能を備えるものである。またイヤホンは、例えば本体部からの指令に基づいて被験者に検査音を提示する機能を備えるものである。そして応答スイッチは、本体部及び/又はイヤホンと無線通信を行うように構成されるものであり、被験者によって応答スイッチが操作されると、操作状況は、応答スイッチから直接的に、或いはイヤホンを介して間接的に、本体部に伝えられる。なお本体部には、複数組みのイヤホンと応答スイッチを接続することが可能であって、複数の被験者に対して同時に聴力検査を行うことができる。
【0021】
図1、
図2に示すように本実施形態の応答スイッチは、筐体1と、押しボタン2と、表示灯3とを備えている。また筐体1は、表側筐体4、裏側筐体5、及び電池蓋6で構成されている。そして筐体1の内部(表側筐体4と裏側筐体5で囲まれる空間)には、押しボタン2を操作することによってON/OFF状態が切り替わるスイッチ7と、前述の表示灯3及びスイッチ7が取り付けられた基板8とが設けられている。基板8は、スイッチ7のON/OFF状態を、無線通信で本体部やイヤホンに伝えることができるように構成されている。また基板8は、スイッチ7のON/OFF状態に応じて表示灯3を点灯/消灯させる機能も有する。更に筐体1の内部(裏側筐体5と電池蓋6で囲まれる空間)には、基板8を動作させる不図示の電池が収められていて、応答スイッチは、電源ケーブルを接続することなく使用される。
【0022】
本実施形態における筐体1は、
図1(a)に示すように、平面視において全体的に矩形状となる形態で形成されている。より詳細に説明すると、筐体1は、前方と後方の縁部は円弧状に延在するとともに側方の縁部が直線状に延在していて、且つ四隅は丸みを帯びるように形作られている。また、長手方向(前後方向)の中心線に対して左右が線対称となる形態で形成されている。
【0023】
ここで、筐体1の表面部9は、
図2(a)に示すように長手方向(前後方向)の断面視において、外側に向けて湾曲する(円弧状に湾曲する)ように形成されるとともに、
図2(b)に示すように短手方向の断面視においても、外側に向けて湾曲する(円弧状に湾曲する)ように形成されている。また筐体1は、湾曲する表面部9の頂部(表面部9における外側に最も突出する部位)において、平面視で円形になる開口10を備えている。更に筐体1は、
図1(a)に示すように開口10よりも前方において、開口10よりも小径であって、表示灯3を露出させる表示灯用開口11を備えている。開口10の少なくとも一部に頂部を含めばよい。
【0024】
一方、筐体1の裏面部12は、
図2(a)に示すように全体的に平坦状に形成されていて、その長手方向中間部(開口10に対してやや前寄り)には、裏面部12から表面部9に向かって凹状をなすとともに短手方向に沿って延在する溝部13が設けられている。本実施形態の溝部13は、筐体1における長手方向で対向する2つの側面部(前方に位置するものを前側面部14と称し、後方に位置するものを後側面部(指かけ部)15と称する)の間に形成されている。ここで前側面部14は、
図1(b)に示すように平坦状に形成されていて、後側面部15は、対向する前側面部14に向けて(筐体1の長手方向外側に向けて)凸状に湾曲するように形成されている。なお裏面部12は、図示したように開口10に対してやや前寄りに設けられた溝部13によって、長手方向の長さが短い前方部分と、長手方向の長さが長い後方部分に分けられている。ここで、裏面部12の前方部分を前方裏面部分12aと称し、後方部分を後方裏面部分12bと称する。
【0025】
更に、
図1(a)に示すように筐体1の前方端部には、短手方向に沿って延在する前方開口16が設けられていて、後方端部には、前方開口16よりも短手方向の長さが短くなる後方開口17が設けられている。
【0026】
そして、
図2(a)に示すように筐体1の内側には、円筒状をなすとともに開口10を間に挟む一対のボス(前方に位置するものを第一ボス18と称し、後方に位置するものを第二ボス19と称する)が設けられている。また、第一ボス18の根元前方と第二ボス19の根元後方には、板状になるリブ20がそれぞれ設けられている。
【0027】
次に押しボタン2について説明する。
図3に示すように本実施形態の押しボタン2は、概略伏せ椀状であって縁部はフランジ状に形作られた押下操作部21を備えている。押下操作部21の裏面には、円筒状に形作られた押圧部22が設けられている。また押しボタン2は、円筒状をなすとともに押下操作部21を間に挟む一対の固定部(前方に位置するものを第一固定部23と称し、後方に位置するものを第二固定部24と称する)を備えている。そして第一固定部23の表側前方と第二固定部24の表側後方には、切り欠き25が設けられている。
【0028】
更に押しボタン2は、弾性変形可能であって、押下操作部21と第一固定部23、及び押下操作部21と第二固定部24を繋ぐ弾性部を備えている。本実施形態の弾性部は、押下操作部21と第一固定部23とを繋ぐ第一弾性部26及び第二弾性部27、並びに押下操作部21と第二固定部24とを繋ぐ第三弾性部28及び第四弾性部29で構成されるものであり、
図3(a)、(b)に示すように、それぞれが平面視でU字状をなすとともに薄板状に形成されるものである。より詳細に説明すると、第一弾性部26と第二弾性部27は、それぞれの一端部が押下操作部21におけるフランジ状に形作られた部位の斜め前方部分に連結するものであり、そこから径方向外側に向けて延在した後に第一固定部23に向かって回り込むように湾曲し、それぞれの他端部は、第一固定部23における斜め前方部分に連結する(換言すると、それぞれの他端部は、第一固定部23における押下操作部21に対向する側とは逆側で第一固定部23に連結する)ものである。また第三弾性部28と第四弾性部29は、それぞれの一端部が押下操作部21におけるフランジ状に形作られた部位の斜め後方部分に連結していて、そこから径方向外側に向けて延在した後に第二固定部24に向かって回り込むように湾曲し、それぞれの他端部は、第二固定部24における斜め後方部分に連結する(換言すると、それぞれの他端部は、第二固定部24における押下操作部21に対向する側とは逆側で第二固定部24に連結する)ものである。
【0029】
そして押しボタン2を筐体1に組み付けるには、表側筐体4と裏側筐体5を組み合わせる前において、第一ボス18に第一固定部23を挿入するとともに第二ボス19に第二固定部24を挿入する。第一ボス18等に第一固定部23等を最後まで挿入することによって、第一ボス18と第二ボス19の根元に設けたリブ20に、第一固定部23と第二固定部24に設けた切り欠き25を嵌め込むことができる。次いで、基板8の他、筐体1に内蔵される不図示の部材を組み込んで、表側筐体4と裏側筐体5を組み合わせる。なお、基板8を組み込んだ際、基板8に設けたスイッチ7は、押圧部22に対向する位置にある。このようにして押しボタン2を筐体1に組み付けた状態において、第一固定部23と第二固定部24は、第一ボス18と第二ボス19が挿入され、且つ表側筐体4と基板8に挟持されているため、筐体1に対して固定された状態にある。また押下操作部21は、開口10から露出するとともに、第一弾性部26等によって筐体1に対して非接触の状態で支持されている。なお、押下操作部21を最後まで押し下げても、押下操作部21は筐体1に対して非接触となっている。また、
図2(b)の拡大図に示すように、押下操作部21を最後まで押し下げても、押下操作部21の天面部は、筐体1の表面部9よりも突出している。
【0030】
このような構成になる応答スイッチは、電池を納めている部分を持つことでバランス的に片手でも安定的に保持して操作することができ、被験者の利き手が右手でも左手でも利き手側で左右変わらない操作感で操作することができる。例えば利き手の右手で保持する場合は、筐体1の後方右側の隅に右手の掌を当てつつ、右手の人差し指を、筐体1の裏面部12に設けた溝部13に収める。本実施形態では、溝部13の後側面部15が湾曲していて、後側面部15に沿うように人差し指を軽く曲げた状態で筐体1を保持することができるため、人差し指に無理な力を加える必要がない。また筐体1は、溝部13に収められた人差し指によって裏面側から支持することができるうえ、筐体1における後方の隅部を掌で支持しつつ、軽く曲げた人差し指の内側全体で後側面部15を支持することができるため、安定して保持することができる。またこのようにして筐体1を保持した際、右手の親指を自然に伸ばすと、ちょうど親指の腹が当たるところに押下操作部21が位置するため、押下操作部21をスムーズに押し下げることができる。
【0031】
上述したように押下操作部21は、第一固定部23と第二固定部24に対して、弾性変形可能な第一弾性部26、第二弾性部27、第三弾性部28及び第四弾性部29で支持されていて、これらの弾性部は何れも、平面視でU字状をなすように湾曲した形状となっている。ここで、押下操作部21と第一固定部23等との間を繋ぐ弾性部の形状として、例えばL字状のように途中に折れ曲がる部分を設けると、押下操作部21を押し下げる際に弾性変形する部分は、主に押下操作部21からこの折れ曲がる部分までとなるため、弾性変形に寄与する部分の長さが短くなって、押下操作部21を押し下げる際に強い力を要することになる。一方、本実施形態の第一弾性部26等のように、平面視でU字状をなすように湾曲した形状とする場合は、押下操作部21と第一固定部23等とを繋ぐ長さの略全てが弾性変形に寄与することになるため、押下操作部21を押し下げるにあたってそれ程強い力は要さず、操作性を高めることができる。また、本実施形態の第一弾性部26等は、第一固定部23等に対して、押下操作部21に対向する側とは逆側で連結している。すなわち、このように連結させることによって、第一固定部23等に対して押下操作部21に対向する側で連結する場合よりも、第一弾性部26等の長さを長くすることができるため、押下操作部21を押し下げる際に必要となる力を更に抑えることができる。
【0032】
また押下操作部21は、押し下げる前の状態でも、これを押し下げた状態でも、筐体1に対して接触することがないため、応答スイッチを操作した際に、筐体1に押下操作部21が当たる音は生じない。従って、例えば複数の被験者に対して同時に聴力検査を行う場合において、ある被験者が他の被験者の近くで応答スイッチを操作することがあっても、筐体1に押下操作部21が当たる音は生じないため、聴力検査をより正確に行うことができる。
【0033】
そして第一固定部23と第二固定部24は、
図3に示した切り欠き25に
図2に示したリブ20が嵌まり込んでいるため、第一ボス18や第二ボス19に対して回転することがない。このため、例えば押下操作部21に対して偶発的な力が加わって、第一弾性部26等が意図せず捻られることがあっても、第一固定部23等の向きは一定であるため、第一弾性部26等の位置が大きく変わることはない。さらに、第一固定部23と第二固定部24は、第一弾性部26等の長手方向の捻りなどに対する押下操作部21と筐体1の間の十分なクリアランスを確保するための高さを有している。従ってこのような場合であっても、押下操作部21等と筐体1等との接触を避けることができるため、押下操作部21等と筐体1等との接触音の発生をより確実に防止することができる。
【0034】
また本実施形態の応答スイッチは、筐体1の裏面部12が平坦状に形成されているため、裏面部12側を下にした状態でテーブル等の上にがたつきが無く安定した状態で載置することができる。このため、例えば指を自由に動かすことに難があって、応答スイッチをしっかりと持つことができない場合でも、応答スイッチをテーブル等に載置して、押下操作部21を押し下げることができる。筐体1の裏面部12が平坦状を形成することに関して、応答スイッチをテーブル等に載置して使用する際にがたつきが無く安定した状態で押下操作部21を押し下げることができれば良く、ゴム足を用いることや裏面部の一部に突起を形成することで実現されていても良い。更に本実施形態の応答スイッチでは、外側に向けて湾曲する表面部9の頂部に押下操作部21が位置していて、更に、
図2(b)の拡大図に示すように、押下操作部21を最後まで押し下げても、押下操作部21の天面部は、筐体1の表面部9よりも突出していて、押下操作部21は常に最も高い位置となるため、指を使わずに掌や腕などで押下操作部21を操作しやすい。すなわち本実施形態の応答スイッチによれば、手の指が不自由な被験者に対しても、聴力検査を行うことができる。
【0035】
なお、従来の有線式オージオメータで使用される応答スイッチにおいては、筐体の前方端部や後方端部にケーブルが接続されていたが、本実施形態の応答スイッチでは、本体部及び/又はイヤホンと無線通信を行うように構成していて、このようなケーブルが不要になるため、筐体1の端部に前方開口16と後方開口17を設けることができる。そしてこのような開口を利用すれば、例えば使用後は応答スイッチを壁に引っ掛けることができるため、使い勝手が良くなる。また、これらの開口を利用して手首に通すストラップを取り付ければ、誤って落下させることを回避できるため応答スイッチの破損を防止することができる。
【0036】
以上、本発明に従う応答スイッチの一実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範疇で具現化された種々の形態のものが含まれる。例えばスイッチ7は基板8に設けられているものに限られず、基板8とは分離したものでもよい。また、第一弾性部26等の形状も、図示したものに限定されるものではない。また裏面部12は、
図1(b)及び
図2(a)に示した前方裏面部分12aを削除して、後方裏面部分12bのみで構成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1:筐体
2:押しボタン
7:スイッチ
9:表面部
10:開口
12:裏面部
21:押下操作部
23:第一固定部(固定部)
24:第二固定部(固定部)
26:第一弾性部(弾性部)
27:第二弾性部(弾性部)
28:第三弾性部(弾性部)
29:第四弾性部(弾性部)