(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】バキュームポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 29/12 20060101AFI20221020BHJP
F04C 2/344 20060101ALI20221020BHJP
F04C 25/02 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
F04C29/12 A
F04C2/344 331D
F04C2/344 331J
F04C25/02 L
(21)【出願番号】P 2018208663
(22)【出願日】2018-11-06
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小倉 崇寛
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-121581(JP,A)
【文献】特開2014-025413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/12
F04C 2/344
F04C 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室と、前記ポンプ室に気体を導くための吸気通路と、前記ポンプ室から気体を外部に導くための排気通路と、を含むポンプケーシングと、
前記ポンプ室への気体の吸込及び前記ポンプ室からの気体の吐出を行うための可動部と、
前記排気通路の排気口の周囲を覆う排気口カバー部と、
を備え、
前記ポンプケーシングは、
前記可動部を収容するポンプケーシング本体と、
前記ポンプケーシング本体とは別体で設けられ、前記可動部の一方側を覆うとともに前記排気口を有するポンプカバーと、
を含み、
前記排気口カバー部は、前記ポンプケーシング本体と同一材料で一体的に構成され、前記ポンプカバーの前記排気口の周囲を覆う
バキュームポンプ。
【請求項2】
ポンプ室と、前記ポンプ室に気体を導くための吸気通路と、前記ポンプ室から気体を外部に導くための排気通路と、を含むポンプケーシングと、
前記ポンプ室への気体の吸込及び前記ポンプ室からの気体の吐出を行うための可動部と、
前記排気通路の排気口の周囲を覆う排気口カバー部と、
を備え、
前記ポンプケーシングは、
前記可動部を収容するポンプケーシング本体と、
前記ポンプケーシング本体とは別体で設けられ、前記可動部の一方側を覆うポンプカバーと、
を含み、
前記ポンプケーシング本体、または、前記ポンプカバーの一方は、
前記ポンプケーシング本体、または、前記ポンプカバーの前記一方から突出して設けられ、前記排気口を形成する排気管部と、
前記排気管部を収容する穴を有し、該穴に収容された前記排気管部を外周側から取り囲む前記排気口カバー部と、
を含み、
前記ポンプケーシング本体、または、前記ポンプカバーの前記一方と、前記排気管部と前記排気口カバー部とが、同一材料で一体的に構成された
バキュームポンプ。
【請求項3】
ポンプ室と、前記ポンプ室に気体を導くための吸気通路と、前記ポンプ室から気体を外部に導くための排気通路と、を含むポンプケーシングと、
前記ポンプ室への気体の吸込及び前記ポンプ室からの気体の吐出を行うための可動部と、
前記排気通路の排気口の周囲を覆う排気口カバー部と、
を備え、
前記ポンプケーシングは、
前記可動部を収容するポンプケーシング本体と、
前記ポンプケーシング本体とは別体で設けられ、前記可動部の一方側を覆うポンプカバーと、
を含み、
前記ポンプケーシング本体と前記排気口カバー部とは、同一材料で一体的に構成され、
前記ポンプカバーは、前記排気口を形成する排気管部を含み、
前記排気口カバー部は、前記排気管部が挿通された貫通穴を含む
、バキュームポンプ。
【請求項4】
前記排気管部の長さは前記貫通穴の長さよりも短い、請求項3に記載のバキュームポンプ。
【請求項5】
前記排気管部は、前記貫通穴に嵌合するインロー部を含む、請求項3又は4に記載のバキュームポンプ。
【請求項6】
前記ポンプカバーは、前記吸気通路から前記ポンプ室に前記気体を流入させるように構成された吸気口を含む、請求項3乃至5の何れか1項に記載のバキュームポンプ。
【請求項7】
前記排気口カバー部は、前記排気管部の先端部の外周面と隙間を空けて配置された、請求項3乃至6の何れか1項に記載のバキュームポンプ。
【請求項8】
前記貫通穴は、前記排気管部の先端よりも下流側において、下流側に向かうにつれて直径が大きくなるように構成された拡径部を含む、請求項3乃至7の何れか1項に記載のバキュームポンプ。
【請求項9】
前記可動部は、外周面に複数のスリットが形成されたロータと、前記複数のスリットにそれぞれ配置された複数のベーンと、を含み、
前記ポンプケーシングは、前記ロータの前記外周面と対向するカム面を含む、請求項1乃至8の何れか1項に記載のバキュームポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バキュームポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されるように、自動車等の車両におけるブレーキブースターの負圧室内を負圧にするために、バキュームポンプが用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のバキュームポンプは、タイヤの後方や地面から近い場所等、搭載される場所によっては、車両の走行中等に水しぶき等の液体が掛かる場合がある。バキュームポンプの排気口に液体がかかると、排気口が腐食する恐れや、環境条件によっては排気口に付着した液体が凍結して排気口が閉塞する恐れがある。排気口の腐食や凍結による閉塞が生じると、排気口の面積が小さくなるため、排気抵抗が増加してポンプ性能が低下する恐れがある。
【0005】
この点、特許文献1には、バキュームポンプの排気口に水しぶき等の液体が掛かることの影響や対策に関する知見は開示されていない。
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、部品点数の増大を抑制しつつ排気口に液体がかかることを抑制できるバキュームポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るバキュームポンプは、
ポンプ室と、ポンプ室に気体を導くための吸気通路と、ポンプ室から気体を外部に導くための排気通路と、を含むポンプケーシングと、
ポンプ室への気体の吸込及びポンプ室からの気体の吐出を行うための可動部と、
排気通路の排気口の周囲を覆う排気口カバー部と、
を備え、
ポンプケーシングの少なくとも一部と排気口カバー部とは、同一材料で一体的に構成される。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のバキュームポンプにおいて、
ポンプケーシングは、
可動部を収容するポンプケーシング本体と、
ポンプケーシング本体とは別体で設けられ、可動部の一方側を覆うポンプカバーと、
を含み、
ポンプケーシング本体と排気口カバー部とは、同一材料で一体的に構成されてもよい。
【0009】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載のバキュームポンプにおいて、
ポンプカバーは、排気口を形成する排気管部を含み、
排気口カバー部は、排気管部が挿通された貫通穴を含んでもよい。
【0010】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載のバキュームポンプにおいて、
排気管部の長さは貫通穴の長さよりも短くてもよい。
【0011】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)に記載のバキュームポンプにおいて、
排気管部は、貫通穴に嵌合するインロー部を含んでもよい。
【0012】
(6)幾つかの実施形態では、上記(3)乃至(5)の何れかに記載のバキュームポンプにおいて、
ポンプカバーは、吸気通路からポンプ室に気体を流入させるように構成された吸気口を含んでもよい。
【0013】
(7)幾つかの実施形態では、上記(3)乃至(6)の何れかに記載のバキュームポンプにおいて、
排気口カバー部の貫通穴は、排気管部の先端部の外周面と隙間を空けて配置されてもよい。
【0014】
(8)幾つかの実施形態では、上記(3)乃至(7)の何れかに記載のバキュームポンプにおいて、
貫通穴は、排気管部の先端よりも下流側において、下流側に向かうにつれて直径が大きくなるように構成された拡径部を含んでもよい。
【0015】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかに記載のバキュームポンプにおいて、
可動部は、外周面に複数のスリットが形成されたロータと、複数のスリットにそれぞれ配置された複数のベーンと、を含み、
ポンプケーシングは、ロータの外周面と対向するカム面を含んでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、部品点数の増大を抑制しつつ排気口に液体がかかることを抑制できるバキュームポンプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係るバキュームポンプ2を示す概略的な分解斜視図である。
【
図2】
図1に示したバキュームポンプ2の一部切り欠き断面図である。
【
図3】
図1及び
図2に示したバキュームポンプ2における排気口14の部分拡大断面図である。
【
図4】トップカバー44を取り外した状態におけるバキュームポンプ2の上面図であり、ポンプカバー18を上方から視た図である。
【
図5】他の実施形態に係るバキュームポンプ2における排気口14の部分拡大断面図である。
【
図6】他の実施形態に係るバキュームポンプ2における排気口14の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0019】
図1は、一実施形態に係るバキュームポンプ2を示す概略的な分解斜視図である。
図2は、
図1に示したバキュームポンプ2の一部切り欠き断面図である。
図3は、
図1及び
図2に示したバキュームポンプ2における排気口14の部分拡大断面図である。
図4は、ポンプカバー18を上方から視た図である。図示する例示的なバキュームポンプ2は、自動車等の車両におけるブレーキブースター(マスターバック)の負圧室内を負圧にするための電動バキュームポンプである。以下において「上」及び「下」とは、バキュームポンプ2が車両に設置された状態における「上」及び「下」を意味する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、バキュームポンプ2は、気体を移送するための可動部4と、可動部4を収容するポンプケーシング10を含む。
図2に示すように、ポンプケーシング10は、可動部4が配置されるポンプ室5と、気体をポンプ室5に導くための吸気通路6と、気体をポンプ室5から外部に導くための排気通路8と、を含む。可動部4は、駆動装置としてのモータ66に駆動されてポンプ室5への気体の吸込及びポンプ室5からの気体の吐出を行うように構成される。また、バキュームポンプ2は、排気通路8の排気口14の周囲(排気口14の外側)を覆う排気口カバー部12を含む。ポンプケーシング10の少なくとも一部と排気口カバー部12とは、同一材料で一体的に構成される。すなわち、ポンプケーシング10の少なくとも一部と排気口カバー部12とは、分離不能な一部品として同一材料で構成されている。
【0021】
かかる構成によれば、排気口カバー部12が排気通路8の排気口14の周囲を覆うことにより、排気口14に水しぶき等の液体がかかることを抑制することができるため、排気口14の腐食を抑制するとともに該液体の凍結に起因する排気口14の閉塞を抑制することができる。また、排気口14が直接外気や走行中に受ける冷気に晒されにくくなるため、排気口14の凍結による閉塞を効果的に抑制することができる。したがって、排気口14の口径を小さくして排気騒音を抑制しつつ、バキュームポンプ2のポンプ性能の低下を抑制することができる。また、飛石等による排気口カバー部12の変形及び破損を抑制することができる。
【0022】
また、ポンプケーシング10の少なくとも一部と排気口カバー部12とが同一材料で一体的に構成されているため、排気口14に腐食等の対策としてポンプケーシング10とは別体の専用の排気口カバー等を設ける場合と比較して、部品点数の増加を抑制することができる。したがって、バキュームポンプ2の生産性の低下を抑制するとともに製造コストの増大を抑制することができる。また、排気口14に腐食対策としてアルマイト等による防錆処理を行う場合と比較して、製造工程を簡略化し、バキュームポンプ2の生産性の低下を抑制するとともに製造コストの増大を抑制することができる。
【0023】
幾つかの実施形態では、例えば
図1及び
図2に示すように、可動部4は、外周面32に複数のスリット36が形成されたロータ38と、複数のスリット36にそれぞれ配置された複数のベーン40と、を含む。ポンプケーシング10のポンプケーシング本体16は、ロータ38の外周面32と対向するカム面42を含む。
【0024】
この種のベーン式バキュームポンプは、モータ66の不図示のシャフトに連結されたロータ38をモータ66によって回転させることで、ロータ38のスリット36に沿ってベーン40が遠心力でロータ38の径方向外側に向けて移動し、ベーン40の先端部13がカム面42上を摺動する。このため、排気口14を介してポンプ室5内に液体が侵入した場合、ベーン40の表面に液体が付着するとベーン40がスリット36に沿ってスムーズに移動しにくくなり、ポンプ作用を安定的に発揮できなくなってしまう。
【0025】
この点、上記バキュームポンプ2では、排気口カバー部12が排気通路8の排気口14の周囲を覆っているため、排気口14を介してポンプ室5内に水等の液体が侵入することを抑制することができる。このため、ベーン40の表面に液体が付着することを抑制してベーン40をスムーズに移動させることができ、ポンプ機能を安定的に発揮することができる。
【0026】
幾つかの実施形態では、例えば
図1及び
図2に示すように、ポンプケーシング10は、可動部4を収容するポンプケーシング本体16と、ポンプケーシング本体16とは別体で設けられ、可動部4の一方側(図示する形態ではロータ38の上側)を覆うポンプカバー18と、を含む。ポンプケーシング本体16とポンプカバー18とは分離可能な別部品として構成されて締結部材としてのボルト46により締結される。また、
図3に示すように、ポンプケーシング本体16と排気口カバー部12とは、同一材料で一体的に構成される。すなわち、ポンプケーシング本体16と排気口カバー部12とは分離不能な一部品として同一材料で構成される。
【0027】
かかる構成によれば、ポンプケーシング本体16と排気口カバー部12とを同一材料で一体的に構成することにより、部品点数の増加及び排気口14の腐食や凍結を抑制する上述の効果に加えて、排気口カバー部12の高い剛性を実現し、振動等に起因する排気口カバー部12の変形を抑制することができる。
【0028】
幾つかの実施形態では、例えば
図1及び
図2に示すように、ポンプケーシング10は、ポンプカバー18の上側を覆うトップカバー44と、ポンプケーシング本体16とモータ66との間に設けられ、ポンプケーシング本体16の下側を覆うボトムカバー68とを含む。ポンプカバー18とトップカバー44とは別体で設けられ、トップカバー44、ポンプカバー18及びポンプケーシング本体16は、締結部材としてのボルト48(
図1参照)により共締めされる。ボトムカバー68とポンプケーシング本体16とは別体で設けられ、締結部材としてのボルト49(
図1参照)により締結される。なお、
図1及び
図2では、ロータ38の軸方向において、トップカバー44側が上側であり、モータ66側が下側である。図示する例示的なバキュームポンプ2では、軸方向において、下側から順に、モータ66、ボトムカバー68、ポンプケーシング本体16、ロータ38、ポンプカバー18及びトップカバー44が配置される。
【0029】
ボトムカバー68には不図示のブレーキブースターの負圧室から吸気を行うための吸気管部70が設けられる。
図2に示すように、ポンプカバー18は、吸気通路6からポンプ室5に気体を流入させるように構成された吸気口34を含んでおり、吸気管部70を介して吸気通路6に取り込まれた気体は、ポンプカバー18の吸気口34を介してポンプ室5に流入する。
【0030】
排気通路8は、ポンプケーシング本体16とボトムカバー68との間に形成された拡張型吸音器としての消音室72(拡張室)と、ポンプカバー18とトップカバー44との間に形成された拡張型吸音器としての消音室74(拡張室)とを含む。消音室72には、ポンプケーシング本体16に形成された不図示の吐出口を介してポンプ室5の排気が吐出される。消音室72を通った排気は、ポンプケーシング本体16とポンプカバー18とを貫通する貫通穴76を介して消音室74に流入する。消音室74に流入した排気は、排気口14を通って排気口カバー部12の後述する貫通穴22の下端からポンプケーシング10の外部に排出される。
【0031】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示すように、ポンプカバー18は、排気口14を形成する排気管部20を含み、排気口カバー部12は、排気管部20が挿通された貫通穴22を含む。このように、ポンプケーシング10は、排気管部20と排気口カバー部12とを有する二重管構造59を含む。図示する形態では、排気管部20はポンプカバー18の下側の面39から下方に向かって突出するように設けられており、排気口14及び貫通穴22の各々は、上下方向に沿って延在する。貫通穴22の下端78は大気開放されている。ここで、排気管部20の長さL1は貫通穴22の長さL2よりも短く設定されており、排気管部20の先端79は貫通穴22の途中に位置する。
【0032】
かかる構成によれば、ポンプケーシング本体16と一体的に構成された排気口カバー部12の貫通穴22にポンプカバー18の排気管部20を挿通することにより、排気管部20及び貫通穴22をポンプケーシング本体16に対するポンプカバー18の位置決め手段として利用することができる。また、排気管部20の長さL1が貫通穴22の長さL2よりも短く設定されているため、排気口14に水しぶき等の液体がかかることを効果的に抑制することができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示すように、排気管部20の外周面50は、排気口カバー部12の貫通穴22と嵌合するインロー部としての大径部52を含む。図示する形態では、排気管部20の外周面50は、円形の断面形状を有する大径部52と、大径部52に対して排気管部20の先端側に設けられ、円形の断面形状を有する小径部56とを含む。小径部56の直径は大径部52の直径よりも小さく、小径部56と大径部52とは段差面54を介して接続される。貫通穴22は、円形の断面形状を有して大径部52と嵌合する大径部60と、大径部60に対して段差面62を介して接続され、小径部56と対向して配置され、大径部60よりも直径が小さい小径部64とを含む。排気管部20の段差面54が貫通穴22の段差面62に突き当てられた状態で排気管部20の大径部52が排気口カバー部12の大径部60に嵌合することで、インロー構造28が構成される。
【0034】
かかる構成によれば、ポンプケーシング本体16に対するポンプカバー18の位置決めを精度よく行うことができる。このため、ポンプカバー18をポンプケーシング本体16に組み付ける際に、
図4に示すようにポンプ室5に対する吸気口34の位置を容易に精度よく設定することができる。したがって、バキュームポンプ2の組立を容易にするとともにポンプ性能の低下を抑制することができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示すように、排気口カバー部12は、排気管部20の先端部30の外周面51に対して隙間を空けて配置される。
【0036】
上記のようにポンプカバー18とポンプケーシング本体16とが別体で設けられている場合、排気管部20の先端部30の外周面51と排気口カバー部12との間に隙間が設けられていないと、可動部4の動作時に発生する振動により、排気管部20の先端部30の外周面51と排気口カバー部12とが振動により干渉して異音(ビビリ音)が発生する恐れがある。そこで、上記のように排気口カバー部12と排気管部20の先端部30の外周面51との間に隙間を設けることにより、当該異音を抑制することができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示すように、貫通穴22は、排気管部20の先端79よりも下流側において、下流側に向かうにつれて直径が大きくなるように構成された拡径部82を含む。
【0038】
かかる構成によれば、拡径部82において下流側に向かうにつれて貫通穴22の直径が大きくなるため、ディフューザ機能を発揮するだけでなく、排気口カバー部12の貫通穴22に付着した液体に起因する貫通穴22の腐食や該液体の凍結の影響を受けにくくすることができる。これにより、ポンプ性能の低下を抑制することができる。
【0039】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、バキュームポンプの一例として回転式のベーンポンプについて説明したが、バキュームポンプは、例えばピストン式のポンプであってもよいし、ダイヤフラム式のポンプであってもよい。また、バキュームポンプがベーンポンプである場合には、平衡型ベーンポンプであってもよいし、非平衡型ベーンポンプであってもよい。
【0041】
例えば、上述した実施形態では、ポンプカバー18と排気管部20とが同一材料で一体的に構成されていたが、他の実施形態では、例えば
図5に示すように、ポンプカバー18と排気管部20とは別体で設けられていてもよい。
図5に示す形態では、ポンプケーシング本体16と排気口カバー部12と排気管部20とが同一材料で一体的に構成される。
【0042】
また、上述した実施形態では、ポンプケーシング本体16と排気口カバー部12とが同一材料で一体的に構成されていたが、他の実施形態では、例えば
図6に示すように、ポンプケーシング本体16と排気口カバー部12とは別体で設けられていてもよい。
図6に示す形態では、ポンプカバー18と排気口カバー部12と排気管部20とが同一材料で一体的に構成される。
【0043】
図5及び
図6に示す幾つかの実施形態においても、排気口カバー部12が排気通路8の排気口14の周囲を覆っているため、排気口14に水しぶき等の液体がかかることを抑制することができ、排気口14の腐食を抑制することができる。また、排気口カバー部12が排気通路8の排気口14の周囲を覆っているため、排気口14が直接外気や走行中に受ける冷気に晒されにくくなり、排気口14の凍結による閉塞を抑制することができる。これにより、バキュームポンプ2のポンプ性能の低下を抑制することができる。
【0044】
また、ポンプケーシング10の少なくとも一部と排気口カバー部12とが同一材料で一体的に構成されているため、ポンプケーシング10とは別体の専用の排気口カバーを設ける場合と比較して、部品点数の増加を抑制することができる。
【0045】
また、
図3に示す実施形態では、貫通穴22が排気管部20の先端79よりも下流側に拡径部82を含む形態を例示したが、他の実施形態では、貫通穴22は拡径部82を有していなくてもよい。例えば、貫通穴22の出口部は排気の流れ方向の位置によらず直径が一定であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
2 バキュームポンプ
4 可動部
5 ポンプ室
6 吸気通路
8 排気通路
10 ポンプケーシング
12 排気口カバー部
14 排気口
16 ポンプケーシング本体
18 ポンプカバー
20 排気管部
22 貫通穴
30 先端部
32 外周面
34 吸気口
36 スリット
38 ロータ
40 ベーン
42 カム面
52 大径部(インロー部)
79 先端
82 拡径部