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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】マイクログリッドを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20221020BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H02J3/38 120
H02J3/46
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018217078
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2019097380
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】17306616.8
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594083128
【氏名又は名称】シュネーデル、エレクトリック、インダストリーズ、エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】SCHNEIDER ELECTRIC INDUSTRIES SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ドブロウォルスキ
(72)【発明者】
【氏名】ダビド、グアリノ
(72)【発明者】
【氏名】マゼン、アラミール
(72)【発明者】
【氏名】セディク、バシャ
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-166891(JP,A)
【文献】特開2005-328622(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185660(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型再生可能エネルギー資源の少なくとも1つの再生可能プラントと、分散型非再生可能エネルギー資源の少なくとも1つの発電プラントとを備え、各プラントがローカルコントローラを有するマイクログリッドを制御する方法であって、
前記マイクログリッド内の各プラントの前記ローカルコントローラに対して各プラントのタイプ及びサイズを与えることを含み、
各ローカルコントローラは、
前記マイクログリッドの周波数を測定し、
測定周波数と、各プラントのタイプ及びサイズとに基づいて、前記プラントから求められる電力負荷を推定し、
推定された電力負荷を前記プラント内で利用可能なエネルギー資源間で分け、
前記少なくとも1つの再生可能プラントの前記ローカルコントローラは、
前記プラントにより供給される電力を監視し、
供給電力が推定負荷を下回るときに、前記再生可能プラントによって電力が供給される際の周波数を減少させ、
供給電力が推定負荷を上回るときに、前記再生可能プラントによって電力が供給される際の周波数を増大させ、
前記少なくとも1つの発電プラントの前記ローカルコントローラは、
前記マイクログリッドの周波数減少の検出に応じて、非再生可能資源による電力供給を増大させ、
前記マイクログリッドの周波数増大の検出に応じて、非再生可能資源による電力供給を減少させる、
方法。
【請求項2】
少なくとも1つの再生可能プラントがローカルエネルギー蓄積器を備え、前記方法は、
前記少なくとも1つの再生可能プラントの前記ローカルコントローラが、
前記ローカルエネルギー蓄積器の充電状態が予備電力を確保するのに十分である場合に、
供給電力が推定負荷を下回るときに、前記再生可能プラントによって電力が供給される際の周波数を維持するとともに、
前記ローカルエネルギー蓄積器の放電を制御し、
前記ローカルエネルギー蓄積器の充電状態が予備電力を確保するには不十分である場合に、
供給電力が推定負荷を下回るときに、前記再生可能プラントによって電力が供給される際の周波数を減少させる、
ことを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再生可能プラントの前記ローカルコントローラが、供給電力が推定負荷を上回るときに、前記ローカルエネルギー蓄積器の充電を開始することを更に含み、
充電の開始は、周波数を増大させる(404)前に、周波数を増大させる(404)代わりに、又は周波数を増大させる(404)と同時に行なわれる、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記再生可能プラントの前記ローカルコントローラが、
電力が供給される際の周波数を調整する設定点を制御し、
供給電力が推定負荷をそれぞれ下回る又は上回るときに、電力が前記再生可能プラントにより供給される際の周波数を減少させる又は増大させるために設定点電力を調整する、
ことを更に含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記発電プラントの前記ローカルコントローラが、
それぞれの非再生可能エネルギー資源の始動及び停止動作を制御する、
ことを更に含む請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記再生可能プラントの前記ローカルコントローラが制御法則を実施することを更に含み、前記制御法則がドループ制御を含む請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
測定周波数と各プラントのタイプ及びサイズとに基づいて前記プラントから求められる電力負荷を推定することは、
微分方程式の以下のセット、
【数1】
【数2】
を解くことを含み、
ここで、
Sは飽和関数、
λ及びλは調整可能な制御変数、
fは測定周波数、
は公称周波数、
zは積分変数、
【数3】
はzの時間微分であり、
及び、
供給される再生可能電力が求められる総電力に一致するのに十分であるかどうかを決定するために、推定電力負荷と少なくとも1つの再生可能プラントのサイズとを比較することを含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
測定周波数と各プラントのタイプ及びサイズとに基づいて前記プラントから求められる電力負荷を推定することは、
推定総電力需要が前記再生可能プラントのサイズよりも小さい場合に、
前記再生可能プラントにより求められる電力を求められる総電力に等しく設定するとともに、
前記発電プラントにより求められる電力をゼロに設定し、
推定総電力需要が前記再生可能プラントのサイズよりも大きい場合に、
前記再生可能プラントにより求められる電力を前記再生可能プラントのサイズに等しく設定するとともに、
前記発電プラントにより求められる電力を求められる総電力から前記再生可能プラントのサイズを差し引いたものに等しく設定する、
ことを更に含む請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
マイクログリッドであって、
1つ以上の分散型再生可能エネルギー資源と、再生可能インバータと、ローカル再生可能コントローラと、を備える少なくとも1つの再生可能プラントと、
1つ以上の分散型非再生可能エネルギー資源と、ローカル発電機コントローラと、を備える少なくとも1つの発電プラントと、
を備え、
各ローカルコントローラには、全てのプラントのタイプ及びサイズが与えられ、
各ローカルコントローラは、
前記マイクログリッドの周波数を測定し、
測定周波数と、各プラントのタイプ及びサイズとに基づいて、前記プラントから求められる電力負荷を推定し、
推定された電力負荷を前記プラント内で利用可能なエネルギー資源間で分ける、
ように設計されており、
前記少なくとも1つの再生可能プラントの前記ローカルコントローラは更に、
前記プラントにより供給される電力を監視し、
供給電力が推定負荷を下回るときに、前記再生可能プラントによって電力が供給される際の周波数を減少させ、
供給電力が推定負荷を上回るときに、前記再生可能プラントによって電力が供給される際の周波数を増大させる、
ように設計されており、
前記少なくとも1つの発電プラントの前記ローカルコントローラは更に、
前記マイクログリッドの周波数減少の検出に応じて、非再生可能資源による電力供給を増大させ、
前記マイクログリッドの周波数増大の検出に応じて、非再生可能資源による電力供給を減少させる、
ように設計されている、
マイクログリッド。
【請求項10】
前記少なくとも1つの再生可能プラントがローカルエネルギー蓄積器を備え、
前記少なくとも1つの再生可能プラントの前記ローカルコントローラは更に、
前記ローカルエネルギー蓄積器の充電状態が予備電力を確保するのに十分である場合に、
供給エネルギーが推定負荷を下回るときに、前記再生可能プラントによって電力が供給される際の周波数を維持するとともに、
前記ローカルエネルギー蓄積器の放電を制御し、
前記ローカルエネルギー蓄積器の充電状態が予備電力を確保するには不十分である場合に、
供給エネルギーが推定負荷を下回るときに、再生可能プラントによって電力が供給される際の周波数を減少させる、
ように設計されている請求項9に記載のマイクログリッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気の生成及び分散のためのマイクログリッドの分野に関する。より詳細には、本発明は、分散型エネルギー資源(distributed energy resource)の制御を行う方法、及び分散型エネルギー資源のシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクログリッドは、一般的に、分離されて大型電気エネルギー生成センターから離れている領域で電力を生成して分散させるように意図されている局所的な電気グリッドである。分離された領域は、例えば、島、山岳地帯又は砂漠地帯である。マイクログリッドの原理は、幅広い配電網に接続される建物、近隣、キャンパス、又は、他の実体がそのエネルギーの生成を異なる方法で管理してその回復能力を高めたい場合にも適用可能である。
【0003】
マイクログリッドは、空間的に分散されてメイングリッドから切断される様々なタイプのエネルギー資源から構成される。そのようなマイクログリッドは、エネルギー供給のための自律的な島として設置される。これらの分散型資源としては、光起電力セル、ソーラーパネル、及び、風力タービンなどの再生可能エネルギー資源を挙げることができる。更に、これらの分散型資源としては、燃料消費エンジン又はタービンなどのエンジン-発電機エネルギー資源を挙げることができる。また、これらの分散型資源は、バッテリーなどの化学的タイプの貯蔵装置又はフライホイールなどの機械的タイプの貯蔵装置を含んでもよいエネルギーを局所的に貯蔵するためのエネルギー貯蔵設備を備えてもよい。
【0004】
マイクログリッドの主な利点は、それらがパブリックグリッドに接続することなく自律的に、すなわち、島モードで動作し、消費領域である負荷の近傍に位置されるという点である。したがって、長距離配電網に固有の損失が制限される。
【0005】
マイクログリッドのエネルギー自律性は様々なタイプの電源によってもたらされ、これらの電源の発電機セットは、同期電源と称される場合もある重要な役割を果たす。具体的には、経済的な観点から、発電機セットは、僅かな初期投資で済み、ピーク時の消費スパイクを吸収するのに十分柔軟な発電をもたらす。しかしながら、それらの動作は大量のディーゼル燃料を必要とし、その結果、大気汚染に加えてエネルギー費用が増大する。
【0006】
マイクログリッドでは、再生可能エネルギー資源のインバータを仮想発電機セットとして設定することができる。伝統的なエンジン駆動発電機は一定周波数でのエネルギー供給に同期して作動するため、伝統的な同期発電機の特性及び挙動をエミュレートするように再生可能エネルギーインバータを制御することにより、同じ(マイクロ)グッリッドへの再生可能エネルギー資源の組み込みが軽減される。再生可能資源の普及度合いを更に高めるために、米国特許出願公開第2017/0235322号明細書は、マイクログリッドの安定性に対する悪影響を回避しつつ、仮想発電機セットを制御して、再生可能セットにより生成される電力と負荷により消費される電力との間の一致を改善する方法について記載する。加えて、米国特許出願公開第2017/0187188号明細書は、ドループ制御(droop control)特性を調整することによって再生可能エネルギー資源と同期エンジンエネルギー資源との間のエネルギー生成を調整する方法について記載する。
【0007】
これらの方法は、再生可能プラント、すなわち、再生可能エネルギー資源のプラントがグリッド形成になることができるようにする。グリッド形成になるとは、一定である又はドループ曲線に従う明確な周波数及び振幅のAC電圧を生成することを意味すると理解される。
【0008】
マイクログリッドの実例が図1に概略的に示される。マイクログリッドは、機能的には、リソースプレーン、ネットワークプレーン、及び、制御プレーンに分けられ得る。リソースプレーンは、再生可能な発電機の分散型エネルギー資源及び貯蔵資源を含む。また、異なるタイプのエネルギー資源のそれぞれをまとめて、再生可能プラント、発電機セットプラント、及び、貯蔵プラントのような別個のプラントに編成することができる。ネットワークプレーンは、分散ネットワーク、及び、エネルギーが供給される負荷を含む。制御プレーンは、エネルギー資源タイプの各プラントのためのローカルコントローラと、異なるエネルギープラント間の調整を集中的に制御するための全マイクログリッド中央コントローラとを含む。再生可能なセットがグリッド形成になることができるようにする前述の方法は、マイクログリッドのローカルセットコントローラ及び中央コントローラによって実施される。
【0009】
しかしながら、そのようなマイクログリッドセットアップの中で、分散型資源のセットのローカルコントローラ間及びローカルコントローラと中央コントローラとの間の通信は、一時的であろうとなかろうと、常に利用可能、信頼できる、又は、可能であるとは限らない。そのような妨げられた通信又は通信の欠如は、マイクログリッド内の動作制御に影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2017/0235322号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0187188号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、マイクログリッドを分散的態様で制御する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、分散型再生可能エネルギー資源の少なくとも1つの再生可能プラントと、分散型非再生可能エネルギー資源の少なくとも1つの発電プラントとを有するマイクログリッドであって、各プラントがローカルコントローラを有するマイクログリッドを制御する方法を提供することによって達成される。
【0013】
この方法は、各プラントのタイプ及び電力サイズを互いのプラントのローカルコントローラに与えることを含む。各ローカルコントローラでは、マイクログリッドの周波数を測定し、測定周波数に基づいて再生可能資源及び非再生可能資源の両方から求められる総電力負荷を推定する。少なくとも1つの再生可能プラントのローカルコントローラは、供給電力が推定電力負荷を下回るときに再生可能プラントによって電力が供給される際の周波数を減少させ、また、供給電力が推定電力負荷を上回るときに再生可能資源によって電力が供給される際の周波数を増大させる。また、少なくとも1つの発電プラントのローカルコントローラは、周波数低下の検出に応じて非再生可能資源による電力供給を増大させ、また、周波数増大の検出に応じて非再生可能資源による電力供給を減少させる。
【0014】
1つの態様によれば、分散態様で制御され得る分散型エネルギー資源のマイクログリッドが更に提供される。
【0015】
中央コントローラを伴わない及び/又はプラント間で利用できる通信を伴わない島型マイクログリッドの場合と同様、求められる総電力及び様々なプラントにより供給されるべき電力の交換は不可能である。また、求められる総電力に合うように様々なプラントにより供給されるべき電力を調整することもできない。したがって、電力需要及び電力供給に関する情報を交換しようとする代わりに、各ローカルコントローラは、それ自体の情報、すなわち、求められる総電力の推定をもたらす。これは、同じ入力、すなわち、測定周波数の動的入力に基づいているため、この推定は、各ローカルコントローラで別々に計算されるにもかかわらず、各コントローラにおいてほぼ同じになる。
【0016】
総電力需要のこの推定から、各ローカルコントローラは、それぞれのプラントが供給する必要があり得る電力需要を推定することができる。また、これは、同じ入力、つまり、利用可能な各プラントのタイプ及びサイズの静的な入力に基づいているため、この推定は、各ローカルコントローラで別々に計算されるにもかかわらず、各コントローラにおいて一貫している。これにより、再生可能プラント及び発電プラントの両方によって同時に供給される電力を負荷により求められる総電力に一致させることが可能になる。
【0017】
少なくとも1つの発電プラントのローカルコントローラは、プラントの全体サイズに対応する電力の全てを再生可能プラントが供給できることを前提とする。この前提を修正するために、再生可能プラントコントローラによって適用される周波数の変化、すなわち、減少又は増大が発電プラントコントローラによって測定され、その測定値は、求められる電力負荷の発電機コントローラによる推定に影響を及ぼす。したがって、それに応じて発電プラントから求められる電力の推定が変化し、それにより、発電プラントのローカルコントローラは、電力が負荷により求められる総電力から再生可能プラントにより供給される電力を差し引いたものと一致するように供給されるようにする。
【0018】
本発明の更なる目的、態様、効果、及び、詳細は、図面に関連して、多くの典型的な実施形態の以下の詳細な説明に記載される。
【0019】
添付図面を参照して、本開示の実施形態を単なる一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】既知のマイクログリッドの一例を概略的に示す。
図2】本発明に係るマイクログリッドの一例を概略的に示す。
図3】本発明に係る方法の一例のフロー図である。
図4図3の方法の更なるフロー図である。
図5図3の方法の更なるフロー図である。
図6】本発明に係る方法の他の例のフロー図である。
図7】本発明に係るマイクログリッドの他の例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図2を参照すると、エネルギープラントにより供給される電力を少なくとも部分的に消費するように意図されている1つ以上の負荷4に対して電力を供給するように構成されるエネルギー生成プラント2及び再生可能エネルギープラント3を有するマイクログリッド1が示される。マイクログリッド1に対して同時に、好適には並列に電気的に接続されるように、様々な発電プラント2,3はそれぞれ、同じ周波数及び同じ電圧の電気信号を供給することができなければならない。
【0022】
発電プラントは、同期発電機などの様々な非再生可能エネルギー資源を含んでもよい。同期発電機2は一般に同期モータ(オルタネータ(alternator))を備え、該同期モータは、回転機械のシャフトによって回転駆動されるときにAC電気信号(電流及び電圧)を生成する。回転機械は、ディーゼルモータ又はタービン、例えばガスタービン、水力タービン、蒸気タービン、又は、空気タービンなどを備えてもよい。
【0023】
再生可能プラント3は、1つ以上の再生可能エネルギー資源、電力蓄積システム、及び、1つ以上のインバータを含んでもよい。再生可能エネルギー資源は、一般にDC電気信号を生成する太陽光発電機、風力発電機、又は、水流発電機を備えてもよい。それぞれの再生可能資源ごとに1つのインバータが存在してもよく、複数の再生可能資源に関して1つのインバータが存在してもよく、或いは、全ての再生可能資源の全ての寄与を組み合わせるプラント全体に関して1つのインバータが存在してもよい。これは、異なるタイプの資源が存在するかどうか、資源のサイズ、又は、他の基準に応じて選択されてもよい。選択された構成にかかわらず、1つ以上のインバータは、再生可能エネルギー資源により生成される電気信号をそれがマイクログリッド1に入れられる前にAC電気信号に変換することができる。
【0024】
各プラントは、それぞれのプラント2,3の動作を制御するためのローカルコントローラ5,6を有する。発電プラントのローカル発電機コントローラ5は、供給されるべき電力を負荷4によって求められる電力と再生可能プラント3により供給される電力とに対して適合させるために、発電プラント2内で利用可能な様々な非再生可能エネルギー資源の始動及び停止を制御する。再生可能プラントのローカル再生可能コントローラ6は、負荷4により求められる総電力負荷に対する再生可能な供給電力の寄与を最適化する目的で、再生可能資源により供給される電力を制御する。更に、1つ以上のインバータの内部制御は、再生可能資源及び再生可能プラント3全体の仮想発電機としての動作を可能にする制御法則(control law)を実施するように設計されている。
【0025】
図3を参照すると、図2のマイクログリッドの動作を制御する方法の一例が示される。一般に、この方法は、分散型再生可能エネルギー資源の少なくとも1つの再生可能プラントと、分散型非再生可能エネルギー資源の少なくとも1つの発電プラントとを有する任意のマイクログリッドを制御するために使用されてもよく、この場合、各プラントはローカルコントローラを有する。
【0026】
この方法は、マイクログリッド1内で接続される各プラント2,3のタイプ及びサイズをマイクログリッド内の互いのプラントのローカルコントローラ5,6に提供する(101)ことを含む。これは、マイクログリッドが設置されて構成される最初の段階中に行なわれてもよい。プラントのサイズは、そのプラントによって潜在的に供給され得る総電力量を示す。各ローカルコントローラ5,6はマイクログリッドの周波数を測定する(102)。測定周波数に基づき、及び、各プラントのタイプ及びサイズと共に、各ローカルコントローラは、それぞれのプラントから求められる電力負荷を推定する(103)。この推定電力負荷は、その後、プラント内で利用可能なエネルギー資源間で分けられる(104)。これらのステップは、プラントのタイプ、すなわち、発電プラント又は再生可能プラントに関係なく、各コントローラに共通である。
【0027】
少なくとも1つの再生可能プラント3のローカル再生可能コントローラ6は、推定電力負荷と再生可能プラント3により供給される再生可能電力とに基づき、それが負荷により求められる総電力を供給できるかどうか、又は、更なる電力が発電プラント2によって供給されるべきかどうかを評価できる。供給される再生可能電力PRenewableは、十分であってもよく、少なすぎてもよく、多すぎてもよく、それは、PRenewableと推定電力負荷PEstimatedとを比較することによって決定される。これを信号で伝えるために、ローカル再生可能コントローラ6は、その仮想発電機特性をうまく利用して、それがグリッド形成を行なえるように周波数を適合させてもよい。
【0028】
したがって、図4に示されるように、この方法は、供給電力が推定負荷を下回るときに再生可能プラント3により電力が供給される際の周波数をローカル再生可能コントローラ6が減少させる(203)ことを更に含む。これは、この例では、供給される再生可能電力と負荷4により求められる電力の推定値とを比較する(202)ことによって評価される。そして、ローカル再生可能コントローラ6は、供給電力が推定負荷を上回るときに再生可能プラント3により電力が供給される際の周波数を増大してもよい(204)。
【0029】
次に、図5に示されるように、マイクログリッドの周波数を測定する(102)少なくとも1つの発電プラント2のローカル発電機コントローラ5は、この例では測定周波数FMeasuredと周波数の公称値又は所望値FNominalとを比較することによって周波数の低下又は上昇を検出する。それに対応し、ローカル発電機コントローラ5は、マイクログリッドの周波数の減少を検出することに応じて、非再生可能資源による電力供給を増大させてもよい(303)。そして、ローカル発電機コントローラ5は、マイクログリッドの周波数の増大を検出することに応じて、非再生可能資源による電力供給を減少させてもよい(304)。より詳細には、ローカル発電機コントローラ5により推定される電力需要103は、ローカル発電機6が発電プラント2により供給される電力を適合させる必要がある電力量の指標を与える。
【0030】
発電プラント2は一般的にグリッド形成も可能であるため、ローカル再生可能コントローラ6によって決定付けられる減少又は増大に起因するマイクログリッドの周波数の低下又は上昇は、発電プラント2により供給されて発電機コントローラ5の応答によって定められる適合電力の周波数によって補償される。再生可能プラントの寄与の周波数低下に起因するマイクログリッド周波数の低下は、発電プラント2により供給される電力の寄与の増大に起因する発電機電力の周波数の重畳によって相殺される。
【0031】
マイクログリッド1の動作を制御する方法の他の例では、少なくとも1つの再生可能プラントがローカルエネルギー蓄積器(accumulator)を含む場合、この方法は、そのエネルギー蓄積器の充電状態を考慮に入れてもよい。図6に示されるように、この方法は、図4の例と同様に、ローカル再生可能コントローラ6が供給される再生可能電力と負荷4により求められる電力の推定値とを比較する(402)ことを含む。そして、ローカル再生可能コントローラ6は、供給電力が推定負荷を上回るときに再生可能プラント3により電力が供給される際の周波数を増大してもよい(404)。
【0032】
図6の例において、方法は、ローカルエネルギー蓄積器の充電状態が予備電力を確保するのに十分である場合に、少なくとも1つの再生可能プラント3のローカルコントローラ6が、供給エネルギーが推定負荷を下回るときに、再生可能プラント3により電力が供給される際の周波数を維持する(405)ことを更に含む。そして、再生可能コントローラ6は、ローカルエネルギー蓄積器の放電を開始する及び/又は能動的に制御する。そのため、発電プラント2からの更なる電力は未だ必要とされない。これは、再生可能プラント3により供給される電力の量が所望のレベルに維持され得るからである。このため、再生可能コントローラ6は、再生可能な電力を監視し続ける(201)。一方、ローカルエネルギー蓄積器の充電状態が予備電力を確保するのに不十分である場合、再生可能コントローラ6は、供給エネルギーが推定負荷を下回るときに、再生可能プラントにより電力が供給される際の周波数を減少させる(403)。
【0033】
更に、供給電力が求められる推定電力を上回ると再生可能コントローラ6が評価すると、コントローラがローカルエネルギー蓄積器の充電を開始してもよい。充電を最適化するための様々な方式が考えられる。例えば、エネルギー蓄積器の充電は、発電プラントが電力を供給し始める前に完全に充電されたエネルギー蓄積器を確保するために、周波数を増大させる(404)前に開始されてもよい。他の例として、エネルギー蓄積器の充電は、例えばエネルギー蓄積器が全容量まで充電される前に過剰供給電力が再び低下することが予期される場合には、周波数を増大させる代わりに開始されてもよい。或いは、エネルギー蓄積器の充電は、例えば電力供給の継続的な上昇が明け方に予期される又はソーラーパネルにとって好ましい天気予報が考慮されるときに、周波数の増大(404)と同時に開始されてもよい。
【0034】
再生可能電力を供給する電気信号の周波数を制御するために、再生可能プラント3のコントローラ6は設定点を制御するように設計されており、この設定点は、電力が供給される際の周波数を調整する。そして、再生可能コントローラ6は、供給電力が推定負荷をそれぞれ下回る又は上回るときに再生可能プラントにより電力が供給される際の周波数を減少又は増大させるために設定点を調整する。
【0035】
より具体的な例として、再生可能プラント3のローカルコントローラ6は、ドループ制御を可能にする制御法則を実施及び/又は実行するように設計されている。ドループ制御は、供給される有効電力に応じた電気信号の周波数の調整及び/又は無効電力に応じた電気信号の電圧の調整に関連する。すなわち、再生可能コントローラ6によって制御される設定点は、このとき、電力設定点、つまり、制御法則により規定される有効電力と周波数との間の関係にしたがって供給されるべき再生可能電力の周波数を適合させる電力基準である。
【0036】
各ローカルコントローラ5,6が求められる総電力の推定値を取得してそこから供給する必要がある電力を決定するために、各ローカルコントローラ5,6は同一のアルゴリズムを実行する。そのようなアルゴリズムの一例として、測定周波数と各プラントのタイプ及びサイズとに基づいてプラントから求められる電力負荷を推定することは、微分方程式の以下のセットを解くことを含む。
【数1】
【数2】
ここでは、以下のパラメータが使用される。
【0037】
Sは飽和関数であり、
λ及びλは調整可能な制御変数であり、
fは測定周波数であり、
は公称周波数であり、
zは積分変数であり、
【数3】
はzの時間微分である。
【0038】
方程式のこのセットは、飽和比例積分コントローラ(PI-コントローラ)を導入する。飽和関数は、推定電力がマイクログリッドサイズを超えることが回避されるように選択される。制御変数λ,λの値は、マイクログリッドのサイズに依存する。例えば、幾つかのkW値の小さなマイクログリッドに関しては、λ=150及びλ=5の程度である。一方、数MWのマイクログリッドの場合、λ=1500及びλ=50である。公称周波数fは50Hzであることが好ましいが、他の目的のために自由に選択することができる。
【0039】
変数Zは内部変数であり、計算のためだけに使用され、推定電力の値を「保存」することができる。したがって、f=fのとき、Pest=S(z)となる。ここで、積分器は、 Pestの収束を加速するために制御変数λによっても強調される。計算の開始時に、Pestの初期値がゼロに設定されてもよい。
【0040】
更に、プラントにより求められる電力を推定することは、供給される再生可能電力が求められる総電力と一致するかどうかを決定するために推定電力負荷と少なくとも1つの再生可能プラントのサイズとを比較することを含む。
【0041】
それぞれのプラントにより求められる電力の推定値を得るために、測定周波数と各プラントのタイプ及びサイズとに基づいてプラントにより求められる電力負荷を推定することは、以下を更に含む。
【0042】
推定総電力需要が再生可能プラントのサイズよりも小さい場合、再生可能プラントにより求められる電力は、求められる総電力に等しく設定される。また、発電プラントにより求められる電力はゼロに設定される。或いは、以下の式で表わされる。すなわち、
Renewable=Pest
GenSet=0
また、推定総電力需要が再生可能プラントのサイズよりも大きい場合、再生可能プラントにより求められる電力は、再生可能プラントのサイズに等しく設定される。また、発電プラントにより求められる電力は、求められる総電力から再生可能プラントのサイズを差し引いた値に等しく設定される。或いは、以下の式で表わされる。すなわち、
Renewable=SizeRenewable
GenSet=Pest-SizeRenewable
求められる総電力の推定値が必ずしも求められる実際の電力ではないことに留意することが重要である。この推定値は、発電プラントによって供給される必要がある電力を伝えるために推定される、すなわち、計算されるパラメータである。これが再生可能プラントが供給可能な電力とマイクログリッドから求められる総電力との間の差として計算され得るため、再生可能プラントが供給できる実際の電力を伝える必要はない。その代わりに、求められる電力超過が伝えられ、それは推定総電力からプラントの所定サイズを差し引いたものである。
【0043】
したがって、本明細書中で開示されるようなマイクログリッドの動作を制御する方法の様々な例がそのようなマイクログリッドで実施されてもよい。図7を参照すると、1つ以上の負荷14に電力を供給するように構成される少なくとも1つのエネルギー生成プラント12と少なくとも1つの再生可能エネルギープラント13とを有するマイクログリッド11が示される。少なくとも1つの再生可能プラント13は、1つ以上の分散型再生可能エネルギー資源18、再生可能インバータ17、及び、ローカル再生可能コントローラ16を有する。少なくとも1つの発電プラント12は、1つ以上の分散型非再生可能エネルギー資源とローカル発電機コントローラ15とを含む。
【0044】
各ローカルコントローラ15,16には、マイクログリッド11内に存在する他の全てのプラントのタイプ及びサイズが与えられる。各ローカルコントローラ15,16は、マイクログリッドの周波数を測定するように設計されている。各ローカルコントローラ15,16は、測定周波数と各プラントのタイプ及びサイズとに基づいてプラントから求められる電力負荷を推定するように設計されている。そして、各ローカルコントローラ15,16は、それぞれのプラント15,16内で利用可能なエネルギー資源間で推定電力負荷を分けるように設計されている。
【0045】
少なくとも1つの再生可能プラント13のローカルコントローラ16は、更に、供給電力が推定負荷を下回るときに再生可能プラントによって電力が供給される際の周波数を減少させるために、プラントによって供給される電力を監視するように設計されており、また、供給電力が推定負荷を上回るときに再生可能プラントによって電力が供給される際の周波数を増大させるように設計されている。
【0046】
少なくとも1つの発電プラント12のローカルコントローラ15は、更に、マイクログリッドの周波数低下の検出に応じて非再生可能資源による電力供給を増大させるように設計されており、また、マイクログリッドの周波数増大の検出に応じて非再生可能資源による電力供給を減少させるように設計されている。
【0047】
更に、少なくとも1つの再生可能プラント13は、ローカルエネルギー蓄積器19を有する。したがって、ローカルエネルギー蓄積器の充電状態が予備電力を確保するのに十分である場合に、少なくとも1つの再生可能プラント13のローカルコントローラ16は、供給エネルギーが推定負荷を下回るときに、ローカルエネルギー蓄積器19の放電を制御するために、再生可能プラントにより電力が供給される際の周波数を維持する。また、ローカルエネルギー蓄積器の充電状態が予備電力を確保するのに不十分である場合、再生可能コントローラ16は、供給エネルギーが推定負荷を下回るときに、再生可能プラントにより電力が供給される際の周波数を減少させる。
【0048】
以上、特定の実施形態に関連して本発明を説明してきたが、本発明は、本明細書中に記載される特定の形態に限定されるように意図されていない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、上記特定のもの以外の他の実施形態も等しくこれらの添付の特許請求の範囲内に入ることが想定し得る。
【0049】
更に、典型的な実施形態を構成要素及び/又は機能の幾つかの典型的な組み合わせにおいて前述したが、本開示の範囲から逸脱することなく部材及び/又は機能の異なる組み合わせによって代わりの実施形態が与えられてもよいことが理解されるべきである。加えて、個々に又は実施形態の一部として記載される特定の特徴を他の個別に記載される特徴又は他の実施形態の一部と組み合わせることができると特に考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7