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特許7161925線画模様の画像処理方法及びそのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】線画模様の画像処理方法及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/20 20160101AFI20221020BHJP
   G06T 7/49 20170101ALI20221020BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20221020BHJP
   B42D 25/337 20140101ALN20221020BHJP
【FI】
G07D7/20
G06T7/49
B41M3/14
B42D25/337
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018219863
(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公開番号】P2020086889
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591064379
【氏名又は名称】昌栄印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】西垣内 剛
(72)【発明者】
【氏名】青砥 一博
(72)【発明者】
【氏名】麻野 雄三
【審査官】葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136845(JP,A)
【文献】特開2009-184134(JP,A)
【文献】特開昭63-244194(JP,A)
【文献】国際公開第2006/106677(WO,A1)
【文献】特表2010-530095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00- 3/18
B41M 7/00- 9/04
B42D 25/00-25/485
G06K 7/10、 7/14
G06T 7/00- 7/90
G07D 7/00- 7/207
H04N 1/32、 1/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線を含む線画模様から、少なくとも第1の線幅を有する画線を判別するための画像処理方法であって、
撮影部により、基材上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線を含む線画模様の画像データを取得するステップと、
画線強度読取り部により、前記線画模様の画像データから、各画線を横断する走査ラインに沿った各画線の1次強度を波形成分として取得するステップと、
波形幅解析部により、前記1次強度の波形成分から、ある1次強度の閾値における各画線に対応する波形成分の波形幅を求めるステップと、
1次強度解析部により、前記1次強度の波形成分から、前記閾値より上側で且つ各画線に対応する波形成分の1次強度のピーク値を求めるステップと、
面積解析部により、前記1次強度の波形成分から、前記閾値より上側で且つ各画線に対応する波形成分によって囲まれた領域の面積を求めるステップと、
スコア生成部により、各画線の波形成分の前記波形幅の値、前記1次強度のピーク値および前記面積の値を乗じることにより、前記走査ラインに沿った各画線の線幅を表すスコアを生成するステップと、そして
判別部により、前記各画線のスコアから、少なくとも第1の線幅を有する画線を判別するステップを含んでいる画像処理方法。
【請求項2】
前記第1の線幅を有する画線は、2本以上の異なる線幅の画線の中で最も太い線幅を有する画線、または2本以上の異なる線幅の画線の中で最も細い線幅を有する画線である請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記判別部が、前記第1の線幅とは異なる第2の線幅を有する画線を判別するステップをさらに含んでいる請求項1又は2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
各画線の前記閾値は、前記画像データに基づき、対応する各画線の明るさに応じて補正されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記画像データは、前記撮影部により取得された、前記基材上に印刷された特定コードの画像データをさらに含んでおり、そして前記線画模様に対する前記走査ラインの配置は、走査ライン指示部により、前記特定コードの画像データに基づいて定められることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記特定コードは、2次元コードである請求項5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記走査ラインは、各画線を同じ角度で横断するように定められることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記線画模様は、彩紋模様である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記画像データを取得後、前記画像データを256階調のグレースケールへ変換するステップをさらに含んでいる請求項1ないし8のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項10】
基材上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線を含む線画模様から、少なくとも第1の線幅を有する画線を判別するための画像処理システムであって、
基材上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線を含む線画模様の画像データを取得する撮影部と、
前記画像データを有線又は無線により画像処理装置へ送信する送信部と
を備えた画像取得装置と、そして
前記画像取得装置から送信された前記画像データを受信する受信部と、
前記線画模様の画像データから、各画線を横断するある走査ラインに沿った各画線の1次強度を波形成分として取得する画線強度読取り部と、
前記1次強度の波形成分から、ある1次強度の閾値における各画線に対応する波形成分の波形幅を求める波形幅解析部と、
前記1次強度の波形成分から、前記閾値より上側で且つ各画線に対応する波形成分の1次強度のピーク値を求める1次強度解析部と、
前記1次強度の波形成分から、前記閾値より上側で且つ各画線に対応する波形成分によって囲まれた領域の面積を求める面積解析部と、
各画線の波形成分の前記波形幅の値、前記1次強度のピーク値および前記面積の値を乗じることにより、前記走査ラインに沿った各画線の線幅を表すスコアを生成するスコア生成部と、そして
前記各画線のスコアから、少なくとも第1の線幅を有する画線を判別する判別部と
を備えた画像処理装置と
からなる画像処理システム。
【請求項11】
前記第1の線幅を有する画線は、2本以上の異なる線幅の画線の中で最も太い線幅を有する画線、または2本以上の異なる線幅の画線の中で最も細い線幅を有する画線である請求項10に記載の画像処理システム。
【請求項12】
前記判別部が、前記第1の線幅とは異なる第2の線幅を有する画線をさらに判別することを特徴とする請求項10又は11に記載の画像処理システム。
【請求項13】
各画線の前記閾値は、前記画像データに基づき、対応する各画線の明るさに応じて補正されていることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1項に記載の画像処理システム。
【請求項14】
前記画像データは、前記撮影部により取得された、前記基材上に印刷された特定コードの画像データをさらに含んでおり、そして前記特定コードの画像データに基づいて、前記線画模様に対する前記走査ラインの配置を定める走査ライン指示部をさらに含んでいる請求項10ないし13のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記特定コードは、2次元コードである請求項14に記載の画像処理システム。
【請求項16】
前記走査ラインは、各画線を同じ角度で横断するように定められることを特徴とする請求項10ないし15のいずれか1項に記載の画像処理システム。
【請求項17】
前記線画模様は、彩紋模様である請求項10ないし16のいずれか1項に記載の画像処理システム。
【請求項18】
前記画像データは、256階調のグレースケールへ変換されていることを特徴とする請求項10ないし17のいずれか1項に記載の画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線を含む線画模様から、少なくとも第1の線幅を有する画線を判別(抽出)するための画像処理方法及びそのシステムに関する。
【0002】
特に線画模様の画像データから、各画線を横断する走査ラインに沿った各画線の1次強度を波形成分として取得し、その波形成分から各画線の波形幅の値、1次強度のピーク値および波形成分に囲まれた領域の面積の値を乗じることにより、2本以上の異なる線幅の画線を含む線画模様から、少なくとも第1の線幅を有する画線を判別(抽出)するのに適した各画線のスコアを生成して判別(抽出)する画像処理方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来より、株券などの有価証券やクレジットカードなどのカード類の偽造、変造を防止するために、有価証券やカード類の表面に複雑な画線の集合からなる地紋、彩紋模様、レリーフ模様などの幾何学模様を印刷したり、或いは地紋、彩紋模様、レリーフ模様などの中に潜像を施しておき、これらの模様を複写機などにより現出させたり、専用の読取り装置によって画像データを取得し、解析して判別する方法などが知られている。
【0004】
例えば、特開2012-121247号公報(特許文献1)には、肉眼では一定の濃度に視認される、特定の比率の線幅で交互に配列された画線と非画線とからなる万線を周波数解析することにより、予め定められた周波数成分を抽出する画像処理を用いた印刷物の認証方法が開示されている。特開2012-187738号公報(特許文献2)には、同心円状に配置された複数の画線ユニットの特定の領域内の間隔を周波数解析することにより、該領域内に埋め込まれた情報に基づいて周波数成分を抽出する画像処理を用いた印刷物の認証方法が開示されている。また、特開平8-212418号公報(特許文献3)には、潜像を施した部分の画線の画像情報に2値化による除去を図り、潜像を施さない部分の画線の位置に残存する2値画像形状を認識又は比較、照合することにより真偽を判別する画像処理を用いた読み取り検査方法が開示されている。
【0005】
一方、近年のデジタル機器の急速な発達により、汎用の小型カメラを備えたスマートフォンなどのモバイル機器や汎用の小型デジタルカメラなどを用いて地紋、彩紋模様、レリーフ模様などの画像データを取得し、そして該画像データからある線幅を有する画線を判別することができれば、真贋判定などに容易に用いることができるようになり便利である。
【0006】
ところが、上述した特許文献1~3に記載された認証方法では、地紋、彩紋模様、レリーフ模様などから画像データを取得するために専用の高精度のデジタルカメラが用いられており、さらに明度や彩度が安定した画像データを取り込むために専用の照明器具も併用される場合が多い。このように、特許文献1~3に記載された認証方法では、上述したようなスマートフォンなどのモバイル機器に内蔵された汎用の小型カメラなどが用いられていないのが現状である。
【0007】
なぜなら、スマートフォンなどのモバイル機器に内蔵された汎用の小型カメラや汎用の小型デジタルカメラなどを用いると、画像データ取得用の専用カメラなどに比べて露出や露光などが安定せず、解像度も低く、さらに照明などの撮影環境も一定でないため、取得した画像データにカスレや欠けなどの欠陥が生じて正確且つ安定した画像データを取得できなくなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-121247号公報
【文献】特開2012-187738号公報
【文献】特開平8-212418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、スマートフォンなどのモバイル機器に内蔵された汎用の小型カメラや汎用の小型デジタルカメラなどを用いても、地紋、彩紋模様、レリーフ模様など線画模様から、特定の線幅を有する画線を正確且つ安定して抽出及び判別することができる画像処理方法及びそのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、スマートフォンなどに内蔵された汎用の小型カメラなどを用いて取得した線画模様の画像データから、特定の線幅を有する画線を正確且つ安定して抽出するのに有効な画像データの補正方法などについて鋭意検討を重ねた結果、該画像データから各画線の線幅を波形成分の強度として取得し、その波形成分の強度を該波形成分の特徴を表す要素によりスコア化すれば、画線群の中から特定の線幅を有する画線を正確且つ安定して判別(抽出)できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、基材上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線を含む線画模様から、少なくとも第1の線幅を有する画線を判別するための画像処理方法であって、撮影部により、基材上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線を含む線画模様の画像データを取得するステップと、画線強度読取り部により、前記線画模様の画像データから、各画線を横断する走査ラインに沿った各画線の1次強度を波形成分として取得するステップと、波形幅解析部により、前記1次強度の波形成分から、ある1次強度の閾値における各画線に対応する波形成分の波形幅を求めるステップと、1次強度解析部により、前記1次強度の波形成分から、前記閾値より上側で且つ各画線に対応する波形成分の1次強度のピーク値を求めるステップと、面積解析部により、前記1次強度の波形成分から、前記閾値より上側で且つ各画線に対応する波形成分によって囲まれた領域の面積を求めるステップと、スコア生成部により、各画線の波形成分の前記波形幅の値、前記1次強度のピーク値および前記面積の値を乗じることにより、前記走査ラインに沿った各画線の線幅を表すスコアを生成するステップと、そして判別部により、前記各画線のスコアから、少なくとも第1の線幅を有する画線を判別するステップを含んでいる画像処理方法が提供される。
【0012】
また、本発明は上述した画像処理方法をハードの中へ組み込むことにより、画像処理システムとして構成することもできる。
【0013】
具体的には、本発明によれば、基材上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線を含む線画模様から、少なくとも第1の線幅を有する画線を判別するための画像処理システムであって、基材上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線を含む線画模様の画像データを取得する撮影部と、前記画像データを有線又は無線により画像処理装置へ送信する送信部とを備えた画像取得装置と、そして前記画像取得装置から送信された前記画像データを受信する受信部と、前記線画模様の画像データから、各画線を横断するある走査ラインに沿った各画線の1次強度を波形成分として取得する画線強度読取り部と、前記1次強度の波形成分から、ある1次強度の閾値における各画線に対応する波形成分の波形幅を求める波形幅解析部と、前記1次強度の波形成分から、前記閾値より上側で且つ各画線に対応する波形成分の1次強度のピーク値を求める1次強度解析部と、前記1次強度の波形成分から、前記閾値より上側で且つ各画線に対応する波形成分によって囲まれた領域の面積を求める面積解析部と、各画線の波形成分の前記波形幅の値、前記1次強度のピーク値および前記面積の値を乗じることにより、前記走査ラインに沿った各画線の各画線の線幅を表すスコアを生成するスコア生成部と、そして前記各画線のスコアから、少なくとも第1の線幅を有する画線を判別する判別部とを備えた画像処理装置とからなる画像処理システムが提供される。
【0014】
本発明の画像処理方法及び画像処理システムでは、撮影部により、基材上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線を含む地紋、彩紋模様、レリーフ模様などの線画模様から画像データを取得する。この場合、撮影部は、基本的に画像の解像度に拠らず、スマートフォンなどのモバイル機器などに内蔵された小型カメラや汎用のデジタルカメラを用いることができ、さらに、画像データ取得に際して撮影環境を一定にするための専用の照明器具や囲いなども必要とせず、線画模様とカメラとの距離や傾き、明るさなどにバラツキを生じていても構わない。また、線画模様がカラーである場合は、画像処理の負荷を低減するために、画像データを取得後、画像データを256階調のグレースケールへ変換してもよい。
【0015】
線画模様に含まれる画線は、画像データから、画線強度読取り部によって各画線を横断する走査ラインに沿った各画線の1次強度の波形成分として取得される。そして、各画線の1次強度の波形成分から、各画線(1次強度の波形成分)の特徴を表す指標として、ある1次強度の閾値における各画線に対応する波形成分の波形幅と、閾値より上側で且つ各画線に対応する波形成分の1次強度のピーク値と、そして閾値より上側で且つ各画線に対応する波形成分によって囲まれた領域の面積が、波形幅解析部、1次強度解析部および面積解析部によって求められる。
【0016】
本発明では、各画線(1次強度の波形成分)の特徴をより明確に且つ強調するため、スコア生成部により、各画線の波形成分の波形幅の値、1次強度のピーク値および面積の値を乗じることにより、走査ラインに沿った各画線の線幅を表すスコアを生成するという処理が施される。
【0017】
そして、スコア生成部により強調された各画線のスコアは、露出や露光などが安定せず、解像度も低いスマートフォンなどのモバイル機器に内蔵された汎用の小型カメラなどを用いても、或いは照明などが一定していない撮影環境下において撮影した場合においても、取得した線画模様の画像データに基づき、実際の各画線の線幅などの特徴を正確に再現し、強調することができる。
【0018】
このため、本発明の画像処理方法及び画像処理システムでは、スコア生成部により、各画線の線幅を表すスコアを生成すると、実際の各画線の線幅の差異が僅少であるような場合であっても、判別部で各画線のスコアを比較することにより、線画模様中の各画線の線幅の差異(例えば、太い又は細い)を正確且つ安定して判別することができる。
【0019】
例えば、本発明の画像処理方法及び画像処理システムによれば、各画線のスコアを比較することにより、線画模様中の各画線の中から1番太い線幅を有する画線、2番目に太い線幅を有する画線・・・、1番細い線幅を有する画線などを正確且つ安定して判別し、抽出することができる。
【0020】
また、本発明によれば、線画模様中の各画線の中から少なくとも第1の線幅を有する画線を正確且つ安定して判別し、抽出することもできれば、第1の線幅とは異なる第2の線幅を有する画線を正確且つ安定して判別し、抽出することもでき、例えば各画線の中から1番太い線幅を有する方から2番目までの画線、1番目と3番目に太い線幅を有する画線、1番細い線幅を有する方から3番目までの画線、1番目と3番目と4番目に細い線幅を有する画線などを正確且つ安定して判別し、抽出することができる。
【0021】
本発明では、基材上には線画模様と共にQRコード(登録商標)などの2次元コードのような特定コードや、幾何学的/非幾何学的な図形が印刷されていてもよく、この場合、画像データは、撮影部により取得した特定コードや図形に関する画像データを含むことができ、そして線画模様に対する走査ラインの配置は、特定コードや図形の画像データに基づいて走査ライン指示部により定めることができる。
【0022】
例えば、基材上に印刷された特定コードに対して線画模様を所定の位置関係に配置しておけば、走査ライン指示部により、画像データにおける特定コードや図形を基準点として、その基準点に基づいて画像データにおける線画模様に対する走査ラインの配置を演算し割り出すことができる。或いは、走査ライン指示部により、画像データにおける特定コードや図形に基づいて、予め定められた走査ライン配置パターン・テーブルから画像データにおける線画模様に対する所定の走査ラインの配置を読み出して決定してもよい。
【0023】
また、走査ラインは、各画線を同じ角度で横断するように決定ないし配置されることが好ましい。走査ラインが各画線と異なる角度で交差してしまうと、同じ線幅の画線であっても、波形幅解析部、1次強度解析部および面積解析部によって異なる波形幅、異なるピーク値、異なる領域の面積を有する1次強度の波形成分が検出される結果、異なる線幅の画線であると誤った判別を誘導してしまうからである。なお、本願明細書では、走査ラインが画線を横断する「角度」とは、画線が直線である場合は、該画線と走査ラインの交差角を意味し、画線が曲線である場合は、走査ラインが横断する部分の該画線の接線と走査ラインの交差角を意味している。
【0024】
本発明の画像処理方法及び画像処理システムでは、画像データに基づき、各画線の閾値を対応する各画線の明るさに応じて補正することができる。例えば、画像データに基づき、対応する各画線の明るさが同じになるように各画線の閾値を補正することができる。また、各画線の閾値を補正するのではなく、画像データに基づき、対応する各画線の明るさが同じになるように各画線の1次強度の波形成分を補正してもよい。
【0025】
同じ線画模様の中でも明るさにバラツキが生じると、画線強度読取り部により、線画模様の画像データから取得した各画線の波形成分の1次強度(例えば濃度)にも強弱(例えば濃淡)のバラツキを生じることがある。このため、各画線の線幅などの特徴が正確に再現されるように、各画線の明るさが同じになるように1次強度の波形成分又はその閾値を補正することで、画線強度読取り部により取得した各画線の1次強度の波形成分およびスコア生成部により強調された各画線のスコアの精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の画像処理方法及びそのシステムによれば、線画模様の画像データから、各画線を横断する走査ラインに沿った各画線の1次強度を波形成分として取得し、その波形成分から各画線の波形幅の値、1次強度のピーク値および波形成分に囲まれた領域の面積の値を乗じることにより、2本以上の異なる線幅の画線を含む線画模様から、少なくとも第1の線幅を有する画線を判別(抽出)するのに適した各画線のスコアを得ることができる。
【0027】
また、強調された各画線のスコアは、露出や露光などが安定せず、解像度も低いスマートフォンなどのモバイル機器に内蔵された汎用の小型カメラなどを用いても、或いは照明などが一定していない撮影環境下において撮影した場合においても、取得した線画模様の画像データに基づき、実際の各画線の線幅などの特徴を正確に再現し、強調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の画像処理システムのシステム構成を示した概要図である。
図2】本発明の画像処理方法の手順を示したフローチャートである。
図3】本発明で使用される基材上に印刷された線画模様(彩紋模様)とQRコード(登録商標)を示した概要図である。
図4図3に示される線画模様とQRコード(登録商標)の画像データから走査ラインを配置する方法を例示した概要図である。
図5図4に示される走査ラインの配置方法の概要図を部分的に拡大した拡大図である。
図6図5に示される線画模様の画像データから、走査ラインが各画線を横断することにより取得した1次強度の波形成分を示した概要図である。
図7図6に示された線画模様の画像データから取得した1次強度の波形成分と、ある1次強度の閾値における各画線に対応する波形成分の波形幅の求め方を示した概要図である。
図8図6に示される1次強度の波形成分と、閾値より上側で且つ各画線に対応する波形成分の1次強度のピーク値の求め方を示した概要図である。
図9図6に示される1次強度の波形成分と、閾値より上側で且つ各画線に対応する波形成分によって囲まれた領域の面積の求め方を示した概要図である。
図10】第1の線幅を有する画線を判別するために、波形幅の値、1次強度のピーク値および面積の値を乗じることにより、各画線の線幅を表すスコアを生成する方法を例示した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係る画像処理方法及び画像処理システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【0030】
図1の概要図には、本実施形態の画像処理システム1のシステム構成が示されている。
【0031】
図1を参照して理解されるように、本実施形態は、基材4上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線42を含む線画模様40から、少なくとも第1の線幅を有する画線42を判別するための画像処理システム1であって、大別して、基材4から線画模様40などから画線42に関する情報を画像データ5として取得する画像取得装置2と、画像データ5を、画線を判別(抽出)するのに適した画線42に関する情報へ加工処理する画像処理装置3とから構成される。
【0032】
画像取得装置2は、基材4上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線42を含む線画模様40と2次元コード41の画像データ5を取得する撮影部20と、画像データ5を有線又は無線により画像処理装置3へ送信する送信部21とを備えている。
【0033】
撮影部20は、基本的に画像の解像度に拠らず、スマートフォンなどのモバイル機器などに内蔵された小型カメラや汎用のデジタルカメラを用いることができ、さらに、画像データ5取得に際して撮影環境を一定にするための専用の照明器具や囲いなども必要とせず、線画模様40とカメラとの距離や傾き、明るさなどにバラツキを生じていても構わない。また、線画模様40がカラーである場合は、画像処理の負荷を低減するために、画像データ5を取得後、画像データ5を256階調のグレースケールへ変換してもよい。
【0034】
画像処理装置3は、画像データ5から線画模様40の各画線42の1次強度の波形成分7を取得するため、画像取得装置2から送信された画像データ5を受信する受信部30と、2次元コード41の画像データ51に基づいて、線画模様40に対する走査ライン52の配置を定める走査ライン指示部32と、線画模様40の画像データ50から、各画線42を横断する走査ライン52に沿った各画線42の1次強度を波形成分7として取得する画線強度読取り部31とを備えている。なお、本実施形態の画像処理システム1において、画像取得装置2と画像処理装置3と間の画像データ5の送受信は、有線又は無線の限定がなく、またインターネット回線などを利用してもよい。
【0035】
走査ライン52は、各画線42と異なる角度で交差してしまうと、同じ線幅の画線42であっても、後述する波形幅解析部33、1次強度解析部34および面積解析部35によって異なる線幅の画線42と検出されてしまうおそれがあるので、各画線42を同じ角度で横断するように決定ないし配置される(図4参照)。
【0036】
また、画像処理装置3は、取得した線画模様40の画像データ50から、各画線42(1次強度の波形成分7)の特徴を表す指標として、1次強度の波形成分7から、ある1次強度の閾値73における各画線42に対応する波形成分の波形幅70を求める波形幅解析部33と、1次強度の波形成分7から、閾値73より上側で且つ各画線42に対応する波形成分の1次強度のピーク値71を求める1次強度解析部34と、1次強度の波形成分7から、閾値73より上側で且つ各画線42に対応する波形成分によって囲まれた領域の面積72を求める面積解析部35とを備えている。
【0037】
この場合、本実施形態の画像処理システム1では、画像データ50に基づき、各画線42の閾値73を対応する各画線42の明るさに応じて補正することができる。例えば、画像データ50に基づき、対応する各画線42の明るさが同じになるように各画線42の閾値73を補正することができる。また、各画線42の閾値73を補正するのではなく、画像データ50に基づき、対応する各画線42の明るさが同じになるように各画線42の1次強度の波形成分7を補正してもよい。
【0038】
画像処理装置3は、取得した線画模様40の画像データ50から、実際の各画線42の線幅などの特徴を再現および強調し、それらの相違を判別することができるように、各画線42の波形成分の波形幅の値70、1次強度のピーク値71および面積の値72を乗じることにより、走査ライン52に沿った各画線42のスコア8を生成するスコア生成部36と、そして各画線42のスコア8から、少なくとも第1の線幅を有する画線42を判別する判別部37とを備えている。
【0039】
このように、本実施形態の画像処理システム1では、スコア生成部36により、各画線42の線幅を表すスコア8を求めることで、実際の各画線42の線幅の差異が僅少であるような場合であっても、判別部37で各画線42のスコア8を比較することが可能となり、線画模様40中の各画線42の線幅の差異(例えば、太い又は細い)を正確且つ安定して判別することができる。
【0040】
例えば、各画線42のスコア8を比較することにより、線画模様40中の各画線42の中から1番太い線幅を有する画線42、2番目に太い線幅を有する画線42・・・、1番細い線幅を有する画線42などを正確且つ安定して判別し、抽出することができる。
【0041】
また、線画模様40中の各画線42の中から少なくとも第1の線幅を有する画線42を正確且つ安定して判別し、抽出することもできれば、第1の線幅とは異なる第2の線幅を有する画線42を正確且つ安定して判別し、抽出することもでき、例えば各画線42の中から1番太い線幅を有する方から2番目までの画線42、1番目と3番目に太い線幅を有する画線42、1番細い線幅を有する方から3番目までの画線42、1番目と3番目と4番目に細い線幅を有する画線42などを正確且つ安定して判別し、抽出することができる。
【0042】
図2のフローチャートには、本実施形態の画像処理方法の手順が示されている。図2を参照して、本実施形態の画像処理方法における各ステップを説明する。
【0043】
本実施形態は、基材4上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線42を含む線画模様40から、少なくとも第1の線幅を有する画線42を判別するための画像処理方法であって、
撮影部20により、基材4上に印刷された2本以上の異なる線幅の画線42を含む線画模様40と2次元コード41の画像データ5を取得するステップ(S1)と、
走査ライン指示部32により、2次元コード41の画像データ51に基づいて、線画模様40の画像データ50に対する走査ライン52の配置を定めるステップ(S2)と、
画線強度読取り部31により、線画模様40の画像データ50から、各画線42を横断する走査ライン52に沿った各画線42の1次強度を波形成分7として取得するステップ(S3)と、
波形幅解析部33により、1次強度の波形成分7から、ある1次強度の閾値73における各画線42に対応する波形成分の波形幅70を求めるステップ(S4)と、
1次強度解析部34により、1次強度の波形成分7から、閾値73より上側で且つ各画線42に対応する波形成分の1次強度のピーク値71を求めるステップ(S5)と、
面積解析部35により、1次強度の波形成分7から、閾値73より上側で且つ各画線42に対応する波形成分によって囲まれた領域の面積72を求めるステップ(S6)と、
スコア生成部36により、各画線42の波形成分の波形幅の値70、1次強度のピーク値71および面積の値72を乗じることにより、走査ライン52に沿った各画線42の線幅を表すスコア8を生成するステップ(S7)と、そして
判別部37により、各画線42のスコア8から、少なくとも第1の線幅を有する画線42を判別するステップ(S8)を含んでいる。
【0044】
このように、本実施形態の画像処理方法では、スコア生成部36により、各画線42の線幅を表すスコア8を求めることで、実際の各画線42の線幅の差異が僅少であるような場合であっても、判別部37で各画線42のスコア8を比較することが可能となり、線画模様40中の各画線42の線幅の差異(例えば、太い又は細い)を正確且つ安定して判別することができる。
【0045】
次に、本実施形態の各ステップにおける画像処理方法を、図面を参照しながら以下に詳しく説明する。
【0046】
図3の概要図には、本実施形態で使用される基材4上に印刷された線画模様(彩紋模様)40とQRコード41(登録商標)が示されている。
【0047】
図3に示されているように、本実施形態で使用される彩紋模様40は、QRコード41(登録商標)に対して所定の決められた位置に配置される。彩紋模様40は、画線または図形で構成される波状線・弧・円などの幾何学的模様を組み合わせた精細な模様を意味し、本願において「彩紋模様」とは、円状、楕円状、直線状といった形状を問わず、幾何学模様を組み合わせたものを含んでいてもよい。
【0048】
彩紋模様40の中には、例えば図3に示されているように、1部分の彩紋波形がコードの1文字に対応されている。本実施例では、彩紋波形から数字の対応は、線の本数および0.3ポイントの細線と0.6ポイントの太線で構成される線の配列パターンにて割り当てられている。
【0049】
図4の概要図には、線画模様40とQRコード41(登録商標)の画像データ5から走査ライン52を配置する方法(太線の矢印部分)が例示されている。図5の拡大図には、図4に示される走査ライン52の配置方法における5桁目を部分的に拡大して示されている。図6の概要図には、線画模様40の画像データ5から、走査ライン52(図5で示される太線の矢印部分)が各画線42を横断することにより取得した1次強度の波形成分7が模式的に示されている。なお、図5は走査ライン52が7本の各画線42を横断する場合を例示しているので、図6においても7つの波形成分7が取得されるが、走査ライン52が6本の各画線42を横断する場合(図4)は、図示しないが、6つの波形成分7が取得される。また、図6において縦軸は波形成分7の強度(明暗)を表し、横軸は各波形成分7の位置(ドット数)を表している。
【0050】
図4~6に示されるように、彩紋模様40の画像データ50から取得した1次強度の波形成分7は、以下のようにして求められる。
・ステップ1;撮影部20により取得された彩紋模様40およびQRコード41(登録商標)のカラーの画像データ5を濃淡画像データ(256階調のグレースケール)へ変換する。
・ステップ2;走査ライン指示部32により、QRコード41(登録商標)の位置を検出し、QRコード41(登録商標)位置から線画模様40の画像データ50に対する走査ライン52の位置を算出する。
・ステップ3;1桁分に対し、走査ライン52上の各画線(本実施形態の場合は7本又は6本の画線42、図4参照)の1次強度の濃淡データから波形成分を取得する。
【0051】
また、QRコード41(登録商標)位置から線画模様40の画像データ50に対する走査ライン52の位置は、以下のようにして求められる。
・ステップ1A;座標の移動は行列の掛け算にて実現させることができる。
・ステップ2A;横軸Xと縦軸YのXY座標移動は、透視変換行列を用いて、3×3の行列で実現が可能となる。透視変換行列は、変換前4点、変換後4点を与えることで計算することができる。そして
・ステップ3A;マスター画像のQRコード41(登録商標)の位置4点(又は3点)とデコード画像のQRコード41(登録商標)の位置4点(又は3点)を使用して、変換行列を計算する。マスター画像の座標点Aに変換行列を掛けることで、デコード画像上での対応座標点が計算できる。
・ステップ4A;この仕組により、マスター画像にて設定した解析走査ライン座標(X,Y)が、デコード画像ではどの座標(X’,Y’)となるかを取得することが可能となる。
【0052】
図7の概要図には、彩紋模様40の画像データ50から取得した1次強度の波形成分7と、ある1次強度の閾値73における各画線42に対応する波形成分の波形幅70の求め方が示されており、図8の概要図には、1次強度の波形成分7と、閾値73より上側で且つ各画線42に対応する波形成分の1次強度のピーク値71の求め方が示されており、そして図9の概要図には、1次強度の波形成分7と、閾値73より上側で且つ各画線42に対応する波形成分によって囲まれた領域の面積72の求め方が示されている。なお、図5は走査ライン52が7本の各画線42を横断する場合を例示しているので、図7~9においても7つの波形成分7が取得されるが、走査ライン52が6本の各画線42を横断する場合(図4)は、図示しないが、6つの波形成分7が取得される。また、図7~9において、縦軸は波形成分7の強度(明暗)を表し、横軸は各波形成分7の位置(ドット数)を表している。
【0053】
取得した彩紋模様40の画像データ50から、各画線42(1次強度の波形成分7)の特徴を表す指標として、波形幅解析部33により、1次強度の波形成分7から、ある1次強度の閾値73における各画線42に対応する波形成分の波形幅70が求められ、1次強度解析部34により、1次強度の波形成分7から、閾値73より上側で且つ各画線42に対応する波形成分の1次強度のピーク値71が求められ、そして面積解析部35により、1次強度の波形成分7から、閾値73より上側で且つ各画線42に対応する波形成分によって囲まれた領域の面積72が求められる。
【0054】
本実施形態の画像処理システム1では、1次強度の波形成分7から取得する波形幅70、ピーク値71および面積72の精度を向上させるため、画像データ5に基づき、各画線42の閾値73を対応する各画線42の明るさに応じて補正することができる。また、各画線42の閾値73を補正するのではなく、画像データ5に基づき、対応する各画線42の明るさが同じになるように各画線42の1次強度の波形成分7を補正してもよい。
【0055】
次に、上述した1次強度の波形成分7(以下、「波形グラフ」ともいう。)の解析方法をより具体的に説明する。本実施形態の画像処理方法及び画像処理システム1では、1次強度の波形成分7の強度(以下、「明暗」ともいう。)の解析は、例えば以下の手順により行われる。
【0056】
先ず、彩紋模様40の強度(明暗)を現した画像データ50の波形成分7の測定に基づき、波形幅解析部33により各波形成分7の波形幅fが、そのドット数により算出される(図7参照)。各波形成分7の波形幅fは、図7の波形グラフに正対して右側から左側へ測定される。
【0057】
また、図7の波形グラフにおいて、縦軸は波形成分7の強度(明暗)を表しており、横軸は各波形成分7の位置(ドット数)を表しており、そして縦軸の上側がより強度が強い状態(明度が低い状態、黒っぽい状態、暗い状態)を表している。測定対象として、線画模様(彩紋模様)40中の彩紋の画線42を幅方向に測定した場合、強度が弱い状態から強い状態へ(明度が高い状態から低い状態へ、白っぽい状態から黒っぽい状態へ)と波形成分7が観測されるため、各波形成分7は彩紋の各画線42の特性を表すことになる。
【0058】
具体的には、図7の波形グラフにおける全波形成分7中の最大値をaとして、各波形成分7毎の開始点となる最低値をbとすると、例えば第1の波形における波形成分7の最低値はbとなる。そして、各波形成分7の最低値bと全波形成分7中の最大値aとの差異を7:3で配分した位置を各波形成分7の閾値cとすると、例えば第1の波形における閾値はcとなる。
【0059】
第1の波形において、波形成分7の開始点である最低値bから上昇して行き、閾値cと交わる交点をdとし、そのまま上昇してピークを過ぎてから下降して行き、再び閾値cと交わる点をeとすると、交点dと交点eとの間の距離(ドット数)が第1の波形における波形成分7の波形幅fとなる。
【0060】
そして、そのまま第1の波形における波形成分7を下降して行き、最低値に到達した点を第2の波形における波形成分7の開始点(最低値)bとすると、第1の波形の測定と同様に、最低値bと全波形成分7中の最大値aとの差異から第2の波形の閾値cが算出され、さらに第2の波形における波形成分7の上昇、下降をトレースすることにより閾値cとの交点dおよびeが測定され、その距離(ドット数)から第2の波形における波形成分7の波形幅fが算出される。以上の測定を、波形の数だけ繰り返すことにより、第1の波形から第7の波形までの波形幅f~f図7)または第1の波形から第6の波形までの波形幅f~f(図示せず)が算出される。
【0061】
この結果、図7の波形グラフにおいて、各波形成分7の波形幅fは、右端の第1の波形の波形成分の波形幅fが「7」、右から2番目の第2の波形の波形成分の波形幅fが「7」、3番目の第3の波形の波形成分の波形幅fが「6」、4番目の第4の波形の波形成分の波形幅fが「6」、5番目の第5の波形の波形成分の波形幅fが「7」、6番目の第6の波形の波形成分の波形幅fが「10」、そして7番目の第7の波形の波形成分の波形幅fが「7」となった。
【0062】
次に、強度(明暗)を現した彩紋模様40の画像データ50の波形成分7の測定に基づき、1次強度解析部34により各波形成分7のピーク値jが算出される(図8参照)。図8の波形グラフにおいて、縦軸は波形成分7の強度(明暗)を表しており、横軸は各波形成分7の位置(ドット数)を表しているのは、図6および7と同様である。
【0063】
具体的には、各波形における波形成分7の閾値cを超え、上昇から下降に転じる変極点をgとし、全波形成分7中の最小値をhとすると、変極点gと全波形成分7中の最小値hとの差異が、各波形における波形成分7のピーク値jとなる。
【0064】
例えば第1の波形では、その波形成分7が閾値cとの交点dを超えて上昇し、ピークを迎えて下降に転じた変極点をgとすると、その変極点gと全波形成分7中の最小値hとの差異が第1の波形における波形成分7のピーク値jとなる。
【0065】
第2の波形では、その波形成分7が閾値cとの交点dを超えて上昇し、ピークを迎えて下降に転じた変極点をgとすると、その変極点gと全波形成分7中の最小値hとの差異が第2の波形における波形成分7のピーク値jとなる。以上の測定を、波形の数だけ繰り返すことにより、第1の波形から第7の波形までのピーク値j~j図8)または第1の波形から第6の波形までのピーク値j~j(図示せず)が算出される。
【0066】
この結果、図8の波形グラフにおいて、各波形成分7のピーク値jは、右端の第1の波形の波形成分のピーク値jが「0.56×255」、右から2番目の第2の波形の波形成分のピーク値jが「0.58×255」、3番目の第3の波形の波形成分のピーク値jが「0.53×255」、4番目の第4の波形の波形成分のピーク値jが「0.68×255」、5番目の第5の波形の波形成分のピーク値jが「0.70×255」、6番目の第6の波形の波形成分のピーク値jが「1.0×255」、そして7番目の第7の波形の波形成分のピーク値jが「0.73×255」となった。
【0067】
さらに、強度(明暗)を現した彩紋模様40の画像データ50の波形成分7の測定に基づき、各波形成分7の面積kが算出される(図9参照)。図9の波形グラフにおいて、縦軸は波形成分7の強度(明暗)を表しており、横軸は各波形成分7の位置(ドット数)を表しているのは、図6~8と同様である。
【0068】
具体的には、各波形における波形成分7が閾値cとの交点dを超えて上昇し、ピークを過ぎて下降し再び閾値cと交わる交点eまでにおいて、全波形成分7中の最小値hから波形成分7の測定値までの積分値が、各波形における波形成分7の面積kとなる。
【0069】
例えば第1の波形では、閾値cとの交点d、eとの間の波形面積(斜線部分)が、第1の波形における波形成分7の面積kとなる。第2の波形では、閾値cとの交点d、eとの間の波形面積(斜線部分)が、第2の波形における波形成分7の面積kとなる。以上の測定を、波形の数だけ繰り返すことにより、第1の波形から第7の波形までの面積k~k図9)または第1の波形から第6の波形までの面積k~k(図示せず)が算出される。
【0070】
この結果、図9の波形グラフにおいて、各波形成分7の面積(斜線部分)kは、右端の第1の波形の波形成分の面積kが「3.31×255」、右から2番目の第2の波形の波形成分の面積kが「3.24×255」、3番目の第3の波形の波形成分の面積kが「2.75×255」、4番目の第4の波形の波形成分の面積kが「3.14×255」、5番目の第5の波形の波形成分の面積kが「4.07×255」、6番目の第6の波形の波形成分の面積kが「6.73×255」、そして7番目の第7の波形の波形成分の面積kが「4.16×255」となった。
【0071】
最後に、強度(明暗)を現した彩紋模様40の画像データ50の波形成分7の測定に基づき、面積解析部35により各波形成分7から求めた波形幅f、ピーク値jおよび面積kから、各波形成分7のスコアmが算出される(図10参照)。図10の棒グラフでは、縦軸は、全波形幅f中の最大値fn(max)に対する各波形成分7の波形幅fの割合、全ピーク値j中の最大値jn(max)に対する各波形成分7のピーク値jの割合、全面積k中の最大値kn(max)に対する各波形成分7の面積kの割合、そして全スコアmの最大値mn(max)に対する各波形成分7のスコアmの割合をそれぞれ百分率(%)で表しており、横軸は各波形成分7を表している。
【0072】
線画模様40における各画線42の線幅の差異(例えば、太い又は細い)の判別は、各波形成分7から求めた波形幅fと、ピーク値jと、そして面積kとを乗算することにより得られた各波形成分7のスコアmに基づき、該スコアmが測定された各波形成分7の中で相対的にどのような特性を示すかを観測することにより行われる。
【0073】
具体的には、各波形における波形成分7のスコアmは、スコア生成部36により、各波形成分7から求めた波形幅fと、ピーク値jと、そして面積kとを乗算することにより算出される。
【0074】
例えば第1の波形における波形成分7のスコアmは、第1の波形の波形成分7から求めた波形幅fと、ピーク値jと、そして面積kとを乗算することにより算出される。同様に、第2の波形における波形成分7のスコアmは、第2の波形の波形成分7から求めた波形幅fと、ピーク値jと、そして面積kとを乗算することにより算出される。以上の計算を、波形の数だけ繰り返すことにより、第1の波形から第7の波形までのスコアm~m図10)または第1の波形から第6の波形までのスコアm~m(図示せず)が算出される。
【0075】
この結果、第1の波形から第7の波形を測定した場合、図10の棒グラフに示されるように、各波形成分7のスコアmは、右端の第1の波形の波形成分のスコアmが「12」、右から2番目の第2の波形の波形成分のスコアmが「13」、3番目の第3の波形の波形成分のスコアmが「8」、4番目の第4の波形の波形成分のスコアmが「12」、5番目の第5の波形の波形成分のスコアmが「20」、6番目の第6の波形の波形成分のスコアmが「64」、そして7番目の第7の波形の波形成分のスコアmが「21」となった。
【0076】
すなわち、本実施形態において1次強度の波形成分7のスコアmは、7つの波形成分7のうち、第6の波形における波形成分7のスコアmが最大値の「64」となり、これを100%と換算した場合、例えば第1波形における波形成分7のスコアmの値「12」は波形成分7のスコアmに対して約19%となり、第2波形における波形成分7のスコアmの値「13」は波形成分7のスコアmに対して約20%となり、第3波形における波形成分7のスコアmの値「8」は波形成分7のスコアmに対して12.5%となり、第4波形における波形成分7のスコアmの値「12」は、波形成分7のスコアmに対して約19%となり、第5波形における波形成分7のスコアmの値「20」は波形成分7のスコアmに対して約31%となり、そして第7波形における波形成分7のスコアmの値「21」は波形成分7のスコアmに対して約33%となる(図10参照)。
【0077】
本実施形態において、測定対象としている1桁当たりの線画模様(彩紋模様)40の画線42の数は7本又は6本で構成されており(図4参照)、そのうち1本のみが太く、それ以外は全て細いという判別ルールに基づいて解析しているので、例えば測定対象の画線42の数が7本である場合は、図10に示される各波形成分7のスコアmの算出結果に基づき、判別部37により太い線は第6波形の波形成分7、すなわち右から6番目の画線42であり、それ以外の第1波形から第5波形および第7の波形の波形成分7は全て細い線であるという結論が導かれる。
【0078】
このため、本実施形態の画像処理方法及び画像処理システム1では、各画線42の波形成分7から求めた波形幅f、ピーク値jまたは面積kのそれぞれを比較するよりも、各画線42のスコアm同士を比較した方が、各画線42の太さの比を正確に反映しながらスコアの値の差異が大きくなるため、実際の各画線42の線幅の差異が僅少であるような場合であっても、線画模様40中の各画線42の線幅の差異(例えば、太い又は細い)を正確且つ安定して判別することができるようになる。
【0079】
さらに、本実施形態では、各画線42のスコアm同士を比較した判別結果を特定のキャラクターに変換するために、例えば表1に示されるように、予め判別結果と特定のキャラクターとを関連付ける所定のテーブルを利用することができる。
【0080】
【表1】
【0081】
具体的には、本実施形態の場合、画像強度読取り部31により彩紋模様40(画像データ50)を内側から外側へ走査することにより(図4参照)、7本又は6本の画線42に対応する7つ(図6)又は6つ(図示せず)の波形成分7が取得される。そして上述した方法により、7つの波形成分7のスコアm~mの算出結果(図10)又は6つの波形成分7のスコアm~mの算出結果(図示せず)に基づき、各波形成分7の太線、細線の区別を導き出すことができる。そして、得られた太線、細線の組み合わせのパターンを表1へ当て嵌めることにより、7本又は6本の画線42の組み合わせからなるパターンに対して、特定のキャラクターを導き出すことが可能になる。勿論、彩紋模様40を構成する画線42の本数や、画像強度読取り部31によって取得される波形成分7の数に制限はなく、任意のn本の画線42、任意のn個の波形成分7の組み合わせからなるパターンに対してスコアm~mの算出することにより、特定のキャラクターを導き出すこともできる。
【符号の説明】
【0082】
1・・・・画像処理システム
2・・・・画像取得装置
20・・・撮影部
21・・・送信部
3・・・・画像処理装置
30・・・受信部
31・・・画線強度読取り部
32・・・走査ライン指示部
33・・・波形幅解析部
34・・・1次強度解析部
35・・・面積解析部
36・・・スコア生成部
37・・・判別部
4・・・・基材
40・・・線画模様(彩紋模様)
41・・・2次元コード(QRコード(登録商標))
42・・・画線
5・・・・画像データ
50・・・線画模様の画像データ
51・・・2次元コード(QRコード(登録商標))の画像データ
52・・・走査ライン
6・・・・走査ラインの配置データ
7・・・・1次強度(波形成分)
70・・・波形幅
71・・・ピーク値
72・・・面積
73・・・閾値
8・・・・スコア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10