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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ブーム散布装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20221020BHJP
   B05B 17/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A01M7/00 D
B05B17/00 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018248194
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020103249
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年(平成30年)7月9日発行の農経しんぽう第3230号の記事で公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年(平成30年)7月12日から7月16日に開催された「第34回国際農業機械展in帯広」に展示。
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】保田 秀彬
(72)【発明者】
【氏名】斗ケ澤 龍太
(72)【発明者】
【氏名】長島 一泰
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真尚人
(72)【発明者】
【氏名】湯木 正一
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143768(JP,A)
【文献】特開2017-000082(JP,A)
【文献】特開2012-005432(JP,A)
【文献】実開平03-034869(JP,U)
【文献】特開2014-093977(JP,A)
【文献】特開2008-200005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0201075(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
B05B 17/00 - 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場面を進行する機体と該機体の進行方向と交差する略水平方向に展開自在なブームとを備え、前記ブームの長さに対応する散布幅で散布材を圃場面に向けて散布するブーム散布装置であって、
前記ブームの長さを調整するブーム長さ調整機構と、
左右の前記ブームを展開状態で支持する枠体を前記機体に対して軸支し、前記ブームを左右に展開した状態の重量バランスで左右の前記ブームの水平状態を保持すると共に、前記枠体を前記機体にロックするロック機構を備えた水平装置と、
前記ブーム長さ調整機構の動作と前記ロック機構の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、左右に展開した前記ブームの長さが一致した状態から前記ブーム長さ調整機構を動作させる際に、左右のブーム長さ調整の変位が等しいか否かの判断を行い、左右の前記変位が異なる場合に、前記ロック機構をロック状態にし、左右の前記変位が等しい場合には、前記ロック機構のロックを解除することを特徴とするブーム散布装置。
【請求項2】
前記ブームは、等間隔で複数の散布ノズルが配備された複数のブームを備え、
前記ブーム長さ調整機構は、
前記複数のブームの長手方向に沿った重なり状態を可変にすることでブーム長さを調整し、
前記制御部は、ブーム長さを前記散布ノズルの配備間隔単位で伸縮させるように前記ブーム長さ調整機構の動作制御を行うことを特徴とする請求項1記載のブーム散布装置。
【請求項3】
前記水平装置は、前記枠体を前記機体に対して傾斜保持する傾斜保持機構を備え、
前記制御部は、前記傾斜保持機構の傾斜保持を解除して、前記ブーム長さ調整機構の動作制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のブーム散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーム散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブーム散布装置は、所謂、ブームスプレーヤに代表されるように、自走乗用式、トラクタ牽引式、トラクタ直装式などで、圃場面を走行しながら進行方向と交差する略水平方向に展開したブームの長さに対応する散布幅で、薬液等の散布材を圃場面に向けて散布する作業機である。このブーム散布装置は、圃場面を進行しながら散布作業を行い、1行程で移動距離×散布幅の面積を散布作業し、往復の行程を繰り返すことで、圃場面全体に散布作業を施すものである。
【0003】
このようなブーム散布装置は、左右水平方向に展開するブーム(サイドブーム)を第1ブームとこの第1ブームの長手方向に移動可能な第2ブームによって構成し、第1ブームに対して第2ブームをどれだけ突出させたかによって決まるブーム長さを任意に調整自在にすることで、散布幅を変更できるようにしたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、ブーム散布装置は、走行面の凹凸による機体の揺動に対して、左右に展開したブームの重量バランスでブームの水平状態を維持する水平装置を備えたものが知られている。更に、このような水平装置を備えたブーム散布装置においては、水平装置を機体にロックさせるロック機構を設け、左右のブームの重量バランスが崩れるオペレータの操作入力に対して、自動で前述したロック機構を動作させて、水平装置を機体に固定するものが提案されている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-157775号公報
【文献】特開2017-000082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来技術(特許文献1)のように、ブーム長さを任意に調整して散布幅を制御するブーム散布装置に、前述した従来技術(特許文献2)のような水平装置を設けた場合には、左右のブームの長さが実際に異なるように制御された場合には、重量バランスが崩れることになるが、散布幅の制御においては左右のブームの長さが一致している状態で制御される場合もあり、その場合には、水平装置を機能させて、走行面の凹凸による機体の揺動に対して、左右に展開したブームの水平状態を維持することが好ましい。
【0007】
これに対して、特許文献2に示されるように、オペレータの操作入力で水平装置のロックを行ってしまうと、散布幅の制御を行う際に左右のブーム長さが一致しているような場合にも水平装置がロックされた状態になってしまい、水平装置を適正に機能させることができなくなる問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、ブーム長さを任意に調整して散布幅を制御するブーム散布装置において、水平装置を適正に機能させて、左右に展開したブームの水平状態を維持できるようにすること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
圃場面を進行する機体と該機体の進行方向と交差する略水平方向に展開自在なブームとを備え、前記ブームの長さに対応する散布幅で散布材を圃場面に向けて散布するブーム散布装置であって、前記ブームの長さを調整するブーム長さ調整機構と、左右の前記ブームを展開状態で支持する枠体を前記機体に対して軸支し、前記ブームを左右に展開した状態の重量バランスで左右の前記ブームの水平状態を保持すると共に、前記枠体を前記機体にロックするロック機構を備えた水平装置と、前記ブーム長さ調整機構の動作と前記ロック機構の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、左右に展開した前記ブームの長さが一致した状態から前記ブーム長さ調整機構を動作させる際に、左右のブーム長さ調整の変位が等しいか否かの判断を行い、左右の前記変位が異なる場合に、前記ロック機構をロック状態にし、左右の前記変位が等しい場合には、前記ロック機構のロックを解除することを特徴とするブーム散布装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明は、ブーム長さを任意に調整して散布幅を制御するブーム散布装置において、水平装置を適正に機能させて、左右に展開したブームの水平状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るブーム散布装置の全体構成を示した説明図((a)が側面図、(b)が斜め後方視の斜視図)である。
図2】本発明の実施形態に係るブーム散布装置の水平装置を説明する説明図((a)が水平状態の正面図であり、(b)が傾斜状態の正面図)である。
図3】ブーム長さ調整機構を説明する説明図である。
図4】ブーム(サイドブーム)の伸縮動作を説明する説明図である。
図5】制御部の機能を説明する説明図である。
図6】制御部の動作フローの一例を示した説明図である。
図7】制御部の他の機能例(自動散布幅制御)を説明する説明図である。
図8図7に示した制御部の動作フローの一例を示した説明図である。
図9】表示部によって制御される表示画面を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1(a),(b)に示すように、ブーム散布装置1は、圃場面を進行する機体2と、その機体2に搭載される散布装置3と、機体2の進行方向と交差する略水平方向に展開自在なブーム4を備えており、ブーム4の長さに対応する散布幅で薬剤などの散布材を圃場面に向けて散布するものである。図示の例では、機体2はトラクタ(走行装置)に牽引される牽引型の機体を示しているが、これに限らず、トラクタの3点リンクに装着される直装型の機体や自走乗用式の機体であってもよい。
【0014】
図示した牽引式の機体2には、走行車輪2Aが装備されており、機体2の前方には、トラクタに連結される連結部2Bと、ユニバーサルジョイントなどの伝動手段を介してトラクタのPTOからの動力が入力される入力部2Cを備えている。機体2に搭載される散布装置3は、入力部2Cに入力される動力によって駆動するポンプ3Aと薬剤などの散布材が収納されるタンク3Bなどを備えている。
【0015】
ブーム4は、センターブーム4Aと左右のサイドブーム4Bを備えている。センターブーム4Aは、水平装置5を介して機体2に支持されている。サイドブーム4Bは、センターブーム4Aの左右端にそれぞれ収納・展開自在に連結されると共に、自身が伸縮自在に構成されている(図においては、サイドブーム4Bを収納して最短状態に縮めた状態を示している。)。センターブーム4Aとサイドブーム4Bには、複数の散布ノズル6を備えたパイプ又はホースが装着されており、タンク3B内の薬剤などの散布材がポンプ3Aによって圧送されて複数の散布ノズル6から散布される。
【0016】
サイドブーム4Bは、機体2の進行方向に対して交差する水平方向に展開して、最大長さに伸ばすことで、最大の散布幅を実現でき、その長さを適宜伸縮することで、散布幅を可変に調整できるようになっている。また、サイドブーム4Bは、最も短い状態(最短長さ)に縮めて、機体2の進行方向に沿って折り畳み且つ先端を上げて傾斜させることで収納状態にすることができる。左右のサイドブーム4Bの収納・展開・伸縮は、図示省略したブーム動作機構(ブーム収納機構、ブーム展開機構、ブーム長さ調整機構)によって個別に動作できるようになっている。
【0017】
図2は、センターブーム4Aを機体2に支持する水平装置5を示している((a)が水平状態、(b)が傾斜した状態を示している。)。水平装置5は、前述したセンターブーム4Aとなる枠体50の中心に設けた軸受部50Aと機体2の支持フレーム51に設けた軸受部51Aとが軸52によって軸支されており、機体2の揺動に対しても、センターブーム4Aとなる枠体50は、軸52周りにバランスを保って水平を維持することができる。
【0018】
水平装置5は、ロックシリンダ54とロック検知センサ55とを備えるロック機構を具備している。ロックシリンダ54は、一端側(例えば、油圧シリンダのシリンダチューブ側)が支持フレーム51又は枠体50の一方に連結され、他端側(例えば、油圧シリンダのロッド側)が支持フレーム51又は枠体50の他方に当接又は離間するようになっている。そして、ロックシリンダ54の他端側が支持フレーム51又は枠体50に当接した状態で、枠体50が機体2にロックされ、ロックシリンダ54の他端側が支持フレーム51又は枠体50から離間することで、枠体50と機体2とのロックが解除される。ロック検知センサ55は、ロックシリンダ54の他端側が支持フレーム51又はセンターブーム4Aとなる枠体50に当接しているか否かを検知するものであり、接触型センサ(リミットスイッチなど)や非接触型センサ(光センサなど)で構成することができる。図示の例では、ロックシリンダ54は軸52周りに一対設けられている。
【0019】
また、水平装置5は、傾斜シリンダ56を備える傾斜保持機構を具備している。傾斜シリンダ56は、一端側(例えば、油圧シリンダのシリンダチューブ側)が支持フレーム51に連結され、他端側が枠体50にバネ53を介して連結された可動部材57にヒンジ連結されている。ここで、可動部材57には連結棒58が固定されており、バネ53の一端側が連結棒58に接続され、バネ53の他端側は枠体50に接続されている。
【0020】
傾斜シリンダ56を伸縮させると、軸52周りに可動部材57が回転することになり、この可動部材57にバネ53を介して連結された枠体50がそれに伴って回転することになる。これによって、軸52周りに支持フレーム51と枠体50が相対回転することになり、支持フレーム51に対して枠体50の傾斜角度が変化する。そして、傾斜シリンダ56の伸縮状態を一定に保持することで、枠体50と支持フレーム51(機体2)との傾斜状態が一定に保持される。この際、可動部材57と枠体50とはバネ53を介して接続されているので、枠体50に軸52周りの負荷や振動が加わった場合には、バネ53が伸縮してその負荷や振動を吸収する。
【0021】
このような水平装置5によると、ロックシリンダ54によるロックを解除して、傾斜シリンダ56を油圧バルブが開放された状態にすると、サイドブーム4Bを展開して左右の重量バランスが等しく保たれている状態では、図2(a)に示すような水平状態を維持することになり、走行装置が圃場面の凹凸で揺動しながら走行する場合にも、ブーム全体の水平を維持することができる。また、傾斜地での作業などでは、図2(b)に示すように、傾斜シリンダ56を動作させてブーム全体を傾斜させて作業を行う。
【0022】
図3は、サイドブーム4Bを伸縮させてブーム長さを調整するブーム長さ調整機構10を示している。サイドブーム4Bは、複数のブーム(ブーム11とブーム12)を備えている。ここでは2本のブームを備える例を示しているが、同様の構成を多段にして3本以上のブームを備えるようにしてもよい。
【0023】
ブーム長さ調整機構10は、複数のブーム(ブーム11とブーム12)の長手方向に沿った重なり状態を可変にすることでブーム長さを調整する機構である。具体的な機構は従来技術と同様であり、ブーム11とブーム12は、長手方向に沿って互いに摺動自在に支持されており、基端側のブーム11の基端部に設けられたスプロケット13がモータ19の出力軸に接続されている。スプロケット13にはチェーン15が掛け回されており、チェーン15の一端が連結部17を介してワイヤ16の一端に接続され、ワイヤ16は、ブーム11の先端部に設けられたプーリ14に掛け回され、その他端が連結部18を介してチェーン15の他端に接続されている。そして、ブーム12の基端部がワイヤ16に接続されている。
【0024】
ブーム長さ調整機構10は、モータ19を回転駆動することで、スプロケット13を回転させて、チェーン15に接続されているワイヤ16を摺動させることで、基端側が水平装置5に支持されているブーム11の長手方向にブーム12を移動させて、ブーム4(サイドブーム4B)の長さを調整するものである。
【0025】
ブーム長さの制御は、制御部20の出力でモータ19の回転量を制御することで行われる。制御部20には、近接センサなどで構成される最短位置センサ21とスプロケット13の回転を検出する回転センサ22からの検出信号が入力される。最短位置センサ21は、ブーム11の基端側に取り付けられており、ブーム12の基端が接近して最短位置になったことを検出する。回転センサ22は、スプロケット13の回転によって生じるパルス(例えば、エンコーダパルス)を検出して、スプロケット13(或いはモータ19の出力軸)の回転量を検出する。
【0026】
制御部20による制御動作としては、作業前にモータ19を回転させて、ブーム12を基端側に移動させ、ブーム12の変位量が最小になったことを最短位置センサ21が検出して検出信号を制御部20に送信する。この検出信号によって制御部20はブーム12が最短位置にあることを認識する。そして、そこからモータ19を逆回転させて回転量(パルス数)を回転センサ22にて検出することで、制御部20は、ブーム12が所定の変位量だけ移動し、ブーム4(サイドブーム4B)が所定の長さになったことを認識する。これにより、制御部20は、入力信号に応じて、ブーム12の変位量を制御してブーム4(サイドブーム4B)の長さを任意の長さに調整することができる。
【0027】
前述したように、ブーム4には、複数の散布ノズル6が配備されている。サイドブーム4Bにおいては、ブーム11とブーム12にそれぞれ、同じ間隔で散布ノズル6A,6Bが配備されている。また、ブーム11とブーム12には、散布ノズル6A,6Bに散布材を供給するための流路(ホース又はパイプ)11A,12Aが配備されている。
【0028】
ブーム長さを調整する際には、ブーム11とブーム12の重なり部分に配置されている散布ノズル6A,6Bのうち、一方のブームに配備されている散布ノズルへの流路バルブ(図示省略)が閉止操作される。また、ブーム長さの調整は、散布ノズル6A,6Bの配備間隔単位で行われる。これによって、ブーム4に配備されている散布ノズル6は、ブーム4がどのような長さに調整されていても、設定された等間隔で配備されることになる。ブーム4の任意の長さにおいて等間隔で配備されている開閉可能な散布ノズル6(6A,6B)を有効ノズルと呼ぶ。
【0029】
散布ノズル6A,6Bの間隔は、予め制御部20に設定しておくことができる。設定の仕方としては、作業前の較正(キャリブレーション)操作によって行うことができ、例えば、図4の(a)に示すように、サイドブーム4Bにおけるブーム11,12の長さを最短長さの状態にしてから、(b)に示すように最大長さになるまでモータ19を駆動し、その間の総変位量Lを回転センサ22のパルス数でカウントする。そして、総変位量Lを、変位したブーム12に配備されている散布ノズル6Bの間隔数nで除して、配備間隔D(=L/n)のパルス数を求める。制御部20は、常に配備間隔Dの整数倍のパルス数でモータ19を駆動することで、ブーム4の長さを散布ノズル6A,6Bの配備間隔単位で調整することができる。
【0030】
図5に示すように、制御部20の機能は、前述したブーム長さ調整機構10の動作を制御するブーム長さ制御部30と、前述した水平装置5のロック機構などを制御する水平装置制御部31とを備えている。
【0031】
制御部20は、図示省略した操作部などからの入力信号やブーム長さ調整機構10における最短位置センサ21と回転センサ22の検出信号に応じて、ブーム長さ制御部30によってブーム長さ調整機構10を制御して、ブーム4(サイドブーム4B)の長さを調整し、散布幅を任意に制御する。その際、サイドブーム4Bの長さは左右個別に制御することができる。
【0032】
また、制御部20は、図示省略した操作部などからの入力信号や水平装置5におけるロック検知センサ55の検出信号、或いはブーム長さ制御部30の制御状況に応じて、水平装置制御部31によって水平装置5のロック機構や傾斜保持機構などを制御する。より具体的には、制御部20は、ブーム長さ制御部30によって、左右に展開したサイドブーム4Bの長さが異なるようにブーム長さ調整機構10を動作させる際に、水平装置制御部31によって水平装置5のロック機構をロック状態にし、左右に展開したサイドブーム4Bの長さが一致している場合には、水平装置制御部31によって水平装置5のロック機構をロック解除する。
【0033】
図6は、制御部20の動作フローの一例を示している。制御部20が、ブーム長さの調整を行う際には、先ず、水平装置制御部31によって傾斜シリンダ56による傾斜保持を解除(S01)してから、ブーム長さ制御(S02)を行う。ブーム長さ制御(S02)では、左右のサイドブーム4Bが個別に制御されることになるが、その際、制御部20は、左右のサイドブーム4Bの変位が等しいか否かの判断を行い(S03)、左右のサイドブーム4Bの変位が等しい場合には(S03:YES)、水平装置制御部31によって水平装置5のロック機構をロック解除する(S04)。また、左右のサイドブーム4Bの変位が等しくない場合には(S03:NO)、水平装置制御部31によって水平装置5のロック機構をロックする(S05)。そして、制御が継続される場合(S06:YES)には、引き続きブーム長さの制御が行われ(S02)、制御が継続されない場合(S06:NO)には、制御を終了する。
【0034】
制御部20は、図7に示すように、GPS受信機23からGPS信号を入力することで、自動散布幅制御を行うように構成することができる。GPS信号は、機体2の現在位置を随時把握するために入力されるものである。この際、制御部20には、予め設定されている散布予定領域24の位置情報が入力される。散布予定領域24は、ブーム散布機1がこれから散布を行う予定の領域であって、ブーム散布装置1が過去に作業した作業領域に基づく圃場全体の位置情報や、今回の作業で既に散布が行われた既散布領域の位置情報などが図示省略した記憶手段(メモリ)に記憶されており、この記憶手段に記憶されているデータに基づいて予め設定されている。
【0035】
このような制御部20による散布幅の自動制御は、散布予定領域24に応じて、ブーム長さ制御部30によってサイドブーム4Bの長さを調整して、散布幅を制御するものであり、予め設定されている散布予定領域24の境界線と散布幅の端が一致するように、ブーム4(サイドブーム4B)の長さを伸縮制御する。
【0036】
図8は、図7に示した制御部20による散布幅制御の動作フローの一例を示している。散布幅制御が開始されると、制御部20には、所定時間間隔でGPS信号が入力され(S10)、入力されたGPS信号によって機体2の現在位置の確認がなされる(S11)。そして、設定されている散布予定領域24によって、制御部20に現在位置の前方の境界線位置が入力される(S12)。前方の境界線位置の入力は、散布幅制御によって散布幅の端と境界線の位置とを一致させることができるように、現在位置に対して数センチから数十センチ前方の境界線位置が入力される。
【0037】
次に、前方の境界線位置がブーム4(サイドブーム4B)の最大長さの外側に位置するか否かの判断がなされる(S13)。そして、前方の境界線位置がブーム4(サイドブーム4B)の最大長さの外側で無い(S13:NO)場合に、有効ノズルを全て開状態に制御して(S14)、ブーム長さ制御部30による散布幅の制御で、散布幅の端を境界線位置に一致させる制御がなされる(S15)。
【0038】
そして、前方の境界線位置がブーム4(サイドブーム4B)の最大長さの外側に位置する場合(S13:YES)には、ブーム長さ制御部30によって散布幅の端を境界線位置に合わせることができないので、この場合には、機体2の進行方向変更を促す警報信号を出力(S20)して、後述する表示部40での警報表示や警報音を出力し、有効ノズルを全て開状態にし(S21)、ブーム長さを最大に制御する(S22)。
【0039】
ブーム長さ調整による散布幅制御が行われると、前述した例と同様に、制御部20は、左右のサイドブーム4Bの変位が等しいか否かの判断を行い(S16)、左右のサイドブーム4Bの変位が等しい場合には(S16:YES)、水平装置制御部31によって水平装置5のロック機構をロック解除する(S17)。また、左右のサイドブーム4Bの変位が等しくない場合には(S16:NO)、水平装置制御部31によって水平装置5のロック機構をロックする(S18)。そして、制御が継続される場合(S19:YES)には、次のタイミングでGPS信号を入力し(S01)、前述したステップを繰り回し、散布幅制御が行われ、制御が継続されない場合(S19:NO)には、制御を終了する。
【0040】
表示部40は、制御部20による散布幅の制御状態を随時画面に表示する。図9は、その表示例を示している。表示部40によって表示画面40Gに表示される画像は、機体2の現在位置と進行方向を示す三角図形の表示画像41(三角形の頂角位置が現在位置を指し、頂角の方向が進行方向を指している。)と、機体2の現在位置の進行方向前方側に延びる境界線の表示画像42と、設定されている現在の散布幅を示す矩形図形の表示画像43と、ブーム4の最大長さ範囲を示す矩形図形の表示画像44と、既散布領域を示す表示画像45である。
【0041】
ここで、表示画像43と表示画像44によって、ブーム4の最大長さ範囲に対する現在の散布幅の相対関係が示されている。このような表示部40の表示画像は、制御部20の時系列毎の出力によって随時変化することになり、散布幅を示す表示画像43の両端が境界線の表示画像42に沿って移動する状態が、随時表示画面40Gに表示されることになる。
【0042】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るブーム散布装置1によると、ブーム長さを任意に調整して散布幅を制御するブーム散布装置において、水平装置5を適正に機能させて、左右に展開したブームの水平状態を維持することができる。
【符号の説明】
【0043】
1:ブーム散布装置,
2:機体,2A:走行車輪,2B:連結部,2C:入力部,
3:散布装置,3A:ポンプ,3B:タンク,
4,11,12:ブーム,4A:センターブーム,4B:サイドブーム,
5:水平装置,6,6A,6B:散布ノズル,
10:ブーム長さ調整機構,
13:スプロケット,14:プーリ,15:チェーン,
16:ワイヤ,17,18:連結部,19:モータ,
20:制御部,21:最短位置センサ,22:回転センサ,
11A,12A:流路,
23:GPS受信機,24:散布予定領域,
30:ブーム長さ制御部,31:水平装置制御部,
40:表示部,40G:表示画面,41~47:表示画像
50:枠体,50A:軸受部,
51:支持フレーム,51A:軸受部,52:軸,53:バネ,
54:ロックシリンダ,55:ロック検知センサ,56:傾斜シリンダ,
57:可動部材,58:連結棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9