(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】スーパー抗原媒介性癌免疫療法の能力を増強するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/085 20060101AFI20221020BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20221020BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221020BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221020BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61K39/085 ZNA
A61K47/68
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K39/395 U
A61P43/00 121
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2018555314
(86)(22)【出願日】2017-01-10
(86)【国際出願番号】 IB2017000511
(87)【国際公開番号】W WO2017122098
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2020-01-07
(32)【優先日】2016-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518243599
【氏名又は名称】ネオティーエックス セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン,アッシャー
(72)【発明者】
【氏名】シャハー,ミカル
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/156712(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/015882(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/39
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療を必要とする被験体において癌を治療するための医
薬であって、該
医薬が、
(i) 被験体において癌性細胞により発現される
5T4抗原に結合する
抗5T4抗体に共有結合する
、配列番号:7のアミノ酸残基226~458またはその免疫学的に反応性のバリアントおよび/または断片を含むスーパー抗原を含むスーパー抗原コンジュゲート、
ならびに
(ii)
抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体から選択される免疫増強物質
を含み、(i)と(ii)は組み合わせて使用され、それにより癌性細胞に対する被験体における免疫応答を強化して、癌が治療される、
医薬。
【請求項2】
癌の治療を必要とする被験体において癌を治療するための医薬であって、該医薬が、
被験体において癌性細胞により発現される5T4抗原に結合する抗5T4抗体に共有結合する、配列番号:7のアミノ酸残基226~458またはその免疫学的に反応性のバリアントおよび/または断片を含むスーパー抗原を含むスーパー抗原コンジュゲート
を含み、該医薬が、抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体から選択される免疫増強物質と組み合わせて使用され、それにより癌性細胞に対する被験体における免疫応答を強化して、癌が治療される、医薬。
【請求項3】
癌の治療を必要とする被験体において癌を治療するための医薬であって、該医薬が、
抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体から選択される免疫増強物質
を含み、該医薬が、被験体において癌性細胞により発現される5T4抗原に結合する抗5T4抗体に共有結合する、配列番号:7のアミノ酸残基226~458またはその免疫学的に反応性のバリアントおよび/または断片を含むスーパー抗原を含むスーパー抗原コンジュゲートと組み合わせて使用され、それにより癌性細胞に対する被験体における免疫応答を強化して、癌が治療される、医薬。
【請求項4】
スーパー抗原
コンジュゲートが、免疫増強物質の前、同時または後に被験体に投与される、請求項1
~3いずれか一項記載の
医薬。
【請求項5】
スーパー抗原が、T細胞の表面上のT細胞受容体に結合する、請求項1
~4いずれか一項記載の
医薬。
【請求項6】
抗5T4抗体が、5T4癌抗原に結合するFab断片を含む、請求項
1~5いずれか一項記載の
医薬。
【請求項7】
スーパー抗原コンジュゲートが、配列番号:8のアミノ酸残基1~458を含む
第1のタンパク質鎖、および配列番号:9のアミノ酸残基1~214を含む
第2のタンパク質鎖を含む、請求項1~6いずれか一項記載の医薬。
【請求項8】
T細胞により発現されるプログラム細胞死-1タンパク質(PD-1)に結合するプログラム細胞死リガンド(PD-L)が、癌性細胞の表面
上に発現される、請求項
5~
7いずれか一項記載の
医薬。
【請求項9】
抗PD-1抗体が、T細胞の表面上に発現されるPD-1にPD-Lが結合することを防
ぐ、請求項
1~8いずれか一項記載の
医薬。
【請求項10】
抗PD-1抗体が、ヒトIgG4アイソタイプを有す
る、請求項
1~9いずれか一項記載の
医薬。
【請求項11】
抗PD-1抗体が、ニボルマブおよびペンブロリズマブからなる群より選択される、請求項
1~10いずれか一項記載の
医薬。
【請求項12】
免疫増強物質が、抗PD-L1抗体である、請求項
1~8いずれか一項記載の
医薬。
【請求項13】
抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブおよびMEDI4736からなる群より選択される、請求項
12記載の
医薬。
【請求項14】
癌が、黒色腫、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、胃癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓細胞癌
、食道癌、膀胱癌、腎臓癌および皮膚癌からなる群より選択される、請求項1~13いずれか一項記載の医薬。
【請求項15】
(i)被験体において癌性細胞により発現される
5T4抗原に結合する
抗5T4抗体に共有結合する
、配列番号:7のアミノ酸残基226~458またはその免疫学的に反応性のバリアントおよび/または断片を含むスーパー抗原を含むスーパー抗原コンジュゲートの有効量、
(ii)抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体から選択される免疫増強物質の有効量、ならびに
(iii)薬学的に許容され得る賦形剤
を含む、
癌を治療するための医薬組成物。
【請求項16】
スーパー抗原がT細胞の細胞表面
上に発現されるT細胞受容体に結合する、請求項
15記載の組成物。
【請求項17】
該抗体が5T4抗原に結合するFab断片を含む、請求項
15または16記載の組成物。
【請求項18】
スーパー抗原コンジュゲートが、配列番号:8のアミノ酸残基1~458を含む
第1のタンパク質鎖、および配列番号:9のアミノ酸残基1~214を含む
第2のタンパク質鎖を含む、請求項15~17いずれか一項記載の組成物。
【請求項19】
免疫増強物質が、癌性細胞において発現されるPD-LがT細胞により発現されるPD-1に結合することを防ぐ、請求項
16~
18いずれか一項記載の組成物。
【請求項20】
免疫増強物質が、抗PD-1抗体である、請求項
15~19いずれか一項記載の組成物。
【請求項21】
該抗体が、ヒトIgG4アイソタイプを有す
る、請求項
15~20いずれか一項記載の組成物。
【請求項22】
抗PD-1抗体が、ニボルマブおよびペンブロリズマブからなる群より選択される、請求項
15~21いずれか一項記載の組成物。
【請求項23】
免疫増強物質が、抗PD-L1抗体である、請求項
15~19いずれか一項記載の組成物。
【請求項24】
抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブおよびMEDI4736からなる群より選択される、請求項
23記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、全内容がその全体において参照により本明細書に援用される2016年1月10日に出願された米国仮特許出願第62/276,955号の利益および優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は一般的に、スーパー抗原媒介性癌免疫療法の能力を増強するための方法および組成物に関し、より具体的には、癌細胞が被験体の免疫系を逃れることを防ぐ免疫増強物質を用いたスーパー抗原媒介性癌免疫療法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
米国癌学会によると、米国において毎年100万人を超える人々が癌であると診断されている。癌は、いったんは自然の制御機構に供されるが制御されない様式で増殖を続ける癌性細胞に変化した制御されない細胞の増殖により生じる疾患である。近年、被験体の免疫系を利用して、癌細胞を発見および破壊することを試みるいくつかの免疫療法が開発されている。かかる免疫療法としては、例えば、身体により作製される自然の分子を使用して癌と戦うための身体の自然防御を加速するように設計されるもの、あるいは代替的に、免疫系機能を向上、より良好に標的化または修復するように設計された組み換え分子の投与によるものが挙げられる。特定の免疫療法としては、サイトカイン、例えばIL-2およびインターフェロンなどの一般的な免疫系促進因子として知られる化合物の投与が挙げられる。今日までに開発された種々の免疫療法は効力を示しているが、それらは、例えば、標的でない活性、サイトカインストーム(storm)についての能力を含む投与される有効成分に対するアレルギー反応、有効成分に結合し中和する抗体の刺激により引き起こされる能力の消失、血液細胞数の減少、および疲労を含む副作用を伴い得る。
【0004】
他の免疫療法は、癌に対する免疫応答を増強する免疫チェックポイント阻害剤と称される分子を利用する。かかるチェックポイント阻害剤は、癌細胞が免疫抑制性チェックポイントを阻害する能力を抑制してそれにより抗癌療法の能力の増強を生じるように機能する。第1世代免疫チェックポイント阻害剤イピリムマブ (YERVOY(登録商標); Bristol-Myers Squibb)は、2011年に米国食品医薬品局により承認された、ADCC媒介性制御性T細胞(Treg)細胞傷害性を引き起こし得るIgG1モノクローナル抗体である。数年にわたり、免疫療法と化学療法の組合せである免疫化学療法が、特定の癌の治療にとって重要になっている。例えば、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標); Roche)は、CD20を発現する細胞を枯渇させるCD-20特異的モノクローナル抗体であり、R-CHOPとして知られるリツキシマブ(R)、シクロホスファミド(C)、ヒドロキシダウノルビシン(H)、オンコビン(O)およびプレドニゾン(P)を使用したB細胞リンパ腫、例えば非ホジキンリンパ腫の治療の標準的な構成成分となっている。
【0005】
近年、PD-1とPD-L1の間の抑制性シグナルを防ぐニボルマブおよびペンブロリズマブなどのPD-1阻害剤が承認されている。これらの薬物は、いくつかの患者において増強された持続性の応答を有するが、単一療法としてのこれらの薬物の奏効率は低く、21%の範囲内であり、いくつかの試験において完全奏効率は約1%であった。
【0006】
種々の癌療法を組み合わせて患者の結果を向上させる進行中の努力があり、いくつかの組合せは効力において利点を示しているが、薬物の組合せは重大な副作用を増強することがあるので、安全性が主要な関心になっている。例えば、抗CTLA-4抗体を単独で受けた患者と比較して、抗CTLA-4と抗PD1抗体の組合せを受けた多くの患者において、グレード3または4の薬物関連有害事象が報告された。したがって、免疫療法および腫瘍学の分野においてなされた多くの開発にもかかわらず、依然として、癌を治療するための安全かつ有効な免疫療法についての必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
近年、被験体の免疫系を利用して癌細胞を発見および破壊することを試みたいくつかの免疫療法が開発されている。ヒト免疫系は癌細胞を排除するための能力を有するが、特定の癌細胞は、宿主の免疫系を「オフにする」か、「下方制御する」か、またはそうでなければ宿主の免疫系を逃れて、チェックされずに癌細胞を成長および増殖し続ける能力を発現する。
【0008】
本発明は部分的に、スーパー抗原に基づく治療と、(a) T細胞シグナル伝達の活性化の刺激、(b) 癌性細胞とT細胞の間のT細胞抑制性シグナル伝達の抑制、(c) ヒトIgG4免疫グロブリン媒介性経路を介するT細胞の拡大、活性化および/または活性をもたらす抑制性のシグナル伝達の抑制、あるいは(d) 前述の2つ以上の組合せをなし得る免疫増強物質を組み合わせることにより、被験体における癌細胞に対して標的化された免疫応答が大きく増強され得るという発見に基づく。
【0009】
一局面において、本発明は癌の治療を必要とする被験体において癌を治療する方法を提供する。該方法は、該被験体に、(i) 被験体における癌性細胞により優先的に発現される第1の抗原に結合する標的化部分に共有結合するスーパー抗原を含むスーパー抗原コンジュゲートの有効量、ならびに(ii) (a) T細胞シグナル伝達の活性化の刺激、(b) 癌性細胞とT細胞の間のT細胞抑制性シグナル伝達の抑制、および/または(c) ヒトIgG4免疫グロブリン媒介性経路を介した(すなわち、非ヒトIgG1媒介性免疫応答経路を介した)T細胞の拡大、活性化および/または活性をもたらす抑制性シグナル伝達の抑制、の少なくとも1つ以上に対して有効な免疫増強物質(例えば、チェックポイント経路阻害剤)の有効量を投与して、それにより癌性細胞に対する被験体における免疫応答を増強して癌を治療する工程を含む。スーパー抗原に基づく治療は、T細胞からのインターフェロンγの分泌を上方制御し得、次いでPD-L1発現を上方制御し得る。しかしながら、今日まで、抗原性の増加のポジティブな効果と相殺するこのネガティブな効果がPD-1阻害剤により軽減され得るかどうかは分かっていなかった。今日、スーパー抗原コンジュゲートに基づく治療は、PD1阻害剤の奏効率に潜在的に影響し得るか、そうでなければ臨床結果に影響し得ることが発見されている。
【0010】
特定の態様において、スーパー抗原コンジュゲートは、免疫増強物質の前、同時または後に被験体に投与され得る。さらに、スーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質は、治療効果の有効性および/またはを選択性も増強する1つ以上のさらなる薬剤と一緒にまたは続けて共投与され得る。かかる薬剤としては、例えば、コルチコステロイド、さらなる免疫調節因子、および投与されたスーパー抗原コンジュゲートに対する患者の潜在的な免疫反応性を低減するように設計される化合物が挙げられる。例えば、投与されたスーパー抗原に対する免疫反応性は、被験体において抗スーパー抗原抗体の産生を低減する例えば抗CD20抗体および/または抗CD19抗体との共投与を介して低減され得る。
【0011】
特定の態様において、スーパー抗原コンジュゲート中に存在するスーパー抗原は、T細胞、例えばCD4+および/またはCD8+ T細胞の表面上のT細胞受容体に結合する。スーパー抗原は、ブドウ球菌エンテロトキシンAもしくはB、その免疫学的に反応性のバリアント、あるいはブドウ球菌エンテロトキシンAもしくはBまたはその免疫学的バリアントの免疫学的に反応性の断片を含み得る。該コンジュゲートの標的化部分は、癌細胞上に好ましく発現される抗原に結合し、それにより該スーパー抗原を癌細胞に結合させる。該標的化部分は、1つ以上の異なる抗原、例えば癌性細胞により発現される1つ以上の細胞表面抗原に優先的に結合することにより、該コンジュゲートを癌性細胞に標的化させるために使用され得る。特定の態様において、細胞表面抗原は、例えば癌細胞および特定の癌幹細胞上に存在する5T4腫瘍胎児癌抗原である。種々の標的化部分は、スーパー抗原を、第1の抗原を発現する癌性細胞に標的化するために使用され得、特定の態様において、該標的化部分は抗体、例えば抗5T4抗体である。特定の態様において、標的化部分は、5T4に結合するFab断片である。特定の態様において、該コンジュゲート中のスーパー抗原は、配列番号:7のアミノ酸226~458(また配列番号:8の残基226~458)、またはその免疫学的に反応性のバリアント、あるいは前述のそれぞれの免疫学的に反応性の断片を含む。
【0012】
特定の態様において、該免疫増強物質はチェックポイント経路阻害剤である。例えば、特定の態様において、該免疫増強物質は、癌性細胞の表面上に発現されるプログラム細胞死リガンド(Programmed Cell Death-Ligand)(PD-L)、例えばPD-L1またはPD-L2の発現または活性を低減する。PD-Lは、T細胞上に発現されるプログラム細胞死-1(Programmed Cell Death-1)受容体(PD-1)に結合するリガンドである。特定の癌細胞は、被験体の免疫系を回避するように、PD-1チェックポイント経路を介するT細胞の活性化または活性を低減するためにPD-Lを発現する。特定の態様において、該免疫増強物質は抗PD-1抗体であり、PD-L、例えばPD-L1またはPD-L2の、T細胞の表面上に発現されるPD-1への結合を防ぐ。特定の態様において、抗PD-1抗体は、ヒトIgG1免疫グロブリンアイソタイプよりもかなり低い抗体依存性細胞媒介性毒性(antibody-dependent cell-mediated toxicity)(ADCC)を誘導するヒトIgG4免疫グロブリンアイソタイプを有するかまたはそれに基づく。
【0013】
特定の態様において、抗PD-1抗体は、ニボルマブおよびペンブロリズマブからなる群より選択される。他のPD-1阻害剤としては、(i) 抗PD-1抗体、例えば、MK-3475 (Merck & Co)、ピドリズマブ(pidlizumab) (CureTech)、AMP-224 (AstraZeneca/Medimmune)およびAMP-514 (AstraZeneca/Medimmune)、ならびに(ii) 抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A (Genentech/Roche)、MEDI-4736 (AstraZeneca/Medimmune)およびMSB0010718C (EMD Serono/Merck KGA)が挙げられる。
【0014】
特定の態様において、4-1BB (CD137)アゴニスト(例えば、完全ヒトIgG4抗CD137抗体ウレルマブ(Urelumab)/BMS-663513)、LAG3阻害剤(例えば、ヒト化IgG4抗LAG3抗体LAG525, Novartis);IDO阻害剤(例えば、小分子INCB024360、Incyte Corporation)、TGFβ阻害剤(例えば、小分子ガルニセルチブ、Eli Lilly)、ならびにT細胞および/または腫瘍細胞上で見られ、かつADCCではなくアゴニスト/アンタゴニスト相互作用に基づく薬学的介入に従順な他の受容体またはリガンドなどの他の潜在的免疫増強物質が使用され得る。
【0015】
該方法は、種々の癌、例えば、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、胃癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓細胞癌および皮膚癌からなる群より選択される癌を治療するために使用され得ることが理解される。
【0016】
別の局面において、本発明は、(i) 被験体において癌性細胞により発現される第1の抗原に結合する標的化部分に共有結合するスーパー抗原を含むスーパー抗原コンジュゲートの有効量、(ii) 被験体において以下(a) T細胞シグナル伝達の活性化の刺激、(b) 癌性細胞とT細胞の間のT細胞抑制性シグナル伝達の抑制、および/または(c) ヒトIgG4免疫グロブリン媒介性経路を介する(すなわち、非ヒトIgG1媒介性免疫応答経路を介する)T細胞の拡大、活性化および/または活性をもたらす抑制性シグナル伝達の抑制の少なくとも1つ以上に対して有効な免疫増強物質の有効量、ならびに(iii)薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0017】
特定の態様において、該コンジュゲートのスーパー抗原構成成分は、T細胞の細胞表面上に発現されるT細胞受容体に結合する。例えば、特定の態様において、該スーパー抗原は、ブドウ球菌エンテロトキシンAもしくはブドウ球菌エンテロトキシンB、その免疫学的に反応性のバリアント、またはブドウ球菌エンテロトキシンAもしくはBの免疫学的に反応性の断片、あるいはそれらのバリアントを含む。該コンジュゲート中の標的化部分は、コンジュゲートを、癌性細胞中に発現される1つ以上の抗原に標的化させ得ることが理解される。特定の態様において、該コンジュゲートにより標的化される第1の抗原は、細胞表面抗原、例えば5T4腫瘍胎児性癌抗原である。種々の標的化部分は、該コンジュゲートを癌性細胞において発現される抗原に標的化させるために使用され得るが、一態様において、該標的化部分は、抗体、例えば抗5T4抗体である。特定の態様において、該標的化部分は、5T4抗原に結合するFab断片を含む。特定の態様において、コンジュゲート中のスーパー抗原は、配列番号:7の配列のアミノ酸残基226~458(また、配列番号:8の残基226~458)もしくはその免疫学的に反応性のバリアント、または前述のそれぞれの免疫学的に反応性の断片を含む。
【0018】
特定の態様において、免疫増強物質は、癌性細胞において発現されるPD-L(例えば、PD-L1またはPD-L2)が、T細胞上で発現されるPD-1受容体に結合することを防ぎ、T細胞の活性化および/または活性を低減する。例えば、免疫増強物質は、PD-1チェックポイント経路阻害剤、例えば抗PD-1抗体であり得る。特定の態様において、抗PD-1抗体は、好ましくはヒトIgG1免疫グロブリンアイソタイプよりもかなり低いADCCを誘導するヒト免疫グロブリンIgG4アイソタイプを有するかまたはそれに基づく。特定の態様において、抗PD-1抗体は、ニボルマブおよびペンブロリズマブからなる群より選択される。
【0019】
本発明のこれらおよび他の局面ならびに特徴を、以下の詳細な説明、図および特許請求の範囲において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面に例示されるように、好ましい態様の以下の説明から明らかになる。同様の参照される要素は、対応する図面における共通の特徴を同定する。図面は必ずしも同じ縮尺ではなく、その代わりに本発明の原理を説明する際に強調される。
【
図1】
図1は、スーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質を使用した本発明の例示的治療方法の模式的表示である。
【
図2】
図2は、特定の野生型および改変されたスーパー抗原における相同なA-E領域を示す配列整列である。
【
図3】
図3は、例示的なスーパー抗原コンジュゲートに対応するアミノ酸配列である。
【
図4】
図4は、ANYARA(登録商標)およびKEYTRUDA(登録商標)単独または組み合わせの、非小細胞肺(NSCLC)細胞株HCC827の生存能力に対する効果を示す棒グラフである。T細胞と共培養したHCC827細胞の生存率はANYARA(登録商標)(0.1μg/ml)および/またはKEYTRUDA(登録商標)(0.2μg/ml)または培地のみ(対照)での処理の48時間後に測定した。n=3-6;平均±SD、両側スチューデントt検定により測定した場合、* p<0.05、** p<0.02;*** p<0.005。
【
図5】
図5は、ANYARA(登録商標)およびKEYTRUDA(登録商標)単独または組み合わせの、NSCLC細胞株HCC827の生存能力に対する効果を示す棒グラフである。T細胞と共培養したHCC827細胞の生存率は、ANYARA(登録商標)(10μg/ml)および/またはKEYTRUDA(登録商標)(0.2μg/ml)または培地のみ(対照)での処理の48時間後に測定した。n=3-6;平均±SD。両側スチューデントt検定により測定した場合、* p=0.005、** p<0.005;*** p<0.0005。
【
図6】
図6は、C215Fab-SEAおよび抗PD-1 mAb単独または組み合わせの、B16-EpCAMマウス黒色腫モデルにおける肺腫瘍負荷に対する効果を示す棒グラフである。マウスに、B16-EpCAM黒色腫細胞を静脈内に接種して、C215Fab-SEA(0.5μg/マウス)および/または抗PD-1 mAb (200μg/マウス)で治療した。対照群にはPBSを注射した。21日目に、マウスを屠殺して肺を取り出し、腫瘍の数を計測した。n=7~8マウス/群;平均±SEM。ANOVAにより測定した場合、* p=0.05、** p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
本発明は、被験体において癌を治療するための方法および組成物に関する。特に、本発明は部分的に、スーパー抗原系治療と、(a) T細胞シグナル伝達の活性化の刺激、(b) 癌性細胞とT細胞の間のT細胞抑制性シグナル伝達の抑制、(c) ヒトIgG4免疫グロブリン媒介性経路を介するT細胞の拡大、活性化および/または活性をもたらす抑制性シグナル伝達の抑制、または(d) 前述の2つ以上の組合せをなし得る免疫増強物質を組み合わせることにより、被験体における癌に対する標的化された免疫応答が有意に増強され得るという発見に基づく。腫瘍標的化スーパー抗原(tumor-targeted superantigen)(TTS:免疫療法の形態)を、免疫増強物質(例えば、PD-1阻害剤)と一緒に投与することにより、一緒に組み合わせた(すなわち、薬剤が相乗的に作用する)場合に、単独で投与した場合のそれぞれの薬物の加法的効果よりも高い効果を生じるように、スーパー抗原および免疫増強物質の両方についての増強された抗癌効果が生じ得ることが発見された。
【0022】
一局面において、本発明は、癌の治療を必要とする被験体において癌を治療する方法を提供する。該方法は、被験体に、(i) 被験体において癌性細胞により優先的に発現される第1の抗原に結合する標的化部分に共有結合するスーパー抗原を含むスーパー抗原コンジュゲートの有効量、ならびに(ii) (a) T細胞シグナル伝達の活性化の刺激、(b) 癌性細胞とT細胞の間のT細胞抑制性シグナル伝達の抑制、および/または(c) ヒトIgG4免疫グロブリン媒介性経路を介する(すなわち、非ヒトIgG1媒介性免疫応答経路を介する)T細胞の拡大、活性化および/または活性をもたらす抑制性シグナル伝達の抑制の少なくとも1つ以上に対して有効な免疫増強物質(例えば、チェックポイント経路阻害剤)の有効量を投与して、それにより癌性細胞に対する被験体における免疫応答を増強して、癌を治療する工程を含む。
【0023】
別の局面において、本発明は、(i) 被験体において癌性細胞により発現される第1の抗原に結合する標的化部分に共有結合するスーパー抗原を含むスーパー抗原コンジュゲートの有効量、(ii) 被験体において(a) T細胞シグナル伝達の活性化の刺激、(b) 癌性細胞とT細胞の間のT細胞抑制性シグナル伝達の抑制、および/または(c) ヒトIgG4免疫グロブリン媒介性経路を介する(すなわち、非ヒトIgG1媒介性免疫応答経路を介する)T細胞の拡大、活性化および/または活性をもたらす抑制性シグナル伝達の抑制の少なくとも1つ以上に対して有効な免疫増強物質の有効量、ならびに(iii) 薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0024】
I. 定義
そうではないと定義されない限り、本明細書において使用される科学技術用語は、本発明が属する分野における通常の技術を有する者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明のために、以下に、以下の用語を定義する。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「a」または「an」は1つ以上を意味し得る。例えば、「スーパー抗原および免疫増強物質(a superantigen and an immunopotentiator)による治療」などの記述は、1つのスーパー抗原および1つの免疫増強物質による;1つより多くのスーパー抗原および1つの免疫増強物質による;1つのスーパー抗原および1つより多くの免疫増強物質による;または1つより多くのスーパー抗原および1つより多くの免疫増強物質による治療を意味し得る。
【0026】
本明細書で使用する場合、そうではないと示されなければ、用語「抗体」は、完全な抗体(例えば、完全なモノクローナル抗体)または抗体の抗原結合断片、例えば最適化、作り変えまたは化学的にコンジュゲートされた完全な抗体または抗体の抗原結合断片(例えば、完全ヒト抗体、半合成抗体または完全合成抗体を含むファージディスプレー抗体)を意味すると理解される。最適化された抗体の例は、アフィニティ成熟抗体である。作り変えられた抗体の例は、Fc最適化抗体、免疫原性を低減するように作り変えられた抗体および多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。抗原結合断片の例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、一本鎖抗体(例えば、scFv)、ミニボディおよびダイアボディが挙げられる。毒素部分にコンジュゲートされた抗体は、化学的にコンジュゲートされた抗体の例である。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「癌」および「癌性」は、典型的に制御されない細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的な状態を意味すると理解される。癌の例としては、限定されないが、黒色腫、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ球の悪性疾患が挙げられる。癌のより具体的な例としては、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮扁平細胞癌(epithelial squamous cell cancer))、肺癌、例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌種(squamous carcinoma)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃または胃(gastric or stomach)癌、例えば胃腸癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、骨癌、脳癌、網膜芽腫、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓または腎(kidney or renal)癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、精巣癌、ならびに頭部頸部癌、歯肉または舌(gum or tongue)癌が挙げられる。癌は癌または癌性細胞を含み、例えば癌は、複数の個々の癌または癌性細胞、例えば白血病、または複数の関連のある癌または癌性細胞を含む腫瘍を含み得る。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「免疫原」は、免疫応答を誘発する(provoke)(引き起こす(evoke)、誘導する(induce)または引き起こす(cause))分子である。この免疫応答は、抗体産生、特定の細胞、例えば特異的免疫コンピテント細胞の活性化、またはその両方を含み得る。免疫原は、限定されないが、生物由来の分子、例えばタンパク質、タンパク質のサブユニット、殺傷または不活性化された全細胞または溶解物、合成分子、ならびに生物学的および非生物学的の両方の種々の他の薬剤などの多くの種類の物質に由来し得る。本質的に任意のマクロ分子(天然に存在するマクロ分子または組み換えDNAアプローチにより産生されるマクロ分子を含む)、例えば実質的に全てのタンパク質が免疫原として働き得ることが理解される。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「免疫原性」は、免疫応答を誘発する (引き起こす、誘導するまたは引き起こす)免疫原の能力に関する。異なる分子は異なる程度の免疫原性を有し得、別の分子と比較してより高い免疫原性を有する分子は、例えば、より低い免疫原性を有する薬剤よりも高い免疫応答を誘発(引き起こす、誘導または引き起こす)し得ることが知られている。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「抗原」は、本明細書で使用する場合に抗体、特異的な免疫学的コンピテント細胞またはその両方により認識される分子をいう。抗原は、限定されないが、生物由来の分子、例えば、タンパク質、タンパク質のサブユニット、核酸、脂質、殺傷または不活性化された全細胞または溶解物、合成分子、ならびに生物学的および非生物学的の両方の種々の他の薬剤などの多くの種類の物質に由来し得る。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「抗原性」は、抗体、特異的な免疫学的コンピテント細胞またはその両方により認識される抗原の能力に関する。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「主要組織適合性複合体」または「MHC」は、遺伝子の特異的なクラスターをいい、その多くは抗原提示に関連する進化的に関連のある細胞表面タンパク質をコードし、組織適合性の重要な決定因子である。クラスI MHCまたはMHC-Iは主に、CD8+ Tリンパ球(CD8+ T細胞)への抗原提示において機能する。クラスII MHCまたはMHC-IIは主に、CD4+ Tリンパ球(CD4+ T細胞)への抗原提示において機能する。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「由来する(derived)」、例えば「由来する(derived from)」は、限定されないが、例えば細菌、ウイルスおよび真核動物細胞および生物などの生物学的宿主由来の野生型の分子、ならびに修飾された分子、例えば化学的手段により修飾されるかまたは組み換え発現系において産生される分子を含む。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「血清反応性(seroreactive)」、「血清反応(seroreaction)」または「血清反応性(seroreactivity)」は、分子などの薬剤が、限定されないがヒトなどの哺乳動物の血清中で抗体と反応する能力を意味すると理解される。これは、例えば抗体が薬剤を不活性化または中和するかに関わらず分子に特異的な抗体および分子に結合する非特異的抗体を含む全ての種類の抗体との反応を含む。当該分野で公知であるように、異なる薬剤は、互いに異なる血清反応性を有し得、ここで別のものよりも低い血清反応性を有する薬剤は、例えばより少ない抗体と反応するか、および/またはより高い血清反応性を有する薬剤よりも低い抗体に対する親和性および/またはアビディティを有する。これはまたは、哺乳動物、例えばヒトなどの動物において抗体免疫応答を誘発する能力を含み得る。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「可溶性T細胞受容体」または「可溶性TCR」は、受容体鎖の膜貫通領域が欠失または突然変異されて、細胞により発現された場合に該受容体が膜に挿入、膜を横断またはそうでなければ膜と結合しないことを除き、完全長(例えば、膜結合)受容体の鎖を含む「可溶性」T細胞受容体を意味することが理解される。可溶性T細胞受容体は、野生型受容体の細胞外ドメインまたは細胞該断片のみを含み得る(例えば、膜貫通および細胞質ドメインを欠く)。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「スーパー抗原」は、MHCクラスII分子およびT細胞受容体のVβドメインに結合することによりT細胞のサブセットを刺激し、それにより特定のVβ遺伝子セグメントを発現するT細胞を活性化する分子の部類を意味することが理解される。該用語は、野生型、天然に存在するスーパー抗原、例えば特定の細菌から単離されるかまたはその改変されていない遺伝子から発現されたもの、および改変されたスーパー抗原を含み、ここで例えば、スーパー抗原をコードするDNA配列は、例えば標的化部分との融合タンパク質を産生するか、および/またはスーパー抗原の特定の特性、例えば限定されないが、そのMHCクラスII結合(例えば親和性を低減)および/またはその血清反応性、および/またはその免疫原性、および/または抗原性(例えば、その血清反応性を低減)を改変するように遺伝的に作り変えることにより改変されている。該定義は、本明細書または以下の米国特許および米国特許出願:米国特許5,858,363、6,197,299、6,514,498、6,713,284、6,692,746、6,632,640、6,632,441、6,447,777、6,399,332、6,340,461、6,338,845、6,251,385、6,221,351、6,180,097、6,126,945、6,042,837、6,713,284、6,632,640、6,632,441、5,859,207、5,728,388、5,545,716、5,519,114、6,926,694、7,125,554、7,226,595、7,226,601、7,094,603、7,087,235、6,835,818、7,198,398、6,774,218、6,913,755、6,969,616および6,713,284、米国特許出願2003/0157113、2003/0124142、2002/0177551、2002/0141981、2002/0115190、2002/0051765および2001/0046501、ならびにPCT国際公開番号WO/03/094846に記載される野生型および改変されたスーパー抗原ならびにその任意の免疫学的に反応性のバリアントおよび/または断片を含む。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「標的化部分」は、細胞分子、例えば細胞表面分子、好ましくは疾患特異的分子、例えば癌(または癌性)細胞上に優先的に発現される抗原に結合し得る任意の構造、分子または部分をいう。例示的な標的化部分としては、限定されないが、抗体(その抗原結合断片を含む)等、可溶性T細胞受容体、インターロイキン、ホルモンおよび成長因子が挙げられる。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「腫瘍標的化スーパー抗原」または「TTS」または「癌標的化スーパー抗原」は、1つ以上の標的化分子と(直接的または間接的のいずれか)共有結合する1つ以上のスーパー抗原を含む分子を意味することが理解される。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「T細胞受容体」は、T細胞に特異的な受容体を意味することが理解され、当該技術分野において公知の用語の理解が含まれる。該用語はまた、例えば不変のCD3鎖との複合体として細胞膜で発現される高度に可変性のαまたはβのジスルフィド結合ヘテロダイマーを含む受容体、ならびにT細胞のサブセット上でCD3との複合体として細胞膜で発現される可変性γおよびδ鎖で作製される受容体を含む。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「治療有効量」および「有効量」は、疾患または状態の治療において少なくともいくらかの効果を生じる活性剤、例えば医薬活性剤または医薬組成物の量を意味することが理解される。治療的処置のために本発明を実施するために使用される医薬活性剤(1つまたは複数)の有効量は、投与の様式、被験体の年齢、体重および一般的な健康により変化する。これらの用語としては限定されないが、本発明に記載されるものなどの相乗的な状況が挙げられ、ここでスーパー抗原コンジュゲートまたは免疫増強物質(例えば、抗PD-1抗体)などの単一の薬剤は単独で弱く作用し得るかまたは全く作用し得ないが、例えば限定されないが、連続投与により互いに組み合される場合、2つ以上の薬剤は相乗的な結果を生じるように作用する。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「被験体」および「患者」は、本明細書に記載される方法および組成物により治療される生物をいう。かかる生物としては好ましくは、限定されないが、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」および「治療(treatment)」は、哺乳動物、例えばヒトにおける疾患の治療を意味することが理解される。該用語としては、(a) 疾患の阻害、すなわち疾患の発症の拘束;および(b) 疾患の軽減、すなわち疾患の寛解を引き起こすこと;および(c) 疾患の治療(curing)が挙げられる。治療的処置の文脈で使用する場合、用語「予防(prevent)」または「阻害(block)」は、所定の作用、行為、活性または事象を完全に予防もしくは阻害、または完全ではなく予防もしくは阻害(例えば部分的に予防または阻害)すると理解される。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「癌の成長を阻害する(inhibits the growth of a cancer)」は、インビトロまたはインビボにおいて癌または癌性細胞の成長速度を測定可能に遅延、停止または反転することを意味することが理解される。望ましくは、成長速度は、細胞成長速度の決定のための適切なアッセイを使用して決定した場合、20%、30%、50%または70%以上遅延される。典型的に、成長速度の反転は、新形成細胞の細胞死の壊死またはアポトーシス機構を開始または促進させて新生物の収縮を生じさせることにより達成される。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「バリアント(variant)」、「バリアント(variants)」、「修飾される(modified)」、「改変される(altered)」、「変異される(mutated)」等は、参照のタンパク質、ペプチドまたは他の化合物とは異なるタンパク質もしくはペプチドおよび/または他の因子および/または化合物を意味することが理解される。この意味におけるバリアントは、以下または他の場所でより詳細に記載される。例えば、バリアントの核酸配列の変化はサイレントであり得、例えば該変化は核酸配列にコードされるアミノ酸を改変させないことがある。改変がこの型のサイレント変化に限定される場合、バリアントは参照ペプチドと同じアミノ酸配列を有するペプチドをコードする。バリアントの核酸配列の変化は、参照核酸配列にコードされるペプチドのアミノ酸配列を改変させ得る。かかる核酸変化は、以下に記載されるように、参照配列にコードされるタンパク質またはペプチドにおけるアミノ酸の置換、付加、欠失、融合および/または切断を生じ得る。一般的に、アミノ酸配列の違いは限定されるので、参照およびバリアントの配列は、全体的に同様であり、多くの領域で同じである。バリアントおよび参照タンパク質またはペプチドは、任意の組合せに存在し得る1つ以上の置換、付加、欠失、融合および/または切断によりアミノ酸配列において異なり得る。バリアントはまた、参照配列よりも短くなることにより、例えば末端または内部の欠失により参照タンパク質またはペプチド配列とは異なる本発明のタンパク質またはペプチドの断片であり得る。本発明のタンパク質またはペプチドの別のバリアントはまた、参照タンパク質またはペプチドと本質的に同じ機能または活性を保持するタンパク質またはペプチドを含む。バリアントはまた、(i) 1つ以上のアミノ酸残基が保存されるかもしくは保存されないアミノ酸残基により置換され、かかる置換されたアミノ酸残基が遺伝子コードにコードされるものであり得るかもしくはコードされるものであり得ないもの、または(ii) 1つ以上のアミノ酸残基が置換基を含むもの、または(iii) 成熟タンパク質もしくはペプチドがタンパク質もしくはペプチドの半減期を増加させる化合物(例えば、ポリエチレングリコール)などの別の化合物と融合されるもの、または(iv) リーダー配列もしくは分泌配列もしくは成熟タンパク質もしくはペプチドの精製のために使用される配列などのさらなるアミノ酸が成熟タンパク質もしくはペプチドに融合されるものであり得る。バリアントは、突然変異誘発技術、および/または核酸、アミノ酸、細胞もしくは生物に適用されるものを含む化学的改変、融合、調整などの改変機構により作製され得、および/または組み換え手段により作製され得る。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「連続投与」および関連のある用語は、少なくともの1つの免疫増強物質と一緒の少なくとも1つのスーパー抗原の投与をいい、投与量におけるこれらの薬剤および変形の時差的な投与(すなわち時間をずらした)を含む。これは、別の薬剤の投与の前、重複(部分的または完全に)、または後に投与される1つの薬剤を含む。該用語は一般的に、少なくとも1つのスーパー抗原および少なくとも1つの免疫増強物質の相乗的な組合せを達成するための最良の投与スキームを考慮する。かかる投与戦略(例えば連続投与)により、組み合わされたスーパー抗原と免疫増強物質の投与の相乗的な効果を達成し得る。また、用語「連続投与」および関連のある用語は、少なくとも1つのスーパー抗原、1つの免疫増強物質ならびに1つ以上の任意のさらなる化合物、例えばコルチコステロイド、免疫調節因子、および被験体に投与されるスーパー抗原コンジュゲートに対する潜在的な免疫反応性を低減するように設計される別の薬剤などの投与も含む。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「全身的な」および「全身的に」は投与の文脈において、薬剤が、限定されないが腫瘍中などの体の限局された部分のみよりもむしろ、体全体と関連する少なくとも1つの系、例えば限定されないが循環系、免疫系およびリンパ系に暴露されるような薬剤の投与を意味することが理解される。したがって、例えば全身的治療または全身的に投与される薬剤は、体全体に関連する少なくとも1つの系が、標的組織だけとは反対に、治療または薬剤に暴露される治療または薬剤である。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「非経口投与」は、腸を介した吸収を含まずに化合物が被験体に吸収される投与の任意の形態を含む。本発明において使用される例示的な非経口投与としては、限定されないが、筋内、静脈内、腹腔内または関節内の投与が挙げられる。
【0048】
用語「約」の使用が量的値の前にある場合、本発明は、具体的にそうではないと記載されなければ、具体的な量的値自体も含む。本明細書で使用する場合、用語「約」は、そうではないと示されるか推測されるかでなければ、名目上の値から±10%の変化をいう。
【0049】
本明細書における種々の場所で、値は群または範囲で開示される。該記載は、かかる群および範囲の一員のそれぞれおよび全ての個々のサブ組合せを含むことが具体的に意図される。例えば、0~40の範囲の整数は具体的に、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39および40を個々に開示することを意図し、1~20の範囲の整数は具体的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20を個々に開示することを意図する。
【0050】
本記載を通して、組成物およびキットが具体的な構成成分を有する、含む(including)、または含む(comprising)と記載される場合、またはプロセスおよび方法が具体的な工程を有する、含むまたは含むと記載される場合、さらに、記載される構成成分から本質的になるかまたはそれからなる本発明の組成物およびキットが存在すること、ならびに記載されるプロセスおよび方法の工程から本質的になる型またはそれからなる本発明によるプロセスおよび方法が存在することが企図される。
【0051】
さらに、本明細書に記載される組成物または方法の要素および/または特徴は、本明細書において明らかであるか暗に意味されるかのいずれであろうと、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々の方法において組み合され得ることが理解されるべきである。すなわち、本願において、態様は、記載または図示される明確かつ簡潔な適用を可能にする方法で記載されかつ示されるが、態様は本発明の技術および本発明(1つまたは複数)から別れることなく、種々に組み合され得るかまたは分離され得ることが意図され理解される。例えば、本明細書に記載されかつ示される全ての特徴は、本明細書に記載され示される発明(1つまたは複数)の全局面に適用可能であり得ることが理解される。
【0052】
II. スーパー抗原コンジュゲート
A. スーパー抗原
スーパー抗原は、例えばピコモル濃度でTリンパ球を活性化し得る細菌性タンパク質、ウイルスタンパク質およびヒトの作り変えられたタンパク質である。スーパー抗原はまた、Tリンパ球(T細胞)の大きなサブセットを活性化し得る。スーパー抗原は、加工されることなく主要組織適合性複合体I(MHCI)に結合し得、特に、従来のペプチド結合部位における多形性のほとんどを回避して、MHCクラスII分子上の抗原結合溝の外側の保存された領域に結合し得る。スーパー抗原はまた、T細胞受容体の超可変ループに結合するよりもむしろ、T細胞受容体(TCR)のVβ鎖に結合し得る。細菌性スーパー抗原の例としては、限定されないが、ブドウ球菌エンテロトキシン(SE)、化膿連鎖球菌外毒素(SPE)、黄色ブドウ球菌トキシックショック症候群毒素(TSST-1)、連鎖球菌マイトジェン外毒素(SME)、連鎖球菌スーパー抗原(SSA)、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEB)およびブドウ球菌エンテロトキシンE(SEE)が挙げられる。
【0053】
多くのスーパー抗原をコードするポリヌクレオチド配列が単離およびクローン化されており、これらまたは修飾された(再度作り変えられた)ポリヌクレオチド配列から発現されるスーパー抗原は、抗癌療法に使用されている(ANYARA(登録商標)、下記参照)。これらのポリヌクレオチド配列により発現されるスーパー抗原は、野生型スーパー抗原、修飾されたスーパー抗原、または野生型もしくは修飾されたスーパー抗原コンジュゲート、または標的化部分と融合されたものであり得る。スーパー抗原は、ヒトなどの哺乳動物に、直接、例えば注射により投与され得るか、または例えば体外での患者の血液のスーパー抗原への暴露、もしくは例えばスーパー抗原をコードする遺伝子を治療対象の哺乳動物内に配置して(例えば公知の遺伝子治療法およびベクター、例えば該遺伝子を含み活発現し得る細胞を介して)哺乳動物内で該遺伝子を発現させることにより送達され得る。
【0054】
スーパー抗原およびそれらの哺乳動物への投与は、以下の米国特許および特許出願:米国特許5,858,363、6,197,299、6,514,498、6,713,284、6,692,746、6,632,640、6,632,441、6,447,777、6,399,332、6,340,461、6,338,845、6,251,385、6,221,351、6,180,097、6,126,945、6,042,837、6,713,284、6,632,640、6,632,441、5,859,207、5,728,388、5,545,716、5,519,114、6,926,694、7,125,554、7,226,595、7,226,601、7,094,603、7,087,235、6,835,818、7,198,398、6,774,218、6,913,755、6,969,616および6,713,284、米国特許出願2003/0157113、2003/0124142、2002/0177551、2002/0141981、2002/0115190および2002/0051765、ならびにPCT国際出願番号WO/03/094846に記載される。
【0055】
B. 修飾されるスーパー抗原
本発明の範囲内で、スーパー抗原は、スーパー抗原がTリンパ球を刺激する能力を維持または増強し、例えばその血清反応性もしくは免疫原性などのスーパー抗原の他の局面を改変し得る修飾を含む種々の方法で作り変えられ得る。修飾されたスーパー抗原としては、スーパー抗原活性(すなわち、Tリンパ球のサブセットを活性化する能力)を有する合成分子が挙げられる。
【0056】
スーパー抗原の生物学的利用性または活性、すなわち腫瘍細胞の細胞傷害性を生じるようなT細胞応答の誘導の目に見えるほどの消失を有さずに、スーパー抗原をコードするポリヌクレオチド配列に対して種々の変化がなされ得ることが企図される。さらに、MHCクラスII分子に対するスーパー抗原の親和性は、スーパー抗原の細胞傷害性に対する効果を最小にすることにより減少され得る。例えば、これは、スーパー抗原がMHCクラスII抗原に結合するその野生型の能力を保持する場合(クラスII発現細胞、例えば免疫系細胞が、スーパー抗原への応答によっても影響を受け得る場合など)に起こり得る毒性を低減することを補助し得る。
【0057】
合成スーパー抗原を作製することを含むスーパー抗原(例えばポリヌクレオチドおよびポリペプチド)を修飾するための技術は当該技術分野で周知であり、例えばPCR突然変異誘発、アラニンスキャン突然変異誘発および部位特異的突然変異誘発が挙げられる(米国特許5,220,007;5,284,760;5,354,670;5,366,878;5,389,514;5,635,377および5,789,166参照)。
【0058】
いくつかの態様において、スーパー抗原は、参照野生型スーパー抗原と比較してその血清反応性が低減されるように修飾され得るが、T細胞を活性化するその能力は、野生型と比較して保持されるかまたは増強される。かかる修飾されたスーパー抗原を作製するための1つの技術としては、1つのスーパー抗原由来の特定の領域中の特定のアミノ酸を別のものに置換することが挙げられる。これは、SEA、SEEおよびSEDを含むが限定されない多くのスーパー抗原が特定の機能に関連する特定の領域において相同性を共有しているために可能である(Marrack and Kappler (1990) SCIENCE 248(4959): 1066;異なる野生型および作り変えられたスーパー抗原の間の相同性の領域を示す
図2も参照)。例えば本発明の特定の態様において、所望のT細胞活性化誘導応答を有するが、望ましくない高い血清反応性を有さないスーパー抗原は、得られるスーパー抗原がそのT細胞活性化能力を保持するが、低減された血清反応性を有するように修飾される。
【0059】
ヒトの血清は通常スーパー抗原に対して抗体の種々の力価を有することが当業者に公知であり理解される。ブドウ球菌スーパー抗原について、例えば、相対的な力価はTSST-1>SEB>SEC-1>SE3>SEC2>SEA>SED>SEEである。結果的に、例えばSEE(ブドウ球菌エンテロトキシンE)の血清反応性は、例えばSEA(ブドウ球菌エンテロトキシンA)のものよりも低い。このデータに基づいて、当業者は、例えばSEB(ブドウ球菌エンテロトキシンB)などの高力価スーパー抗原に変えてSEEなどの低力価スーパー抗原を優先的に投与し得る。しかしながら、発見されているように、異なるスーパー抗原は、互いに異なるT細胞活性化特性を有し、野生型スーパー抗原について、最良のT細胞活性化スーパー抗原は、しばしば望ましくない高い血清反応性を有する。
【0060】
これらの相対的な力価はしばしば、中和抗体による問題などの血清反応性による潜在的な問題に対応する。したがって、SEAまたはSEEなどの低力価スーパー抗原の使用は、非経口的に投与されたスーパー抗原の血清反応性を低減または回避することに有用であり得る。低力価スーパー抗原は、例えば一般的な集団における典型的な抗スーパー抗原抗体により測定した場合に低い血清反応性を有する。いくつかの例において、低力価スーパー抗原は低い免疫原性を有し得る。かかる低力価スーパー抗原は、本明細書に記載されるように、その低力価を維持するように修飾され得る。
【0061】
望ましいT細胞活性化特性および低減された血清反応性、ならびにいくつかの例においてはさらに低減された免疫原性の両方を有するスーパー抗原を作製するために、スーパー抗原を修飾するためのアプローチが使用され得る。スーパー抗原の間の相同性の特定の領域が血清反応性に関連する場合、所望のT細胞活性化および所望の血清反応および/または免疫原性を有する組み換えスーパー抗原を作り変えることが可能である。さらに、スーパー抗原またはブドウ球菌エンテロトキシンのタンパク質配列および免疫学的交差反応性は、2つの関連のある群に分けられる。1つの群はSEA、SEEおよびSEDからなる。第2の群はSPEA、SECおよびSEBである。したがって、高力価またはブドウ球菌エンテロトキシンに対する内因性抗体を有する交差反応性を減少または排除するために低力価スーパー抗原を選択することが可能である。
【0062】
血清反応性において役割を果たすと考えられるスーパー抗原中の領域としては、例えばアミノ酸残基20、21、22、23、24、25、26および27を含む領域A;アミノ酸残基34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48および49を含む領域B;アミノ酸残基74、75、76、77、78、79、80、81、82、83および84を含む領域C;アミノ酸残基187、188、189および190を含む領域D;ならびにアミノ酸残基217、218、219、220、221、222、223、224、225、226および227を含む領域Eが挙げられる(米国特許7,125,554および本明細書中の
図2参照)。したがって、改変された血清反応性を有するスーパー抗原を作製するために、例えばアミノ酸置換を使用してこれらの領域を突然変異できるようにすることが企図される。
【0063】
上述のスーパー抗原のためのポリペプチドまたはアミノ酸配列は、任意の配列データバンク、例えばタンパク質データバンクおよび/またはGenBankから得られ得る。例示的なGenBank受託番号としては、限定されないが、SEEはP12993;SEAはP013163;SEBはP01552;SEC1はP01553;SEDはP20723;およびSHEはAAA19777である。
【0064】
本発明の特定の態様において、野生型SEE配列(配列番号:1)または野生型SEA配列(配列番号:2)は、同定された領域A~Eのいずれかのアミノ酸(
図2参照)を他のアミノ酸で置換するように修飾され得る。かかる置換は、例えばK79、K81、K83およびD227またはK79、K81、K83、K84およびD227、または例えばK79E、K81E、K83SおよびD227SまたはK79E、K81E、K83S、K84SおよびD227Aを含む。特定の態様において、該スーパー抗原はSEA/E-120(配列番号:3;米国特許7,125,554も参照)またはSEA
D227A (配列番号:4;米国特許7,226,601も参照)である。
【0065】
1. 修飾されるポリヌクレオチドおよびポリペプチド
天然に存在するスーパー抗原または参照スーパー抗原をコードするポリヌクレオチドの生物学的な機能同等物は、異なる配列を含み、同時に天然に存在するスーパー抗原または参照スーパー抗原をコードする能力を保持するように作り変えられたポリヌクレオチドを含み得る。これは、同じアミノ酸をコードする遺伝子コードの縮重、すなわち複数のコドンの存在のために達成され得る。一例において、ポリヌクレオチドがタンパク質をコードする能力を乱さずに、ポリヌクレオチドに制限酵素認識配列を導入することが可能である。他のポリヌクレオチド配列は、参照スーパー抗原とは異なるが、参照スーパー抗原に対して機能的には少なくとも1つの生物学的特性または活性において実質的に同等である(例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%の生物学的特性または活性、例えば限定されずに腫瘍細胞の細胞傷害性を生じるT細胞応答を誘導する能力)スーパー抗原をコードし得る。
【0066】
別の例において、ポリヌクレオチドは、より大きな変化を含み得る場合であっても参照スーパー抗原と機能的に同等なスーパー抗原であり得る(をコードし得る)。特定のアミノ酸は、例えば抗体の抗原結合領域、基質分子上の結合部位、受容体等の構造との相互作用性結合能力の目に見えるほどの消失を有することなく、タンパク質構造における他のアミノ酸について置換され得る。さらに、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の生物学的活性を乱さずに、結果的に構造的な変化はしばしばタンパク質がその設計された機能を実行する能力に影響を及ぼすものではない。したがって、本発明の目標を依然として満足しながらも、本明細書に開示される遺伝子およびタンパク質の配列において種々の変化がなされ得ることが企図される。
【0067】
アミノ酸置換は、アミノ酸側鎖の置換の相対的な類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、大きさ等の利点を得るように設計され得る。アミノ酸側鎖の置換の大きさ、形状および/または種類の分析により、アルギニン、リジンおよび/またはヒスチジンは全て正の電荷を有する残基であること;アラニン、グリシンおよび/またはセリンは全て同様の大きさであること;および/またはフェニルアラニン、トリプトファンおよび/またはチロシンは全て一般的に同様の形状を有することが明らかになる。そのため、これらの考察に基づいて、アルギニン、リジンおよび/またはヒスチジン;アラニン、グリシンおよび/またはセリン;および/またはフェニルアラニン、トリプトファンおよび/またはチロシンは、本明細書において、生物学的に機能的な同等物であると定義される。また、天然には存在しないアミノ酸を導入することが可能であり得る。他の天然に存在するアミノ酸および天然には存在しないアミノ酸によるアミノ酸置換を行うためのアプローチは、米国特許7,763,253に記載される。
【0068】
機能的同等物に関して、「生物学的に機能的な同等」タンパク質および/またはポリヌクレオチドの定義において、同等な生物学的活性の許容され得るレベルを有する分子を保持しながら、分子の定義される部分においてなされ得る限定された数の変化があるという概念が暗に示されることが理解される。したがって、生物学的に機能的な同等物は、選択されたアミノ酸(またはコドン)が生物学的な機能に実質的に影響を受けることなく置換され得るタンパク質(およびポリヌクレオチド)であると考えられる。機能的な活性としては、腫瘍細胞の細胞傷害性を生じるためのT細胞応答の誘導が挙げられる。
【0069】
また、修飾されるスーパー抗原は、異なるがこの場合においては関連のあるポリペプチドを使用してキメラ分子の生成を含む「ドメイン交換(domain swapping)」により種々のタンパク質の相同な領域を置換することにより生成され得ることが企図される。種々のスーパー抗原タンパク質を比較してこれらの分子の機能的に関連のある領域を同定することにより(例えば
図2参照)、スーパー抗原機能に対するこれらの領域の重要性(criticality)が決定されるようにこれらの分子の関連のあるドメインを交換することが可能になる。これらの分子は、これらの「キメラ」が可能な限り同じ機能を提供しながら天然の分子と区別し得ることにおいてさらなる価値を有し得る。
【0070】
特定の態様において、スーパー抗原は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4からなる群より選択される参照スーパー抗原の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、スーパー抗原は任意に、参照スーパー抗原の生物学的活性または特性の少なくとも50%、60%、70% 80%、90%、95%、98%、99%または100%を保持する。
【0071】
特定の態様において、スーパー抗原は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3および配列番号:4からなる群より選択されるスーパー抗原をコードする核酸に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一である核酸によりコードされるアミノ酸配列を含み、ここで、スーパー抗原は任意に、参照スーパー抗原の生物学的活性または特性の少なくとも50%、60%、70% 80%、90%、95%、98%、99%または100%を保持する。
【0072】
配列同一性は、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign (DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当該技術分野の技術内にある種々の方法において決定され得る。プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastx (Karlin et al., (1990) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 87:2264-2268; Altschul, (1993) J. MOL. EVOL. 36, 290-300; Altschul et al., (1997) NUCLEIC ACIDS RES. 25:3389-3402、参照により援用される)により使用されるアルゴリズムを使用したBLAST (Basic Local Alignment Search Tool) 分析を、配列類似性の検索のために調整する。配列データベースの検索における基本的な問題の議論のために、参照により十分に援用されるAltschul et al., (1994) NATURE GENETICS 6:119-129を参照。比較される完全長の配列にわたり最大の整列を達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む整列を測定するための適切なパラメータを当業者は決定し得る。ヒストグラム(histogram)、デスクリプション(descriptions)、アライメント(alignments)、予測(すなわち、データベース配列に対する適合を報告するための統計的有意差の閾値)、カットオフ、マトリックスおよびフィルターのための検索パラメータは、デフォルト設定である。blastp、blastx、tblastnおよびtblastxに使用されるデフォルトスコアリングマトリックス(default scoring matrix)はBLOSUM62マトリックスである(Henikoff et al., (1992) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 89:10915-10919、参照により十分に援用される)。4つのblastnパラメータを以下のように調整し得る:Q=10 (ギャップ生成ペナルティ);R=10 (ギャップ伸長ペナルティ);wink=1 (クエリに沿ったwink.sup.th位置ごとの生成ワードヒット);およびgapw=16 (ギャップアライメントが生成されるウィンドウ幅を設定)。同等のBlastpパラメータ設定はQ=9;R=2;wink=1;およびgapw=32であり得る。検索は、 NCBI (National Center for Biotechnology Information) BLAST Advanced Optionパラメータ(例えば:-G,ギャップを解放するコスト[Integer]:デフォルト=ヌクレオチドについて5/タンパク質について11; -E, ギャップを伸長するコスト[整数]: デフォルト=ヌクレオチドについて2/タンパク質について1; -q, ヌクレオチドミスマッチのためのペナルティ[整数]: デフォルト= -3; -r, ヌクレオチド適合についての報酬[整数]: デフォルト= 1; -e, 予測値[実数]: デフォルト= 10; -W, ワードサイズ[整数]: デフォルト=ヌクレオチドについて11/ megablastについて28/タンパク質について3; -y, ビットにおけるblast伸長についてドロップオフ(X): デフォルト= blastnについて20/その他について7; -X, ギャップ整列についてXドロップオフ値(インビット): デフォルト=全てのプログラムについて15, blastnに適用可能ではない;および-Z, ギャップ整列について最終Xドロップオフ(インビット): blastnについて50, その他について25)を使用しても実行され得る。ペアワイズ(pairwise)タンパク質整列についてのClustalWも使用され得る(デフォルトパラメータは、例えばBlosum62マトリックスおよびギャップ解放ペナルティ=10およびギャップ伸長ペナルティ=0.1を含み得る)。GCGパッケージバージョン10.0において利用可能な配列の間の最高の適合比較は、DNAパラメータGAP=50 (ギャップ生成ペナルティ)およびLEN=3 (ギャップ伸長ペナルティ)を使用し、タンパク質比較における同等の設定はGAP=8およびLEN=2である。
【0073】
C. 標的化されるスーパー抗原
特異性を高めるために、スーパー抗原は好ましくは、標的化部分にコンジュゲートされて、癌細胞により優先的に発現される抗原、例えば5T4などの細胞表面抗原に結合する標的化されたスーパー抗原コンジュゲートを生成する。標的化部分は、スーパー抗原を癌性細胞、例えば癌性細胞の表面に結合させるために使用され得るビヒクルである。標的化されたスーパー抗原コンジュゲートは、多くのTリンパ球を活性化する能力を保持するべきである。例えば、標的化されたスーパー抗原コンジュゲートは、多くのT細胞を活性化して、T細胞を、標的化部分に結合した腫瘍関連抗原を含む組織に誘導するべきである。かかる状況において、特異的な標的細胞が優先的に殺傷され、身体の残りは比較的無傷で残される。増殖抑制性化学療法薬などの非特異的な抗癌剤は非特異的であり、治療対象である腫瘍とは関連の無い多くの細胞を殺傷するので、この型の治療は望ましい。例えば、標的化されたスーパー抗原コンジュゲートを用いた試験により、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)による腫瘍組織への浸潤を伴う炎症は、標的化されたスーパー抗原の第1の注射に応答して急速に増加することが示されている(Dohlsten et al. (1995) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 92:9791-9795)。CTLの腫瘍への浸潤に伴うこの炎症は、標的化されたスーパー抗原の抗腫瘍療法の主要なエフェクターの1つである。
【0074】
腫瘍標的化スーパー抗原は、癌に対する免疫療法を提示し、スーパー抗原にコンジュゲートされた標的化部分を含む治療的融合タンパク質である(Dohlsten et al. (1991) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 88:9287-9291; Dohlsten et al. (1994) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 91:8945-8949)。
【0075】
標的化部分は、原則として細胞分子、例えば細胞表面分子に結合し得、好ましくは疾患特異的分子である任意の構造であり得る。標的化部分が方向付けられる標的化された分子(例えば抗原)は通常、(a) スーパー抗原が結合するVβ鎖エピトープ、および(b) スーパー抗原が結合するMHCクラスIIエピトープとは異なる。標的化部分化は、抗体、例えばその抗原結合断片、可溶性T細胞受容体、成長因子、インターロイキン(例えばインターロイキン-2)、ホルモン等から選択され得る。
【0076】
特定の好ましい態様において、標的化部分は抗体(例えばFab、F(ab)2、Fv、一本鎖抗体等)である。抗体は、典型的に目的の任意の細胞表面抗原に対して産生され得るので、極端に用途が広く、有用な細胞特異的標的化部分である。細胞表面受容体、腫瘍関連抗原および白血球系特異的マーカー、例えばCD抗原に対してモノクローナル抗体が作製されている。抗体可変領域遺伝子は、当該技術分野において周知の方法によりハイブリドーマ細胞から容易に単離され得る。標的化部分を作製するために使用され得る例示的な腫瘍関連抗原としては、限定されないが、gp100、Melan-A/MART、MAGE-A、MAGE (黒色腫抗原E)、MAGE-3、MAGE-4、MAGEA3、チロシナーゼ、TRP2、NY-ESO-1、CEA (癌胎児抗原)、PSA、p53、Mammaglobin-A、Survivin、Muc1 (ムチン1)/DF3、メタロパンスチムリン(metallopanstimulin)-1 (MPS-1)、シトクロムP450アイソフォーム1B1、90K/Mac-2結合タンパク質、Ep-CAM (MK-1)、HSP-70、hTERT (TRT)、LEA、LAGE-1/CAMEL、TAGE-1、GAGE、5T4、gp70、SCP-1、c-myc、サイクリンB1、MDM2、p62、Koc、IMP1、RCAS1、TA90、OA1、CT-7、HOM-MEL-40/SSX-2、SSX-1、SSX-4、HOM-TES-14/SCP-1、HOM-TES-85、HDAC5、MBD2、TRIP4、NY--CO-45、KNSL6、HIP1R、Seb4D、KIAA1416、IMP1、90K/Mac-2結合タンパク質、MDM2、NY/ESOおよびLMNAが挙げられ得る。
【0077】
例示的な癌標的化抗体としては、限定されないが、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗5T4抗体、抗Ep-CAM抗体、抗Her-2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗CEA抗体、抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)抗体および抗IGF-1R抗体が挙げられ得る。スーパー抗原は、免疫学的に反応性の抗体断片、例えばC215Fab、5T4Fab (WO8907947参照)またはC242Fab (WO9301303参照)にコンジュゲートされ得ることが理解される。
【0078】
本発明において使用され得る腫瘍標的化スーパー抗原の例としては、C215Fab-SEA(配列番号:5)、5T4Fab-SEA
D227A(配列番号:6)および5T4Fab-SEA/E-120(配列番号:7、
図3参照)が挙げられる。
【0079】
好ましい態様において、好ましいコンジュゲートは、ナプツモマブ・エスタフェナトクス(Naptumomab estafenatox)/ANYARA(登録商標)として知られ、抗5T4抗体のFab断片とSEA/E-120スーパー抗原の融合タンパク質であるスーパー抗原コンジュゲートである。ANYARA(登録商標)は、作り変えられたブドウ球菌エンテロトキシンスーパー抗原(SEA/E-120)、およびマウスIgG1/κ抗体C242の定常領域配列に融合された修飾された5T4可変領域配列を含む標的化5T4 Fabを累積的に含む2つのタンパク質鎖を含む。第1のタンパク質鎖は、配列番号:7の残基1~458(配列番号:8も参照)を含み、配列番号:7の残基1~222に対応するキメラ5T4 Fab重鎖、および配列番号:7の残基223~225に対応するGGPトリペプチドリンカーを介して共有結合される配列番号:7の残基226~458に対応するSEA/E-120スーパー抗原を含む。第2の鎖は、配列番号:7の残基459~672(配列番号:9も参照)を含み、キメラ5T4 Fab軽鎖を含む。二本のタンパク質鎖は、Fab重鎖と軽鎖の間の非共有相互作用により一緒に維持される。配列番号:7の残基1~458は配列番号:8の残基1~458に対応し、配列番号:7の残基459~672は配列番号:9の残基1~214に対応する。ANYARA(登録商標)は、Fab重鎖とFab軽鎖の間の非共有相互作用により一緒に維持される配列番号:8および9のタンパク質を含む。ANYARA(登録商標)は、約10pMの濃度で癌細胞のT細胞媒介性の殺傷を誘導し、コンジュゲートのスーパー抗原構成成分は、ヒト抗体およびMHCクラスIIに対して低い結合を有するように作り変えられている。
【0080】
他の抗体に基づく標的化部分は、当該技術分野において公知であり、以下により詳細に記載される技術を使用して設計、修飾、発現および精製され得ることが企図される。
【0081】
別の種類の標的化部分は、可溶性T細胞受容体(TCR)を含む。可溶性TCRのいくつかの形態は、細胞外ドメインのみかまたは細胞外ドメインおよび細胞質ドメインのいずれかを含み得る。TCRの他の修飾はまた、膜貫通ドメインが欠失されおよび/またはTCRが膜結合ではないように作り変えられた可溶性TCRを産生するように構想され得、米国特許出願公開公報U.S. 2002/119149、U.S. 2002/0142389、U.S. 2003/0144474およびU.S. 2003/0175212、ならびに国際広報WO2003020763;WO9960120およびWO9960119に記載される。
【0082】
標的化部分は、組み換え技術またはスーパー抗原への標的化部分の化学的結合のいずれかを使用して、スーパー抗原にコンジュゲートされ得る。
【0083】
1. 組換えリンカー(融合タンパク質)
標的化部分に直接または間接的に連結(例えば、リンカーを含むアミノ酸を介する)されるスーパー抗原をコードする遺伝子が、従来の組み換えDNA技術を使用して生成および発現され得ることが企図される。例えば、修飾されたスーパー抗原のアミノ末端は標的化部分のカルボキシ末端に連結され得るか、またはその逆であり得る。抗体または標的化部分として機能し得る抗体断片について、軽鎖または重鎖のいずれかは、融合タンパク質を生成するために使用され得る。例えば、Fab断片について、修飾されたスーパー抗原のアミノ末端は、抗体重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)に連結され得る。いくつかの例において、修飾されたスーパー抗原は、VHおよびVLドメインのスーパー抗原への連結によりFab断片に連結され得る。代替的に、ペプチドリンカーを使用して、スーパー抗原と標的化部分を一緒に連結し得る。リンカーを使用する場合、リンカーは、好ましくはGln、Ser、Gly、Glu、Pro、HisおよびArgなどの親水性アミノ酸残基を含む。好ましいリンカーは、1~10アミノ酸残基、より具体的には3~7アミノ酸残基からなるペプチド架橋である。例示的なリンカーは、トリペプチド-GlyGlyPro-である。これらのアプローチは、ANYARA(登録商標)スーパー抗原コンジュゲートの設計および製造において成功裡に使用されている。
【0084】
2. 化学的連結
スーパー抗原が、化学的連結を介して標的化部分に連結され得ることも企図される。標的化部分へのスーパー抗原の化学的連結は、リンカー、例えばペプチドリンカーを必要とし得る。ペプチドリンカーは、好ましくは親水性であり、アミド、チオエーテル、ジスルフィド等から選択される1つ以上の反応性部分を示す(米国特許5,858,363、6,197,299および6,514,498参照)。化学的連結がホモまたはヘテロ二官能性架橋試薬を使用し得ることも企図される。スーパー抗原の標的化部分への化学的連結は、しばしば化合物中の多くの位置に存在する官能基(例えば、一級アミノ基またはカルボキシ基)を利用する。
【0085】
D. スーパー抗原およびスーパー抗原コンジュゲートの発現
組み換えDNA技術を使用する場合、スーパー抗原またはスーパー抗原-標的化部分コンジュゲートは、標準的な発現ベクターおよび発現系を使用して発現され得る。スーパー抗原をコードする核酸配列を含むように遺伝的に作り変えられた発現ベクターを宿主細胞に導入して(例えばトランスフェクトして)、スーパー抗原を産生する(例えばDohlsten et al. (1994), Forsberg et al. (1997) J. BIOL. CHEM. 272:12430-12436, Erlandsson et al. (2003) J. MOL. BIOL. 333:893-905およびWO2003002143参照)。
【0086】
宿主細胞は、例えば形質転換またはトランスフェクション技術により遺伝的に作り変えられて、核酸配列が組み込まれ、スーパー抗原が発現され得る。宿主細胞への核酸配列の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープ負荷(scrape loading)、弾道導入(ballistic introduction)、感染または他の方法により実行され得る。かかる方法は多くの標準的な実験マニュアル、例えばDavis et al. (1986) BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGYおよびSambrook, et al. (1989) MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載される。
【0087】
適切な宿主細胞の代表的な例としては、細菌細胞、例えば連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌、ストレプトミセス属および枯草菌;真菌細胞、例えば酵母細胞およびアスペルギルス属細胞;昆虫細胞、例えばショウジョウバエS2およびスポドプテラSf9細胞;動物細胞、例えばCHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293およびBowes黒色腫細胞が挙げられる。
【0088】
スーパー抗原についての産生系の例は、例えば米国特許6,962,694に見られる。
【0089】
E. タンパク質精製
スーパー抗原および/またはスーパー抗原-標的化部分コンジュゲートは、好ましくは使用前に精製されて、種々の精製プロトコルを使用して達成され得る。他のタンパク質からスーパー抗原またはスーパー抗原-標的化部分コンジュゲートが分離されて、部分的または完全な精製(または同質への精製)を達成するためにクロマトグラフィーおよび電気泳動技術を使用して目的のタンパク質はさらに精製され得る。純粋なペプチドの調製に特に適した分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー;アフィニティクロマトグラフィー;ポリアクリルアミドゲル電気泳動;等電点電気泳動である。用語「精製される」は、本明細書で使用される場合、他の構成成分から単離可能な組成物をいうことを意図し、ここで目的のマクロ分子(例えばタンパク質)は、その元の状態と比較して任意の程度にまで精製される。一般的に、用語「精製される」は、種々の他の構成成分を除去するために分画に供されるマクロ分子をいい、該マクロ分子は実質的にその生物学的活性を維持する。用語「実質的に精製される」は、目的のマクロ分子が、組成物の含量の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%以上の含有量からなるなどの、組成物の主要な構成成分を形成する組成物をいう。
【0090】
タンパク質の精製の程度を定量するための種々の方法は、当業者に公知であり、例えば活性画分の比活性の決定およびSDS-PAGE分析、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、または任意の他の分画技術による画分中の所定のタンパク質の量の評価が挙げられる。タンパク質精製における使用に適した種々の技術としては、例えば硫酸アンモニウム、PEG、抗体等による沈殿または熱変性、その後の遠心分離による沈殿;イオン交換、ゲルろ過、逆相、ハイドロキシアパタイト、アフィニティクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー工程;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;ならびにこれらおよび他の技術の組合せが挙げられる。種々の精製工程を実行する順序は変更され得ること、または特定の工程が省略され、さらに実質的に精製されたタンパク質もしくはペプチドの調製のための適切な方法が生じることが企図される。
【0091】
III. 免疫増強物質
免疫増強物質の効力は、免疫増強物質を、スーパー抗原および標的化部分を含むスーパー抗原コンジュゲートと一緒に、治療される被験体に投与することにより増強され得ることが企図される。例示的な免疫増強物質は、例えば、(a) T細胞シグナル伝達の活性化の刺激、(b) 癌性細胞とT細胞の間のT細胞抑制性シグナル伝達の抑制、(c) 非ヒトIgG1媒介性免疫応答経路、例えばヒトIgG4免疫グロブリン媒介性経路を介するT細胞の拡大、活性化および/または活性をもたらす抑制性シグナル伝達の抑制、(d) (a)および(b)の組合せ、(e) (a)および(c)の組合せ、(f) (b)および(c)の組合せ、ならびに(g) (a)、(b)および(c)の組合せをなし得る。
【0092】
特定の態様において、免疫増強物質はチェックポイント経路阻害剤である。いくつかのT細胞チェックポイント阻害剤経路、例えばPD-1免疫チェックポイント経路および細胞傷害性Tリンパ球抗原-4 (CTLA-4)免疫チェックポイント経路が今日までに同定されている。
【0093】
Sundstedt et al. (Sundstedt et al. (2012) J. IMMUNOTHER. 35:344-35)には、マウスB16黒色腫モデルにおける腫瘍標的化スーパー抗原(TTS)と抗CTLA4 IgG1抗体の組合せは、個々の構成成分よりも活性が高いことが示された。この試験において、スーパー抗原はCD4+およびCD8+ T細胞の両方の浸潤を引き起こしたが、多くの制御性T細胞(Treg)が腫瘍微小環境に蓄積した。これらの抑制性制御細胞の上方制御は、TTS療法の直接的な結果であると考えられ、有効性を制限し得る。筆者らは、TTSによるCTLA-4の過剰な上方制御により、抗CTLA-4抗体の効果が主にTreg集団上になる効果が誘導される可能性が高かったことに注意した。理論に拘束されることを望まないが、CTLA-4 IgG1抗体は、Treg集団に対し細胞傷害性であり、TTSと組み合わせて使用した場合、その抗癌活性の中心になることが企図される。対照的に、本発明の特定の態様は、Tregを枯渇させることが知られていない抗体、例えば非CTL-4チェックポイントで誘導されるIgG4抗体(例えば、抗PD-1 IgG4阻害剤)を使用するので、その相乗効果が他の作用機構によって媒介される新規の組合せが提示される。
【0094】
PD-1は、過剰に活性な免疫応答を防ぐために適切な時点でT細胞活性を阻害またはそうでなければ調節する免疫系チェックポイントとして機能するT細胞の表面に存在する受容体である。しかしながら、癌細胞は、T細胞の表面上でPD-1と相互作用してT細胞活性を阻害または調節するリガンド、例えばPD-L1、PD-L2等を発現することによりこのチェックポイントを利用し得る。このアプローチを使用して、癌は、T細胞媒介性免疫応答を回避し得る。
【0095】
CTLA-4経路において、T細胞上のCTLA-4とそのリガンド(例えば、CD80、B7-1およびCD86としても公知)の抗原提示細胞(癌細胞よりもむしろ)の表面上の相互作用は、T細胞阻害をもたらす。結果的に、T細胞活性化または活性を阻害するリガンド(例えばCD80またはCD86)は、癌細胞よりもむしろ抗原提示細胞(免疫系における重要な細胞型)により提供される。CTLA-4およびPD-1の結合の両方はT細胞に対して下方制御のタイミングに負の効果を有するが、原因的なシグナル伝達機構およびこれら2つの免疫チェックポイントによる免疫阻害の解剖学的な位置は異なる(American Journal of Clinical Oncology. Volume 39, Number 1, February 2016)。T細胞活性化の初期の誘導段階に制限されるCTLA-4とは異なり、PD-1はエフェクター段階中かなり後に機能する(Keir et al. (2008) ANNU. REV IMMUNOL., 26:677-704)。結果的に、PD-1チェックポイント経路に媒介されるT細胞阻害は、CTLA-4チェックポイント経路に媒介されるT細胞阻害とは大きく異なる。
【0096】
特定の態様において、免疫増強物質は、癌性細胞により発現される抗原が、癌性細胞とT細胞の間のT細胞抑制性シグナル伝達を抑制することを(完全にまたは部分的に)防ぐ。一態様において、かかる免疫増強物質は、チェックポイント阻害剤、例えばPD-1阻害剤である。かかる免疫増強物質の例としては、例えば
抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体および抗PD-L2抗体が挙げられる。したがって、一態様において、スーパー抗原コンジュゲートは、(1) PD-1リガンド(例えばPD-L1またはPD-L2)に結合してPD-1リガンドがT細胞上のその同起源PD-1に結合することを防ぐ分子(例えば抗体または小分子)、および/または(2) T細胞上のPD-1に結合して、目的の癌細胞により発現されるPD-リガンドの結合を防ぐ分子(例えば抗体または小分子)を含み得るPD-1系免疫増強物質と共に投与される。
【0097】
さらに、特定の態様において、免疫増強物質は、癌性細胞により発現される抗原が、例えばADCC経路を介さずにヒトIgG4(非ヒトIgG1)媒介性免疫応答経路を介するT細胞の拡大、活性化および/または活性を阻害することを、(完全にまたは部分的に)防ぐ。スーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質により増強される免疫応答はいくつかのADCC活性を含み得るが、免疫応答の主な構成成分(1つまたは複数)は、ADCC活性を含まないことが企図される。対照的に、免疫療法において現在使用されている抗体のいくつか、例えばイピリムマブ(抗CTLA-4 IgG1モノクローナル抗体)は、エフェクター細胞上のFc受容体によるFcドメインを介したシグナル伝達を通じて、ADCCを介して標的化された細胞を殺傷し得る。多くの他の治療抗体と同様に、イピリムマブはヒトIgG1免疫グロブリンとして設計され、イピリムマブは、CTLA-4とCD80またはCD86との間の相互作用を阻害するが、その作用機構は高レベルの細胞表面CTLA-4を発現する腫瘍浸潤性制御性T細胞のADCC枯渇を含むと考えられる。(Mahoney et al. (2015) NATURE REVIEWS, DRUG DISCOVERY 14: 561-584)。CTLA-4は、抗CTLA-4 IgG1抗体を投与した場合にT細胞活性化をネガティブに制御するように機能するT細胞のサブセット(制御性T細胞)上で高度に発現されるので、制御性T細胞の数は、ADCCを介して低減される。
【0098】
特定の態様において、その作用の形態が主に、T細胞集団を有意に枯渇させることなく(例えばT細胞集団の拡大を許容する)、癌性細胞とT細胞の間の抑制性シグナル伝達を阻害することである免疫増強物質の使用が望ましい。これを達成するために、ヒトIgG4アイソタイプを有するかまたはそれに基づく抗体、例えば抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体または抗PD-L2抗体を使用することが望ましい。ヒトIgG4アイソタイプは、ヒトIgG1アイソタイプと比較してほとんどまたは全くADCC活性を引き起こさないので(Mahoney et al. (2015)上述)、特定の条件下で好ましい。したがって、特定の態様において、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2は、ヒトIgG4アイソタイプを有するかまたはそれに基づく。結果的に、特に抗体が異なる抗原、例えばCTLA-4、例えば抗CTLA-4ヒトIgG1免疫グロブリンに指向される場合に、異なるアイソタイプ、例えばIgG1アイソタイプを有する抗体の活性に基づいて、ヒトIgG4アイソタイプを有する抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体または抗PD-L2抗体の潜在的な治療活性を推定することは可能ではない。さらに、CTLA-4およびPD-1は、独立した過剰ではない作用機構を有する2つのT細胞抑制性受容体を提示する。それらが共有するT細胞活性化を阻害する能力に関わらず、2つのタンパク質は、特有の構造を有し、癌細胞に対して非常に異なる免疫応答をもたらす。
【0099】
例示的なPD-1/PD-L1に基づく免疫増強物質は、米国特許8,728,474、8,952,136および9,073,994、ならびに欧州特許1537878B1に記載され、抗PD-1抗体が挙げられる。例示的な抗PD-1抗体としては、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb Co.)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、Merck & Co.)およびアテゾリズマブ(Atezolizumab) (前述MPDL3280A)、MEDI4736、アベルマブおよびPDR001が挙げられる。
【0100】
タンパク質に基づく免疫増強物質は、例えば本明細書に上述のような当業者に公知の技術を使用して設計、発現および精製され得る。抗PD-1抗体は、米国特許8,728,474、8,952,136および9,073,994に記載されるように、設計、発現、精製、製剤化および投与され得る。
【0101】
他の免疫増強物質(例えば、抗体および種々の小分子)は、以下のリガンド:B7-H3 (特に前立腺、腎細胞、非小細胞肺、膵臓、胃、卵巣、結腸直腸の細胞に見られる);B7-H4 (特に乳房、腎細胞、卵巣、膵臓、黒色腫の細胞に見られる);HHLA2 (特に、乳房、肺、甲状腺、黒色腫、膵臓、卵巣、肝臓、膀胱、結腸、前立腺、腎臓の細胞に見られる);ガレクチン(特に非小細胞肺、結腸直腸、および胃の細胞に見られる);CD30 (特にホジキンリンパ腫、大細胞リンパ腫の細胞に見られる);CD70 (特に非ホジキンリンパ腫、腎細胞に見られる);ICOSL (特にグリア芽細胞腫、黒色腫の細胞に見られる);およびCD155 (特に腎臓、前立腺、膵臓グリア芽細胞腫の細胞に見られる)の1つ以上を含むシグナル伝達経路を標的化し得る。同様に、使用され得る他の潜在的な免疫増強物質としては、例えば4-1BB (CD137)アゴニスト(例えば完全ヒトIgG4抗CD137抗体ウレルマブ/BMS-663513)、LAG3阻害剤(例えばヒト化IgG4抗LAG3抗体LAG525、Novartis);IDO阻害剤(例えば小分子INCB024360、Incyte Corporation)、TGFβ阻害剤(例えば小分子ガルニセルチブ、Eli Lilly)、ならびにT細胞および/または腫瘍細胞上に見られ、かつADCCを介さないアゴニスト/アンタゴニスト相互作用に基づく医薬介入に従順な他の受容体またはリガンドが挙げられる。
【0102】
A. 抗体産生
抗体を産生するための方法は当該技術分野で公知である。例えば、CDRおよび目的の抗体の可変領域の配列、例えば米国特許8,952,136において提供される抗体配列ならびに米国特許9,073,994に記載されるハイブリドーマ寄託を使用して、軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードするDNA分子を化学的に合成し得る。合成DNA分子を、例えば定常領域コード配列および発現制御配列を含む適切なヌクレオチド配列に連結して、所望の抗体をコードする従来の遺伝子発現構築物を作製する。所定の遺伝子構築物の産生は、当業者の通常の業務の範囲内である。代替的に、本明細書において提供される配列は、その配列が本明細書に提供される配列情報またはハイブリドーマ細胞中のマウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に関する先行技術の配列情報に基づく合成核酸プローブを使用して、従来のハイブリダイゼーション技術またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりハイブリドーマからクローニングされ得る。
【0103】
本明細書に開示される抗体をコードする核酸を発現ベクターに組込み(連結し)得、該発現ベクターを従来のトランスフェクションまたは形質転換技術により宿主細胞に導入し得る。例示的な宿主細胞は、大腸菌、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、新生児ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)、およびそうでなければIgGタンパク質を産生しない骨髄腫細胞である。形質転換された宿主細胞は、宿主細胞が免疫グロブリン軽鎖および/または重鎖可変領域をコードする遺伝子を発現する条件下で成長され得る。
【0104】
具体的な発現および精製の条件は、使用される発現系により異なる。例えば、遺伝子が大腸菌内で発現される場合、作り変えられた遺伝子を、適切な細菌性プロモーター、例えばTrpまたはTacおよび原核生物シグナル配列の下流に配置することにより発現ベクター中に最初にクローニングする。発現され、分泌されたタンパク質は、屈折体(refractile)または封入体中に蓄積し、フレンチプレスまたは超音波処理による細胞の破砕後に回収され得る。次いで屈折体を可溶化して、当該技術分野で公知の方法によりタンパク質を再度折り畳み、切断する。
【0105】
本明細書に開示される抗体をコードするDNA構築物が真核生物宿主細胞、例えばCHO細胞中で発現される場合、該構築物は最初に適切な真核生物プロモーター、分泌シグナル、IgGエンハンサーおよび種々のイントロンを含む発現ベクターに挿入される。この発現ベクターは任意に、定常領域の全てまたは一部をコードし、重鎖および/または軽鎖の全体または一部の発現を可能にする配列を含む。いくつかの態様において、単一の発現ベクターは、発現される重鎖および軽鎖可変領域の両方を含む。
【0106】
遺伝子構築物は従来の技術を使用して真核生物宿主細胞に導入され得る。宿主細胞は、VLまたはVH断片、VL-VHヘテロダイマー、VH-VLまたはVL-VH一本鎖ポリペプチド、完全免疫グロブリン重鎖または軽鎖、あるいはそれらの一部を発現し、それらのそれぞれは、別の機能(例えば細胞傷害性)を有する部分に付加され得る。いくつかの態様において、宿主細胞は、重鎖(例えば重鎖可変領域)または軽鎖(例えば軽鎖可変領域)の全体または一部を発現するポリペプチドを発現する単一のベクターによりトランスフェクトされる。他の態様において、宿主細胞は、(a)重鎖可変領域を含むポリペプチドおよび軽鎖可変領域を含むポリペプチド、または(b)全体免疫グロブリン重鎖および全体免疫グロブリン軽鎖をコードする単一ベクターによりトランスフェクトされる。さらに他の態様において、宿主細胞は、1つより多くの発現ベクター(例えば重鎖もしくは重鎖可変領域の全体または一部を含むポリペプチドを発現する1つの発現ベクター、および軽鎖もしくは軽鎖可変領域の全体または一部を含むポリペプチドを発現する別の発現ベクター)により共トランスフェクトされる。
【0107】
免疫グロブリン重鎖可変領域を含むポリペプチドまたは免疫グロブリン軽鎖可変領域を含むポリペプチドを産生する方法は、発現ベクターによりトランスフェクトされた宿主細胞を、免疫グロブリン重鎖可変領域を含むポリペプチドまたは免疫グロブリン軽鎖可変領域を含むポリペプチドの発現を可能にする条件下で成長させる(培養する)工程を含み得る。次いで、重鎖可変領域を含むポリペプチドまたは軽鎖可変領域を含むポリペプチドを、当該技術分野で周知の技術、例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)などのアフィニティタグおよびヒスチジンタグを使用して精製し得る。
【0108】
標的タンパク質、例えばPD-1、PD-L1もしくはPD-L2に結合するモノクローナル抗体、または該抗体の抗原結合断片を産生する方法は、(a)完全もしくは部分的免疫グロブリン重鎖をコードする発現ベクターおよび完全もしくは部分免疫グロブリン軽鎖をコードする別の発現ベクター;または(b)両方の鎖(例えば完全または部分鎖)をコードする単一の発現ベクターによりトランスフェクトされた宿主細胞を、両方の鎖の発現を可能にする条件下で成長させる工程を含み得る。完全抗体(または抗原結合断片)は、当該技術分野で周知の技術、例えばプロテインA、プロテインG、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)などのアフィニティタグおよびヒスチジンタグを使用して回収および精製し得る。単一の発現ベクターまたは二つの別々の発現ベクターから重鎖および軽鎖を発現させることは当業者の範囲内にある。
【0109】
B. 抗体修飾
抗体および抗体断片の抗原性を低減または排除するための方法は当該技術分野で公知である。抗体をヒトに投与する場合、抗体は、ヒトにおける抗原性を低減または排除するために、好ましくは「ヒト化」される。好ましくは、ヒト化抗体は、抗原に対して、それが由来する非ヒト化マウス抗体と同じまたは実質的に同じ親和性を有する。
【0110】
1つのヒト化のアプローチにおいて、マウス免疫グロブリン定常領域がヒト免疫グロブリン定常領域で置き換えられたキメラタンパク質が生成される。例えば、Morrison et al. (1984) PROC. NAT. ACAD. SCI. 81:6851-6855, Neuberger et al. (1984) NATURE 312:604-608;米国特許6,893,625 (Robinson);5,500,362 (Robinson);および4,816,567 (Cabilly)参照。
【0111】
CDR移植として知られるアプローチにおいて、軽鎖および重鎖可変領域のCDRを別の種由来のフレームワークに移植する。例えばマウスCDRをヒトFRに移植し得る。いくつかの態様において、抗ErbB3抗体の軽鎖および重鎖可変領域のCDRは、ヒトFRまたはコンセンサスヒトFRに移植される。コンセンサスヒトFRを生成するために、いくつかのヒト重鎖または軽鎖のアミノ酸配列に由来のFRを整列し、コンセンサスアミノ酸配列を同定する。CDR移植は、米国特許7,022,500 (Queen);6,982,321 (Winter);6,180,370 (Queen);6,054,297 (Carter);5,693,762 (Queen);5,859,205 (Adair);5,693,761 (Queen);5,565,332 (Hoogenboom);5,585,089 (Queen);5,530,101 (Queen);Jones et al. (1986) NATURE 321: 522-525;Riechmann et al. (1988) NATURE 332: 323-327;Verhoeyen et al. (1988) SCIENCE 239: 1534-1536;およびWinter (1998) FEBS LETT 430: 92-94に記載される。
【0112】
「SUPERHUMANIZATIONTM」と称されるアプローチにおいて、ヒトCDRとヒト化されるマウス抗体のCDRとの構造類似性に基づいて、ヒトCDR配列をヒト生殖系遺伝子から選択する。例えば米国特許6,881,557 (Foote);およびTan et al. (2002) J. IMMUNOL. 169:1119-1125参照。
【0113】
免疫原性を低減するための他の方法としては、「作り直し(reshaping)」、「過キメラ化(hyperchimerization)」および「張り合わせ(veneering)/表面交換(resurfacing)」が挙げられる。例えばVaswami et al. (1998) ANNALS OF ALLERGY, ASTHMA, & IMMUNOL. 81:105;Roguska et al. (1996) PROT. ENGINEER 9:895-904;および米国特許6,072,035 (Hardman)参照。張り合わせ/表面交換アプローチにおいて、マウス抗体における表面接触可能アミノ酸残基を、ヒト抗体における同じ位置により頻繁にみられるアミノ酸残基で置き換える。この型の抗体表面交換は、例えば米国特許5,639,641 (Pedersen)に記載される。
【0114】
マウス抗体をヒトにおける医学的使用に適した形態に変換するための別のアプローチは、ACTIVMABTM技術(Vaccinex, Inc., Rochester, NY)として公知であり、哺乳動物細胞において抗体を発現するためのワクシニアウイルス系ベクターを含む。IgG重鎖および軽鎖の高レベルのコンビナトリアル多様性が作製されるといわれる。例えば米国特許6,706,477 (Zauderer);6,800,442 (Zauderer);および6,872,518 (Zauderer)参照。
【0115】
マウス抗体をヒトにおける使用に適した形態に変換するための別のアプローチは、KaloBios Pharmaceuticals, Inc. (Palo Alto, CA)により商業的に実施される技術である。この技術は、抗体選択のための「焦点を当てられたエピトープ」ライブラリーを作製するための専売的なヒト「アクセプター」ライブラリーの使用を含む。
【0116】
マウス抗体をヒトにおける医学的に使用に適した形態に修飾するための別のアプローチは、HUMAN ENGINEERINGTM技術であり、XOMA (US) LLCにより商業的に実施される。例えばPCT公報WO 93/11794および米国特許5,766,886;5,770,196;5,821,123および5,869,619参照。
【0117】
上述のアプローチのいずれかを含む任意の適切なアプローチは、本明細書に開示されるスーパー抗原コンジュゲートの結合部分構成成分を含む抗体のヒト免疫原性を低減または排除するために使用され得る。
【0118】
多重特異性抗体を作製する方法は当該技術分野で公知である。多重特異性抗体としては、二重特性抗体が挙げられる。二重特性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特性抗体は目的の抗原の2つの異なるエピトープに結合する。二重特性抗体は、例えばMilstein et al., NATURE 305:537-539 (1983), WO 93/08829, Traunecker et al., EMBO J., 10:3655-3659 (1991), WO 94/04690, Suresh et al. (1986) METHODS IN ENZYMOLOGY 121:210, WO96/27011, Brennan et al. (1985) SCIENCE 229: 81, Shalaby et al. (1992) J. EXP. MED. 175: 217-225, Kostelny et al. (1992) J. IMMUNOL. 148(5):1547-1553, Hollinger et al. (1993) PNAS, 90:6444-6448, Gruber et al. (1994) J. IMMUNOL. 152:5368, Wu et al. (2007) NAT. BIOTECHNOL. 25(11): 1290-1297, 米国特許出願公開公報2007/0071675およびBostrom et al., SCIENCE 323:1640-1644 (2009)に記載されるように完全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab')2二重特性抗体およびダイアボディ)として調製され得る。
【0119】
IV. 製剤および医薬組成物
スーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質は、癌を治療するように、例えば癌細胞の成長速度を遅延する、転移の発生率もしくは数を低減する、腫瘍サイズを低減する、腫瘍成長を抑制する、腫瘍もしくは癌細胞への血液供給を低減する、癌細胞または腫瘍に対する免疫応答を促進する、癌の伝播を例えば少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%または100%予防するまたは抑制するように、被験体に、一緒に、連続的にまたは断続的に投与され得る。代替的に、スーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質は、癌を治療するように、例えば、癌を有する被験体の寿命を例えば3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、1年、5年または10年増加させるように、一緒に、連続的にまたは断続的に被験体に投与され得る。
【0120】
スーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質は、当業者に公知の技術を使用して別々にまたは一緒に製剤化され得る。例えば、治療的使用のために、スーパー抗原コンジュゲートおよび/または免疫増強物質は、薬学的に許容され得る担体と組み合される。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容され得る担体」は、過度な毒性、刺激、アレルギー応答または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、妥当な利益/リスク比に釣り合った、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適したバッファ、担体および賦形剤を意味する。担体(1つまたは複数)は、製剤の他の成分と適合性でありレシピエントに有害でないという意味において「許容され得る」べきである。薬学的に許容され得る担体としては、バッファ、溶媒、分散媒体、コーティング、等張性の吸収遅延剤等が挙げられ、それらは薬学的投与に適合性である。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で公知である。
【0121】
本明細書に開示されるスーパー抗原および/または免疫増強物質を含む医薬組成物が単一の剤型または様々な剤型において提供され得る。医薬組成物(1つまたは複数)は、目的の投与経路に適合性であるように製剤化されるべきである。投与経路の例は、静脈内(IV)、筋内、皮内、吸入、経皮、局所、経粘膜および直腸の投与である。代替的に、薬剤は、例えば薬剤(1つまたは複数)の作用部位への直接的な注射により、しばしばデポーまたは懸濁放出製剤の状態で、全身的よりもむしろ局所的に投与され得る。
【0122】
有用な製剤は医薬分野で周知の方法により調製され得る。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版 (Mack Publishing Company, 1990)参照。非経口投与に適した製剤構成成分としては、注射用水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または重硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;EDTAなどのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などのバッファ;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性の調製のための薬剤が挙げられる。
【0123】
静脈内投与のための適切な担体としては、生理学的食塩水、静菌水、クレモフォールELTM (BASF, Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。担体は、製造および保存の条件下で安定であるべきであり、微生物に対して保存されるべきである。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、およびそれらの適切な組合せを含む溶媒または分散媒体であり得る。
【0124】
医薬製剤は好ましくは滅菌性である。滅菌は、例えば滅菌濾過膜を通す濾過により達成され得る。組成物が凍結乾燥される場合、凍結乾燥および再構成の前または後にろ過滅菌が実施され得る。
【0125】
本発明の組み合わされたスーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質は、単独で、または担体もしくは他の治療化合物などの他の化合物と組み合わせて使用され得る。本発明の医薬組成物は、1つ以上のスーパー抗原コンジュゲートおよび1つ以上の免疫増強物質、例えば抗PD-1抗体の有効量を含み、さらなる薬剤を含んでもよく、薬学的に許容され得る担体中に溶解または分散され得る。句「薬学的」または「薬学的に許容され得る」は、例えばヒトなどの哺乳動物に投与された場合に、有害作用、アレルギーまたは他の望ましくない反応を生じない物質、例えば組成物をいう。少なくとも1つのスーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質を含む医薬組成物の調製は、本開示に照らして、参照により本明細書に援用されるRemington's Pharmaceutical Sciences, 第18版 Mack Printing Company, 1990により例示されるように、当業者に公知である。さらに、ヒト投与について、製剤は、FDA Office of Biological Standardsに要求されるような滅菌性、発熱原性、一般的な安全性および純度の基準を満たすべきであることが理解される。
【0126】
本発明の具体的な態様において、本発明の組成物は、免疫増強物質と組み合わせた腫瘍標的化スーパー抗原を含む。かかる組み合わせは、例えば本明細書に記載される任意の腫瘍標的化スーパー抗原および/または免疫増強物質を含む。
【0127】
本発明の具体的な態様において、腫瘍標的化スーパー抗原は、限定されないが、標的化部分にコンジュゲートされたブドウ球菌エンテロトキシン(SE)、化膿連鎖球菌該毒素(SPE)、黄色ブドウ球菌トキシックショック症候群毒素(TSST-1)、連鎖球菌マイトジェン外毒素(SME)、連鎖球菌スーパー抗原(SSA)、ブドウ球菌エンテロトキシンA (SEA)、ブドウ球菌エンテロトキシンB (SEB)、およびブドウ球菌エンテロトキシンE (SEE)を含む細菌性スーパー抗原を含む。本発明の別の態様において、組成物は、以下のタンパク質データバンクおよび/またはGenBank受託番号を有するスーパー抗原を含む腫瘍標的化スーパー抗原を含み、限定されないが標的化部分にコンジュゲートされたP12993であるSEE;P013163であるSEA;P01552であるSEB;P01553であるSEC1;P20723であるSED;およびAAA19777であるSHEならびにそれらのバリアントが挙げられる。
【0128】
特定の態様において、スーパー抗原コンジュゲートは野生型SEE配列(配列番号:1)または野生型SEA配列(配列番号:2)などの野生型または作り変えられたスーパー抗原配列を含み、そのいずれかは同定された領域A~Eのいずれかにおけるアミノ酸(
図2参照)が他のアミノ酸で置換されるように修飾され得る。特定の態様において、コンジュゲートに一体化されるスーパー抗原はSEA/E-120(配列番号:3)またはSEA
D227A (配列番号:4)である。
【0129】
スーパー抗原にコンジュゲートされる標的化部分の具体例としては、例えば、細胞分子、好ましくは癌細胞特異的分子などの疾患特異的分子に結合し得る任意の分子が挙げられる。標的化部分は、抗原結合断片を含む抗体、可溶性T細胞受容体、成長因子、インターロイキン、ホルモン等から選択され得る。例示的な癌標的化抗体としては、限定されないが、抗CD19、抗CD20抗体、抗5T4抗体、抗Ep-CAM抗体、抗Her-2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗CEA抗体、抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)抗体および抗IGF-1R抗体が挙げられ得る。一態様において、スーパー抗原は、C215Fab、5T4Fab (WO8907947参照)またはC242Fab (WO9301303参照)などの免疫学的に反応性の抗体断片にコンジュゲートされ得る。
【0130】
かかる腫瘍標的化スーパー抗原の例としては、C215Fab-SEA (配列番号:5)、5T4Fab-SEAD227A (配列番号:6)および5T4Fab-SEA/E-120 (配列番号:7)が挙げられる。好ましい態様において、スーパー抗原コンジュゲートは、抗5T4抗体のFab断片を一緒に定義する2つのポリペプチド配列を含むナプツモマブ・エスタフェナトクス/ANYARA(登録商標)として当該技術分野において公知の5T4 Fab-SEA/E-120であり、ここでポリペプチド配列の1つはさらに、SEA/E-120スーパー抗原、つまり配列番号:8(3アミノ酸リンカーによりSEA/E-120にカップリングされる5T4 FabのキメラVH鎖)および配列番号:9(5T4 FabのキメラVL鎖)を含む。
【0131】
好ましい態様において、本発明の組成物は、抗PD-1抗体などのPD-1阻害剤、例えばニボルマブ(Bristol-Myers Squibb Co.)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標), Merck & Co.)、MK-3475 (Merck & Co)、ピドリズマブ (CureTech)、AMP-224 (AstraZeneca/Medimmune)およびAMP-514 (AstraZeneca/Medimmune)またはMPDL3280A (Genentech/Roche)、MEDI-4736 (AstraZeneca/Medimmune)およびMSB0010718C (EMD Serono/Merck KGA)などの抗PD-L1抗体と組み合わせて、ナプツモマブ・エスタフェナトクス/ANYARA(登録商標)として当該技術分野で公知の腫瘍標的化スーパー抗原5T4Fab-SEA/E-120を含む。
【0132】
本発明の具体的な態様において、該組成物は、1つ以上の抗PD-1抗体、例えばニボルマブ (Bristol-Myers Squibb Co.)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標), Merck & Co.)、アテゾリズマブ(前述MPDL3280A)、MEDI4736、アベルマブおよびPDR001と組み合わせて、標的化スーパー抗原ナプツモマブ・エスタフェナトクス(ANYARA(登録商標))を含む。
【0133】
スーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質を含む製剤または剤型は、それらが固体、液体またはエアゾール形態で投与されるかどうか、および注射としてかかる投与経路のために滅菌される必要があるかどうかに応じて異なる型の担体を含み得る。
【0134】
担体または希釈剤の例としては、脂肪、油、水、食塩水溶液、脂質、リポソーム、樹脂、結着剤、充填剤等、またはそれらの組合せが挙げられる。該組成物はまた、1つ以上の構成成分の酸化を遅らせるための種々の酸化防止剤を含み得る。さらに、限定されないがパラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはそれらの組合せが挙げられる種々の抗菌剤および抗真菌剤などの保存剤により微生物の作用の予防が起こり得る。
【0135】
特定の態様において、医薬組成物は、例えば少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。他の態様において、活性化合物は、約2重量%~約75重量%の単位、または約25%~約60%、例えばそれに由来し得る任意の範囲の単位を含み得る。可溶性、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品貯蔵寿命、および他の薬学的考慮などの要因が、かかる医薬製剤を調製する当業者により企図され、このように種々の投与および治療養生法(regimen)が望ましくあり得る。かかる決定は当業者に公知であり、使用される。
【0136】
活性剤は、癌細胞の成長もしくは増殖を減少、低減、抑制もしくはそうでなければ排除するため、アポトーシスを誘導するため、癌もしくは腫瘍の脈管形成を抑制するため、転移を抑制するため、または細胞における細胞傷害性を誘導するために有効な量(1つまたは複数)で投与される。癌の治療的処置のための本発明を実施するために使用される活性化合物(1つまたは複数)の有効量は、投与様式、被験体の年齢、体重および一般的な健康に応じて変化する。これらの用語は、本発明において提示および記載されるような相乗的な状態を含み、ここで単一薬剤単独、例えばスーパー抗原コンジュゲートまたは抗PD-1抗体などの免疫増強物質は、弱く作用し得るかまたは全く作用せず、しかしながら例えば限定されないが連続投与により互いに組み合わせた場合は、2つ以上の薬剤は相乗的な結果を生じるように作用する。
【0137】
特定の非限定的な例において、スーパー抗原コンジュゲートの用量はまた、投与あたり約1マイクログラム/体重kg、約5マイクログラム/体重kg、約10マイクログラム/体重kg、約15マイクログラム/体重kg、約20マイクログラム/体重kg、約50マイクログラム/体重kg、約100マイクログラム/体重kg、約200マイクログラム/体重kg、約350マイクログラム/体重kg、約500マイクログラム/体重kg、約1ミリグラム/体重kg、約5ミリグラム/体重kg、約10ミリグラム/体重kg、約50ミリグラム/体重kg、約100ミリグラム/体重kg、約200ミリグラム/体重kg、約350ミリグラム/体重kg、約500ミリグラム/体重kgから約1000mg/体重kg以上、およびそれから由来し得る任意の範囲を含み得る。本明細書に挙げられる数字から由来し得る範囲の非限定的な例において、約5mg/体重kg~約100mg/体重kg、約5マイクログラム/体重kg~約500ミリグラム/体重kg、約1マイクログラム/体重kg~約100ミリグラム/体重kgの範囲。他の例示的用量は、約1マイクログラム/体重kg~約1000マイクログラム/体重kg、約1マイクログラム/体重kg~約100マイクログラム/体重kg、約1マイクログラム/体重kg~約75マイクログラム/体重kg、約1マイクログラム/体重kg~約50マイクログラム/体重kg、約1マイクログラム/体重kg~約40マイクログラム/体重kg、約1マイクログラム/体重kg~約30マイクログラム/体重kg、約1マイクログラム/体重kg~約20マイクログラム/体重kg、約1マイクログラム/体重kg~約15マイクログラム/体重kg、約1マイクログラム/体重kg~約10マイクログラム/体重kg、約5マイクログラム/体重kg~約1000マイクログラム/体重kg、約5マイクログラム/体重kg~約100マイクログラム/体重kg、約5マイクログラム/体重kg~約75マイクログラム/体重kg、約5マイクログラム/体重kg~約50マイクログラム/体重kg、約5マイクログラム/体重kg~約40マイクログラム/体重kg、約5マイクログラム/体重kg~約30マイクログラム/体重kg、約5マイクログラム/体重kg~約20マイクログラム/体重kg、約5マイクログラム/体重kg~約15マイクログラム/体重kg、約5マイクログラム/体重kg~約10マイクログラム/体重kg、約10マイクログラム/体重kg~約1000マイクログラム/体重kg、約10マイクログラム/体重kg~約100マイクログラム/体重kg、約10マイクログラム/体重kg~約75マイクログラム/体重kg、約10マイクログラム/体重kg~約50マイクログラム/体重kg、約10マイクログラム/体重kg~約40マイクログラム/体重kg、約10マイクログラム/体重kg~約30マイクログラム/体重kg、約10マイクログラム/体重kg~約20マイクログラム/体重kg、約10マイクログラム/体重kg~約15マイクログラム/体重kg、約15マイクログラム/体重kg~約1000マイクログラム/体重kg、約15マイクログラム/体重kg~約100マイクログラム/体重kg、約15マイクログラム/体重kg~約75マイクログラム/体重kg、約15マイクログラム/体重kg~約50マイクログラム/体重kg、約15マイクログラム/体重kg~約40マイクログラム/体重kg、約15マイクログラム/体重kg~約30マイクログラム/体重kg、約15マイクログラム/体重kg~約20マイクログラム/体重kg、約20マイクログラム/体重kg~約1000マイクログラム/体重kg、約20マイクログラム/体重kg~約100マイクログラム/体重kg、約20マイクログラム/体重kg~約75マイクログラム/体重kg、約20マイクログラム/体重kg~約50マイクログラム/体重kg、約20マイクログラム/体重kg~約40マイクログラム/体重kg、約20マイクログラム/体重kg~約30マイクログラム/体重kg等の範囲であり、上述の数に基づいて投与され得る。
【0138】
特定の態様において、例えばスーパー抗原コンジュゲートの投与に限定されないが、投与されるスーパー抗原コンジュゲートの有効量または用量は、0.01~500μg/被験体の体重kg、例えば0.1~500μg/被験体の体重kg、および例えば1~100μg/被験体の体重kgの範囲の量である。
【0139】
スーパー抗原コンジュゲートと組み合わせて投与される免疫増強物質の有効量または用量は、少なくとも加法的、好ましくは相乗的な抗腫瘍効果を生じ、免疫系またはT細胞活性化の増強を障害または抑制しない用量であることが構想される。免疫増強物質がスーパー抗原コンジュゲートと同時に投与される場合、免疫増強物質は、スーパー抗原コンジュゲートの作用機構を障害しないような低用量で投与され得る。
【0140】
一般的に、免疫増強物質、例えば抗PD-1抗体の治療有効料は、0.1mg/kg~100mg/kg、例えば1mg/kg~100mg/kg、1mg/kg~10mg/kgの範囲である。例えばペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))は、静脈内注入として2mg/kgで定期的に投与され得る。投与される免疫増強物質の量は、治療される疾患または指標の種類および程度、患者の全体的な健康状態、スーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質のインビボ能力、医薬製剤ならびに投与経路などの変数に応じる。
【0141】
V. 治療養生法および指標
治療養生法は、同様に、しばしば腫瘍の種類、腫瘍の位置、疾患の進行ならびに患者の健康および年齢に応じる。特定の種類の腫瘍は、より積極的な治療を必要とし得るが、同時に患者はより積極的な治療養生法を許容できないことがある。臨床医はしばしば、当業者の技術ならびに治療製剤の公知の効力および毒性(もしあれば)に基づいて、かかる決定を最も適合するものにし得る。
【0142】
本発明の具体的な態様において、本発明の治療方法は、免疫増強物質と組み合わせた腫瘍標的化スーパー抗原の、治療を必要とする患者、すなわち癌患者への投与を含む。かかる併用治療としては、例えば本明細書に記載されるような任意の腫瘍標的化スーパー抗原および/または免疫増強物質の投与が挙げられる。本発明の具体的な態様において、腫瘍標的化スーパー抗原は、限定されないが標的化部分にコンジュゲートされたブドウ球菌エンテロトキシン(SE)、化膿連鎖球菌外毒素(SPE)、黄色ブドウ球菌トキシックショック症候群毒素(TSST-1)、連鎖球菌マイトジェン外毒素(SME)、連鎖球菌スーパー抗原(SSA)、ブドウ球菌エンテロトキシンA (SEA)、ブドウ球菌エンテロトキシンB (SEB)およびブドウ球菌エンテロトキシンE (SEE)を含む細菌性スーパー抗原を含む。
【0143】
特定の態様において、スーパー抗原コンジュゲートは、野生型SEE配列(配列番号:1)または野生型SEA配列(配列番号:2)などの野生型または作り変えられたスーパー抗原配列を含み、そのいずれかは、同定された領域A~E(
図2参照)のいずれかにおけるアミノ酸が他のアミノ酸で置換されるように修飾され得る。特定の態様において、コンジュゲートに一体化されるスーパー抗原はSEA/E-120 (配列番号:3)またはSEA
D227A (配列番号:4)である。
【0144】
スーパー抗原にコンジュゲートされる標的化部分の具体例としては、例えば、細胞分子、好ましくは癌細胞特異的分子などの疾患特異的分子に結合し得る任意の分子が挙げられる。標的化部分は、抗原結合断片を含む抗体、可溶性T細胞受容体、成長因子、インターロイキン、ホルモン等から選択され得る。例示的な癌標的化抗体としては、限定されないが抗CD19、抗CD20抗体、抗5T4抗体、抗Ep-CAM抗体、抗Her-2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗CEA抗体、抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)抗体、および抗IGF-1R抗体が挙げられ得る。一態様において、スーパー抗原は、C215Fab、5T4Fab (WO8907947参照)またはC242Fab (WO9301303参照)などの免疫学的に反応性の抗体断片にコンジュゲートされ得る。
【0145】
かかる腫瘍標的化スーパー抗原の例としては、C215Fab-SEA (配列番号:5)、5T4Fab-SEAD227A (配列番号:6)および5T4Fab-SEA/E-120 (配列番号:7)が挙げられる。好ましい態様において、スーパー抗原コンジュゲートは、抗5T4抗体のFab断片を一緒に規定する2つのポリペプチド配列を含むナプツモマブ・エスタフェナトクス/ANYARA(登録商標)として当該技術分野で公知の5T4 Fab-SEA/E-120であり、ここで該ポリペプチド配列の一方は、さらに、SEA/E-120スーパー抗原、つまり配列番号:8(3アミノ酸リンカーによりSEA/E-120にカップリングされる5T4 FabのキメラVH鎖)および配列番号:9(5T4 FabのキメラVL鎖)を含む。
【0146】
好ましい態様において、本発明の組成物は、抗PD-1抗体、例えばニボルマブ(Bristol-Myers Squibb Co.)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、Merck & Co.)、MK-3475 (Merck & Co)、ピジリズマブ(pidilizumab) (CureTech)、AMP-224 (AstraZeneca/Medimmune)およびAMP-514 (AstraZeneca/Medimmune)などのPD-1阻害剤、またはMPDL3280A (Genentech/Roche)、MEDI-4736 (AstraZeneca/Medimmune)およびMSB0010718C (EMD Serono/Merck KGA)などの抗PD-L1抗体と組み合わせて当該技術分野でナプツモマブ・エスタフェナトクス/ANYARA(登録商標)として公知である腫瘍標的化スーパー抗原5T4Fab-SEA/E-120を含む。
【0147】
本発明の具体的な態様において、該組成物は、1つ以上の抗PD-1抗体、例えばニボルマブ(Bristol-Myers Squibb Co.)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標), Merck & Co.)、アテゾリズマブ (前述MPDL3280A)、MEDI4736、アベルマブおよびPDR001と組み合わせて、標的化スーパー抗原ナプツモマブ・エスタフェナトクス (ANYARA(登録商標))を含む。
【0148】
さらに、スーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質は、能力および/または治療効果の選択性を高める1つ以上のさらなる薬剤と、一緒にまたは連続的に共投与され得る。かかる薬剤としては、例えばコルチコステロイド、さらなる免疫調節因子、および投与されるスーパー抗原コンジュゲートに対する患者の潜在的な免疫反応性を低減するように設計される化合物が挙げられる。例えば、投与されるスーパー抗原に対する免疫反応性は、被験体において抗スーパー抗原抗体の産生を低減する例えば抗CD20抗体および/または抗CD19抗体との共投与により低減され得る。
【0149】
好ましくは、治療される患者は、適切な骨髄機能(末梢絶対顆粒球数が>2,000/mm3および血小板数が100,000/mm3と定義される)、適切な肝臓機能(ビリルビン<1.5mg/dl)および適切な腎機能(クレアチニン<1.5mg/dl)を有する。
【0150】
特定の態様において、本発明の治療養生法は、新生物または腫瘍細胞を、スーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質と同時に接触させる工程を含み得る。これは、該細胞と、単一の組成物もしくは両方の薬剤を含む薬学的製剤を接触させること、または該細胞と2つの異なる組成物もしくは製剤を同時に接触させることにより達成され得、ここで1つの組成物は、スーパー抗原コンジュゲートを含み、他方は免疫増強物質を含む。
【0151】
代替的に、スーパー抗原コンジュゲートは、数分、数日~数週間の間隔で、免疫増強物質の先になり得るかまたは後になり得る。他の免疫増強物質またはスーパー抗原コンジュゲートが細胞に別々に適用される態様において、スーパー抗原コンジュゲートおよび免疫増強物質が、細胞に対して有利に組み合された効果を発揮し得るように、各送達の時間の間に有意な時間にわたり終了されないことが確実にされるべきである。かかる例において、該細胞と、両方のモダリティーを互いに約12~72時間以内で接触させることが企図され得る。いくつかの状況において、治療時間を有意に延長することが望ましくあり得るが、ここで数日(2、3、4、5、6または7)~数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)がそれぞれの投与の間に経過する。
【0152】
スーパー抗原コンジュゲートを「A」および免疫増強物質を「B」として種々の組合せ:A/B/A、B/A/B、B/B/A、A/A/B、A/B/B、B/A/A、A/B/B/B、B/A/B/B、B/B/B/A、B/B/A/B、A/A/B/B、A/B/A/B、A/B/B/A、B/B/A/A、B/A/B/A、B/A/A/B、A/A/A/B、B/A/A/A、A/B/A/AおよびA/A/B/Aが使用され得る。
【0153】
本発明は外科的介入と組み合わせて使用され得ることがさらに構想される。外科的介入の場合、本発明は、例えば手術のできない腫瘍被験体に切除を施すために手術前に使用され得る。代替的に、本発明は、手術の時点で、および/または残存または転移性の疾患を治療するためにその後に使用され得る。例えば、切除された腫瘍床(tumor bed)は、腫瘍標的化スーパー抗原および/または免疫増強物質を含む製剤を用いて注射またはかん流され得る。かん流は、例えば手術部位に埋め込まれたカテーテルを残すことにより、切除後に継続され得る。定期的な術後治療も構想される。本発明の療法と手術の任意の組合せは本発明の範囲内にある。
【0154】
適切な、例えば腫瘍が切開され腫瘍床が治療されて残存の顕微的疾患が排除される連続投与も適用され得る。シリンジまたは焼灼による送達が好ましい。かかる連続かん流は、治療の開始後、約1~2時間から、約2~6時間まで、約6~12時間まで、約12~24時間まで、約1~2日まで、約1~2週間またはそれ以上までの期間実施され得る。一般的に、連続かん流を介した治療組成物の投与は、かん流が起こる時間にわたり調整される単回または複数回の注射により与えられるものと同等である。本発明の治療組成物を投与するために、特に黒色腫および肉腫の治療において、脚かん流が使用され得ることがさらに企図される。
【0155】
原発性腫瘍または切除後腫瘍床について、典型的な治療の経過は、複数回投与を含み得る。典型的な原発性腫瘍治療は、2週間にわたり6用量適用を含み得る。2週間の養生法は、1、2、3、4、5、6回以上反復され得る。治療の経過の間に、計画された投与を完了する必要が再度評価され得る。
【0156】
スーパー抗原コンジュゲートを用いた免疫療法は、しばしばTリンパ球の迅速(数時間以内)かつ強力なポリクローナル活性化を生じる。スーパー抗原コンジュゲート治療サイクルは、4~5日毎のスーパー抗原コンジュゲート薬物の静脈内注射を含み得る。かかる治療サイクルは、例えば4~6週の間隔で与えられ得る。CTLの腫瘍への浸潤を伴う炎症は、抗腫瘍療法的スーパー抗原の主なエフェクターの1つである。CTLの短期間の大規模な活性化および分化後、T細胞応答はベースラインレベルまで迅速に(4~5日以内)下降する。したがって、細胞増殖抑制性薬物がスーパー抗原治療を障害するリンパ球増殖の期間は、短く、良好に規定される。本発明のスーパー抗原/免疫増強物質療法のみにより、活性についてのかかる異なる時間枠はもっともらしくなり、それにより新規の一体化された高用量細胞増殖抑制剤/免疫療法治療が可能になる。
【0157】
本明細書に記載される方法および組成物を使用して、限定されないが、原発性または転移性の黒色腫、腺癌、扁平上皮細胞癌、腺扁平上皮癌、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺癌、肝臓癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、結腸癌、多発性骨髄腫、神経芽腫、NPC、膀胱癌、子宮頸癌等を含むいくつかの癌が治療され得ることが企図される。
【0158】
さらに、本明細書に記載される方法および組成物を使用して治療され得る癌は、身体の位置および/または治療される系、例えば限定されないが、骨(例えば、腫瘍のユーイングファミリー、骨肉腫);脳(例えば、成体脳腫瘍、(例えば、成体脳腫瘍、脳幹神経膠腫(小児)、小脳星状細胞腫(小児)、小脳星状細胞腫/悪性神経膠腫(小児)、脳室上衣細胞腫(小児)、髄芽腫(小児)、小脳テント上方未分化神経外胚葉性腫瘍および松果体芽腫(小児)、視路および視床下部神経膠腫(小児)および小児脳腫瘍(その他));乳房(例えば、女性または男性乳癌);消化性/胃腸(例えば、肛門癌、胆管癌(肝臓外)、類癌腫(胃腸)、結腸癌、食道癌、胆嚢癌、肝臓癌(成体原発性)、肝臓癌(小児)、膵癌、小腸癌、胃(胃)癌);内分泌(例えば、副腎皮質癌、類癌腫(胃腸)、島細胞癌(内分泌膵臓)、副甲状腺癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、甲状腺癌);眼(例えば、黒色腫(眼内)、網膜芽腫);尿生殖器(例えば、膀胱癌、腎臓(腎細胞)癌、陰茎癌、前立腺癌、腎盂および尿管癌(移行細胞)、精巣癌、尿道癌、ウィルムス腫瘍および他の小児腎臓腫瘍);生殖細胞(例えば、頭蓋外(extracranial)生殖細胞腫瘍(小児)、生殖腺外(extragonadal)生殖細胞腫瘍、卵巣生殖細胞腫瘍、精巣癌);婦人科学(例えば、子宮頸癌、子宮内膜癌、妊娠性絨毛腫瘍、卵巣上皮癌、卵巣生殖細胞腫瘍、卵巣潜在的低悪性腫瘍、子宮肉腫、膣癌、外陰癌);頭部および頸部(例えば、下咽頭癌、咽頭癌、唇部および口腔癌、原発不明転移性扁平上皮頸部癌、鼻咽頭癌、口腔咽頭癌、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、唾液腺癌);肺(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌);リンパ腫(例えば、AIDS関連リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫(成体)、ホジキンリンパ腫(小児)、妊娠中ホジキンリンパ腫、菌状息肉腫、非ホジキンリンパ腫(成体)、非ホジキンリンパ腫(小児)、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、セザール症候群、T細胞リンパ腫(皮膚)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症);筋骨格(例えば、腫瘍のユーイングファミリー、骨肉腫/骨の悪性線維状組織球腫、横紋筋肉腫(小児)、軟組織肉腫(成人)、軟組織肉腫(小児)、子宮肉腫);神経学(例えば、成人脳腫瘍、小児脳腫瘍(例えば、脳幹グリア芽腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性グリア芽腫、脳室上衣細胞腫、髄芽腫、小脳テント上方未分化神経外胚葉性腫瘍および松果体芽腫、視路および視床下部神経膠腫、他の脳腫瘍)、神経芽腫、下垂体腫瘍原発性中枢神経系リンパ腫);呼吸器/胸部(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫、胸腺腫および胸腺癌);および皮膚(例えば、皮膚T細胞リンパ腫、カポジ肉腫、黒色腫および皮膚癌)に基づき得る。
【0159】
該方法は、種々の癌、例えば乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、胃癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、腎細胞癌および皮膚癌からなる群より選択される癌を治療するために使用され得ることが理解される。
【0160】
さらに、癌としては、腫瘍細胞で構成される腫瘍が挙げられ得る。例えば、腫瘍細胞としては、限定されないが、黒色腫細胞、膀胱癌細胞、乳癌細胞、肺癌細胞、結腸癌細胞、前立腺癌細胞、肝臓癌細胞、膵癌細胞、胃癌細胞、精巣癌細胞、腎臓癌細胞、卵巣癌細胞、リンパ性癌細胞、皮膚癌細胞、脳癌細胞、骨癌細胞、または軟組織癌細胞が挙げられ得る。本発明により治療され得る固形腫瘍の例としては、肉腫および癌腫、例えば限定されないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫(synovioma)、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫および網膜芽種が挙げられる。
【0161】
VI. キット
また、本発明は、例えばスーパー抗原コンジュゲートを含む第1の容器および抗PD-1抗体などの免疫増強物質を含む第2の容器を含むキットを提供する。かかるキットはまた、例えばコルチコステロイドまたは別の脂質調節因子などのさらなる薬剤を含み得る。該容器はそれ自体が、シリンジ、ピペットおよび/または他のそのような装置を意味し、そこから身体の特異的な領域に製剤が適用され得、動物に注射され得、および/または適用され得および/またはキットの他の構成成分と混合され得る。
【0162】
該キットは、適切に等分された(aliquoted)スーパー抗原コンジュゲートおよび/または免疫増強物質、ならびに任意に脂質および/または本発明のさらなる薬剤組成物を含み得る。該キットの構成成分は、水性媒体中または凍結乾燥形態のいずれかでパッケージされ得る。該キットの構成成分が1つおよび/またはそれ以上の溶液中に提供される場合、該溶液は滅菌水溶液である。
【0163】
本発明の実施は、前述の例示からより完全に理解され、前述の例示は、例示的目的のみのために本明細書に提示され、いかなる場合においても本発明を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0164】
実施例
実施例1:NSCLC腫瘍細胞株に対するANYARA(登録商標)および抗PD-1阻害剤の併用療法
本実施例には、HCC827非小細胞肺(NSCLC)腫瘍細胞株に対する腫瘍標的化スーパー抗原、ANYARA(登録商標)および抗PD-1抗体、KEYTRUDA(登録商標)の組合せの抗癌効果を試験するインビトロ試験が記載される。
【0165】
健常なドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、10ng/mlのブドウ球菌エンテロトキシンA (SEA)と共に4日間インキュベートした。次いでT細胞を単離して、IL-2と共にさらに1日間インキュベートした。1ウェル当たり1x104個のHCC827細胞を、T細胞および0.2μg/mlの濃度のKEYTRUDA(登録商標)と、96ウェルプレート中1時間インキュベートした。エフェクター:標的化率(T細胞:HCC827細胞)は8:1であった。KEYTRUDA(登録商標)ありまたはなしでの1時間のインキュベーション後、異なる濃度(0、0.1μg/mlおよび10μg/ml)のANYARA(登録商標)をウェルに添加してプレートをさらに48時間インキュベートした。処理の終了後、懸濁T細胞および腫瘍細胞を含む培養上清を除去し、結合した腫瘍細胞を培養培地で一回洗浄した。残存HCC827の生存能力を、製造業者のプロトコルに従い、CCK8キット(Cell Counting Kit-8, Sigma Aldrich)で試験した。対照群の生存能力を100%に標準化した。癌細胞の生存能力(%)=(処理群のOD値/対照群のOD値)x100。
【0166】
図4および
図5に示されるように、ANYARA(登録商標)とKEYTRUDA(登録商標)の組合せは、HCC827細胞生存能力に対して最も強い効果を有した。両方の濃度でANYARA(登録商標)単独ではHCC827細胞の生存能力を減少させたが、これはANYARA(登録商標)とKEYTRUDA(登録商標)の組合せとの比較においてかなり低い効果であった。0.2μg/mlの試験された濃度でのKEYTRUDA(登録商標)は、癌細胞の生存能力に対して効果を有さなかった。0.1μg/mlのより低い濃度でのANYARA(登録商標)は60±9.4% (対照に対してp<0.05)までHCC827細胞の生存能力を減少させたが、ANYARA(登録商標)とKEYTRUDA(登録商標)の組合せは、33±4.9% (対照に対してp<0.005;ANYARA(登録商標)に対してp<0.05)まで細胞の生存能力を低減させた(
図4)。より高い濃度(10μg/ml)のANYARA(登録商標)は、より低い濃度よりも強い効果を有し、癌細胞の生存能力を40±6.6% (対照に対してp<0.005)まで低減させたが、この濃度においてもANYARA(登録商標)とKEYTRUDA(登録商標)の組合せは有意により効果的であり、細胞の生存能力を14±4.2% (対照に対してp<0.0005;ANYARA(登録商標)に対してp=0.005)まで低減させた(
図5)。
【0167】
まとめると、これらの結果は、免疫増強物質抗PD-1 (KEYTRUDA(登録商標))と腫瘍標的化スーパー抗原(ANYARA(登録商標))の相乗的な効果を示し、癌標的化スーパー抗原を免疫増強物質と一緒に投与することは、単独で投与された場合のそれぞれの薬剤の加法的効果よりも高い増強された抗癌効果を生じ得るという考えを支持する。
【0168】
実施例2:B16黒色腫マウスモデルにおける腫瘍標的化スーパー抗原およびマウス抗PD-1阻害剤の併用療法
この実施例には、インビボにおけるマウスB16-EpCAM黒色腫モデルに対する腫瘍標的化スーパー抗原、C215Fab-SEAおよびマウス抗PD-1抗体の効果を試験する試験が記載される。腫瘍標的化スーパー抗原と抗PD-1の併用療法を、C215抗体により認識されるヒト結腸癌抗原EpCAMによりトランスフェクトされた低免疫原性B16黒色腫を使用した同形腫瘍モデルにおいて試験した。腫瘍標的化スーパー抗原C215Fab-SEAは、腫瘍反応性mAb (C215Fab)および細菌性スーパー抗原ブドウ球菌エンテロトキシンA (SEA)を含む融合タンパク質である。インビボでのマウス実験を容易にするためにANYARA(登録商標)の代わりにC215Fab-SEAを使用した。
【0169】
試験のために、C57Bl/6マウスに、1.75x105個のB16-EpCAM黒色腫細胞を、尾静脈に静脈内(IV)接種して、肺腫瘍を誘導した。5~8日目にC215Fab-SEA(0.5μg/マウス)の毎日のIV注射および/または1週間に2回の抗PD-1 mAb (200μg/マウス)の腹腔内(IP)注射でマウスを治療した。対照群は、併用療法群と同じ投与形態および投与計画で、PBSにより治療した。21日目に、マウスを殺して肺を取り出した。ブワン溶液中での少なくとも24時間の固定後、肺腫瘍の数を計測した。
【0170】
試験の結果を
図6に示す。予測されたように、B16黒色腫は低免疫原性腫瘍であるので、抗PD-1 mAb単一療法は、肺腫瘍の数に対して効果を有さなかった。C215Fab-SEA単独は、21日目にB16肺腫瘍の数を、対照治療マウスにおける217.1±15.9(平均±SEM)の腫瘍から98.8±16.4まで約50%低減させた。C215Fab-SEAと抗PD-1 mAbの組合せは、単一療法と比較して約80%の有意な低減(p<0.05)で腫瘍の数を低減させた。
【0171】
これらの結果はさらに、低免疫原性腫瘍の治療について、免疫増強物質と一緒に腫瘍標的化スーパー抗原を組み合わせることの可能性を示す。
【0172】
参照による援用
本明細書に参照される特許および科学文献のそれぞれの全開示は、全ての目的のために参照により援用される。
【0173】
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態において実現され得る。そのため、前述の態様は、全ての観点において、本明細書に記載される発明の限定ではなく例示としてみなされるものである。したがって、本発明の範囲は、前述の記載ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲においてなされる全ての変更が、本発明に包含されることを意図する。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
[1]癌の治療を必要とする被験体において癌を治療する方法であって、該方法が、
該被験体に、(i) 被検体において癌性細胞により発現される第1の抗原に結合する標的化部分に共有結合するスーパー抗原を含むスーパー抗原コンジュゲートの有効量、ならびに(ii) 以下の活性(a) T細胞シグナル伝達の活性化の刺激、(b) 癌性細胞とT細胞の間のT細胞抑制性シグナル伝達の抑制、および/または(c) ヒトIgG4免疫グロブリン媒介性経路を介するT細胞の拡大、活性化および/または活性をもたらす抑制性シグナル伝達の抑制の1つ以上をなし得る免疫増強物質の有効量を投与し、それにより癌性細胞に対する被験体における免疫応答を強化して、癌を治療する工程
を含む、方法。
[2]スーパー抗原が、免疫増強物質の前、同時または後に被験体に投与される、[1]記載の方法。
[3]スーパー抗原が、T細胞の表面上のT細胞受容体に結合する、[1]または[2]記載の方法。
[4]スーパー抗原が、ブドウ球菌エンテロトキシンAまたはその免疫学的バリアントおよび/または断片を含む、[1]~[3]いずれか一項記載の方法。
[5]第1の抗原が細胞表面抗原である、[1]記載の方法。
[6]細胞表面抗原が5T4癌抗原である、[5]記載の方法。
[7]標的化部分が抗体である、[1]~[6]いずれか一項記載の方法。
[8]抗体が抗5T4抗体である、[7]記載の方法。
[9]抗5T4抗体が、5T4癌抗原に結合するFab断片を含む、[8]記載の方法。
[10]スーパー抗原が、配列番号:7のアミノ酸残基226~458またはその免疫学的に反応性のバリアントおよび/または断片を含む、[1]~[9]いずれか一項記載の方法。
[11]T細胞により発現されるプログラム細胞死-1タンパク質(PD-1)に結合するプログラム細胞死リガンド(PD-L)が、癌性細胞の表面に発現される、[1]~[10]いずれか一項記載の方法。
[12]免疫増強物質が、T細胞の表面上に発現されるPD-1にPD-Lが結合することを防ぐ抗PD-1抗体である、[11]記載の方法。
[13]抗PD-1抗体が、ヒトIgG4アイソタイプを有するかまたはヒトIgG4アイソタイプに基づく、[12]記載の方法。
[14]抗PD-1抗体が、ニボルマブおよびペンブロリズマブからなる群より選択される、[12]または[13]記載の方法。
[15]癌が、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、胃癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓細胞癌および皮膚癌からなる群より選択される、[1]~[14]いずれか一項記載の方法。
[16]被験体において癌性細胞により発現される第1の抗原に結合する標的化部分に共有結合するスーパー抗原を含むスーパー抗原コンジュゲートの有効量、被験体において以下の活性(a) T細胞シグナル伝達の活性化の刺激、(b) 癌性細胞とT細胞の間のT細胞抑制性シグナル伝達の抑制、および/または(c)ヒトIgG4免疫グロブリン媒介性経路を介するT細胞の拡大、活性化および/または活性をもたらす抑制性シグナル伝達の抑制の1つ以上をなし得る免疫増強物質の有効量、ならびに薬学的に許容され得る賦形剤を含む、医薬組成物。
[17]スーパー抗原がT細胞の細胞表面に発現されるT細胞受容体に結合する、[16]記載の組成物。
[18]スーパー抗原が、ブドウ球菌エンテロトキシンAまたはその免疫学的バリアントおよび/または断片を含む、[16]または[17]記載の組成物。
[19]第1の抗原が細胞表面抗原である、[16]~[18]いずれか一項記載の組成物。
[20]該抗原が5T4癌抗原である、[16]~[19]いずれか一項記載の組成物。
[21]標的化部分が抗体である、[16]~[20]いずれか一項記載の組成物。
[22]該抗体が抗5T4抗体である、[20]記載の組成物。
[23]該抗体が5T4抗原に結合するFab断片を含む、[22]記載の組成物。
[24]スーパー抗原が、配列番号:7のアミノ酸残基226~458またはその免疫学的に反応性のバリアントおよび/または断片を含む、[16]~[23]いずれか一項記載の組成物。
[25]免疫増強物質が、癌細胞において発現されるPD-LがT細胞により発現されるPD-1に結合することを防ぐ、[16]~[24]いずれか一項記載の組成物。
[26]免疫増強物質が、抗PD-1抗体である、[25]記載の組成物。
[27]該抗体が、ヒトIgG4アイソタイプを有するかまたはヒトIgG4アイソタイプに基づく、[26]記載の組成物。
[28]抗PD-1抗体が、ニボルマブおよびペンブロリズマブからなる群より選択される、[26]または[27]記載の組成物。
【配列表】