(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】フェノチアジン誘導体を含有するカルボキシル基含有アクリルゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/08 20060101AFI20221020BHJP
C08K 5/46 20060101ALI20221020BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20221020BHJP
C08K 5/31 20060101ALI20221020BHJP
C08K 5/3465 20060101ALI20221020BHJP
C07D 279/34 20060101ALN20221020BHJP
【FI】
C08L33/08
C08K5/46
C08K5/17
C08K5/31
C08K5/3465
C07D279/34
(21)【出願番号】P 2019005154
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066005
【氏名又は名称】吉田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-001428(JP,A)
【文献】特開2011-032390(JP,A)
【文献】特開2015-137322(JP,A)
【文献】特開2015-137323(JP,A)
【文献】特開2020-111705(JP,A)
【文献】特開2020-111552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有アクリルゴム100重量部に対して、
(A) 下記一般式〔I〕で表されるフェノチアジン誘導体 0.1~5重量部
(ここで、R
1は炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6~20の一価の芳香族炭化水素基であり、Ar・Rはアラルキル基であり、そのRは炭素数1~10の二価の脂肪族炭化水素基である)
(B) 下記一般式〔II〕で表されるフェノチアジン誘導体 0.1~5重量部
(ここで、R
2は
カルボニル基に対してα位の炭素が4級炭素となる、炭素数4~20の一価の炭化水素基
であり、Ar・Rはアラルキル基であり、そのRは炭素数1~10の二価の脂肪族炭化水素基である)
(C) カルボキシル基含有アクリルゴム用架橋剤 0.1~3重量部
(D) カルボキシル基含有アクリルゴム用架橋促進剤 0.1~5重量部
を含有してなるカルボキシル基含有アクリルゴム組成物。
【請求項2】
カルボキシル基含有アクリルゴム用架橋剤が多価アミン化合物またはその誘導体である請求項1記載のカルボキシル基含有アクリルゴム組成物。
【請求項3】
多価アミン化合物またはその誘導体がヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、4,4′-ジアミノジフェニルエーテルまたは2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンである請求項2記載のカルボキシル基含有アクリルゴム組成物。
【請求項4】
カルボキシル基含有アクリルゴム用架橋促進剤がグアニジン化合物、ジアザビシクロアルケン化合物またはその有機酸塩、または脂肪族3級モノアミン化合物である請求項1記載のカルボキシル基含有アクリルゴム組成物。
【請求項5】
グアニジン化合物が1,3-ジフェニルグアニジンまたは1,3-ジ-o-トリルグアニジンである請求項4記載のカルボキシル基含有アクリルゴム組成物。
【請求項6】
ジアザビシクロアルケン化合物またはその有機酸塩が1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセンまたはその有機酸塩である請求項4記載のカルボキシル基含有アクリルゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノチアジン誘導体を含有するカルボキシル基含有アクリルゴム組成物に関する。さらに詳しくは、アクリルゴムの耐熱性、特に高温環境下における耐圧縮永久歪特性を向上させることのできるフェノチアジン誘導体を含有するカルボキシル基含有アクリルゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策としてCO2排出量規制に代表される環境規制が一層厳しくなる傾向にある。その対応策として、自動車エンジンには高出力化、高熱効率化および排出ガスの低減および無害化が要求され、エンジンルーム内の温度は上昇する傾向にある。それに伴い、その周辺で使用されるゴム材料にはさらなる耐熱性の向上が求められている。
【0003】
具体例として、エンジンの燃費改善を目的としたターボチャージャーシステムを搭載した車両の普及が進んでいる。このターボチャージャーからインタークーラーやエンジンに導かれる空気は高温高圧であることから、これを輸送するゴム製ホース材料には高い耐熱性が求められている。
【0004】
このように、自動車のエンジンに使用されるゴム材料の使用環境の高温化や長寿命化の要求に伴い、適切な老化防止剤をゴム製品部材に添加して耐熱性を向上させることが一般的に行われている。
【0005】
アクリルゴムの場合にあっても、寿命延長の目的から老化防止剤として、フェノール系老化防止剤やアミン系老化防止剤が用いられている。アミン系老化防止剤としてジフェニルアミン系老化防止剤があり、その代表例として4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが挙げられる。
【0006】
また、近年ではゴム材料の老化防止剤としてフェノチアジン系老化防止剤が有効であることが、多数の特許文献に記載されている。
【0007】
特許文献1には、加硫特性、機械的特性および熱老化特性にすぐれ、防振ゴム用途に特に好適なゴム材料として、(A)ジエン系ゴム、(B)ビスマレイミド化合物および(C)下記フェノチアジン化合物を含有するものが記載されている。
R
1、R
2:水素原子、芳香族環で置換されてもよい
C
1~C
8のアルキル基
アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基
R
3:水素原子、C
1~C
6の鎖状または環状のアルキル基
ビニル基、芳香族基
m、n:0~2
5位の硫黄原子が-S(=O)-または-SO
2-であるフェノチアジン化合物も知られており、例えば特許文献2~4に記載されている。
【0008】
特に、特許文献4には、下記一般式で示される縮合複素環化合物およびそれを含有する有機材料組成物が記載されており、酸化的、熱的あるいは光誘発性崩壊を受け易いポリマー等の有機材料に対し、高い加工安定性、耐熱性、長寿命を付与することが可能であると述べられている。
Y:化学的な単結合、-S(=O)-、-SO
2-
R
a、R
b:置換基を有してもよいC
1~C
30有機基
Z
a、Z
b:化学的な単結合、-SO
2-
X
1、X
2:水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、ニトロ基
、-OR
1、-O-CO-R
1、-CO-OR
1、-O-CO-OR
1、-NR
2R
3、
-NR
2-CO-R
1、-CO-NR
2R
3、-O-CO-NR
2R
3、
n、m:0~2、ただし、いずれか一方は0ではない
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-227402号公報
【文献】特開2015-137322号公報
【文献】特開2015-137323号公報
【文献】WO 2011/093443 A1
【文献】特開2010-235955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記何れの技術をもってしても、近年のアクリルゴム材料に対する耐熱要求を満たすものではなく、特に耐圧縮永久歪特性についてはさらなる向上が望まれている。本発明の目的は、アクリルゴムの耐熱性、特に高温環境下における耐圧縮永久歪特性を向上させることができる新規な老化防止作用を有する化合物を含有するアクリルゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる本発明の目的は、カルボキシル基含有アクリルゴム100重量部に対して、
(A) 下記一般式〔I〕で表されるフェノチアジン誘導体 0.1~5重量部
(ここで、R
1は炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6~20の一価の芳香族炭化水素基であり、R・Arはアラルキル基であり、そのRは炭素数1~10の二価の脂肪族炭化水素基である)
(B) 下記一般式〔II〕で表されるフェノチアジン誘導体 0.1~5重量部
(ここで、R
2は
カルボニル基に対してα位の炭素が4級炭素となる、炭素数4~20の一価の炭化水素基
であり、R・Arはアラルキル基であり、そのRは炭素数1~10の二価の脂肪族炭化水素基である)
(C) カルボキシル基含有アクリルゴム用架橋剤 0.1~3重量部
(D) カルボキシル基含有アクリルゴム用架橋促進剤 0.1~5重量部
を含有してなるカルボキシル基含有アクリルゴム組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、カルボキシル基含有アクリルゴムの耐熱性、特に高温条件下における耐圧縮永久歪特性を向上させ得るフェノチアジン誘導体を含有するカルボキシル基含有アクリルゴムが提供される。また、従来のジフェニルアミン系老化防止剤と比較して、高温環境下におけるアクリルゴム架橋物の破断時伸びの低下を抑制することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般式〔I〕で表されるフェノチアジン誘導体において、R1は一価の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基または炭素数6~20の一価の芳香族炭化水素基である。具体的には、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-ウンデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘプタデシル基、
イソプロピル基、2-ブチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、4-ヘプチル基、2-オクチル基、3-オクチル基、4-オクチル基、
第3ブチル基、1,1-ジメチル-1-プロピル基、1,1-ジメチル-1-ブチル基、1,1-ジメチル-1-ペンチル基、1,1-ジメチル-1-ヘキシル基、3-メチル-3-ペンチル基、3-エチル-3-ペンチル基、3-メチル-3-ヘキシル基、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、
1-メチル-1-シクロペンチル基、1-メチル-1-シクロヘキシル基、
1-アダマンチル基等の炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、
フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等の炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられる。
特に炭素数が4~20であり、カルボニル基に対してα位の炭素が3級炭素である一価の脂肪族炭化水素基が好ましく、例えば第3ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチル-1-ブチル基、1,1-ジメチル-1-ペンチル基、1,1-ジメチル-1-ヘキシル基、3-メチル-3-ペンチル基、3-エチル-3-ペンチル基、3-メチル-3-ヘキシル基、1-メチル-1-シクロペンチル基、1-メチル-1-シクロヘキシル基、1-アダマンチル基等が好ましい基として挙げられる。
【0014】
一般式〔I〕のAr・Rで表されるアラルキル基において、Arとしては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。そのRとしては炭素数1~10の二価の脂肪族炭化水素基であり、具体例としてメチレン基、エチリデン基、1-プロピリデン基、2-プロピリデン基、1-ブチリデン基が挙げられる。Ar・Rとしては、α,α-ジメチルベンジル基が好ましい。
【0015】
かかる化合物、特にアラルキル基がα,α-ジメチルベンジル基を有する化合物は、特許文献4記載の方法によって、
を製造した後、10位のNH基をN-アシル化することにより容易に製造することができる。
【0016】
アシル化剤としてはカルボン酸塩化物等のカルボン酸ハライドまたはカルボン酸無水物を用いることができる。アシル化剤としてカルボン酸塩化物を使用する場合、その使用量は、化合物CD-S 1モルに対して約1~10モル、好ましくは約1~2モルの範囲である。
【0017】
反応に際しては、ピリジン、トリエチルアミン等の活性水素を有しない含窒素塩基性化合物の共存下で行うのが好ましい。含窒素塩基性化合物の使用量は、カルボン酸塩化物 1モルに対して、約1~10モル、好ましくは約1~5モルである。
【0018】
反応溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等を用いることができる。また、ピリジンを溶媒として用いることができる。ピリジンを溶媒として用いる場合、その使用量はカルボン酸塩化物1モルに対して、10モル以上用いてもよい。
【0019】
反応は約0~150℃で行われるが、反応速度、カルボン酸塩化物の沸点および溶媒の沸点等を考慮して適宜調整される。
【0020】
アシル化剤としてカルボン酸無水物を使用する場合、その使用量は、化合物CD-S 1モルに対して約1~100モル、好ましくは約1~50モルの範囲である。
【0021】
反応に際しては、ピリジン、トリエチルアミン等の活性水素を有しない含窒素塩基性化合物の共存下で行うのが好ましい。含窒素塩基性化合物の使用量は、化合物CD-S 1モルに対して、約1~10モル、好ましくは約1~5モルである。
【0022】
反応溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等を用いることができるが、カルボン酸無水物を溶媒として用いることもできる。
【0023】
反応は約0~150℃で行われるが、反応速度、溶媒およびカルボン酸無水物の沸点等を考慮して適宜調整される。
【0024】
一般式〔II〕で表されるフェノチアジン誘導体において、R2はカルボニル基に対してα位の炭素が4級炭素となる、炭素数4~20の一価の炭化水素基である。具体的には、
第3ブチル基、1,1-ジメチル-1-プロピル基、1,1-ジメチル-1-ブチル基、1,1-ジメチル-1-ペンチル基、1,1-ジメチル-1-ヘキシル基、3-メチル-3-ペンチル基、3-エチル-3-ペンチル基、3-メチル-3-ヘキシル基、
1-メチル-1-シクロペンチル基、1-メチル-1-シクロヘキシル基、
1-アダマンチル基、
α,α-ジメチルベンジル基、トリフェニルメチル基、1,1-ジフェニル-1-エチル基等が挙げられる。
【0025】
一般式〔II〕においてAr・Rはアラルキル基を示し、一般式〔I〕のAr・Rと同義である。
【0026】
一般式〔II〕で表されるフェノチアジン誘導体は、例えばAr・Rがα,α-ジメチルベンジル基の場合、化合物CD-Sを製造した後、前記と同様の方法により10位のアミノ基をN-アシル化し、次いで5位の硫黄原子を過酸化水素/酢酸等の酸化剤により酸化することにより、容易に製造することができる。また、N-アシル化反応と酸化反応とを逆の順序の方法とすることもできる。
【0027】
酸化反応に用いられる酸化剤としては、メタクロロ過安息香酸、過酢酸、酢酸/過酸化水素が用いられる。酸化剤の使用量は、アシル化CD-S(一般式〔I〕においてR1をR2に置き換えた化合物)1モルに対して、約2~10モル用いられる。
【0028】
反応溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロベンゼン等の含塩素系溶媒、酢酸等が用いられる。これらの溶媒は、単独であるいは2種以上組合せて用いることができる。
【0029】
反応は、約50~150℃、好ましくは約80~120℃の範囲で行われる。
【0030】
次に、本発明のフェノチアジン誘導体化合物〔I〕および〔II〕を含有するアクリルゴム組成物について説明する。
【0031】
カルボキシル基含有アクリルゴム組成物は、カルボキシル基含有アクリルゴムに、このフェノチアジン誘導体〔I〕および〔II〕、カルボキシル基含有アクリルゴム用の架橋剤およびカルボキシル基含有アクリルゴム用の架橋促進剤を配合することにより形成される。
【0032】
フェノチアジン誘導体〔I〕と〔II〕とは、カルボキシル基含有アクリルゴム 100重量部に対しそれぞれ約0.1~5重量部の割合で用いられるが、好ましくは〔I〕と〔II〕の配合部数の合計が、カルボキシル基含有アクリルゴム100重量部に対して約0.1~5重量部の範囲である。フェノチアジン誘導体がこれより少ないと、アクリルゴム架橋物に十分な耐熱性および耐圧縮永久歪特性を付与できない。また、フェノチアジン誘導体をこれより多く用いても、アクリルゴム架橋物の耐熱性および耐圧縮永久歪特性を向上させることはできず、不経済である。
【0033】
また、フェノチアジン誘導体〔I〕および〔II〕の配合部数の比率は、アクリルゴム架橋物の耐熱老化特性および耐圧縮永久歪特性を考慮して決められ、好ましくは
0.1 ≦ 〔I〕の配合部数/〔II〕の配合部数 ≦ 10 である。
【0034】
アクリルゴムとしては、カルボキシル基含有アクリルゴム、エポキシ基含有アクリルゴム、活性塩素基含有アクリルゴムが挙げられるが、特にカルボキシル基含有アクリルゴムが好ましい。
【0035】
一般的に入手可能なアクリルゴムとして、具体的には、日本ゼオン製品のニポールARシリーズ、電気化学工業製品のデンカERシリーズ、NOK製品のノックスタイトシリーズ、デュポン社製品のVamacシリーズ等を挙げることができる。
【0036】
カルボキシル基含有アクリルゴムは、アルキルアクリレートおよびアルコキシアルキルアクリレートの少なくとも一種を共重合成分とし、これにカルボキシル基含有不飽和化合物を共重合させたものである。
【0037】
アルキルアクリレートとしては、炭素数1~8のアルキル基を有するアルキルアクリレートが用いられる。例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-シアノエチルアクリレート等が用いられ、好ましくはエチルアクリレート、n-ブチルアクリレートが用いられる。
【0038】
アルコキシアルキルアクリレートとしては、炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有するアルコキシアルキルアクリレートが用いられる。例えばメトキシメチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-n-ブトキシエチルアクリレート等が用いられ、好ましくは2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレートが用いられる。
【0039】
これらのアルキルアクリレートまたはアルコキシアルキルアクリレートは、モノマー混合物中約60~99.9重量%、好ましくは約80~99重量%の割合で共重合反応に用いられ、共重合反応の重合反応率が90%以上では、モノマー混合割合がほぼ共重合割合となる。
【0040】
カルボキシル基含有不飽和化合物としては、例えばアクリル酸、メタアクリル酸等の一塩基酸不飽和化合物、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の二塩基酸不飽和化合物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノ-n-ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノ-n-ブチル等の二塩基酸不飽和化合物モノエステルが用いられる。好ましくは、マレイン酸モノ-n-ブチル、フマル酸モノ-n-ブチルが用いられる。
【0041】
これらのカルボキシル基含有不飽和化合物は、モノマー混合物中約0.1~10重量%、好ましくは約1~5重量%の割合で用いられる。
【0042】
以上の成分以外に、約20重量%以下、好ましくは10重量%以下の割合で上記アクリレートと共重合可能なエチレン性不飽和化合物を共重合させたものでも良い。例えばエチレン性不飽和化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、アクリル酸アミド、酢酸ビニル、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0043】
カルボキシル基含有アクリルゴムの架橋剤としては、多価アミン化合物またはその誘導体が用いられる。具体的には脂肪族多価アミン化合物、脂肪族多価アミン化合物の炭酸塩、アミノ基が有機基で保護された脂肪族多価アミン化合物または芳香族多価アミン化合物を用いることができる。
【0044】
例えば、脂肪族多価アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。また、脂肪族多価アミン化合物の炭酸塩としては、ヘキサメチレンジアミンカーバメートが挙げられる。アミノ基が有機基で保護された脂肪族多価アミンとしては、N,N′-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミンまたは特許文献5に開示された化合物が挙げられる。
【0045】
芳香族多価アミン化合物としては、4,4′-メチレンジアニリン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、4,4′-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,3,5-ベンゼントリアミン、4,4′-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4′-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4′-ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。
【0046】
上記に挙げた多価アミン化合物を単独で用いてもよいし、二つ以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、4,4′-ジアミノジフェニルエーテルおよび2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンが好ましい。
【0047】
上記架橋剤は、アクリルゴム100重量部に対して約0.1~3重量部用いられる。架橋剤の配合量がこれより少ないと架橋が不十分となり、架橋物の機械的物性の低下および架橋速度の低下を招く。架橋剤の配合量がこれよりも多いと、架橋が過度に進行し架橋物の弾性の低下および耐圧縮永久歪特性の悪化を招く場合がある。
【0048】
カルボキシル基含有アクリルゴムの架橋促進剤としては、グアニジン化合物、ジアザビシクロアルケン化合物またはその有機酸塩、脂肪族3級モノアミン化合物が用いられる。
【0049】
グアニジン化合物としては、テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン等が挙げられる。好ましくは、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジンまたはそれらの組み合わせである。
【0050】
ジアザビシクロアルケン化合物としては、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセンが好ましい。1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセンの有機酸塩に用いられる有機酸としては、有機一塩基酸または有機二塩基酸が挙げられる。
【0051】
有機一塩基酸としては、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、n-カプリン酸、n-ラウリン酸、p-トルエンスルホン酸、フェノール等が挙げられる。有機二塩基酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸等が挙げられる。好ましくは、炭素数6~18のモノカルボン酸またはジカルボン酸が好ましい。
【0052】
脂肪族3級モノアミン化合物としては、トリ-n-オクチルアミン、トリ-2-エチルヘキシルアミン、トリ-n-デシルアミン、トリ-n-ドデシルアミン、トリ-n-テトラデシルアミン、トリ-n-ヘキサデシルアミン、トリ-n-オクタデシルアミン、N,N-ジメチルデシルアミン、N,N-ジメチルウンデシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルテトラデシルアミン、N,N-ジメチルヘキサデシルアミン、N,N-ジメチルオクタデシルアミン等が挙げられ、特にN,N-ジメチルデシルアミン、N,N-ジメチルウンデシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルテトラデシルアミン、N,N-ジメチルヘキサデシルアミン、N,N-ジメチルオクタデシルアミンが好ましい。
【0053】
上記架橋促進剤は、アクリルゴム100重量部に対して約0.1~5重量部、好ましくは約0.3~3重量部用いられる。架橋促進剤がこれより少ないと、架橋速度の著しい低下、架橋後のアクリルゴムの機械的物性の低下および熱老化後の機械的物性の低下を招くことがある。一方、これより多く用いられると、アクリルゴムの圧縮永久歪特性の悪化を招くことがある。
【0054】
カルボキシル基含有アクリルゴム組成物には必要に応じて、例えば充填剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤、他の老化防止剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、粘着付与剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤、紫外線吸収剤、耐油性向上剤、スコーチ防止剤、滑剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0055】
充填剤としては、塩基性シリカ、酸性シリカ等のシリカ、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅等の金属硫化物;合成ハイドロタルサイト、ケイ藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、カーボンブラック(MTカーボンブラック、SRFカーボンブラック、FEFカーボンブラック等)、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、石英微粉末、亜鉛華、タルク、雲母粉末、ウォラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤等が挙げられる。
【0056】
加工助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリルアミン、オレイルアミン等の高級脂肪族アミン;カルナバワックス、セレシンワックス等の石油系ワックス;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等のポリグリコール;ワセリン、パラフィン等の脂肪族炭化水素;シリコーン系オイル、シリコーン系ポリマー、低分子量ポリエチレン、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、ロジン、(ハロゲン化)ジアルキルアミン、(ハロゲン化)ジアルキルスルフォン、界面活性剤等が挙げられる。
【0057】
可塑剤としては、例えばエポキシ樹脂、フタル酸誘導体やセバシン酸誘導体、軟化剤としては、例えば潤滑油、プロセスオイル、コールタール、ヒマシ油、ステアリン酸カルシウム、老化防止剤としては、例えばフェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類、ジチオカルバメート金属塩等が挙げられる。
【0058】
カルボキシル基含有アクリルゴム組成物の調製は、前記カルボキシル基含有アクリルゴムに、架橋剤、架橋促進剤および必要に応じて使用されるその他の配合剤などを配合し、バンバリーミキサーや加圧ニーダー、オープンロール等を用いて混和することでできる。それの架橋は、約120~250℃、約1~60分間の一次架橋および必要に応じて約120~200℃、約1~20時間のオーブン架橋(二次架橋)が行われる。
【実施例】
【0059】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0060】
参考例1
3,7-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノチアジン〔CD-S〕の製造
マグネット攪拌子、温度計、窒素ガス導入口と排出口および還流冷却管を備えた容量500mlの四口フラスコに、フェノチアジン 59.8g(0.3モル)、p-トルエンスルホン酸 1.44gおよびトルエン 280mlを投入し、80℃に昇温した後、α-メチルスチレン 70.9g(0.6モル)を加え、窒素ガス雰囲気下で1時間反応させた。
【0061】
反応混合物を室温まで冷却した後、減圧下でトルエンを留去し、紫色固体状の反応生成物132gを得た。これを600~800mlのエタノールで再結晶することにより、薄紫色の結晶として粗製CD-S 90g(収率69%)が得られた。さらに、この粗CD-S 20gをエタノールで再結晶し、無色鱗片状の結晶として精製CD-S 18gを得た。
【0062】
参考例2
10-ヘキサノイル-3,7-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノチアジン〔CD-S-He〕の製造
マグネット攪拌子を備えた容量300mlの三口フラスコに、粗製CD-S 20.0g(45.9ミリモル)、ジクロロメタン 75ml、ピリジン 6.0gおよびヘキサノイルクロリド 7.41g(55.1ミリモル)を順次投入し、室温下で1時間反応させた。
【0063】
得られた反応混合物を飽和塩化ナトリウム水溶液で2回洗浄し、その有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、減圧下でろ液から揮発成分を留去し、次いでn-ヘキサンで再結晶し、無色の結晶としてCD-S-He 20.4g(収率83%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3、δ ppm):0.82 (t、3H、J=6.9Hz、-CH
2CH
2CH
2CH
2C
H
3)
1.21 (m、4H、-CH
2CH
2C
H
2C
H
2CH
3)
1.57 (quin、J=7.2Hz、2H、-CH
2C
H
2CH
2CH
2CH
3)
1.66 (s、12H、-C(C
H
3)
2-)
2.45 (t、J=7.2Hz、2H、-C
H
2CH
2CH
2CH
2CH
3)
7.11~7.38 (m、16H)
【0064】
参考例3
10-ピバロイル-3,7-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノチアジン〔CD-S-PIV〕の製造
マグネット攪拌子、温度計および還流冷却管を備えた容量300mlの三口フラスコに、粗製CD-S 68.6g(157ミリモル)、ピリジン 63gおよびピバロイルクロリド 24.6g(204ミリモル)を順次投入し、120℃で1.5時間反応させた。
【0065】
反応終了後、減圧下で反応混合物からピリジンを留去した後、残留物にジクロロメタン150ml加えた。ジクロロメタン溶液を飽和塩化ナトリウム水溶液で3回洗浄し、その有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、減圧下でろ液から揮発成分を留去し、次いでエタノールから再結晶し、無色の結晶としてCD-S-PIV 67.7g(収率83%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3、δ ppm):1.11 (s、9H、-C(C
H
3)
3)
1.66 (s、12H、-C(C
H
3)
2-)
7.11~7.30 (m、14H)
7.46(d, J=8.1Hz, 2H)
【0066】
参考例4
10-(2,2-ジメチルブチリル)-3,7-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノチアジン〔CD-S-DMB〕の製造
マグネット攪拌子、温度計および還流冷却管を備えた容量300mlの三口フラスコに、粗製CD-S 40.0g(91.8ミリモル)、ピリジン 40gおよび2,2-ジメチルブチリルクロリド16.0g(119ミリモル)を順次投入し、120℃で2時間反応させた。
【0067】
反応終了後、減圧下で反応混合物からピリジンを留去した後、残留物をジクロロメタン100mlに溶解させた。ジクロロメタン溶液を飽和塩化ナトリウム水溶液で3回洗浄し、その有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、減圧下でろ液から揮発成分を留去し、次いでn-ヘキサンから再結晶し、無色の結晶としてCD-S-DMB 34.3g(収率70%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3、δ ppm):0.92 (t、 J=7.5Hz、3H、-C(CH
3)
2CH
2C
H
3)
1.00 (s、6H、-C(C
H
3)
2CH
2CH
3)
1.57 (q、J=7.5Hz、2H、-C(CH
3)
2C
H
2CH
3)
1.66 (s、12H、-C(C
H
3)
2-)
7.11~7.30 (m、14H)
7.43(d, =8.4Hz, 2H)
【0068】
参考例5
3,7-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノチアジン-5,5-ジオキシド〔CD-SO2〕の製造
マグネット攪拌子、温度計、窒素ガス導入口と排出口および還流冷却管を備えた容量500mlの四口フラスコに、フェノチアジン 24.9g(0.125モル)、p-トルエンスルホン酸 0.6gおよびトルエン 115mlを投入し、80℃に昇温した後、α-メチルスチレン 29.5g(0.25モル)を加え、窒素ガス雰囲気下で1時間反応させた。
【0069】
次に、反応混合物に酢酸30gを加えた後、30%過酸化水素水42.5gを5回に分けて加え、さらに80℃で2時間反応させた。内容物を室温まで冷却し、静置した後、上層のトルエン層を500mlのメタノール中に注いだ。室温で一夜放置後、淡黄色の結晶として粗製CD-SO
2 42.5g(収率72%)を得た。これをエタノールで再結晶し、淡黄色の針状結晶38g(収率65%)を得た。
【0070】
参考例6
10-ピバロイル-3,7-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノチアジン-5,5-ジオキシド〔CD-SO2-PIV〕の製造
マグネット攪拌子、温度計および還流冷却管を備えた容量500mlの三口フラスコに、粗製CD-S 68.7g(158ミリモル)、ピバロイルクロリド 24.8g(206ミリモル)およびピリジン 60gを順次投入し、120℃で2時間反応させた。得られた反応混合物から減圧下でピリジンを留去し、次いで残留物をジクロロメタン 150mlに溶解させた。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液300mlで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液から揮発性成分を減圧留去し、赤色の高粘性液体81.7gを得た。
【0071】
この高粘性液体をトルエン250mlに溶解し、マグネット攪拌子、温度計および還流冷却管を備えた容量1000mlの三口フラスコ中に投入した。次いで、酢酸80gおよび30%過酸化水素水107gを順次投入し、100℃で2時間反応させた。
【0072】
内容物を室温まで冷却した後、上層のトルエン層を取出し、減圧下で揮発性物質を留去した。得られた赤色の高粘性液体89gを、エタノール/トルエン(容積比9:1)混合溶媒で再結晶し、無色の針状結晶としてCD-SO
2-PIV 70.3g(収率81%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3、δ ppm):1.22 (s、9H、-C(C
H
3)
3)
1.71 (s、12H、-C(C
H
3)
2-)
7.19~7.30 (m、12H)
7.42 (d、J=9.0Hz、2H)
8.03 (d、J=1.8Hz、2H)
【0073】
参考例7
10-(2,2-ジメチルブチリル)-3,7-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノチアジン-5,5-ジオキシド〔CD-SO2-DMB〕の製造
マグネット攪拌子、温度計および還流冷却管を備えた容量500mlの三口フラスコに、粗製CD-S 67.2g(154ミリモル)、2,2-ジメチルブチリルクロリド 26.8g(199ミリモル)およびピリジン 65gを順次投入し、120℃で2時間反応させた。得られた反応混合物から減圧下でピリジンを留去し、次いで残留物をジクロロメタン 150mlに溶解させた。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液300mlで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液から揮発性成分を減圧留去し、赤色の高粘性液体89.7gを得た。
【0074】
この高粘性液体をトルエン250mlに溶解し、マグネット攪拌子、温度計および還流冷却管を備えた容量1000mlの三口フラスコ中に投入した。次いで、酢酸80gおよび30%過酸化水素水105gを順次投入し、100℃で2時間反応させた。
【0075】
内容物を室温まで冷却した後、上層のトルエン層を取出し、減圧下で揮発性物質を留去した。得られた赤色の高粘性液体88.9gを、600mlのエタノールで再結晶し、無色の針状結晶としてCD-SO
2-DMB 62.0g(収率75%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3、δ ppm):0.86 (t、J=7.2Hz、3H、- C(CH
3)
2-CH
2-C
H
3)
1.11 (s、6H、-C(C
H
3)
2-CH
2-CH
3)
1.68 (q、J=7.2Hz、2H、-C(CH
3)
2-C
H
2-CH
3)
1.71 (s、12H、-C(C
H
3)
2-)
7.13~7.30 (m、12H)
7.46 (d、J=9.0Hz、2H)
8.02 (d、J=2.1Hz、2H)
【0076】
参考例8
10-(1-アダマンタンカルボニル)-3,7-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノチアジン-5,5-ジオキシド〔CD-SO2-Ad〕の製造
マグネット攪拌子、温度計および還流冷却管を備えた容量500mlの三口フラスコに、粗製CD-S 30g(68.8ミリモル)、1-アダマンタンカルボニルクロリド 17.8g(89.6ミリモル)およびピリジン 30gを順次投入し、120℃で2時間反応させた。得られた反応混合物から減圧下でピリジンを留去し、次いで残留物をジクロロメタン 100mlに溶解させた。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液150mlで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、ろ液から揮発性成分を減圧留去し、赤色の高粘性液体44.8gを得た。
【0077】
この高粘性液体をトルエン170mlに溶解し、マグネット攪拌子、温度計および還流冷却管を備えた容量500mlの三口フラスコ中に投入した。次いで、酢酸45gおよび30%過酸化水素水60gを順次投入し、100℃で2時間反応させた。
【0078】
内容物を室温まで冷却した後、上層のトルエン層を取出し、減圧下で揮発性物質を留去した。得られた赤色の高粘性液体49.2gをエタノール/トルエン(容積比1:1)混合溶媒で再結晶し、無色の結晶としてCD-SO
2-Ad 30g(収率69%)を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl
3、δ ppm):1.62 (s、6H、C
H
a
2)
1.72 (s、12H、-C(C
H
3)
2-)
1.87 (d、J=2.7Hz、6H、C
H
b
2)
1.96 (s、3H、C
H
c)
7.16~7.30 (m、14H)
8.06 (d、J=2.1Hz、2H)
【0079】
実施例1
カルボキシル基含有アクリルゴム 100重量部
(ユニマテック製品ノックスタイトPA-522HF、Tg:-31℃)
FEFカーボンブラック(東海カーボン製品シーストGSO) 55 〃
ステアリン酸(ミヨシ油脂製品TST) 1 〃
ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸 0.5 〃
(東邦化学工業製品フォスファノールRL-210)
ステアリルアミン(n-オクタデシルアミン) 1 〃
(花王ケミカル製品ファーミン80S)
架橋促進剤A 1 〃
(Safic-Alcan社製品Vulcofac ACT55)
ヘキサメチレンジアミンカーバメート 0.6 〃
(ユニマテック製品ケミノックスAC6F)
CD-S-He 1 〃
CD-SO2-DMB 1 〃
以上の各成分の内、カルボキシル基含有アクリルゴム、FEFカーボンブラック、ステアリン酸およびポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸を、バンバリーミキサーで混和した。得られた混和物に、所定量の残りの各成分をオープンロールで混和し、アクリルゴム組成物を得た。これを、100トンプレス成形機により、180℃で8分間の一次架橋(圧縮成形)および175℃で4時間のオーブン架橋(二次架橋)を行い、厚さ約2mmのシート状架橋物および直径約29mm、高さ約12.5mmの円柱状の架橋物を得た。
【0080】
アクリルゴム組成物の架橋特性およびその架橋物の物性を、次のようにして測定した。
ムーニースコーチ試験:JIS K6300準拠(125℃)
東洋精機製作所製ムーニービスコメーターAM-3を用い、最小ムーニー粘度
(ML min)とスコーチ時間(t5)の値を測定
架橋試験:JIS K6300-2準拠(180℃、12分間)
東洋精機製作所製ロータレス・レオメータRLR-3使を用い、ML、MH、tc
(10)およびtc(90)の値を測定
ML:最小トルク
MH:最大トルク
tc(10):架橋トルクがML+(MH-ML)×0.1に達するまでに要する時間
tc(90):架橋トルクがML+(MH-ML)×0.9に達するまでに要する時間
常態物性:JIS K6251、JIS K6253準拠
空気加熱老化試験:JIS K6257準拠(175℃:500時間、185℃:500時間)
圧縮永久歪:JIS K6262準拠(175℃、70時間、500時間)
【0081】
実施例2
実施例1において、架橋促進剤Aの代りに、架橋促進剤B(1,3-ジ-o-トリルグアニジン、大内新興化学工業製品ノクセラーDT)が2重量部用いられた。
【0082】
実施例3
実施例2において、CD-SO2-DMBの代りに、同量(1重量部)のCD-SO2-Adが用いられた。
【0083】
実施例4
実施例2において、ヘキサメチレンジアミンカーバメートの代りに、同量(0.6重量部)の4,4′-ジアミノジフェニルエーテル(東京化成工業製品)が用いられ、ステアリルアミンが用いられなかった。
【0084】
実施例5
実施例1において、CD-S-HeおよびCD-SO2-DMBの代りに、それぞれ同量(1重量部)のCD-S-PIVおよびCD-SO2-PIVが用いられた。
【0085】
実施例6
実施例1において、CD-S-Heの代りに、同量(1重量部)のCD-S-DMBが用いられた。
【0086】
得られた結果は、カルボキシル基含有アクリルゴム、FEFカーボンブラック、ステアリン酸およびポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸以外の各成分量と共に、次の表1に示される。
表1
実-1 実-2 実-3 実-4 実-5 実-6
〔成分量〕
ステアリルアミン 1 1 1 1 1
架橋促進剤A 1 1 1
架橋促進剤B 2 2 2
ヘキサメチレンジアミンカーバメート 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6
4,4′-ジアミノジフェニルエーテル 0.6
CD-S-He 1 1 1 1
CD-S-PIV 1
CD-S-DMB 1
CD-SO2-PIV 1
CD-SO2-DMB 1 1 1 1
CD-SO2-Ad 1
〔測定値〕
ムーニー・スコーチ試験(125℃)
ML min (pts) 34 31 31 35 38 38
t5 (分) 7.1 8.6 8.7 12.3 6.6 6.9
架橋試験(180℃)
tc(10) (分) 0.63 0.73 0.72 1.30 0.66 0.65
tc(90) (分) 6.74 6.79 6.71 8.31 6.90 6.87
ML (N・m) 0.14 0.14 0.13 0.13 0.15 0.14
MH (N・m) 0.62 0.61 0.62 0.64 0.62 0.63
常態物性
硬度 (Duro A) 62 59 59 64 61 61
100%モジュラス (MPa) 3.3 3.0 3.1 4.2 2.9 3.1
破断強度 (MPa) 11.1 10.6 9.9 11.6 11.2 11.0
破断時伸び (%) 270 300 270 260 280 270
熱老化試験(175℃、500時間)
硬度変化 (Duro A) +7 +4 +5 +8 +6 +6
100%モジュラス変化 (%) -25 -31 -27 -21 -17 -20
破断強度変化 (%) -36 -38 -33 -29 -39 -37
破断時伸び変化 (%) +15 +13 +19 +4 +7 +11
熱老化試験(185℃、500時間)
硬度変化 (Duro A) +14 +16 +16 +14 +14 +15
100%モジュラス変化 (%) -16 -15 -13 -19 -15 -17
破断強度変化 (%) -49 -53 -49 -47 -52 -50
破断時伸び変化 (%) -4 -10 +0 -12 -7 -10
圧縮永久歪
175℃、70時間 (%) 18 19 19 15 18 18
175℃、500時間 (%) 38 37 36 30 38 38
【0087】
比較例1
実施例1において、CD-S-HeおよびCD-SO2-Adの代りに、4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業製品ノクラックCD)が2重量部用いられた。
【0088】
比較例2
実施例1において、CD-S-HeおよびCD-SO2-Adの代りに、CD-SO2が2重量部用いられた。
【0089】
比較例3
比較例1において、架橋促進剤Aの代りに、架橋促進剤Bが2重量部用いられた。
【0090】
比較例4
比較例2において、架橋促進剤Aの代りに、架橋促進剤Bが2重量部用いられた。
【0091】
比較例5
比較例3において、ステアリルアミンおよびヘキサメチレンジアミンカーバメートが用いられず、4,4′-ジアミノジフェニルエーテルが2重量部用いられた。
【0092】
比較例6
比較例4において、ステアリルアミンおよびヘキサメチレンジアミンカーバメートが用いられず、4,4′-ジアミノジフェニルエーテルが0.6重量部用いられた。
【0093】
得られた結果は、カルボキシル基含有アクリルゴム、FEFカーボンブラック、ステアリン酸およびポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸以外の各成分量と共に、次の表2に示される。
表2
比較例
1 2 3 4 5 6
〔成分量〕
ステアリルアミン 1 1 1 1
架橋促進剤A 1 1
架橋促進剤B 2 2 2 2
ヘキサメチレンジアミンカーバメート 0.6 0.6 0.6 0.6
4,4′-ジアミノジフェニルエーテル 0.6 0.6
4,4′-ビス(α,α-ジメチルベンジル) 2 2 2
ジフェニルアミン
CD-SO2 2 2 2
〔測定値〕
ムーニー・スコーチ試験(125℃)
ML min (pts) 30 33 26 30 32 34
t5 (分) 7.0 7.3 8.6 8.2 13 14.8
架橋試験(180℃)
tc(10) (分) 0.63 0.68 0.72 0.72 1.30 1.30
tc(90) (分) 6.79 6.99 6.80 6.65 8.29 8.40
ML (N・m) 0.13 0.14 0.13 0.14 0.12 0.13
MH (N・m) 0.61 0.62 0.60 0.61 0.62 0.62
常態物性
硬度 (Duro A) 62 62 59 60 60 62
100%モジュラス (MPa) 3.0 3.3 2.9 3.5 3.6 4.1
破断強度 (MPa) 10.8 10.9 10.2 10.3 11.0 11.5
破断時伸び (%) 260 270 300 280 260 240
熱老化試験(175℃、500時間)
硬度変化 (Duro A) +4 +6 +1 +3 +10 +9
100%モジュラス変化 (%) -17 -25 -41 -39 -17 -18
破断強度変化 (%) -41 -40 -47 -37 -33 -29
破断時伸び変化 (%) +15 +7 +13 +14 +8 +8
熱老化試験(185℃、500時間)
硬度変化 (Duro A) +19 +15 +21 +13 +18 +16
100%モジュラス変化 (%) +41 -25 +7 -38 +18 -29
破断強度変化 (%) -43 -63 -49 -60 -42 -53
破断時伸び変化 (%) -35 -4 -30 -4 -31 -8
圧縮永久歪
175℃、70時間 (%) 24 25 22 21 16 17
175℃、500時間 (%) 40 44 38 41 32 36