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  • 特許-ステアリングロック装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ステアリングロック装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/021 20130101AFI20221020BHJP
【FI】
B60R25/021
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019015344
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020121666
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄介
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-40951(JP,A)
【文献】特開2009-179232(JP,A)
【文献】特開2006-182205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00-25/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向にストローク可能であると共に少なくとも一部が磁性体によって形成され、所定方向の一方側へストロークした状態でステアリングシャフトに係合するストローク部材と、
前記ストローク部材の所定方向へのストロークを可能に保持するケース部材と、
前記ケース部材側に設けられ、前記ストローク部材の他方側から所定以上の磁力が付与されたときに、前記ストローク部材が他方側へ引き寄せられてステアリングシャフトとの係合が解除されるのに先立って前記ストローク部材の移動軌跡上に突出して前記ストローク部材の移動を規制する可動部材と、
を備えることを特徴とするステアリングロック装置。
【請求項2】
前記可動部材は、前記ストローク部材の外周側に配置されると共に、内周側且つ前記所定方向の他方側に向けて突出可能とされている
ことを特徴とする請求項1に記載のステアリングロック装置。
【請求項3】
前記ケース部材のうち前記ストローク部材の他方側の部位は、前記所定方向に直交する直交面に対して傾斜を有した錐構造部となっている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のステアリングロック装置。
【請求項4】
前記錐構造部は、多角形の錐構造となっており、
前記可動部材は、前記多角形の錐構造を構成する各側面と対向して配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載のステアリングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両駐車時等にステアリングシャフトをロックしてハンドル操作を不可とするステアリングロック装置が知られている。このようなステアリングロック装置は、所定方向にストローク可能であるロッド部材を備えている。ステアリングロック装置は、ロッド部材が所定方向の一方側にストロークしてロッド部材の一端側がステアリングシャフトの係合溝に嵌まり込むことでステアリングシャフトをロックする構造となっている。ここで、ロッド部材は、ステアリングシャフトをロックする関係上かなりの強度が要求されるため、例えば熱処理した金属(磁性体)によって構成されている。
【0003】
一方で、ステアリングロック装置は、ロッド部材が磁性体であることから、マグネットアタックされてしまうおそれがある。マグネットアタックとは、不正解錠する者が磁石を近付けてロッド部材を動作させることによりロックを解除することである。
【0004】
このようなマグネットアタックに対して、特許文献1に記載のステアリングロック装置が提案されている。特許文献1に係るステアリングロック装置は、ロッド部材を収納するケース部材のうちロッド部材の他端側(ロッド部材がステアリングシャフトの係合溝から抜ける方向側)の部位を強磁性体で構成している。これにより、ロッド部材の他端側から磁石が近付けられたとしても、ロッド部材に作用する磁力を強磁性体が緩和して防盗性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-278009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のステアリングロック装置であっても磁力を緩和できるに留まるものであり、より強力な磁石が近付けられた場合には、ステアリングシャフトのロック状態が解除されてしまう可能性があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、より強力な磁力に対してステアリングシャフトのロック状態が解除されてしまう可能性を低減することが可能なステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るステアリングロック装置は、ストローク部材とケース部材と可動部材とを備えている。ストローク部材は、所定方向にストローク可能であると共に少なくとも一部が磁性体によって形成され、所定方向の一方側へストロークした状態でステアリングシャフトに係合するものである。ケース部材は、ストローク部材の所定方向へのストロークを可能に保持するものである。可動部材は、ケース部材側に設けられ、ストローク部材の他方側から所定以上の磁力が付与されたときに、ストローク部材が他方側へ引き寄せられてステアリングシャフトとの係合が解除されるのに先立ってストローク部材の移動軌跡上に突出してストローク部材の移動を規制するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ストローク部材の他方側から所定以上の磁力が付与されたときに、ストローク部材が他方側へ引き寄せられてステアリングシャフトとの係合が解除されるのに先立ってストローク部材の移動軌跡上に突出してストローク部材の移動を規制する可動部材を備えるため、より強力な磁力が付与されたとしても可動部材によってストローク部材の他方側への移動が規制されることとなり、ストローク部材とステアリングシャフトとの係合状態が解除され難くすることができる。従って、より強力な磁力に対してステアリングシャフトのロック状態が解除されてしまう可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るステアリングロック装置を示す外観図であり、(a)は正面図を示し、(b)は側面図を示し、(c)は上面図を示している。
図2図1(b)に示すA-A断面図である。
図3】マグネットアタック時におけるステアリングロック装置の様子を示す断面図である。
図4】第2実施形態に係るステアリングロック装置を示す断面図である。
図5】第2実施形態に係るステアリングロック装置に対するマグネットアタック時における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0012】
図1は、第1実施形態に係るステアリングロック装置を示す外観図であり、(a)は正面図を示し、(b)は側面図を示し、(c)は上面図を示している。図2は、図1(b)に示すA-A断面図である。
【0013】
図1(a)~(c)及び図2に示すステアリングロック装置1は、ケース部材10と、ロッド部材(ストローク部材)20と、スライド部材(ストローク部材)30と、バネ部材40と、カム部材50とを備えている。
【0014】
ケース部材10は、ロッド部材20とスライド部材30とを所定方向にストローク可能に保持するものであって、本体部材11を備えている。本体部材11は、ケース部材10の主要部品であって、所定方向の一方側に半円形状の凹部11aが形成されている。凹部11aには、車両の操作ハンドルに接続される略円柱形状のステアリングシャフト(図示せず)が嵌まり込むようになっている。なお、凹部11aは、対となる半円形状の部材が組み付けられてステアリングシャフトが挿通される筒部を形成することとなる。
【0015】
ロッド部材20及びスライド部材30は、互いに連結されており、ケース部材10内で所定方向にストローク可能となる部材である。このうち少なくともロッド部材20は磁性体によって形成されている。ロッド部材20及びスライド部材30が所定方向の一方側へストロークした場合、図1(b)及び図2に示すようにロッド部材20は先端が凹部11a内に突出する。ロッド部材20は先端が凹部11a内に突出したときにステアリングシャフトの係合溝に係合する。この係合時には、ステアリングシャフトの回転が防止されてハンドル操作が不可となる。ロッド部材20及びスライド部材30が所定方向の他方側へストロークした場合、ロッド部材20は先端が凹部11a内から退避した状態となる。この退避時には、ロッド部材20とステアリングシャフトとの係合が解除されて、ステアリングシャフトの回転が許容されることとなる。
【0016】
また、ケース部材10は蓋部材12を備えている。ケース部材10の本体部材11は、ロッド部材20及びスライド部材30の他方側が開放された状態となっている。蓋部材12は、本体部材11の開放部分を閉塞するように本体部材11に固定的に取り付けられる。このような蓋部材12は、図1(c)に示す上面視状態で略四角形状となっている。この蓋部材12は、所定方向に垂下する筒状(四角筒状)の周壁部12aと、周壁部12aの他方側を覆う天板部12bとを有している。また、本体部材11は、他方側に周壁部12aが挿入される薄肉部11bを有している。薄肉部11bは、外形が四角形状となる筒部となっている。また、天板部12bは、所定方向に対して直交する直交面に対して傾斜した錐構造部となっている。この天板部12bは、四角(多角形の一例)の錐構造となっている。また、天板部12bは裏面側(ケース部材10内側)の中央部に凹部12cが形成されている。
【0017】
バネ部材40は、一端側がスライド部材30に接触し、他端側が天板部12bの凹部12cに接触するコイルバネである。このバネ部材40は、スライド部材30と天板部12bとの間において圧縮状態で配置されており、図2に示すステアリングロック装置1のロック状態においてロッド部材20及びスライド部材30を所定方向の一方側に移動させている。
【0018】
また、ケース部材10の本体部材11は、内部に2段の段部11c,11dが形成されている。さらに、スライド部材30についても同様に2段の段部31,32が形成されている。これらの2段の段部11c,11d,31,32は、ステアリングロック装置1のロック状態において互いに接触する。これにより、ロッド部材20は、所定方向の一方側に過剰に突出することなく、凹部11a内に所定量だけ突出するようになる。
【0019】
また、図1(a)に示すように、ステアリングロック装置1は、正面側に携帯キーを挿入可能なキーシリンダ部5を有している。このキーシリンダ部5に正規の携帯キーが挿入されて回動操作が行われると、ケース部材10内のカムシャフト(図示せず)が回転する。カムシャフトはカム部材50に一体的に連結されている。
【0020】
カム部材50は、スライド部材30を所定方向に動作させるための部材である。このカム部材50は、正規の携帯キーにて回動操作された場合に図2に示す矢印A1方向に回動する部材である。カム部材50は、矢印A1方向への回動時においてバネ部材40の付勢力に抗してスライド部材30を所定方向の他方側に移動させる。この結果、ロッド部材20についてもスライド部材30と共に他方側に移動し、ロッド部材20の先端は凹部11aから退避した状態となる。
【0021】
さらに、本実施形態に係るステアリングロック装置1は、複数の可動部材60と圧縮バネ70を備えている。各可動部材60は、L字形状となる板部材であって、所定方向に延びる立面部61と、立面部61に対して垂直に接続される水平部62とを有している。ここで、蓋部材12の周壁部12aの先端は、立面部61と対向する薄壁12dが形成されている。圧縮バネ70は、立面部61と薄壁12dとの間に配置されている。可動部材60は、圧縮バネ70の付勢力によって本体部材11の薄肉部11bに押し付けられた状態となる。さらに、蓋部材12は、本体部材11の肉厚部11eに対して所定の隙間Sを有するようになっている。この隙間Sは、水平部62の厚みよりも大きくされている。
【0022】
また、図1(c)及び図2に示すように、複数の可動部材60は、スライド部材30の外周側において、周状に同角度間隔で配置されている。第1実施形態において可動部材60の数は4つとされているため、可動部材60は90°間隔で配置されることとなる。ここで、可動部材60の数は、天板部12bの側面12eの数(例えば4つ)と同じとされている。さらに、各可動部材60は、図1(c)に示す上面視状態で側面12eと対向する位置に設けられている。
【0023】
図3は、マグネットアタック時におけるステアリングロック装置1の様子を示す断面図である。図3に示すように、例えば天板部12b上に強力なマグネットMが載置されたとする。ここで、本実施形態においては、バネ部材40と圧縮バネ70との付勢力が調整されている。このため、マグネットMの磁力がロッド部材20に作用し、ロッド部材20が他方側にストロークしてステアリングシャフトとの係合が解除されてしまう前に、いずれかの可動部材60の水平部62が隙間Sから突出する(ケース部材10の内側方向に突出する)。
【0024】
このとき、水平部62はスライド部材30の移動軌跡上に突出することから、スライド部材30は他方側への移動が規制され、ロッド部材20の先端についても凹部11a内に突出した状態を維持する。よって、強力なマグネットMにより強い磁力が付与されたとしても、ステアリングシャフトのロック状態が解除されてしまう可能性を低減することができる。
【0025】
特に、本実施形態において天板部12bは錐構造部となっていることから、天板部12bに接触したマグネットMの磁力が所定方向に対して斜め方向に作用し易くなり、可動部材60を動作させ易くすると共に、ロッド部材20を引き寄せ難くすることとなる。
【0026】
加えて、天板部12bは多角の錐構造となっており、且つ、可動部材60が天板部12bの側面12eと対向している。このため、マグネットMが側面12eに面接触するようにマグネットアタックされた場合には、磁力が可動部材60に作用し易くなり、可動部材60を動作させ易くすることとなる。
【0027】
次に、本実施形態に係るステアリングロック装置1の組み付け方法の一例を説明する。本実施形態に係るステアリングロック装置1は、まず、蓋部材12、バネ部材40、可動部材60及び圧縮バネ70を除く部品の組み付けが行われる。その後、スライド部材30の中央にバネ部材40が載置されると共に、蓋部材12を周状に覆う筒部材(図示せず)を利用して可動部材60と圧縮バネ70とが取り付けられる。
【0028】
詳細に一例を説明すると、作業者は、まず蓋部材12の外周側に筒部材を取り付ける。その後、作業者は、蓋部材12の天板部12bと逆側から、薄壁12dと筒部材との間に可動部材60と圧縮バネ70とを取り付ける。このとき、可動部材60は、圧縮バネ70によって筒部材に対して押し付けられるようにして保持される。
【0029】
次いで、作業者は、蓋部材12、可動部材60、圧縮バネ70及び筒部材の集合体を薄肉部11b間に挿入する。この状態から作業者は筒部材のみを抜き取る。これにより、薄肉部11b間に蓋部材12、可動部材60及び圧縮バネ70を取り付けることができる。
【0030】
なお、薄肉部11b間は筒部材の挿入を許容するだけの距離を有しており、筒部材が抜き取られた後に薄肉部11bがカシメられることで筒部材の厚みに相当する分の隙間が略埋められることとなる。また、組み付け方法については、これに限られるものではない。
【0031】
このようにして、第1実施形態に係るステアリングロック装置1によれば、ロッド部材20の他方側から所定以上の磁力が付与されたときに、ロッド部材20が他方側へ引き寄せられてステアリングシャフトとの係合が解除されるのに先立ってスライド部材30の移動軌跡上に突出してスライド部材30の移動を規制する可動部材60を備えるため、より強力な磁力が付与されたとしても可動部材60によってスライド部材30の他方側への移動が規制されることとなり、ロッド部材20とステアリングシャフトとの係合状態が解除され難くすることができる。従って、より強力な磁力に対してステアリングシャフトのロック状態が解除されてしまう可能性を低減することができる。
【0032】
さらに、特許文献1に記載のステアリングロック装置1においてキャップ(蓋部材)が強磁性体によって構成されているが、このキャップが絞り加工が施されるものであり、この加工がコスト面で不利となる。これに対して、第1実施形態のように錐構造部で形成された蓋部材12は、絞り加工が不要であり特許文献1に記載のステアリングロック装置と比較してコスト面で有利である。
【0033】
また、ロッド部材20の他方側の部位は、所定方向に直交する直交面に対して傾斜を有した錐構造部となっている。このため、ロッド部材20の他方側に磁石を近付けた場合において、磁石を錐構造部に接触させたときには、磁力を所定方向に沿って作用させ難くでき、一層ロック状態が解除されてしまう可能性を低減することができる。
【0034】
また、可動部材60は、多角形の錐構造を構成する各側面12eと対向して配置されているため、磁石が錐構造部の側面12eに貼り付けられた場合には、可動部材60がスライド部材30の移動軌跡上に突出し易い状態となり、適切に可動部材60を動作させてより一層ロック状態が解除されてしまう可能性を低減することができる。
【0035】
加えて、蓋部材12は、上面視して四角形状とされていることから、上面視して蓋部材が円形である場合と比較すると、蓋部材12を組付ける際に側面12eと可動部材60とを対向させる位置決めを容易とすることができる。また、蓋部材12の外周に位置する薄肉部11bにマグネットMを近付ける際にも、マグネットMと可動部材60とを対向させ易くすることができる。
【0036】
次に、本発明に係るステアリングロック装置の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係るステアリングロック装置は第1実施形態のものと同様であるが、第1実施形態のものと一部構成が異なっている。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
【0037】
図4は、第2実施形態に係るステアリングロック装置を示す断面図である。図4に示すように、第2実施形態に係るステアリングロック装置2は、蓋部材12の形状及び可動部材60の突出方向等が第1実施形態のものと異なっている。
【0038】
第2実施形態に係る蓋部材12は、天板部12bが錐構造部となっておらず、平板構造となっている。また、蓋部材12の周壁部12aは、その先端に断面視してV字状となる溝部12fが形成されている。さらに、第2実施形態において本体部材11についても、肉厚部11eの上端面に断面視してV字状となる溝部11fが形成されている。第2実施形態に係る可動部材60は、この溝部11f,12f間に挟持されるように配置された結果、水平部62がやや所定方向の他方側に傾いて配置されると共に、圧縮バネ70についても水平部62の傾斜に合わせて傾いた状態で可動部材60を本体部材11側に押圧している。
【0039】
図5は、第2実施形態に係るステアリングロック装置2に対するマグネットアタック時における断面図である。図5に示すように、例えば天板部12b上に強力なマグネットMが載置されたとする。ここで、第2実施形態においては、天板部12bが平板状となっている。このため、マグネットMはロッド部材20を他方側に引き寄せるように磁力を作用させ易い。しかし、第2実施形態において可動部材60は、水平部62がやや所定方向の他方側に傾いて配置されている。このため、いずれかの可動部材60は、ロッド部材20とステアリングシャフトとの係合が解除されてしまう前に、他方側に引き寄せられつつ内側方向に突出する。
【0040】
このとき、水平部62はスライド部材30の移動軌跡上に突出することから、スライド部材30は他方側への移動が規制され、ロッド部材20の先端についても凹部11a内に突出した状態を維持する。よって、強力なマグネットMにより強い磁力が付与されたとしても、ステアリングシャフトのロック状態が解除されてしまう可能性を低減することができる。
【0041】
このようにして、第2実施形態に係るステアリングロック装置2によれば、第1実施形態と同様に、より強力な磁力に対してステアリングシャフトのロック状態が解除されてしまう可能性を低減することができる。また、可動部材60の劣化を抑制することができ、コスト面でも有利である。
【0042】
さらに、第2実施形態によれば、可動部材60は、内周側且つ所定方向の他方側に向けて突出可能とされている。このため、磁力がロッド部材20の他方側から作用したときに可動部材60が動作し易くなり、適切に移動軌跡上に突出し易くすることができる。
【0043】
以上、本発明に係る車両用スライドドア装置を実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能であれば実施形態同士の技術や公知等の他の技術を組み合わせてもよい。
【0044】
例えば、上記実施形態に係るステアリングロック装置1,2は正規の携帯キーの回動操作に伴ってカム部材50が回動する例を説明したが、これに限らず、プッシュスタート方式の車両においてはプッシュスタート時にカム部材50が電動で回動するものであってもよい。
【0045】
また、上記実施形態において可動部材60及び圧縮バネ70は、本体部材11と蓋部材12との間に配置されているが、これに限らず、例えば本体部材11が2以上の部品で構成され、2以上の部品間に配置される等、他の部位に配置されていてもよい。
【0046】
また、可動部材60及び圧縮バネ70は、ケース部材10側に配置されていれば、ケース部材10自体に設けられていなくともよい。すなわち、可動部材60及び圧縮バネ70は、ケース部材10内で移動するスライド部材30及びロッド部材20に対して設けられておらず、ケース部材10側に取り付けられた別部材に対して可動部材60及び圧縮バネ70が設けられていてもよい。
【0047】
さらに、可動部材60は、スライド部材30の他方端に接触するように、スライド部材30の移動軌跡上に突出してスライド部材30の移動を規制するが、これに限らず、スライド部材30に開口を有し、その開口内に可動部材60が突き刺さるように移動軌跡上に突出してスライド部材30の移動を規制してもよい。同様に、可動部材60はロッド部材20の移動軌跡上に突出してロッド部材20の移動を規制してもよい。
【0048】
加えて、可動部材60は、ケース部材10である本体部材11と蓋部材12との間に配置された結果、所定方向の他方側に偏って位置しているが、これに限らず、磁力作用時においてロッド部材20とステアリングシャフトとの係合状態が解除されるのに先立って移動軌跡上に突出できれば、所定方向の一方側に偏って位置する等、他の箇所に位置していてもよい。
【0049】
また、ステアリングロック装置1,2は、可動部材60が適切に突出するのであれば、第1実施形態のように可動部材60が所定方向に直交する直交面に沿って突出すると共に、第2実施形態のように天板部12bが平板構造となっていてもよい。
【0050】
また、可能であればロッド部材20が非磁性体で構成され、スライド部材30が磁性体によって構成されるステアリングロック装置に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,2 :ステアリングロック装置
10 :ケース部材
12 :蓋部材
12b :天板部
20 :ロッド部材(ストローク部材)
30 :スライド部材(ストローク部材)
60 :可動部材
図1
図2
図3
図4
図5