(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】物品搬送システム及び物品搬送方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20221020BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20221020BHJP
B65G 1/06 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B65G1/137 A
B65G1/04 555Z
B65G1/06 511
(21)【出願番号】P 2019030870
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉武 宏
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】長島 由和
(72)【発明者】
【氏名】近藤 昌晴
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-199562(JP,A)
【文献】特開2000-235415(JP,A)
【文献】特開2014-224000(JP,A)
【文献】特開2004-281622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00-1/133
B65G 1/14-1/20
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、前記プロセッサがアクセスする記憶装置と、を有する物品搬送システムであって、
前記プロセッサは、
物品の取り出し又は格納の作業の対象となる棚を、搬送装置が、前記棚に対する作業を行う作業場所に搬送するまでの搬送時間と、前記作業場所で行うことが予定されている作業が終了するまでの作業時間と、を計算し、
前記搬送時間と前記作業時間との差に基づいて、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加するか否かを判定
し、
少なくとも前記作業時間に基づいて、所定の終了条件が満たされるか否かを判定し、前記終了条件が満たされる場合に、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加しないことを特徴とする物品搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の物品搬送システムであって、
前記プロセッサは、前記作業場所で行うことが予定されている作業の所定の進行状況を検知したときに、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加するか否かを判定するための処理を開始することを特徴とする物品搬送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の物品搬送システムであって、
前記プロセッサは、
複数の前記作業場所のうち少なくとも一つを候補として選択し、
前記候補として選択された各作業場所について、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加するか否かを判定するための処理を実行することを特徴とする物品搬送システム。
【請求項4】
請求項3に記載の物品搬送システムであって、
前記プロセッサは、前記複数の作業場所のうち、前記作業場所で行うことが予定されている作業の所定の進行状況が検知された作業場所、又は、前記作業場所で行うことが予定されている作業の前記所定の進行状況が検知された作業場所及びその近隣の一以上の作業場所を、前記候補として選択することを特徴とする物品搬送システム。
【請求項5】
請求項1に記載の物品搬送システムであって、
前記記憶装置は、前記各棚から取り出されるか、又は格納される物品の識別情報及び個数を保持し、
前記プロセッサは、前記各棚から取り出されるか、又は格納される物品の種類、前記種類の数及び前記個数の少なくともいずれかに基づいて、前記作業時間を計算することを特徴とする物品搬送システム。
【請求項6】
請求項1に記載の物品搬送システムであって、
前記プロセッサは、前記搬送装置の現在の位置及び前記作業場所の位置に基づいて、前記搬送時間を計算することを特徴とする物品搬送システム。
【請求項7】
請求項1に記載の物品搬送システムであって、
前記プロセッサは、
複数の前記搬送装置から選択された搬送装置と、複数の前記棚から選択された棚と、の複数の組み合わせについて、前記作業時間及び前記搬送時間を計算し、
前記作業時間と前記搬送時間との差の絶対値が最小となる前記搬送装置と前記棚との組み合わせについて、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加すると判定することを特徴とする物品搬送システム。
【請求項8】
請求項7に記載の物品搬送システムであって、
前記プロセッサは、前記作業時間が前記搬送時間より長くなる前記搬送装置と前記棚との組み合わせのうち、前記作業時間と前記搬送時間との差の絶対値が最小となる組み合わせについて、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加すると判定することを特徴とする物品搬送システム。
【請求項9】
請求項7に記載の物品搬送システムであって、
前記複数の棚は、前記作業場所で行われる作業によって物品が取り出される複数の保管棚を含み、
前記搬送時間は、前記搬送装置が前記保管棚を前記作業場所まで搬送するための時間であることを特徴とする物品搬送システム。
【請求項10】
プロセッサと、前記プロセッサがアクセスする記憶装置と、を有する物品搬送システムであって、
前記プロセッサは、
物品の取り出し又は格納の作業の対象となる棚を、搬送装置が、前記棚に対する作業を行う作業場所に搬送するまでの搬送時間と、前記作業場所で行うことが予定されている作業が終了するまでの作業時間と、を計算し、
前記搬送時間と前記作業時間との差に基づいて、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加するか否かを判定し、
複数の前記搬送装置から選択された搬送装置と、複数の前記棚から選択された棚と、の複数の組み合わせについて、前記作業時間及び前記搬送時間を計算し、
前記作業時間と前記搬送時間との差の絶対値が最小となる前記搬送装置と前記棚との組み合わせについて、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加すると判定し、
前記複数の棚は、前記作業場所で行われる作業によって物品が取り出される複数の保管棚と、前記作業によって物品が格納される複数の仕分棚と、を含み、
前記搬送時間は、前記搬送装置が前記保管棚を前記作業場所に搬送するまでの時間及び前記搬送装置が前記仕分棚を前記作業場所に搬送するまでの時間のうち長い方であることを特徴とする物品搬送システム。
【請求項11】
請求項10に記載の物品搬送システムであって、
前記プロセッサは、前記作業時間が前記搬送時間より長くなる前記搬送装置と前記保管棚と前記仕分棚との組み合わせのうち、前記作業時間と前記搬送時間との差の絶対値が最小となる前記搬送装置と前記保管棚と前記仕分棚との組み合わせについて、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加すると判定し、
前記作業時間が前記搬送時間より長くなる前記搬送装置と前記保管棚と前記仕分棚の組み合わせのうち、前記作業時間と前記搬送時間との差の絶対値が最小となる前記搬送装置と前記保管棚と前記仕分棚との組み合わせが複数ある場合には、それらのうち、前記搬送装置が前記保管棚を前記作業場所まで搬送するための時間と前記搬送装置が前記仕分棚を前記作業場所まで搬送するための時間との差が最小となる組み合わせについて、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加すると判定することを特徴とする物品搬送システム。
【請求項12】
請求項1に記載の物品搬送システムであって、
前記終了条件は、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加したと仮定した場合の、前記棚に対する作業が終了するまでの時間が第1の閾値を超えること、又は、前記作業時間と前記搬送時間との差が第2の閾値を超えること、の少なくとも一方であることを特徴とする物品搬送システム。
【請求項13】
プロセッサと、前記プロセッサがアクセスする記憶装置と、を有する計算機システムが実行する物品搬送方法であって、
前記プロセッサが、物品の取り出し又は格納の作業の対象となる棚を、搬送装置が、前記棚に対する作業を行う作業場所に搬送するまでの搬送時間と、前記作業場所で行うことが予定されている作業が終了するまでの作業時間と、を計算する手順と、
前記プロセッサが、前記搬送時間と前記作業時間との差に基づいて、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加するか否かを判定する手順と、を含み、
前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加するか否かを判定する手順において、前記プロセッサは、少なくとも前記作業時間に基づいて、所定の終了条件が満たされるか否かを判定し、前記終了条件が満たされる場合に、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加しないと判定することを特徴とする物品搬送方法。
【請求項14】
プロセッサと、前記プロセッサがアクセスする記憶装置と、を有する計算機システムが実行する物品搬送方法であって、
前記プロセッサが、物品の取り出し又は格納の作業の対象となる棚を、搬送装置が前記棚に対する作業を行う作業場所に搬送するまでの搬送時間と、前記作業場所で行うことが予定されている作業が終了するまでの作業時間と、を計算する手順と、
前記プロセッサが、前記搬送時間と前記作業時間との差に基づいて、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加するか否かを判定する手順と、
前記プロセッサが、複数の前記搬送装置から選択された搬送装置と、複数の前記棚から選択された棚と、の複数の組み合わせについて、前記作業時間及び前記搬送時間を計算する手順と、
前記プロセッサが、前記作業時間と前記搬送時間との差の絶対値が最小となる前記搬送装置と前記棚との組み合わせについて、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加すると判定する手順と、を含み、
前記複数の棚は、前記作業場所で行われる作業によって物品が取り出される複数の保管棚と、前記作業によって物品が格納される複数の仕分棚と、を含み、
前記搬送時間は、前記搬送装置が前記保管棚を前記作業場所に搬送するまでの時間及び前記搬送装置が前記仕分棚を前記作業場所に搬送するまでの時間のうち長い方であることを特徴とする物品搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫及び工場等における物品を搬送するための搬送システム及び搬送方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物流倉庫及び工場では、作業者が出庫オーダーに従って敷地内に保管されている物品を収集し、出荷先へと仕分ける作業、すなわちピッキング作業が行われる。ピッキング作業の一例として、自動搬送車が保管物品を格納した保管棚を作業者の滞在する作業ステーションへ搬送し、搬送された保管棚から出庫オーダーに該当する物品をピッキングする、自動搬送車によるピッキングシステムが運用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、自動搬送車によるピッキングシステムを遂行する技術が開示されている。自動搬送車は、保管棚を作業者の場所へ搬送する際、搬送する保管棚の直下にもぐり込む。そして保管棚の最も低い高さの段板を自動搬送車が下から持ち上げることで、保管棚全体をリフトアップし、保管棚の足を浮かせた状態で搬送する。作業者は、物品の取り出しを行う作業ステーションにて、保管棚の到着を待つ。作業ステーションに保管棚が到着した後、作業者は出庫オーダーに記載された品目の物品を取り出し、出荷先ごとに分けられた間口又は小箱のうち、前記出庫オーダーに対応付けられた出荷先に該当する位置に、指定された数量投入することで、各出庫オーダーに対するピッキング作業を遂行する。ピッキング作業が完了した保管棚は、再び自動搬送車によって作業ステーションから搬出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、例えば以下の様な課題がある。作業ステーションに保管棚を搬送する場合、最短で到着可能な棚の移動時間が、搬送先の作業ステーションで先に行われる他の保管棚のピッキング作業の完了までの残作業時間より遅い場合、搬送先の作業ステーションの作業者は、先に行われたピッキング作業が完了した後、当該保管棚が到着するまでピッキング作業が行えず、待ち時間が生じる。また当該作業ステーションの残作業時間より到着時間が早い棚を搬送すると、搬送先の作業ステーション周辺に到着した当該保管棚は、搬送先の作業ステーションで行われているピッキング作業の完了、又は先に到着している他の保管棚のピッキング作業の完了を待つ。
【0006】
このように搬送先の作業ステーション周辺の自動搬送車が移動可能な通路に当該保管棚を搬送中の自動搬送車が滞在する場合、他の移動中の搬送車の通行を、当該保管棚及びこれを搬送する当該保管棚が阻むことが、渋滞及び他作業ステーションへの保管棚の搬送の遅延となることで、他の作業ステーションにおける作業者の保管棚到着の待ち時間発生につながる。
【0007】
この様な作業ステーションにおける保管棚の到着待ち時間の発生は、単位時間当たりのシステム全体のピッキング作業量の低下につながり、自動搬送車によるピッキングシステムの作業効率を低下させてしまう。それを防ぐために、自動搬送車によって搬送された保管棚が作業ステーションに到着するタイミングは、搬送先の作業ステーションの作業者が当該保管棚に対するピッキング作業の開始を待つ時間が発生せず、なおかつ当該保管棚が搬送先の作業ステーションにて他の保管棚に対するピッキング作業の完了を待つ時間が発生しないタイミングであることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題の少なくとも一つを解決するため、本発明は、プロセッサと、前記プロセッサがアクセスする記憶装置と、を有する物品搬送システムであって、前記プロセッサは、物品の取り出し又は格納の作業の対象となる棚を、搬送装置が、前記棚に対する作業を行う作業場所に搬送するまでの搬送時間と、前記作業場所で行うことが予定されている作業が終了するまでの作業時間と、を計算し、前記搬送時間と前記作業時間との差に基づいて、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加するか否かを判定し、少なくとも前記作業時間に基づいて、所定の終了条件が満たされるか否かを判定し、前記終了条件が満たされる場合に、前記搬送装置が前記棚を前記作業場所に搬送する指示を追加しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ピッキング作業予定の作業ステーションに保管棚が到着しておらず、当該保管棚のピッキング作業開始までに作業者に発生する待ち時間、及びピッキング作業予定の作業ステーションに到着した保管棚でピッキング作業が開始されるまでの待ち時間が共に削減され、ピッキングシステム全体の作業効率を向上することが可能である。
【0010】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1に係る搬送システムの全体概略図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る搬送システムの作業ステーションの詳細の説明図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る搬送システムの全体構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る運行管理装置及びオーダー管理装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る出庫作業開始後の作業ステーションにおいて、新たにピッキング候補とする追加の保管棚の搬送を運行管理装置が判断する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施例1におけるピッキング作業の保管棚及び仕分棚の搬送及びピッキング指示データの一例を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施例1に係る作業ステーションにおけるピッキング作業の推定残作業時間と、搬送候補となる保管棚の自動搬送車による推定搬送完了時間とに基づく、搬送する保管棚の決定の一例を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施例1に係る出庫作業開始後の作業ステーションのうち、搬送判定タイミングを検知した作業ステーションで新たにピッキングする保管棚の追加搬送を運行管理装置が判断する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施例2に係る搬送システムの全体概略図である。
【
図10】本発明の実施例2に係る出庫作業開始後の作業ステーションにおいて、新たにピッキング候補とする追加の保管棚の搬送を運行管理装置が判断する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施例2に係る、作業ステーションにおけるピッキング作業の推定残作業時間と、搬送候補となる保管棚及び仕分棚の自動搬送車による推定搬送完了時間とに基づく、搬送する保管棚及び仕分棚の決定の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1に係る搬送システムの全体概略図である。
【0014】
倉庫Wは、作業エリアW1と、物品の保管エリアW2とを有する。保管エリアW2には複数の保管棚DSが配置されている。各保管棚DSは、1種類以上の物品を収納している。そして保管エリアW2には、複数の自動搬送車ACが存在する。ここで自動搬送車ACは、保管棚DSを搬送する機能を有している。
【0015】
保管エリアW2の床面は、例えば、2次元格子で分割されており、後述する
図3に示されるWMS401及び運行管理装置403は、各格子(すなわち矩形の区画)の中心の座標値によって、自動搬送車ACと保管棚DSの位置を管理している。なお、格子の中心座標値ではなく、頂点座標値によって管理してもよい。また、各格子は、当該格子の座標値を含む座標マーカを有する。座標マーカは、例えば、格子上に貼着又は塗布されたバーコード(2次元コードも含む)である。バーコードは格子の座標値を含む情報である。
【0016】
また、作業エリアW1には、符号WS1、WS2で示されるものを含めて複数の作業ステーションWSiが存在している。本実施例では作業ステーションWSiにおいてピッキング作業が行われるため、作業ステーションをピッキングステーションと呼んでもよい。ここで、iは作業ステーションWSの番号であり、1≦i≦nを満たす整数である。nは2以上の整数であり、作業ステーションWSの総数を示す。本例では、n=2とする。
【0017】
例えばいずれの作業ステーションWSiにも共通する説明をする場合など、作業ステーションWSiを区別しない場合、作業ステーションWSと適宜称する。作業ステーションWSiは、ゲートGijと、端末Tiと、仕分棚SSiと、を有する。ここで、iは作業ステーションWSの番号である。また、ゲートGijのjは1≦j≦mを満たす整数であり、各作業ステーションWSに設置されているゲートGの番号である。本実施例では、m=2である。
【0018】
すなわち、各作業ステーションWSiには、1つの端末Ti及び仕分棚SSiと、m個のゲートGが設置されている。個々のゲートGij、端末Ti、仕分棚SSiを区別しない場合、ゲートG、ゲートGij、端末T、端末Ti、仕分棚SS又は仕分棚SSiと適宜称する。ゲートGijは、保管棚DSの到着地点となる。1つのゲートGijは、1つの保管棚DSに対応する。端末Tiには、物品の仕分け先(物品と、仕分棚SSiの仕分棚区画との対応情報)の一覧等が表示される。
【0019】
作業ステーションWSiに備えられている仕分棚SSiは、ゲートGijを介して保管棚DSからピッキングされた物品が載置される棚である。ここで、作業者Miのiは作業ステーションWSの番号であり、1≦i≦nを満たす整数である。nは2以上の整数であり、作業ステーションWSの総数を示す。本例では、n=2とする。作業者Miを区別しない場合、作業者M又は作業者Miと適宜称する。
【0020】
自動搬送車ACは以下の手順で保管棚DSを搬送する。まず自動搬送車ACは指定された保管棚DSの位置まで移動する。自動搬送車ACは指定された保管棚DSの真下に潜り込み、
図3に示す運行管理装置403からリフトアップ指示情報を受けると、自動搬送車ACの上面に設けられた図示しないジャッキ機構によって、保管棚DSを真上に持ち上げる。その後、自動搬送車ACは、保管棚DSを持ち上げたまま、作業エリアW1内の指定された作業ステーションWSに移動する。自動搬送車ACは、作業ステーションWSに到着すると、保管棚DSを床に降ろす。作業者Mによるピッキング作業が終了すると、自動搬送車ACは、再度保管棚DSを持ち上げて、保管棚DSを元の位置に戻す。
【0021】
図2は、本発明の実施例1に係る搬送システムの作業ステーションWSiの詳細の説明図である。
【0022】
図2には、自動搬送車ACによって搬送された保管棚DSが作業ステーションWSiに到着し、作業者MiがゲートGi2を介して保管棚DSに格納されている物品をピッキングして仕分棚SSiに格納する作業を行っている状態を示している。
【0023】
仕分棚SSiは、上下方向に複数の段が設けられていてもよく、さらに、それぞれの段が左右方向に複数の列に区切られていてもよい。例えば、作業者Miは、端末Tiに表示された一覧表に従って、保管棚DSからピッキングした物品をそれに対応する仕分棚SSiの区画に格納する。仕分棚SSiの各区画は、例えば段及び列の番号によって識別される。一例として各区画には、それを識別する番号が表示されている。その場合、作業者Miは表示された番号を参照して格納先を識別する。あるいは、各区画にそれが物品の格納先であるか否かを示す表示装置Diが設けられてもよい。その場合、端末Tiに表示された一覧表と、ピッキング作業の進捗状況とに応じて、次にピッキングされる物品の格納先の区画の表示装置Diが動作し、作業者Miはその表示を参照して、例えば動作した表示装置Diに対応する区画に、ピッキングした物品を格納してもよい。
【0024】
なお、一つの保管棚DSには、一つの品目の物品のみが格納されていてもよいが、一般には、複数の品目の物品が格納される。具体的には、各保管棚DSが複数の保管区画を有し、一つの保管区画に一つの品目の物品が格納されてもよい。保管区画とは、保管棚DSにおいて物品を格納可能な領域であり、間口とも呼ばれる。例えば、一つの保管棚DSが上下方向に複数の区画段に分割され、それぞれの区画段がさらに保管棚DSの一方の側面に近い部分と、もう一方の側面に近い部分とに分割され、さらにそれぞれの部分が左右方向に複数の区画列に分割され、それぞれの区画列が一つの保管区画として扱われてもよい。
【0025】
例えば、
図2に示す保管棚DSの内部は4つの区画段に分割されているが、それぞれの区画段がゲートGi2に向いている側面に近い部分と、その反対の側面に近い部分とに分割され、それぞれの棚のそれぞれの部分がさらに左右方向に複数の区画列に分割されてもよい。保管棚DSのそれぞれの側面に近い部分を以下の説明において棚面とも記載する。
【0026】
(搬送システムの一例)
図3は、本発明の実施例1に係る搬送システムの全体構成を示す機能ブロック図である。
【0027】
搬送システム400は、WMS(Warehouse Management System)401と、オーダー管理装置402と、運行管理装置(制御部)403と、自動搬送車ACと、端末Tiと、ゲート制御装置(図示省略)と、ゲートGijとを有する。WMS401は、オーダー管理装置402及び運行管理装置403と通信可能に接続されている。オーダー管理装置402、運行管理装置403、自動搬送車AC、端末Ti、及びゲート制御装置Gcは、ネットワーク410を介して互いに通信可能に接続されている。少なくとも、自動搬送車AC及は、ネットワーク410を介して無線通信可能に運行管理装置403と接続されている。
【0028】
WMS401は、オーダー管理装置402と、運行管理装置403とを制御する。具体的には、WMS401は、オーダー管理装置402にオーダー及び保管棚への入庫データを送信する。オーダーとは、ピッキングする物品の物品名、個数、及び配送先を含む情報である。保管棚への入庫データとは、物品が保管される保管棚DSに関するデータである。具体的に保管棚への入庫データは、例えば、各保管棚DSに収納されている物品の物品名、個数、当該物品が保管されている保管棚DSの識別情報、その物品が保管されている保管区画(間口)の位置情報(例えばその保管区画が属する棚面、区画段及び区画列の識別情報)等を含む。
【0029】
また、WMS401は、オーダー管理装置402での処理と、運行管理装置403での処理とを連携する。例えば、WMS401は、オーダー管理装置402から作業者M(
図1参照)による物品のピッキング作業の終了通知を受けると、運行管理装置403に当該保管棚DSを元の位置に戻すよう指示する。
【0030】
運行管理装置403は、自動搬送車ACの運行(例えば自動搬送車ACによる保管棚DSの搬送)を管理する。自動搬送車ACは、可視光カメラ又は赤外線カメラなどの読取デバイス(図示省略)を車体底部に有しており、移動中に床面をスキャンしている。例えば床面上の座標マーカがバーコードである場合、読取デバイスは、バーコードリーダである。そして、座標マーカが付された格子を通過する時に、読取デバイスが当該座標値を示すバーコードをスキャンすることによって、自動搬送車ACは、その座標値を取得する。自動搬送車ACは、取得した座標値を運行管理装置403に送信する。これによって、運行管理装置403は、各自動搬送車ACの現在位置を管理する。
【0031】
運行管理装置403は、オーダー管理装置402からWMS401を介して保管棚DSの搬送指示情報を受け付けると、配送すべき物品を保管する保管棚DSと、配送すべき物品の配送先の仕分棚区画を有する仕分棚SSiがある作業ステーションWSiとを特定する。そして、特定した保管棚DSの位置を取得し、その位置から特定した作業ステーションWSiの位置までの経路情報を生成する。このとき、運行管理装置403は、ある自動搬送車AC、例えば、特定した保管棚DSに最も近い自動搬送車ACに経路情報を送信し、経路情報に従って移動するよう指示する。
【0032】
図4(a)は、本発明の実施例1に係る運行管理装置403のハードウェア構成例を、
図4(b)は、本発明の実施例1に係るオーダー管理装置402のハードウェア構成例を、それぞれ示すブロック図である。
【0033】
本実施例の運行管理装置403は、
図4(a)に示すコンピュータ500のハードウェアによって実現することができる。コンピュータ500は、プロセッサ501と、記憶デバイス502と、入力デバイス503と、出力デバイス504と、通信インターフェース(通信IF)505と、を有する。プロセッサ501、記憶デバイス502、入力デバイス503、出力デバイス504、及び通信IF505は、バス506によって接続される。
【0034】
プロセッサ501は、コンピュータ500を制御する。記憶デバイス502は、プロセッサ501の作業エリアとなる。また、記憶デバイス502は、各種プログラム及びデータを記憶する非一時的な又は一時的な記録媒体である。記憶デバイス502としては、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、及びフラッシュメモリ等がある。
【0035】
本実施例の運行管理装置403として使用されるコンピュータ500の記憶デバイス502には、運行管理プログラム507及びレイアウト情報508が記憶される。本実施例において運行管理装置403が実行する処理は、実際には、プロセッサ501が運行管理プログラム507に従って、必要に応じて入力デバイス503、出力デバイス504及び通信インターフェース505等を制御して実行する。
【0036】
レイアウト情報508は、少なくとも、保管エリアW2内に存在する種々の物体の配置等に関する情報を含む。例えば、レイアウト情報508は、保管エリアW2内の各保管棚DSの位置、各保管棚の向き(すなわちどの棚面がどの方向を向いているか)、各保管棚の各保管区画に格納されている物品、各自動搬送車ACの位置、ゲートGの位置、ゲートGの向き、及び、保管棚DSをリフトアップした自動搬送車ACが移動可能な経路等の情報を含んでもよい。
【0037】
入力デバイス503は、データを入力する。入力デバイス503としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー及びスキャナ等がある。出力デバイス504は、データを出力する。出力デバイス504としては、例えば、ディスプレイ及びプリンタ等がある。通信IF505は、ネットワーク410と接続し、データを送受信する。
【0038】
本実施例のオーダー管理装置402は、
図4(b)に示すコンピュータ700のハードウェアによって実現することができる。コンピュータ700は、プロセッサ701と、記憶デバイス702と、入力デバイス703と、出力デバイス704と、通信インターフェース(通信IF)705と、を有する。プロセッサ701、記憶デバイス702、入力デバイス703、出力デバイス704、及び通信IF705は、バス706によって接続される。
【0039】
プロセッサ701は、コンピュータ700を制御する。記憶デバイス702は、プロセッサ701の作業エリアとなる。また、記憶デバイス702は、各種プログラム及びデータを記憶する非一時的な又は一時的な記録媒体である。記憶デバイス702としては、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、及びフラッシュメモリ等がある。
【0040】
本実施例のオーダー管理装置402として使用されるコンピュータ700の記憶デバイス702には、オーダー管理プログラム707、オーダー情報708及び保管物品情報709が記憶される。本実施例においてオーダー管理装置402が実行する処理は、実際には、プロセッサ701がオーダー管理プログラム707に従って、必要に応じて入力デバイス703、出力デバイス704及び通信インターフェース705等を制御して実行する。
【0041】
オーダー情報708は、少なくとも、種々の物品の出荷、入庫、出庫に関する物品と配送先の情報を含む。例えば、オーダー情報708は、本システムに保管されている物品からピッキングを遂行し、出荷する物品の種類及び物品数、物品名、出荷先の店舗名及び住所等の情報、本システムの保管棚に入庫する物品の種類、物品数及び物品名等の情報、並びに、出庫でピッキングを遂行する保管棚の棚ID、棚面及び間口の情報等を含んでもよい。
【0042】
図5は、本発明の実施例1に係る出庫作業開始後の作業ステーションにおいて、新たにピッキング候補とする追加の保管棚の搬送を運行管理装置403が判断する処理の一例を示すフローチャートである。
【0043】
運行管理装置403による自動搬送車ACへのピッキング対象の保管棚DSをある作業ステーションWSiに搬送させる指示は、オーダー管理装置402が搬送判定タイミングを検知することで計画される(S901)。本実施例においては、搬送判定タイミングとして、例えば仕分完了タイミングを採用することが可能である。
【0044】
仕分完了タイミングとは、本実施例において作業者Mがある出荷先への物品を作業ステーションWSiに到着した保管棚DSから取り出し、仕分棚区画へ物品を仕分けた時刻を指す。仕分棚SS又は仕分ゲートに設置されているピッキング作業の仕分け先表示装置Diが含む作業完了ボタン等を作業者Miが押した場合、その仕分け作業の完了時刻をオーダー管理装置402が仕分完了タイミングとして検知するようなシステムが一例として挙げられる。
【0045】
また、端末Tiのディスプレイ上に表示された作業完了返信要求のボタンを、作業者Miが当該出庫オーダーのピッキング作業の完了時に押すことでも、仕分完了タイミングを検知することが可能である。更に、作業者Miがハンディターミナル等の物品IDをスキャンするデバイスを有しており、出荷先への仕分けが完了した物品のバーコード又はRFIDタグ等を当該デバイスによって読み込み、処理の完了を通知することで、仕分完了タイミングを検知することも可能である。その他、仕分け間口にセッティングされたライトカーテン等の装置で仕分け動作を行った際に作業者Miが間口に手を入れる動作を計測することで、仕分完了タイミングを検知することも一例として可能である。
【0046】
その他の搬送判定タイミングとして、仕分完了タイミングの検知機能と同様の仕組みを利用して、保管棚DSから商品を取り出した取り出し完了タイミングを採用してもよい。あるいは、倉庫管理システム401、オーダー管理装置402又は運行管理装置403が、ある時間間隔ごとに発生させる間隔タイミングを採用してもよい。あるいは、仕分け完了タイミング又は取り出し完了タイミングに基づいてある遅延時間を加算した関連タイミングを採用してもよい。
【0047】
あるいは、自動搬送車ACが作業ステーションWSiにおけるピッキング作業の完了した保管棚DSを保管エリアに戻し、自動搬送車ACの状態が次の搬送タスクを指示可能な状態へと変化した待機タイミングを採用してもよい。あるいは、自動搬送車ACの状態が故障状態又は駆動用バッテリーの低下状態から保管棚の搬送タスクが実行可能な状態に復帰した復旧タイミングを採用してもよい。
【0048】
搬送判定タイミングは上記に限定されず、種々のタイミングを搬送判定タイミングとして採用することができる。例えば、作業ステーションWSiにおける作業について所定の進行状況が検知されたタイミングを搬送判定タイミングとしてもよい。上記の仕分け完了タイミング及びその他の種々のタイミングは、所定の進行状況が検知されたタイミングの例である。
【0049】
オーダー管理装置402又は倉庫管理システム401が搬送判定タイミングを検知した場合、オーダー管理装置402又は運行管理装置403は、自動搬送車ACによる作業ステーションWSへの保管棚搬送を指示するか否かを搬送追加条件に基づいて判定する。運行管理装置403は、作業ステーションの候補を選定して(S902)、その作業ステーションの候補への保管棚搬送を指示するか否かを搬送追加条件に基づいて判定する。
【0050】
作業ステーションの候補として、すべての作業ステーションWSが選定されてもよいし、特定の作業ステーションWS、例えば搬送判定タイミングとなる仕分完了タイミングを検知した作業ステーションWSが選定されてもよい。また、上記の例において、特定の作業ステーションWSは、仕分完了タイミングを検知した作業ステーションWSの近隣に設置された作業ステーションWSなどを含む、複数の作業ステーションWSであってもよい。
【0051】
図6は、本発明の実施例1におけるピッキング作業の保管棚及び仕分棚の搬送及びピッキング指示データ600の一例を示す説明図である。
【0052】
この搬送及びピッキング指示データ600は、出荷先への配送に必要な商品とその個数を有する保管棚のID、間口、商品数、及び出荷先に対応する出荷箱を搭載している仕分棚のID、間口、商品数の情報が、一意に纏められた情報となっている。この情報は、例えば、オーダー管理装置402として使用されるコンピュータ700の記憶デバイス702、又は、運行管理装置403として使用されるコンピュータ500の記憶デバイス502の少なくとも一方に保持されてもよい。従って本実施例では、どの保管棚DSとどの仕分棚SSとの間でピッキング作業が行われるか、は予めオーダー管理装置402が決定しており、運行管理装置403が保管棚DSを搬送する自動搬送車ACを選択した上で、搬送指示を行う。
【0053】
具体的には、搬送及びピッキング指示データ600は、ID601、物品名602、個数603、保管棚604、保管間口段605、保管間口列606、仕分棚607、仕分間口段608、仕分間口列609及び出荷箱610を含む。
【0054】
ID601は、搬送及びピッキング指示データ600の各レコードを識別する。物品名602及び個数603は、ピッキング作業の対象の物品の品目及び個数を示す。保管棚604は、当該物品が格納されている保管棚DSを示す。保管間口段605及び保管間口列606は、当該物品が格納されている保管棚DSの間口の段数及び列数を示す。仕分棚607は、当該物品の仕分け先の仕分棚SSを示す。仕分間口段608及び仕分間口列609は、当該物品の仕分け先の仕分棚SSにおける、仕分け先の間口の段数及び列数を示す。出荷箱610は、当該物品の仕分け先の出荷箱を示す。
【0055】
例えば、
図6の例の先頭の(IDが「1」である)レコードは、保管棚「DS1」の1段目の1列目の間口に格納されている物品「A」を10個ピッキングして、それを、仕分棚SS1の1段目の1列目の間口に置かれた出荷箱「SH01」に仕分けることを指示するものである。
【0056】
再び
図5を参照して、追加の搬送指示の作成及びその指示を出力するか否かの判定について説明する。例えば、運行管理装置403は、ある作業ステーションWSに対して自動搬送車ACによる保管棚DSの搬送が既に計画されている場合に、作業者が当該保管棚DSに対して行うピッキング作業の推定残作業時間と、自動搬送車ACによる当該保管棚DSの当該作業ステーションWSへの推定搬送完了時間と、を算出し、算出した推定残作業時間と搬送完了時間との差が所定の条件を満たす場合に、自動搬送車ACへ保管棚DSの搬送を指示してもよい。以下、詳細に説明する。
【0057】
運行管理装置403は、S902にて選定した作業ステーションWSの候補から、保管棚搬送の追加をチェックする作業ステーションWSを選択する(S903)。S902にて選定された作業ステーションから搬送指示の追加を行う順序の決定方法としては、例えば推定残作業時間が少ない作業ステーションWSから昇順で決定する方法が挙げられる。ただし、この方法は一例であり、例えば作業ステーションのID番号の順など、任意の方法で順序を決めることができる。
【0058】
次に、運行管理装置403は、選択した作業ステーションWSの推定残作業時間を算出する(S904)。この推定残作業時間は、一例として、一商品当たりの典型的なピッキング作業に要する時間、ピッキング予定の物品の物品数、オーダー件数、保管棚DS内の物品の格納位置、物品の投入先となる仕分棚SS内の出荷箱の位置、又は、WMS401もしくはオーダー管理装置402に記録された各物品のIDに対応する商品サイズなどから算出することが可能である。また当該作業ステーションWSにて作業中の作業者MiのID及び身長などの情報を残作業時間の推定に用いることも可能である。更に推定残作業時間は、保管棚DSが自動搬送車ACによって作業ステーションWSへ搬送されるまでの到着待ち時間を含んでも良い。
【0059】
なお、上記のようにS903で搬送指示の追加を行う順序を決める際に推定残作業時間を利用する場合には、S903においてS904と同様の処理を行ってもよい。その場合は、S904は省略してもよい。
【0060】
次に、運行管理装置403は、推定搬送完了時間の算出の対象となる、自動搬送車ACの候補を選定する(S905)。一例として、運行管理装置403が制御可能なすべての自動搬送車ACを対象として推定搬送完了時間を算出することが挙げられる。すなわち、その場合、運行管理装置403が制御可能なすべての自動搬送車ACが候補として選定される。
【0061】
あるいは、特定の選択条件に基づき一部の自動搬送車ACを推定搬送完了時間の算出対象として選定することも可能である。特定の選択条件に基づく一部の自動搬送車ACとは、例えば、搬送作業を行っていない待機状態の自動搬送車AC、所定の一部の区画に存在する自動搬送車AC、充電が予定されておらず、かつ、充電中でもないすべての自動搬送車AC、充電状態から復旧した自動搬送車AC、又は、これらの条件を組み合わせた複数条件を満足する自動搬送車ACなどである。
【0062】
次に、運行管理装置403は、自動搬送車ACによる推定搬送完了時間の算出の対象となる、保管棚DSの候補を選定する(S906)。例えば、当該作業ステーションWSにてピッキング作業が予定されており、かつ、未だ自動搬送車ACによる搬送指示が予定されていない、すべての保管棚DSを計算対象とすることが可能である。
【0063】
あるいは、自動搬送車ACによる搬送予定がなく、保管エリアに配置されている保管棚DS、ある作業ステーションWSでのピッキング作業か完了し、その他の搬送予定がなく保管エリアへ搬送中の保管棚DS、又はこれらの条件を組み合わせた複数条件を満足する保管棚DSなど、特定の選択条件に基づき保管棚DSを選択することも可能である。
【0064】
運行管理装置403は、以上の選択条件に基づき選択された自動搬送車ACと保管棚DSの組み合わせに関して、ある自動搬送車ACがある保管棚DSを当該作業ステーションWSへ搬送する場合の推定搬送完了時間を算出する(S907)。ある自動搬送車ACがある保管棚DSを当該ステーションWSへ搬送する推定搬送完了時間は、一例として、ダイクストラ法又はA*法などの最短経路探索のアルゴリズムに基づき現在地から目的地への経路を算出し、自動搬送車ACの移動速度、加速度及び車体の旋回速度に基づいて上記の経路を走行した場合の移動開始地点から目的地到着までの走行時間を用いて算出することが可能である。
【0065】
また、推定搬送完了時間は、必要に応じて、置かれた状態の保管棚DSを自動搬送車ACが持ち上げる時間、及び、自動搬送車ACによって持ち上げられた状態の保管棚DSが置かれる時間を加味して算出される。更に、推定搬送完了時間は、算出を行う時刻において対象の保管棚DSが他の搬送指示に従い他の作業ステーションWSに搬送中である場合、又は、搬送先の他の作業ステーションWSにおいてピッキング作業中である場合に、これらの作業時間を加味して算出することも可能である。
【0066】
推定搬送完了時間の他の算出方法の一例として、過去の運用における自動搬送車ACの移動データを機械学習し、経路探索時の自動搬送車ACの運行状態、位置、目的地、他の自動搬送車ACの運行状態、及び、当該エリア内における保管棚DSの配置状況などを入力として算出することも可能である。また、別の例として、自動搬送車ACの出発地点、経由地、および目的地を移動した場合の推定移動時間をデータテーブルとして管理し、推定移動時間を自動搬送車ACが実際にその経路を移動することで要した時間に基づき更新し、このデータテーブルから最短時間で移動可能な経路を選択する方法なども挙げられる。
【0067】
当該作業ステーションWSにおける推定残作業時間(以下の説明ではERWTとも記載する)より、ある自動搬送車ACとある保管棚DSの組み合わせに関して計算された推定搬送完了時間(以下の説明ではECTTとも記載する)が短く、かつ、当該ECTTとERWTとの差が、自動搬送車ACと保管棚DSの全ての組み合わせに関して計算されたECTTとERWTとの差の中で最も小さい場合、運行管理装置403はこの搬送を指示することが望ましい。
【0068】
推定搬送完了時間ECTT<推定残作業時間ERWTであることは、当該作業ステーションWSの作業者Miが、ある自動搬送車ACによって搬送されたある保管棚DSの到着までの待ち時間が発生する可能性が低いことを意味する。また、推定搬送完了時間ECTTと推定残作業時間ERWTとの差が最小であることは、当該作業ステーションWS以外の他の作業ステーションWSにおいてある保管棚DSの商品のピッキングが行われる場合に、当該他の作業ステーションWSへ当該保管棚DSを搬送するための搬送完了時間を最小限に抑える可能性があることを意味する。
【0069】
すなわち、当該作業ステーションWSと他の作業ステーションWSでともに保管棚DSの到着待ち時間が発生しないように自動搬送車ACと保管棚DSの組み合わせを選択し、搬送を計画することができる。以上の作業ステーションWSにおけるピッキング作業の推定残作業時間ERWTと、自動搬送車による保管棚の推定搬送完了時間ECTTとに基づき、運行管理装置403は新たに作業ステーションWSへ搬送する保管棚DSと自動搬送車ACとを決定する。
【0070】
また、推定搬送完了時間ECTT<推定残作業時間ERWTを満足する自動搬送車ACと保管棚DSの組み合わせが存在しない場合、運行管理装置403は最小の推定搬送完了時間ECTTを実現する自動搬送車ACと保管棚DSの組み合わせを選択することが望ましい。これは、当該作業ステーションWSにて運行管理装置403が搬送指示を出す保管棚DSの到着までに発生するピッキング開始までの待ち時間を最小に抑えるためである。
【0071】
図7は、本発明の実施例1に係る作業ステーションWSにおけるピッキング作業の推定残作業時間と、搬送候補となる保管棚DSの自動搬送車ACによる推定搬送完了時間とに基づく、搬送する保管棚DSの決定の一例を示す説明図である。
【0072】
図7に示す決定の契機となる搬送判定タイミングは、作業ステーションWSにおける仕分完了タイミングとする。また
図7の例では、搬送の候補となる自動搬送車ACは1台、搬送の候補となる保管棚DSは保管棚DS1及びDS2の2棚が存在する場合を想定し、それぞれの推定搬送完了時間を20秒、50秒とする。さらに、
図7の例では、搬送判定タイミングを検知した時刻における作業ステーションWSの推定残作業時間が100秒、60秒、および0秒の場合を想定する。
【0073】
推定残作業時間が100秒の場合、推定残作業時間と搬送候補となる保管棚の推定搬送完了時間との差は、保管棚DS2の場合でも50秒ある。したがって保管棚DS2を搬送指示した場合でも、保管棚DS2は搬送先の作業ステーションWS周辺でピッキングされないまま50秒滞在することになる。ピッキングされずに作業ステーションWS周辺に滞在する保管棚DSは、他の自動搬送車ACの移動を阻害する渋滞を発生しうる要因を生む。
【0074】
また、他の作業ステーションWSで当該搬送中の保管棚DSがピッキング対象となっている場合、当該搬送中の保管棚DSの搬送先の作業ステーションWSにおけるピッキング作業が完了したのち、当該保管棚DSを他の作業ステーションWSへ搬送することになる。この場合他の作業ステーションWSでは待ち時間が発生しうる要因となる。
【0075】
一方、保管棚DS1の場合、推定残作業時間と保管棚DS1の推定搬送完了時間との差は80秒となり、上記のDS2の場合よりさらに長い待ち時間が発生しうる。
【0076】
したがって、この例において、推定残作業時間が100秒の場合、運行管理装置403は保管棚DS1及びDS2のいずれの搬送も指示しないことが望ましい。
【0077】
推定残作業時間が60秒の場合、推定残作業時間と保管棚DS2の推定搬送完了時間との差は10秒であり、推定残作業時間と保管棚DS1の推定搬送完了時間との差は40秒である。この場合、運行管理装置403は、作業ステーションWSでピッキング残作業が完了する10秒前に(すなわちピッキング残作業が終わりそうなタイミングで)到着する保管棚DS2の搬送を指示する。
【0078】
仮に運行管理装置403が保管棚DS1の搬送を指示してしまうと、保管棚DS1が作業ステーションWSの周辺に到着しても、40秒の残作業が存在するため、保管棚DS1は作業ステーションの周辺で残作業の完了を待つ必要がある。この待ち時間において、保管棚DS1が他の自動搬送車ACの通行を阻害することがあると、阻害された自動搬送車ACは、保管棚DS1を搬送中の自動搬送車の移動を待つか、又は、自動搬送車ACが運行管理装置403の再経路探索によって指示された変更経路を走行することになる。これによって、目的地までの移動に遅れが生じ、結果的に当該他の自動搬送車ACが搬送する保管棚の到着を待っていた作業ステーションWSでの効率を低下させてしまう。
【0079】
これに対して、上記の保管棚DS2のように、搬送時間と残作業時間の差がなるべく短い保管棚DSの搬送を指示することで、他の自動搬送車ACへの渋滞発生リスクを低減しつつ、自身の目的地とする搬送先での待ち時間を小さくする搬送が可能となる。
【0080】
システムの運用の開始時など、推定残作業時間が0秒の場合、運行管理装置403は、推定搬送完了時間が短い保管棚DS1の搬送を自動搬送車に指示することが望ましい。これは、保管棚DS1の搬送を指示することで、搬送先の作業ステーションWSにおけるピッキング作業を行うまでの待ち時間を最小に抑えられるためである。
【0081】
なお、上記の例では、推定搬送完了時間<推定残作業時間を満足する自動搬送車ACと保管棚DSの組み合わせが一つ以上存在する場合には、新たに作業ステーションWSへ搬送する保管棚DSと自動搬送車ACとの組み合わせは、必ず推定搬送完了時間<推定残作業時間を満足する組み合わせの中から選択される。しかし、推定搬送完了時間<推定残作業時間を満足するか否かにかかわらず、推定搬送完了時間と推定残作業時間との差が最も小さい組み合わせを選択する実施形態も、本発明の実施形態の一例である。この実施形態でも、搬送先の作業ステーションWSにおけるピッキング作業を行うまでの待ち時間を減らす効果が期待できる。ただし、推定搬送完了時間<推定残作業時間を満足する組み合わせを優先することによって、より確実に待ち時間を減らすことができる。
【0082】
当該作業ステーションWSへの搬送を決定したのち、運行管理装置403は決定した搬送先の作業ステーションWSの推定残作業時間を更新する。これによって、搬送が決定した保管棚DSに対するピッキング作業時間が推定残作業時間に加算される。更に、更新した推定残作業時間を元に、運行管理装置403は搬送追加終了条件をチェックする(S908)。
【0083】
本実施例において、搬送追加終了条件は、搬送を決定した保管棚DSの推定残作業時間の合計が閾値時間TH1を超えないように設定することが一例として挙げられる。また、別の例として、自動搬送車ACの推定搬送完了時間と推定残作業時間との差が閾値時間TH2を超えないように搬送追加終了条件を設定することが可能である。あるいは、それらの条件の少なくとも一方が満たされる場合に、搬送追加終了条件が満たされると判定してもよい。
図7の例のうち、推定残作業時間が100秒の場合に、いずれの保管棚DSも選択されない例は、上記の搬送追加終了条件が満たされた場合の一例である。
【0084】
前者の場合、例えば、運行管理装置403は、S907で推定搬送完了時間を算出して保管棚DSについて、搬送を決定したと仮定した場合の当該保管棚DSに関する推定残作業時間(例えば当該保管棚DSの作業ステーションWSまでの搬送が完了して、当該保管棚DSに対するピッキング作業が終了するまでの時間)を計算して、その推定残作業時間が閾値時間TH1を超える場合には搬送追加終了条件を満足すると判定してもよい。
【0085】
また、これらの搬送条件について、候補となる自動搬送車ACの状態によって異なる搬送追加終了条件を設定してもよい。例えば、搬送指示がない自動搬送車ACに対しては閾値時間TH1に基づく搬送指示を行い、他の保管棚搬送を行っている自動搬送車ACに対してはTH2に基づく搬送指示を行う、という設定も可能である。
【0086】
搬送を決定した保管棚DSの推定残作業時間の合計を、例えば閾値時間TH1によって制限することは、特定の作業ステーションWSに作業予定が集中することの防止につながり、システム全体としての作業効率の向上に寄与する。また、自動搬送車ACの推定搬送完了時間と推定残作業時間との差を、例えば閾値時間TH2によって制限することは、保管棚DSの作業ステーションWSへの早すぎる到着及びそれに起因する渋滞の発生を防止することにつながり、システム全体としての作業効率の向上に寄与する。
【0087】
搬送追加終了条件を満足しない場合、運行管理装置403は候補の自動搬送車ACと保管棚DSの組み合わせによる搬送を計画する(S909)。次に、運行管理装置403は、計画された搬送の対象の保管棚DSによるピッキング作業及びその搬送計画に基づいて、搬送先の作業ステーションWSの推定残作業時間を更新する(S910)。
【0088】
その後、運行管理装置403は、更新された推定残作業時間に基づき、同じ作業ステーションWSへの搬送指示の追加を、S908の搬送追加終了条件が満足されるまで繰り返す。S908の搬送追加終了条件が満足されると、運行管理装置403は、追加の搬送を指示せずに(S909’)、当該作業ステーションWSへの搬送指示追加を完了する。
【0089】
ある作業ステーションWSへの保管棚DSの搬送指示追加が完了したのち、運行管理装置403は、S902において候補として選定された全ての作業ステーションWSについて保管棚の搬送指示の追加をチェックしたか(すなわち全ての作業ステーションWSについてS903~S910の処理が終了したか)を判定する(S911)。
【0090】
まだチェックしていない作業ステーションWSがある場合、運行管理装置403は、S903に戻り、選定候補から未選択の作業ステーションWSを選択し、保管棚DSの搬送指示を追加する。一方、S902にて候補として選定された全ての作業ステーションWSについて保管棚DSの搬送指示の追加のチェックが完了した場合、一連の搬送指示の追加フローが完了する(S912)。
【0091】
図8は、本発明の実施例1に係る出庫作業開始後の作業ステーションWSのうち、搬送判定タイミングを検知した作業ステーションWSで新たにピッキングする保管棚DSの追加搬送を運行管理装置403が判断する処理の一例を示すフローチャートである。
【0092】
図5で述べたフローとは異なり、
図8におけるフローでは搬送追加を確認する作業ステーションWSの選定(S902)と選択(S903、S911)のステップが必要なく、搬送判定タイミングを検知した作業ステーションWSについてのみ、保管棚DSの搬送追加が必要かを確認すればよい。
【0093】
図8のS1001は
図5のS901に、S1001~S1008はそれぞれ
図5のS904~S910に対応するため、これらのステップの説明は省略する。
【実施例2】
【0094】
次に、本発明の実施例2を説明する。以下に説明する相違点を除き、実施例2の搬送システムの各部は、
図1~
図8に示された実施例1の同一の符号を付された各部と同一の機能を有するため、それらの説明は省略する。
【0095】
図9は、本発明の実施例2に係る搬送システムの全体概略図である。
【0096】
倉庫Wは、実施例1と同様に、作業エリアW1と、物品の保管エリアW2とを有する。本実施例では仕分棚SSも自動搬送車による搬送が可能である。例えば、仕分棚SSは保管棚DSと同等のサイズを有する棚である。ただし仕分棚SSは間口の仕切られ方が保管棚DSと異なっていてもよい。
【0097】
仕分棚SSは保管棚DSと同等に管理され、例えば保管棚DSと同じく物品の保管エリアに配置されている。また、配置されている棚のうち、商品が積載されていない棚は用途を決定しなくてもよい。その場合、例えば、システムの運用状況に応じて、オーダー管理装置402又は運行管理装置403が、その棚を保管棚DS又は仕分棚SSのいずれとして使用するかをその都度決定するという運用も可能である。
【0098】
ピッキング作業で商品を取り出す保管棚DSと、商品を投入する仕分棚SSは共に作業ステーションWSへ搬送される。作業ステーションWSにおけるピッキング作業は、一例として、商品を取り出す保管棚DSと投入する仕分棚SSの両方が当該作業ステーションWSに揃ったタイミングに開始してもよい。
【0099】
また、保管棚DSが先に到着した場合は、商品の取り出し作業だけを先に行う、というピッキング作業指示をオーダー管理装置402が出すことも可能である。作業ステーションWSにて商品が投入される仕分棚SSは、ピッキング作業中に自動搬送車ACが搬送して、持ち上げられたままの状態又は床に置かれた状態のどちらでも作業者は作業が可能である。
【0100】
搬送システム400の全体構成、並びに、搬送システム400の運行管理装置403及びオーダー管理装置402のハードウェア構成は、一例として実施例1と同等の構成をとることが可能であり、例えば
図1から
図4に示すように構成される。
【0101】
本実施例では、仕分棚SSも自動搬送車ACによって搬送されるため、実施例1の作業ステーションWSで保管棚DSの到着場所に設けられていたゲートと同様のゲートが、仕分棚SSの到着場所にも設けられている。一例として、保管棚DS側のゲートには、商品の取り出し間口及び取り出す商品数の表示装置と、商品取り出し完了確認のボタンとが設置されてもよい。一方、仕分棚SS側のゲートには、商品の投入間口及び投入数の表示装置と、商品投入完了確認のボタンとが設置されてもよい。これらの装置によって、例えば商品の取り出し又は投入が完了したかといった情報を抽出することができる。
【0102】
図10は、本発明の実施例2に係る出庫作業開始後の作業ステーションWSにおいて、新たにピッキング候補とする追加の保管棚DSの搬送を運行管理装置403が判断する処理の一例を示すフローチャートである。
【0103】
図10に示したフローは、S1108及びS1109を除いて、実施例1における
図5のフローと等しい。具体的には、S1101~S1107がそれぞれ
図5のS901~S907と同等であり、S1110~S1114がそれぞれ
図5のS908~S912と同等である。
【0104】
実施例2における推定搬送完了時間は、一例として、ある保管棚DSとある仕分棚SSがある自動搬送車ACによって作業ステーションWSへ搬送され、両者が揃うまでに要する時間とする(ただし、保管棚DSと仕分棚SSはそれぞれ別の自動搬送車ACによって搬送されてもよいし、一つの自動搬送車ACによって順に搬送されてもよい)。すなわち、保管棚DSの推定搬送完了時間と仕分棚SSの推定搬送完了時間のうち、長い方の推定搬送時間を、保管棚DS及び仕分棚SSの推定搬送完了時間とする。
【0105】
従って、本実施例では搬送候補となる仕分棚SSを選定し、候補の仕分棚SSと候補の自動搬送車ACの組み合わせによる当該作業ステーションWSへの推定搬送完了時間を算出する必要がある。このため、
図10ではS1108及びS1109のステップが設定されている。また、S1110では、S1107で算出された推定搬送完了時間と、S1109で算出された推定搬送完了時間と、のうち長い方と推定残作業時間とが比較される。また、S1111にて行われる追加の搬送指示は、保管棚DSと仕分棚SSの両方に関する自動搬送車ACの搬送指示を含んでいる。
【0106】
本実施例におけるピッキング作業の保管棚と仕分棚の搬送およびピッキング指示データも実施例1と同等の情報から構成され、例えば
図6で示されたデータを用いることが可能である。すなわち、本実施例でも、どの保管棚DSとどの仕分棚SSとの間でピッキング作業が行われるか、は予めオーダー管理装置402が対応づけており、保管棚DSを作業ステーションWSへ搬送する自動搬送車ACと仕分棚SSを作業ステーションWSへ搬送する自動搬送車ACとを選択した上で、搬送指示を行う。
【0107】
本実施例における追加の搬送指示の作成及びその指示を出力するか否かの判定は、例えば次のように行われる。すなわち、運行管理装置403は、ある作業ステーションWSに対して自動搬送車ACによる保管棚DS及び仕分棚SSの搬送が既に計画されている場合に、作業者が当該保管棚DS及び当該仕分棚SSに対して行うピッキング作業の推定残作業時間と、自動搬送車ACによる保管棚DS及び仕分棚SSの当該作業ステーションWSへの推定搬送完了時間と、を算出し、算出した推定残作業時間と搬送完了時間との差が所定の条件を満たす場合に、自動搬送車ACへ保管棚DS及び仕分棚SSの搬送を指示してもよい。
【0108】
図11は、本発明の実施例2に係る、作業ステーションWSにおけるピッキング作業の推定残作業時間と、搬送候補となる保管棚DS及び仕分棚SSの自動搬送車ACによる推定搬送完了時間とに基づく、搬送する保管棚DS及び仕分棚SSの決定の一例を示す説明図である。
【0109】
図11に示す決定の契機となる搬送判定タイミングは、作業ステーションWSにおける仕分完了タイミングとする。また
図11で搬送の候補となる自動搬送車ACは2台、搬送の候補となる保管棚はDS1、DS2の2棚が存在する場合を想定し、それぞれの推定搬送完了時間を20秒、50秒とする。また保管棚DS1及びDS2から取り出した商品を投入する出荷箱を格納している仕分棚SS1及びSS2の2棚が存在する場合を想定し、それぞれの推定搬送時間を10秒、90秒とする。
【0110】
図11の例では、搬送判定タイミングを検知した時刻における作業ステーションWSの推定残作業時間が100秒、60秒、および0秒の場合を想定する。
【0111】
最初に、推定残作業時間が100秒の場合について検討する。推定残作業時間と搬送候補となる棚の推定搬送完了時間の差は、保管棚DS1と仕分棚SS2を搬送する場合に90秒である。これは、仕分棚SS2の推定搬送完了時間(90秒)が保管棚DS1の推定搬送時間(20秒)より長く、両者が搬送先の作業ステーションWSに揃うまでにかかる時間は90秒になるためである。
【0112】
この場合、推定残作業時間(100秒)が保管棚DS1と仕分棚SS2の推定搬送完了時間(90秒)よりも長く、なおかつ両者の差が10秒である。従って保管棚DS1と仕分棚SS2を搬送した場合に作業ステーションWSで棚の到着待ち時間は発生せず、なおかつ仕分棚SS2が作業ステーションWSにおける他の棚のピッキング作業完了を待つ時間は10秒と短く、他の棚の搬送を阻害し渋滞を発生させる懸念は少ない。したがって、
図11の例において、推定残作業時間が100秒の場合、運行管理装置403は仕分棚SS2の搬送を指示することが望ましい。
【0113】
一方、保管棚DSについては、保管棚DS1及びDS2のいずれの推定搬送完了時間(それぞれ20秒及び50秒)も、仕分棚SS2の推定搬送完了時間(90秒)より短い。このため、いずれを選択しても、作業ステーションWSで棚の到着待ち時間は発生しない。しかし、保管棚DS1及びDS2が作業ステーションWSに到着してから他の棚のピッキング作業完了を待つ時間は、それぞれ80秒及び50秒となる。この待ち時間が長いほど、他の棚の搬送を阻害することによる渋滞の発生の懸念が強まり、また、その棚を他の作業ステーションWSが利用できない時間が長くなることになる。このため、運行管理装置403は保管棚DS2の搬送を指示することが望ましい。
【0114】
次に、推定残作業時間が60秒の場合について検討する。保管棚DS2と仕分棚SS1を搬送する場合、推定搬送完了時間は、保管棚DS2の推定搬送完了時間(50秒)と仕分棚SS1の推定搬送完了時間(10秒)のうち長い方である50秒となる。このため、推定搬送完了時間(50秒)と推定残作業時間(60秒)との差は10秒となる。
【0115】
この場合も、推定残作業時間(60秒)が推定搬送完了時間(50秒)よりも長く、かつ両者の差が10秒と小さいため、運行管理装置403は、保管棚DS2及び仕分棚SS1の搬送を指示することが望ましい。これによって、推定残作業時間が100秒の場合と同様の効果によって搬送先及び他の作業ステーションで待ち時間が小さくなり、他の棚の搬送を阻害し渋滞を発生させる懸念が少なくなる。
【0116】
一方、運用の開始時など、推定残作業時間が0秒の場合、搬送先の待ち時間を最小にするために、運行管理装置403は推定搬送完了時間が最小の保管棚と仕分棚の搬送を自動搬送車に指示することが望ましい。すなわち、運行管理装置403は、推定搬送完了時間が最小(それぞれ20秒及び10秒)である保管棚DS1及び仕分棚SS1の搬送を指示することとで、待ち時間最小を実現できる。
【0117】
上記のように、運行管理装置403は、候補となる保管棚DSと仕分棚SSの組み合わせが複数存在する場合に、長い方の推定搬送完了時間と推定残作業時間との差が最も小さいものを選択してそれらの搬送を指示することが望ましい。これによって、ピッキング作業の待ち時間を減らすことができ、作業効率が向上する。このとき、運行管理装置403は、長い方の推定搬送完了時間が推定残作業時間より短いものを選択することが、より望ましい。これによって、ピッキング作業の待ち時間をより確実に減らすことができる。また、そのような条件を満たす保管棚DSと仕分棚SSの組み合わせが複数存在する場合には、それらのうち、保管棚DSの推定搬送完了時間と仕分棚SSの推定搬送完了時間との差が最も小さいものを選択することが望ましい。これによって、棚の待ち時間を減らすことができる。
【0118】
以上、実施例1及び実施例2の二つの実施形態を説明したが、その他の実施形態に関しても本発明の効果は有効である。例えば、実施例1と実施例2が混在した形態、すなわち、床に固定された仕分棚SSを有する作業ステーションWSと自動搬送車ACによって搬送可能な仕分棚SSを有する作業ステーションWSの両方が混在した作業エリアW1によって構成される搬送システム、又は、1つの棚で同時に商品の保管用途と仕分用途の両方を担う場合の搬送システム等が考えられる。このような搬送システムでも、本発明による作業ステーションWSの推定残作業時間と自動搬送車ACによる棚の推定搬送完了時間の差に基づく搬送の指示方法は、作業ステーションWSの待ち時間を削減することが可能である。
【0119】
以上の複数の実施例にて説明した通り、ピッキング作業の推定残作業時間に対する、最適な移動時間の保管棚の搬送を自動搬送車に指示することで、搬送先の作業ステーションWSにおける保管棚DSの到着待ち時間が低減し、かつ同じ保管棚DSを必要とするその他の作業ステーションWSにおける待ち時間も削減することで生産性が向上する効果が得られる。
【0120】
以上に説明した本発明の態様の代表的な例をまとめると次の通りとなる。すなわち、プロセッサ(例えばプロセッサ501又は701)と、プロセッサがアクセスする記憶装置(例えば記憶デバイス502又は702)と、を有する物品搬送システムであって、プロセッサは、物品の取り出し又は格納の作業の対象となる棚(例えば保管棚DS又は仕分棚SS)を、搬送装置(例えば自動搬送車AC)が、棚に対する作業を行う作業場所(例えば作業ステーションWS)に搬送するまでの搬送時間(例えば推定搬送完了時間)と、作業場所で行うことが予定されている作業が終了するまでの作業時間(例えば推定残作業時間)と、を計算し、搬送時間と作業時間との差に基づいて、搬送装置が棚を作業場所に搬送する指示を追加するか否かを判定する(例えばS908、S1006又はS1110)。
【0121】
これによって、搬送先の作業ステーションへの棚の到着タイミングを調整して、生産性を向上させることができる。
【0122】
このとき、プロセッサは、作業場所で行うことが予定されている作業の所定の進行状況を検知したときに(例えばS901における搬送判定タイミングの検知)、搬送装置が棚を作業場所に搬送する指示を追加するか否かを判定するための処理を開始してもよい。
【0123】
これによって、処理の実行の適切な契機を与えることができる。
【0124】
また、プロセッサは、複数の作業場所のうち少なくとも一つを候補として選択し、候補として選択された各作業場所について、搬送装置が棚を作業場所に搬送する指示を追加するか否かを判定するための処理を実行してもよい(例えばS902)。
【0125】
具体的には、例えば、プロセッサは、複数の作業場所のうち、作業場所で行うことが予定されている作業の所定の進行状況が検知された作業場所、又は、作業場所で行うことが予定されている作業の前記所定の進行状況が検知された場所及びその近隣の一以上の作業場所を、候補として選択してもよい。
【0126】
これによって、搬送の指示の追加対象となる適切な作業場所を選択することができる。
【0127】
また、記憶装置は、各棚から取り出されるか、又は格納される物品の識別情報及び個数を保持し(例えば
図6)、プロセッサは、各棚から取り出されるか、又は格納される物品の種類、種類の数及び個数の少なくともいずれかに基づいて、作業時間を計算してもよい(例えばS904)。
【0128】
これによって、精度よく作業時間を計算することができる。
【0129】
また、プロセッサは、搬送装置の現在の位置及び作業場所の位置に基づいて、搬送時間を計算してもよい(例えばS907)。
【0130】
これによって、精度よく搬送時間を計算することができる。
【0131】
また、プロセッサは、複数の搬送装置から選択された搬送装置と、複数の棚から選択された棚と、の複数の組み合わせについて、作業時間及び搬送時間を計算し、作業時間と搬送時間との差の絶対値が最小となる搬送装置と棚との組み合わせについて、搬送装置が棚を作業場所に搬送する指示を追加すると判定してもよい(例えばS908、S909)。
【0132】
これによって、搬送先の作業ステーションにおける棚の到着待ち時間が低減し、かつ同じ棚を必要とするその他の作業ステーションにおける待ち時間も削減することで、生産性が向上する。
【0133】
また、プロセッサは、作業時間が搬送時間より長くなる搬送装置と棚との組み合わせのうち、作業時間と搬送時間との差の絶対値が最小となる組み合わせについて、搬送装置が棚を作業場所に搬送する指示を追加すると判定してもよい(例えばS908、S909)。
【0134】
これによって、搬送先の作業ステーションにおける棚の到着待ち時間が解消され、かつ同じ棚を必要とするその他の作業ステーションにおける待ち時間も削減することで、生産性が向上する。
【0135】
また、複数の棚は、作業場所で行われる作業によって物品が取り出される複数の保管棚(例えば保管棚DS)を含み、搬送時間は、搬送装置が保管棚を作業場所まで搬送するための時間であってもよい。
【0136】
これによって、例えば実施例1に示すように保管棚が搬送される倉庫等に本発明を適用することができる。
【0137】
また、複数の棚は、作業場所で行われる作業によって物品が取り出される複数の保管棚(例えば保管棚DS)と、作業によって物品が格納される複数の仕分棚(例えば仕分棚SS)と、を含み、搬送時間は、搬送装置が保管棚を作業場所に搬送するまでの時間及び搬送装置が仕分棚を作業場所に搬送するまでの時間のうち長い方であってもよい(例えばS1107、S1109及びS1110)。
【0138】
これによって、例えば実施例2に示すように保管棚及び仕分棚の両方が搬送される倉庫等に本発明を適用することができる。
【0139】
また、プロセッサは、作業時間が搬送時間より長くなる搬送装置と保管棚と仕分棚との組み合わせのうち、作業時間と搬送時間との差の絶対値が最小となる搬送装置と保管棚と仕分棚との組み合わせについて、搬送装置が棚を作業場所に搬送する指示を追加すると判定し、作業時間が搬送時間より長くなる搬送装置と保管棚と仕分棚との組み合わせのうち、作業時間と搬送時間との差の絶対値が最小となる搬送装置と保管棚と仕分棚との組み合わせが複数ある場合には、それらのうち、搬送装置が保管棚を作業場所まで搬送するための時間と搬送装置が仕分棚を作業場所まで搬送するための時間との差が最小となる組み合わせについて、搬送装置が棚を作業場所に搬送する指示を追加すると判定してもよい(例えば
図11の推定残作業時間100秒のケース)。
【0140】
これによって、保管棚の搬送時間と仕分棚の搬送時間とに差がある場合も作業効率が向上する適切な組み合わせを選択することができる。
【0141】
また、プロセッサは、少なくとも作業時間に基づいて、所定の終了条件が満たされるか否かを判定し、終了条件が満たされる場合に、搬送装置が棚を作業場所に搬送する指示を追加しなくてもよい(例えばS908)。
【0142】
具体的には、例えば、終了条件は、搬送装置が棚を作業場所に搬送する指示を追加したと仮定した場合の、棚に対する作業が終了するまでの時間が第1の閾値(例えば閾値時間TH1)を超えること、又は、作業時間と搬送時間との差が第2の閾値(例えば閾値時間TH2)を超えること、の少なくとも一方であってもよい。
【0143】
これによって、特定の作業ステーションに作業の予定が集中すること、及び、作業ステーションに到着した棚が作業の開始を長時間待つことなどが防止され、作業効率が向上する。
【0144】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0145】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
【0146】
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0147】
1、1a 運行管理装置(制御部)
2 オーダー管理装置
3 WMS
AC 自動搬送車
Di 表示器
DS 保管棚
SS 仕分棚
G、Gi ゲート
GDi 保管棚ゲート
GSi 仕分棚ゲート
Gc、CGci ゲート制御装置
M、Mi 作業者
T 端末
F1、F2 保管棚の棚面
W 倉庫
W1 作業エリア
W2 保管エリア
WS、WSi 作業ステーション