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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】車両状態検出装置及び車両速度計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/36 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
G01P3/36 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019034459
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020139796
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏知
(72)【発明者】
【氏名】山田 計
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-278951(JP,A)
【文献】特開2007-46949(JP,A)
【文献】国際公開第2010/070701(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/026204(WO,A1)
【文献】米国特許第5767954(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 3/00- 3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な蓋面を有するケースであって、前記蓋面に対向する前記ケースの底面は、車両のナンバープレートで覆われる平面に固定可能な前記車両の固定器具に固定される取付器具を有している前記ケースと、
前記蓋面と前記底面との間に区画される前記ケースの内部に設置された少なくとも1つの撮影部と、
前記ケースの内部に設置された少なくとも1つのレーザ出力部と、を備え、
前記レーザ出力部は、前記ケースの下面に設けられた第1透光部を通じて下方にレーザ光を照射可能であり、
前記撮影部は、前記ケースの下面に設けられた第2透光部を通じて下方を撮影可能であって、前記下方に照射された前記レーザ光の像を撮影する
車両状態検出装置。
【請求項2】
前記撮影部で撮影した前記レーザ光の像を含む撮影画像に基づいて前記車両の状態を検出する
請求項1に記載の車両状態検出装置。
【請求項3】
前記底面は、前記取付器具で前記車両のナンバープレートで覆われる平面に取り付けられる第1底面と、前記第1底面に対向して固定される第2底面とを有し、前記第1底面と前記第2底面との間には、前記第1底面と前記第2底面との対向する角度を調整可能な調整部が設けられている
請求項1又は2に記載の車両状態検出装置。
【請求項4】
前記第2底面と前記蓋面とは平行面である
請求項3に記載の車両状態検出装置。
【請求項5】
前記撮影部は、前記第2透光部に対して接離する方向に移動可能な移動部を介して前記底面に設けられている
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両状態検出装置。
【請求項6】
前記蓋面には、前記ナンバープレートが取り付けられるケース側固定器具が、前記車両にナンバープレートを固定させる固定器具に対応する位置に設けられている
請求項1~5のいずれか一項に記載の車両状態検出装置。
【請求項7】
前記ケースは、前記撮影部の光軸を含む面に対して面対称となるそれぞれの位置から前記レーザ光をそれぞれ照射する
請求項1~6のいずれか一項に記載の車両状態検出装置。
【請求項8】
前記撮影部は、前記レーザ光の像の撮影に適したフィルタを有し、前記レーザ光の像が撮影される領域に前記フィルタが配置されている
請求項1~7のいずれか一項に記載の車両状態検出装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の車両状態検出装置を備え、
前記撮影部の前記下方には路面が位置し、
前記車両状態検出装置の前記撮影部は、所定の時間間隔で2つの撮影画像を撮影し、
前記車両状態検出装置の算出部は、前記2つの撮影画像の両方に含まれている同一の特徴領域の前記2つの撮影画像上における移動画素数と、前記2つの撮影画像の両方に含まれている前記レーザ光に基づいて前記2つの撮影画像の1画素を実際の長さに変換する変換係数とを算出するとともに、前記変換係数と、前記移動画素数と、前記所定の時間間隔とに基づいて前記車両の速度を計測する
車両速度計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の状態を検出する車両状態検出装置、及び車両の速度を計測する車両速度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には様々な性能の評価が求められている。そうした評価の一例として排ガス計測や燃費等、シャシダイナモメータを利用した模擬走行による計測結果から求められる評価もあるが、模擬走行と実路走行とでは計測結果に乖離が発生することもあり、実路走行が重要視されてきている。
【0003】
自動車の実路走行による性能評価において、自動車の速度を低速度域から高速度域まで計測することが求められる。例えば、自動車の速度を計測する技術の一例が特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の車速計測装置は、路面を撮影するカメラによって撮影された撮影画像内の特徴領域が単位時間当たりに移動した移動距離から車速を算出する車速算出手段を備える。車速計測装置は、自動二輪車の前後方向の基準距離を持つように形成された基準距離用マークを、カメラの光軸と平行に路面に対して照射する基準距離用マーク照射手段と、基準距離用マークの撮影画像中における前後方向の長さである画像基準距離を検出する画像基準距離検出手段とを有している。車速算出手段は、画像基準距離と前後方向の基準距離とを用いて移動距離から車速を算出する。車速計測装置は、撮影画像中に実距離の指標となるマークを投影するので、車高が変化した場合であっても、精度よく車両の車速を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-149209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動車の性能評価において速度を計測する車両速度計測装置は、計測される速度に対する影響が極力抑えられて実路走行に近い速度が計測可能であり、かつ、自動車の運転性能に影響を及ぼさないように、自動車における設置位置が検討されている。また、速度計測装置は、上述の性能評価を行う際、一時的に設置されることも少なくなく、測定が必要なとき、一時的でありながら車両に対して適切な向きで取り付けることは容易ではない。
【0007】
なお、こうした取り付けに関する課題は、車両速度計測装置に限られるものではなく、車両の状態を検出する車両状態検出装置の設置についても同様である。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両に対して適切な向きで取り付けることのできる車両状態検出装置及び車両速度計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する車両状態検出装置は、開閉可能な蓋面を有するケースであって、前記蓋面に対向する前記ケースの底面は、車両のナンバープレートで覆われる平面に固定可能な前記車両の固定器具に固定される取付器具を有している前記ケースと、前記蓋面と前記底面との間に区画される前記ケースの内部に設置された少なくとも1つの撮影部と、前記ケースの内部に設置された少なくとも1つのレーザ出力部と、を備え、前記レーザ出力部は、前記ケースの下面に設けられた第1透光部を通じて下方にレーザ光を照射可能であり、前記撮影部は、前記ケースの下面に設けられた第2透光部を通じて下方を撮影可能であって、前記下方に照射された前記レーザ光の像を撮影する。
【0009】
このような構成によれば、レーザ光の像を含み、車両の状態が検出できる画像を撮影する撮影部と、レーザ光を出力するレーザ出力部とが内部に設置されたケースが、車両のナンバープレートで覆われる平面に取り付けられる。つまり、車両状態検出装置は、車両に必ず確保されているナンバープレートの取り付け位置を利用して取り付けられるため、車両における取り付け位置が必ず確保される。また、ナンバープレートの設置位置への取付であれば、ケースがナンバープレートと同様の向きでナンバープレートの設置位置に取り付けられるようになる。よって、車両状態検出装置を、車両に対して適切な向きで取り付けることができる。
【0010】
また、予め、ナンバープレートが設置されることが想定されている位置にケースを配置することで、ケースが車両の空力特性や、冷却特性、外観に対して与える影響が少なくなる。すなわち、より実環境に近い状態で車両状態を検出することができる。
【0011】
好ましい構成として、前記撮影部で撮影した前記レーザ光の像を含む撮影画像に基づいて前記車両の状態を検出する。
このような構成によれば、レーザ光の像を含む撮影画像に基づいて車両の状態が検出される。
【0012】
好ましい構成として、前記底面は、前記取付器具で前記車両のナンバープレートで覆われる平面に取り付けられる第1底面と、前記第1底面に対向して固定される第2底面とを有し、前記第1底面と前記第2底面との間には、前記第1底面と前記第2底面との対向する角度を調整可能な調整部が設けられている。
【0013】
このような構成によれば、ナンバープレートで覆われる平面に取り付けられたケースの向きをナンバープレートの取付位置に対して調整することができる。
好ましい構成として、前記第2底面と前記蓋面とは平行面である。
【0014】
このような構成によれば、ケースの取り付け向きが調整されたとしても、ケース内部の空間が所定の広さで確保されるようになる。
好ましい構成として、前記撮影部は、前記第2透光部に対して接離する方向に移動可能な移動部を介して前記底面に設けられている。
【0015】
このような構成によれば、撮影部の第2透光部に対する距離の変更によって対向面(路面)までの距離を変更することができるので、撮影部が撮影する対向面(路面)の実際の広さが調整できるようになる。
【0016】
好ましい構成として、前記蓋面には、前記ナンバープレートが取り付けられるケース側固定器具が、前記車両にナンバープレートを固定させる固定器具に対応する位置に設けられている。
【0017】
このような構成によれば、車両のナンバープレートの設置位置にケースが取り付けられるとともに、ケースの蓋面にナンバープレートが取り付けられ、車両の正面から見て、ナンバープレートの位置変化が抑えられる。つまり、ケースによるナンバープレートの視認性の低下が抑制される。
【0018】
好ましい構成として、前記ケースは、前記撮影部の光軸を含む面に対して面対称となるそれぞれの位置から前記レーザ光をそれぞれ照射する。
このような構成によれば、2つのレーザ光に基づいて車両の高さや、撮影画像上の移動距離を実際の長さに変換する変換係数を求めることができる。
【0019】
好ましい構成として、前記撮影部は、前記レーザ光の像の撮影に適したフィルタを有し、前記レーザ光の像が撮影される領域に前記フィルタが配置されている。
このような構成によれば、レーザ光の像が好適に撮影されるようになる。
【0020】
上記課題を解決する車両速度計測装置は、上記車両状態検出装置を備え、前記撮影部の前記下方には路面が位置し、前記車両状態検出装置の前記撮影部は、所定の時間間隔で2つの撮影画像を撮影し、前記車両状態検出装置の算出部は、前記2つの撮影画像の両方に含まれている同一の特徴領域の前記2つの撮影画像上における移動画素数と、前記2つの撮影画像の両方に含まれている前記レーザ光に基づいて前記2つの撮影画像の1画素を実際の長さに変換する変換係数とを算出するとともに、前記変換係数と、前記移動画素数と、前記所定の時間間隔とに基づいて前記車両の速度を計測する。
【0021】
このような構成によれば、路面と車両の車輪との間のスリップの影響を受けない速度を計測することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、車両状態検出装置や車両速度計測装置を、車両に対して適切な向きで取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】速度計測装置の一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態で車両に配置された速度計測装置を示す図であって、(a)は側面図、(b)は上面図。
図3】同実施形態において車両の空力影響の一例を示す模式図。
図4】同実施形態においてナンバープレートの大きさの例を示す模式図。
図5】同実施形態において速度計測装置の構造を示す正面図。
図6】同実施形態において速度計測装置の構造を示す斜視図。
図7】同実施形態において速度計測装置の調整部の構造を示す側面図。
図8】同実施形態において速度計測装置のブロック図。
図9】同実施形態における撮影画像の一例を示す図であって、(a)は対向距離が短いときの模式図、(b)は対向距離が長いときの模式図。
図10】速度計測装置の他の実施形態の光学フィルタの一例を示す模式図であって、(a)はレーザ光用のフィルタが2箇所のときの図、(b)はレーザ光用のフィルタが1箇所のときの図。
図11】速度計測装置のその他の実施形態の撮影部に魚眼レンズを用いた例を示す正面図。
図12】速度計測装置のまた他の実施形態の取付器具を上方から見た図であって、(a)はケースを取付器具で固定器具に取り付けたときの模式図、(b)はケースを前方にオフセットさせたときの模式図、(c)はケースの右側のみを前方にオフセットさせたときの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1図9を参照して、車両状態検出装置を備える車両速度計測装置の一実施形態について説明する。本実施形態の車両速度計測装置は、自動車等の車両の速度計測装置である。速度計測装置は、路面と車両の車輪との間のスリップ等の影響のない速度を測定する。
【0025】
図1に示すように、車両状態検出装置及び車両速度計測装置としての速度計測装置1は、車両10(図2参照)の速度を計測するための画像を取得する画像取得部21を備える。画像取得部21は、車両10の前部11の取付穴としての固定器具12に取り付け固定される。前部11は、前側のナンバープレート(自動車登録番号標)NPが取り付けられるフロントバンパー等の部材を含む。前部11は、車両10のナンバープレートNPで覆われる平面を構成する。また、画像取得部21は、自動車のナンバープレートNPを表面に取り付けられる直方体状のケース50を有している。ケース50は、2つのレーザ出力部24,25を収容しているとともに、2つのレーザ出力部24,25の間には撮影部としてのカメラ22を収容している。2つのレーザ出力部24,25は、ケース50の下面51Dの第1透光部としての開口部57を通じて路面100に向けてレーザ光をそれぞれ照射する。カメラ22は、ケース50の下面51Dの第2透光部としての開口部56を通じてレーザ光を含む路面100の像を撮影する。よって、速度計測装置1は、ケース50の一時的な設置であれ、車両10に対してナンバープレートNPと同様に適切な向きに取り付けることができる。
【0026】
図2(a),(b)に示すように、車両10の速度(以下、車速と記す)は、車両10が停止又は走行している路面100に対する車両10の相対速度である。
図2(b)に示すように、カメラ22及び2つのレーザ出力部24,25は、車両10の前部11において車両10の幅方向Yに並んで配置されている。また、図2(a)に示すように、カメラ22は、路面100からの高さとして対向距離Hを有している。なお、図2(a)では、図示の便宜上、路面100からケース50の下面までの高さを対向距離Hとして図示している。
【0027】
カメラ22は、車両10の前方の路面100との対向距離Hに応じて大きさが変化する撮影範囲Vaを有している。
2つのレーザ出力部24,25はそれぞれ、路面100に対して第1又は第2レーザ光LB1,LB2を照射する。第1又は第2レーザ光LB1,LB2は、車両10の前後方向Xに延びる直線状のラインレーザである。第1又は第2レーザ光LB1,LB2は、車両10の前部11から略垂直方向下方となる路面100にラインレーザの像を投影する。2つのレーザ出力部24,25はそれぞれ、第1及び第2レーザ光LB1,LB2の像の一部が車両10の前方の撮影範囲Vaに重複するように第1及び第2レーザ光LB1,LB2を照射する。
【0028】
車両10の幅方向Yにおいて、2つのレーザ出力部24,25の間隔は、配置間隔2dであり、カメラ22及びレーザ出力部24の間隔、及び、カメラ22及びレーザ出力部25の間隔はそれぞれ配置間隔dである。また、カメラ22及び2つのレーザ出力部24,25は、カメラ22の光軸Cと、第1レーザ光LB1が形成する経路面LPと、第2レーザ光LB2が形成する経路面LPとが互いに平行になるように設けられている。つまり、カメラ22の光軸Cを含む面に対して面対称となるそれぞれの位置から第1及び第2レーザ光LB1,LB2をそれぞれ照射する。経路面LPは、レーザ出力部24と第1レーザ光LB1の像とを結んで形成される略三角形の面や、レーザ出力部25と第2レーザ光LB2の像とを結んで形成される略三角形の面である。
【0029】
速度計測装置1は、撮影された画像に含まれる、カメラ22の光軸Cを含む中心線LC、第1レーザ光LB1の像、及び第2レーザ光LB2の像に基づいて、路面100とカメラ22との間の距離である対向距離Hを算出する。また、速度計測装置1は、算出した対向距離Hに基づいて、撮影範囲Vaを撮影した撮影画像における1画素の実際の長さ(1画素が撮影する路面100の実際の長さ)を求める変換係数sを定める。なお、1画素は1ピクセルに対応するものとする。
【0030】
図3に示すように、画像取得部21は、車両10の前部11に予め設けられているナンバープレート設置位置に取り付けられる。ナンバープレート設置位置は、当該車両10に適用される所定の大きさのナンバープレートNPを容易、かつ、確実に設置することができるようになっている。
【0031】
図4に示すように、日本国のナンバープレートの大きさは、例えば、小板NP1、中板NP2、及び大板NP3が知られている。小板NP1の大きさは、縦12.5cm、横23cmであり、中板NP2の大きさは、縦16.5cm、横33cmであり、大板NP3の大きさは、縦22cm、横44cmである。普通自動車や軽自動車には中板NP2及び大板NP3が使用される。このため、画像取得部21の大きさは、中板NP2又は大板NP3の大きさと同じであるか、もしくは、それよりも小さい。
【0032】
図1に示すように、画像取得部21は、車両10の前部11のナンバープレート設置位置に設けられている固定器具12に取付器具を構成するボルト76(図5参照)がねじ込まれることで、車両10の前部11に取り付けられる。固定器具12は、呼び径がM6のねじを有する取付穴であり、ボルト76(図5参照)は、呼び径がM6のねじを有するボルトである。よって、取付作業の際、特殊な工具や車両10のジャッキアップ等が不要であり、取付容易である。また、固定器具12の位置は、被計測車両として決定した当該車両10に適用されるナンバープレートNPの大きさに対応して所定の位置に定まっているため、画像取得部21のボルト76(図5参照)の位置も規定される。よって、画像取得部21は、車両10の種類によらず、ボルト76(図5参照)の位置が共通であるため、画像取得部21の製造、取り付け、取り替え等が容易である。
【0033】
図3に示すように、画像取得部21は、前方から見てナンバープレートNPの裏に隠れる大きさであって、車両10の前方から見てナンバープレートNPからはみ出さない。このため、画像取得部21の取り付けが考慮されていない車両10にあっても、前部11にある空気取り入れ経路が塞がれるおそれがなく、画像取得部21の取り付けがラジエター等の冷却効果を妨げるおそれが小さい。
【0034】
例えば、車両10は、前方から後方に向けて、多様な空気の流れW1~W4が生じる。画像取得部21は、前方から見てナンバープレートNPの裏に隠れるため、画像取得部21が走行中の車両10に生じさせる空力の影響が、ナンバープレートNPが走行中の車両10に生じさせる空力の影響よりも大きくなる度合いが抑制される。このため、画像取得部21の取付が車両10の空力に影響を与えるおそれが小さい。
【0035】
また、画像取得部21は、ナンバープレートNPの裏に隠れるため、ナンバープレートNPの設置を前提に設計された車体デザインを有する車両10の外観に与える影響が小さく抑えられる。仮に、画像取得部21を、外観への影響の小さい車体下に取り付けた場合、路面100からの距離が近いため、車両10が跳ね上げる路面100からの飛び石で各レーザ出力部24,25やカメラ22のレンズが傷付いたり、泥や砂埃で汚れて透光性が低下したりするおそれがある。また、対向距離Hが短くなることで、画像取得部21は、カメラ22の撮影範囲が狭くなるため、対向距離Hの短さに応じて撮影速度(フレームレート)を高くしないと撮影画像の連続性が損なわれて、同一の観測位置のトラッキングができなくなる。そして撮影速度の高いカメラは、高価であったり、取り扱いの条件が厳しいおそれがある。
【0036】
また、画像取得部21は、ナンバープレートNPの裏に隠れるため、取り付けたときに前方からのナンバープレートNPの視認性を低下させるおそれがない。
また、画像取得部21は、ナンバープレートNPの裏に隠れるため、日光の直射が避けられるため、直射日光による温度上昇が避けられるようになっている。
【0037】
速度計測装置1は、路面100とカメラ22の光軸とが直交すると画像処理が容易になる。逆に、速度計測装置1は、車両10における画像取得部21の取付角度が大きく傾くと、撮影画像に傾きが生じるため、この傾きの影響を無くす補正処理等を行う必要が生じる。小規模な車載制御装置26(図8参照)にとって、補正処理による負荷が過剰となるおそれがある。これに対し、本実施形態では、画像取得部21は、ナンバープレートNPの設置位置に取り付けられる。ナンバープレートNPの設置位置は、ナンバープレートNPの取付角度が上下に「-10°から10°までの20°の範囲」に収まり、左右が「左10°から右0°までの10°の範囲」に収まり、取付位置において回転しないように規定されている。
【0038】
また、画像取得部21は、路面100に対して光軸Cが垂直に近いかたちに設置されることで、第1及び第2レーザ光LB1,LB2が路面100に照射されたり、撮影のためのフラッシュ発光が路面100に行われたりしても、対向車や歩行者に眩しさを与えるおそれが抑制される。
【0039】
図5及び図6に示すように、画像取得部21は、蓋体60により正面開口部511が覆われる矩形箱状のケース50の中に、カメラ22及び2つのレーザ出力部24,25を収納している。また、ケース50は、車載制御装置26を収納している。
【0040】
蓋体60は、矩形板状の平面を有する蓋面61の外周の周面62がケース50の周面51に対向するように、正面開口部511の上にかぶさってケースを閉じる構造である。蓋体60の蓋面61は、ケース50を閉じたとき、第2底面としてのケース底面52と略平行面となる。蓋体60は、ケース50の下面51Dに対向する周面62が、下面51Dに平行な回動軸でケース50の下面51Dに対して回動可能に、蝶番等(図示略)で下面51Dに接続されている。蓋体60は、蝶番等(図示略)を回転軸として、正面開口部511の上にかぶさる状態から、正面開口部511を開く状態まで回動する。蓋体60は、正面開口部511に対する開度を規制する開度規制部材64が蓋体60とケース50との間に掛け渡されており、ケース50に対して開いたときの開度が規制されている。
【0041】
蓋面61は、ナンバープレートNPからはみ出さない大きさであり、蓋面61を覆うようにナンバープレートNPを配置させることができる位置にナンバープレートNPを取り付けるためのケース側固定器具としての固定部品63が設けられている。固定部品63は、車両10の前部11のナンバープレート設置位置に設けられている固定器具12と同様に、呼び径がM6のねじを有するナットからなる取付穴を構成している。また、固定部品63は、ケース底面52が取り付けられる車両10の固定器具12を前後方向Xの前側に移動させた対応する位置に設けられている。
【0042】
ケース50は、ケース底面52とケース底面52の周囲にケース底面52に対して垂直に設けられた周面51とを備えている。周面51は、上下左右にそれぞれ上面51U、下面51D、左側面51L、及び右側面51Rを有している。周面51は、基端がケース底面52に接続され、先端が正面開口部511を構成している。正面開口部511は、内側に張り出した縁部の先端に、閉じられた蓋体60との間の密閉性を確保するパッキン512が設けられている。パッキン512は、外部からの雨等の水分、埃、泥等が蓋体60とケース50との間からケース50の内部に侵入することを防止又は抑制する。
【0043】
下面51Dには、各レーザ出力部24,25が、透光部材58を介してケース50の外方にレーザを照射可能に設けられているとともに、カメラ22が、透光部材55を介してケース50の外方を撮影可能に設けられている。透光部材55は、可視光線を透過可能な部材からなり、カメラ22のレンズ22Lを飛び石による損傷や、泥や砂塵の汚れから保護する。透光部材55は、カメラ22の路面の撮影に適したフィルタ等を備えていてもよい。透光部材58は、レーザ光を透過可能な部材からなり、レーザ出力部24,25の出射口を飛び石による損傷や、泥や砂塵の汚れから保護する。透光部材58は、レーザ光の路面への照射に適したフィルタ等を備えていてもよい。
【0044】
ケース底面52は、幅方向Y(図5において左右方向)中央にカメラ22の位置を上下方向に移動させる移動部としての高さ調整器具80を備えている。高さ調整器具80は、土台81の中央にレール兼ラック82を有し、レールに嵌め合わされている移動台83を有する。移動台83は、レール兼ラック82のラックのギヤに螺合するギヤ833を有しており、ギヤ833を回転させる操作端834の操作でレール兼ラック82に沿って土台81の表面81aを相対的に上下移動する。移動台83は、ロックレバー84によるストッパ85の開放操作で、固定されているカメラ22を上下方向の任意の位置に移動させることを可能にし、ロックレバー84によるストッパ85の固定操作で位置を固定させる。カメラ22は、上下移動によって路面100との間の対向距離Hが調整可能であるため、画像取得部21を車高の相違する車両10に取り付けることが容易である。調整によって対向距離Hを所定の範囲に収めることができれば、変換係数sも所定の範囲に収まるため速度計測も容易になる。
【0045】
また、ケース50は、ケース底面52の外方に、ケース底面52に対向配置される第1底面としての外底部70を備えている。本実施形態では、ケース底面52と外底部70とがケース50の底面を構成する。ケース底面52は、上面51Uに沿って周面51の内側に開口する底面開口部521を有している。底面開口部521は、ナンバープレートの設置位置に対応する部分に重ならないように開口されている。ケース50は、底面開口部521においては、外底部70が底面を構成している。外底部70は、周面51の大きさと略同様の矩形状の板である外底面71を有している。外底面71は、底面開口部521に対応する位置に、車両10の前部11のナンバープレート設置位置の固定器具12に取り付けられる取付部品としてのボルト76の挿通される取付穴75が設けられている。
【0046】
外底部70は、ケース50の取付角度を調整可能に、車両10の前部11のナンバープレート設置位置に取り付けられる。外底面71は、外面が車両10の前部11のナンバープレート設置位置に設けられている固定器具12にボルト76で取り付けられるとともに、内面にケース50のケース底面52が取り付けられる。外底面71は、車両10の前部11の固定器具12に対応する位置に対応する取付穴75を有し、取付穴75を介してボルト76が固定器具12に螺合される。これにより、外底部70は、車両10の前部11のナンバープレート設置位置に取り付けられる。
【0047】
外底面71は、内面にケース50を接続させる取付部品73が設けられている。取付部品73は、外底面71の内面に凸設されたおねじである。取付部品73は、外底面71の左辺に沿って2本設けられているとともに、右辺に沿って2本設けられている。
【0048】
図7に示すように、右辺の2本の取付部品73には、ケース50のケース底面52に設けられた固定部53が取り付けられる。同様に、左辺の2本の取付部品73には、ケース50のケース底面52に設けられた固定部53が取り付けられる。
【0049】
図5及び図6に示すように、ケース底面52は、左側面51Lに沿って1つの固定部53を備え、右側面51Rに沿ってもう1つの固定部53を備えている。左側面51Lに沿う固定部53は、ケース底面52の一部及び左側面51Lの一部がケース50の内側に押し込まれた態様で設けられている。右側面51Rに沿う固定部53は、ケース底面52の一部及び右側面51Rの一部がケース50の内側に押し込まれた態様で設けられている。
【0050】
図7に示すように、固定部53は、ケース底面52よりもケース50の内側に押し込まれて外底面71から離間する部分であり、取付部品73の挿通される取付穴531が設けられている。固定部53は、取付穴531を挿通された取付部品73の先端にナット54が螺合されることで、ケース底面52を外底面71に固定させる。
【0051】
なお、外底面71と固定部53との間には、取付部品73を周回する弾性部材74が設けられていてもよい。弾性部材74は、ケース底面52と外底面71とが密着しなくても、弾性力で固定部53をナット54との間に挟み込むことで外底面71に対してケース底面52を固定させる。よって、取付部品73にナット54を螺合させる量で、外底面71とケース底面52との間に所定の間隔を設けることができる。また、2本の取付部品73にそれぞれ相違する量でナット54を螺合させることにより、外底面71とケース底面52との間に上下方向に所定の角度を与えることができるようになる。これにより、取付角度の微調整ができるようになる。本実施形態では、調整部は、固定部53と、取付部品73と、ナット54と、弾性部材74とで構成される。
【0052】
図8に示すように、速度計測装置1は、画像取得部21、及び車載制御装置26を備える。車載制御装置26は、信号処理部30、記憶部34、及び出力部40を備える。
カメラ22は、パッシブ型のカメラであって、車両10が停止又は走行している路面100を撮影して路面100の画像を得る。カメラ22は、車両10から略垂直方向下方となる路面100の撮影範囲Va(図2参照)を撮影する。カメラ22は、例えばCCDカメラや、CMOSカメラ等である。
【0053】
カメラ22は、路面100を撮影するときのパラメータ22Gを記憶する記憶部を備える。パラメータ22Gには、絞り(レンズ絞り値)、シャッター速度、及び、アナログゲイン(感度)の少なくとも1つのパラメータと、その設定値とが含まれている。カメラ22は、所定の撮影間隔でカメラ画像を撮影する。
【0054】
車両10は、対向距離H(図2参照)が変化する。例えば、対向距離Hは、車体重量が小さくなると長くなり、逆に、車体重量が大きくなると短くなる。車載制御装置26は、カメラ22の光軸Cを含む中心線LCと撮影された画像に含まれる第1レーザ光LB1(又は第2レーザ光LB2)の像とに基づいて、路面100と、カメラ22の対向距離Hを算出する。また、算出した対向距離Hを撮影範囲Vaを撮影した撮影画像に対応させて、対応させた対向距離Hに基づいて撮影画像における1画素の実際の長さ(1画素が撮影する路面100の実際の長さ)としての変換係数sを規定する。なお、1画素は1ピクセルに対応する。
【0055】
カメラ22は、第1及び第2レーザ光LB1,LB2の像を含んでいる路面100の撮影画像P11(図9参照)を信号処理部30に送信する。
2つのレーザ出力部24,25、はそれぞれパターンレーザの一種で、例えば回折光学素子(DOE:ディフラクティブオプティカルエレメンツ)や、シリンドリカルレンズを取り付け、第1又は第2レーザ光LB1,LB2を扇状に照射することで、路面100に直線状のラインレーザの像を描く。2つのレーザ出力部24,25はそれぞれ、パラメータ24G,25Gを記憶する記憶部を備える。各パラメータ24G,25Gには、路面100へのレーザ光の照射に関するパラメータが含まれる。
【0056】
車載制御装置26は、CPU、ROM、RAM、その他の記憶装置からなる記憶部34を有するコンピュータを含み構成されている。車載制御装置26は、ROMや記憶部34に記憶されているプログラムをCPUで演算処理することで、所定の処理である、信号処理部30、及び出力部40のそれぞれに必要とされる各演算処理を実行する。
【0057】
信号処理部30は、車両状態として車速を算出するが、併せて走行位置や加速度を算出してもよい。信号処理部30は、カメラ22から取得した撮影タイミングの相違する路面100の2つの撮影画像P11(図9参照)に基づいて車速を算出する算出部としての画像車速算出部32を備える。本実施形態では、路面100の2つの撮影画像P11に基づいて算出された車速が画像車速である。
【0058】
画像車速算出部32は、例えばアスファルト舗装された路面100を、カメラ22で撮影し、撮影タイミングの時間間隔である撮影間隔Δtを有する2枚の撮影画像を取得する。画像車速算出部32は、取得した2枚の撮影画像に含まれる同一の特徴領域TPをトラッキングして撮影間隔Δtの間に移動した移動距離ΔLを取得し、車速を算出する。撮影間隔Δtの間に車両10が実際に移動した移動距離ΔLは、撮影画像上で移動した画素数と、変換係数sとの積によって求められる。
【0059】
図9に示すように、本実施形態では、撮影画像P11上に特定された特徴領域TPの対向距離Hを算出する。対向距離Hは、撮影画像P11の幅方向Yの中心を前後方向Xに延在する中心線LCと、撮影画像P11を前後方向Xに延在する第1及び第2レーザ光LB1,LB2の像との関係に基づいて算出される。
【0060】
カメラ22は、レンズ22Lを介して路面100上を2次元矩形状に区画する撮影範囲Vaを有している。撮影範囲Vaは、車両10の前後方向Xに沿う辺と、幅方向Yに沿う辺とを備えている。カメラ22は、撮影範囲Vaの中心が光軸Cであり、光軸Cを含んで前後方向Xに沿って延びる中心線LCを有している。撮影範囲Vaには第1及び第2レーザ光LB1,LB2が含まれている必要がある。
【0061】
撮影範囲Vaにおける光軸Cと、第1又は第2レーザ光LB1,LB2との間の画像距離(画素数)は、対向距離Hが短いことに応じて長く(多く)なり、対向距離Hが長いことに応じて短く(少なく)なる。また、カメラ22は、レンズ22Lから広がる画角を有する。よって、図9(a)に示すように、対向距離Hが短ければ撮影範囲Vaが狭くなり、中心線LCとレーザ光の像との間の距離が長くなるので1画素当たりの実際の長さが短くなる。逆に、図9(b)に示すように、対向距離Hが長ければ撮影範囲Vaが広くなり、中心線LCとレーザ光の像との間の距離が短くなるので1画素当たりの実際の長さが長くなる。
【0062】
対向距離Hに応じて第1レーザ光LB1の像と第2レーザ光LB2の像との間の画像距離W23,W24が定まる。例えば、第1レーザ光LB1の像と第2レーザ光LB2の像との間が画像距離W23であるとき、対向距離Hが「所定の距離H1」に定まる。また、第1レーザ光LB1の像と第2レーザ光LB2の像との間が画像距離W24であるとき、対向距離Hが「所定の距離H2」に定まる。
【0063】
車両10が実際に移動した移動距離ΔLは、式1に示す、撮影画像P11上での移動量(画素数)Δpと、変換係数sとの積によって求められる。
ΔL=Δp・s…(1)
ところで、図9に基づいて計算される変換係数sは、幅方向Yの長さである一方で、実際の移動距離ΔLは前後方向Xの距離であるが、通常、カメラ22の1画素の大きさ(撮影範囲)は前後方向X及び幅方向Yに等方的又は比率が規定されている。よって、幅方向Yの長さに対する変換係数sは、前後方向Xの移動量Δpの変換係数sにも対応、又は変換することができ、前後方向Xに対する移動距離ΔLの算出に利用できる。実際の速度は、「実際の移動距離ΔL/撮影間隔Δt」で算出される。これにより、速度計測装置1による車両10の速度計測が行われる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)第1及び第2レーザ光LB1,LB2の像を含んでいて車両10の速度を算出により検出することができる撮影画像P11を撮影するカメラ22と、第1及び第2レーザ光LB1,LB2を出力するレーザ出力部24,25とが内部に設置されたケース50が、車両10のナンバープレートNPで覆われる平面に取り付けられる。具体的には、車両10のナンバープレートNPの固定器具12に取り付けられる。つまり、速度計測装置1は、車両10に必ず確保されているナンバープレートNPの取付位置を利用して取り付けられるため、車両10における取付位置が必ず確保される。また、ナンバープレートNPの設置位置への取付であれば、ケース50がナンバープレートNPと同様の向きでナンバープレートNPの設置位置に取り付けられるようになる。よって、速度計測装置1を、車両10に対して適切な向きで取り付けることができる。
【0065】
予め、ナンバープレートNPが設置されることが想定されている位置にケース50を配置することで、ケース50が車両10の空力特性や、冷却特性、外観に対して与える影響が少なくなる。すなわち、より実環境に近い状態で車速を算出により検出することができる。
【0066】
(2)第1及び第2レーザ光LB1,LB2の像を含む撮影画像P11に基づいて車両10の速度等の状態が算出により検出される。
(3)ケース底面52と外底面71との間の角度調整が可能であることから、ナンバープレートNPの固定器具12に取り付けられたケース50の向きをナンバープレートNPの取付位置に対して調整することができる。
【0067】
(4)ケース50の取り付け向きが調整されたとしても、ケース50内部の空間が所定の広さで確保される。
(5)カメラ22の開口部56に対する距離の変更によって対向距離Hを変更することで、開口部56が撮影する対向面(路面100)の実際の広さを調整することができる。
【0068】
(6)車両10のナンバープレートNPの設置位置にケース50が取り付けられ、ケース50の蓋面61にナンバープレートNPが取り付けられても、車両10の正面から見て、ナンバープレートNPの位置変化が抑えられ、ケース50によるナンバープレートNPの視認性の低下が抑制される。
【0069】
(7)第1及び第2レーザ光LB1,LB2に基づいて車両10の高さや、撮影画像上の移動距離を実際の長さに変換する変換係数sを求めることができる。
(8)速度計測装置1が光学式であることから、路面100と車両10の車輪との間のスリップの影響を受けない速度を計測することができる。
【0070】
(その他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0071】
・高さ調整器具80は、カメラ22のレンズ22Lを下面51Dから突き出させてもよい。このとき、透光部材は、レンズの突き出た形状に合わせる、又はレンズ先端に設ける、又は除去するのいずれかが選択される。これにより、カメラのレンズがケースよりも路面に近い位置に配置されるのでカメラのレンズの視野がケースやバンパー等の車両の前部で狭められることなく、広く確保できる可能性が高められる。
【0072】
・高さ調整器具80は、移動台83が、レール兼ラック82のギヤに螺合するギヤ833を有するスライド機構を有する構成である場合について例示した。しかしこれに限らず、移動台のスライド機構としては、ボールねじや台形ねじ等を用いたスライド機構であってもよい。
【0073】
また、高さ調整器具80は、移動台83の上下移動が手動で可能な場合について例示したが、これに限らず、移動台の移動がモータ等の駆動源を使ったものであってもよい。さらには、高さ調整が目視による調整ではなく、自動的な調整機構によりなされてもよい。
【0074】
・車両10は車両電源が車体前部に配置されていることが多いことから、画像取得部21が前部に配置されることで、電源ケーブルの長さが短くなり、配線も容易になる。なお、電源ケーブルの配線が煩雑になったりするが、画像取得部と車両電源とが車両の前後に離れていてもよい。
【0075】
・また、速度計測装置1に電力供給用のバッテリを内蔵させ、車両のバッテリからの電力供給を不要にしてもよい。速度計測装置1は、車両との間の電源線の配線を減らすことができて車両に対する取付自由度が高められる。車両は、速度計測装置1による消費のないバッテリによる走行状態を維持できる。つまり、バッテリ容量を通常走行と同様に利用できることから燃費、排ガス等の性能に影響を及ぼすおそれが低減される。
【0076】
・ケース50の蓋面61は、断熱効果の高い部材が取り付けられていたり、断熱効果の高い部材が使われていたりしてもよい。蓋面の断熱効果が高く維持されることでナンバープレートからの伝熱が抑制されて、温度上昇が抑制されるようになる。
【0077】
・画像取得部21は、ケース50の側面をヒートシンク構造としてもよい。空気の流れが強い車両10の前部11において、より高い冷却効果が得られる。なお、ヒートシンクの構造は、ケースの全側面であってもよいし、一部の側面であってもよい。
【0078】
・車載制御装置26は、信号処理部30や出力部40の処理を実行するプログラムを有するパーソナルコンピュータ(PC)等であってもよい。
・上記実施形態では、第1及び第2レーザ光LB1,LB2の像の前後方向Xの長さが撮影範囲Vaを超える場合について例示した。しかし、これに限らず、レーザ光の像の一端、又は両端が撮影範囲内で終わっていてもよい。
【0079】
・上記実施形態では、カメラ22は、パッシブ型である場合について例示した。しかし、これに限らず、カメラは、路面とレーザ光とを撮影できるのであれば、発射したビームをカメラで受光して撮影するアクティブ型であってもよい。
【0080】
・カメラ22のレンズ22Lには、レーザ光の像等を撮影する範囲に、レーザ光等の撮影に適したフィルタを設けてもよい。これにより、レーザ光の像が好適に撮影されるようになる。
【0081】
図10(a)を参照して、上記実施形態のように、撮影範囲Vaの左側及び右側に照射される第1及び第2レーザ光LB1,LB2を撮影する。このとき、レンズ22Lの透光範囲22Aの左側に第1レーザ光LB1の撮影に適したフィルタ221を設け、レンズ22Lの右側に第2レーザ光LB2の撮影に適したフィルタ222をフィルタ221と同様に区画された範囲に設け、その他の範囲220には、フィルタを設けない、又は、路面100の撮影に適したフィルタを設けてもよい。
【0082】
撮影範囲Vaにおいて、各フィルタ221,222はそれぞれ、第1又は第2レーザ光LB1,LB2の像の全てを含み、かつ、カメラ22の中心線LCを含まない領域に対応するように区画される範囲に設けられる。その他の範囲220は、第1の部分を構成し、各フィルタ221,222は、第2の部分を構成する。このとき、各フィルタ221,222を前後方向Xに延在させることで、その他の範囲220の前後方向Xに介在させないようにする。よって、その他の範囲220の前後方向Xの全長を特徴領域TPのトラッキングに利用できる。第1及び第2レーザ光LB1,LB2が照射されている範囲は特徴領域TPの色や光度が大きく相違するおそれがあり、トラッキングには不向きである。また、各フィルタ221,222も路面100の特徴領域TPのトラッキングには不向きである。各フィルタ221,222を前後方向Xに延在させることで、その他の範囲220のトラッキング可能範囲が広く確保されて、トラッキングが可能となる車速範囲が広く維持される。
【0083】
図10(b)を参照して、画像取得部21から第1レーザ光LB1のみが出力され、撮影範囲Vaの左側に照射される第1レーザ光LB1を撮影する例について説明する。このとき、レンズ22Lの透光範囲22Bの左側に第1レーザ光LB1の撮影に適したフィルタ221が設けられ、その他の範囲220には、フィルタを設けない、又は、路面100の撮影に適したフィルタを設けてもよい。
【0084】
このとき、フィルタ221を前後方向Xに延在させることで、その他の範囲220の前後方向Xに介在させないようにする。よって、その他の範囲220の前後方向Xの全長を特徴領域TPのトラッキングに利用できる。
【0085】
図11に示すように、レンズ22Lが魚眼レンズ22Cであってもよい。
魚眼レンズは撮影可能範囲が広いためレンズをケースから外に突出させる必要がある。よって、ケース50の下面から魚眼レンズ22Cを突出させてもよい。ナンバープレートよりも下方に魚眼レンズ22Cが突出するが、小さい部分であることから、車両の空力特性や、冷却特性や、外観に対して与える影響が小さく抑えられる。
【0086】
また、魚眼レンズ22Cを保護するためのカバー551を設けるとよい。カバー551は、フィルタを有していてもよい。
・外底面71と車両10の前部11のナンバープレートNPの設置位置との間に、ナンバープレートNPの設置位置に対する画像取得部21の姿勢を調整可能な調整機構を設けてもよい。
【0087】
図12(a)に示すように、外底部70は、車両10の前部11の固定器具12に対応する位置に対応する取付穴75を、ケース内側に突出した固定部77に設けてもよい。固定部77は、外底面71に対してケース50の内側に設けられた外底面71から離間する部分であり、取付部品としてのボルト762が挿通される取付穴75が設けられている。固定部77は、取付穴75に挿通されたボルト762の先端が車両10の前部11の固定器具12に螺合され、取付穴75よりも広いボルト頭部761に押されることで、ナンバープレートNPの設置位置に外底面71を固定させる。なお、固定部77と車両10の前部11との間には、ボルト762を周回する弾性部材78を設けてもよい。
【0088】
図12(b)に示すように、弾性部材78は、外底面71と車両10の前部11とが密着しなくても、弾性力で固定部77をボルト762のボルト頭部761との間に挟み込むことでナンバープレートNPの設置位置に対して外底部70を固定させる。よって、固定器具12にボルト762を螺合させる量で、ナンバープレートNPの設置位置と外底面71との間に所定の間隔を設けることができる。
【0089】
図12(c)に示すように、2本のボルト762をそれぞれ相違する量で固定器具12に螺合させることにより、ナンバープレートNPの設置位置と外底面71との間に左右方向に対して所定の角度を与えることができるようになる。これにより、取付角度の微調整ができるようになる。
【0090】
・上記実施形態では、ケース底面52と外底部70とがケース50の底面を構成する場合について例示したが、これに限らず、外底面が設けられなくてもよい。ナンバープレートNPの設置位置に取り付けたケース50の角度を調整する必要がなければ、ケース底面52に車両10の前部の固定器具に対応する位置に取付穴を形成して、ケース底面52を車両10の前部の固定器具に直接に固定してもよい。
【0091】
・上記実施形態では、ケース50のケース底面52を外底部70を介して前部11に取り付ける場合について例示した。しかしこれに限らず、より気密性を高めて空気の流れに対する影響を低下させるようにしてもよい。例えば、ナンバープレートNPからはみ出さない大きさで密閉性のある外部ケースを車両10の前部に取り付け、その外部ケースの内部に上記ケース50を格納してもよい。外部ケースは、カメラ22及び2つのレーザ出力部24,25に対応する部分は透光部材とする。また、外部ケースに気密性があれば、ケース50は、蓋体60や周面51がない状態でケース底面52を外部ケース内に設けてもよい。
【0092】
・上記実施形態では、車載制御装置26がケース50に収納されている場合について例示したが、これに限らず、車載制御装置26は、ケース50の外部に設けられてもよい。
・上記実施形態では、速度計測装置1で対向距離Hを算出する場合について例示したが、速度計測装置1は、規定された対向距離Hを用いて速度を計測してもよい。
【0093】
・上記実施形態では、2つのレーザ出力部24,25が設けられている場合について例示したが、これに限らず、レーザ出力部は1つであってもよい。例えば、路面に写る1つのレーザ光の像と、撮影画像の中心線とに基づいて対向距離を求めることができる。また、1つのレーザ出力部から出力されるレーザ光を分光して第1及び第2レーザ光として出力してもよい。
【0094】
・上記実施形態では、画像取得部21が車両10のナンバープレートNPの固定器具12に取り付けられる場合について例示した。しかしこれに限らず、車両10のナンバープレートNPで覆われる平面に取り付けられるのであれば、ナンバープレートNPの固定器具12に対する固定以外の固定方法で固定されてもよい。
【0095】
・上記実施形態では、画像取得部21は、車両10の前部11に取り付けられている場合について例示した。しかしこれに限らず、レーザ光の像を含む路面の撮影画像を撮影することができれば、画像取得部21は、車両後部のナンバープレートの設置位置に設けられてもよい。
【0096】
・上記実施形態では、画像取得部21が車両10の前部11に直接取り付けられる場合について例示した。このとき、画像取得部21は、車両10の前部11にスペーサを挟んで取り付けてもよい。例えば、ナンバープレートよりもフロントスポイラが前方に突出している車両に速度計測装置1を取り付けるとき、充分に広い撮影範囲が確保されるように車両の前部と速度計測装置との間にスペーサを設けてもよい。
【0097】
・上記実施形態では、画像取得部21の大きさを、ナンバープレートNPの各大きさに合わせる例を記載した。これに限らず、中板NP2の大きさの画像取得部を、アタッチメントを介して、小板NP1や大板NP3のナンバープレートの設置位置に取り付けたり、その他の国や地域のナンバープレートNPの設置位置に取り付けてもよい。これによっても、画像取得部の表面の全部又は一部がナンバープレートの裏側に隠れるため、車両に対して冷却効果を妨げるおそれが軽減され、空力の影響も軽減され、外観に与える影響も小さくされる。
【0098】
・上記実施形態では、画像取得部21の大きさが日本国の中板NP2又は大板NP3以下である場合について例示した。これに限らず、画像取得部21を、小型二輪車及び小型特殊自動車等に使用される小板NP1の大きさとしてもよい。また、画像取得部21を、車両の登録された国や地域で規定されるナンバープレートの大きさとしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…速度計測装置、10…車両、11…前部、12…固定器具、21…画像取得部、22…カメラ、22C…魚眼レンズ、22G…パラメータ、22L…レンズ、24,25…レーザ出力部、24G,25G…パラメータ、26…車載制御装置、30…信号処理部、32…画像車速算出部、34…記憶部、40…出力部、50…ケース、51…周面、51D…下面、51L…左側面、51R…右側面、51U…上面、52…ケース底面、53…固定部、54…ナット、55…透光部材、56,57…開口部、60…蓋体、61…蓋面、62…周面、63…固定部品、64…開度規制部材、70…外底部、71…外底面、73…取付部品、74…弾性部材、75…取付穴、76…ボルト、77…固定部、78…弾性部材、80…高さ調整器具、81…土台、81a…表面、82…レール兼ラック、83…移動台、84…ロックレバー、85…ストッパ、100…路面、220…範囲、221,222…フィルタ、511…正面開口部、512…パッキン、521…底面開口部、531…取付穴、551…カバー、761…ボルト頭部、762…ボルト、833…ギヤ、834…操作端、NP…ナンバープレート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12