(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/08 20060101AFI20221020BHJP
B60C 9/13 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B60C19/08
B60C9/13
(21)【出願番号】P 2019113305
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】福沢 和之
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-120446(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122509(WO,A1)
【文献】特開2019-081401(JP,A)
【文献】特開平03-169711(JP,A)
【文献】特開2019-051849(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109169(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビード部に設けられたビードコアと、
前記ビードコアの周りの少なくとも一部を覆うカーカスプライと、
前記カーカスプライに沿って延び、トレッド部において前記カーカスプライのタイヤ径方向の外側に位置する導電部と、
を備え、
前記カーカスプライには、導電糸が縫い込まれた縫込部が設けら
れ、
前記縫込部は、前記導電部を前記カーカスプライに縫い込んでいる、タイヤ。
【請求項2】
前記縫込部は、前記カーカスプライのうち前記ビードコアのタイヤ径方向の内側に位置する部分に設けられている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
導電性を有し、前記カーカスプライの周りの少なくとも一部を覆うチェーファー
部をさらに備え、
前記縫込部は、前記カーカスプライを貫通して縫い込まれており、かつ、
前記チェーファー部と接触する第1縫目部と、
前記導電部と接触する第2縫目部と、
を有する、請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記導電部の体積固有抵抗は、前記チェーファー部の体積固有抵抗よりも小さい、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記導電部は、金属を含む糸状部材であり、タイヤ周方向に沿って間隔を空けて複数設けられている、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記縫込部は、タイヤ周方向に沿って延びている、請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記縫込部は、複数の前記導電部と接触している、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記縫込部は、複数設けられ、
複数の前記縫込部のそれぞれは、互いに異なる前記導電部と接触している、請求項5から
7のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、カーカスプライを備えるタイヤが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなタイヤにおいては、転がり抵抗の低減が求められている。転がり抵抗を低減させるためには、例えば、カーカスプライにおけるカーカスゴムに含まれるカーボンの量を減少させることが挙げられる。しかし、カーカスゴムに含まれるカーボンの量を減少させると、カーカスゴムの体積固有抵抗が増大し、ビード部からトレッド踏面部までの導電パスがカーカスプライによって遮断される虞がある。そのため、車両からビード部に伝わる静電気をトレッド踏面部から地面に逃がしにくい虞があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、カーカスプライの導電性によらず、車両からの静電気を地面に逃がしやすい構造を有するタイヤを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤの一つの態様は、ビード部に設けられたビードコアと、前記ビードコアの周りの少なくとも一部を覆うカーカスプライと、前記カーカスプライに沿って延び、トレッド部において前記カーカスプライのタイヤ径方向の外側に位置する導電部と、を備え、前記カーカスプライには、導電糸が縫い込まれた縫込部が設けられ、前記縫込部は、前記導電部を前記カーカスプライに縫い込んでいる。
【0007】
本発明のタイヤの一つの態様によれば、カーカスプライには、導電糸が縫い込まれた縫込部が設けられている。そのため、カーカスプライのうち縫込部が設けられた部分において、縫込部を介して電気を通しやすくできる。これにより、カーカスプライの導電性が低い場合であっても、縫込部によって、車両からの静電気をカーカスプライに通すことができる。したがって、カーカスプライの導電性によらず、車両からの静電気を地面に逃がしやすい構造を有するタイヤが得られる。そのため、カーカスプライのカーカスゴムに含まれるカーボンの量を減少させてタイヤの転がり抵抗を低減させつつ、車両の静電気を地面に好適に逃がすことができる。
【0008】
前記縫込部は、前記カーカスプライのうち前記ビードコアのタイヤ径方向の内側に位置する部分に設けられている構成としてもよい。
この構成によれば、カーカスプライのうち縫込部が設けられた部分をチェーファー部と接触させやすい。これにより、リムからチェーファー部に伝わる車両からの静電気を、縫込部によってカーカスプライに通しやすい。したがって、車両からの静電気をより好適に地面に逃がしやすい。
【0009】
また、例えば、生タイヤを金型に入れて加硫してタイヤを作る際、生タイヤのゴムは金型の形状に合わせて変形する。このとき、ビードコアのタイヤ径方向の内側においては、ゴムが変形しにくい。そのため、カーカスプライのうちビードコアのタイヤ径方向の内側に位置する部分に縫込部を設けることで、縫込部を構成する導電糸が、生タイヤを金型内で加硫する際のゴムの変形による影響を受けにくい。これにより、導電糸が切れることを抑制できる。
【0010】
前記カーカスプライに沿って延び、トレッド部において前記カーカスプライのタイヤ径方向の外側に位置する導電部と、導電性を有し、前記カーカスプライの周りの少なくとも一部を覆うチェーファー部と、をさらに備え、前記縫込部は、前記カーカスプライを貫通して縫い込まれており、かつ、前記チェーファー部と接触する第1縫目部と、前記導電部と接触する第2縫目部と、を有する構成としてもよい。
この構成によれば、カーカスプライにおけるカーカスゴムの体積固有抵抗が比較的大きく、カーカスプライの導電性が低い場合であっても、リムからチェーファー部に伝わる車両からの静電気を、縫込部を介して導電部に伝達することができる。これにより、車両からの静電気を、導電部を介してトレッド部まで送ることができ、トレッド部においてトレッド踏面部から静電気を地面に逃がすことができる。したがって、車両からの静電気をより好適に地面に逃がしやすい。
【0011】
前記導電部の体積固有抵抗は、前記チェーファー部の体積固有抵抗よりも小さい構成としてもよい。
この構成によれば、導電部の体積固有抵抗を好適に小さくしやすい。これにより、ビード部からトレッド部への比較的長い導電パスを作る導電部に、好適に静電気を流すことができる。したがって、車両からの静電気をより地面に逃がしやすい。
【0012】
前記導電部は、金属を含む糸状部材であり、タイヤ周方向に沿って間隔を空けて複数設けられている構成としてもよい。
この構成によれば、導電部の体積固有抵抗をより好適に小さくしやすく、導電部によって、ビード部からトレッド部へと静電気をより流しやすい。これにより、車両からの静電気をより地面に逃がしやすい。また、この構成によれば、導電部は、タイヤ周方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。そのため、ビード部からトレッド部まで静電気を流す導電パスを増やすことができ、導電部によって、ビード部からトレッド部へと静電気をより流しやすい。これにより、車両からの静電気をより地面に逃がしやすい。
【0013】
前記縫込部は、タイヤ周方向に沿って延びている構成としてもよい。
この構成によれば、縫込部を導電部と交差させやすく、縫込部における第2縫目部を導電部と接触させやすい。また、1つの縫込部を、複数の導電部と接触させやすい。
【0014】
前記縫込部は、複数の前記導電部と接触している構成としてもよい。
この構成によれば、1つの縫込部を設けることで、複数の導電部をチェーファー部と接続することができ、ビード部からトレッド部まで静電気を流す導電パスを増やすことができる。したがって、縫込部を設ける手間を低減しつつ、車両からの静電気を好適に地面に逃がすことができる。
【0015】
前記縫込部は、前記導電部の少なくとも1つを前記カーカスプライに縫い込んでいる構成としてもよい。
この構成によれば、第2縫目部をより確実に導電部と接触させやすい。
【0016】
前記縫込部は、複数設けられ、複数の前記縫込部のそれぞれは、互いに異なる前記導電部と接触している構成としてもよい。
この構成によれば、カーカスプライにおける導電糸を縫い込む領域を小さくしやすい。これにより、縫込部を作るために必要な導電糸の総量を少なくできる。したがって、タイヤの製造コストを低減できる。また、導電糸を縫い込む作業量を低減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一つの態様によれば、カーカスプライの導電性によらず、車両からの静電気を地面に逃がしやすい構造を有するタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態のタイヤの一部を模式的に示す断面図であって、タイヤ幅方向に沿う断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のカーカス層の一部をタイヤ径方向の外側から視た平面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のタイヤの一部を模式的に示す断面図であって、
図1における1II-III断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の他の一例であるカーカス層の一部をタイヤ径方向の外側から視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るタイヤについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0020】
各図において示すZ軸方向は、タイヤ径方向と平行な方向である。例えば、
図1においてタイヤ径方向は、上下方向である。各図に示すタイヤの一部においては、Z軸方向の正の側、すなわち例えば
図1の上側がタイヤ径方向の外側であり、Z軸方向の負の側、すなわち例えば
図1の下側がタイヤ径方向の内側である。
【0021】
各図において示すY軸方向は、タイヤ幅方向と平行な方向である。
図1においてタイヤ幅方向は、左右方向である。以下の説明においては、ある対象に対して、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道部CLに近い側を「タイヤ幅方向の内側」と呼び、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道部CLから遠い側を「タイヤ幅方向の外側」と呼ぶ。タイヤ赤道部CLは、タイヤにおけるタイヤ幅方向の中心である。各図に示すタイヤの一部においては、Y軸方向の負の側、すなわち例えば
図1の右側がタイヤ幅方向の内側であり、Y軸方向の正の側、すなわち例えば
図1の左側がタイヤ幅方向の外側である。
【0022】
また、タイヤにおける図示しない中心軸回りの周方向をタイヤ周方向と呼ぶ。各図において示すX軸方向は、Z軸方向およびY軸方向の両方と直交する方向であり、各図に示すタイヤの断面においての周方向を示している。
【0023】
図1においては、本実施形態のタイヤ10のタイヤ周方向の一部における断面のうち、タイヤ赤道部CLからタイヤ幅方向の一方側に位置する部分のみを示している。タイヤ10のタイヤ周方向の一部における断面のうち、タイヤ赤道部CLからタイヤ幅方向の他方側に位置する部分は、
図1に示す部分とタイヤ赤道部CLを挟んでタイヤ幅方向に対称に配置されている。以下の説明においては、タイヤ10のうち
図1に示す部分について説明し、タイヤ10のうちタイヤ赤道部CLからタイヤ幅方向の他方側に位置する部分については、説明を省略する場合がある。
【0024】
本実施形態のタイヤ10は、
図1に示すように、トレッド部11と、サイドウォール部12と、ビード部13と、を備えている。
トレッド部11は、ビード部13よりもタイヤ径方向の外側に配置されており、タイヤ10におけるタイヤ径方向の外端部に位置している。トレッド部11は、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。トレッド部11は、タイヤ10の接地面であるトレッド踏面部11aを有している。トレッド踏面部11aは、トレッド部11におけるタイヤ径方向の外側面の一部である。
【0025】
トレッド踏面部11aは、例えば、タイヤ10を「JATMA Year Book」に規定されている標準リムに装着し、かつタイヤ10に、「JATMA Year Book」での適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧-負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧(以下、規定内圧という)を充填して最大負荷能力に対応する最大負荷を負荷した状態でのトレッド部11の接地面である。
【0026】
なお、トレッド踏面部11aは、例えば、タイヤ10が生産または使用される地域が日本国以外の場合には、その地域に適用されている産業規格(例えば、アメリカ合衆国の「TRA Year Book」、欧州の「ETRTO Standard Manual」等)に準拠した状態でのトレッド部11の接地面である。
【0027】
サイドウォール部12は、トレッド部11におけるタイヤ幅方向の外端部からタイヤ径方向の内側に向けて延びている。サイドウォール部12は、トレッド部11のタイヤ幅方向の外端部とビード部13とを連結している。
ビード部13は、サイドウォール部12におけるタイヤ径方向の内端部に接続されている。ビード部13には、ビードコア60が設けられている。より詳細には、ビード部13には、ビードコア60が埋設されている。
【0028】
タイヤ10には、骨格となるカーカス層50が設けられている。タイヤ10は、例えば、カーカス層50に第1チェーファー部71とタイヤ本体20とベルト層30とベルト補強層40とが組み付けられて構成されている。カーカス層50は、トレッド部11とサイドウォール部12とビード部13とに跨って設けられている。カーカス層50は、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。
図1および
図2に示すように、カーカス層50は、カーカスプライ51と、導電部52と、を有している。
【0029】
カーカスプライ51は、ビードコア60の周りの少なくとも一部を覆っている。本実施形態においてカーカスプライ51は、トレッド部11からサイドウォール部12を介してビード部13に延びてビードコア60回りにタイヤ幅方向の外側に折り返されている。カーカスプライ51は、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。カーカスプライ51は、
図3に示すように、カーカスゴム51aと、複数のプライコード51bと、を有している。カーカスプライ51は、カーカスゴム51aに複数のプライコード51bが埋設されて構成されている。
【0030】
本実施形態においてカーカスゴム51aの損失正接tanδは、比較的小さい。損失正接tanδは、カーカスゴム51aに含まれるカーボンの含有量が少ないほど、小さくなる。カーカスゴム51aの損失正接tanδが小さいほど、タイヤ10の転がり抵抗は小さくなる。本実施形態においてカーカスゴム51aは、比較的電気を通しにくい。これにより、本実施形態においてカーカスプライ51の導電性は、比較的低い。
【0031】
複数のプライコード51bは、カーカスゴム51aに埋め込まれた状態で、トレッド部11からサイドウォール部12を介してビード部13に延びてビードコア60回りにタイヤ幅方向の外側に折り返されている。複数のプライコード51bは、タイヤ周方向に沿って間隔を空けて配置されている。プライコード51bは、例えば、有機繊維コード等である。
【0032】
導電部52は、カーカスプライ51の外側の表面に設けられている。導電部52は、
図1に示すように、カーカスプライ51に沿って延びている。導電部52は、トレッド部11においてカーカスプライ51のタイヤ径方向の外側に位置する。本実施形態において導電部52は、トレッド部11から、少なくともビードコア60のタイヤ径方向の内側まで延びている。本実施形態において導電部52は、トレッド部11からサイドウォール部12を介してビード部13に延びてビードコア60回りにタイヤ幅方向の外側に折り返され、かつ、ビードコア60のタイヤ幅方向の外側まで延びている。
【0033】
導電部52のうちビードコア60回りに折り返された部分のタイヤ径方向の外端部は、カーカスプライ51のうちビードコア60回りに折り返された部分のタイヤ径方向の外端部とタイヤ径方向において同じ位置に配置されている。ビード部13において導電部52は、ビードコア60回りに折り返されたカーカスプライ51の内側に設けられている。
図3に示すように、複数の導電部52は、ビードコア60のタイヤ径方向の内側において、カーカスゴム51aのタイヤ径方向の外側面に貼り付けられている。
【0034】
本実施形態において導電部52は、金属を含む糸状部材である。導電部52は、例えば、有機繊維にステンレス等の金属繊維が巻き付けられた導電糸である。導電部52は、タイヤ周方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。
【0035】
なお、
図3では、一例として、導電部52がプライコード51bのタイヤ径方向の外側に位置している状態を示しているが、これに限られない。複数の導電部52と複数のプライコード51bとのタイヤ周方向の位置関係は、特に限定されない。すなわち、
図3において、導電部52の左右方向の位置が、プライコード51bの左右方向の位置とずれていてもよい。また、導電部52の数とプライコード51bの数とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
導電部52は、導電性を有している。導電部52の体積固有抵抗は、後述するチェーファー部70の体積固有抵抗よりも小さい。
【0037】
第1チェーファー部71は、導電性を有する。第1チェーファー部71は、ゴム製の部材、または繊維とゴムとの複合部材である。第1チェーファー部71は、
図1に示すように、カーカスプライ51のうちビード部13に設けられた部分をタイヤ径方向の内側およびタイヤ幅方向の両側から覆っている。カーカスプライ51のうちビード部13に設けられた部分は、カーカスプライ51のうちビードコア60をタイヤ径方向の内側およびタイヤ幅方向の両側から覆う部分を含む。以下の説明においては、カーカスプライ51のうちビード部13に設けられた部分を、コア被覆部53と呼ぶ。コア被覆部53は、ビードコア60のタイヤ幅方向の内側からビードコア60のタイヤ径方向の内側を通ってビードコア60のタイヤ幅方向の外側まで延びている。第1チェーファー部71は、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。
【0038】
第1チェーファー部71は、径方向被覆部72と、幅方向被覆部73,74と、を有している。径方向被覆部72は、カーカスプライ51におけるコア被覆部53をタイヤ径方向の内側から覆う部分である。径方向被覆部72は、タイヤ幅方向に延びている。幅方向被覆部73,74は、カーカスプライ51におけるコア被覆部53をタイヤ幅方向の両側から覆う部分である。幅方向被覆部73は、径方向被覆部72のタイヤ幅方向の外端部からタイヤ径方向の外側に延びており、コア被覆部53をタイヤ幅方向の外側から覆っている。幅方向被覆部74は、径方向被覆部72のタイヤ幅方向の内端部からタイヤ径方向の外側に延びており、コア被覆部53をタイヤ幅方向の内側から覆っている。幅方向被覆部73,74のタイヤ径方向の外端部は、カーカスプライ51のうちビードコア60回りに折り返された部分におけるタイヤ径方向の外端部よりもタイヤ径方向の内側に位置する。
【0039】
タイヤ本体20は、
図1に示すように、トレッドゴム21と、サイドウォールゴム22と、を有している。
トレッドゴム21は、トレッド部11の一部を構成する部分であり、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。トレッドゴム21は、カーカス層50のタイヤ径方向の外側に設けられている。トレッドゴム21は、ベルト層30とベルト補強層40とを介して、カーカス層50に接続されている。なお、
図1では、各部を分かりやすく模式的に示すために、カーカス層50と、トレッドゴム21、ベルト層30およびベルト補強層40との間を離して示している。
【0040】
トレッドゴム21は、トレッドアンダークッション23と、ベース層24と、キャップ層25と、ミニサイド26と、アンテナゴム27と、を有している。
トレッドアンダークッション23とベース層24とキャップ層25とは、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向の外側に向かって、この順に積層されている。キャップ層25のタイヤ径方向の外側面は、トレッド踏面部11aを構成している。ミニサイド26は、積層されたトレッドアンダークッション23、ベース層24およびキャップ層25のタイヤ幅方向の外端部に接続されている。
【0041】
アンテナゴム27は、ベース層24およびキャップ層25に跨って埋設されている。アンテナゴム27は、ベース層24およびキャップ層25をタイヤ径方向に貫通している。アンテナゴム27のタイヤ径方向の内端部は、トレッドアンダークッション23のタイヤ径方向の外側面に接続されている。アンテナゴム27のタイヤ径方向の外端部は、キャップ層25のタイヤ径方向の外側面に露呈しており、トレッド踏面部11aの一部を構成している。アンテナゴム27は、タイヤ周方向に断続的に延びてもよいし、連続して延びてもよいし、点在してもよい。
【0042】
ベース層24、キャップ層25およびミニサイド26は、比較的電気を通しにくく、導電性が低い。トレッドアンダークッション23およびアンテナゴム27は、比較的電気を通しやすく、導電性を有する。
【0043】
サイドウォールゴム22は、サイドウォール部12の一部およびビード部13の一部を構成する部分であり、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。サイドウォールゴム22は、カーカス層50のタイヤ幅方向の外側に設けられている。サイドウォールゴム22は、カーカス層50に接続されている。サイドウォールゴム22のタイヤ径方向の外端部は、トレッドゴム21のタイヤ幅方向の外端部に接続されている。なお、
図1では、各部を分かりやすく模式的に示すために、サイドウォールゴム22とカーカス層50との間、およびサイドウォールゴム22とトレッドゴム21との間を離して示している。
【0044】
サイドウォールゴム22は、サイドウォールゴム本体部28と、第2チェーファー部29と、を有している。
サイドウォールゴム本体部28は、サイドウォール部12の一部を構成する部分である。サイドウォールゴム本体部28のタイヤ径方向の外端部は、タイヤ幅方向の内側に延びており、カーカス層50と、トレッドゴム21、ベルト層30およびベルト補強層40との間に位置している。
【0045】
第2チェーファー部29は、ビード部13の一部を構成する部分である。第2チェーファー部29は、サイドウォールゴム本体部28のタイヤ径方向の内端部に接続されている。第2チェーファー部29は、カーカス層50におけるコア被覆部53をタイヤ幅方向の外側から覆っている。第2チェーファー部29は、コア被覆部53および第1チェーファー部71の幅方向被覆部73に、タイヤ幅方向の外側から接続されている。なお、
図1では、各部を分かりやすく模式的に示すために、第2チェーファー部29とコア被覆部53との間、および第2チェーファー部29と幅方向被覆部73との間を離して示している。
【0046】
サイドウォールゴム本体部28を構成するゴム材料と、第2チェーファー部29を構成するゴム材料とは、互いに体積固有抵抗が異なっている。サイドウォールゴム本体部28は、比較的電気を通しにくい。第2チェーファー部29は、比較的電気を通しやすく、導電性を有する。
【0047】
本実施形態において、上述した第1チェーファー部71と第2チェーファー部29とは、チェーファー部70を構成している。すなわち、本実施形態においてタイヤ10は、カーカスプライ51の周りの少なくとも一部を覆うチェーファー部70を有している。本実施形態においてチェーファー部70は、コア被覆部53のタイヤ径方向の内側およびタイヤ幅方向の外側を少なくとも覆っている。チェーファー部70は、導電性を有する。チェーファー部70において、第1チェーファー部71の体積固有抵抗と第2チェーファー部29の体積固有抵抗とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本実施形態においてチェーファー部70は、コア被覆部53のタイヤ径方向の内側およびタイヤ幅方向の両側を覆っており、コア被覆部53に接続されている。チェーファー部70は、タイヤ10が取り付けられるリムとの摩擦からカーカス層50を保護する部分である。
【0048】
ベルト層30は、トレッド部11に埋設されている。ベルト層30は、カーカス層50のタイヤ径方向の外側に積層されている。ベルト層30は、カーカスプライ51および導電部52と接続されている。ベルト層30は、トレッドゴム21とカーカス層50とのタイヤ径方向の間に位置する。図示は省略するが、ベルト層30は、ベルトゴムに複数のスチールコードが埋設されて構成されている。ベルト層30のベルトゴムは、比較的電気を通しやすく、導電性を有する。これにより、ベルト層30は、導電性を有する。
【0049】
ベルト補強層40は、ベルト層30のタイヤ径方向の外側に積層されている。ベルト補強層40は、トレッドゴム21とベルト層30とのタイヤ径方向の間に位置する。ベルト補強層40のタイヤ径方向の外側面は、トレッドゴム21のうちトレッドアンダークッション23のタイヤ径方向の内側面と接続されている。
【0050】
ベルト補強層40は、例えば、ゴムとナイロンとからなる複合コードをベルト層30の外周部に複数回、巻回して構成されている。ベルト補強層40を構成する複合コードの一巻き同士は、タイヤ幅方向に沿って互いに隙間41を空けて配置されている。図示は省略するが、ベルト補強層40の一巻き同士の隙間41においては、ベルト補強層40をタイヤ径方向に挟むトレッドアンダークッション23とベルト層30とが互いに接続されている。ベルト補強層40は、比較的電気を通しにくい。
【0051】
カーカスプライ51には、導電糸が縫い込まれた縫込部80が設けられている。本実施形態において縫込部80は、カーカスプライ51のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分に設けられている。本実施形態において縫込部80は、
図2および
図3に示すように、タイヤ周方向に沿って延びている。縫込部80は、例えば、タイヤ周方向に沿ってカーカスプライ51の全周に亘って設けられている。すなわち、本実施形態において縫込部80は、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。
【0052】
本実施形態において縫込部80は、カーカスプライ51を貫通して縫い込まれている。縫込部80は、例えば、
図3に示すように、カーカスプライ51をタイヤ径方向に貫通している。より詳細には、縫込部80は、カーカスゴム51aをタイヤ径方向に貫通している。縫込部80は、少なくとも1つの第1縫目部80aと、少なくとも1つの第2縫目部80bと、を有している。本実施形態において第1縫目部80aおよび第2縫目部80bは、それぞれ周方向に沿って複数並んで設けられている。
【0053】
第1縫目部80aは、カーカスプライ51のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分のタイヤ径方向の内側に位置する。第1縫目部80aの少なくとも1つは、チェーファー部70と接触している。本実施形態においては、例えば、すべての第1縫目部80aが第1チェーファー部71の径方向被覆部72と接触している。
【0054】
第2縫目部80bは、カーカスプライ51のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分のタイヤ径方向の外側に位置する。第2縫目部80bの少なくとも1つは、導電部52と接触している。これにより、縫込部80は、チェーファー部70と導電部52との両方に接触し、チェーファー部70と導電部52とを電気的に接続している。
【0055】
本実施形態において第2縫目部80bは、導電部52のタイヤ径方向の外側をタイヤ周方向に跨いで設けられており、導電部52にタイヤ径方向の外側から接触している。これにより、本実施形態において縫込部80は、導電部52の少なくとも1つをカーカスプライ51に縫い込んでいる。
図2に示すように、本実施形態において縫込部80は、複数の導電部52をカーカスプライ51に縫い込んでいる。すなわち、本実施形態においては、複数の第2縫目部80bが、それぞれ導電部52と接触している。これにより、縫込部80は、複数の導電部52と接触している。本実施形態において縫込部80は、すべての導電部52と接触している。複数の第2縫目部80bは、導電部52と接触しない第2縫目部80bを含む。
【0056】
図3に示すように、本実施形態において縫込部80は、例えば、ミシンによって下糸81と上糸82とがカーカスプライ51に縫い込まれて構成されている。下糸81と上糸82とは、互いに絡み合って接触している。これにより、下糸81と上糸82とは、電気的に接続されている。下糸81は、複数の第1縫目部80aを構成する導電糸である。上糸82は、複数の第2縫目部80bを構成する導電糸である。下糸81と上糸82とが絡み合う部分は、例えば、カーカスプライ51におけるカーカスゴム51aに埋設されている。
【0057】
下糸81および上糸82は、例えば、金属を含む糸状部材である。下糸81および上糸82は、例えば、有機繊維にステンレス等の金属繊維が巻き付けられて構成されている。下糸81および上糸82は、導電性を有している。下糸81の体積固有抵抗と上糸82の体積固有抵抗とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。
【0058】
タイヤ10には、
図1に示すように、タイヤ10が装着されるリムから地面へと、車両からの静電気を逃がす導電パスCPが設けられている。導電パスCPは、タイヤ10においてリムから伝わる静電気が通る経路であり、第2チェーファー部29から、第1チェーファー部71、縫込部80、導電部52、ベルト層30、ベルト補強層40の隙間41、トレッドアンダークッション23、およびアンテナゴム27をこの順に通ってトレッド踏面部11aまで延びている。これにより、リムから伝わる車両の静電気をトレッド踏面部11aから地面に逃がすことができる。
【0059】
なお、本実施形態の縫込部80においては、下糸81から上糸82に静電気が伝わる。
また、上述したように、ベルト補強層40の隙間41においては、トレッドアンダークッション23とベルト層30とが互いに接続されている。そのため、導電部52からベルト層30に流れた静電気は、隙間41からトレッドアンダークッション23へと流れる。
【0060】
本実施形態によれば、カーカスプライ51には、導電糸が縫い込まれた縫込部80が設けられている。そのため、カーカスプライ51のうち縫込部80が設けられた部分において、縫込部80を介して電気を通しやすくできる。これにより、カーカスプライ51の導電性が低い場合であっても、縫込部80によって、車両からの静電気をカーカスプライ51に通すことができる。したがって、カーカスプライ51の導電性によらず、車両からの静電気を地面に逃がしやすい構造を有するタイヤ10が得られる。そのため、カーカスプライ51のカーカスゴム51aに含まれるカーボンの量を減少させてタイヤ10の転がり抵抗を低減させつつ、車両の静電気を地面に好適に逃がすことができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、縫込部80は、カーカスプライ51のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分に設けられている。そのため、カーカスプライ51のうち縫込部80が設けられた部分をチェーファー部70と接触させやすい。これにより、リムからチェーファー部70に伝わる車両からの静電気を、縫込部80によってカーカスプライ51に通しやすい。したがって、車両からの静電気をより好適に地面に逃がしやすい。
【0062】
また、例えば、生タイヤを金型に入れて加硫してタイヤ10を作る際、生タイヤのゴムは金型の形状に合わせて変形する。このとき、ビードコア60のタイヤ径方向の内側においては、ゴムが変形しにくい。そのため、カーカスプライ51のうちビードコア60のタイヤ径方向の内側に位置する部分に縫込部80を設けることで、縫込部80を構成する下糸81および上糸82が生タイヤを金型内で加硫する際のゴムの変形による影響を受けにくい。これにより、下糸81および上糸82が切れることを抑制できる。
【0063】
また、本実施形態によれば、縫込部80は、カーカスプライ51を貫通して縫い込まれており、かつ、チェーファー部70と接触する第1縫目部80aと、導電部52と接触する第2縫目部80bと、を有している。そのため、カーカスプライ51におけるカーカスゴム51aの体積固有抵抗が比較的大きく、カーカスプライ51の導電性が低い場合であっても、リムからチェーファー部70に伝わる車両からの静電気を、縫込部80を介して導電部52に伝達することができる。これにより、車両からの静電気を、導電部52を介してトレッド部11まで送ることができ、トレッド部11においてトレッド踏面部11aから静電気を地面に逃がすことができる。したがって、車両からの静電気をより好適に地面に逃がしやすい。
【0064】
また、本実施形態によれば、導電部52の体積固有抵抗は、チェーファー部70の体積固有抵抗よりも小さい。そのため、導電部52の体積固有抵抗を好適に小さくしやすい。これにより、ビード部13からトレッド部11への比較的長い導電パスCPを作る導電部52に、好適に静電気を流すことができる。したがって、車両からの静電気をより地面に逃がしやすい。
【0065】
また、本実施形態によれば、導電部52は、金属を含む糸状部材である。そのため、導電部52の体積固有抵抗をより好適に小さくしやすく、導電部52によって、ビード部13からトレッド部11へと静電気をより流しやすい。これにより、車両からの静電気をより地面に逃がしやすい。また、本実施形態によれば、導電部52は、タイヤ周方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。そのため、ビード部13からトレッド部11まで静電気を流す導電パスCPを増やすことができ、導電部52によって、ビード部13からトレッド部11へと静電気をより流しやすい。これにより、車両からの静電気をより地面に逃がしやすい。
【0066】
また、本実施形態によれば、縫込部80は、タイヤ周方向に沿って延びている。そのため、縫込部80を導電部52と交差させやすく、縫込部80における第2縫目部80bを導電部52と接触させやすい。また、本実施形態のように1つの縫込部80を、複数の導電部52と接触させやすい。
【0067】
また、本実施形態によれば、縫込部80は、第2縫目部80bを介して複数の導電部52と接触している。そのため、1つの縫込部80を設けることで、複数の導電部52をチェーファー部70と接続することができ、ビード部13からトレッド部11まで静電気を流す導電パスCPを増やすことができる。したがって、縫込部80を設ける手間を低減しつつ、車両からの静電気を好適に地面に逃がすことができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、縫込部80は、導電部52の少なくとも1つをカーカスプライ51に縫い込んでいる。そのため、第2縫目部80bをより確実に導電部52と接触させやすい。
【0069】
また、本実施形態によれば、カーカスゴム51aは、比較的電気を通しにくい。そのため、カーカスプライ51には、車両からの静電気が通りにくい。しかし、上述したように、本実施形態によれば、カーカスプライ51の導電性によらず、車両からの静電気を地面に逃がしやすい。すなわち、上述したカーカスプライ51の導電性によらず静電気を地面に逃がしやすい効果は、カーカスゴム51aが比較的電気を通しにくい構成において、より有用に得られる。
【0070】
なお、本発明の実施の態様は、上記の実施形態に限られず、以下の構成を採用することもできる。
縫込部は、カーカスプライに設けられるならば、特に限定されない。縫込部は、カーカスプライのいずれの位置に設けられてもよい。縫込部は、カーカスプライを貫通しなくてもよい。この場合、カーカスプライの一方の面のみに、縫目部が設けられる。この場合であっても、カーカスプライのうち縫込部が設けられた部分において、電気を通しやすくできる。
【0071】
上述した実施形態において縫込部80は、2本の導電糸が絡み合って縫い込まれた構成としたが、これに限られない。縫込部は、例えば、1本の導電糸が縫い込まれて構成されてもよい。この場合、例えば、1本の導電糸がカーカスプライをタイヤ径方向に貫通し、第1縫目部と第2縫目部とのそれぞれを構成する。縫込部を構成する導電糸は、導電性を有する糸であれば、特に限定されない。
【0072】
また、縫込部を作る際の導電糸の縫い方は、特に限定されない。縫込部は、導電部を縫い込んでいなくてもよい。第2縫目部は、導電部にタイヤ径方向の内側から接触していてもよい。縫込部は、カーカスプライのうち一対のビード部にそれぞれ設けられる部分のいずれか一方のみに設けられてもよいし、両方に設けられてもよい。
【0073】
縫込部は、
図4に示すタイヤ110における縫込部180のように、複数設けられてもよい。複数の縫込部180は、タイヤ周方向に沿って互いに間隔を空けて配置されている。複数の縫込部180のそれぞれは、タイヤ周方向に延びている。縫込部180のタイヤ周方向の寸法は、タイヤ周方向に隣り合う導電部52同士の間隔よりも小さい。縫込部180は、例えば、上述した縫込部80と同様にして、2本の導電糸が縫い込まれて構成されている。複数の縫込部180のそれぞれは、互いに異なる導電部52と接触している。
タイヤ110のその他の構成は、上述したタイヤ10のその他の構成と同様である。
【0074】
この構成によれば、タイヤ周方向の全周に亘って縫込部を設ける場合に比べて、カーカスプライ51における導電糸を縫い込む領域を小さくしやすい。具体的には、例えば、縫込部180同士のタイヤ周方向の間には導電糸を縫い込む必要がないため、隣り合う導電部52同士に跨って縫込部を設ける場合に比べて、導電糸を縫い込む領域を小さくできる。これにより、縫込部180を作るために必要な導電糸の総量を少なくできる。したがって、タイヤ110の製造コストを低減できる。また、導電糸を縫い込む作業量を低減できる。
【0075】
なお、
図4に示す構成において、複数の縫込部180同士は、例えば、タイヤ幅方向の位置がずれていてもよい。また、タイヤ幅方向に並んで複数の縫込部180が設けられてもよい。また、1つの縫込部180が2つ以上の導電部52と接触してもよい。縫込部180が接触しない導電部52が設けられてもよい。
【0076】
カーカスプライには、上述した縫込部とは異なる位置に、他の縫込部が設けられてもよい。他の縫込部は、例えば、カーカスプライのうちビードコアのタイヤ幅方向の両側に位置する部分の少なくとも一方に設けられてもよい。他の縫込部がカーカスプライのうちビードコアのタイヤ幅方向の外側に設けられる場合、他の縫込部は、第2チェーファー部と導電部とに接触して第2チェーファー部と導電部とを接続してもよい。
【0077】
導電部は、カーカスプライに沿って延び、トレッド部においてカーカスプライのタイヤ径方向の外側に位置し、かつ、導電性を有するならば、特に限定されない。導電部は、金属を含まなくてもよい。導電部は、例えば、導電性を有するゴム製であってもよい。導電部は、糸状部材なくてもよく、カーカスプライに積層される層状の部材であってもよい。導電部の体積固有抵抗は、チェーファー部の体積固有抵抗と同じであってもよいし、チェーファー部の体積固有抵抗より大きくてもよい。導電部は、設けられなくてもよい。
【0078】
チェーファー部は、導電性を有し、カーカスプライの周りの少なくとも一部を覆うならば、特に限定されない。例えば、上述した実施形態においては、第1チェーファー部71が、幅方向被覆部73,74のいずれか一方または両方を有していなくてもよい。第1チェーファー部71が幅方向被覆部73を有しない場合、例えば、第1チェーファー部71は、径方向被覆部72のタイヤ幅方向の外端部において第2チェーファー部29と接続される。第1チェーファー部と第2チェーファー部とは、一体成形されていてもよい。チェーファー部は、設けられなくてもよい。
【0079】
上述した実施形態では、カーカスプライは、1層のカーカスプライとしたが、2層以上のカーカスプライであってもよい。すなわち、カーカスプライは、上述した実施形態のカーカスプライ51と同様の構成を有するカーカスプライが複数積層されて構成されていてもよい。この場合、縫込部は、例えば、複数層のカーカスプライをまとめてタイヤ径方向に貫通してチェーファー部と導電部とを接続してもよい。
【0080】
また、カーカスプライが2層以上の場合、縫込部は、層ごとに異なる導電糸が縫い込まれて構成されてもよい。具体的には、例えば、カーカスプライが、第1カーカスプライと、トレッド部において第1カーカスプライのタイヤ径方向の外側に位置する第2カーカスプライとが積層されて構成される場合、縫込部は、第1カーカスプライに縫い込まれた第1縫込部と、第2カーカスプライに縫い込まれた第2縫込部と、を有してもよい。この場合、第1縫込部と第2縫込部とは互いに電気的に接続され、第1縫込部がチェーファー部と接触する第1縫目部を有し、第2縫込部が導電部と接触する第2縫目部を有する。第1縫込部と第2縫込部とは、直接接触することで電気的に接続されてもよいし、第1カーカスプライと第2カーカスプライとの間に設けられた他の導電部を介して電気的に接続されてもよい。他の導電部は、例えば、第1カーカスプライと第2カーカスプライとの間に配置されている点を除いて上述した導電部52と同様の構成であってもよい。第1縫込部と第2縫込部とは、それぞれ上述した実施形態の縫込部80と同様の構成を採用できる。
【0081】
カーカス層は、カーカスプライの内面に貼り付けられたインナーライナーを有してもよい。
トレッド部の構成は、トレッド部まで延びる導電部からトレッド踏面部に静電気を流すことができるならば、特に限定されない。
上述した実施形態のタイヤは、どのような車両に用いられてもよい。
なお、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0082】
10,110…タイヤ、11…トレッド部、13…ビード部、51…カーカスプライ、51a…カーカスゴム、51b…プライコード、52…導電部、60…ビードコア、70…チェーファー部、80,180…縫込部、80a…第1縫目部、80b…第2縫目部、81…下糸(導電糸)、82…上糸(導電糸)