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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】光カプラ及び光増幅器
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/28 20060101AFI20221020BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20221020BHJP
   G02B 6/287 20060101ALI20221020BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G02B6/28 W
G02B6/26
G02B6/287
G02B6/02 411
G02B6/02 401
G02B6/02 461
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019210580
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021081648
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】若山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5594823(US,A)
【文献】米国特許第5625728(US,A)
【文献】特開昭62-017709(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035883(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102890310(CN,A)
【文献】特開2019-101152(JP,A)
【文献】特開2019-078912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02- 6/036
G02B 6/26- 6/34
G02B 6/42- 6/44
H01S 3/00- 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材から第N部材(Nは2以上の整数)を有する光カプラであって、
第K部材(Kは1~Nまでの整数)は、
円周上に等間隔で配置された第1コアから第P(PはN以上の整数)コアと、前記第1コアから前記第Pコアの内の前記第1コアと最も近い位置に配置されたマーカと、を有するマルチコア光ファイバと、
1つ以上のシングルコア光ファイバと、
を含み、
前記第K部材のシングルコア光ファイバのコアは、前記第1コアから前記第Pコアの内の前記第1コアとは異なる結合コアに結合し、
第M部材(Mは1~N-1までの整数)の前記マルチコア光ファイバの各コアは、第(M+1)部材の前記マルチコア光ファイバの各コアに接続され、
前記第1部材から前記第N部材に含まれる前記シングルコア光ファイバの合計数はPであり、
前記第1部材から前記第N部材の前記接続により構成される前記マルチコア光ファイバのP個のコアそれぞれは、前記第1部材から前記第N部材に含まれるP個の前記シングルコア光ファイバのコアの1つと結合していることを特徴とする光カプラ。
【請求項2】
PはNに等しく、
前記第K部材に含まれる前記シングルコア光ファイバの数は1であることを特徴とする請求項1に記載の光カプラ。
【請求項3】
前記第M部材の前記第1コアに対して前記第(M+1)部材の前記第1コアを2π/Nだけ回転した状態で前記第M部材の前記マルチコア光ファイバの各コアと前記第(M+1)部材の前記マルチコア光ファイバの各コアは接続されていることを特徴とする請求項2に記載の光カプラ。
【請求項4】
Pは2×Nに等しく、
前記第K部材に含まれる前記シングルコア光ファイバの数は2であり、
前記第K部材の前記結合コアは、前記マルチコア光ファイバの中心に対して互いに逆側に位置するコアであることを特徴とする請求項1に記載の光カプラ。
【請求項5】
前記第M部材の前記第1コアに対して前記第(M+1)部材の前記第1コアをπ/Nだけ回転した状態で前記第M部材の前記マルチコア光ファイバの各コアと前記第(M+1)部材の前記マルチコア光ファイバの各コアは接続されていることを特徴とする請求項4に記載の光カプラ。
【請求項6】
N=2であり、
Pは2×Q(Qは1以上の整数)であり、
前記K部材に含まれる前記シングルコア光ファイバの数はQであり、
前記第K部材の前記結合コアは、前記円周上に等間隔で配置されているコアであることを特徴とする請求項1に記載の光カプラ。
【請求項7】
前記第1部材の前記結合コアは、第2部材の前記結合コアとは異なるコアに接続されていることを特徴とする請求項6に記載の光カプラ。
【請求項8】
信号光の波長において、前記第K部材の前記シングルコア光ファイバのコアと前記結合コアとの結合率は、当該シングルコア光ファイバのコアと前記第K部材の前記マルチコア光ファイバの内の当該結合コアとは異なるコアの結合率より高いことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光カプラ。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の光カプラを有する光増幅器であって、
前記第K部材の前記マルチコア光ファイバの各コアは、コアを伝搬するポンプ光により当該コアを伝搬する信号光を増幅する様に構成されていることを特徴とする光増幅器。
【請求項10】
前記第K部材の前記シングルコア光ファイバのコアと前記結合コアとの前記ポンプ光の波長における結合率は、前記信号光の波長における結合率より高いことを特徴とする請求項9に記載の光増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光カプラ及び光増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、研磨型の光カプラを開示している。非特許文献1が開示する研磨型の光カプラは、2本のシングルモード(SM)光ファイバのクラッドを研磨することで、2本のSM光ファイバのコアを近接して配置したものである。2本のSM光ファイバのコアを近接して配置することで、一方のコアを伝搬する信号光を、他方のコアに移行させることができる。非特許文献1は、コア間の距離及び近接させる長さを調整することで、様々な結合率の光カプラが得られることも開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】保立 和夫、「光ファイバとその応用-VIII 光ファイバ応用部品(1)-単一モードファイバ型光デバイス」、光学 第19巻第6号、1990年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、光通信システムの伝送容量を拡大させるため、マルチコア(MC)光ファイバが利用されている。MC光ファイバは、複数のコアを有する光ファイバである。MC光ファイバを使用する通信システムにおいて、1組の光送信装置及び光受信装置は、MC光ファイバの1つのコアを介して信号光の送受信を行う。このため、例えば、P個(Pは2以上の整数)のコアを有するMC光ファイバを使用する光通信システムにおいては、P個のシングルコア(SC)光ファイバのコアと、当該MC光ファイバのP個のコアを接続する光学部品が必要となる。以下、P個のSC光ファイバのコアと、MC光ファイバのP個のコアを接続する光学部品をPコアMC型光カプラと呼ぶものとする。
【0005】
例えば、非特許文献1に開示されている研磨型光カプラをMC光ファイバに適用し、P個のSC光ファイバのコアそれぞれを、MC光ファイバのP個のコアの1つに近接して配置することでPコアMC型光カプラを生成することができる。しかしながら、通常、MC光ファイバのクラッドには、各コアを識別・同定するためのマーカが設けられる。マーカは、コアやクラッドとは異なる屈折率を有するため、MC光ファイバの複数のコアの内のマーカの近くに配置されているコアとSC光ファイバのコアとの結合率は、MC光ファイバの他のコアとSC光ファイバのコアとの結合率と比較して劣化する。
【0006】
本発明は、マルチコア光ファイバの各コアとの結合率の差を小さくできる光カプラを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、光カプラは、第1部材から第N部材(Nは2以上の整数)を有し、第K部材(Kは1~Nまでの整数)は、円周上に等間隔で配置された第1コアから第P(PはN以上の整数)コアと、前記第1コアから前記第Pコアの内の前記第1コアと最も近い位置に配置されたマーカと、を有するマルチコア光ファイバと、1つ以上のシングルコア光ファイバと、を含み、前記第K部材のシングルコア光ファイバのコアは、前記第1コアから前記第Pコアの内の前記第1コアとは異なる結合コアに結合し、第M部材(Mは1~N-1までの整数)の前記マルチコア光ファイバの各コアは、第(M+1)部材の前記マルチコア光ファイバの各コアに接続され、前記第1部材から前記第N部材に含まれる前記シングルコア光ファイバの合計数はPであり、前記第1部材から前記第N部材の前記接続により構成される前記マルチコア光ファイバのP個のコアそれぞれは、前記第1部材から前記第N部材に含まれるP個の前記シングルコア光ファイバのコアの1つと結合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による、マルチコア光ファイバの各コアとの結合率の差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】4コアMC光ファイバの断面図。
図2】一実施形態による4コアMC型光カプラで使用する光学部材の生成方法の説明図。
図3】一実施形態による4コアMC型光カプラで使用する光学部材を示す図。
図4】一実施形態による4コアMC型光カプラの構成の説明図。
図5】一実施形態による4コアMC型光カプラで使用する光学部材を示す図。
図6】一実施形態による4コアMC型光カプラの構成の説明図。
図7】一実施形態による4コアMC-EDFの構成の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第一実施形態>
以下、本実施形態のPコアMC型光カプラ(Pは2以上の整数)について説明する。なお、本実施形態ではP=4とする。図1は、4コアMC型光カプラに使用するMC光ファイバ1の、長手方向に直交する平面での断面を示している。MC光ファイバ1は、クラッド内に4つのコア11~14を有する。コア11~コア14は、断面の中心を中心とする所定半径の円周上に等間隔で配置されている。つまり、各コアと断面の中心との距離は同じであり、かつ、互いに隣接する2つのコアと断面の中心とを結ぶ2つの線分の角度(以下、コア間角度)は、隣接する2つのコアの組み合わせそれぞれについて等しい。4コアのMC光ファイバの場合、コア間角度は2π/4=π/2である。なお、PコアのMC光ファイバの場合、コア間角度は2π/Pである。
【0012】
また、MC光ファイバ1は、クラッド内にマーカ2を有する。マーカ2は、コア11~コア14を識別・同定するために設けられる。例えば、マーカ2に最も近いコアがコア11であり、コア11から時計回り方向の順でコア12、コア13、コア14と特定することができる。マーカ2は、コア11~コア14やクラッドとは異なる屈折率で構成される。
【0013】
例えば、MC光ファイバ1の外周側からクラッド部分を削り、4つのSC光ファイバのコアそれぞれをコア11~コア14それぞれに近接させることで4コアMC型光カプラを構成することができる。しかしながら、コア11の近傍にはマーカ2が設けられているため、コア11と、コア11に結合させるSC光ファイバのコアとの結合率は、コア12~コア14それぞれとSC光ファイバのコアとの結合率より劣化する。本発明は、MC光ファイバの各コアとSC光ファイバのコアとの結合率の差を小さくするものである。
【0014】
以下、4コアMC型光カプラの製造方法について説明する。図2に示す様に、マーカ2との距離が最も大きいコア13に最も近いMC光ファイバ1の外周面からクラッドを研磨する。また、コア31を有するSC光ファイバ3のクラッドも研磨する。そして、図3に示す様に、MC光ファイバ1の研磨面とSC光ファイバ3の研磨面を融着する。以下の説明において、図3に示す様にMC光ファイバ1の研磨面とSC光ファイバ3の研磨面を融着したものを光学部材100と呼ぶものとする。
【0015】
非特許文献1に記載されている様に、結合させる光の波長(周波数)が決まっている場合、コア31とコア13との結合率は、コア31とコア13との距離と、コア13及びコア31を近接させる長手方向の長さに依存する。つまり、MC光ファイバ1及びSC光ファイバ3の研磨量と研磨する長手方向の長さは、コア13とコア31との間で必要な結合率に基づき決定される。
【0016】
なお、コア31は、コア11、コア12及びコア14とも結合し得る。コア31とコア11、コア12及びコア14それぞれとの結合率も、コア間の距離と、研磨する長手方向の距離に依存する。したがって、より詳しく述べると、MC光ファイバ1及びSC光ファイバ3の研磨量と研磨する長手方向の長さは、コア31と、コア11、コア12及びコア14それぞれとの結合率を所定値以下、或いは、最小(例えば、0、つまり無結合)にし、かつ、コア31とコア13との結合率を目標値とする様に決定する。なお、コア31と、コア11、コア12及びコア14それぞれとの結合率は、コア31とコア13との結合率より小さくする。
【0017】
本実施形態では、図3に示す光学部材100をコア数Pだけ、つまり、本例では4つ作成する。この4つの光学部材100は同じ構成であるが、以下では、4つの光学部材100を区別するために、光学部材#1、光学部材#2、光学部材#3及び光学部材#4と表記する。
【0018】
図4(A)は、本実施形態による4コアMC型光カプラ1000の構成の説明図である。図4(A)に示す様に、4コアMC型光カプラ1000は、4つの光学部材100を直列に接続したものである。なお、図4(A)においては図の簡略化のため、SC光ファイバ3は省略している。なお、光学部材#1と光学部材#2は、例えば、融着処理により、各コアが互いに接続される様に、互いの断面が接続される。光学部材#2及び光学部材#3と、光学部材#3及び光学部材#4についても同様である。
【0019】
本実施形態では、光学部材#M(本例においてMは1~3の整数)のコア11に対して光学部材#(M+1)のコア11をπ/2だけ、つまり、コア間角度だけ回転させた状態で光学部材#Mと光学部材#(M+1)の断面を接続する。図4(B)は、上記の様に接続した場合の各コアの接続状態を示している。なお、図4(B)において、網掛のコアは、SC光ファイバ3のコア31と結合している結合コアを示している。
【0020】
例えば、図4(A)及び図4(B)に示す様に、光学部材#4の光学部材#3に接続されている断面とは異なる断面をMC光ファイバ4と接続する。なお、MC光ファイバ4は、MC光ファイバ1と同じである。各光学部材100におけるコア13とSC光ファイバ3のコア31との結合率を1とすると、光学部材#1のSC光ファイバ3のコア31からの信号光は、光学部材#1のコア13に入射し、よって、MC光ファイバ4のコア13に入射する。同様に、光学部材#2、光学部材#3及び光学部材#4それぞれのSC光ファイバ3のコア31からの信号光は、MC光ファイバ4のコア14、11及び12に入射する。したがって、4つのSC光ファイバからの信号光をMC光ファイバ4の4つのコアそれぞれに入射させることができる。例えば、4つの異なる光送信装置が出力する信号光#1~#4を、それぞれ、光学部材#1~光学部材#4のSC光ファイバ3のコア31に入射させると、信号光#1~#4をMC光ファイバ4のコア13、14、11及び12に入射させることができる。
【0021】
なお、4コアMC型光カプラ1000に方向性はないため、MC光ファイバ4のコア11、12、13及び14から4コアMC型光カプラ1000に入射した信号光は、それぞれ、光学部材#3、光学部材#4、光学部材#1及び光学部材#2のSC光ファイバ3のコア31に入射することなる。よって、MC光ファイバ4のコア11~14を伝搬する信号光#1~#4を、光学部材#1~光学部材#4のSC光ファイバ3のコア31を介して、4つの異なる光受信装置に入射させることができる。
【0022】
本実施形態の4コアMC型光カプラ1000において、光学部材#1~光学部材#4の4つのSC光ファイバ3のコア31は、いずれも、同じ光学部材のMC光ファイバ1の同じコア13に結合させている。したがって、光学部材#1~光学部材#4を直列に接続することで構成される4つのコア(図4(B)の表の1つの行が1つのコアに対応)と、各SC光ファイバのコアとの結合率の差は小さくなる。
【0023】
なお、本実施形態では、MC光ファイバ1のコア13をSC光ファイバ3のコア31に結合させたが、コア12やコア14と結合させる構成とすることもできる。つまり、SC光ファイバ3のコア31に結合させるMC光ファイバ1のコアは、マーカ2の影響を受けないコア11とは異なるコアであれば良い。また、本実施形態では、光学部材#1~光学部材#4のMC光ファイバ1の結合コアは総てコア31であったが、結合コアは、マーカ2の影響を受けないコア11とは異なるコアであれば良く、光学部材#1~光学部材#4において同じにする必要はない。つまり、例えば、光学部材#1及び光学部材#2では結合コアをコア12とし、光学部材#3及び光学部材#4では結合コアをコア14とすることもできる。いずれにしても、光学部材間の接続において互いに接続するコアを調整することで、P個のSC光ファイバとMC光ファイバのP個のコアをそれぞれ結合させることができる。
【0024】
纏めると、本実施形態のPコアMC型光カプラは、第1光学部材から第P光学部材で構成される。第1光学部材から第P光学部材のそれぞれは、1つの所定長のMC光ファイバと、1つのSC光ファイバで構成される。このMC光ファイバは、円周上に等間隔で配置された第1コアから第Pコアと、マーカとを有する。マーカは、第1コアに最も近い位置に配置されているものとする。そして、第K光学部材(Kは1~Pまでの整数)のSM光ファイバのコアは、第1コアから第Pコアの内の第1コアとは異なる結合コアに結合される。結合コアは、第2コアから第Pコアの1つであり、光学部材毎に異なるものであっても同じものであっても良い。また、第M光学部材(Mは1~P-1までの整数)のMC光ファイバの各コアは、第(M+1)光学部材のMC光ファイバの各コアに接続される。なお、第1光学部材から第P光学部材を順に直列接続することで構成されるP個のコアそれぞれが、1つのSM光ファイバのコアと結合する様に、第M光学部材と第(M+1)光学部材のMC光ファイバ1を接続する。
【0025】
例えば、各光学部材の結合コアを同じとする場合、第M光学部材の第1コアに対して第(M+1)光学部材の第1コアを2π/Pだけ回転させた状態で第M光学部材のMC光ファイバの各コアと第(M+1)光学部材のMC光ファイバの各コアを接続させれば良い。
【0026】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。図5は、本実施形態の光学部材101を示している。光学部材101は、MC光ファイバ1のコア12とSC光ファイバ5のコア51を結合させ、MC光ファイバ1のコア14とSC光ファイバ6のコア61を結合させたものである。なお、コア51と、MC光ファイバ1のコア11、13及び14との結合率が最小値又は所定値以下となる様にする。同様に、コア61と、MC光ファイバ1のコア11、12及び13との結合率が最小値又は所定値以下となる様にする。
【0027】
本実施形態では、図5に示す光学部材101をN=P/2だけ、つまり、本例では2つ作成する。この2つの光学部材101は同じ構成であるが、以下では、2つの光学部材101を区別するために、光学部材#1及び光学部材#2と表記する。
【0028】
図6(A)は、本実施形態による4コアMC型光カプラ1000の構成の説明図である。図6(A)に示す様に、4コアMC型光カプラ1000は、2つの光学部材#1及び光学部材#2を直列に接続したものである。なお、図6(A)においては図の簡略化のため、SC光ファイバ5及び6は省略している。なお、本実施形態でも、光学部材#1のコア11に対して光学部材#(M+1)のコア11をπ/2だけ、つまり、コア間角度だけ回転させた状態で光学部材#Mと光学部材#(M+1)の断面を接続する。図6(B)は、上記の様に接続した場合の各コアの接続状態を示している。なお、図6(B)において、網掛のコアは、SC光ファイバ5のコア51及びSC光ファイバ6のコア61と結合している結合コアを示している。
【0029】
例えば、図6(A)及び図6(B)に示す様に、光学部材#2の光学部材#1に接続されている断面とは異なる断面をMC光ファイバ4と接続する。なお、MC光ファイバ4は、MC光ファイバ1と同じである。各光学部材100における結合コアとSC光ファイバのコアとの結合率を1とすると、光学部材#1のSC光ファイバ5のコア51からの信号光は、光学部材#1のコア12に入射し、よって、MC光ファイバ4のコア12に入射する。また、光学部材#1のSC光ファイバ6のコア61からの信号光は、光学部材#1のコア14に入射し、よって、MC光ファイバ4のコア14に入射する。同様に、光学部材#2のSC光ファイバ5のコア51及びSC光ファイバ6のコア61からの信号光は、それぞれ、MC光ファイバ4のコア13及びコア11に入射する。したがって、4つのSC光ファイバからの信号光をMC光ファイバの4つのコアそれぞれに入射させることができる。
【0030】
以上、本実施形態において、1つの光学部材は、2つのSC光ファイバを有し、よって、1つの光学部材のMC光ファイバ1の4つのコアの内の2つのコアが結合コアとなる。なお、結合コアはコア11とは異なるコアである。そして、光学部材間の直列接続において相互に接続するMC光ファイバのコアを調整することで、光学部材間の直列接続により構成される4つのコアの総てをいずれかのSC光ファイバのコアに結合させる。この構成により、MC光ファイバの各コアとSC光ファイバのコアとの結合率の差を小さくすることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、各光学部材の結合コアを同じとしたが、光学部材#1及び光学部材#2において同じにする必要はない。つまり、例えば、光学部材#1では結合コアをコア12及びコア13とし、光学部材#2では結合コアをコア13及びコア14とすることもできる。
【0032】
纏めると、本実施形態のPコアMC型光カプラは、第1光学部材から第N光学部材で構成される。なお、本実施形態においてPは偶数であり、N=P/2である。第1光学部材から第N光学部材のそれぞれは、1つの所定長のMC光ファイバと、2つのSC光ファイバで構成される。このMC光ファイバは、円周上に等間隔で配置された第1コアから第Pコアと、マーカとを有する。マーカは、第1コアに最も近い位置に配置されているものとする。そして、第K光学部材(Kは1~Nまでの整数)の2つのSC光ファイバのコアは、第1コアから第Pコアの内の第1コアとは異なる2つの異なる結合コアに結合される。結合コアは、第2コアから第Pコアのいずれかであり、光学部材に毎に異なるものであっても同じものであっても良い。また、第M光学部材(Mは1~N-1までの整数)のMC光ファイバの各コアは、第(M+1)光学部材のMC光ファイバの各コアに接続される。なお、第1光学部材から第N光学部材を順に直列接続することで構成されるP個のコアそれぞれが、1つのSC光ファイバのコアと結合する様に、第M光学部材と第(M+1)光学部材のMC光ファイバ1を接続する。
【0033】
例えば、第1光学部材から第N光学部材それぞれの2つの結合コアを同じとし、かつ、MC光ファイバの中心に対して互いに逆側に位置するコア(例えば、図5のコア12とコア14)とすることができる。この場合、第M光学部材の第1コアに対して第(M+1)光学部材の第1コアをπ/Nだけ回転させた状態で第M光学部材のMC光ファイバの各コアと第(M+1)部材のMC光ファイバの各コアを接続させれば良い。
【0034】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第二実施形態のPコアMC型光カプラは、それぞれが、2つのSC光ファイバを有する第1光学部材から第N光学部材を直列に接続したものであった。なお、Pは偶数であり、かつ、N=P/2である。本実施形態では、N=2とする。つまり、本実施形態においては、第1光学部材と第2光学部材の2つの光学部材を直列に接続することでPコアMC型光カプラを構成する。なお、第二実施形態と同様に、本実施形態でもPを偶数とし、各光学部材は、Q個(Q=P/2)のSC光ファイバを有する。各光学部材の結合コアは、円周上に等間隔で配置されているP個のコアから1つおきに選択したQ個のコアとする。例えば、P=10とし、番号1~番号10のコアが時計回り方向に配置されており、マーカが番号1のコアと最も近い位置に設けられているものとする。この場合、結合コアは、偶数番号のコアとすることができる。偶数番号のコアは、円周上に等間隔で配置されている。そして、第1光学部材の結合コアを、第2光学部材の結合コアとは異なるコアに接続することによりPコアMC型光カプラを構成することができる。
【0035】
<第四実施形態>
第一実施形態において、各光学部材は1つのSC光ファイバを有し、第二実施形態において、各光学部材は、2つのSC光ファイバを有し、第三実施形態において、2つの光学部材は、Q=P/2個のSC光ファイバを有していた。つまり、第一実施形態から第三実施形態において、各光学部材に含まれるSC光ファイバの数は同じであった。しかしながら、光学部材毎にSC光ファイバの数、よって、結合コアの数を異ならせることができる。例えば、第1光学部材は3つのSC光ファイバを有し、図1のコア12、コア13及びコア14を結合コアとする。そして、第2光学部材は、1つのSC光ファイバを有し、図1のコア13を結合コアとする。そして、第2光学部材のコア13を第1光学部材のコア11に結合させることで4コアMC型光カプラを構成することができる。
【0036】
纏めると、PコアMC型光カプラは、第1光学部材から第N光学部材で構成される。なお、Nは2以上の整数であり、PはN以上の整数である。第1光学部材から第N光学部材のそれぞれは、1つの所定長のMC光ファイバと、1つ以上のSC光ファイバで構成される。なお、第1光学部材から第N光学部材に含まれるSC光ファイバの合計数はPである。各光学部材のMC光ファイバは、円周上に等間隔で配置された第1コアから第Pコアと、マーカとを有する。マーカは、第1コアに最も近い位置に配置されているものとする。そして、第K光学部材(Kは1~Nまでの整数)のSM光ファイバのコアは、第1コアから第Pコアの内の第1コアとは異なる結合コアに結合される。結合コアは、第2コアから第Pコアのいずれかである。また、第M光学部材(Mは1~N-1までの整数)のMC光ファイバの各コアは、第(M+1)光学部材のMC光ファイバの各コアに接続される。なお、第1光学部材から第N光学部材を順に直列接続することで構成されるP個のコアそれぞれが、1つのSM光ファイバのコアと結合する様に、第M光学部材と第(M+1)光学部材のMC光ファイバを接続する。
【0037】
<第五実施形態>
続いて、第一実施形態から第四実施形態で説明したPコアMC型光カプラを使用した光増幅器について説明する。PコアのMC光ファイバを利用する通信システムにおいては、各コアの信号光を増幅するために、PコアMC型EDFが使用される。PコアMC型EDFは、エルビウムが添加されたP個のコアを有する。良く知られている様に、エルビウムが添加されたコアで信号光及びポンプ光を伝搬することにより信号光は増幅される。このため、ポンプ光源で生成したポンプ光を、PコアMC型EDFの各コアに入射させる必要がある。このため、本実施形態では、第一実施形態から第四実施形態で説明したPコアMC型光カプラを使用する。つまり、本実施形態のPコアMC型EDFは、第一実施形態から第四実施形態で説明したPコアMC型光カプラのP個のコアそれぞれにエルビウムを添加することで構成される。
【0038】
図7(A)は、本実施形態によるPコアMC型EDF1001の構成の説明図である。なお、図7(A)は、第一実施形態で説明したPコアMC型光カプラ1000を利用している。但し、上述した様に、MC光ファイバ1のコア11~コア14は、ポンプ光により信号光を増幅する様に構成されている。PコアMC型EDF1001の両端には、MC光ファイバ7及びMC光ファイバ4が接続される。MC光ファイバ7及びMC光ファイバ4のコア配置は、MC光ファイバ1と同様である。図7(B)は、MC光ファイバ7及びMC光ファイバ4と、PコアMC型EDF1001の各コアとの接続例を示している。MC光ファイバ7のコア11~14からの信号光#1~信号光#4は、PコアMC型EDF1001を介して、MC光ファイバ4のコア11~14に入射する。光学部材#1においては、コア13にポンプ光が入射し、信号光#3の増幅に使用される。同様に、光学部材#2~光学部材#4において入射されるポンプ光は、信号光#4、信号光#1、信号光#2の増幅に使用される。
【0039】
なお、本実施形態では、SC光ファイバ3のコア31からMC光ファイバ1のコア13にポンプ光を入射させる必要があるが、コア13を伝搬する信号光がSC光ファイバ3のコア31に入射することについては防ぐ必要がある。コア間の結合率は、コア間の距離及び近接する長手方向の長さに加えて、光の波長に依存する。通常、光増幅において、ポンプ光の波長と、信号光の波長は異なる。したがって、ポンプ光の波長においては、コア31とコア13との結合率を第1所定値より高くし、かつ、信号光の波長においては、コア31とコア13との結合率を第2所定値より小さくする様には、コア31とコア13との距離及び長手方向において近接させる長さを決定する。なお、第2所定値は第1所定位置以下とする。なお、光増幅器とする場合、SC光ファイバ3のポンプ光が、コア11、12及び14に入射しても問題はない。したがって、第一実施形態とは異なり、ポンプ光の波長におけるコア31とコア11、12及び14との結合率については、最小値や所定値より低くする構成とする必要はない。
【0040】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1:MC光ファイバ、3:SC光ファイバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7