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特許7161994ピクセルの受動マトリクスを包含する能動的熱パターン・センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ピクセルの受動マトリクスを包含する能動的熱パターン・センサ
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20221020BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20221020BHJP
   H01L 37/02 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G01J1/02 Y
G01J1/02 Q
G06T1/00 400G
H01L37/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019526377
(86)(22)【出願日】2017-07-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 FR2017052118
(87)【国際公開番号】W WO2018020176
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-05-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】1657391
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519031922
【氏名又は名称】アイデミア アイデンティティ アンド セキュリティ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンゲ,ジャン-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】フーレ,ジョエル ヤン
(72)【発明者】
【氏名】セギュラ プシャド,ジョゼプ
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】樋口 宗彦
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/051087(WO,A1)
【文献】特開平10-187954(JP,A)
【文献】特開平4-137676(JP,A)
【文献】特開2002-269548(JP,A)
【文献】特開2001-235364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J1/00-11/00
G01J5/00-5/62
G06T1/00-1/60
H01L35/00-37/04
A61B5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかのピクセル(102)の行および列のマトリクスを包含する熱パターン・センサ(100)であって、各ピクセル(102)は、少なくとも、
- 下側電極(108,112)と上側電極(110,114,130,145)の間に配される焦電材料の少なくとも1つの部分(106)によって形成される焦電キャパシタンスであって、前記下側電極(108,112)および上側電極(110,114,130,145)の一方が前記ピクセル(102)の読み出し電極に対応する、焦電キャパシタンスと、
- 前記ピクセル(102)の前記焦電キャパシタンスの前記焦電材料の部分(106)を、前記ピクセル(102)の前記焦電キャパシタンスによる熱パターンの測定中に加熱可能な加熱素子(116,130,145)と、
を含み、
- ピクセル(102)の各行について、前記行の前記ピクセル(102)の前記加熱素子(116,130,145)が、前記行の前記ピクセル(102)の前記焦電材料の部分(106)を、ほかの行の前記ピクセル(102)の前記加熱素子(116,130,145)とは独立して加熱することが可能であり、かつ
- ピクセル(102)の各列について、前記列の各ピクセル(102)の前記読み出し電極が、ピクセル(102)の前記列の全長にわたって延びており、また前記列の前記ピクセル(102)の前記焦電材料の部分(106)と接触しておりかつほかの列の前記ピクセル(102)の読み出し電極を形成する第1の導電性部材(112)とは明確に区別される、同一の第1の導電性部材(112)によって互いに電気的に接続され、かつ形成される
熱パターン・センサ(100)。
【請求項2】
- 各ピクセル(102)内において、前記下側電極および上側電極の他方が、前記加熱素子(116)とは明確に区別される前記ピクセル(102)のバイアス印加電極(114)に対応し、かつ
- ピクセル(102)の各行内において、前記行の前記ピクセル(102)の前記加熱素子(116)および前記バイアス印加電極(114)が、前記行の前記ピクセル(102)の前記焦電材料の部分(106)の上または下に並置されて配列される、
請求項1に記載の熱パターン・センサ(100)。
【請求項3】
ピクセル(102)の各行内において、少なくとも1つの第2の導電性部材(130)が、前記行の前記ピクセル(102)のそれぞれの前記加熱素子と前記下側電極および上側電極の他方との両方を形成する、請求項1に記載の熱パターン・センサ(100)。
【請求項4】
さらに、前記マトリクスの各ピクセル(102)の前記上側電極を覆う誘電体層および前記誘電体層の上に配される第1の導電性の層を包含する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱パターン・センサ(100)。
【請求項5】
- 各ピクセル(102)の前記下側電極および上側電極の他方が、前記マトリクスのすべての前記ピクセル(102)に共通する第2の導電性の層(138)によって形成され、かつ基準電位と電気的に接続されることが可能であり、
- ピクセル(102)の各行内において、少なくとも1つの第2の導電性部材(130)が、前記ピクセル(102)の前記加熱素子を形成する、
請求項1に記載の熱パターン・センサ(100)。
【請求項6】
前記第2の導電性の層(138)は、前記加熱素子(130)と前記読み出し電極(112)の間に配される、請求項5に記載の熱パターン・センサ(100)。
【請求項7】
各第2の導電性部材(130)は、各ピクセル(102)内に、前記第2の導電性部材(130)の残りの部分より電気抵抗が大きい部分を包含する、請求項3、5、および6のいずれか一項に記載の熱パターン・センサ(100)。
【請求項8】
ピクセル(102)の各行について、前記行の各ピクセル(102)の前記加熱素子(116,130)は、ピクセル(102)のほかの行の前記加熱素子から明確に区別される少なくとも1つの第2の導電性部材によって互いに電気的に接続され、かつ形成され、前記行の前記ピクセル(102)のすべての焦電材料の部分(106)を同時に加熱可能である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の熱パターン・センサ(100)。
【請求項9】
前記読み出し電極は、前記ピクセル(102)の前記下側電極に対応する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の熱パターン・センサ(100)。
【請求項10】
前記読み出し電極は、前記ピクセル(102)の前記上側電極に対応する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の熱パターン・センサ(100)。
【請求項11】
前記加熱素子のそれぞれは、いくつかの重ね合わされた導電性部材(150,152,156)を包含する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の熱パターン・センサ(100)。
【請求項12】
いくつかのピクセル(102)の行および列のマトリクスを包含する熱パターン・センサ(100)を製造する方法であって、少なくとも、
- 各ピクセル(102)について、下側電極(108,112)と上側電極(110,114,130,145)の間に配される焦電材料の少なくとも1つの部分(106)によって形成される焦電キャパシタンスであって、前記下側電極(108,112)および上側電極(110,114,130,145)の一方が前記ピクセル(102)の読み出し電極に対応する、焦電キャパシタンスを製造するステップと、
- 前記ピクセル(102)の前記焦電キャパシタンスの前記焦電材料の部分(106)を、前記ピクセル(102)の前記焦電キャパシタンスによる熱パターンの測定中に加熱可能な加熱素子(116,130,145)を製造するステップと、
の実施を含み、
- ピクセル(102)の各行について、前記行の前記ピクセル(102)の前記加熱素子(116,130,145)が、前記行の前記ピクセル(102)の前記焦電材料の部分(106)を、ほかの行の前記ピクセル(102)の前記加熱素子(116,130,145)とは独立して加熱することが可能であり、かつ
- ピクセル(102)の各列について、前記列の各ピクセル(102)の前記読み出し電極が、ピクセル(102)の前記列の全長にわたって延びており、また前記列の前記ピクセル(102)の前記焦電材料の部分(106)と接触しておりかつほかの列の前記ピクセル(102)の読み出し電極を形成する第1の導電性部材(112)とは明確に区別される、同一の第1の導電性部材(112)によって互いに電気的に接続され、かつ形成される
熱パターン・センサ(100)を製造する方法。
【請求項13】
前記ピクセル(102)の前記下側電極(108)および/または前記ピクセル(102)の前記上側電極(110)および/または前記ピクセル(102)の前記加熱素子(116,130,145)の前記製造は、少なくとも1つの導電性材料のプリントによる少なくとも1つの堆積の実施を包含する、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動的熱検出を実行し、かつピクセルの受動マトリクスを含む熱パターン・センサ、たとえば、指紋センサに関する。
【背景技術】
【0002】
指紋センサは、熱検出手段を包含する。これらの熱検出手段は、焦電素子、ダイオード、サーミスタ、またはそのほかの任意の、温度における変化から電位または電流における変化への転換を可能にする感温素子に対応し得る。
【0003】
指紋検出は、特許文献1、特許文献2および特許文献3の中で述べられているとおり、指とセンサの間の温度における差を利用する、いわゆる『受動』センサによって実行し得る。しかしながら、これらのセンサは、指とセンサの間の温度差に一意的に依存する測定を行うという欠点を有する。したがって、指とセンサが同一の温度(たとえば、特定の時間にわたってセンサの上に指が残存していた場合)である場合には、獲得される信号のレベルがゼロになる可能性があるか、または取り込まれた画像のコントラストが変化し、その後のその画像の処理の間に問題を生じる可能性がある。
【0004】
受動温度センサによって起こされるこの問題を取り除くため、とりわけ指が移動しない静的取得の場合において、たとえば、特許文献4および特許文献5の中で述べられているものなどの、いわゆる『能動的』指紋センサが提案された。その種のセンサにおいては、各ピクセルが、間に焦電材料の部分が配された2つの導電性電極から形成される焦電キャパシタンスおよび加熱素子を包含する。この加熱素子は、ピクセル内の特定の量の熱を消散させ、センサ上に指が存在する間の、特定の取得時間、すなわち積分時間の終了時に、ピクセルの熱が測定される。これにより、熱が皮膚によって吸収されたか(指紋の山が存在するときのピクセル)またはピクセル内に保存されたか(指紋の谷が存在するときのピクセル)に応じ、各ピクセルにおける検出された指紋の山または谷の存在の違いを識別することが可能になる。これは、皮膚によって熱が吸収される山が存在するときのピクセルの場合に、谷が存在するときのピクセルと比較して、より低い最終温度をもたらす。
【0005】
第1に、その種のセンサは、センサと接触している要素の熱容量(比熱容量とも呼ばれる)を測定することを可能にする。獲得される測定値は、センサと、存在する要素(指紋の場合であれば、山または谷)の部分との間の熱伝導度にも依存する。
【0006】
能動的温度センサを形成するために、このセンサのピクセルと加熱素子が、概して、電流が流れる抵抗素子からの熱を消散させるジュール効果を使用して結合される。ピクセルを形成する技術的な積み重ねのレベルの1つが、有利に使用されてこれらの加熱素子が形成される。たとえば、トランジスタおよびセンサの相互接続を製造する働きを提供する導電性レベルのうちの1つを使用することが、これらのレベルのうちの1つが適切な抵抗率を有する導電性材料を包含し、かつそれに対してすでに利用可能な電圧の1つ、たとえばセンサの供給電圧を印加し、ジュール効果によって熱を生成するに充分である場合には可能である。とりわけこれは、センサが、ガラスまたはプラスチック基板上に製造されるTFT(薄膜トランジスタ)のトランジスタを包含する場合に使用される。
【0007】
その種のセンサのピクセルは、いくつかの行およびいくつかの列のマトリクスを形成することによって配列される。ピクセルの読み出しは、概して行単位で実行される。その場合、加熱素子もまた、各行の先頭にあるトランジスタを使用して行毎にコントロールすることができ、それによってピクセルのそれぞれにおけるコントロール・トランジスタの追加を回避できる。加熱素子の各行は、たとえば、ピクセルのマトリクスの一方の側においてグラウンドに、他方の側において、そのピクセルの行に関連付けされ、かつ加熱素子を通って流れる電流が、したがってこれらの加熱素子によりピクセル内にジュール効果によって注入される熱出力がコントロールされる態様に適合された供給源に接続されるコントロール・トランジスタに接続される。
【0008】
能動的温度センサの各ピクセルの焦電キャパシタンス内に現れる電荷の数における変動の読み出しを実行するために、ピクセルのそれぞれは、少なくとも1つの選択トランジスタを包含し、各ピクセル列内のピクセルの選択トランジスタは、それ自体が読み出し回路に接続された導電性ラインに接続される。ピクセル行の読み出しの間に、この行のピクセルの選択トランジスタがオンにされ、それによりこのピクセル行のアクティブ・ノードを、ピクセル列のそれぞれのベースにある読み出し回路に接続することが可能になる。ほかのピクセル行に属するピクセルのブロックされた選択トランジスタは、それらのピクセルから読み出し回路への電荷の転移を防止する。このほかのトランジスタも、特に、ピクセルが電圧読み出しのとき、およびそれらがリセット・トランジスタおよび電圧フォロワ・トランジスタの存在を必要とするとき、またはセンサが、専用の読み出し回路に各ピクセルのフォトダイオードを接続するトランジスタが各ピクセル内に存在する光学センサも形成するときには、各ピクセル内に存在することがある。
【0009】
しかしながら、これらのピクセルのマトリクス内におけるトランジスタの存在は、センサの製造における技術的な制約および有意のコストを表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第4,394,773号明細書
【文献】米国特許第4,429,413号明細書
【文献】米国特許第6,289,114号明細書
【文献】米国特許第6,091,837号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2385486号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、すなわち、センサのピクセルを加熱する要素を包含し、ピクセルの受動マトリクスを包含し、すなわち、ピクセルのそれぞれの中に存在するトランジスタに頼ることなくピクセルの読み出しを可能にする構造の能動的熱パターン・センサを提案することをねらいとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
それを行うため、本発明は、いくつかのピクセルの行および列のマトリクスを包含する熱パターン・センサを提案し、各ピクセルが、少なくとも、
- 下側電極と上側電極の間に配される焦電材料の少なくとも1つの部分によって形成され、それにおいて下側および上側のうちの第1の電極がピクセルの読み出し電極に対応する焦電キャパシタンスと、
- 前記ピクセルの焦電キャパシタンスの焦電材料の部分を、前記ピクセルの焦電キャパシタンスによる熱パターンの測定中に加熱可能な加熱素子と、
を含み、それにおいては、
- ピクセルの各行について、前記行のピクセルの加熱素子が、前記行のピクセルの焦電材料の部分を、ほかの行のピクセルの加熱素子とは独立して加熱することが可能であり、かつ
- ピクセルの各列について、前記列の各ピクセルの読み出し電極が、前記列のピクセルの焦電材料の部分と接触している少なくとも1つの第1の導電性部材によって互いに電気的に接続され、かつ形成され、かつほかの列のピクセルの読み出し電極を形成する第1の導電性部材とは明確に区別される。
【0013】
このセンサは、受動ピクセルのマトリクスを伴って製造される(加熱されるピクセルを含むことから)能動センサに対応し、言い換えると、ピクセル内にトランジスタの存在を伴わない。したがって、このセンサの製造は、ピクセルのマトリクス内におけるトランジスタの製造を必要とするテクノロジに限定されることなく、またシリコン等の半導体基板またはガラス基板上における製造に適合されたステップの実装だけでなく、たとえば、可撓性基板上におけるプリンテッド・エレクトロニクス・テクノロジを使用して製造することもできる。
【0014】
ピクセルのマトリクス内にトランジスタを伴わないため、ピクセルのマトリクスの製造が単純化し、所望の分解能で平行な導電性ラインの回路網を製造する能力に総括できる。これは、半導体上におけるリソグラフィ、たとえば、プリント回路の製造に実装されているリソグラフィ、プリント(グラビア印刷、オフセット・エッチング等)、レーザによる構造化等より安価な方法を用いて可能になる。センサのピクセルの要素を形成する異なる導電性部材は、高いパフォーマンスのカプセル化を必要としないように充分に安定した導電性インクを用いて製造し得る。非常に低いコストのセンサの製造は、たとえば、単純なプラスチック基板(PETフィルム)上におけるプリントによって企図され得る。
【0015】
本発明に従ったセンサは、熱検出を実行し、本発明に従ったセンサにおいては、読み出されるのが生成された焦電電荷でありキャパシタンス値ではないことから、容量タイプのセンサに対応しない。本発明に従ったセンサにおいては、電荷の注入は行われない。
【0016】
この種のセンサは、ピクセル行の選択がピクセルの加熱を通じて実行され、それが行毎に実行されるという事実に起因して、それの管理のために必要とされる信号の数が低減されるという利点も有する。
【0017】
このセンサによって検出されることが意図された熱パターンを含む要素には、センサとの物理的な接触があること、言い換えると、この熱パターンの検出の間にセンサに当接して配されることが意図される。
【0018】
各ピクセル行について、前記行のピクセルの加熱素子は、ほかの行のピクセルの加熱素子とは独立してコントロールすることが可能である。
【0019】
1つの実施態様によれば、熱パターン・センサを次のようなものとし得る:
- 各ピクセル内において、下側および上側のうちの第2の電極が、加熱素子とは明確に区別されるピクセルのバイアス印加電極に対応し、かつ
- ピクセルの各行内において、前記行のピクセルの加熱素子およびバイアス印加電極が、前記行のピクセルの焦電材料の部分の上または下に並置されて配列される。
【0020】
別の実施態様によれば、熱パターン・センサを、ピクセルの各行内において、少なくとも1つの第2の導電性部材が、前記行のピクセルのそれぞれの加熱素子および下側および上側のうちの第2の電極の両方を形成するようなものとし得る。
【0021】
さらにこのセンサは、マトリクスの各ピクセルの上側電極を覆う誘電体層および前記誘電体層の上に配される第1の導電性の層を包含し得る。この第1の導電性の層は、たとえば、センサ上に置かれた指から到来する電磁ノイズを低減することを可能にするセンサの電磁シールドを形成する。
【0022】
別の実施態様によれば、センサを次のようなものとし得る:
- 各ピクセルの下側および上側のうちの第2の電極が、マトリクスのすべてのピクセルに共通する第2の導電性の層によって形成され、かつ基準電位と電気的に接続されることが可能であり、
- ピクセルの各行内において、少なくとも1つの第2の導電性部材が、ピクセルの加熱素子を形成し得る。
【0023】
この場合においては、第2の導電性の層が、このセンサの電磁シールドの層を形成する。
【0024】
第2の導電性の層は、加熱素子と読み出し電極の間に配し得る。この場合においては、第2の導電性の層が、第2の電極および電磁シールドの層の両方を形成する。
【0025】
各第2の導電性部材は、各ピクセル内に、前記第2の導電性部材の残りの部分より電気抵抗が大きい部分を包含し得る。その種の構成は、有利であり、センサのピクセル間のジアテルミーを制限することを可能にする。
【0026】
ピクセルの各行について、前記行の各ピクセルの加熱素子は、ピクセルのほかの行の加熱素子から明確に区別される少なくとも1つの第2の導電性部材によって互いに電気的に接続され、かつ形成されること、および前記行のピクセルのすべての焦電材料の部分を同時に加熱可能である。
【0027】
好都合には、読み出し電極がピクセルの下側電極に対応し得る。この場合においては、このセンサによって検出されることが意図された熱パターンを含む要素には、ピクセルの上側電極の側、すなわち、センサの前面の側、たとえばセンサを覆っている保護層上においてセンサとの接触があることが意図される。
【0028】
しかしながら、読み出し電極がピクセルの上側電極に対応することは可能である。この場合においては、このセンサによって検出されることが意図された熱パターンを含む要素には、ピクセルの下側電極の側、すなわち、センサの裏面の側においてセンサとの接触があること、たとえばセンサの異なる要素が製造される基板の裏面に対して接触があることが意図される。
【0029】
加熱素子のそれぞれは、いくつかの重ね合わされた導電性部材を包含し得る。
【0030】
本発明は、いくつかのピクセルの行および列のマトリクスを包含する熱パターン・センサを製造する方法にも関係し、少なくとも:
- 各ピクセルについて、下側電極と上側電極の間に配される焦電材料の少なくとも1つの部分によって形成される焦電キャパシタンスであって、それにおいて下側および上側のうちの第1の電極がピクセルの読み出し電極に対応する焦電キャパシタンスを製造するステップと、
- 前記ピクセルの焦電キャパシタンスの焦電材料の部分を、前記ピクセルの焦電キャパシタンスによる熱パターンの測定中に加熱可能な加熱素子を製造するステップと、
の実施を含み、それにおいて、
- ピクセルの各行について、前記行のピクセルの加熱素子が、前記行のピクセルの焦電材料の部分を、ほかの行のピクセルの加熱素子とは独立して加熱することが可能であり、かつ
- ピクセルの各列について、前記列の各ピクセルの読み出し電極が、前記列のピクセルの焦電材料の部分と接触している少なくとも1つの第1の導電性部材によって互いに電気的に接続され、かつ形成され、かつほかの列のピクセルの読み出し電極を形成する第1の導電性部材とは明確に区別される。
【0031】
ピクセルの下側電極および/またはピクセルの上側電極および/またはピクセルの加熱素子の製造は、少なくとも1つの導電性材料、都合よくは導電性インクのプリントによる少なくとも1つの堆積の実施を包含し得る。
【0032】
本発明は、純粋に説明の目的で与えられ、かついかなる形でも限定しない添付図面を参照した例示的な実施態様の説明を通じてより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の要旨である熱パターン・センサのピクセルの一部の断面図である。
図2】第1の実施態様に従った、本発明の要旨である熱パターン・センサの一部の上面図である。
図3】本発明の要旨である熱パターン・センサのピクセルの列に関連付けされた読み出し回路を製造する例を示した平面図である。
図4】第2の実施態様に従った、本発明の要旨である熱パターン・センサの一部の上面図である。
図5】第3の実施態様に従った、本発明の要旨である熱パターン・センサの一部の上面図である。
図6】第2および第3の実施態様の代替に従った、本発明の要旨である熱パターン・センサの一部の上面図である。
図7】代替実施態様に従った、本発明の要旨である熱パターン・センサのピクセルの一部の断面図である。
図8図3の回路のアナログ/デジタル・コンバータ上で読み取られた下位ビットの数を、ピクセル当たりの注入電力の関数として示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
1つの図面から次の図面への移動がより容易になるように、以下の説明においては、異なる図面にある同一の、類似の、または等価な部分に同一の参照番号を持たせる。
【0035】
これらの図面内に示されている種々の部分は、図面の読み取りをより容易にするために、必ずしも一様なスケールに従ってない。
【0036】
異なる可能性(代替および実施態様)は、相互に排他的でないと理解されるべきであり、一緒にして結合できることもあり得る。
【0037】
最初に、熱パターン・センサ100のピクセル102の一部の断面図を示した図1を参照する。
【0038】
ピクセル102は、たとえば、ガラスまたは半導体(たとえば、シリコン)基板に対応する基板104上に製造される。基板104は、上にTFT等のセンサ100の電子素子が、プリンテッド・エレクトロニクス・テクノロジによって(たとえば、インクジェット・タイプの書き込みヘッドを用いる製造を介して)、またはリソグラフィによって製造される、たとえば、ポリイミドまたはPEN(ポリエチレンナフタレート)またはPET(ポリエチレンテレフタレート)を包含する可撓性基板とし得る。
【0039】
センサ100のピクセル102は、いくつかの行およびいくつかの列のピクセル102のマトリクスを形成することによって配列される。平面(X,Y)(すなわち、基板104の平面)内のピクセル102のピッチは、たとえば、約50μmと100μmの間である。500dpi(ドット・パー・インチ)に等しい分解能のセンサ100の場合においては、ピクセル102のピッチが50.8μmに等しくなる。
【0040】
センサ100のピクセル102のそれぞれは、焦電キャパシタンスによって形成された温度測定または検出手段を包含する。各焦電キャパシタンスは、下側電極108と上側電極110の間に配された焦電材料の部分106を包含する。当該部分106の焦電材料は、都合よくは、P(VDF-TrFE)またはPVDFとする。代替においては、部分106の焦電材料を、AlNまたはPZT、または任意のそのほかの、焦電キャパシタンスの形成に適した焦電材料とし得る。部分106の厚さは、たとえば、約500nmと10μmの間になる。
【0041】
電極108、110は、それぞれ少なくとも1つの導電性材料、たとえば厚さが約0.2μmに等しいチタンおよび/またはモリブデンおよび/またはアルミニウム等の金属材料、および/またはITO(インジウム・スズ酸化物)等の導電性酸化物および/または導電性ポリマを包含する。電極108、110のうちの1つ、すなわち都合よくは上側電極110、または2つの電極108、110のそれぞれは、いくつかの導電性材料のスタック、たとえばTi/TiN/AlCuのスタックによって形成し得る。電極108、110のそれぞれの厚さは、たとえば、約0.1μmと1μmの間になる。電極108、110のそれぞれの厚さは、より厚くなること、特に、これらの電極が銀、銅、カーボン、またはPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフエン))等の材料を使用するプリントによって製造されるときにはたとえば約5μmまでに至ることもある。
【0042】
保護層109は、たとえば、窒化アルミニウムまたはこの層の製造に適した任意のそのほかの材料の層に対応し、上側電極110を覆っている。保護層109の厚さは、数ミクロンと約100μmの間とすること、またはそれに代えて、それをはるかに超える厚さにすることが可能である(たとえば、300μm台またはそれ以上)。保護層109の上面113は、検出されることが意図された熱パターン、たとえば指紋が検出されることが意図される指、が上に置かれる表面に対応する。
【0043】
部分106のPVDFに焦電性の(および、圧電性の)性質を帯びさせるために、この材料は、一旦、焦電キャパシタンスの存続期間内にPVDFのミクロン単位の厚さ当たり約100ボルトの電界に曝露される。PVDF内側の分子が配向され、この電界へのPVDFの曝露がなくなったときでさえ、この配向が残存する。これによってPVDFに、電極108、110の端子に対する初期バイアス電圧の印加によってバイアスすることができる。
【0044】
この初期バイアス印加の後は、部分106が温度ΔT内における変動を受けると、この温度ΔT内における変動が、次式で表されるようなΔQの電荷を、電極108、110の間に生成する追加の電界の出現を生じさせる。
ΔQ=S.γ.ΔT
【0045】
パラメータSは、電極108、110のそれぞれに面する部分106の表面に対応する。パラメータγは、部分106の焦電材料の焦電係数に対応する。たとえば、PVFD-TrFEの焦電係数γは、約32μC/m/Kに等しい。
【0046】
寄生キャパシタンスCpが追加される値Cのキャパシタンスを形成する部分106および電極108、110、生成される電荷ΔQは、電極108、110の間に次式で表されるような電位差ΔVを誘導する。
(C+C).ΔV=ΔQ=S.γ.ΔT
【0047】
値Cのキャパシタンスによって生成される電荷に加えて、寄生キャパシタンスCpの存在を介してほかの寄生電荷が生成されることもある。
【0048】
読み出し電極(電極108、110のうちの1つによって形成される)上の電位が固定されている場合(いわゆる『電流読み出し』)には、生成された電荷が、読み出し回路に流れ、次式で表される積分電流を出力に形成する。
ΔQ/ζ=(S.γ.ΔT)/ζ
ζは、ピクセルによって測定が実行される間の積分時間に対応する。その種の電流読み出しは、第1にキャパシタンス、特に寄生キャパシタンスの値に不感であるという利点を有する。
【0049】
電極108、110の間において獲得される電流の方向は、部分106のPVDFが初期バイアスされたときの電界の方向に依存する。窒化アルミニウム等の特定のほかの焦電材料の場合においては、この初期バイアスの方向が、焦電材料が堆積された態様、それの順序、およびそれの結晶方位に依存する。それに加えて、獲得される電流の方向は、焦電キャパシタンスが受けている温度における変動が正であるか、または負であるかに応じて変化することも可能である。
【0050】
センサ100はまた、ピクセル102内において、特に焦電材料内において特定量の熱を消散させる加熱素子も包含する。これらの加熱素子は、たとえば、上側電極110または下側電極108の製造のために供されるものと同一の層から誘導された導電性部材によって形成される。図1の例においては、図2との関係からこの後に述べるとおり、加熱素子が可視でなく、上側電極110の製造のために供される導電性の層の部材によって製造される。
【0051】
焦電材料の部分106の加熱は、ピクセル102のそれぞれの発熱抵抗を形成する加熱素子内における電流循環を作ることによって獲得される。
【0052】
図2は、第1の実施態様に従ったセンサ100のいくつかのピクセル102の上面図を示す。
【0053】
この場合においては、焦電キャパシタンスによって生成された電荷を読み出しのために回収する、ピクセル102の読み出し電極を形成する下側電極が、導電性材料の第1の部材112によって形成される。同一の列のピクセルの下側電極は、同一の列のピクセルのこれらの下側電極が、ピクセル102の列の全長にわたって延び、かつその列のすべてのピクセルの焦電材料の部分106と接触している同一の第1の導電性部材112によって形成されているという事実に起因して、一緒に電気的に接続されている。部材112のそれぞれは、ピクセル102の列と平行な方向に沿って、すなわち、ここでは垂直のY軸と平行に延びる。それに加えて、第1の導電性部材112のそれぞれは、ほかの列のピクセル102の読み出し電極を形成するほかの第1の導電性部材112から明確に区別される。
【0054】
ピクセル列のそれぞれのベースにおいては、第1の導電性部材112のそれぞれが、同じ列のすべてのピクセルに共通な読み出し回路(図2には図示せず)と電気的に接続されている。
【0055】
ここでは、センサ100のマトリクスのすべてのピクセルの焦電材料の部分106が、ピクセル102のすべての下側電極を覆う焦電材料の単一層の形式で製造される。
【0056】
ここでは、上側電極が、ピクセル102のバイアス印加電極に対応し、それぞれが同じピクセル行内のすべてのピクセル102に共通な導電性部材114によって形成される。部材114のそれぞれは、たとえば、ピクセル102の行と平行な方向に沿って、すなわち、図2においては水平のX軸と平行に延びる。
【0057】
したがって、各ピクセル102においては、焦電キャパシタンスが、一方が他方の上に重ね合わされる部材112および114の一部をはじめ、これらの部材112および114の一部の間にある焦電材料によって形成される。部材112、114のこの重ね合わせ表面は、したがって、生成される電荷の量を表し、かつ好ましくは、可能な限り最大とする。
【0058】
ピクセル102の加熱素子は、それぞれが同じピクセル行内のすべてのピクセル102に共通な導電性部材116によって形成され、かつそれらは、ピクセルのバイアス印加電極を形成する部材114から明確に区別される。部材116のそれぞれは、ここでは、ピクセル102の行と実質的に平行な方向に沿って、すなわち、図2においてはX軸と平行に延びる。
【0059】
導電性部材114および116は、同一の導電性の層から都合よく誘導される。図2において、ピクセル102の同じ行内の部材114、116が、焦電材料の層の上で互いに隣り合って並置されている。
【0060】
図2の例においては、第1の導電性部材112のそれぞれの幅(X軸に沿った寸法、すなわち、ピクセル102の平面内の、ピクセル102の列が延びる方向と垂直に配置される寸法)が、それらの全長にわたって一定である。たとえば、約50μmに等しいピッチのピクセルを考えると、第1の導電性部材112のそれぞれの幅は、約45μmに等しいとすることができ、これらの第1の導電性部材112は、互いから約5μmの間隔を置き得る。
【0061】
代替においては、第1の導電性部材112のそれぞれの幅を、それらの全長にわたって一定でないとすることが可能である。第1の導電性部材112の、部材114、116に面して配置される部分の幅、すなわち各ピクセル102内となる部分の幅は、ピクセル102の間に配置される第1の導電性部材112のそれより大きくすることが可能である。
【0062】
別の代替によれば、部材114に面して配置される第1の導電性部材112の部分の幅が、ピクセル102の間に、かつ部材116に面して配置される第1の導電性部材112の部分のそれより大きくなることが可能である。この別の代替は、この場合に寄生キャパシタンスが低減されることから利点を有する。
【0063】
それに加えて、部材112と114の重ね合わせによって形成されるキャパシタンスのみにバイアス印加することができ、部材112と116の重ね合わせは電荷を生成しない。
【0064】
それに加えて、図2の例においては、約50μmに等しいピッチのピクセルを考えると、部材114、116のそれぞれの幅が、たとえば、約20μmに等しいか、またはそれ未満になる(これらの部材のそれぞれの間に約5μmの間隔を考える)。
【0065】
ピクセル行の加熱素子を形成する部材116のそれぞれは、加熱電圧が印加されることが意図された2つの端部118、120を包含する。これらの2つの端部118、120のうちの1つは、たとえばグラウンドに接続され、これらの2つの端部118、120のうちの他方に非ゼロの加熱電位が、たとえばこの他方の端部に電圧を印加する電気的な接続によって形成される加熱手段により印加される。たとえば、図2にある場合のように、部材116の端部120がグラウンドに接続され、部材116のうちの1つの端部118に加熱電位Vheatが印加されるとした場合には、電流がこの部材116の端部118から端部120まで流れ、この部材116内にジュール効果によって発熱を生じさせ、それによって、この部材116により加熱されるピクセル行のすべてのピクセル102の焦電材料を加熱する。
【0066】
図2の例においては、加熱素子を形成する部材116の端部120が、すべての部材116に共通であり、かつセンサ100のグラウンドに接続されている別の導電性部材122に接続される。
【0067】
部材114のそれぞれは、バイアス印加電位が印加されることが意図された第1の端部124、およびセンサ100のグラウンドに接続される第2の端部126を包含する。図2の例においては、部材114の端部126が、ピクセルのすべての行に共通であり、かつセンサ100のグラウンドに接続されている別の導電性部材128に接続される。
【0068】
部材116の端部118、120に印加される加熱電圧の値は、所望の加熱出力の関数として選択され、この出力は、特に部材116の材料の抵抗率、加熱されることが意図されている焦電材料の部分の厚さおよび保護層109の厚さ、焦電材料の焦電係数、読み出し回路の感度、読み出し回路のノイズ・レベル、および積分時間の関数である。ピクセル102においては、加熱電力が、たとえば、約0.1mWと10mWの間になる。
【0069】
センサ100内においては、各部材116が、ほかのピクセル行に関連付けされているほかの部材116とは独立してアドレスされ得るという事実に起因し、したがって、ピクセル行のそれぞれの加熱を互いに独立させてトリガすることが可能である。それに加えて、同じピクセル列の下側電極が互いに接続されているという事実に起因し、下側電極108を形成する導電性部材のそれぞれのベースにおいて獲得される電荷が、したがって、加熱されたピクセル行に属するピクセルによって生成された電荷に対応する。
【0070】
このように、同じ列のピクセル102の読み出し電極に一緒に接続されていることから、センサ100は、ピクセル102内の選択トランジスタに頼ることがなく、加熱素子によって実行されるピクセル行毎のアドレシングが、列のベースにある読み出し回路によって受け取られる電荷に対応するピクセルがいずれであるかを知るに充分になる。
【0071】
部材114に印加される固定電位は、たとえば、グラウンドのそれになる。
【0072】
部材112(ピクセル102の読み出し電極を形成する)のそれぞれが接続される読み出し回路50を製造する一例を、図3に示す。
【0073】
部材112が接続される読み出し回路50の入力は、読み出し増幅器52の反転入力に対応する。この読み出し増幅器52は、ここでは演算増幅器に対応する。バイアス印加電位Vrefが、増幅器52の非反転入力に印加される。増幅器52の出力は、キャパシタンス54を通ってそれの反転入力に帰還される。スイッチ56または整流子がキャパシタンス54と平行に接続されており、キャパシタンス54を短絡することが可能である。読み出し増幅器52の出力は、アナログ/デジタル・コンバータ58の入力にも接続されている。読み出し増幅器52、キャパシタンス54、スイッチ56、およびアナログ/デジタル・コンバータ58は、同じ列のすべてのピクセル102に共通である。アナログ/デジタル・コンバータ58は、異なるピクセル列と関連付けされた読み出し増幅器52の出力とアナログ/デジタル・コンバータ58の間に多重化電子素子の追加を伴って、センサ100のピクセル102のすべての列に共通であってもよい。
【0074】
読み出し回路50を形成する電子素子は、ピクセル102が製造される基板とは異なる基板上に製造することができ、それらの基板は、その後、互いに組み付けることが可能である。したがって、これらの読み出し回路の電子素子は、ピクセル102の製造のために供される製造テクノロジ(たとえば、プリント)とは異なる製造テクノロジ(たとえば、CMOS)を用いて製造することが可能である。
【0075】
この第1の実施態様においては、加熱素子を形成する導電性材料の部分およびバイアス印加電極を形成するそれらが同じ導電性材料の層から誘導されることから、加熱素子が、バイアス印加電極と同じレベルに配置される。しかしながら、加熱素子を焦電材料の直上ではなく、焦電キャパシタンスの横または上または下に配列することは可能である。
【0076】
代替においては、検出されることが意図された熱パターンが当接して置かれる表面が、基板104の裏面、すなわち、電極108が位置を占める面の反対側に対応することが可能である。この代替は、求められている主要な基準がセンサ100の分解能でないときに有利となり得る。この場合においては、基板104が、指が接触することになる堅牢な表面を形成する。それに加えて、この場合には、上側電極110について手前で説明したとおりに製造される下側電極108によって加熱素子を形成できる。最後にこの代替は、センサ100の敏感なゾーンの脇に読み出し回路を位置決めすることを可能にするが、指が位置決めされることが意図された面とは反対側の基板104の面に配されることから保護される。
【0077】
図4は、第2の実施態様に従ったセンサ100のいくつかのピクセル102の上面図を示す。
【0078】
互いに隣り合って配列される導電性材料の明確に区別される部材によってバイアス印加電極および加熱素子が形成される第1の実施態様とは異なり、ここでは、これらの要素が、ピクセル102の各行のための導電性材料の単一の第2の部材によって形成される。図4においては、第2の導電性部材130がX軸と平行に延び、部材130のそれぞれが、バイアス印加電極に対応する上側電極、および同じピクセル行に属するピクセルの加熱素子の両方を形成する。
【0079】
各部材130は、加熱電位が印加されることが意図された第1の端部132、および、ここではグラウンドとなる基準電位に、導電性部材136を通じて接続される第2の端部134を包含する。
【0080】
手前で説明した第1の実施態様においては、各ピクセル102の焦電キャパシタンスが、読み出し電極(部材112によって形成される)とバイアス印加電極(部材114によって形成される)の間に位置する焦電材料の部分によってのみ形成されている。加熱素子がバイアス印加電極の脇に形成されるという事実に起因して、加熱素子と読み出し電極の間に位置する焦電材料の部分は、この焦電キャパシタンスの部分を形成しない。第1の実施態様においては、加熱素子が、したがって、各ピクセルの焦電キャパシタンスの焦電材料の部分を直接加熱しない。
【0081】
図4に示されている第2の実施態様においては、各ピクセル102の加熱素子およびバイアス印加電極が同じ導電性部材130によって形成されるという事実に起因して、読み出し電極と読み出し電極に面して位置する部材130の部分の間に位置する焦電材料のすべての部分が、焦電キャパシタンスの部分を形成する。
【0082】
焦電材料の部分の加熱は、加熱素子を形成することが意図された電極内に電流を循環させることによって獲得される。それにも関わらず、この電極は、焦電キャパシタンスのバイアス印加のためにも供される。したがって、ピクセル102のそれぞれの発熱抵抗は、このように、これらのピクセル102によって実行される測定の間に、ピクセル102のそれぞれの焦電キャパシタンスの電極のうちの1つのバイアス印加のためにも供される(測定の間に印加されるこのバイアスは、手前で説明したPVDFの初期バイアス印加とは異なる)。
【0083】
ピクセル102の上側および下側電極のうちの1つを使用して加熱素子を形成することは、熱パターンの読み出しの間に、この電極に印加される電位の値が電荷の読み出しの間にわたって一定であるという事実に起因して可能になる。
【0084】
この第2の実施態様においては、センサ100のピクセル102の行の管理に、すなわち、ピクセル行の加熱および選択両方のコントロールの実行に、単一の信号が使用される。ピクセルが加熱されなければ何も起こらず、ピクセルが加熱されるときには、特定の数の電荷(数は、ピクセル上に存在する要素、指紋の場合であれば山または谷に依存する)が生成される。したがって、一度に1つのピクセル行のみに対して加熱を実行し、その後読み出しを行うことによって、加熱電位が一度に、かつ同時に、ピクセル行の加熱および管理/位置特定の役割を演ずる。
【0085】
部材130に印加される加熱電圧の値は、ピクセル102内に所望の熱エネルギを生成するために、部材130の金属の抵抗率に関して調整される。
【0086】
手前で説明した第1および第2の実施態様の代替においては、ピクセルの上側電極および加熱素子が誘電体層によって覆われ、それ自体が、グラウンドと電気的に接続される第1の導電性の層に覆われることが可能である。この導電性の層は、保護層109によって覆われてもよい。この導電性の層は、たとえば、導電性インクを含み、それにより、熱パターンの検出が意図されている要素、たとえば、指紋センサ100の場合であれば指と、各ピクセルのバイアス印加電極の間における電磁シールドを形成し、それによって実行後の測定内の電磁ノイズ(たとえば、商用電源から到来する50Hzのノイズ)の回収を回避する。この導電性の層は、静電放電(ESD)に対してセンサ100を保護することも可能にする。
【0087】
図5は、第3の実施態様に従ったセンサ100のいくつかのピクセル102の上面図を示す。
【0088】
先行する実施態様における場合と同様に、センサ100は、ピクセル列のそれぞれの中で電気的に一緒に接続されるピクセルの読み出し電極を形成する部材112を包含する。それに加えて、先行する実施態様における場合と同様に、図4には示されてないが、焦電材料の層が読み出し電極上に配されている。
【0089】
焦電材料の層は、導電性の、たとえば金属の層138によって覆われており、その層は構造化されていなく、焦電材料の層の全体を覆っている。この導電性の層138は、グラウンドに接続される。導電性の層138は、誘電体層によって覆われ、その上に、ピクセルの加熱素子を形成する部材130が配列される。
【0090】
焦電キャパシタンスの上に電磁シールドの層が配される先行する代替実施態様と比較すると、この第3の実施態様に従ったセンサは、ピクセルの焦電キャパシタンスの上側電極を形成する導電性の層を使用して、この電磁シールドの層を焦電材料の直上に集積する。この構成においては、ピクセルの上側および下側電極を殆ど電流が横切らない。したがって、これらの電極は、導電性インクの堆積によって好都合に製造することができ、それによってセンサ100の製造が容易になる。
【0091】
マトリクスの各ピクセル行の読み出しを可能にするために、また、各列のベースにおいて2つのピクセルの応答を一緒に合成させないために、各ピクセル行の加熱素子は、一度に単一のピクセル行のための加熱の対象となる。ピクセル行の加熱の間に、加熱された行の各ピクセルが電荷を生成し、それがピクセル列の全体にわたって分散される。列のベースにおいては、生成されたその電荷が読み出される。
【0092】
ピクセル行の読み出しについて、より詳細を以下に説明する。
【0093】
読み出し回路が最初にリセットされる。図3に関連して手前で説明したような読み出し回路の場合においては、スイッチ56を閉じることによってこのリセットが獲得される。部材112の電位は、値Vrefにある。次に、マトリクスの行のうちの1つのピクセルの加熱が、ピクセル行の加熱素子を形成する導電性部材の両端部の間に加熱電圧を印加することによって開始される。この行のピクセルの焦電キャパシタンスは、この瞬間において温度Tにある。
【0094】
次に、スイッチ56が開かれる。その後、その行のピクセル102の焦電キャパシタンスにおいて、たとえば約500μsに等しい積分時間ζの間にわたる積分が開始する。この積分時間ζの間にわたり、その行のピクセル102の焦電キャパシタンスによって電荷が生成される。スイッチ56が開かれるという事実に起因し、その行のピクセル102の焦電キャパシタンスによって生成された電荷が、キャパシタンス54に流れる。
【0095】
積分時間ζの終了時において、焦電キャパシタンスは温度T(1つのピクセルとその次では異なる)にあり、したがって、温度における変化ΔT=T-Tを受けており、焦電キャパシタンスによって生成され、キャパシタンス54内に蓄積される電荷は、この温度における変化の結果である。増幅器52の出力における電位は、したがって、Vout=Q.Cref+Vrefであり、これにおいてQは、生成される電荷に対応し、Crefは、キャパシタンス54の値である。その後、この電位の読み出しおよびサンプリングが、アナログ/デジタル・コンバータ58によってなされる。続いて、ピクセル行の加熱が停止される。結果の読み出しおよびサンプリングの動作が完了すると、スイッチ56が閉位置に切り替えられ、キャパシタンス54が放電される。
【0096】
その種の読み出しの間は、焦電キャパシタンスの電極のうちの1つ(第1の実施態様によればセンサ100のための端部118、または第2および第3の実施態様によればセンサ100のための端部132)に印加される電位Vheatが、ピクセルの読み出し全体を通じて一定である。これに対し、この電位が印加される導電性材料の部材が、この部材に関連付けされたピクセル行のすべてのピクセル102に共通であるという事実に起因して、これらのピクセル102のそれぞれの焦電キャパシタンスに印加される加熱電位の値は、1つのピクセルとその次では異なる。
【0097】
たとえば、図4に示された第2の実施態様を考えると、端部132にもっとも近い焦電キャパシタンスの上側電極には、Vheatと実質的に等しい電位が掛かる。続く焦電キャパシタンスの上側電極には、Vheat-δVと実質的に等しい電位が掛かる。焦電キャパシタンスの上側電極に印加される電位の値は、それらからの端部132に対する距離に比例して減少する。導電性部材136がグラウンドに接続されるときは、端部134にもっとも近いものに対応する最後の焦電キャパシタンスの上側電極には、0V、すなわちグラウンドの電位と実質的に等しい電位が掛かる。1つのピクセルとその次に印加される加熱電位におけるこの変化は、すべてのこれらのピクセル102の発熱抵抗がまったく同じであることから導電性部材130内を流れて熱を生じさせる電流がすべての第2の導電性部材130内において同じであり、その行のすべてのピクセル102について同じであるという事実に起因して、1つのピクセルとその次のピクセルにおいて生成される熱を変化させない。
【0098】
ピクセル行の読み出しにおいては、各ピクセルのバイアス印加電極の電位の値が1つのピクセルとその次では異なる。これに対し、温度における同一の変化のため、ピクセルの焦電キャパシタンスの端子における電圧の差、または生成される電荷の数の差がまったく等しい。それにもかかわらず、読み出されるのは基準電圧に関して生成される過剰電荷であり、それらが正であるか、または負であるかによらない。たとえば、図3に示されている例示的な実施態様の場合においては、結果として読み出される増幅器52の出力において獲得される電圧は、Vout=Vref±ΔQ/Cfであり、それにおいてCfは、キャパシタンス54の値に対応し、これは、積分時間の間にわたって電位Vheatが安定であるときには、焦電キャパシタンスの端子における電圧に依存しない。
【0099】
図3に関して手前で説明した例示的な実施態様においては、生成される電荷が増幅器52によって直接読み出される。
【0100】
読み出し回路50を包含するチップは、都合よくシリコン基板から製造され、ピクセル102が上に製造される別の回路上に移植される。
【0101】
同じ列のピクセルの読み出し電極が単一の導電性部材によって形成されるという事実、およびすべてのこれらの読み出し電極がピクセルの読み出しの間にわたって読み出し回路に接続されるという事実に起因して、冷却の開始時に大きな量で生成される負の電荷が考慮に入れられないように、1つのピクセル行を読み出した後、好ましくは、続くピクセル行の読み出しの前に冷却時間が顧慮される。この冷却の持続時間は、たとえば、加熱時間の約2から5倍までの間である。したがって、センサ100のピクセル行は、約2ms内に読み出し、かつ冷却することができ、これは秒当たり約500のピクセル行を読み出すことを可能にする。
【0102】
読み出し回路は、この読み出し回路に接続されているピクセルによって形成されるキャパシタンスの値に依存する信号対ノイズ比を有する。キャパシタンスが高いほど、獲得されるノイズが高い。したがって、測定が正しくとどまるように、センサのピクセル行の数(センサ内のピクセル行の数が高いほど、各読み出し回路に接続されるピクセルの数が大きく、読み出し回路から受け取るノイズが高くなる)と許容可能なノイズの間において折衷が行われる。信号対ノイズ比は、ピクセルの加熱電力を増加することによっても増加され得る。
【0103】
300行のピクセルを包含するセンサ100の場合においては、列上の合計キャパシタンスが300個のピクセルの焦電キャパシタンスの総和に対応する。厚さ(焦電材料の厚さ)が約1μmに等しい焦電キャパシタンスであれば、ピクセル列当たりのキャパシタンスは、約100fF×300=30pFである。したがって、好都合にはセンサ100が、約100から300までの間の数のピクセル行を包含する。
【0104】
次に示す表は、第2の実施態様に従ったセンサ100を用いて獲得された、異なるピクセル・ピッチ(ピッチは、隣り合う2つのピクセルの中心間距離である)についての結果を示している。
【0105】
【表1】
【0106】
上に示した表においては、厚さが1μmに等しい焦電材料を考慮して焦電キャパシタンス値が獲得されている。
【0107】
したがって、寸法が50μm×50μmに等しいピクセルについては、そのピクセルが少なくとも約1K乃至2Kの温度の変動を受けるときに充分な振幅の信号が獲得される。厚さが2μm台の保護層109が用いられるときには、ピクセル当たり約0.2mWの電力注入で、充分に強力な出力信号を有することが可能になる。熱の注入は、読み出されるピクセル内に少なくとも1度の変化が獲得されるべく適合できる。
【0108】
図8の曲線202、204、および、206は、異なる積分時間(曲線202:ζ=250μs;曲線204:ζ=500μs;曲線206:ζ=1600μs)に付いてのピクセル当たりに注入される電力(μW単位)の関数として、16ビットの、すなわち最大で65536個のコードのアナログ/デジタル・コンバータ58(ここでは、Texas Instrument(テキサス・インストゥルメント)社から販売されているAFE1256タイプのもの)上で読み出されたLSB(下位ビット)の数を表す。これらの曲線は、空気(指紋の谷)と接触しているピクセルと水(指紋の山)と接触しているピクセルの間において獲得されるビットの数を表す。このビットの数は、たとえば、センサ上に水滴を置き、水滴のエッジの各側の間における差を測定することによって測定される。これらの結果は、獲得可能な最大コントラストも表している。コントラストは、注入される電力および積分時間に対して線形に依存する。このコントラストの値は、保護層109の厚さにも依存する。
【0109】
図4および5に示されている第2および第3の実施態様においては、部材130が、一様な幅(Y軸に沿った寸法)の、ピクセル102の行に沿って延びる導電性の条片を形成する。したがって、熱が、各導電性の条片に沿って一様な態様で拡散する。
【0110】
図6に示されている代替実施態様によれば、第2および第3の実施態様に適用することが可能であり、それにおいては、それぞれの部材130の幅がその全長にわたって一様ではない。各ピクセル102の部材112の中心部分に面して置かれた、すなわち各ピクセル102上にセンタリングされた各部材130の部分140は、2つのピクセルの上にまたがって配列され、かつ2つの部分140をそれぞれ接続する部分142の幅より狭い幅を有する。この代替実施態様は、部分140と隣接する部分142の間の接合部(これらの接合部は、ピクセル102の間ではなくピクセル102の上に位置する)において電気抵抗が増加し、それがこれらの接合部においてより大きなジュール効果とより大きな熱の注入を生じさせるという事実に起因して、生成される熱を各ピクセル102上に集中させること、およびピクセル102の間の熱の損失を制限することを可能にする。温点をピクセル102上にセンタリングすることは、ジアテルミーの問題、すなわち隣り合うピクセルの間における熱の横伝播も低減する。しかしながら、この代替は、部材130に面する焦電材料の表面の減少のために生成される焦電電荷におけるわずかな減少を導き、これは、異なる温度パラメータ、読み出し速度等の間における折衷案を見つけなければならないことを意味する。
【0111】
ピクセル102上にセンタリングされるこれらの温点は、ピクセル102における部材130のそれぞれの幅の低減によってではなく、ピクセル102における部材130の導電性材料の厚さの低減によってもたらすことができる。
【0112】
手前で説明した実施態様の代替においては、単一アクセス・ポイントから各部材112に焦電材料の初期バイアス電圧が印加可能となるように、当初(すなわち、センサ100の製造の間に)ピクセル102の異なる列の部材112を電気的に一緒に接続できるとすることが可能である。次に、センサの単離化中に(いくつかのセンサが製造されるウェファからの切り出しの間に)部材112に接続された導電性ラインが除去され、それによって各センサ内において部材112が互いに電気的に分離される。
【0113】
手前で説明したピクセル行の読み出しの例においては、各ピクセル行の加熱素子が、ピクセル行の1つを加熱する各トリガの間に冷却段階を伴ってオンとオフが連続される。
【0114】
代替においては、各ピクセル行の読み出しの間に、そのピクセル行に関連付けされた加熱素子によって実行される加熱とは別に、1つまたは複数の先行するピクセル行に関連付けされた加熱素子もオンにすることが可能である。これは、これらの先行するピクセル行のために実行される測定が、読み出されるピクセル行の値の回収に使用できることから可能である。たとえば、ピクセル102の第1のピクセル行の読み出しのために、この第1のピクセル行の加熱素子だけがオンにされる。これらの加熱素子の消勢および第1のピクセル行の冷却のための待機の後に、第2のピクセル行の読み出しを、第2のピクセル行に関連付けされた加熱素子だけでなく、第1のピクセル行に関連付けされた加熱素子をトリガすることによっても実行できる。第2のピクセル行によって出力される値は、2つのピクセル行の加熱素子がオンされた時に獲得された測定結果をはじめ、第1のピクセル行の加熱の間に獲得された先行する測定結果を使用して回収できる。したがって、以前に読み出されたピクセル行の測定を頼る線形の組み合わせから、測定が獲得される。
【0115】
いくつかのピクセル行の加熱素子が同時に付勢される、このピクセルの読み出しの代替によれば、続くピクセル行を加熱する前の冷却の待機を伴うことなく、連続的にいくつかのピクセル行を加熱することが可能である。したがって、たとえば、第1のピクセル行を加熱した後、第1のピクセル行の冷却を待機することなく、別のピクセル行を加熱することなどが可能である。連続的に加熱される異なるピクセル行は、それらの異なるピクセル行の間におけるジアテルミーを制限するために、都合よくは、互いに直接隣り合わない配置とする。たとえば、1番目のピクセル行を加熱した後、5番目のピクセル行を加熱するということなどが可能である。この代替は、センサ100が、限られた数のピクセル行、たとえば10より少ないピクセル行を包含するときに有利である。それに加えて、この代替においては、電荷の読み出しが、読み出されるピクセルが準熱平衡に、たとえば、ピクセルの熱平衡の約90%に到達した時点で実行される。
【0116】
さらに、異なるピクセル行のために印加される加熱電力がすべて類似してはいないとすることも可能である。たとえば、異なるピクセル行の読み出しの間の冷却を伴わない読み出し中に、手前で読み出したピクセル行の冷却の間に生成される電荷の影響を制限するために、それぞれの新しい読み出しピクセル行において、読み出されるピクセル行の加熱に用いられる電力を、先行するピクセル行の加熱に用いられた電力に関して増加することが可能である。
【0117】
最後に、各ピクセル行の読み出し時に読み出し回路をリセットしないことも可能である。
【0118】
すべての実施態様においては、隣り合うピクセルの間において生じるジアテルミー効果を、行われた測定に対して、たとえば、ウィーナー・フィルタ・タイプのデジタル処理を適用することによって補償できる。それに加えて、これらのジアテルミー現象の効果を低減するために、2つの隣接するピクセル行において、一方の直後に他方が加熱されることがないようにピクセル行が好ましく加熱される。たとえば、1から8まで連続して付番された8つのピクセル行を含むセンサ100を考えると(第1行がセンサ100の先頭に置かれ、第8行がセンサ100の末尾に置かれる)、次に示す順序でピクセル行を加熱し、読み出すことが可能である:1、3、5、7、2、4、6、および8。この場合においては、加熱されるピクセル行が、以前に加熱されたピクセル行に対して間にピクセルを1つ置いて離される(ピクセルが第7行に関して4ピクセル離隔される第2行の加熱を除く)。したがって、読み出されるピクセルの初期温度が、読み出されるピクセルがジアテルミーに起因して加熱を受け、読み出しの前に充分に冷却されない場合と比べて、互いに実質的により均一になる。また、加熱されるピクセル行が、手前に加熱されたピクセル行に関して1ピクセルを超えて離されること、たとえば、2または3、またはセンサ100がより多くのピクセル行を包含する場合にはそれより多くの数のピクセルを間に置いて離すことも可能である。
【0119】
手前で説明した実施態様においては、加熱素子が、導電性の層の部材によって形成され、この層の平面内において電流が循環する。代替においては、加熱素子をいくつかの層によって形成すること、および/または略図的に図7に示されているとおり導電性部材を重ね合わせることが可能である。この図においては、ピクセル102の加熱素子が、ピクセル102の上側電極を形成する第1の導電性部材150、第1の導電性部材150の上かつ誘電体層154内に配される抵抗素子152、および誘電体層154および素子152の上に配される第2の導電性部材156によって形成される。加熱電流は、層150から、熱を生成しつつ素子152を横切り、第2の部材156(グラウンドに接続されている)を通ってグラウンドに流れる。この種の代替は、加熱素子の場所を上側電極のそれに対して分離して考えられる一方で、同じ導電性素子内においてピクセルの加熱機能およびバイアス印加機能を共有することによってもたらされる利点を保存するという利点を有する。これによって、ピクセル102内において生成される熱を可能な限り多く集中させるために、ピクセル102の中央に素子152を正しくセンタリングすることが可能になる。
【0120】
手前で説明した実施態様の代替においては、焦電キャパシタンスのバイアス印加およびピクセル102の焦電材料の加熱両方のために供される導電性部材が、ピクセル102の上側電極110を形成するそれにではなく、ピクセル102の下側電極108を形成するものに対応できる。それに加えて、手前で説明したものとは異なる各ピクセル102の焦電キャパシタンスの電極およびこれらのピクセル102の加熱素子を形成する導電性部材(1つまたは複数)の形状または設計が企図され得る。
【0121】
図示されてないが、センサ100は、上で説明したコントロール信号を適用し、加熱素子内への信号の送りを介して所望のピクセルの加熱のスタートアップをトリガするピクセル102の読み出しを駆動することを可能にするコントロール回路を包含する。
【0122】
センサ100によって検出された熱パターンは、好都合には指紋に対応するが、熱キャパシタンスおよび比熱容量を有する任意のパターンに対応し得る。
【0123】
図示されてないが、さらにセンサ100は、ピクセル102のそれぞれにおいてなされた測定から熱パターンの全体的な画像を組み立てることが可能な電子処理回路を包含し得る。また、この電子処理回路は、この画像と、データベース内にストアされたいくつかの画像を比較し、検出されたパターンがデータベース内にストアされたそれらの画像のうちのいずれか1つと対応するか否かを識別できることもある。また、検出された熱パターンの画像を電子処理回路が表示できることもある。
【0124】
それに加えて、都合よくはセンサ100が、手前で説明した熱検出素子のほかに、熱パターンもまた検出される要素の画像の検出を可能にする光学または容量性検出素子を包含する。このように、センサ100は、熱検出ピクセルとインタレースされる光学検出ピクセルのマトリクスを包含し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8