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特許7162022光学的接触型音響光学デバイス及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】光学的接触型音響光学デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/33 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
G02F1/33
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019571985
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 US2018038195
(87)【国際公開番号】W WO2019009999
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】62/528,278
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593141632
【氏名又は名称】エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】ブルックハイザー,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】イートン,カート
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-082851(JP,A)
【文献】特開2002-160086(JP,A)
【文献】特表2014-524047(JP,A)
【文献】特開平10-133239(JP,A)
【文献】特表2013-545135(JP,A)
【文献】特表昭62-500123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0044569(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光のビームを偏向可能な第1の音響光学(AO)偏向器(AOD)であって、第1のAOセルと、該第1のAOセルに取り付けられた第1の変換器とを有する第1のAODと、
前記レーザ光のビームを偏向可能な第2のAODであって、第2のAOセルと、該第2のAOセルに取り付けられた第2の変換器とを有する第2のAODと、
前記第1のAODと前記第2のAODとの間に配置される波長板であって、前記第1のAODから前記レーザ光のビームの波長より短い距離だけ離れた面で前記第1のAODと光学的に接触するとともに、前記第2のAODから前記レーザ光のビームの波長より短い距離だけ離れた面で前記第2のAODと光学的に接触する波長板と
を備える、ビームポジショナ。
【請求項2】
前記波長板は半波長板である、請求項1のビームポジショナ。
【請求項3】
前記波長板は、少なくとも1つの1/4波長板を含む、請求項1のビームポジショナ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの1/4波長板は、2つの1/4波長板を含む、請求項のビームポジショナ。
【請求項5】
前記第1のAODは、レーザ光のビームを第1の軸に沿って偏向するように配置及び構成され、前記第2のAODは、前記第1のAODにより伝搬される前記レーザ光のビームを前記第1の軸とは異なる第2の軸に沿って偏向するように配置及び構成される、請求項のビームポジショナ。
【請求項6】
前記第1のAOD、前記波長板、及び前記第2のAODにより伝搬される前記レーザ光のビームを偏向するように構成される少なくとも1つのガルバノメータミラーをさらに備える、請求項1のビームポジショナ。
【請求項7】
前記第1のAODの前記第1のAOセルは、前記波長板と同一の材料から形成される、請求項1のビームポジショナ。
【請求項8】
前記第1のAODの前記第1のAOセルと前記波長板とは異なる材料から形成される、請求項1のビームポジショナ。
【請求項9】
前記第1のAODの前記第1のAOセルはゲルマニウムから形成される、請求項1のビームポジショナ。
【請求項10】
前記第1のAODの前記第1のAOセルは二酸化テルルから形成される、請求項1のビームポジショナ。
【請求項11】
前記第1のAODの前記第1のAOセルは水晶から形成される、請求項1のビームポジショナ。
【請求項12】
前記波長板は水晶から形成される、請求項1のビームポジショナ。
【請求項13】
前記波長板は、セレン化亜鉛から形成される材料を含む、請求項1のビームポジショナ。
【請求項14】
前記第2のAODの前記第2のAOセルは、前記第1のAODの前記第1のAOセルと同一の材料から形成される、請求項のビームポジショナ。
【請求項15】
前記第1のAODと前記波長板との間に反射防止被膜が存在しない、請求項1のビームポジショナ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2017年7月3日に提出された米国仮特許出願第62/528,278号の利益を主張するものであり、その内容は全体として参照により組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書において述べられる実施形態は、概して音響光学デバイスに関するものであり、特に他の光学的構成部品に光学的に接触する音響光学デバイスに関するものである。
【技術背景】
【0003】
場合によってはブラッグセルと呼ばれる音響光学(AO)デバイスは、無線周波数の音波を用いて光を回折させ、シフトさせる。これらのデバイスは、通信システムにおけるQスイッチ、信号変調、顕微鏡システムにおけるレーザスキャニング及びビーム強度制御、分光システムにおける周波数偏移、波長フィルタリングのために用いられることが多い。他の多くの用途において音響光学デバイスを用いることができる。例えば、レーザを用いた材料加工システムにおいてAO偏向器(AOD)を用いることができる。
【0004】
典型的なAOデバイスにおいては、圧電変換器のような変換器がAO媒体(「AOセル」とも呼ばれる)に取り付けられる。このAO媒体は、典型的には、回折される光の波長に対して好適に透明な結晶又はガラスである。RF信号(「駆動信号」としても知られる)が(例えばRFドライバから)変換器に印加され、これにより、ある周波数で振動してAO媒体内を伝搬する音波を生成するように変換器を駆動する。伝搬する音波は、AO媒体内で引っ張られる領域及び圧縮される領域を周期的に生成し、これにより、AO媒体内で周期的に変化する屈折率を生じさせる。周期的に変化する屈折率は、AO媒体を伝搬するレーザ光のビームを回折可能な光学グレーティングのように機能する。
【0005】
レーザを利用する材料加工の分野においては、AODは、傾斜可能なミラー(例えばガルバノメータ型ミラーシステム)及び同様に用いられることの多い他の機構に比べて高速であるので、ワークピース上にレーザ光のビームを偏向させるのに有利に用いられている。図1を参照すると、AOD100は、概して、AO媒体102と、(AO媒体102の変換器端部で)AO媒体102に取り付けられた変換器104と、(AO媒体102の変換器端部とは反対側の吸収器端部で)AO媒体102に取り付けられた音響吸収器106と、変換器104の入力に電気的に接続されたRFドライバ108とを含んでいる。AO媒体102を構成する材料は、偏向されるレーザ光のビームにおける光の波長に応じて選択される。変換器104は、一般的に、圧電変換器であり、RFドライバ108から出力された入力RF信号(すなわち駆動信号)に応答して振動するように動作することができる。ドライバ108は、最終的に変換器104に入力される駆動信号を生成するように動作することができる。
【0006】
一般的に、変換器104は、変換器104により生成される振動が(例えば、線112により示されるように)対応する音波が(例えば、AO媒体102内の音波の伝搬方向を表す矢印110に示されるように)変換器端部から音響吸収器106に向かってAO媒体102内を伝搬するように、AO媒体102に取り付けられる。図1に例示的に示されるように、(例えば、駆動周波数fを有する)駆動信号が変換器104に送られると、変換器104は、AO媒体102内を伝搬する音波を生成するように振動し、これにより、AO媒体102内で屈折率が周期的に変化する。周期的に変化する屈折率は、(例えば、軸114に沿ってAO媒体102の第1の面102aに入射し、AO媒体102内を伝搬する)レーザ光のビームを回折するように機能し、これにより、回折されたビームが(例えば軸116に沿って)AO媒体102の第1の面102aとは反対側の第2の面102bを通ってAO媒体102から出るようにAO媒体102内を伝搬するレーザ光のビームが偏向される。第1のプロセスビームの偏向角度θは、レーザ光の入射ビームを偏向するために用いられた駆動周波数fに対応する。変換器104に駆動信号が送られていないときは、レーザ光の入射ビームは、偏向されることなく(例えば軸114に沿って)AO媒体102内を伝搬する。
【0007】
上記議論から、レーザ光の入射ビームが偏向される方向は、上述した伝搬方向110が沿って延びる軸(本明細書においては「偏向軸」ともいう)に対応することは理解すべきである。このため、異なる偏向軸に沿って方向付けられた複数のAODを含むシステムを提供することによって複数の軸に沿ってレーザビームを偏向することができる。例えば、図2を参照すると、レーザ光のビームを第1のAOD200によって(例えばX軸に沿って)偏向することができ、続いて、第2のAOD202によって(例えば、X軸に直交するY軸に沿って)偏向することができる。この例においては、第1のAOD200の偏向軸204はX軸に合わされており、第2のAOD202の偏向軸206はY軸に合わされている。このため、第2のAOD202により生じる偏向を第1のAOD200により生じる偏向に重ね合わせることができる。もちろん、レーザ光のビームを偏向することなく、第1のAOD200及び第2のAOD202の一方又は双方にレーザ光のビームを伝搬させることは可能である。上記の観点から、第1のAOD200及び第2のAOD202は、多軸「ビームポジショナ」として包括して特徴付けることができ、2次元範囲208(「スキャン領域」、「スキャン範囲」などとしても知られる)内で(例えば、最初は軸114に沿って伝搬するように)レーザ光のビームを偏向するように選択的に動作することができる。AOD100と同様に、第1のAOD200及び第2のAOD202のそれぞれは、一般的に、AOセル201と(例えば、AOセル201の変換器端部で)AOセル201に取り付けられた変換器203とを含んでいるものとして特徴付けることができる。図示はされていないが、第1のAOD200及び第2のAOD202のそれぞれの変換器203は、1以上のドライバ(例えば、ドライバ108のような1以上のドライバ)に電気的に接続され得る。
【0008】
ビームポジショナに含まれるAODの種類によっては、第1のAOD200と第2のAOD202との間に半波長板を含んでいることが好ましい場合がある。そのようなAODに対して、レーザ光のビームの大部分を所望の方向に偏向させるのに必要とされるRF駆動パワーの量が、偏向されるレーザ光のビームの偏波状態に大きく依存している場合には、半波長板があることが望ましい。そのような1対のAODが、2つの類似する(AODのAO媒体102が同一材料から構成され、レーザ光のビームを偏向するのに同種の音波を用いるという点において類似する)AODから構成されている場合、及び、第1のAODにおけるビームの偏波状態が線形であって、偏向の平面に対して特定の方向に向いていることが好ましい場合には、ちょうど第2のAODが第1のAODに対して回転されるように第2のAODにおける偏波状態を第1のAODにおけるビームの偏波状態に対して回転させることが同様に望ましい。半波長板は、そのような偏波の回転を可能にする光学的構成部品である。入射ビームに対して半波長板の後方における偏波の方向は、入射ビームの偏波方向に対する半波長板の方向の関数となる。
【0009】
図2に関して上記で述べたような従来の多軸ビームポジショナには多くの問題がある。まず第一に、多軸ビームポジショナの様々な構成要素(例えば、第1のAOD200、第2のAOD202、半波長板など)は、複数のマウント及び1以上のフレームなどを用いて空間的に互いに位置合わせされていなければならず、これらの部品は高価なものであり、これらを適切に位置合わせされた状態に配置及び維持することが難しいことが考えられる。第二に、多軸ビームポジショナの様々な構成要素(例えば、第1のAOD200、第2のAOD202、半波長板など)の表面は、典型的には(例えば反射防止被膜により)コーティングされており、これは多軸ビームポジショナのコストに少なからず影響を与える。第三に、多軸ビームポジショナの様々な構成要素(例えば、第1のAOD200、第2のAOD202、半波長板など)の表面では、反射防止被膜によりコーティングされていたとしても、(例えば、反射、散乱などによる)種々の光学損失が1%(あるいはその近傍)も生じ、これにより((例えば、最初は軸114に沿って伝搬して)多軸ビームポジショナに入射するレーザ光のビームの強度と、最終的にスキャン領域208に伝搬するレーザ光のビームの強度との間の比率が下がることにより)多軸ビームポジショナの光学効率が低下し得る。第四に、多軸ビームポジショナの様々な構成要素(例えば、第1のAOD200、第2のAOD202、半波長板など)の表面では、汚染され得る表面積が比較的大きい。第五に、(例えば、それぞれのAODのAOセル102を構成する材料によっては)第1のAOD200と第2のAOD202の旋回点間の距離が、望ましくない程度にまで大きくなることがある。また、第1のAOD200と第2のAOD202と半波長板とを位置決め及び方向付けするために使用されるマウントがなければ第1のAOD200と第2のAOD202とを一緒により近くに配置することが可能であるが、これらのマウントは場所を取る(このため、第1のAOD200と第2のAOD202の旋回点間の距離を短くすることが難しい)。
【概要】
【0010】
本発明の一実施形態は、AOセルとAOセルに取り付けられた変換器とを含む第1の音響光学(AO)偏光器(AOD)と、第1のAODに光学的に接触する波長板とを含むビームポジショナとして広く特徴付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、AODと、その動作の一般原理を模式的に示すものである。
図2図2は、レーザビームの2次元スキャンを行うために連続的に配置された1対のAODをどのように動作させることができるかを模式的に示すものである。
図3図3は、一実施形態における光学的接触型AODを模式的に示す斜視図である。
【詳細な説明】
【0012】
ここで、実施形態の例を添付した図面を参照しつつ述べる。明示的に述べている場合を除き、図面においては、コンポーネント、特徴部、要素などのサイズや位置などやそれらの間の距離は、必ずしも縮尺通りではなく、また理解しやすいように誇張されている。図面を通して同様の数字は同様の要素を意味している。このため、同一又は類似の数字は、対応する図面で言及又は説明されていない場合であっても、他の図面を参照して述べられることがある。また、参照番号の付されていない要素であっても、他の図面を参照して述べられることがある。
【0013】
明細書において使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明するためだけのものであり、限定を意図しているものではない。特に定義されている場合を除き、本明細書において使用される(技術的用語及び科学的用語を含む)すべての用語は、当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合には、内容が明確にそうではないことを示している場合を除き、単数形は複数形を含むことを意図している。さらに、「備える」及び/又は「備えている」という用語は、本明細書で使用されている場合には、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそのグループの存在又は追加を排除するものではないことを理解すべきである。特に示している場合を除き、値の範囲が記載されているときは、その範囲は、その範囲の上限と下限の間にあるサブレンジだけではなく、その上限及び下限を含むものである。特に示している場合を除き、「第1」や「第2」などの用語は、要素を互いに区別するために使用されているだけである。例えば、あるノードを「第1のノード」と呼ぶことができ、同様に別のノードを「第2のノード」と呼ぶことができ、あるいはこれと逆にすることもできる。
【0014】
特に示されている場合を除き、「約」や「およそ」、「ほぼ」などは、量、サイズ、配合、パラメータ、及び他の数量及び特徴が、正確ではなく、また正確である必要がなく、必要に応じて、あるいは許容誤差、換算係数、端数計算、測定誤差など、及び当業者に知られている他のファクターを反映して、概数であってもよく、さらに/あるいは大きくても小さくてもよいことを意味している。本明細書において、「下方」、「下」、「下側」、「上方」、及び「上側」などの空間的に相対的な用語は、図に示されるような、ある要素又は特徴の他の要素又は特徴に対する関係を述べる際に説明を容易にするために使用され得るものである。空間的に相対的な用語は、図において示されている方向に加えて異なる方向を含むことを意図するものであることは理解すべきである。例えば、他の要素又は特徴の「下方」又は「下」にあるとして説明される要素は、図中の対象物が反転した場合には、他の要素又は特徴の「上方」を向くことになる。このように、「下方」という例示的な用語は、上方及び下方の方向の双方を含み得るものである。対象物が他の方向を向く場合(例えば90度回転される場合や他の方向にある場合)には、本明細書において使用される空間的に相対的な記述子はこれに応じて解釈され得る。
【0015】
本発明の実施形態は、概して、光学的接触型構成要素を含む多軸ビームポジショナを提供するものとして特徴付けることができる。そのような実施形態においては、多軸ビームポジショナの2以上の構成要素が互いに光学的に接触していてもよい。例えば、図3に示されるように、多軸ビームポジショナ300は、上述した第1のAOD200と、第2のAOD202と、第1のAOD200と第2のAOD202との間に配置された半波長板302とを含み得るが、第1のAOD200は、(例えば、半波長板302の第1の側面側で)半波長板302に光学的に接触しており、第2のAOD202は、(例えば、半波長板302の第1の側面とは反対側の第2の側面側で)半波長板302に光学的に接触している。他の実施形態においては、第1のAOD200は、(例えば、半波長板302の第1の側面側で)半波長板302に光学的に接触しており、第2のAOD202は半波長板302に光学的に接触していない。他の実施形態においては、第2のAOD202は(例えば、半波長板302の第2の側面側で)半波長板302に接触しているが、第1のAOD200は半波長板302に光学的に接触していない。そのような実施形態においては、2つのAODの軸の方向には角度がついていてもよく(例えば90度)、半波長板の方向は、第1のAOD200内で所望の偏波状態を有する入力ビームの偏波状態が、後続の第2のAOD202内において所望のものとなるように半波長板によって変えられるように選択され得る。
【0016】
第1のAOD200及び第2のAOD202のAO媒体102を構成する材料は、当該技術分野において知られているように、Ge、PbMoO4、TeO2、水晶、ガラス状SiO2、As2S3などであり得るものであり、典型的には、偏向されるレーザ光のビームにおける光の波長に応じて選択される。半波長板302を構成する材料は、当該技術分野において知られているように、水晶、サファイヤ、方解石、雲母、シリコン、ゲルマニウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、セレン化亜鉛、フッ化マグネシウムなどであり得るものであり、典型的には、偏向されるレーザ光のビームにおける光の波長に応じて選択される。半波長板302が通常の光学的に等方な材料(例えばセレン化亜鉛など)により構成される場合には、多軸ビームポジショナの通常動作温度で外部応力を加えることにより、(例えば、米国特許第5,205,967号(参照により本明細書に組み込まれる)において述べられているように)温度を上昇させて材料を変形した後に得られる、応力により生じた複屈折を「凍結」することにより、あるいはこれに類する方法により、あるいはこれらを任意に組み合わせることにより、複屈折を呈するようにそのような材料を加工することができることを認識すべきことに留意すべきである。
【0017】
多軸ビームポジショナ300の構成要素は、任意の好適なプロセスにより(例えば上述した方法により)光学的に接触していてもよい。例えば、フリット接合プロセス、拡散接合プロセスを行うことにより、光学的に接触させる2つの構成要素の表面を単純に研磨し、清浄し、物理的に接触させることにより、あるいはこれらを任意に組み合わせることにより、第1のAOD200及び第2のAOD202の一方又は両方の表面を半波長板302の対応する表面に光学的に接触させてもよい。上述した手法に代えて、あるいはこれに加えて、他の光学的な接触を行う手法、例えば、溶液を用いた直接接合、化学的に活性化される直接接合など、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを用いることができる。他の例では、多軸ビームポジショナ300の構成要素は、構成要素のうちの2つ以上をクランプすることにより(例えば、上述した方法により)光学的に接触していてもよい。この場合には、光学的に接触する面が、偏向されるレーザ光のビーム中の光の波長よりも短い距離だけ確実に離れるようにする任意の好適な方法によって上記クランプを行ってもよい。例えば、上記距離は、例えば、レーザ光のビーム中の光の波長の1/10より短くてもよく、レーザ光のビーム中の光の波長の1/4より短くてもよく、レーザ光のビーム中の光の波長の1/2より短くてもよく、レーザ光のビーム中の光の波長の3/4よりも短くてもよく、レーザ光のビーム中の光の波長よりも短くてもよく、あるいはこれらの値のいずれかの間であってもよい。
【0018】
一実施形態においては、第1のAOD200及び第2のAOD202のAOセルは、半波長板302と同一の材料から構成される。例えば、第1のAOD200及び第2のAOD202のAOセルと半波長板302は、水晶から形成されていてもよい。他の例では、第1のAOD200及び第2のAOD202のAOセルと半波長板302は、TeO2から形成されていてもよい。この実施形態においては、他の構成要素(例えば半波長板302)の表面に光学的に接触する構成要素(例えば、第1のAOD200又は第2のAOD202)の表面は、反射防止被膜のような被膜によりコーティングされている必要はない。しかしながら、他の実施形態においては、そのような被膜のうち1つ以上が、光学的に接触する表面の一方又は双方にコーティングされていてもよい。光学的に接触する表面の間に被膜を設けないことにより、(例えば、上述した従来の多軸ビームポジショナのコストに比べて)多軸ビームポジショナ300のコストを低減することができる。
【0019】
他の実施形態においては、第1のAOD200及び第2のAOD202のAOセルは、半波長板302を構成する材料とは異なる材料から形成される。例えば、第1のAOD200及び第2のAOD202のAOセルがゲルマニウム(Ge)から形成され、半波長板302がセレン化亜鉛のような材料から形成されていてもよい。この例では、(例えば、上述したように)温度を上昇させて材料を変形した後に得られる、応力により生じた複屈折を「凍結」するようにセレン化亜鉛を前処理することができる。他の例では、セレン化亜鉛の半波長板302を例えばWAVELENGTHOPTO-ELECTRONIC社により提供されるフレネルZnSe半波長板としてもよい。他の例では、セレン化亜鉛の半波長板302を、西寛仁等「高出力炭酸ガスレーザ用の透過型ZnSe製波長板(リターダ)」、2015年、SEIテクニカルレビュー81号73ページにおいて述べられているような1対のプリズム形状のZnSe基板と最適化された光学コーティング膜(反射防止膜及び位相シフト膜を含む)のアセンブリとしてもよい。この論文は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
第1のAOD200及び第2のAOD202のAOセルが半波長板302を構成する材料とは異なる材料から形成される実施形態においては、他の構成要素(例えば半波長板302)の表面に光学的に接触する構成要素(例えば、第1のAOD200又は第2のAOD202)の表面が、反射防止被膜のような被膜によりコーティングされていてもよい。
【0021】
上述した実施形態においては、(設けられる場合には)半波長板302は、第1のAOD200と第2のAOD202との間に配置される。しかしながら、他の実施形態においては、半波長板302を、互いに光学的に接触する2枚の1/4波長板に代えてもよい。
【0022】
上述した実施形態においては、ビームポジショナ300は、2つのAOD(すなわち、第1のAOD200と第2のAOD202)を有する多軸ビームポジショナとして提供される。他の実施形態においては、ビームポジショナは、単一のAODを含んでいてもよく、あるいは2つよりも多くのAODを含んでいてもよい。ビームポジショナが単一のAODを含む実施形態においては、ビームポジショナは、AODのAO媒体102の第2の面102bに光学的に接触する半波長板302、あるいは少なくとも1つの1/4波長板(例えば、単一の1/4波長板、2枚の1/4波長板、3枚の1/4波長板など)など、あるいはこれらを任意に組み合わせたものを含んでいてもよい。ビームポジショナが2つよりも多くのAODを含む実施形態においては、ビームポジショナは、(例えば、上述したような)隣り合う1対のAODの間に配置された(半波長板302のような)半波長板を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0023】
上述した実施形態においては、ビームポジショナは、ビーム偏向デバイスとして1以上のAODを含むものとして述べられているが、ビームポジショナは、(例えば、上述したAODのいずれかにより伝搬される光のビームを偏向するように配置された)1以上の他のビーム偏向デバイスを含んでいてもよいことは理解すべきである。そのような場合には、そのような他のビーム偏向デバイスのいずれかが、電気光学偏向器(EOD)、圧電アクチュエータ、電歪アクチュエータ、ボイスコイルアクチュエータなどにより駆動されるファーストステアリングミラー(FSM)素子、ガルバノメータミラー、回転多面鏡スキャナなど、あるいはこれらを任意に組み合わせたものと含み得る。
【0024】
上記は、本発明の実施形態を説明したものであって、これに限定するものとして解釈されるものではない。いくつかの特定の実施形態及び例が図面を参照して述べられたが、当業者は、本発明の新規な教示や利点から大きく逸脱することなく、開示された実施形態及び例と他の実施形態に対して多くの改良が可能であることを容易に認識するであろう。したがって、そのような改良はすべて、特許請求の範囲において規定される発明の範囲に含まれることを意図している。例えば、当業者は、そのような組み合わせが互いに排他的になる場合を除いて、いずれかの文や段落、例又は実施形態の主題を他の文や段落、例又は実施形態の一部又は全部の主題と組み合わせることができることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲とこれに含まれるべき請求項の均等物とによって決定されるべきである。
図1
図2
図3