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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】鉄道車両用の集電装置及び鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 5/39 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
B60L5/39
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020012119
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021118656
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000163372
【氏名又は名称】近畿車輌株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】中井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】松田 太一
(72)【発明者】
【氏名】井谷 岳志
(72)【発明者】
【氏名】山中 崇司
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真和
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-032812(JP,U)
【文献】実開昭57-065503(JP,U)
【文献】実開昭50-115319(JP,U)
【文献】特公昭47-041161(JP,B1)
【文献】特開2010-130829(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104015624(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106945531(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 5/00 ー 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体の下方に配置される集電装置であり、
フレームと、
前記フレームに回転可能に保持された集電靴と、
前記集電靴を、水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に移動させること、並びに、第三軌条から離れる方向及び第三軌条へ近づく方向へ回転させることが可能な駆動機構とを備えていることを特徴とする鉄道車両用の集電装置。
【請求項2】
前記集電靴とともに回転する回転部材を備え、
前記駆動機構は、前記集電靴が第三軌条から離れる方向へ移動しているとき、前記回転部材に干渉することにより、前記集電靴を第三軌条から離れる方向へ回転させるガイド部材を有することを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用の集電装置。
【請求項3】
前記集電装置を前記集電靴の回転軸の軸方向に視たとき、前記回転部材の少なくとも一部が前記集電靴と重ならないことを特徴とする請求項2に記載の集電装置。
【請求項4】
前記集電靴の長手方向に前記回転部材と離れて配置されたガイドピンを備え、
前記集電装置を前記集電靴の回転軸の軸方向に視たとき、前記回転部材及び前記ガイドピンが前記集電靴と重なり、
前記ガイド部材に溝が形成され、
前記溝に前記回転部材及び前記ガイドピンが嵌まることを特徴とする請求項2に記載の集電装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、前記集電靴が第三軌条から離れる方向へ移動しているとき、前記集電靴に干渉することにより、前記集電靴を第三軌条から離れる方向へ回転させるガイド部材を有することを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用の集電装置。
【請求項6】
前記ガイド部材の高さを調整可能な調整機構を備えていることを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載の鉄道車両用の集電装置。
【請求項7】
前記駆動機構は、前記集電靴とともに前記フレームの少なくとも一部を水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に移動させる駆動装置を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の鉄道車両用の集電装置。
【請求項8】
車体と、
前記車体の上方に配置され、架線から集電する架線集電装置と、
前記車体の下方に配置され、第三軌条から集電する請求項1~7のいずれか1項に記載の鉄道車両用の集電装置とを備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項9】
内部電源を備えていることを特徴とする請求項8に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第三軌条から集電する集電装置及び鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
大多数の鉄道車両への地上からの電力の供給(給電)は、軌道上空に設けられた架空電車線(以下において「架線」と称する)より車両の屋上に設けられた集電装置(パンタグラフ等)を介して行われる。
【0003】
また、一部地下鉄等の鉄道車両への地上からの給電は、走行用の軌道外側に設けられたき(饋)電用のレール(第三軌条)より第三軌条用集電装置を介して行われる。
【0004】
図19に示すように、第三軌条用集電装置505は車両の集電装置懸架用ハリ500の側面に張り出す構造で取り付けられ、その先端部である集電靴515と地上に設けられた第三軌条510とが摺動することで集電している。第三軌条用集電装置505は、第三軌条の車両限界Bに納まっている。
【0005】
第三軌条用集電装置505は、その構造上、一般的な架線集電方式を採用する車両の寸法的な制限(以下、「架空線の車両限界A1)」と称する)よりも集電装置懸架用ハリ500の側面から張り出すものが多く、そのままでは軌道上の構造物等に干渉するため、架線集電方式の車両の運行を想定した車両限界や軌道側の寸法的な限界(建築限界)を採用した鉄道路線への車両の乗り入れが不可能である。
【0006】
上記乗り入れを実現するためには、先端部の集電靴を起立させる等により、第三軌条用集電装置を当該車両限界内に納める方法がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭57-104701号公報
【0008】
特許文献1のように、集電靴を起立させることにより第三軌条用集電装置を当該車両限界に納める場合は、集電靴の根元(回転中心)を支えている集電靴基部を車両限界内に配置させておく必要がある。しかし、集電靴基部と第三軌条の間隔が大きいため、集電靴基部から先端部までの腕部の長さが非常に長くなり、大きな振動を受ける集電靴、及び、集電装置において強度が不足する場合がある。また車両の走行中、集電靴の第三軌条からの瞬間的な跳びあがりによる集電の断絶(離線)を防ぐため、追随性が良好となるように集電靴の質量(及び慣性質量)を可能な限り軽量とすることが望ましいが、腕部が長い集電靴は質量(及び慣性質量)が増加する傾向となり、頻繁に離線が発生する恐れがある。さらに、このように腕の長い集電靴を起立させることにより車両限界内に収納しようとした場合は、集電靴が台車の他の装置と干渉することが多い。
上記より、特許文献1に記載された構造を、既存の鉄道車両に搭載することは難しい。
【0009】
本発明は、既存の鉄道車両に搭載可能な構造であり、且つ、既存の鉄道車両に搭載したときでも第三軌条用集電装置を架線集電方式の車両限界に納めることが可能な構造を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の鉄道車両の集電装置は、鉄道車両の車体の下方に配置される第三軌条用集電装置であり、フレームと、前記フレームに回転可能に保持された集電靴と、前記集電靴を、水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に移動させること、並びに、第三軌条から離れる方向及び第三軌条へ近づく方向へ回転させることが可能な駆動機構とを備えている。
【0011】
上記構成によると、駆動機構により集電靴を移動及び回転させることにより、第三軌条用集電装置を架空線の車両限界に納めることができる。集電靴の移動と回転の両方を行うことにより、少ない移動量で且つ少ない回転量で、第三軌条用集電装置を架空線の車両限界に納めることができる。これにより、車体の下方に、集電靴の移動スペースとして、水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に広いスペースを確保しなくてよい。また、車体の下方に、集電靴の回転スペースとして、鉛直方向に広いスペースを確保しなくてよい。さらに、集電靴の回転中心となる基端部が、架空線の車両限界の内側に配置されていなくても、集電靴を移動させることにより、集電靴の基端部を架空線の車両限界の内側に配置することができる。これにより、集電靴を長くしなくてよい。
上記より、本発明の集電装置を既存の鉄道車両に搭載しても、集電装置を架空線の車両限界に納めることができる。
したがって、本発明の集電装置は、既存の鉄道車両に搭載可能な構造であり、且つ、既存の鉄道車両に搭載したときでも架空線の車両限界に納めることが可能な構造である。
【0012】
また、上記構成において、前記駆動機構は、前記集電靴が第三軌条から離れる方向へ移動しているとき、前記集電靴又は前記集電靴とともに回転する回転部材に干渉することにより、前記集電靴を第三軌条から離れる方向へ回転させるガイド部材を有することが好ましい。
【0013】
上記構成によると、集電靴が、第三軌条から離れる方向へ移動しながら、第三軌条から離れる方向へ回転するようになる。これにより、集電装置が架空線の車両限界に納まる。
【0014】
また、上記構成において、前記集電靴とともに回転する回転部材を備え、前記集電装置を前記集電靴の回転軸の軸方向に視たとき、前記回転部材の少なくとも一部が前記集電靴と重ならないことが好ましい。
【0015】
上記構成によると、回転部材を簡易な構成としつつ、ガイド部材と干渉するような構成にすることができる。これにより、集電靴が第三軌条から離れる方向へ移動しながら、第三軌条から離れる方向へ回転するようになるため、集電装置が架空線の車両限界に納まる。
【0016】
また、上記構成において、前記集電靴とともに回転し、且つ、前記集電靴の回転軸を中心に回転する回転部材と、前記集電靴とともに回転するガイドピンとを備え、前記集電装置を前記集電靴の回転軸の軸方向に視たとき、前記回転部材及び前記ガイドピンが前記集電靴と重なり、前記ガイド部材に溝が形成され、前記溝に前記回転部材及び前記ガイドピンが嵌まることが好ましい。
【0017】
上記構成により、集電靴が移動しながら回転する構成にすることができる。
【0018】
また、上記構成において、前記ガイド部材の高さを調整可能な調整機構を備えていることが好ましい。
【0019】
例えば、車輪が磨耗した場合、台車の位置が下がることにより、ガイド部材の位置が下がる。調整機構により、ガイド部材の高さを調整することにより、集電靴が移動しているとき集電靴又は回転部材と干渉する位置にガイド部材を配置することができる。これにより、集電靴が、第三軌条から離れる方向へ移動しながら、第三軌条から離れる方向へ回転するようにできる。これにより、集電装置が架空線の車両限界に納まる。調整機構が複数の調整材を有してもよい。
【0020】
また、上記構成において、前記駆動機構は、前記集電靴とともに前記フレームの少なくとも一部を水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に移動させる駆動装置を有することが好ましい。
【0021】
上記構成によると、集電装置が架空線の車両限界の内側に配置されていない場合でも、集電装置と集電靴を移動させることにより、集電装置が架空線の車両限界に納まる。
【0022】
本発明の鉄道車両は、車体と、前記車体の上方に配置され、架線から集電する架線集電装置と、前記車体の下方に配置され、第三軌条から集電する上記鉄道車両用の集電装置とを備えている。
【0023】
上記構成によると、鉄道車両は、架線集電装置と上述した集電装置を備えているため、鉄道車両における集電装置以外の構成が既存の構成であっても、架線集電方式の路線と第三軌条集電方式の路線の両方に鉄道車両の乗り入れが可能である。
【0024】
上記構成において、本発明の鉄道車両は内部電源を備えていることが好ましい。
【0025】
上記構成によると、鉄道車両は内部電源を備えているため、鉄道車両における集電装置以外の構成が既存の構成であっても、架線集電方式の路線と、第三軌条集電方式の路線と、非電化の路線との3つの路線のいずれにも鉄道車両の乗り入れが可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の集電装置の構造は、既存の鉄道車両に搭載可能な構造であり、且つ、既存の鉄道車両に搭載したときでも第三軌条用集電装置を架線集電方式の車両限界に納めることが可能である。
また、本発明の鉄道車両は、鉄道車両における集電装置以外の構成が既存の構成であっても、架線集電方式の路線と第三軌条集電方式の路線の両方に鉄道車両の乗り入れが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る集電装置を備えた鉄道車両の模式図である。
図2図1に示す鉄道車両をIIの方向から視た図である。
図3図2に示す集電装置及びその周辺を示している。
図4】(a)及び(b)は第三軌条用車両限界に納まっている集電装置を、架空線及び非電化区間の車両限界に納める工程を順に示す図である。
図5】(a)及び(b)は第三軌条用車両限界に納まっている集電装置を、架空線及び非電化区間の車両限界に納める工程を順に示す図である。
図6】変形例1に係る集電装置の構造及びその周辺を示している。
図7】(a)は変形例1に係る集電装置が第三軌条用車両限界に納まっているときを示す図であり、(b)は変形例1に係る集電装置が架空線及び非電化区間の車両限界に納まっているときを示す図である。
図8】第2実施形態に係る集電装置及びその周辺を前方から視た図である。
図9図8のIX-IX線に沿った図である。
図10図8のX-X線に沿った図である。
図11】(a)及び(b)は第三軌条用車両限界に納まっている集電装置を、架空線及び非電化区間の車両限界に納める工程を順に示す図である。
図12】(a)及び(b)は第三軌条用車両限界に納まっている集電装置を、架空線及び非電化区間の車両限界に納める工程を順に示す図である。
図13】(a)及び(b)は第三軌条用車両限界に納まっている集電装置を、架空線及び非電化区間の車両限界に納める工程を順に示す図である。
図14】(a)及び(b)は、集電装置を架空線及び非電化区間の車両限界に納めているときを示す図であり、(a)は図8のIX-IX線に沿った図であり、(b)図8のX-X線に沿った図である。
図15】第3実施形態に係る集電装置及びその周辺を示す図である。
図16】(a)及び(b)は第三軌条用車両限界に納まっている集電装置を、架空線及び非電化区間の車両限界に納める工程を順に示す図である。
図17】(a)及び(b)は第三軌条用車両限界に納まっている集電装置を、架空線及び非電化区間の車両限界に納める工程を順に示す図である。
図18】台車が下がったときの集電装置及びその周辺の例を示す図である。
図19】従来の集電装置及びその周辺を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
ここでは、本発明の第1実施形態である鉄道車両について、図1図5を参照しつつ以下に説明する。鉄道車両100は、図1に示すように、車体1と、架線集電装置2と、台車3と、集電装置4と、車輪5と、内部電源装置(内部電源)101とを備えている。車体1の上方に、架線集電装置2が配置されている。車体1の下方に、台車3、集電装置4及び車輪5が配置されている。内部電源装置(内部電源)101は、例えば、図1に示すように車体1の下方に配置される。
【0029】
架線集電装置2は、図示しない架線から集電する。架線集電装置2は昇降可能である。図2に、架線集電装置2を下降させた状態を示している。
【0030】
集電装置4は、第三軌条10(図2参照)から集電する。図2に、集電装置4の集電靴15が第三軌条10に接しているときを示している。集電装置4の構成については後述する。
【0031】
内部電源装置(内部電源)101は、電気を蓄える又は発電することが可能である。内部電源装置(内部電源)101は、例えば蓄電装置又は発電機を備える。鉄道車両100が非電化区間の路線を走るとき、内部電源装置(内部電源)101の電気により、鉄道車両100に搭載されたモータ(図示せず)を動かす。非電化区間の路線とは、鉄道車両の走行中、鉄道車両が外部から集電しない路線である。非電化区間の路線は、架空線集電方式の路線でなく且つ第三軌条集電方式の路線でない路線である。
【0032】
鉄道車両100が架線集電方式の路線を走行しているとき、架線集電装置2から集電した電力によりモータを駆動させる。鉄道車両100が第三軌条集電方式の路線を走行しているとき、集電装置4から集電した電力によりモータを駆動させる。鉄道車両100が第三軌条集電方式の路線又は架線集電方式の路線から非電化区間の路線に乗り換える場合、架線集電装置2又は集電装置4からモータへ電力を供給していたのを、内部電源装置(内部電源)101からモータへ電力を供給することにかえる。
【0033】
図2に、架空線及び非電化区間の車両限界Aと、第三軌条用車両限界Bとを示している。「架空線及び非電化区間の車両限界」とは、架空線集電方式を採用する車両及び非電化区間を走行する車両に許容される断面寸法の範囲である。「第三軌条用車両限界」とは、第三軌条集電方式を採用する車両に許容される断面寸法の範囲である。図2には、架空線の車両限界と非電化区間の車両限界が同じである例を示している。図2には、第三軌条10の周辺における架空線及び非電化区間の車両限界Aの幅が、第三軌条10の周辺における第三軌条用車両限界Bの幅より狭い例を示している。図2に示す「幅方向」は、鉄道車両100の進行方向に直交する方向であり且つ水平方向である。
【0034】
鉄道車両100が架空線集電方式又は非電化区間の路線に定置されているとき、鉄道車両100は架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まっている(図示省略)。鉄道車両100が第三軌条集電方式の路線に定置されているとき、鉄道車両100は、図2に示すように、第三軌条用車両限界Bに納まっている。このとき、鉄道車両100は、架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まっていなくてよい。
【0035】
(集電装置4)
図3に、図2に示す集電装置4及びその周辺を示している。集電装置4は、図3に示すように、台車枠6に取り付けられている。集電装置4は、保持部材11と、駆動機構12(後述参照)と、スライド部材13と、フレーム14と、集電靴15とを有する。
【0036】
保持部材11は、台車枠6に取り付けられている。保持部材11に、2つのガイド孔11s、11tが形成されている。ガイド孔11s、11tは、水平方向に対して傾斜している。ガイド孔11s、11tは、後述するシリンダ31及びピストン32とほぼ平行である。ガイド孔11s、11tに、それぞれ、スライド部材13の突出部13s、13tが嵌まっている。
【0037】
駆動機構12は、駆動装置21と、ガイド部材22と、ねじりバネ61とを有する。駆動装置21は、シリンダ31と、ピストン32とを有する。駆動装置21は、例えば、エアシリンダでもよく、オイルシリンダでもよい。ガイド部材22及びねじりバネ61については後述する。
【0038】
シリンダ31及びピストン32は、第三軌条10から離れるにつれて、上方に傾斜している。シリンダ31は、保持部材11に取り付けられている。ピストン32は、シリンダ31内を移動する。ピストン32の移動方向は、水平方向に対して傾斜した方向である。
【0039】
ピストン32の先端部に、スライド部材13が取り付けられている。スライド部材13に、フレーム14が取り付けられている。
【0040】
フレーム14に、集電靴15の回転軸41が接続されている。集電靴15の基端部15aが、回転軸41に取り付けられている。集電靴15は、回転軸41を中心に回転可能に、フレーム14に保持されている。
【0041】
回転軸41にねじりバネ61が取り付けられている。ねじりバネ61が、フレーム14に固定されているバネ受62に干渉することにより、ねじりバネ61は、集電靴15の先端部15bが第三軌条10に近づく方向に、回転軸41を回転させる。ねじりバネ61により、集電靴15の先端部15bが第三軌条10に近づくように、集電靴15を回転させる回転モーメントが作用している。
【0042】
回転軸41に、回転部材42が取り付けられている。回転部材42は、集電靴15と反対方向にのびている。集電装置4を集電靴15の回転軸41の軸方向に視たとき、図3に示すように、回転部材42の少なくとも一部が集電靴15と重ならない。集電装置4を集電靴15の回転軸41の軸方向に視たとき、回転軸41を通る鉛直線に対し、第三軌条10に近い領域に集電靴15が配置され、第三軌条10に遠い領域に回転部材42が配置されている。回転部材42は、回転軸41を中心に、集電靴15とともに回転する。回転部材42は、集電靴15とともに移動する。
【0043】
ピストン32が移動することにより、ピストン32とともに、スライド部材13、フレーム14及び集電靴15が一体になって移動する。スライド部材13、フレーム14及び集電靴15は、ピストン32の移動方向と同じ方向、つまり、水平方向に対して傾斜した方向に移動する。
【0044】
ガイド部材22は、保持部材11に設けられたガイド部材受11aに置かれている。ガイド部材受11aに、ボルト70が貫通している。ボルト70は、ガイド部材22に形成された孔に挿通している。
【0045】
フレーム14は、ボルト等の固定具51によって、スライド部材13に取り付けられている。フレーム14に、固定具51が挿通する長孔14mが形成されている。長孔14mは、鉛直方向に延在している。図2に示すように、スライド部材13とフレーム14とを鉄道車両100の幅方向に並べて配置したとき、スライド部材13に形成された固定具51が挿入される孔(図示せず)と、フレーム14の長孔14mとが連通する。この連通した部分に、固定具51が挿入される。
【0046】
フレーム14の長孔14mが鉛直方向に延在しているため、スライド部材13に対するフレーム14の取付位置を鉛直方向に変えても、フレーム14の長孔14mと、スライド部材13の固定具51が挿入される孔(図示せず)とが連通する。この連通した部分に固定具51を挿入することにより、フレーム14をスライド部材13に取り付けることができる。
フレーム14に長孔14mが形成されていることにより、スライド部材13に対するフレーム14の取付位置を鉛直方向に変えることができる。
【0047】
次に、集電装置4を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納める工程を、図4及び図5を参照しつつ説明する。
【0048】
図4(a)に示すように、集電装置4が第三軌条用車両限界Bに納まっている。このとき、フレーム14の一部及び集電靴15が、架空線及び非電化区間の車両限界Aの外側に配置されている。ピストン32は、押し出されている。
【0049】
ピストン32をシリンダ31内に後退させると、図4(b)に示すように、スライド部材13、フレーム14及び集電靴15が、第三軌条10から離れる方向へ、斜め上方に移動する。集電靴15は、ねじりバネ61により、第三軌条10に近づく方向に回転することにより、第三軌条に接している。このとき、回転部材42はガイド部材22に接していない。
【0050】
ピストン32をさらに後退させると、スライド部材13、フレーム14及び集電靴15が斜め上方へさらに移動し、回転部材42がガイド部材22に接する。集電靴15及び回転部材42には、ねじりバネ61により第三軌条10に近付くように回転させる回転モーメントが作用しているが、回転部材42がガイド部材22に干渉することにより、集電靴15及び回転部材42を第三軌条10から離れる方向へ回転させる回転モーメントが生じる。これにより、回転部材42及び集電靴15が、第三軌条10から離れる方向へ回転する。(図5(a)参照)。
【0051】
スライド部材13、フレーム14及び集電靴15が斜め上方へ移動しているとき、回転部材42がガイド部材22に接している間、集電靴15及び回転部材42を第三軌条10から離れる方向へ回転させる回転モーメントが生じるため、集電靴15及び回転部材42は、第三軌条10から離れるように斜め上方へ移動しつつ、第三軌条10から離れるように回転する(図5(b)参照)。これにより、集電装置104が架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まる。
【0052】
集電装置104が架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まった状態から、集電靴15を第三軌条10に接するようにする場合、ピストン32を押し出す。スライド部材13、フレーム14及び集電靴15は、第三軌条10に近付く方向へ、斜め下方へ移動する。集電靴15及び回転部材42には、ねじりバネ61により、第三軌条10に近づくように回転させる回転モーメントが作用している。回転部材42がガイド部材22に接している間、ガイド部材22によりこの回転モーメントが抑制されるが、集電靴15及び回転部材42は第三軌条10に近付く方向へ回転する。フレーム14、集電靴15及び回転部材42が第三軌条10に近付く方向へ移動するに従い、回転部材42におけるガイド部材22との接触箇所の位置関係が変化し、上記回転モーメントの抑制が弱まっていく。集電靴15は、第三軌条10に近付くように斜め下方へ移動しつつ、第三軌条10に近付く方向へ回転する(図5(a)参照)。
【0053】
回転部材42がガイド部材22から離れると(図4(b)参照)、上記回転モーメントの抑制が解除される。集電靴15及び回転部材42は、斜め下方へ移動しつつ、ねじりバネ61により第三軌条10に近付くように回転し、集電靴15が第三軌条10に接するようになる(図4(a)参照)。
【0054】
以上のように、本実施形態によると以下の効果を奏する。
図4(a)、(b)及び図5(a)、(b)に示すように、駆動機構12(シリンダ31、ピストン32、ガイド部材22、ねじりバネ61)により集電靴15を移動及び回転させることにより、第三軌条用集電装置4を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納めることができる。集電靴15の移動と回転の両方を行うことにより、少ない移動量で且つ少ない回転量で、第三軌条用集電装置4を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納めることができる。そのため、車体の下方に、集電靴15の移動スペースとして、水平方向及び水平方向に対して傾斜した方向に広いスペースを確保しなくてよい。また、車体の下方に、集電靴15の回転スペースとして、鉛直方向に広いスペースを確保しなくてよい。さらに、図3に示すように、集電靴15の基端部15aが、架空線及び非電化区間の車両限界Aの外側に配置されていても、集電靴15を移動させることにより、集電靴15を架空線及び非電化区間の車両限界Aの内側に納めるができる(図5(b)参照)。そのため、集電靴15を長くしなくてよい。
上記より、本実施形態の集電装置4を既存の鉄道車両に搭載しても、集電装置4を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納めることができる。
したがって、集電装置4は、既存の鉄道車両に搭載可能な構造であり、且つ、既存の鉄道車両に搭載したときでも架空線及び非電化区間の車両限界Aに納めることが可能な構造である。
【0055】
また、図3に示すように、ガイド部材22が、フレーム14及び集電靴15が移動しているときに回転部材42に干渉する位置に配置されている(図4及び図5参照)。そのため、フレーム14及び集電靴15が、第三軌条10から離れる方向へ、斜め上方へ移動したとき、ガイド部材22が回転部材42に干渉することにより、回転部材42及び集電靴15が、第三軌条10から離れる方向へ回転する。これにより、集電装置104が架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まる。また、集電靴15が、第三軌条10に近付く方向へ、斜め下方へ移動しているとき、ねじりバネ61により、回転部材42及び集電靴15が、第三軌条10に近付く方向に回転するこれにより、集電靴15が第三軌条10に接するようになる。
【0056】
また、図3に示すように、集電装置4を集電靴15の回転軸41の軸方向に視たとき、図3に示すように、回転部材42の少なくとも一部が、集電靴15と重ならない。このように、回転部材42を、簡易な構成としつつ、ガイド部材22が干渉する構成にすることができる。
【0057】
また、図4(a)に示すように、集電装置4が第三軌条用車両限界Bに納まっているとき、フレーム14及び集電靴15が架空線及び非電化区間の車両限界Aの外側に配置されている。このような場合でも、駆動装置21によりフレーム14及び集電靴15を第三軌条10から離れる方向に移動させることにより、フレーム14及び集電靴15を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納めることができる(図7(b)参照)。これにより、集電装置4が架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まる。
【0058】
また、図3に示すように、保持部材11に、ガイド孔11s、11tが形成されている。ガイド孔11s、11tは、シリンダ31及びピストン32とほぼ平行である。ピストン32の移動に伴い、スライド部材13の突出部13s、13tがガイド孔11s、11tを移動することにより(図4(b)参照)、スライド部材13、フレーム14及び集電靴15が、スムーズに移動する。
【0059】
また、鉄道車両100は、図1に示すように、車体1の上方に配置された架線集電装置2と、車体1の下方に配置された集電装置4と、内部電源装置101を備えている。集電装置4が上述した構造であるため、鉄道車両100において集電装置4以外の構成が既存の構成であっても、鉄道車両100は架線集電方式の路線と、非電化区間の路線と、第三軌条集電方式の路線との3つの路線のいずれにも乗り入れ可能である。
【0060】
〔変形例1〕
次に、本発明の第1実施形態の変形例について、図6及び図7を参照しつつ説明する。変形例において第1実施形態と異なる点は、集電装置104が、ガイド部材22の高さを調整可能な調整部材(調整機構)71を備えている点である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0061】
鉄道車両を長期間使用する等により車輪5が磨耗した場合、台車の位置が下がる。図6及び図7に、台車の位置が下がったときを示している。
【0062】
車輪が磨耗することにより、図6に示すように、台車枠6の位置が下がる。台車枠6に取り付けられた保持部材11、保持部材11に取り付けられたシリンダ31、及び、ピストン32の位置が下がる。ピストン32に接続されたスライド部材13の位置が下がる。
【0063】
上述した部材の位置は下がるが、フレーム14及び集電靴15の位置は、台車枠6の位置が下がる前の高さと同様な高さである。フレーム14に、固定具51が挿入される長孔14mが形成されているため、スライド部材13に対するフレーム14の取付位置を、台車枠6の位置が下がる前の高さより高くすることにより、フレーム14及び集電靴15の位置が変わらないようにすることができる。地面に配置された第三軌条10の高さは変わらないため、台車枠6の位置が下がっても、集電靴15が第三軌条10に摺動可能である。
【0064】
保持部材11の位置が下がったことにより、保持部材11のガイド部材受11aの位置が下がる。ガイド部材受11aとガイド部材22との間に、調整部材71(調整機構)が配置されている。調整部材71により、ガイド部材22が、車体1が下がる前の高さと同様な高さに配置されている。調整部材71は、複数の調整板(調整材)72を有する。複数の調整板72に、ボルト70が挿通している。
【0065】
調整板72の数を増やしたり減らしたりすることにより、ガイド部材22の位置を鉛直方向に調整することができる。図6に示す複数の調整板72は、全て同じ厚さの調整板72であるが、調整板72の厚さが異なってもよい。
【0066】
図7に、集電靴15が第三軌条10に接しているときを示している。鉄道車両100は、第三軌条用車両限界Bに納まっているが、架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まっていない。集電装置4を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納める場合、第1実施形態と同様に、ピストン32をシリンダ31内に後退させる。スライド部材13、フレーム14及び集電靴15は、第三軌条10から離れる方向へ、斜め上方へ移動する。回転部材42がガイド部材22に接した後、回転部材42及び集電靴15は、第三軌条10から離れるように斜め上方へ移動しつつ、第三軌条10から離れる方向へ回転する(図7(b)参照)。これにより、集電装置104が架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まる。
【0067】
図7(b)に示す状態から、集電靴15を第三軌条10に接するようにする場合、第1実施形態と同様に、ピストン32を押し出す。スライド部材13、フレーム14及び集電靴15は、第三軌条10に近付く方向へ、斜め下方へ移動する。集電靴15は、ねじりバネ61により、第三軌条10に近付く方向へ回転する。回転部材42がガイド部材22から離れると、集電靴15が第三軌条10に接する(図7(a)参照)。
【0068】
以上のように、変形例の集電装置104は、第1実施形態の集電装置4と同様に、既存の鉄道車両に搭載可能であり、且つ、既存の鉄道車両に搭載したときでも架空線及び非電化区間の車両限界Aに納めることが可能な構造である。集電装置104、架線集電装置2及び内部電源装置101(図1参照)を備えた鉄道車両は、集電装置104以外の構成が既存の構成であっても、架線集電方式の路線と、非電化区間の路線と、第三軌条集電方式の路線との3つの路線に乗り入れ可能である。
【0069】
また、図6に示すように、ガイド部材受11aとガイド部材22との間に調整部材71を配置することにより、ガイド部材22の位置を鉛直方向に変えることができる。これにより、フレーム14及び集電靴15が移動しているとき回転部材42と干渉する位置に、ガイド部材22が配置される。そのため、フレーム14及び集電靴15が、第三軌条10から離れる方向へ、斜め上方へ移動したとき、ガイド部材22が回転部材42に干渉することにより、回転部材42及び集電靴15が、第三軌条10から離れる方向へ回転する。
【0070】
なお、上記では、調整部材71が複数の調整板72を有するが、調整部材71は上記構成に限られない。例えば、ガイド部材受11aとガイド部材22との間に、1つの調整板だけが配置されていてもよい。また、厚さが異なる複数の調整部材を準備し、台車の位置が下がった場合、台車の下がった量に応じた厚さの調整部材を、ガイド部材受11aとガイド部材22との間に配置してもよい。また、台車の位置が下がる前でも、ガイド部材22の位置を調整するため、ガイド部材受11aとガイド部材22との間に、調整部材を配置してもよい。
【0071】
また、上記では、調整板72が板状であるが、調整板72の形状は板状に限られない。調整部材71の形状も図6に示す形状に限られない。調整部材71は、形状が限定されない複数の調整材を有してもよい。
【0072】
また、駆動装置21によりフレーム14及び集電靴15を移動させることにより、フレーム14及び集電靴15を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納めることができる(図7(b)参照)。これにより、集電装置104が架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まる。
【0073】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図8~14を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、集電装置204の構成である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0074】
図8に、鉄道車両を側方から視たときの車体の下方を示している。梁9に、集電装置204が取り付けられている。梁9は、車輪5の軸受が収容された軸箱(図示せず)間に架け渡されている。
【0075】
図9は、図8のIX-IX線に沿った断面図であり、図10は、図8のX-X線に沿った断面図である。図9及び図10では、断面を示すハッチングを一部省略している。
【0076】
図9に示すように、集電装置204は、梁9に取り付けられたフレーム214(図8参照)と、第三軌条10に接した集電靴215と、集電靴215を移動及び回転させることが可能な駆動機構212とを有する。鉄道車両が第三軌条集電方式の路線に定置されているとき、図9に示すように、集電装置204は、第三軌条用車両限界Bに納まっているが、架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まっていない。集電靴215が、第三軌条10に接している。
【0077】
フレーム214は、梁に取り付けられた固定枠281と、可動枠282とを有する(図8参照)。固定枠281と可動枠282は、スライド部材283によって接続されている。スライド部材283は、図8に示すように、可動枠282の両側に配置されている。可動枠282は、駆動機構212により水平方向へ移動する(図9参照)。
【0078】
固定枠281は、図9に示すように、固定部281Fと、保持部281Mとを有する。固定部281Fは、鉛直方向に延在している。固定部281Fは、梁9に対向して配置される。固定部281Fは、ボルト等の固定具251によって、梁9に取り付けられる。
【0079】
固定部281Fに、固定具251が挿通する長孔(調整機構)281mが形成されている(図8参照)。長孔281mは、鉛直方向に延在している。長孔281mと、梁9に形成された固定具251が挿入される孔(図示せず)とが連通する。この連通した部分に、固定具251が挿入される(図8参照)。
【0080】
長孔281mが鉛直方向に延在していることにより、梁9に対するフレーム214の取付位置を鉛直方向に変えても、長孔281mと、梁9の固定具251が挿入される孔(図示せず)とが連通する。この連通した部分に、固定具251を挿入することにより、フレーム214を梁9に取り付けることができる。フレーム214の長孔281mにより、梁9に対するフレーム214の取付位置を鉛直方向に変えることができる。例えば、車輪5が磨耗する等により台車の位置が下がった場合、梁9に対するフレーム214の取付位置を高くすることにより、集電装置204の高さを台車の位置が下がる前の高さと同じ高さにすることができる。
【0081】
図9に示すように、固定枠281の保持部281Mは、水平方向に延在している。保持部281Mに、水平方向に貫通した貫通孔281hが形成されている。貫通孔281hに、後述する駆動ネジ232とスラストベアリング233が配置されている。
【0082】
保持部281Mは、図10に示すように、下方に向けて突出した第1突起281j及び第2突起281kを有する。第1突起281j及び第2突起281kは、図中の左右方向に離れている。図中の左右方向は、水平方向であり、且つ、可動枠282の移動方向である。
【0083】
第1突起281jに隣接して、第1緩衝材284jが配置されている。第2突起281kに隣接して、第2緩衝材284kが配置されている。第1緩衝材284j及び第2緩衝材284kは、図中の左右方向に互いに対向している。第1緩衝材284j及び第2緩衝材284kの材質は、例えば樹脂(ゴム等)である。第1緩衝材284jと第2緩衝材284kとの間を、可動枠282の可動突出部282pが図中の左右方向に移動する。集電装置204を前方からみたとき、図8に示すように、フレーム214の中央付近に、第1緩衝材284jが配置されている。第1緩衝材284jの後方に、第2緩衝材284k(図10参照)が配置されている。
【0084】
図9に示すように、スライド部材283は、スライドレール283Pと、スライドライナー283Qとを有する。スライドレール283Pは、固定枠281の保持部281Mに取り付けられている。スライドライナー283Qは、可動枠282に取り付けられている。スライドライナー283Qは、スライドレール283Pに、摺動可能に係合している。スライドレール283Pは、水平方向に延在している。スライドライナー283Qは、スライドレール283P上を水平方向に移動する。
【0085】
可動枠282に、集電靴215の回転軸241が接続されている(図8参照)。回転軸241に、集電靴215と、カム(回転部材)242と、ねじりバネ216とが取り付けられている。図9に示すように、集電靴215の基端部215aが、回転軸241に取り付けられている。集電靴215は、回転軸241を中心に回転可能に、可動枠282に保持されている。
【0086】
ねじりバネ216は、集電靴215の先端部215bが第三軌条10に近づく方向に、回転軸241を回転させる。ねじりバネ216により、集電靴215の先端部215bが第三軌条10に近づくように、集電靴215を回転させる回転モーメントが作用する。集電靴215が回転すると、集電靴215とともに、カム242及び後述する回転ストッパー261が第三軌条10に近づく方向に回転する。
【0087】
カム242は、図8に示すように、集電装置204の両端部に配置されている。集電装置204を集電靴215の回転軸241の軸方向に視たとき(図9参照)、図9に示すように、カム242の少なくとも一部が集電靴215と重ならない。集電装置204を集電靴215の回転軸241の軸方向に視たとき、回転軸241を通る鉛直線に対し、集電靴215は第三軌条10に近い領域に配置されているのに対し、カム242は第三軌条10から遠い領域に配置されている。カム242は、集電靴215の長手方向に対して傾斜している。カム242は、先端部にカム湾曲面242aを有する。カム242は、回転軸241を中心に、集電靴215とともに回転する。カム242は、集電靴215とともに移動する。
【0088】
図9に示すように、回転軸241の周辺に、回転ストッパー261が配置されている。集電装置204を集電靴215の回転軸241の軸方向に視たとき、回転軸241を通る鉛直線に対し、集電靴215は第三軌条10に近い領域に配置されているのに対し、回転ストッパー261は第三軌条10から遠い領域に配置されている。回転ストッパー261は、例えば、回転軸241に取り付けられている。回転ストッパー261は、回転軸241を中心に、集電靴215とともに回転する。回転ストッパー261は、集電靴215とともに移動する。
【0089】
回転ストッパー261に対向するように、回転ストッパー受262が配置されている。回転ストッパー受262は、例えば可動枠282に取り付けられている。
【0090】
ねじりバネ61により回転ストッパー261は第三軌条10に近付く方向に回転する。回転ストッパー261が回転ストッパー受262に接すると、回転軸241が回転しない。集電靴215の第三軌条10に近付く方向への回転が止まる。これらねじりバネ216による集電靴215を第三軌条10に近付くように回転させる構造及び回転ストッパー261による動作範囲を規制する構造は、本発明の収納機構を有しない集電装置(既存の集電装置)のそれと同様なものとすることができる。
【0091】
駆動機構212は、図9に示すように、駆動装置221と、ガイド部材222と、上述したねじりバネ216(図8参照)とを有する。駆動装置221は、モータ231と、駆動ネジ232と、スラストベアリング233とを有する。モータ231は、例えば固定枠281に取り付けられている。駆動ネジ232及びスラストベアリング233は、固定枠281の貫通孔281hに、水平方向に並んで配置されている。駆動ネジ232は、モータ231に接続されている。スラストベアリング233は、駆動ネジ232と可動枠282の間に配置されている。
【0092】
モータ231を駆動させると、駆動ネジ232が回転しながら水平方向に移動する。駆動ネジ232が移動することにより、スラストベアリング233及び可動枠282が駆動ネジ232の移動方向と同じ方向に移動する。可動枠282とともに、スライドライナー283Q、集電靴215、カム242、回転ストッパー261及び回転ストッパー受262が移動する。
【0093】
駆動機構212のガイド部材222は、固定枠281に取り付けられている。図9の拡大図に示すように、ガイド部材222に、第1回転ガイド面222s、移動ガイド面222t、第2回転ガイド面222u、及び、カム収容部222Vが、第三軌条10から離れる方向に(車両の内側に向かって)順に形成されている。第1回転ガイド面222s及び第2回転ガイド面222uは、第三軌条10から離れる方向に(車両の内側に向かって)、水平方向に対して下方に傾斜している。移動ガイド面222tは、水平方向に延在している。カム収容部222Vは、第三軌条10に向かって(車両の外側に向かって)開口した略コの字状に形成されている。
【0094】
次に、集電装置204を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納める工程を、図9図14を参照しつつ説明する。
【0095】
図9に示すように、集電装置204が第三軌条用車両限界Bに納まっているとき、フレーム214の可動枠282の一部及び集電靴215が、架空線及び非電化区間の車両限界Aの外側に配置されている。
【0096】
モータ231を駆動させると、駆動ネジ232は回転しながら、第三軌条10から離れる方向へ、図中の右方向に移動する。可動枠282及び集電靴215も、第三軌条10から離れる方向へ、図中の右方向に移動する(図11(a)参照)。
【0097】
可動枠282及び集電靴215は図中の右方向へさらに移動し、カム湾曲面242aが、ガイド部材222の第1回転ガイド面222sに接する(図11(b)参照)。カム242及び集電靴215には、ねじりバネ216(図8参照)により、第三軌条10に近付くように回転させる回転モーメントが作用しているが、カム242に第1回転ガイド面222sが干渉することにより、カム242及び集電靴215を第三軌条10から離れるように回転させる回転モーメントが生じることで、カム242及び集電靴215が、第三軌条10から離れるように回転する。
【0098】
可動枠282及び集電靴215が図中の右方向へ移動しているとき、図11(b)に示すように、カム湾曲面242aがガイド部材222の第1回転ガイド面222sに接している間、カム242及び集電靴215を第三軌条10から離れるように回転させる回転モーメントが生じているため、カム242及び集電靴215は、右方向へ移動しつつ、第三軌条10から離れるように回転する。集電靴215は第三軌条10から離れる。
【0099】
可動枠282及び集電靴215は図中の右方向にさらに移動すると、図12(a)に示すように、カム湾曲面242aが水平な移動ガイド面222tに接する。カム242に移動ガイド面222tが干渉することにより、カム242及び集電靴215を第三軌条10から離れるように回転させる回転モーメントM1が生じるが、カム242及び集電靴215には、ねじりバネ216(図8参照)により、第三軌条10に近付くように回転させる回転モーメントが作用している。これらの回転モーメントにより、カム242及び集電靴215は回転しない。カム242及び集電靴215は、図12(a)に示す傾きを維持したまま、図中の右方向へ移動する。可動枠282及び集電靴215が右方向に移動しているとき、カム湾曲面242aが移動ガイド面222tに接している間、カム242及び集電靴215は、図12(b)に示す傾きを維持したまま、右方向へ移動する(図12(b)参照)。
【0100】
可動枠282及び集電靴215が右方向にさらに移動し、カム湾曲面242aが第2回転ガイド面222uに接する(図13(a)参照)。カム242及び集電靴215には、ねじりバネ216(図8参照)により、第三軌条10に近付くように回転させる回転モーメントが作用しているが、カム242に第2回転ガイド面222uが干渉することにより、カム242及び集電靴215を第三軌条10から離れるように回転させる回転モーメントが生じることで、カム242及び集電靴215が、第三軌条10から離れるように回転する。
【0101】
可動枠282及び集電靴215が図中の右方向へ移動しているとき、カム湾曲面242aが第2回転ガイド面222uに接している間、カム242及び集電靴215を第三軌条10から離れるように回転させる回転モーメントが生じているため、カム242及び集電靴215は、右方向へ移動しつつ、第三軌条10から離れるように回転する(図13(b)参照)。カム242は、カム収容部222Vに収容される(図14(a)
第1回転ガイド面222s、移動ガイド面222t、及び第2回転ガイド面222uといった異なる水平距離と勾配を持つガイド面を組み合わせることにより、集電靴先端の移動軌跡を比較的簡単に設定することができる。特に必要がない場合は、第2回転ガイド面222uとカム収納部222Vのみとしてもよい。
上記により、集電装置204が、架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まる。
【0102】
図14(b)に示すように、可動枠282の可動突出部282pが第2緩衝材284kに接すると、可動枠282及び集電靴215は図中の右方向へ移動しなくなる。第2緩衝材284kにより、可動枠282から固定枠281に加わる衝撃が緩和される。
【0103】
集電装置204が架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まった状態から、集電靴215を第三軌条10に接するようにする場合、モータ231を駆動させる。駆動ネジ232は回転しながら、第三軌条10に近付く方向へ、図中の左方向へ移動する。可動枠282及び集電靴215も、図中の左方向へ移動する。カム242はカム収容部222Vから出て、第2回転ガイド面222u、移動ガイド面222t及び第1回転ガイド面222sに接しながら、図中の左方向へ移動する(図13(b)、図13(a)及び図12(b)参照)。
【0104】
カム242及び集電靴215には、ねじりバネ216の働きにより、第三軌条10に近付くように回転する回転モーメントが作用している。カム242及び集電靴215が図中の左方向へ移動しているとき、上述した第2回転ガイド面222u、移動ガイド面222t及び第1回転ガイド面222sによるカム242への干渉が除かれることにより、カム242が上方に(第三軌条10に近付く方向に)回転するとともに、集電靴215が第三軌条10に近付く方向へ回転する。
【0105】
カム湾曲面242aが、ガイド部材222の第1回転ガイド面222sから離れると(図11(a)参照)、上述したカム242への干渉は全て除かれ、ねじりバネ216の働きにより、カム242及び集電靴215は第三軌条10に近付くように回転する。カム242及び集電靴215は、図中の左方向へ移動しつつ、第三軌条10に近付く方向へ回転し、集電靴215が第三軌条10に接するようになる(図10)。
【0106】
図10に示すように、可動突出部282pが第1緩衝材284jに接すると、可動枠282及び集電靴215が左方向へ移動しなくなる。第1緩衝材284jにより、可動枠282から固定枠281に加わる衝撃が緩和される。
【0107】
以上のように、第2実施形態の集電装置204は、第1実施形態の集電装置4と同様に、既存の鉄道車両に搭載可能な構造であり、且つ、既存の鉄道車両に搭載したときでも架空線及び非電化区間の車両限界Aに納めることが可能な構造である。集電装置204及び架線集電装置2(図1参照)を備えた鉄道車両は、集電装置204以外の構成が既存の構成であっても、架線集電方式及び非電化区間の路線と第三軌条集電方式の路線の両方に乗り入れ可能である。
【0108】
また、図9に示すように、集電装置204が第三軌条用車両限界Bに納まっているとき、フレーム214の可動枠282の一部と集電靴215が架空線及び非電化区間の車両限界Aの外側に配置されている。このような場合でも、駆動装置221により可動枠282と集電靴215を鉄道車両の内側に向かって移動させることにより、可動枠282と集電靴215を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納めることができる(図14(a)、(b)参照)。これにより、集電装置204が架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まる。
【0109】
また、図9の拡大図に示すように、ガイド部材222に、第1回転ガイド面222s及び第2回転ガイド面222uが形成されている。第1回転ガイド面222s及び第2回転ガイド面222uは、可動枠282及び集電靴215の移動方向である水平方向に対して傾斜している。第1回転ガイド面222s及び第2回転ガイド面222uは、可動枠282及び集電靴215が移動しているとき、カム湾曲面222aに接することにより、カム242を干渉する位置に配置されている。可動枠282及び集電靴215が移動しているとき、カム242に第1回転ガイド面222s及び第2回転ガイド面222uが干渉することにより、カム242及び集電靴215を上方に(第三軌条10から離れる方向に)回転させる回転モーメントが発生する。カム242及び集電靴215には、ねじりバネ216により、第三軌条10に近付く方向に回転させるモーメントが作用しているが、上記回転モーメントにより、カム242及び集電靴215が移動しつつ、上方に(第三軌条10から離れる方向に)回転する。
【0110】
また、図9の拡大図に示すように、ガイド部材222に、移動ガイド面222tが形成されている。移動ガイド面222tは、可動枠282及び集電靴215の移動方向である水平方向に延在している。移動ガイド面222tは、可動枠282及び集電靴215の移動方向に平行な水平方向の面である。移動ガイド面222tは、可動枠282及び集電靴215が移動しているとき、カム湾曲面222aに接することにより、カム242を干渉する位置に配置されている。可動枠282及び集電靴215の移動しているとき、カム242に移動ガイド面222tが干渉することにより、カム242及び集電靴215を上方に(第三軌条10から離れる方向に)回転させるモーメントが発生する。
【0111】
上記のように、可動枠282及び集電靴215が図中の右方向へ移動しているとき、ガイド部材222がカム242を干渉することにより、集電装置204が架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まる。
【0112】
また、図9に示すように、集電装置204を集電靴215の回転軸241の軸方向に視たとき、集電靴215とともに回転するカム242の少なくとも一部は、集電靴215と重ならない。このように、カム242を、簡易な構成としつつ、ガイド部材222が干渉する構成にすることができる。
【0113】
また、フレーム214の可動枠282が水平方向に移動に伴い、図9に示すスライドライナー283Qがスライドレール283P上を水平方向に移動する。これにより、可動枠282がスムーズに水平方向へ移動することによって、集電装置204が架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まる。
【0114】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について、図15図18を参照しつつ説明する。第3実施形態において第1実施形態と異なる点は、集電装置の構成である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0115】
集電装置304は、図15に示すように、台車枠6に取り付けられている。集電装置304は、フレーム314と、集電靴315と、集電靴315を移動及び回転させることが可能な駆動機構312と、フレーム314の上方に配置された調整部材(調整機構)371とを有する。鉄道車両が第三軌条集電方式の路線に定置されているとき、図15に示すように、集電装置304は、第三軌条用車両限界Bに納まっているが、架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まっていない。集電靴315の一部が、架空線及び非電化区間の車両限界Aの外側に配置されている。図15では、集電靴315の先端部315bが、第三軌条10に接している。
【0116】
図15に示すように、台車枠6とフレーム314との間に、調整部材371が配置されている。調整部材371は、複数の調整板(調整材)372を有する。図15に示す複数の調整板372の厚みは同じ厚みであるが、複数の調整板372の厚さが異なってもよい。
【0117】
フレーム314は、調整部材371を介して、台車枠6に取り付けられている。フレーム314に、ガイド部材322およびシリンダ331が保持されている。集電靴315の回転軸341はガイド部材322とピストン先端のリンク部材313に接続されている。回転軸341に、集電靴315の基端部315aが取り付けられている。集電靴315は、回転軸341を中心に回転可能にガイド部材及びリンク部材313に保持されている。ガイド部材322はフレーム314に保持されており、リンク部材313はシリンダ331を介してフレーム314に保持されているため、集電靴315は、ガイド部材及びリンク部材313を介してフレーム314に回転可能に保持されているといえる。集電靴315は、移動可能にガイド部材及びリンク部材313に保持されている。図15に示すように、集電靴315は、押し付けバネ316により、上方から第三軌条10に押し付けられる。
【0118】
集電靴315の長手方向に、回転部材342とガイドピン343とが並んでいる。回転部材342は、回転軸341に取り付けられている。ガイドピン343は、集電靴315に取り付けられている。ガイドピン343は、回転部材342より集電靴315の先端部315bに近い。
【0119】
回転部材342は、集電靴315とともに、回転軸341を中心に回転する。集電装置304を集電靴315の回転軸341の軸方向に視たとき、図15に示すように、回転部材342及びガイドピン343が集電靴315と重なっている。回転部材342及びガイドピン343は周面を有する。回転部材342及びガイドピン343は、例えば円柱状である。
【0120】
回転部材342及びガイドピン343は、ガイド部材322の溝(後述する水平溝322S及び傾斜溝322T)に嵌まる。回転部材342及びガイドピン343は、ガイド部材322の溝(後述する水平溝322S及び傾斜溝322T)を移動する。
【0121】
駆動機構312は、駆動装置321と、ガイド部材322とを有する。駆動装置321は、シリンダ331と、ピストン332とを有する。駆動装置321は、例えば、エアシリンダでもよく、オイルシリンダでもよい。
【0122】
シリンダ331及びピストン332は、水平方向に配置されている。シリンダ331は、例えばフレーム314に取り付けられている。ピストン332は、シリンダ331内を、水平方向に移動する。
【0123】
ピストン332の先端部に、リンク部材313が接続されている。リンク部材313に、略細長状のリンク孔313aが形成されている。リンク孔313aに、回転部材342が嵌まっている。
【0124】
図15の拡大図に示すように、ガイド部材322に、水平溝322Sと、傾斜溝322Tとが形成されている。水平溝322S及び傾斜溝322Tは連通している。水平溝322Sは、傾斜溝322Tより第三軌条10に近い。ガイド部材322は、フレーム314の端部に配置されている。
【0125】
図15の拡大図に示すように、水平溝322Sは、水平方向に延在している。水平溝322Sは、上移動ガイド面322s1及び下移動ガイド面322s2に挟まれている。上移動ガイド面322s1は、ほぼ水平である。下移動ガイド面322s2は、上移動ガイド面322s1より長い。下移動ガイド面322s2において上移動ガイド面322s1に対向する部分は、略水平方であるが、上移動ガイド面322s1より第三軌条10に向かって長い部分は、第三軌条10に近付くにつれて下方に傾斜している。
【0126】
傾斜溝322Tは、第三軌条10から遠ざかるにつれて、下方に傾斜している。傾斜溝322Tは、上回転ガイド面322t1及び下回転ガイド面322t2に挟まれている。上回転ガイド面322t1及び下回転ガイド面322t2は、第三軌条10から遠ざかるにつれて、下方に傾斜している。
【0127】
ピストン332が水平方向に移動することにより、ピストン332とともにリンク部材313が水平方向に移動する。これに伴い、回転部材342及びガイドピン343が、ガイド部材322の溝(水平溝322S及び傾斜溝322T)を移動する(図15の拡大図参照)とともに、集電靴315が移動する。
【0128】
次に、集電装置304を、架空線及び非電化区間の車両限界Aに納める工程を、図15図17を参照しつつ説明する。
【0129】
鉄道車両が第三軌条集電方式の路線に定置されているとき、図15に示すように、回転部材342は水平溝322Sに配置されているが、ガイドピン343は、水平溝322Sより第三軌条10に近い位置に配置されている。回転部材342はリンク孔313aの上部に配置されている。集電靴305は、押し付けバネ316によって第三軌条10に向かって押し付けられている。
【0130】
ピストン332を後退させると、リンク部材313が、第三軌条10から離れる方向に、図中の右方向に移動する。これに伴い、回転部材342ガイドピン343及び集電靴315が、第三軌条10から離れる方向に、図中の右方向へ移動する(図16(a)参照)。回転部材342及びガイドピン343は、水平溝322Sを通って、図中の右方向へ移動する。回転部材342及びガイドピン343が水平溝322Sを通過しているとき、集電靴305は略水平である。
【0131】
ピストン332をさらに後退させると、リンク部材313が図中の右方向へさらに移動し、回転部材342が傾斜溝322Tに嵌まる(図16(b)参照)。回転部材342の位置が下がり、集電靴315の先端部315bが上がる。集電靴315は、第三軌条10から離れる。
【0132】
ピストン332をさらに後退させると、回転部材342が傾斜溝322Tを図中の右下方向へ進む(図17(a)参照)。回転部材342の位置が下がるにつれて、集電靴315の先端部315bが上がる。回転部材342が傾斜溝322Tを通過しているとき、集電靴315は図中の右方向へ移動しつつ、先端部315bが上がっていく。
【0133】
回転部材342がガイド部材322の底部332pまで進むと、集電靴305が止まる(図17(b)参照)。集電装置304が、架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まる。
【0134】
集電装置304が架空線及び非電化区間の車両限界Aに納まった状態から、集電靴315を第三軌条10に接するようにする場合、ピストン332を押し出す。リンク部材313は、第三軌条10に近付く方向へ、図中の左方向に移動する。リンク部材313の移動に伴い、回転部材342は傾斜溝322Tを図中の左上方向へ進み、ガイドピン343が水平溝322Sを図中の左方向へ進む。集電靴315は、図中の左方向へ進む。回転部材342の位置は上がり、集電靴315の先端部315bが下がる。
【0135】
ピストン332をさらに押し出すと、回転部材342が水平溝322Sに嵌まり(図16(a)参照)、回転部材342及びガイドピン343が水平溝322Sを図中の左方向に進む。集電靴315はほぼ水平な状態で、図中の左方向へ進む。ガイドピン343が水平溝322Sから出ると(図15参照)、押し付けバネ316により集電靴315は下方へ押し付けられ、第三軌条10に接する。
【0136】
以上のように、第3実施形態の集電装置は、第1実施形態の集電装置と同様に、既存の鉄道車両に搭載可能であり、且つ、既存の鉄道車両に搭載したときでも架空線及び非電化区間の車両限界Aに納めることが可能な構造である。集電装置304、架線集電装置2(図1参照)及び内部電源装置101(図1参照)を備えた鉄道車両は、集電装置304以外の構成が既存の構成であっても、架線集電方式及び非電化区間の路線と第三軌条集電方式の路線の両方に乗り入れ可能である。
【0137】
また、本実施形態では、回転部材342及びガイドピン343が、ガイド部材322の水平溝322S及び傾斜溝322Tを通過しているとき(図15図17参照)、集電靴315の2点が拘束されることにより、集電靴315の位置や角度が固定される。ピストン332の引き込み量及び押し出し量を変えることにより、回転部材342及びガイドピン343の位置関係が変化し、集電靴315の位置や角度(起ち上げ量)が変化する。これにより、集電靴315の移動及び回転が可能となり、集電靴315を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納めたり、第三軌条10に接するようにしたりすることができる。
【0138】
また、本実施形態では、回転部材342がガイド部材322の傾斜溝322Tを通過しているとき(図16(b)、図17(a)参照)、ガイド部材322が回転部材342を干渉することにより、回転部材342及び集電靴315を回転させる回転モーメントが発生する。これにより、集電靴315の移動及び回転が可能となり、集電靴315を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納めたり、第三軌条10に接するようにしたりすることができる。
【0139】
また、本実施形態では、図15に示すように、回転部材342とガイドピン343が集電靴315の長手方向に離れて配置され、回転部材342とガイドピン343がガイド部材322の水平溝322S及び傾斜溝322Tに嵌まる。図15に示すように、集電装置304を集電靴315の回転軸341の軸方向に視たとき、回転部材342及びガイドピン343が集電靴315と重なる。このような構成により、集電靴315が移動しながら回転する構成にすることができる。
【0140】
また、図15に示すように、台車枠6とフレーム314の間に、調整部材371が配置されている。調整部材371の調整板372の数を変えることにより、台車枠6と集電装置との間隔を短くしたり、長くしたりすることができる。例えば、車輪が磨耗することにより台車の位置が下がった場合、図18に示すように、台車枠6の位置が下がる。この場合、調整板372の数を減らすことにより、フレーム314及び集電靴315の位置を、台車の位置が下がる前と同様な高さにすることができる。これにより、集電靴315が第三軌条10に摺動可能な位置に配置される。
【0141】
また、上記では、調整部材371が複数の調整板372を有するが、調整部材371は上記構成に限られない。例えば、台車枠6とフレーム314の間に、1つの調整片だけが配置されていてもよい。また、厚さが異なる調整部材を準備しておき、台車の位置が下がった場合、台車が下がった量に応じた厚さの調整部材に変更してもよい。車体の位置が下がった場合、調整部材が不要であるときは、台車枠6にフレーム314を直接取り付けてもよい。
【0142】
また、図18に示す調整板372が板状であるが、調整板372の形状は板状に限られない。調整部材371の形状は、図18に示す形状に限られない。調整部材371は、形状が限定されない複数の調整材を有してもよい。
【0143】
また、上記では、集電装置304が調整部材371を有するが、集電装置304が調整部材371を有していなくてもよい。
【0144】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0145】
例えば、上述の第1実施形態において、フレーム14及び集電靴15は、図4及び図5に示すように、水平方向に対して傾斜した方向に移動する。しかし、フレーム14及び集電靴15は水平方向に移動してもよい。
【0146】
また、上述の第2実施形態において、フレーム214の可動枠282及び集電靴215が水平方向に移動する(図11図14参照)。しかし、可動枠282及び集電靴215は水平方向に対して傾斜した方向に移動してもよい。
【0147】
また、上述の第3実施形態において、集電靴315は水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に移動する(図15参照)。しかし、集電靴315は水平方向だけに移動してもよい。集電靴315は水平方向に対して傾斜した方向だけに移動してもよい。
【0148】
また、上述の第1実施形態において、集電装置4を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納める場合(図4及び図5参照)、フレーム14及び集電靴15が移動し、その後、フレーム14及び集電靴15が移動しながら集電靴15が回転する。集電靴15が第三軌条10に接するようにする場合、フレーム14及び集電靴15が移動しながら集電靴15が回転し、その後、フレーム14及び集電靴15が移動する。
しかし、フレーム14の移動、集電靴15の移動、及び、集電靴15の回転は上記順序に限られない。フレーム14及び集電靴15の移動と、集電靴15の回転とが、同時に行われたり、個別に行われたりしてもよい。フレーム14と集電靴15の移動、及び、集電靴15の回転の少なくとも一つが、繰り返し行われてもよく、一度だけ行われてもよい。これにあわせて、例えば、ガイド部材22の位置を変えたり、複数のガイド部材を配置したりしてもよい。
例えば、フレーム14及び集電靴15の移動が終わってから、集電靴15が回転する構造としてもよい。また、集電靴15の回転が終わってから、フレーム14及び集電靴15が移動する構造でもよい。また、フレーム14及び集電靴15が移動しているとき、集電靴15が常に回転する構造でもよい。
【0149】
また、上述の第2実施形態において、集電装置204を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納める場合(図11図14参照)、可動枠282及び集電靴215の移動、可動枠282及び集電靴215の移動と集電靴215の回転、可動枠282及び集電靴215の移動、並びに、可動枠282及び集電靴215の移動と集電靴215の回転が順に行われる。しかし、可動枠282の移動、集電靴215の移動、及び、集電靴215の回転は、上記順序に限られない。可動枠282及び集電靴215の移動と、集電靴215の回転とが、同時に行われたり、個別に行われたりしてもよい。また、可動枠282及び集電靴215の移動、及び、集電靴215の回転の少なくとも一つが、繰り返し行われてもよく、一度だけ行われてもよい。これにあわせて、例えば、ガイド部材222に形成する面を変えてもよい。
【0150】
また、上述の第3実施形態において、集電装置304を架空線及び非電化区間の車両限界Aに納める場合(図16参照)に示すように、集電靴315の移動後、集電靴315の移動及び回転が行われる。しかし、集電靴315の移動、及び、集電靴315の回転は、上記順序に限られない。集電靴315の移動、及び、集電靴315の回転が、同時に行われたり、個別に行われたりしてもよい。また、集電靴315の移動、及び、集電靴315の回転の少なくとも一方が、繰り返し行われてもよく、一度だけ行われてもよい。これにあわせて、例えば、ガイド部材322の溝の形状を変えてもよい。
【0151】
また、上述の第1実施形態において、図3に示すように、フレーム14がスライド部材13に取り付けられている。フレーム14は、スライド部材13を介して、駆動装置21のピストン32に取り付けられている。しかし、フレーム14がピストン32に直接取り付けられていてもよい。集電装置4がスライド部材13を有さなくてもよい。
【0152】
また、上述の第1実施形態において、集電靴15を移動させる駆動装置21は、シリンダ31とピストン32を備える(図2参照)。上述の第3実施形態において、集電靴315を移動させる駆動装置321は、シリンダ331とピストン332を備える(図14参照)。しかし、駆動装置は上記以外の構成でもよい。駆動装置は、例えば、モータを有するものでもよい。
【0153】
また、上述の第2実施形態において、集電靴215を移動させる駆動装置221は、モータ231と、駆動ネジ232と、スラストベアリング233とを備える(図9参照)。しかし、駆動装置はこれ以外の構成でもよい。駆動装置は、例えば、ピストンとシリンダを備えるものでもよい。
【0154】
また、上述の第1実施形態において、図3に示すように、回転部材42は、集電靴15と反対方向にのびている。しかし、回転部材42は、集電靴15に対して傾斜下方向にのびていてもよい。
【0155】
また、上述の第2実施形態において、カム242は、集電靴215の長手方向に対して傾斜している(図9参照)。しかし、カム242は、集電靴215の長手方向に対して傾斜していなくてもよい。
【0156】
また、上述の第1実施形態において、図2に示すように、フレーム14に、固定具51が挿入される長孔14mが形成されている。しかし、フレーム14における固定具51が挿入される孔は長孔でなくてもよい。この場合、スライド部材13に、固定具51が挿入される長孔が形成されていてもよい。変形例についても同様である。
【0157】
また、上述の第2実施形態において、図8に示すように、フレーム214の固定枠281に、固定具251が挿入される長孔281mが形成されている。しかし、固定枠281における固定具251が挿入される孔は長孔でなくもよい。この場合、梁9に、固定具が挿入される長孔が形成されていてもよい。
【0158】
また、上述の変形例1では、ガイド部材受11aとガイド部材22との間に調整部材71を配置することにより、台車の位置が下がっても、ガイド部材22が、回転部材42と干渉する位置に配置される。しかし、調整部材71を用いない方法を採用してもよい。例えば、ボルト等の固定具によりガイド部材22をガイド部材受11aに固定することとし、ガイド部材22又はガイド部材受11aに固定具が挿入される長穴を形成してもよい。長穴における固定具の位置を変えることにより、ガイド部材22の位置を調整することができる。
【0159】
また、上述の第1~3実施形態及び変形例1において、ガイド部材(22、222、322)は、集電靴(15、215、315)とともに回転する回転部材(42、242、342)を干渉する。しかし、ガイド部材(22、222、322)は、集電靴(15、215、315)を干渉してもよい。
【0160】
また、上述の第1~3実施形態及び変形例1において、集電靴(15、215、315)とともに回転する回転部材(42、242、342)は、集電靴(15、215、315)の回転軸(41、241、341)を中心に回転する。しかし、回転部材(42、242、342)は、集電靴(15、215、315)の回転軸(41、241、341)を中心に回転しなくてもよい。例えば、回転部材(42、242、342)は、集電靴(15、215、315)の回転軸(41、241、341)と平行な軸を中心に回転してもよい。
【0161】
また、上述の第1~3実施形態及び変形例1において、鉄道車両は、架線集電装置2(図1参照)と、本発明の第三軌条用集電装置(4、104、204、304)と、内部電源装置101(図1参照)とを備える。しかし、鉄道車両は、架線集電装置2(図1参照)と、本発明の第三軌条用集電装置(4、104、204、304)とを備え、内部電源装置101を備えなくてもよい。また、鉄道車両は、本発明の第三軌条用集電装置(4、104、204、304)と、内部電源装置101(図1参照)とを備え、架線集電装置2を備えなくてもよい。
【0162】
また、上述の第2実施形態において、図10に示す第1緩衝材284j及び第2緩衝材284kは、集電装置を前方からみたとき、図8に示すように、フレーム214の中央付近に配置されている。しかし、第1緩衝材284j及び第2緩衝材284kの位置は、フレーム214の中央付近でなくてもよい。例えば、第1緩衝材及び第2緩衝材は、フレーム214の可動枠282の両側に配置されていてもよい。第1緩衝材及び第2緩衝材は、フレーム214の可動枠282の両側とフレーム214の中央付近との合計3箇所に配置されていてもよい。また、第1緩衝材284j及び第2緩衝材284kが、フレーム214に配置されていなくてもよい。
【0163】
また、上述の第1実施形態において、集電装置4は、台車枠6に取り付けられている(図2参照)。上述の第3実施形態において、集電装置304は、台車枠6に取り付けられている(図14参照)。しかし、集電装置4、304は、台車枠6以外の部材に取り付けられてもよい。例えば、集電装置4、304が、軸箱に架け渡された梁(図8に示す梁9参照)に取り付けられてもよい。
【0164】
また、上述の第2実施形態において、集電装置204は、梁9に取り付けられている(図8参照)。しかし、集電装置204は、梁以外の部材に取り付けられていてもよい。例えば、集電装置204が、台車の一部(台車枠等)に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0165】
1 車体
2 架線集電装置
3 台車
4、104、204、304 集電装置
5 車輪
6 台車枠
10 第三軌条
11 保持部材
11a ガイド部材受
11s、11t ガイド孔
12、212、312 駆動機構
13 スライド部材
13s、13t 突出部
14、214、314 フレーム
14m 長孔
15、215、315 集電靴
15a、215a 集電靴の基端部
15b、215b 集電靴の先端部
21、221、321 駆動装置
22、222、322 ガイド部材
31、331 シリンダ
32、332 ピストン
41、241、341 回転軸
42、342 回転部材
51、251 固定具
61、216 ねじりバネ
62 バネ受
70 ボルト
71、371 調整部材(調整機構)
72、372 調整板
100 鉄道車両
101 内部電源装置(内部電源)
222s 第1回転ガイド面
222t 移動ガイド面
222u 第2回転ガイド面
222V カム収容部
222v 下壁
231 モータ
232 駆動ネジ
233 スラストベアリング
242 カム(回転部材)
242a カム湾曲面
281 固定枠
281F 固定部
281M 保持部
282 可動枠
283 スライド部材
322S 水平溝
322s1 上移動ガイド面
322s2 下移動ガイド面
322T 傾斜溝
322t1 上回転ガイド面
322t2 下回転ガイド面
500 集電装置懸架用ハリ
505 第三軌条用集電装置
510 第三軌条
A 架空線及び非電化区間の車両限界
B 第三軌条用車両限界
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
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