(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】構成要素の表面から保護層を制御下で除去するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20221020BHJP
C23C 16/02 20060101ALI20221020BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/02
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2020501202
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2018062384
(87)【国際公開番号】W WO2019011507
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-03-17
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520330386
【氏名又は名称】インフィコン・ホールディング・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】INFICON HOLDING AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアウス,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】クリストッフェル,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】スプリング,フィリップ
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-042496(JP,A)
【文献】特開平09-095772(JP,A)
【文献】特開2004-134690(JP,A)
【文献】特開2016-208034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/02
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成要素(10)の表面から保護層(3)を制御下で除去するための方法(14)であって、前記構成要素は、
基体(1)と、
前記基体を少なくとも部分的に被覆する中間層(2)と、
非晶体、特に非晶質非金属、特に非晶質セラミックを含み、少なくとも部分的に前記中間層を被覆する前記保護層(3)と
を備え、
前記方法は、
前記保護層(3)をエッチング媒体または溶媒(4)と接触させるステップ(11)と、
前記中間層(2)が露出するまで、前記エッチング媒体または溶媒(4)の作用下で前記保護層(3)を除去するステップ(12)と
を含み、
前記エッチング媒体または溶媒は、前記保護層の第1のエッチングまたは溶解速度および前記中間層の第2のエッチングまたは溶解速度を引き起こし、前記第1のエッチングまたは溶解速度は前記第2のエッチングまたは溶解速度よりも大きい、方法(14)。
【請求項2】
前記エッチング媒体または溶媒の作用下での前記保護層の前記除去するステップが、前記保護層の完全な除去まで実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エッチング媒体または溶媒が液体であり、前記方法が、
前記液体エッチング媒体または溶媒を使用して前記保護層を湿潤させるステップと、
前記保護層を前記液体エッチング媒体または溶媒中で溶解するステップと
をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記中間層(2)が、金属、金属酸化物、特にTiO2、ZnO、Nb2O3、ZrO2、Y2O3、またはTa2O5、金属窒化物、金属炭化物、金属フッ化物、金属塩化物、または金属ホウ化物のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記中間層(2)が結晶形態で提供される材料を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記保護層(3)が、非晶質金属酸化物、特に非晶質AlO3、非晶質金属窒化物、非晶質金属フッ化物、非晶質金属塩化物、非晶質金属炭化物、または非晶質金属ホウ化物から成る少なくとも1つのプライを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記保護層(3)が複数のプライを含み、隣接するプライの化学組成が異なることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記中間層(2)が、前記エッチング媒体もしくは溶媒(4)によってエッチングされ得ない材料を含むか、または、前記エッチング媒体もしくは溶媒によってエッチングされ得ない材料から成ることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記保護層(3)が非晶質Al2O3を含み、前記中間層(2)がTiO2、ZnO、Nb2O3、ZrO2、Y2O3、およびTa2O5のうちの少なくとも1つを含み、前記エッチング媒体または溶媒(4)が、
NaOH水溶液、
KOH水溶液、
NH4OH水溶液、
水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、
H2O2水溶液、
液体H2O、
ガス状H2O
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
構成要素(10)上の古い保護層(3)を新しい保護層(3’’)に交換する方法(15)であって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法(14)により前記古い保護層を除去するステップと、
前記新しい保護層を付与するステップと
を含む、方法(15)。
【請求項11】
前記新しい保護層を付与する前記ステップは、原子層堆積によって実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
加工片から層を除去するために設計されている薄膜プロセス設備を操作するための方法(20)であって、前記設備はプロセスチャンバを有し、前記プロセスチャンバまたは前記薄膜プロセス設備の別の構成要素は保護層を備え、前記方法は、
前記プロセスチャンバまたは前記他の構成要素に、基体、前記基体を少なくとも部分的に被覆する中間層、および、非晶体、特に非晶質非金属、特に非晶質セラミックを含み、前記中間層を少なくとも部分的に被覆する前記保護層を提供するステップ(21)であって、前記中間層は前記保護層に含まれない少なくとも1つの元素を含む、提供するステップ(21)と、
以下の2つのステップ、すなわち、
前記プロセスチャンバ内でプロセスガスを使用して除去プロセスステップを実行するステップ(23)であって、前記保護層が前記プロセスガスと接触する、実行するステップ(23)、および
前記少なくとも1つの元素に感受性がある分析方法により、前記プロセスチャンバ内の前記プロセスガスを分析するステップ(24)
を、前記プロセスガス中で前記少なくとも1つの元素が検出されるまで、繰り返し、同時に実行するステップと、
請求項10または11に記載の方法(15)を適用することにより、前記プロセスチャンバまたは前記他の構成要素上の前記保護層を新しい保護層と交換するステップと
を含む、方法(20)。
【請求項13】
薄膜プロセス設備において使用するための構成要素(10)であって、
基体(1)と、
前記基体を少なくとも部分的に被覆する中間層(2)と、
非晶体、特に非晶質非金属、特に非晶質セラミックを含み、少なくとも部分的に前記中間層を被覆する保護層(3)と
を備え、
前記保護層は、第1のエッチング媒体または溶媒(4)によって少なくとも前記中間層よりも速くエッチングまたは溶解され得、前記第1のエッチング媒体または溶媒は、以下の群、すなわち、
KOH水溶液、
NaOH水溶液、
NH4OH水溶液、
水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、
H2O2水溶液、
上記のエッチング溶液の混合物、
液体H2O、
ガス状H2O
に属する、構成要素(10)。
【請求項14】
前記保護層(3)が非晶質Al2O3を含み、前記中間層(2)はTiO2、ZnO、Nb2O3、ZrO2、Y2O3、およびTa2O5のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の構成要素。
【請求項15】
請求項13または14に記載の構成要素(10)の製造方法であって、
基体(1)を形成するステップと、
中間層(2)を前記基体に付与するステップと、
非晶体を含む保護層、特に非晶質非金属を含む保護層、特に非晶質セラミックを含む保護層(3)を前記中間層に付与するステップと
を含み、
前記保護層は第1のエッチング媒体または溶媒によって前記中間層よりも速くエッチングすることができ、前記第1のエッチング媒体または溶媒は、以下の群、すなわち、
KOH水溶液、
NaOH水溶液、
NH4OH水溶液、
水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、
H2O2水溶液、
上記のエッチング溶液の混合物、
液体H2O、
ガス状H2O
に属する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成要素の表面から保護層を制御下で除去するための方法に関する。本発明は、さらに、構成要素上の古い保護層を新しい保護層と交換する方法、保護層を有する構成要素を有する薄膜プロセス設備を操作する方法、薄膜プロセス設備において使用するための構成要素、および構成要素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな用途において、反応性プロセス媒体にさらされる構成要素は、保護層を使用してコーティングされる。したがって、例えば、半導体産業では、プロセスチャンバ内で使用されるステンレス鋼またはアルミニウム製の構成要素には、多くの場合、非常に反応性の高いプロセスガスおよびプラズマから保護するための耐食性の目標の層が設けられる。したがって、ウェハへの腐食生成物の蓄積および望ましくない二次反応が防止されることになる。したがって、例えば、アルミニウムから作られる部品が陽極酸化され、結果、非常に化学的に耐性のあるAl2O3(酸化アルミニウム)保護層が得られる。ステンレス鋼製の構成要素を、化学蒸着(CVD)を使用する方法を使用して、Al2O3を使用してコーティングして、ステンレス鋼からの鉄原子または鉄粒子の放出を防止することができる。
【0003】
保護層は、保護される構成要素よりもプロセス媒体に対してはるかに安定しているという点で区別されるが、保護層の寿命も、通常制限される。保護層は通常、プロセス媒体の影響下で不均質に除去される。保護層が臨界点において除去され、それにより保護層の寿命の終わりに到達する場合、特定の状況下で構成要素の基板から粒子が放出されるリスクがすでに存在する。保護層の保護効果が低下した場合、現在、構成要素全体を頻繁に交換する必要がある。保護層は、下にある部品の寿命をより長くすることを可能にするが、それにもかかわらず、層が部分的になくなった後、構成要素全体を交換するコストが生じる。
【0004】
まだ存在する保護層の残りの上に新しい保護層を付与することによる保護層の寿命の延長は、しばしば妨げられる。保護層がまだ存在する点における保護層の総層厚の増加は、基板への保護層の接着および保護層の形態などの重要な特性に悪影響を与える可能性がある。保護層がより厚くなる悪影響として、新しい層全体がより脱落しやすくなり得、保護効果が減少し、保護層部分が脱落することに起因して望ましくない粒子が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の少なくとも1つの問題を解決する方法または構成要素を提供することである。本発明のさらなる目的は、反応性プロセス媒体にさらされる構成要素の使用期間をより長くすることを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明により、請求項1に記載の方法により達成される。
本発明による方法は、構成要素の表面から保護層を制御下で除去するための方法である。それにより、構成要素は、
基体と、
基体を少なくとも部分的に被覆する中間層と、
本方法により除去されることになる前記保護層であって、非晶体、特に非晶質非金属、特に非晶質セラミックを含み、少なくとも部分的に中間層を被覆する、前記保護層と
を備える。
【0007】
本発明による方法は、
保護層をエッチング媒体または溶媒と接触させるステップと、
中間層が露出するまで、エッチング媒体または溶媒の作用下で保護層を除去するステップと
を含む。
【0008】
それにより、エッチング媒体または溶媒は、保護層の第1のエッチングまたは溶解速度および中間層の第2のエッチングまたは溶解速度を引き起こし、第1のエッチングまたは溶解速度は第2のエッチングまたは溶解速度よりも大きい。
【0009】
本発明による方法は、保護層内に基体を備える構成要素に適用され、中間層が、基体と保護層との間に配置され、本方法において使用されるエッチング媒体中で保護層よりも低速にエッチングされる。
【0010】
保護層は、加工片が除去プロセスステップにさらされるプロセスチャンバ内の反応性プロセス媒体、典型的にはガスまたはプラズマから構成要素を保護する機能を有する。この機能は、構成要素の寿命の間、持続する。構成要素は、特に、処理された加工片と比較して除去され得ず、長寿命であり得る。
【0011】
したがって、エッチング媒体または溶媒は、エッチング媒体または溶媒であり得る。エッチング媒体は、液体、例えばエッチング溶液であってもよく、またはガス状、例えばエッチング活性粒子を有するプラズマであってもよく、またはエッチングガス、例えば塩素ガスもしくはフッ素ガスであってもよい。エッチング媒体の代わりに、保護層を溶解することができる溶媒を本発明の範囲内で使用することができる。したがって、このとき、溶解速度は、エッチング速度ではなく、関連する特性である、すなわち、中間層は、溶媒によって保護層よりも低速に溶解する。溶媒は液体であってもよく、またはガス状であってもよい。1つの可能な溶媒は、例えば、液体水または水蒸気であり得る。エッチング媒体または溶媒、それぞれエッチング速度または溶解速度という用語はまた、これが文脈上合理的であり、かつそれが酸、塩基性、または中性媒体であるかが重要でない場合、以下、他のそれぞれの用語としても理解されるべきである。
【0012】
中間層は、エッチング媒体による保護層の除去中(エッチング溶液内での保護層の溶解中、または、溶媒内での保護層の溶解中)に、本発明による方法の範囲内で、エッチング媒体(エッチング溶液または溶媒)から基体を保護する機能を有する。この機能は、本発明による方法において、保護層の寿命の終わりに保護層を除去するための中心的な役割を果たす。中間層は、保護層が完全に溶解される瞬間、中間層の表面が、保護層と中間層との間の元の界面の形状を本質的に保持するように、エッチング媒体内で保護層よりも十分に低速にエッチングされることが可能であり得る。中間層は、さらに、基体と保護層との間の接着促進剤の機能を有することができる。
【0013】
中間層および保護層は2つの層であり、エッチング媒体または溶媒中のそれらのエッチング速度または溶解速度は異なる。この異なるエッチングまたは溶解速度は、複数の方法で実現することができる。中間層および保護層は、
化学組成、
原子近次構造、
微細構造
において異なり得る。
【0014】
原子近次構造は、例えば、非晶質構造または結晶構造によって定義することができる。例えば、保護層は非晶質構造を有することができ、中間層は結晶構造を有することができ、これらは他の点では同一の化学組成を有する。原子近次構造はまた、TiO2の場合、例えばルチル、アナターゼ、およびブルッカイト構造など、さまざまな結晶構造によって定義することができる。微細構造は、例えば、結晶の形状およびサイズによって、または単層または多層の層構造によって定義することができる。
【0015】
エッチング速度の条件は、以下のように説明することもできる。すなわち、エッチング溶液、保護層、および中間層の組み合わせは、エッチング溶液が保護層対中間層に関してX:1のエッチング選択性を有するように選択され、Xは少なくとも1より大きい。エッチング選択性は、例えば、10:1を超える、すなわちX>10であり得る。Xは100より大きくするか、または、1000より大きくすることもでき、これは、中間層が保護層の除去手順に対して実質的に不活性であり、結果、基体に悪影響を及ぼすことなく保護層を除去することができるように、中間層が形成されることを意味する。
【0016】
エッチング選択性が大きいほど、保護層の除去または溶解中に中間層が基体までエッチング除去され得るリスクが存在することなく、より薄い中間層を選択することができる。
【0017】
例えば、ガス分配ヘッド、基板ホルダ、電極、または加熱プレートが、本発明による方法を適用することができる構成要素として考慮される。さらに、ガスラインまたは同じくプロセスチャンバ全体が、少なくともプロセスガスにさらされるそれらの内面上で、中間層および保護層から作られる層システムによってコーティングされることが考えられる。すなわち、プロセスチャンバは、いずれの場合も同じくそのガス供給と共に、それ自体が中間層および保護層を有する構成要素である。
【0018】
非晶体、特に非晶質非金属、特に非晶質セラミックから作られる保護層には、保護層から剥がれる可能性のある結晶を含まないという利点がある。保護層は、例えば、原子層堆積(ALD)によって生成することができる。本方法には、複雑な3次元構造を有する構成要素、例えば貫通孔を有する構成要素を、規定数の原子層によって無方向にコーティングすることができるという利点がある。例えば、化学気相堆積、特にプラズマ化学気相堆積(PE-CVD)のためのプロセスチャンバにおいて使用されるガス分配ヘッド(いわゆるシャワーヘッド)は、原子層堆積によって、すべての側面、ならびに、保護層を備えた穴および空洞の内部に設けられる。原子層堆積は、薄い非晶体層の生成、特に非金属から成る薄い非晶体層の生成、および特にセラミックからの薄い非晶質層の生成に適している。
【0019】
保護層をエッチング媒体と接触させることは、エッチング媒体がエッチング溶液である場合、保護層をエッチング溶液によって湿潤させることにより行うことができる。保護層の湿潤は、例えば、エッチング溶液を噴霧することにより、または構成要素をエッチング溶液に部分的または完全に浸漬することにより行うことができる。
【0020】
中間層は、基体を完全に被覆する必要はない。中間層が基体を部分的に被覆していれば十分である。次いで、エッチング溶液は、基体が中間層によって保護されている基体の表面領域にのみ付与される。これは、例えば、エッチング溶液に部分的に浸漬することにより達成することができる。保護層は、中間層を完全に被覆する必要はない。
【0021】
特定の用途では、新しく生成される保護層の場合、プロセスチャンバでの使用中に反応性プロセス媒体にさらされる表面領域が保護層によって被覆されていれば、保護効果には十分である。また、構成要素を長時間使用した後、保護層が反応性プロセス媒体の作用によって、中間層を依然として部分的にのみ被覆するのに十分な時点において除去されるという状況が発生する可能性もある。特にこの状況では、本発明による方法は、完全になくなった保護層を有する点においてエッチング媒体による基体への損傷を防ぐことができるため、非常に有用である。
【0022】
中間層および保護層は、さまざまな方法で基体に付与することができる。特に、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、およびまたスプレーコーティングが、中間層および保護層を付与する方法として考慮される。
【0023】
本発明による方法には、古い保護層の除去中に基体が本質的に攻撃または変更されないという利点がある。除去ケミストリとの反応において、基体の材料が保護層と同様に振る舞う場合、保護中間層なしで基体も除去され、それにより構成要素の元の形状および/または形態が変更される。本発明による方法では、中間層は、基体がエッチング溶液によって損傷するのを確実に防止する。基体が金属から成るかまたは金属を含む場合、通常、金属はエッチング媒体と接触する場合に最も速くエッチングされるため、エッチング媒体と金属の間の保護障壁が重要である。
【0024】
したがって、本発明によって、それを使用することによって、保護層を制御下で構成要素の表面から除去することができる方法が提供される。
【0025】
本発明による方法の実施形態は、請求項2~9の特徴によって定義される。
本方法の一実施形態では、エッチング媒体または溶媒の作用下での保護層の除去は、保護層の完全な除去まで実行される。
【0026】
本方法の一実施形態では、エッチング媒体または溶媒は液体であり、本方法は、
液体エッチング媒体または溶媒を使用して保護層を湿潤させるステップと、
保護層を液体エッチング媒体または溶媒中で溶解するステップと
を含む。
【0027】
言及された2つのステップは、保護層をエッチング媒体と接触させ、例えばエッチング溶液であり得る液体エッチング媒体または溶媒を使用して保護層を除去する方法ステップの実施態様である。
【0028】
本方法の一実施形態では、中間層は、少なくとも1つの金属、金属酸化物、特にTiO2(酸化チタン)、ZnO(酸化亜鉛)、Nb2O3(酸化ニオブ)、ZrO2(酸化ジルコニウム)、Y2O3(酸化イットリウム)、またはTa2O5(酸化タンタル)、金属窒化物、金属炭化物、金属フッ化物、金属塩化物、または金属ホウ化物を含む。
【0029】
本方法の一実施形態では、中間層は、結晶形態で提供される材料を含む。
本方法の一実施形態では、保護層は、非晶質金属酸化物、特に非晶質Al2O3、非晶質金属窒化物、非晶質金属フッ化物、非晶質金属塩化物、非晶質金属炭化物、または非晶質金属ホウ化物から成る少なくとも1つのプライを含む。
【0030】
本方法の一実施形態では、保護層は複数のプライを含み、隣接するプライはその化学組成が異なる。
【0031】
本方法の一実施形態では、中間層は、エッチング媒体もしくは溶媒によってエッチングされ得ない材料を含むか、または、エッチング媒体によってエッチングされ得ない材料から成る。
【0032】
本方法の一実施形態では、保護層は非晶質Al2O3を含み、中間層はTiO2、ZnO、Nb2O3、ZrO2、Y2O3、およびTa2O5のうちの少なくとも1つを含み、エッチング媒体または溶媒は、
NaOH水溶液、
KOH水溶液、
NH4OH水溶液、
水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、
H2O2水溶液、
液体H2O、
ガス状H2O
のうちの少なくとも1つを含む。
【0033】
本方法の実施形態の特徴の組み合わせは、矛盾しない限り、必要に応じて可能である。
本発明はさらに、構成要素上の古い保護層を新しい保護層に交換するための、請求項10または11に記載の方法にも関する。
【0034】
構成要素上の古い保護層を新しい保護層に交換する本発明による方法は、保護層を除去するための、本発明による上述の方法によって、古い保護層を除去するステップと、新しい保護層を付与するステップとを含む。
【0035】
構成要素上の古い保護層を新しい保護層に交換する方法には、保護層の複数の寿命にわたって構成要素を再利用することができるという利点がある。下にある基板をも交換する必要なく、保護層を複数回交換することができる。
【0036】
本方法の一実施形態では、新しい保護層を付与するステップは、原子層堆積(ALD)によって実行される。
【0037】
したがって、コーティングされる表面の向きとは無関係に、保護層の非常に均質な層厚が達成される。
【0038】
本発明はさらに、薄膜プロセス設備を操作するための、請求項12に記載の方法にも関する。
【0039】
これは、加工片から層を除去するために設計された薄膜プロセス設備を操作する方法である。薄膜プロセス設備は、加工片への層の付与と加工片からの層の除去の両方のために設計することができる。薄膜プロセス設備は、少なくとも1つのプロセスチャンバを有する。プロセスチャンバまたは薄膜プロセス設備の別の構成要素は、保護層を備える。本方法は、
基体を有するプロセスチャンバまたは他の構成要素に、基体を少なくとも部分的に被覆する中間層、および、非晶体、特に非晶質非金属、特に非晶質セラミックを含み、中間層を少なくとも部分的に被覆する保護層を提供するステップであって、中間層は保護層に含まれない少なくとも1つの元素を含む、提供するステップと、
以下の2つのステップ、すなわち、
プロセスチャンバ内でプロセスガスを使用して除去プロセスステップを実行するステップであって、保護層がプロセスガスと接触する、実行するステップ、および
少なくとも1つの元素に感受性である分析方法により、プロセスチャンバ内のプロセスガスを分析するステップ
を、プロセスガス中で少なくとも1つの元素が検出されるまで、繰り返し、同時に実行するステップと、
保護層を交換するための本発明による上述の方法を適用することにより、プロセスチャンバまたは他の構成要素上の保護層を新しい保護層と交換するステップと
を含む。
【0040】
加工片への層の付与(堆積)および加工片からの層の除去(エッチング)のために設計された薄膜プロセス設備を操作する方法の1つの有利な効果は、保護層がその寿命の終わりに達したか否かを、本発明による中間層の適切な選択により検出することができることである。例えば、基体の材料がアルミニウムであり、かつ、保護層がAl2O3などのアルミニウム化合物から作られる場合、プロセスチャンバの保護層または別の構成要素が特定の点において完全に除去されており、したがって交換する必要があるか否かは、プロセスチャンバ内のチタンの化学分析により別の材料、例えばTiO2から作られる中間層によってin situで確立することができる。これは、アルミニウム上のAl2O3層およびアルミニウムの分析の場合にのみ困難である。この中間層(この例ではTiO2を含む)を、例えば質量分析計を使用して、この中間層に含まれる少なくとも1つの元素(この例ではチタン)のための真空システム上の検出装置と組み合わせて使用することに起因して、これによって、本発明の事例においてチタンイオンを確実に検索することができるが、Al2O3保護層の寿命の終わりを計量的に確認することができる、すなわち、チタンイオンが検出されるときは、直ちにAl2O3層を交換する必要がある。
【0041】
本発明はさらに、薄膜プロセス設備のプロセスチャンバにおいて使用するための請求項13または14に記載の構成要素に関する。
【0042】
本発明による構成要素は、
基体と、
基体を少なくとも部分的に被覆する中間層と、
保護層と
を備える。
【0043】
それにより、保護層は、非晶体、特に非晶質非金属、特に非晶質セラミックを含み、中間層を少なくとも部分的に被覆する。保護層は、第1のエッチング媒体または溶媒によって少なくとも中間層よりも速くエッチングまたは溶解することができ、第1のエッチング媒体または溶媒は、以下の群、すなわち、
KOH水溶液、
NaOH水溶液、
NH4OH水溶液、
水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、
H2O2水溶液、
上記のエッチング溶液の混合物、
液体H2O、
ガス状H2O
に属する。
【0044】
構成要素の一実施形態では、保護層は非晶質Al2O3を含み、中間層はTiO2、ZnO、Nb2O3、ZrO2、Y2O3、およびTa2O5のうちの少なくとも1つを含む。
【0045】
本発明はなおさらに、請求項15に記載の製造方法に関する。
これは、上記の本発明による構成要素の製造方法である。製造方法は、
基体を形成するステップと、
中間層を基体に付与するステップと、
非晶体を含む保護層、特に非晶質非金属を含む保護層、特に非晶質セラミックを含む予測層を中間層に付与するステップを含み、
保護層は第1のエッチング媒体または溶媒によって少なくとも中間層よりも速くエッチングすることができ、第1のエッチング媒体または溶媒は、以下の群、すなわち、
KOH水溶液、
NaOH水溶液、
NH4OH水溶液、
水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、
H2O2水溶液、
上記のエッチング溶液の混合物、
液体H2O、
ガス状H2O
に属する。
【0046】
基体を形成するステップは、例えば、フライス加工、旋削、穿孔、溶接などを含むことができる。
【0047】
層の組成に戻って、中間層と保護層との十分な接着を確保する場合、純金属、酸化物、窒化物、フッ化物、および炭化物などのさまざまな材料が、中間層として使用され得、プロセス条件に適しており、エッチング媒体と接触する補完的な特性を有すると言える。
【0048】
保護層および中間層の材料は、例えば以下の組み合わせに従って、エッチング媒体または溶媒に合わせて選択することができる。
【0049】
例えば、中間層はTiO2を含むかまたはTiO2から成ることができ、保護層は非晶質Al2O3を含むかまたはAl2O3から成ることができ、エッチング媒体は、4~10重量%、特に5重量%NaOHを有する水溶液中にあり得る。この組み合わせでは、保護層は中間層よりも速くエッチングされる。
【0050】
例えば、溶媒としての90°Cの高温H2O中で原子層堆積(ALD)を使用して生成されるTiO2層は、原子層堆積を使用して生成される同じ厚さのAl2O3層よりも約8倍長い寿命を示し、それゆえ、Al2O3コーティングされた基板の中間層として使用することができる。
【0051】
例えば、非晶質Al2O3層は10 M NH4OH水溶液中で25°Cにおいて0.5nm/分の範囲内のエッチング速度を有するが、Nb2O3またはTa2O5から作られる層は、同じ溶液中で500時間にわたって厚さの変化を一切示さない。25°Cの温度における10モルのNH4OHエッチング溶液をエッチング媒体として選択することによって、Al2O3から作られる保護層を妥当な速度で除去することができる。この場合、中間層は、エッチング媒体によってエッチングすることができない、Nb2O3またはTa2O5の材料から成り得る。
【0052】
保護層は、例えば、非晶質Al2O3から成り得、中間層はZnOから成り得る。保護層および中間層は、ALDを使用して堆積することができる。エッチング媒体は、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液であり得る。
【0053】
非晶質Al2O3は、pHが12で溶液の温度が60℃のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液でエッチングすると、ALDを使用して堆積したZnOよりも400倍高い選択性を示す。
【0054】
中間層は、例えば、TiO2から成り得る。中間層は、例えば、TiO2とAl2O3との交互のプライから作られる多層ナノラミネートであり得る。TiO2は、特にAl2O3とのナノラミネートとしても、1 Mの溶液の範囲内で、NaOHおよびまたKOHに対して強力な腐食保護を提供する。
【0055】
また、本発明の例示的な実施形態は、図面に基づいて以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】構成要素の表面から保護層を制御下で除去するための、本発明による方法の流れ図である。
【
図2.a)】方法ステップの前の状態の構成要素の一部の概略断面図である。
【
図2.b)】方法ステップの間の状態の構成要素の一部の概略断面図である。
【
図2.c)】方法ステップの間の状態の構成要素の一部の概略断面図である。
【
図2.d)】方法ステップの後の状態の構成要素の一部の概略断面図である。
【
図3】薄膜プロセス設備のプロセスチャンバにおいて使用するための本発明による構成要素の層構造の概略断面図を示す。
【
図4】古い保護層を新しい保護層に交換するための本発明による方法の流れ図である。
【
図5】薄膜プロセス設備を操作するための本発明による方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、構成要素に対して連続して実行される以下の2つの方法ステップ、すなわち、
保護層をエッチング媒体または溶媒と接触させるステップ(11)と、
中間層が露出するまで、エッチング媒体または溶媒の作用下で保護層を除去するステップ(12)と
を流れ図で示す。
【0058】
例示的な一実施形態では、接触させる方法ステップ(11)は、エッチング溶液を使用して保護層を湿潤させることにより実施され、保護層を除去する方法(12)は、保護層をエッチング溶液中で溶解することにより実施される。
【0059】
図2.a)は、構成要素10の表面近位領域の断面を示している。次に、保護層3で部分的に被覆された中間層2が、構成要素の基体1に付与される。保護層の状態は、反応性プロセス媒体の影響下での不均質な除去により生じる可能性がある例として示されている。矢印によって識別される点9において、保護層は中間層が露出するのに十分になくなっている。
【0060】
図2.b)は、保護層をエッチング媒体と接触させる方法ステップ11の後の構成要素10を示す。ここでは、エッチング溶液中に構成要素を少なくとも部分的に浸漬することにより、エッチング溶液4を使用して保護層3を湿潤させる実施形態の変形例を示している。
【0061】
図2.c)は、中間層が露出するまでエッチング媒体の作用下で保護層を除去する方法ステップ12の後の構成要素10’を示している。ここでは、保護層3をエッチング溶液中で溶解する実施形態の変形例を示している。中間層2と保護層3とのエッチング速度が大きく異なるため、中間層2は本質的に変化しないままである。基体1はエッチング溶液4と接触しない。
図2.c)は保護層を完全に除去した後の状態を示している。
【0062】
図2.d)は、新しい保護層3’’を付与する方法ステップ13、すなわち、古い保護層を新しい保護層に交換する方法の最後の方法ステップの後の構成要素10’’を示している。新しい保護層の付与は、例えば原子層堆積によって実行することができ、それにより保護層の非常に均質な層厚を達成することができる。この状態では、保護層の保護効果が再び確保され、構成要素は、例えば薄膜プロセス設備内で再び使用することができる。
【0063】
図3は、構成要素の表面近位領域の断面を示している。保護層3は、構成要素の周囲8と接触しており、中間層2上に載っている。中間層2は、構成要素の基体1を被覆し、保護層3と基体との間に位置する。保護層3は層厚d3を有する。中間層2は層厚d2を有する。一実施形態では、中間層2はTiO2から成り、保護層3は非晶質Al2O3から成る。中間層と保護層の両方は、原子層堆積によって付与することができる。原子層堆積は、例えば、中間層の層厚d2が20~100nmの範囲内で、例えば50nmの厚さで選択されることを可能にする。この場合、中間層内に穴または非常に薄い点が存在するリスクはない。保護層は、典型的には90~500nm、特に200~300nmの範囲内の厚さである。
【0064】
保護層の厚さは、材料、使用温度、および用途に応じて適合され得るる。厚い層はさらに剥離する可能性がある。コーティング時間は層の厚さに対して線形的に増加するため、厚い層は製造コストが高くなる。
【0065】
保護層がAl2O3で中間層がTiO2の場合、保護層を除去するためのエッチング溶液として5%NaOHを有する水溶液が使用される。基体1は、例えば、金属、特にアルミニウム、アルミニウム合金、またはステンレス鋼から成る。
【0066】
図4は、構成要素上の古い保護層を新しい保護層に交換する方法15の流れ図を示している。最初の2つの方法ステップ11、12のシーケンスは、流れ図の左端の括弧で示されているように、方法14に対応している。方法15は、新しい保護層を付与する方法ステップ13と共に完了する。新しい保護層の付与は、例えば原子層堆積によって実行することができる。
【0067】
さらに、新しい保護層を付与する方法として、化学蒸着、物理蒸着(PVD)、およびまたスプレーコーティングの他の方法が考慮される。
【0068】
図5は、プロセスチャンバおよび構成要素を有する薄膜プロセス設備を操作するための本発明による方法20の流れ図を示す。最初に、上記のような層構造を有する構成要素を提供する方法ステップ21が行われる。任意選択的に、構成要素がプロセスチャンバ自体ではない場合、破線のフレームで示されているように、プロセスチャンバ内に構成要素を設置するステップ22が続く。ループ内で、除去プロセスステップを実施するステップ23およびプロセスガスを分析するステップ24が繰り返され、分析するステップ24は、除去プロセスステップを実施するステップ23と同時に実施される。決定25「元素が検出されたか?」において、分析ステップにおいて少なくとも1つの元素が見つからなかった場合、方法は矢印「いいえ」に従い、元素が検出された場合は矢印「はい」に従う。最初の場合、方法ステップ23および24が繰り返される。後者の場合、古い保護層を新しい保護層に交換する方法15が後に続き、任意選択的に、構成要素がプロセスチャンバ自体ではない場合、破線枠で示すように、プロセスチャンバから構成要素を除去する方法ステップ26が事前に実施される。
【符号の説明】
【0069】
1 基体
2 中間層
3 保護層
4 エッチング媒体または溶媒(それぞれ、エッチング溶液)
8 周囲
9 保護層がなくなる点
10 構成要素
10’ 構成要素(保護層の除去後)
10’’ 構成要素(保護層が交換されている)
11 保護層をエッチング媒体または溶媒と接触させる方法ステップ
12 保護層を除去する方法ステップ
13 付与する方法ステップ
14 保護層を制御下で除去するための方法
15 古い保護層を新しい保護層に交換する方法
20 薄膜プロセス設備の操作方法
21 提供する方法ステップ
22 構成要素を設置する方法ステップ
23 除去プロセスステップを実行する方法ステップ
24 プロセスガスを分析する方法ステップ
25 「元素が検出されたか」を決定する→はい/いいえ
26 構成要素を除去する方法ステップ
d2 中間層の層厚
d3 保護層の層厚
終了 方法の終了点
開始 方法の開始点