(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤ
(51)【国際特許分類】
D07B 1/06 20060101AFI20221020BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20221020BHJP
C25D 5/10 20060101ALI20221020BHJP
C25D 7/06 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
D07B1/06 A
B60C9/00 K
C25D5/10
C25D7/06 U
(21)【出願番号】P 2020545790
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(86)【国際出願番号】 KR2019002258
(87)【国際公開番号】W WO2019177281
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0028848
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515084708
【氏名又は名称】ホンドク インダストリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】パク, ピョン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】パク, オク シル
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特許第5333331(JP,B2)
【文献】特開2011-219837(JP,A)
【文献】特表2015-511998(JP,A)
【文献】特公平07-008917(JP,B2)
【文献】特表2015-526605(JP,A)
【文献】特開2016-044370(JP,A)
【文献】国際公開第2016/182125(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0291467(KR,B1)
【文献】特表2014-519435(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2002-0078168(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2002-0055203(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1877890(KR,B1)
【文献】特表2015-510554(JP,A)
【文献】韓国特許第1982-0001983(KR,B1)
【文献】特開2009-215673(JP,A)
【文献】特開昭54-089940(JP,A)
【文献】特開昭55-071887(JP,A)
【文献】特開2013-053359(JP,A)
【文献】特開2018-119190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00 - 19/12
C25D 5/00 - 7/12
D07B 1/00 - 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車タイヤ補強材として使用されるビードワイヤであって、
拡散熱処理過程を経ず、電気メッキを介して形成されたメッキ層を含んでなり、
前記メッキ層は、三元系メッキ層からなり、
前記メッキ層は、40ないし80重量%の銅、1ないし40重量%のコバルト、および1ないし20重量%のリンを含むことを特徴とする耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤ。
【請求項2】
前記メッキ層の厚みは、0.005ないし2.0μmであることを特徴とする請求項1
に記載の耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤ。
【請求項3】
前記メッキ層の銅は、第1電気メッキ槽で電気メッキされて形成され、
前記メッキ層のコバルトは、前記第1電気メッキ槽を経た後、第2電気メッキ槽で電気メッキされて形成されることを特徴とする請求項1
に記載の耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤ。
【請求項4】
前記第1電気メッキ槽及び前記第2電気メッキ槽に使用されるメッキ液は、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸のメッキ液のうちいずれか1以上を含むことを特徴とする請求項
3に記載の耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤ。
【請求項5】
前記第1電気メッキ槽のメッキ液は、前記銅の金属塩として使用され、
前記銅の金属塩濃度は、20ないし150g/Lであり、
前記第2電気メッキ槽のメッキ液は、前記コバルトの金属塩として使用され、
前記コバルトの金属塩濃度は、1ないし20g/Lであることを特徴とする請求項
4に記載の耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤ。
【請求項6】
前記第1電気メッキ槽及び前記第2電気メッキ槽の電気メッキ温度は、20℃ないし60℃であることを特徴とする請求項
5に記載の耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤに係り、さらに詳細には、電気メッキ方式で、銅及びコバルトのメッキ層を形成させ、耐酸化性、及びタイヤゴムとの時効接着力を向上させた耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車タイヤのビード部に埋め込まれるビードワイヤは、ゴムとの接着力を向上させるために、主に、化学メッキ法または置換メッキ法で、銅とスズとの合金をワイヤ表面にメッキさせる。青銅にメッキされたビードワイヤとゴムとの接着力は、青銅中の銅成分と、ゴム中の硫黄との結合に左右されると知られているが、そのように、青銅にメッキされたビードワイヤが硬化(加硫)される間、ゴムとビードワイヤとの結合力は、2つの材料の接触部分において、青銅とゴムとの化学的反応により、漸次的に増大することになる。
【0003】
ビードワイヤとゴムとの高い接着力を得るためには、硬化期間の間、接着反応の速度を適切に制御しなければならない、そのような接着反応の速度を制御するために、銅に適切な比率のスズが含有された青銅でビードワイヤをメッキすることになる。
【0004】
しかし、ビードワイヤを、そのような化学メッキまたは置換メッキで作製する場合、次のような問題点がある。
【0005】
化学メッキ方式または置換メッキ方式で青銅メッキされたビードワイヤと、タイヤゴムとの接着力は、加硫初期に比べ、経時的にさまざまな要因により、漸次低下することになる。そのような接着力低下の主な要因としては、タイヤ走行中、タイヤに加えられる反復的な圧縮及び引っ張り荷重、外部によって加えられる甚だしい熱気、及び湿気状況を挙げることができ、そのような水分や酸素により、ゴムとビードワイヤとの接着性の低下が発生することになる。
【0006】
また、ビードワイヤは、製造後、タイヤ製造のために、タイヤ製造場所まで運搬されなければならない。ビードワイヤ運搬過程を見れば、
図1のように、80RH%以上の相対湿度条件が導き出されるが、そのような環境に10日以上露出される場合、製品隣近の気化した湿気が温度差によって液化される結露現象(結露点以下に冷却され、絶対湿度が飽和水蒸気量を超える)が発生し、ビードワイヤ表面が酸化されたり、接着力が低下したりしてしまうという問題点がある。
【0007】
それと共に、
図2Aを参照すれば、従来の化学メッキ方式または置換メッキ方式で青銅メッキされたメッキ層20は、ワイヤ10の表面の深いところまでメッキ層20が形成されず、メッキされていない表面(bare)が発生してしまう。さらに具体的には、
図2Bを参照すれば、化学メッキ方式または置換メッキ方式でワイヤ10表面に青銅メッキ層20を形成すると、メッキ層20が均一に形成されず、部分的にメッキ層20の差が発生してしまう。また、ワイヤ10表面の深いところには、メッキ層が全く形成されていない表面(bare)が発生することもある。
【0008】
メッキされていない鉄素地金属(ワイヤ)が残っている場合、ゴムとの加硫時、円滑な接着界面が形成されず、ゴム接着力が不良であるだけではなく、水分や酸素のような外部環境によって、メッキされていない表面が腐食されやすく、ゴムとビードワイヤとの接着性の低下(及び時効接着力低下)が発生するという問題点がある。
【0009】
青銅にメッキされたビードワイヤの場合、前述の問題点を解決するために、メッキ工程後、キシレン(xylene)などを溶剤として、有機溶剤コーティングを行うことになるが、環境有害物質であるキシレン(xylene)の使用により、環境が汚染される問題点がある。環境汚染問題を防止するために、排出設備のような環境防止設備を使用することができるが、それは、製造コスト的に費用が上昇してしまう問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述の問題点を解決するために創出されたものであり、さらに詳細には、電気メッキ方式で、銅及びコバルトのメッキ層を形成させ、耐酸化性、及びタイヤゴムとの時効接着力を向上させた耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の問題点を解決するための、本発明の耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤは、電気メッキを介して形成されたメッキ層を含んでなり、前記メッキ層は、40ないし99重量%の銅、1ないし40重量%のコバルトを含むことを特徴とするのである。
【0012】
前述の問題点を解決するための、本発明の耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤの前記メッキ層は、第3元素をさらに含み、前記第3元素は、1ないし20重量%のリンによってなることが望ましい。
【0013】
前述の問題点を解決するための、本発明の耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤの前記メッキ層は、第3元素をさらに含み、前記第3元素は、ニッケル、インジウム、ビスマス、亜鉛、スズ、マンガン、モリブデンのうちいずれか1元素であり、前記第3元素は、1ないし20重量%であることが望ましい。
【0014】
前述の問題点を解決するための、本発明の耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤの前記メッキ層の厚みは、0.005ないし2.0μmであることが望ましく、前記メッキ層の銅は、第1電気メッキ槽で電気メッキされて形成され、前記メッキ層のコバルトは、前記第1電気メッキ槽を経た後、第2電気メッキ槽で電気メッキされて形成されることが望ましい。
【0015】
前述の問題点を解決するための、本発明の耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤの前記第1電気メッキ槽及び前記第2電気メッキ槽に使用されるメッキ液は、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸のメッキ液のうちいずれか1以上を含むことが望ましく、前記第1電気メッキ槽のメッキ液は、前記銅の金属塩として使用され、前記銅の金属塩濃度は、20ないし150g/Lであり、前記第2電気メッキ槽のメッキ液は、前記コバルトの金属塩として使用され、前記コバルトの金属塩濃度は、1ないし20g/Lであることが望ましい。
【0016】
前述の問題点を解決するための、本発明の耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤの前記第1電気メッキ槽及び前記第2電気メッキ槽の電気メッキ温度は、20℃ないし60℃であることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、電気メッキ方式で銅及びコバルトのメッキ層を形成させたビードワイヤに係り、電気メッキ方式を利用し、銅及びコバルトのメッキ層を形成することにより、メッキされていない表面(bare)がない緻密なメッキ層を形成させることができ、それを介して、耐酸化性、及びタイヤゴムとの時効接着力を向上させることができる長所がある。
【0018】
また、本発明は、電気メッキ方式を介して、コバルトでメッキ層を形成させることにより、耐酸化性及び時効接着力を向上させることができ、同時に、ビードワイヤメッキ層の含量を低減させ、製造コストを節減することができる長所がある。
【0019】
また、本発明は、電気メッキ方式を介して、コバルトでメッキ層を形成させることにより、有機溶剤コーティング工程が不要であり、それを介して、環境汚染を防止することができ、ビードワイヤ製造コストを節減することができる長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ビードワイヤ運搬過程の温度及び湿度条件を示す図である。
【
図2A】従来の化学メッキまたは置換メッキによるメッキ層表面を示す図である。
【
図2B】従来の化学メッキまたは置換メッキによるメッキ層表面を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態によるメッキ層の元素配列の模式図を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態よる、電気メッキを介して形成された銅及びコバルトのメッキ層の表面を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態による、第1電気メッキ槽を介して銅を電気メッキする第1電気メッキ段階を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態による、第2電気メッキ槽を介してコバルトを電気メッキする第2電気メッキ段階を示す図面である。
【
図7】本発明の実施形態による、耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤ製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態による、電気メッキでの直流電気メッキを示す図面である。
【
図9】本発明の実施形態による、電気メッキでのパルス電気メッキを示す図面である。
【
図10】本発明の実施形態による、耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤと、従来のビードワイヤとを比較した実験結果表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤに係り、電気メッキ方式で銅及びコバルトのメッキ層を形成させ、耐酸化性、及びタイヤゴムとの時効接着力を向上させた耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤに関する。以下、本発明の望ましい実施例について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
本発明の実施形態による、耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤは、電気メッキを介して形成されたメッキ層120を含んでなるものである。
【0023】
前記メッキ層120は、ワイヤ110(または、スチールワイヤ)を電気メッキして形成されるものであり、前記ワイヤ110に前記メッキ層120が形成される。
図3を参照すれば、前記メッキ層120は、電気メッキを介して形成されたものであり、40ないし99重量%の銅121、1ないし40重量%のコバルト122を含んでもよい。
【0024】
ここで、望ましくは、前記銅121は、40ないし80重量%であってもよく、前記コバルト122は、1ないし40重量%であってもよい。そのように、電気メッキを介して、前記銅121と前記コバルト122とによって前記メッキ層120を形成すれば、従来の青銅メッキ(銅、スズ)によるメッキ層に比べ、耐酸化性及び時効接着力が向上したメッキ層を形成することができる。
【0025】
また、前記コバルト122を電気メッキし、前記メッキ層120を形成させることにより、従来の化学メッキまたは置換メッキで使用する銅の量を10ないし70重量%ほど減らすことができる長所があり、それを介して、メッキ層の含量を低減させることができる長所がある(また、コバルトの原子量は、銅、スズに比べ小さいために、スズの代わりにコバルトを使用することにより、メッキ層の含量を低減させることもできる)。
【0026】
本発明の実施形態による前記メッキ層120は、前記銅121と前記コバルト122とからなる二元系メッキ層として使用されることが望ましいが、それに限定されるものではない。例えば、前記メッキ層120は、前記銅121及び前記コバルト122と共に第3元素を使用しつつ、三元系メッキ層であってもよい。
【0027】
具体的には、前記メッキ層120は、第3元素をさらに含んでもよく、前記第3元素は、1ないし20重量%のリンであってもよい。また、前記第3元素は、ニッケル、インジウム、ビスマス、亜鉛、スズ、マンガン、モリブデンのうちいずれか1元素であってもよく、前記第3元素は、1ないし20重量%であってもよい。
【0028】
そのように、前記メッキ層120に、非金属物質である前記リン成分を合金処理したり、金属成分であるニッケル、インジウム、ビスマス、亜鉛、スズ、マンガン、モリブデンを合金処理したりすれば、同種原子間親和力よりも、異種原子間親和力の方が強い非晶質(amorphous)メッキ層を形成することができる。そのようなメッキ層を介して、耐酸化性と時効接着力とを顕著に向上させることができるのである。
【0029】
具体的には、電気メッキ方式で、メッキ層に非金属物質である前記リン成分を合金処理するか、あるいは金属成分であるニッケル、インジウム、ビスマス、亜鉛、スズ、マンガン、モリブデンを合金処理すれば、同種原子間親和力よりも、異種原子間親和力の方が強い非晶質メッキ層が形成される。それは、前記メッキ層120にさらに緻密な組織を形成させることができ、それを介して、複雑な凹凸形状を有するスチールワイヤにメッキされていない表面(bare表面)を減らすことができるのである。
【0030】
前述のように、前記メッキ層120は、前記銅121及び前記コバルト122の二元系メッキ層であってもよく、前記銅121、前記コバルト122、前記第3元素の三元系メッキ層であってもよい。ただし、それに限定されるものではなく、必要によっては、前述の前記第3元素のうち複数個を同時に使用しつつ、前記メッキ層120を形成させることもできる。
【0031】
前記メッキ層120の厚みは、0.005~2.0μmであってもよい。従来の化学メッキ方式または置換メッキ方式は、銅・スズの2種以上の成分をメッキさせるために、錯化剤及び還元剤を使用しなければならないが、そのような方法は、メッキ速度が顕著に遅く、産業現場に適用し難い問題があった。しかし、本発明は、電気メッキを介してメッキすることにより、2種以上の成分を適切なメッキ速度でメッキすることができ、それを介して、2種以上の成分がメッキされた前記メッキ層120の厚みを0.005ないし2.0μmにすることができる(ここで、望ましくは、前記メッキ層120の厚みは、0.1ないし2.0μmであってもよく、0.01ないし2.0μmであってもよい)。
【0032】
本発明の実施形態による前記メッキ層120は、電気メッキを介して形成されるが、
図4を参照すれば、電気メッキ方法を使用してメッキ層を形成する場合、従来の化学メッキまたは置換メッキと比較して、緻密なメッキ層を形成することができる。一般的に、スチールワイヤは、表面に複雑な凹凸形状を有するが、従来の化学メッキまたは置換メッキの場合、複雑な凹凸形状により、表面がメッキされていない場合(bare表面)が発生する(
図2A及び
図2Bを参照)。しかし、本発明は、電気メッキ方式を介して、非晶質メッキ層を形成させることにより、メッキされていない表面(bare表面)を最小化させることができ、それを介して、ビードワイヤの耐酸化性及び時効接着力を高めることができる(
図2A及び
図4は、ビードワイヤのメッキ層表面に対して、FE-SEMを使用して、メッキ層がワイヤ凹凸内部まで均一に形成されているか否かということを観察した後、EDX定性分析を実施して得られた結果である)。
【0033】
電気メッキを介して、前記メッキ層120を形成する過程について述べれば、次の通りである。
【0034】
前記ワイヤ110は、電気メッキ槽を通過しながら、電気メッキされる。
図5を参照すれば、前記メッキ層120の前記銅121は、第1電気メッキ槽130で電気メッキされて形成され、
図6を参照すれば、前記メッキ層120の前記コバルト122は、前記第1電気メッキ槽130を経た後、第2電気メッキ槽140で電気メッキされて形成されるのである。すなわち、前記メッキ層120の前記銅121と前記コバルト122は、それぞれ電気メッキ方式を介して形成されるのである。
【0035】
まず、前記第1電気メッキ槽130を通過させながら、前記ワイヤ110を電気メッキする。前記第1電気メッキ槽130の入出口に設けられた第1カソードローラ132(cathode roller)を介して、前記ワイヤ110に負極をかけ、前記第1電気メッキ槽130に浸漬された第1正極板131(anode)に正極を印加して回路を構成する。前記第1電気メッキ槽130にメッキ液が満たされながら電流が印加されれば、メッキが進められる。
【0036】
このとき、前記第1電気メッキ槽130に使用されるメッキ液は、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸のメッキ液のうちいずれか1以上を含んでもよく、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸からなるメッキ液は、銅の金属塩として使用されてもよい。すなわち、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸のうちいずれか1以上を含んでなるメッキ液は、銅を含む化合物からなるのである。そのように、銅を含む化合物を介して、前記第1電気メッキ槽130で電気メッキを進めれば、前記銅121を含むメッキ層を形成させることができるのである。
【0037】
ここで、前記銅の金属塩濃度は、20ないし150g/Lであることが望ましい。前記銅の金属塩濃度が低すぎれば(20g/Lより低ければ)、前記ワイヤ110に析出するメッキ速度が緩衝速度より速くなり、バーニング(burning)が発生することもある。また、前記銅の金属塩濃度が過度に高ければ(150g/Lより高ければ)、メッキ液内で金属塩が析出し、メッキ液が不安定になってしまうために、前記銅の金属塩濃度は、20g/L以上150g/L未満であることが望ましい。ただし、メッキ液の濃度は、それに限定されるものではなく、必要により、変形されて使用されるということは、言うまでもない。
【0038】
また、従来の化学メッキ方式または置換メッキ方式は、500℃以上の拡散熱処理過程を経なければならなかったが、そのような高温の拡散熱処理では、ビードワイヤの強度低下が発生することになる問題点がある。しかし、電気メッキは、高温の拡散熱処理過程なしに、20℃ないし60℃の温度で実施可能であり、ビードワイヤの強度低下を防止することができる長所がある。それにより、前記第1電気メッキ槽130の電気メッキ温度は、20℃ないし60℃であることが望ましい(電気メッキの温度が60℃以上である場合、メッキ液内でスラッジ(sludge)が析出してしまい、メッキ層が不安定になってしまうため、前記第1電気メッキ槽130の電気メッキ温度は、20℃ないし60℃であることが望ましい)。
【0039】
前記第1電気メッキ槽130で電気メッキされた前記ワイヤ110は、前記第2電気メッキ槽140を通過しながら電気メッキされ、それを介して、前記メッキ層120にコバルトを電気メッキすることができる。前記第2電気メッキ槽140を介した電気メッキは、前記第1電気メッキ槽130の過程と同一になされ、銅の金属塩の代わりに、コバルトの金属塩を使用することになる。
【0040】
具体的には、前記第2電気メッキ槽140の入出口に設けられた第2カソードローラ142(cathode roller)を介して、前記ワイヤ110に負極をかけ、前記第2電気メッキ槽140に浸漬された第2正極板141(anode)に正極を印加して回路を構成する。前記第2電気メッキ槽140にメッキ液が満たされながら電流が印加されれば、メッキが進められる。
【0041】
このとき、前記第2電気メッキ槽130に使用されるメッキ液は、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸のメッキ液のうちいずれか1以上を含んでもよく、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸からなるメッキ液は、コバルトの金属塩として使用されてもよい。すなわち、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸のうちいずれか1以上を含んでなるメッキ液は、コバルトを含む化合物からなるのである。そのように、コバルトを含む化合物を介して、前記第2電気メッキ槽140で電気メッキを進めれば、前記コバルト122を含むメッキ層を形成させることができるのである。
【0042】
ここで、前記コバルトの金属塩濃度は、1ないし20g/Lであることが望ましい。前記コバルトの金属塩濃度が低すぎれば(1g/Lより低ければ)、前記ワイヤ110に析出するメッキ速度が緩衝速度より速くなり、バーニング(burning)が発生することもある。また、前記コバルトの金属塩濃度が過度に高ければ(20g/Lより高ければ)、メッキ液内で金属塩が析出し、メッキ液が不安定になってしまうため、前記コバルトの金属塩濃度は、1g/L以上20g/L未満であることが望ましい。ただし、メッキ液の濃度は、それに限定されるものではなく、必要により、変形されて使用されるということは、言うまでもない。
【0043】
前記第2電気メッキ槽130の電気メッキ温度は、20℃ないし60℃であることが望ましく、それを介して、高温の熱処理過程で発生するビードワイヤの強度低下を防止することができる長所がある(電気メッキの温度が60℃以上である場合、メッキ液内でスラッジ(sludge)が析出してしまい、メッキ層が不安定になってしまうため、前記第2電気メッキ槽140の電気メッキ温度は、20℃ないし60℃であることが望ましい)。
【0044】
前記第1電気メッキ槽130及び前記第2電気メッキ槽140には、第1整流器133及び第2整流器143などを使用することができ、該整流器は公知技術であり、詳細な説明は省略する。
【0045】
前記第1電気メッキ槽130及び前記第2電気メッキ槽140で電気メッキを進めるために、電流を印加するとき、電流密度は、1ないし50A/dm2であることが望ましく、電気メッキ時間は、10秒以下が望ましい(0秒を含まず)。また、前記第1電気メッキ槽130と前記第2電気メッキ槽140とに印加される電流は、直流方式またはパルス方式を使用することが望ましい。
【0046】
具体的には、前記ワイヤ110に負極をかける方式は、
図8のような生産性が高い直流方式を使用することができ、表面が非常に粗いワイヤの場合、凹凸部の均一なメッキ層形成のために、
図9のように、周期的に負極を付与するパルス方式を使用した方がよい。
【0047】
電気メッキによって形成された前記メッキ層120の厚みは、0.005ないし2.0μmに形成されるが、そのような厚みを維持するために印加される電流の密度は1ないし50A/dm2、時間は10秒以下にした方がよい(0秒を含まず)。ただし、電流の密度は、それらに限定されるものではなく、ビードワイヤの一般的な付着量を達成するために、電流密度を50A/dm2以上にすることもでき、適切な時間に調節することもできる。
【0048】
本発明の実施形態による、耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤの製造方法について、具体的に述べれば、次の通りである。
【0049】
図7を参照すれば、耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤ製造方法は、ワイヤ準備段階(S100)、ワイヤ配置段階(S200)、電気メッキ段階(S300)を含む。
【0050】
前記ワイヤ準備段階(S100)は、電気メッキを施す前記ワイヤ110を加工する段階である。前記ワイヤ110は、電気メッキ前に伸線加工及び熱処理されてもよい。また、塩酸溶液を介して、酸洗浄されてもよい。前記ワイヤ準備段階(S100)は、前記ワイヤ110を電気メッキする前の準備段階であり、前述の伸線加工、熱処理、酸洗浄を含んでもよいが、前記ワイヤ準備段階(S100)は、それらに限定されるものではなく、電気メッキ前に必要な過程があれば、他の過程も含まれてもよいことは、言うまでもない。
【0051】
前記ワイヤ配置段階(S200)は、前記ワイヤ110を電気メッキするために前記ワイヤ110を配置する段階である。前記ワイヤ110は、前記電気メッキ槽を通過しながら電気メッキされるが、前記ワイヤ配置段階(S200)は、前記ワイヤ110が前記電気メッキ槽を通過するように配置する段階である。
【0052】
前記電気メッキ段階(S300)は、前記電気メッキ槽に電流を印加し、前記電気メッキ槽を通過させて前記ワイヤ110を電気メッキする段階である。そのような電気メッキ方法を介して、40ないし99重量%の銅121、1ないし40重量%のコバルト122を含んでなる前記メッキ層120が形成されるのである。
【0053】
ここで、望ましくは、前記銅121は、40ないし80重量%であってもよく、前記コバルト122は、1ないし40重量%であってもよい。そのように、電気メッキを介して、前記銅121及び前記コバルト122で前記メッキ層120を形成すれば、従来の青銅メッキ(銅、スズ)によるメッキ層に比べ、耐酸化性及び時効接着力が向上したメッキ層を形成することができる。
【0054】
前記メッキ層120は、前記銅121と前記コバルト122とからなる二元系メッキ層として使用されることが望ましいが、それに限定されるものではない。例えば、前記メッキ層120は、前記銅121及び前記コバルト122と共に第3元素を使用しつつ、三元系メッキ層であってもよい(このとき、前記第3元素も、電気メッキを介して形成されるのである)。
【0055】
具体的には、前記メッキ層120は、第3元素をさらに含んでもよく、前記第3元素は、1ないし20重量%のリンであってもよい。また、前記第3元素は、ニッケル、インジウム、ビスマス、亜鉛、スズ、マンガン、モリブデンのうちいずれか1元素であってもよく、前記第3元素は、1ないし20重量%であってもよい。
【0056】
前記メッキ層120の厚みは、0.005~2.0μmであってもよい。従来の化学メッキ方式または置換メッキ方式は、銅・スズの2種以上の成分をメッキさせるために、錯化剤及び還元剤を使用しなければならないが、そのような方法は、メッキ速度が顕著に遅く、産業現場に適用し難い問題があった。しかし、本発明は、電気メッキを介してメッキすることにより、2種以上の成分を適切なメッキ速度でメッキすることができ、それを介して、2種以上の成分がメッキされた前記メッキ層120の厚みを0.005ないし2.0μmにすることができる(ここで望ましくは、前記メッキ層120の厚みは、0.1ないし2.0μmであってもよく、0.01ないし2.0μmであってもよい)。
【0057】
図7を参照すれば、前記電気メッキ段階(S300)は、第1電気メッキ段階(S310)と第2電気メッキ段階(S330)とを含んでもよい。前記第1電気メッキ段階(S310)は、前記ワイヤ110を、銅を含む金属塩を介して、前記第1電気メッキ槽130で電気メッキする段階であり、前記第2電気メッキ段階(S330)は、前記第1電気段階(S310)を経た前記ワイヤ110を、コバルトを含む金属塩を介して、前記第2電気メッキ槽140で電気メッキする。すなわち、前記メッキ層120の銅121は、前記第1電気メッキ槽130で電気メッキされて形成され、前記メッキ層120のコバルト122は、前記第2電気メッキ槽140で電気メッキされて形成されるのである。
【0058】
具体的には、前記第1電気メッキ段階(S310)は、前記第1電気メッキ槽130を通過させながら、前記ワイヤ110を電気メッキする。前記第1電気メッキ槽130の入出口に設けられたカソードローラ132(cathode roller)を介して、前記ワイヤ110に負極をかけ、前記第1電気メッキ槽130に浸漬された第1正極板131(anode)に正極を印加して回路を構成する。前記第1電気メッキ槽130にメッキ液が満たされながら電流が印加されれば、メッキが進められる。
【0059】
このとき、前記第1電気メッキ槽130に使用されるメッキ液は、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸のメッキ液のうちいずれか1以上を含んでもよく、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸からなるメッキ液は、銅の金属塩として使用されてもよい。すなわち、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸のうちいずれか1以上を含んでなるメッキ液は、銅を含む化合物からなるのである。そのように、銅を含む化合物を介して、前記第1電気メッキ槽130で電気メッキを進めれば、前記銅121を含むメッキ層を形成させることができるのである。
【0060】
ここで、前記銅の金属塩濃度は、20ないし150g/Lであることが望ましい。前記銅の金属塩濃度が低すぎれば(20g/Lより低ければ)、前記ワイヤ110に析出するメッキ速度が緩衝速度より速くなり、バーニング(burning)が発生することもある。また、前記銅の金属塩濃度が過度に高ければ(150g/Lより高ければ)、メッキ液内で金属塩が析出し、メッキ液が不安定になってしまうため、前記銅の金属塩濃度は、20g/L以上150g/L未満であることが望ましい。ただし、メッキ液の濃度は、それに限定されるものではなく、必要により、変形されて使用されてもよいことは、言うまでもない。
【0061】
また、従来の化学メッキ方式または置換メッキ方式は、500℃以上の拡散熱処理過程を経なければならなかったが、そのような高温の拡散熱処理は、ビードワイヤの強度低下が発生することになる問題点がある。しかし、電気メッキは、高温の拡散熱処理過程なしに、20℃ないし60℃の温度で実施可能であり、ビードワイヤの強度低下を防止することができる長所がある。そのために、前記第1電気メッキ段階(S310)の電気メッキ温度は、20℃ないし60℃であることが望ましい(電気メッキの温度が60℃以上である場合、メッキ液内でスラッジ(sludge)が析出してしまい、メッキ層が不安定になってしまうため、前記第1電気メッキ槽130の電気メッキ温度は、20℃ないし60℃であることが望ましい)。
【0062】
前記第2電気メッキ段階(S330)は、前記第1電気メッキ槽130で電気メッキされた前記ワイヤ110を、前記第2電気メッキ槽140を通過させながら電気メッキするものであり、それを介して、前記メッキ層120にコバルトを電気メッキすることができる。前記第2電気メッキ槽140を介した電気メッキも、前記第1電気メッキ槽130の過程と同一になされ、銅の金属塩の代わりにコバルトの金属塩を使用することになる。
【0063】
前記第2電気メッキ槽140の入出口に設けられたカソードローラ142(cathode roller)を介して、前記ワイヤ110に負極をかけ、前記第2電気メッキ槽140に浸漬された正極板131(anode)に正極を印加して回路を構成する。前記第2電気メッキ槽140にメッキ液が満たされながら電流が印加されれば、メッキが進められる。
【0064】
このとき、前記第2電気メッキ槽130に使用されるメッキ液は、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸のメッキ液のうちいずれか1以上を含んでもよく、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸からなるメッキ液は、コバルトの金属塩として使用されてもよい。すなわち、シアン化物、ピロリン酸、塩化物、硫化物、次亜リン酸のうちいずれか1以上を含んでなるメッキ液は、コバルトを含む化合物からなるのである。そのように、コバルトを含む化合物を介して、前記第2電気メッキ槽140で電気メッキを進めれば、前記コバルト122を含むメッキ層を形成させることができるのである。
【0065】
ここで、前記コバルトの金属塩濃度は、1ないし20g/Lであることが望ましい。前記コバルトの金属塩濃度が低すぎれば(1g/Lより低ければ)、前記ワイヤ110に析出するメッキ速度が緩衝速度より速くなり、バーニング(burning)が発生することもある。また、前記コバルトの金属塩濃度が過度に高ければ(20g/Lより高ければ)、メッキ液内で金属塩が析出し、メッキ液が不安定になってしまうため、前記コバルトの金属塩濃度は、1g/Lないし20g/L未満であることが望ましい。ただし、メッキ液の濃度は、それに限定されるものではなく、必要により、変形されて使用されてもよいことは、言うまでもない。
【0066】
前記第2電気メッキ段階(S330)の電気メッキ温度は、20℃ないし60℃であることが望ましく、それを介して、高温の熱処理過程で発生するビードワイヤの強度低下を防止することができる長所がある(電気メッキの温度が60℃以上である場合、メッキ液内でスラッジ(sludge)が析出してしまい、メッキ層が不安定になってしまうため、前記第2電気メッキ槽140の電気メッキ温度は、20℃ないし60℃であることが望ましい)。
【0067】
前記第1電気メッキ段階(S310)と前記第2電気メッキ段階(S330)とにおいて、電気メッキを進めるために電流を印加するとき、電流密度は1ないし50A/dm2であることが望ましく、電気メッキ時間は10秒以下が望ましい(0秒を含まず)。また、前記第1電気メッキ段階(S310)と前記第2電気メッキ段階(S330)とにおいて印加される電流は、直流方式またはパルス方式を使用するのが望ましい。
【0068】
具体的には、前記ワイヤ110に負極をかける方式は、
図8のような生産性が高い直流方式を使用することができ、表面が非常に粗いワイヤの場合、凹凸部の均一なメッキ層形成のために、
図9のように、周期的に負極を付与するパルス方式を使用した方がよい。
【0069】
電気メッキによって形成された前記メッキ層120の厚みは、0.005ないし2.0μmに形成されるが、そのような厚みを維持するために印加される電流の密度は1ないし50A/dm2、時間は10秒以下にした方がよい(0秒を含まず)。ただし、電流の密度は、それに限定されるものではなく、ビードワイヤの一般的な付着量を達成するために、電流密度を50A/dm2以上にすることもでき、適切な時間に調節することもできる。
【0070】
前記電気メッキ段階(S300)は、中間処理段階(S320)をさらに含んでもよい。前記中間処理段階(S320)は、前記第1電気メッキ段階(S310)後、前記第2電気メッキ段階(S330)が進められる前になされる過程であり、前記第1電気メッキ段階(S310)後の前記ワイヤ110表面を洗浄することができる段階である。
【0071】
具体的には、前記中間処理段階(S320)は、前記第2電気メッキ段階(S330)を準備する水洗い槽または洗浄槽の段階であり、前記第2電気メッキ段階(S330)において、コバルト金属塩の電気メッキ効果を高めるための前処理過程であってもよい。ただし、前記中間処理段階(S320)は、それに限定されるものではなく、前記第1電気メッキ段階(S310)後、前記第2電気メッキ段階(S330)前、前記ワイヤ110を処理することができる工程であるならば、多様な工程が含まれてもよい。
【0072】
本発明の耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤの実施例について述べれば、次の通りである。
【実施例】
【0073】
炭素含量が0.80%であり、直径が5.5mmであるワイヤに対して酸洗を施した後、直径が1.30mmになるように伸線加工し、伸線された前記ワイヤを400~500℃の範囲の温度で熱処理した。次に、15±10%の塩酸溶液を40±10℃温度に維持した塩酸槽を通過させ、線表面を洗浄した。
【0074】
洗浄された前記ワイヤ110を前記第1電気メッキ槽130を通過させながら、前記第1電気メッキ槽130入口/出口に設けられた第1カソードローラ132を介して、前記ワイヤ110に負極をかけ、メッキ槽に浸漬された第1正極板(Ti)131に正極を印加して回路を構成した。このとき、メッキ液は、ピロリン酸銅100g/L、塩化第一スズ10g/L、塩化コバルト15g/L、次亜リン酸ナトリウム100g/L、ピロリン酸カリウム300g/Lで構成され、メッキ液温度は、45℃に固定した。そして、ワイヤ110に印加される電流は、直流方式であり、電流密度を10A/dm2、メッキ処理時間を2秒にした(前記第1電気メッキ段階(S310))。
【0075】
その後、洗浄された前記ワイヤ110を前記第2電気メッキ槽を通過させながら、前記第2電気メッキ槽140入口/出口に設けられた前記第2カソードローラ142を介して、前記ワイヤ110に負極をかけ、メッキ槽に浸漬された第2正極板(Ti)141に正極を印加して回路を構成した。このとき、メッキ液は、ピロリン酸銅100g/L、塩化第一スズ10g/L、塩化コバルト15g/L、次亜リン酸ナトリウム100g/L、ピロリン酸カリウム300g/Lで構成され、メッキ液温度は、45℃に固定した。そして、ワイヤ110に印加される電流は、直流方式であり、電流密度を5A/dm2、メッキ処理時間を7秒にした(前記第2電気メッキ段階(S330))。
【0076】
ここで、電流密度は1ないし100A/dm2、メッキ処理時間は0.5ないし20秒に調節することが、実験条件上望ましい。ただし、当該の電流密度とメッキ処理時間は、それに限定されるものではなく、実験条件が改善されるならば、さらに大きい電流密度、さらに短いメッキ処理時間であってもよいことは、言うまでもない。
【0077】
図4は、そのような分析を介して、ワイヤ凹凸内部まで、銅及びコバルトのメッキ層が形成されているところを示す図面であり、
図10は、そのような分析を介して、従来の化学メッキしたビードワイヤと、本発明の実施形態による、電気メッキしたビードワイヤとの耐酸化性、初期接着力、時効接着力を比較した結果表である。
【0078】
図10について述べれば、電気メッキ条件別のビードワイヤの初期接着力、3カ月湿潤時効接着力、3カ月湿潤時効後の線表面酸素分率、6カ月湿潤時効接着力、6カ月湿潤時効後の線表面酸素分率が示されている。
図10の結果について述べれば、メッキ層内コバルト分率が3~40%において、湿潤時効接着力が向上するということが分かる。
【0079】
具体的には、従来の化学メッキビードワイヤに比べ、本発明の実施形態によるビードワイヤは、初期接着力が上昇し、接着外観が良好になり、線表面酸素分率が低下する。
【0080】
また、3カ月及び6カ月の時効後の時効接着力が、従来の化学メッキビードワイヤに比べて顕著に上昇し、接着外観が顕著に良好になるということが分かる。それは、3カ月及び6カ月の時効後の線表面酸素分率が、従来の化学メッキビードワイヤの線表面酸素分率より顕著に低いからである。さらに具体的には、従来の化学メッキビードワイヤは、経時的に線表面酸素分率が高くなるが、本発明の実施形態によるビードワイヤは、線表面酸素分率の変化が低いために、3カ月及び6カ月の時効後の時効接着力が顕著に上昇するのである。
【0081】
本発明の実施形態による、耐酸化性にすぐれる電気メッキビードワイヤは、次のような効果がある。
【0082】
本発明の実施形態によるビードワイヤは、電気メッキ方式を介して、銅とコバルトとを含むメッキ層を形成させることができる。
図2B及び
図3を参考すれば、本発明の実施形態によるビードワイヤは、従来の銅・スズビードワイヤより緻密なメッキ層を形成することが分かり、それを介して、耐酸化性、及びタイヤゴムとの時効接着力を向上させることができるという長所がある。
【0083】
また、
図2A及び
図2Bのように、従来の化学メッキまたは置換メッキビードワイヤでは、ワイヤの表面の深いところまでメッキ層20が形成されていない表面(bare)が発生したが、本発明の実施形態によるビードワイヤは、銅及びコバルトのメッキ層を介して、
図3及び
図4のように、緻密なメッキ層を形成させ、耐酸化性、及びタイヤゴムとの時効接着力を向上させることができるという長所がある(
図2Aと
図4は、ビードワイヤのメッキ層表面に対して、FE-SEMを使用して、メッキ層がワイヤ凹凸内部まで均一に形成されているか否かということを観察した後、EDX定性分析を実施した結果である)。
【0084】
従来の化学メッキ方式または置換メッキ方式は、銅・スズのメッキ速度が顕著に遅く、産業現場に適用し難い問題があったが、本発明の実施形態によるビードワイヤは、電気メッキを介して、メッキ速度を向上させることができ、電流密度及び時間を調節することによって適切な厚みのメッキ層を形成することができるという長所がある。それと共に、本発明の実施形態によるビードワイヤは、20℃ないし60℃で電気メッキが進められることにより、500℃以上の拡散熱処理によって発生するビードワイヤの強度低下を防止することができるという長所がある。
【0085】
また、本発明の実施形態によるビードワイヤは、電気メッキ及びコバルトを使用してメッキ層を形成することにより、従来の化学メッキ及びスズを使用するメッキ層に比べ、銅の付着量を10ないし70重量%減らすことができ、それを介して、メッキ層の含量を低減させることができるという長所がある。
【0086】
また、従来の化学メッキまたは置換メッキは、メッキ層が形成されていない表面(bare)のため、メッキ工程後、キシレン(xylene)などを溶剤として有機溶剤コーティングを施さなければなければならず、それにより、環境汚染及び製造コスト上昇の問題がある。しかし、本発明の実施形態によるビードワイヤは、電気メッキを使用することにより、有機溶剤コーティング工程が不要であり、そのため、環境汚染を防止することができ、コストを節減することができるという長所がある。
【0087】
そのように、本発明の実施形態によるビードワイヤは、電気メッキを介して、銅とコバルトとを含むメッキ層を形成させ、メッキ層の耐酸化性及び物性を向上させることにより、ビードワイヤを運搬する過程で起こるビードワイヤ酸化を防止することができるという長所がある。それと共に、ビードワイヤの耐酸化性及び物性が向上することにより、ビードワイヤを運搬するための製品包装を簡素化することができるという長所がある。
【0088】
以上において、本発明について、図面に実施された実施例を参照して説明したが、それらは例示的なものにすぎず、当該分野の当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の実施例が可能であるということを理解することができるであろう。従って、本発明の真の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。