(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ワイヤレス通信システムにおけるルート選択
(51)【国際特許分類】
H04W 40/12 20090101AFI20221020BHJP
H04W 40/14 20090101ALI20221020BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20221020BHJP
【FI】
H04W40/12 110
H04W40/14
H04W84/18
(21)【出願番号】P 2020570565
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2019062497
(87)【国際公開番号】W WO2019242943
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-02-09
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パン,ジボ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シャオリン
(72)【発明者】
【氏名】ズン,ダクフィ
(72)【発明者】
【氏名】ルビソット,ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンソン,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】フィシオネ,カルロ
【審査官】桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-522471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0250563(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレス通信システムにおいて第1のノード(1)と第2のノード(2)との間のワイヤレス通信のためのルートを選択する方法(100)であって、前記ワイヤレス通信システムは、サイクリックプレフィックスと少なくとも1つのさらなるパラメータとが適用される物理層を備え、前記方法は、
前記第1のノード(1)から前記第2のノード(2)までの複数の考えられるルート(R1,R2,R3,R4)を評価するステップ(110)を備え、前記考えられるルート(R1,R2,R3,R4)のうちの少なくとも1つのルート(R2,R3,R4)は、前記第1のノードと前記第2のノードとの間に第3のノード(3,4)を含み、
前記少なくとも1つのルートは、少なくとも2つのリンク(L13,L14,L32,L42,L34)を含み、前記評価するステップ(110)は、
前記考えられるルート(R1,R2,R3,R4)の各リンク(L12,L13,L14,L32,L42,L34)についてパラメータ設定を選択するステップ(120)を備え、前記各リンク(L12,L13,L14,L32,L42,L34)についてパラメータ設定を選択するステップ(120)は、
符号間干渉を最小化または回避するための第1の通信品質基準に鑑みて、前記リンクについての前記サイクリックプレフィックスの長さを選択するステップ(130)と、 前記サイクリックプレフィックスの前記選択された長さと前記物理層の前記少なくとも1つのさらなるパラメータのさまざまな設定との組み合わせを評価するステップ(140)とを含み、前記評価するステップ(140)は、前記リンクのレイテンシを推定するステップ(144)を含み、前記各リンク(L12,L13,L14,L32,L42,L34)についてパラメータ設定を選択するステップ(120)はさらに、
推定最低レイテンシを有する前記リンクについての前記パラメータ設定を選択するステップ(150)を含み、
前記方法(100)はさらに、
前記考えられるルートの中で最低レイテンシを有する前記ルートを選択するステップ(160)を備え、前記最低レイテンシを有する前記ルートを選択するステップ(160)は、前記ルート(R1,R2,R3,R4)の各リンク(L13,L14,L32,L42,L34)の前記レイテンシを加算し、前記第1のノード(1)と前記第2のノード(2)との間に第3のノード(3,4)を有する各ルート(R2,R3,R4)について、前記ルートの前記第3のノード(3,4)の処理時間を加算するステップとを含む、方法(100)。
【請求項2】
前記評価するステップ(140)は、前記組み合わせについてのパケット誤り率を判断するステップ(140B)と、前記選択されたサイクリックプレフィックスと組み合わせてパケット誤り率閾値を満たさないようなパラメータ設定を廃棄するステップ(142)とを含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記第1の通信品質基準は、前記リンク(L12,L13,L14,L32,L42,34)の自己干渉に対する信号の比の基準である、請求項1または2に記載の方法(1
00)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのさらなるパラメータは、符号化率、変調スキームおよびFFTサイズのうちのいずれかを備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのさらなるパラメータは、符号化率、変調スキームおよびFFTサイズのうちの2つを備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのさらなるパラメータは、符号化率、変調スキームおよびFFTサイズを備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記サイクリックプレフィックスの選択は、
前記リンクのチャネルインパルス応答を取得するステップと、
前記チャネルインパルス応答から前記リンクについての干渉およびノイズに対する信号を推定するステップとを備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記干渉およびノイズに対する信号の基準は、前記信号がノイズおよび干渉よりも少なくとも10dB強いことを備える、請求項7に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記干渉およびノイズに対する信号の基準は、前記信号がノイズおよび干渉よりも少なくとも20dB強いことを備える、請求項8に記載の方法(100)。
【請求項10】
ワイヤレス通信システムのための制御システム(40)であって、前記ワイヤレス通信システムにおいて通信ルートを選択するための手段を備え、前記制御システム(40)は、請求項1~9のいずれか1項に記載のルート選択の方法(100)を実行するように構成される、制御システム(40)。
【請求項11】
前記ルート選択の方法(100)を実行するように構成されたネットワークコントローラ(30)ユニットを備える、請求項10に記載の制御システム(40)。
【請求項12】
ワイヤレス通信システムを制御するためのコンピュータプログラ
ムであって、前記コンピュータプログラムは、算出手段と通信手段とを含むネットワーク制御システム(40)上で実行されると、前記制御システム(40)に請求項1~9のいずれか1項に記載のルート選択の方法(100)を実行させる、コンピュータプログラ
ム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般にワイヤレス通信システムに関し、特に中継ノードで構成されたワイヤレス通信システムにおけるルート選択に関する。本発明は、主に、電力系統におけるグリッドオートメーション、工業プロセスまたはオートメーションのための製造システムまたは制御システムにおける通信などの工業環境を対象としている。
【背景技術】
【0002】
背景および先行技術
ワイヤレス通信ネットワーク内でのルート選択は、2つのノードまたは基地局間にいくつかのホップを含み得るルートが選択されるという概念である。一般に、高速送信を提供するために、できる限り少ないホップを有するルートが選択されてもよい。さらなるアプローチでは、その代わりに、特定のクオリティ・オブ・サービスレベル(QoS)を提供するルートが選択されてもよい。たとえば、特許出願US6,954,435 B2(文献A)を参照されたい。文献Aでは、考えられるルートの個々のリンクがQoSの観点から調査されている(文献Aの第5欄第36行~第6欄第3行、第2欄第20~25行)。文献Aにおけるシステムの品質要件は、たとえば遅延、ホップの数または誤り率を含む(文献Aの第3欄第23~26行)。
【0003】
さまざまな品質測定値がルート選択に使用されてきており、選択は更新されてもよい。たとえば、US7,058,021(文献B)には、さまざまなルートの品質を絶えず判断するルート選択方法が記載されている。それらのルートでの受信パケットの成功率が比較されて、最も成功したルートが選択される(文献Bの要約書を参照)。
【0004】
US2015/0319629(文献C)は、通信品質を向上させるさらなる例を示している。文献Cの方法の目的は、選択された通信ルートの品質を向上させることである。文献Cの方法は、隣接するチャネルの信号品質を推定するステップと、現在のチャネルよりも隣接するチャネルの方が品質が優れていれば隣接するチャネルに切り換えるステップとを含む(文献Cの要約書)。また、文献Cの方法は、別のルートを選択してもよい。したがって、さらなる目的は、品質判断によって判断されたよりよいルートを選択することである(文献Cの段落0017)。チャネルおよび/またはルートの品質は、信号対雑音測定値から判断されてもよい(文献Cの段落0019)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
本発明の目的は、信頼性およびレイテンシの最適化が要求される代替的アプローチを提供することである。この目的のために、本発明は、ワイヤレス通信システム、特にOFDMシステム(直交周波数分割多重方式)におけるルート選択であって、高い信頼性および低レイテンシを有する通信を提供するためにワイヤレス通信システムの物理層における複数のパラメータが選択されるルート選択に関する。本発明は、高い信頼性および低レイテンシに対する需要がある、グリッドオートメーション、変電所またはパワーグリッドのための他の制御システムのオートメーションなどの、電力グリッドのための制御システムで有用である。また、本発明は、高速で確実な通信が要求される工業生産システムでも有用である。このように、信頼性およびレイテンシの観点から通信を最適化しようとするルート選択プロセスが提供される。本発明のワイヤレス通信は、命令または測定値を有する比較的短いメッセージがネットワークの基地局間でやりとりされる工業オペレーションにおけるマシンツーマシン通信で特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の局面に従って、本発明は、ワイヤレス通信システムにおけるルート選択の方法を提供し、上記ワイヤレス通信システムは、サイクリックプレフィックスと少なくとも1つのさらなるパラメータとを含む物理層を備え、第1の基地局と第2の基地局との間のワイヤレス通信のためのルートが選択される。上記方法は、
上記第1の基地局から上記第2の基地局までの複数の考えられるルートを評価するステップを備え、上記考えられるルートのうちの少なくとも1つのルートは、上記第1のノードと上記第2のノードとの間に第3のノードまたは少なくとも1つの第3のノードを含み、上記少なくとも1つのルートは、少なくとも2つのリンクを含み、上記方法はさらに、
上記考えられるルートの中で最低レイテンシを有する上記ルートを選択するステップを備える。
【0007】
特に、上記ルート選択の方法は、上記考えられるルートの各リンクについてパラメータ設定を選択するステップを含み、上記各リンクについてパラメータ設定を選択するステップは、上記サイクリックプレフィックスの長さおよび上記物理層の上記少なくとも1つのさらなるパラメータの設定を選択するステップを含み、上記各リンクについてパラメータ設定を選択するステップはさらに、
上記リンクについての第1の通信品質基準に鑑みて上記サイクリックプレフィックスの長さを選択するステップと、
第2の通信品質基準に鑑みて、上記選択されたサイクリックプレフィックスと上記物理層の少なくとも1つのさらなるパラメータのさまざまな設定との組み合わせを評価するステップとを含み、上記評価するステップは、上記第2の通信品質基準を満たす、上記サイクリックプレフィックスの上記選択された長さと上記少なくとも1つのさらなるパラメータの設定との組み合わせについて上記レイテンシを推定するステップを含み、上記各リンクについてパラメータ設定を選択するステップはさらに、
推定最低レイテンシを有し、かつ、上記第2の品質基準を満たす上記パラメータ設定を選択するステップを含む。
【0008】
上記最低レイテンシを有する上記ルートを選択するステップは、各ルートについて上記レイテンシを推定するステップを含み、上記各ルートについて上記レイテンシを推定するステップは、上記ルートの各リンクの上記レイテンシを加算し、上記第1のノードと上記第2のノードとの間に第3のノードを有する各ルートについて、上記ルートの上記第3のノードの処理時間を加算するステップとを含む。
【0009】
ルートは、第1のノードと第2のノードとの間に2つ以上の第3のノードまたは中継ノードを含んでもよく、このような各ルートのレイテンシを推定する際に、このような各ルートについて、各リンクのレイテンシとこれらの第3のノードの各々の処理時間とが加算されるべきである。したがって、ルートは、少なくとも1つの第3のノードを有してもよく、ルートレイテンシを推定する際に、この少なくとも1つの第3のノードの処理時間が加算される。
【0010】
サイクリックプレフィックスの長さは、通信品質の観点から評価され、長さが短くなればレイテンシが短くなる。選択されたサイクリックプレフィックス、すなわち第1の品質基準を満たすサイクリックプレフィックスと1つまたは複数のさらなるパラメータとの組み合わせは、第2の通信品質基準および上記組み合わせのレイテンシの観点から評価される。このようにして、ルートの1つまたは複数のリンクの選択されたパラメータ設定によって低レイテンシおよび通信品質の最適化を提供するルートを選択することができる。このパラメータ設定の選択は、ワイヤレス通信ネットワークの各ルートについてなされることができる。
【0011】
サイクリックプレフィックスおよびさらなるパラメータは、通信品質に対してさまざまに影響を及ぼし、特にサイクリックプレフィックスを選択することによって自己干渉を回避する際には、特定の第1の品質基準がサイクリックプレフィックスにとって好ましい。
【0012】
実施形態では、上記第2の通信品質基準は、上記リンクにおける通信のパケット誤り率(PER)の閾値レベルを備える。
【0013】
実施形態では、上記少なくとも1つのさらなるパラメータは、符号化率、変調スキームおよびFFT(Fast Fourier Transform)サイズ(高速フーリエ変換)のうちのいずれかを備える。さらなる実施形態では、少なくとも1つのさらなるパラメータは、符号化率、変調スキームおよびFFTサイズのうちの2つを備える。好ましくは、少なくとも1つのさらなるパラメータは、符号化率、変調スキームおよびFFTサイズを備える。
【0014】
したがって、選択される物理層のパラメータは、サイクリックプレフィックスを含み、好ましくは符号化率、変調スキームおよびFFTサイズを含んでもよく、さらなる物理層パラメータを含んでもよい。好ましくは、ルート選択プロセス中に電力レベルも選択され、通信では、高い電力レベルと比較して低い電力レベルが好ましい。電力レベルは、レイテンシまたは送信時間に影響を及ぼさず、電力レベルが高くなればパケット誤り率が低くなる。
【0015】
第1の基地局から第2の基地局への通信のために選択され得るルートは、第1の基地局と第2の基地局との間のダイレクトリンクと、マルチホップルートとを含み、第1の基地局と第2の基地局との間の通信は、第3の基地局または中継基地局と称される少なくとも1つのさらなる基地局によって中継される。
【0016】
実施形態では、上記第1の通信品質基準は、自己干渉を回避するための上記リンクについての干渉およびノイズに対する信号の基準であり、上記サイクリックプレフィックスの選択は、
上記リンクのチャネルインパルス応答を取得するステップと、
上記チャネルインパルス応答から上記リンクについての上記干渉およびノイズに対する信号を推定するステップとを備える。
【0017】
サイクリックプレフィックスは、信号対自己干渉に影響を及ぼす一方、他のパラメータを変化させることは、「大域的な」信号対雑音比に影響を及ぼす。サイクリックプレフィックスの選択は、自己干渉を回避するためになされるべきである。実施形態では、第1の通信品質基準に従って、信号はノイズおよび干渉よりも少なくとも10dB強いべきである。さらなる実施形態では、上記信号はノイズおよび干渉よりも少なくとも20dB強いべきである。
【0018】
第2の局面において、本発明は、第1の局面のルート選択を実行するように構成されたネットワーク制御システムを提供する。制御システムは、単一のネットワークコントローラユニットとして提供されてもよく、または代替的に複数の制御ユニットに分散されてもよい。実施形態では、制御システムは、第1の局面の方法に従ってルート選択を実行するように構成されたネットワークコントローラユニットを備える。スタンドアロンの中央ネットワークコントローラが好ましいが、このようなコントローラは、ワイヤレスルータまたはゲートウェイノードなどのネットワークのノードに設けられてもよい。
【0019】
さらなる局面において、本発明は、第1の局面の方法を実行するためのネットワーク制御システムを構成するのに適したコンピュータプログラム製品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本発明の実施形態に係る通信ネットワークを示す図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係る通信ネットワークを示す図である。
【
図2】ルート選択の方法の実施形態を示す図である。
【
図3A】
図2の方法のさらなる実施形態を示す図である。
【
図3B】
図2の方法のさらなる実施形態を示す図である。
【
図3C】
図2の方法のさらなる実施形態を示す図である。
【
図4】
図2、
図3A~
図3Cの実施形態のうちのいずれかに係るルート選択を実行するように構成されたネットワーク制御システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態の説明
図1A~
図1Bは、複数の通信ノードまたは基地局1~4を含むワイヤレス通信ネットワーク10を示す図である。ネットワークコントローラ30は、基地局1~4に通信可能に接続されている。ネットワークコントローラ30は、ネットワーク10において通信ルートを選択するように、たとえば第1のノードまたは基地局1から第2のノードまたは基地局2への通信のためのルート(
図1BにおけるR1~R4)を選択するように構成される。選択されたルートは、第3の基地局3および第4の基地局4などの1つまたは複数の中継局を含んでもよい。したがって、このルート(たとえば、
図1BにおけるR1)は、第1の局1から第2の局2までのダイレクトリンクL12(
図1A)を含んでもよく、または、第1の基地局1から第2の基地局2への通信を第3の基地局3によって中継する場合には、第1の基地局1から第3の基地局3までのリンクL13(たとえば、
図1BにおけるルートR3)および第3の基地局3から第2の基地局2までのリンクL32などの複数のリンクを含んでもよい。
【0022】
ネットワークコントローラ30は、第1の基地局1と第2の基地局2との間の通信のための考えられるルートを評価し、通信速度、すなわち低レイテンシまたは送信時間および通信品質に基づいてルートを選択するように構成される。ルート選択方法については、
図2および
図3A~
図3Cを参照してさらに説明する。
【0023】
リンクL12,L13,L14,L32,L42についての情報を取得するために、ネットワークコントローラ30は、リンクL12,L13,L14,L32,L42のチャネルインパルス応答を測定するように基地局1~4に指示するように適切に構成されてもよい。また、ネットワークコントローラ30は、基地局1~4の間のリンクL12,L13,L14,L32,L42の通信品質についての測定値、たとえば信号対雑音比(SNR(signal to noise ratio))を取得するように構成されてもよい。たとえば、基地局1~4の各々は、テスト信号を他の基地局1~4に送信するように指示され、これらの他の基地局は、テスト信号を受信して、取得された信号を通信リンクの評価のためにネットワークコントローラ30に転送する。特に、ネットワークコントローラ30は、通信ネットワーク10のリンクL12,L13,L14,L32,L42のチャネルインパルス応答を取得し、チャネルインパルス応答に基づいて各リンクについてサイクリックプレフィックスを選択するように構成される。テスト信号の送信は、リンクL12,L13,L14,L32,L42の送信時間および/または伝搬時間を含む遅延を推定するのにも使用されてもよく、ネットワークコントローラ30は、これらの推定を実行するように構成されてもよい。テスト信号の送信は、サイクリックプレフィックス長さのさまざまな設定、ならびに、FFTサイズ、符号化率および変調スキームなどの他の物理層パラメータのさまざまな設定を使用して実行されるべきである。
【0024】
図2は、
図1A~
図1Bのネットワークコントローラ30に適したルート選択の方法100の実施形態を示す図である。
図2のルート選択方法100は、第1のノードまたは基地局1と第2のノードまたは基地局2との間の複数の考えられるルートを評価するステップ110から開始し、ルートR1~R4のうちの1つを選択するステップ160で終了し、最低送信時間またはレイテンシを有するルートが選択される。レイテンシは、ここでは、通信がどれぐらい高速であるかを示すものと見なされ、ワイヤレス通信ネットワーク10の標準サイズのメッセージの送信時間として推定可能である。
【0025】
本発明によって提供される特徴は、物理層パラメータの設定を選択するステップ120であり、この選択するステップ120は、ルートのうちの1つを選択するステップ160を実行するためにルートR1~R4を評価するステップ110の最中に、信頼性およびレイテンシの両方に鑑みて実行される。パラメータ設定を選択するステップ120は、各リンクL12,L13,L14,L32,L42について実行され、評価されたパラメータ設定によって提供される通信品質に鑑みて実行される。
【0026】
この方法は、パラメータ設定が通信品質基準(
図2におけるサイクリックプレフィックスを選択するためのステップ130およびサイクリックプレフィックスとさらなるパラメータとの組み合わせを評価するためのステップ140のそれぞれにおける第1および第2の通信品質基準など)を満たすという前提で、最低レイテンシを有する各リンクのパラメータ設定を選択するステップ150を含む。送信時間は、リンクL12,L13,L14,L32,L42のさまざまなパラメータ設定のうち、レイテンシを比較すべきであるときの、レイテンシの近似値として使用することができる。そのリンクについて最低送信時間を有するパラメータ設定は、最低レイテンシも有する。なぜなら、伝搬時間と処理時間とはさまざまな設定でほぼ同じであるからである。本発明では、レイテンシおよびどのパラメータ組み合わせが最低レイテンシを有するかを判断するために計算を使用することを提案し、これについては第13頁の式1を参照されたい。計算によってレイテンシを推定することの代替例は、テスト信号またはテストメッセージを送信することによって各リンクのレイテンシを測定するというものである。
【0027】
ルート選択方法100は、ワイヤレス通信ネットワーク10のセットアップ中に実行され、その後はネットワークの動作中に実行されてもよい。選択されたルートおよび対応するパラメータ設定は、好適には、ネットワークコントローラ30によって、またはいくつかのユニットに分散され得る別のネットワーク制御システム(たとえば、
図4における40)によって提供されるルックアップテーブルに格納され得る。
【0028】
リンクの伝搬時間、すなわち波が2つのノード間を進むのに必要な時間は、ノード間の距離、すなわち距離×「光の速さ」から推定することができる。多くの状況では、距離が比較的小さければ、伝搬時間は送信時間と比較して小さく、レイテンシを送信時間で近似することは十分に正確であろう。他の状況では、伝搬時間を無視することはできない。ワイヤレスネットワークにおいて固定ノードのセットアップ時に伝搬時間を計算することにより、リンクの伝搬時間を無視できるか否かについての情報が当業者に与えられる。
【0029】
最低レイテンシを有するルートを選択するステップ160は、好ましくは、ルートR1,R2,R3,R4の各リンクL13,L14,L32,L42,L34のレイテンシとルートの中継ノード3,4の処理時間とを加算するステップを含む。
【0030】
送信前の送信処理時間および送信後の受信処理時間などの、ノード1~4、特に中継ノード3,4の処理時間は、ノードの技術仕様からネットワークのノードを選択する際に推定することができる。明確にするために、「送信処理時間」という語は、ここでは、送信時間の前の時間間隔を意味し、この送信時間は、さらには伝搬時間の前である。処理時間は、たとえば、ノードが製造/テストされて、ルート選択プロセスにおいて固定量として使用される際に測定することができる。一般に、処理時間は、ノードのインストール後は変化しない。代替的に、処理時間は、訓練手順を通じてオフラインで測定することができる。このような手順において、ノードは、パケットを送信して、コマンドの送信と無線通信を経由した実際の送信の開始との間の時間(送信処理時間)を測定するであろう。その後、この同一のノードは、パケットを受信して、実際の受信の開始と第1の復号されたビットがソフトウェアに送達された時との間の時間(受信処理)を測定するであろう。この処理時間量は、経時的に固定されるため、更新しなくてもよく、一度だけ測定することができる。
【0031】
物理層のパラメータ設定を選択するステップ120は、考えられるルートR1~R4の各々を評価するステップ110の際の第1のステップである。物理層のパラメータ設定を選択するステップ120は、サイクリックプレフィックスを選択するステップ130と、選択されたサイクリックプレフィックスと物理層のさらなるパラメータ設定との組み合わせを評価するステップ140と、さらなるパラメータの設定を選択するステップ150とを含む。
【0032】
サイクリックプレフィックスを選択するステップ130は、自己干渉、特に符号間干渉を回避するためになされる。サイクリックプレフィックスは、通信にレイテンシを導入し、短いサイクリックプレフィックスが好ましい。サイクリックプレフィックスを選択するステップ130は、符号間干渉を最小化または回避するための基準などの、通信の品質基準に基づく。
【0033】
サイクリックプレフィックスを選択するステップ130は、好適には、当該通信リンクのチャネルインパルス応答(CIR(channel impulse response))に基づいており、このリンクのCIRは、さまざまな方法で、たとえばリンク上でのテストシーケンスの送受信を含むシミュレーションを行うことによって、推定することができる。符号間干渉を制限するために自己干渉に対する信号の比(自己-SINR(signal-to-self-interference ratio))の基準を使用することができ、たとえば信号と自己干渉との差は、10dBまたは20dBである。次いで、自己-SINR比の基準よりも大きな干渉が回避されるように、取得されたCIRに基づいてサイクリックプレフィックスが選択されるであろう。したがって、できる限り短い長さ、すなわち自己-SINR比基準に鑑みてできる限り短い長さのサイクリックプレフィックスが識別される。
【0034】
選択されたサイクリックプレフィックスと物理層のさらなるパラメータのさまざまな設定との組み合わせを評価するステップ140は、当該パラメータ設定を備え得る通信の信頼性を反映する品質基準に左右される。
【0035】
物理層のさらなるパラメータを評価するステップ140は、結果として起こる通信の品質基準の推定に基づくべきであり、好ましくは最大パケット誤り率(PER(packet-error-rate))の基準が利用される。通信品質基準を満たすパラメータ組み合わせがさらに評価され、この評価は、さまざまなパラメータ組み合わせの間で送信時間またはレイテンシを比較することを含む。
【0036】
ルート選択方法において選択される好ましいパラメータ、すなわち符号化率、変調スキームおよびFFTサイズは、ワイヤレス通信方法の周知の特徴である。これらのパラメータの各々は、レイテンシまたは送信時間に影響を及ぼし、これらのパラメータを変化させることは、PERなどの通信品質に影響を及ぼす。
【0037】
符号化率は、たとえば1/2、2/3、3/4または5/6であってもよく、2/3の符号化率は、1/3が冗長データであり、1/3の対応するレイテンシが作成されることを意味する。
【0038】
変調スキームは、たとえば変調次数2、4および16にそれぞれ対応するBPSK、QPSKまたは16QAMとして選択されることができ、BPSKは二位相偏移変調を指し、QPSKは四位相偏移変調であり、16QAMは16直角位相振幅変調である。
【0039】
FFTサイズ(高速フーリエ変換)は、サイクリックプレフィックスを数に入れない、全てのOFDM符号のサンプルの数であり、一般に32、64、128、256または512である。式1に見られるように、レイテンシに対するFFTサイズの影響は、符号化率および変調スキームからの影響ほど直接的ではない。式1に見られるように、FFTサイズは、レイテンシに影響を及ぼすが、他の物理層パラメータ設定に依存する。また、FFTサイズは、一般に、信頼性に影響を及ぼさない。
【0040】
総レイテンシは、たとえば通信ネットワークにおける標準サイズのメッセージの総送信時間として計算することができ、送信時間は、たとえばルートの各リンクの送信時間と各中継ノードの処理時間とを加算することによって各ルートについて提供されることができる。
【0041】
プロセスは、好適なサイクリックプレフィックスを選択するための第1の品質基準を使用し、選択されたサイクリックプレフィックスとさらなるパラメータ、好ましくは符号化率、FFTサイズおよび/または変調スキームとを組み合わせるための第2の品質基準を使用し、第1および第2の品質基準を満たすそれらのパラメータ組み合わせについて、パラメータ組み合わせのレイテンシの比較に基づいて選択を行うものとして考えることができ、最低レイテンシまたは最短送信時間を有するパラメータ組み合わせがリンクのために選択される。
【0042】
ルート選択方法100のさらなる実施形態が
図3A~
図3Cに示されている。特に、
図3Aは、より詳細な実施形態においてサイクリックプレフィックスを選択するステップ130を示し、
図3Bは、より詳細な実施形態において選択されたサイクリックプレフィックスとさらなるパラメータ設定との組み合わせを評価するステップ140を示す。
【0043】
第1の通信品質基準に鑑みてサイクリックプレフィックスを選択するステップ130は、リンクのチャネルインパルス応答(CIR)を取得するステップ130Aを備える。この目的のために、ネットワークコントローラ10は、テスト信号を送信して、他の基地局1~4から送信されたテスト信号をピックアップするように各基地局1~4に指示するように構成されてもよい。このようなテスト信号シーケンスから、さまざまな長さのサイクリックプレフィックスについて自己干渉に対する信号の比(自己-SINR)を導き出すことができ、その結果、自己-SINRの基準を満たすサイクリックプレフィックスを後に選択することができる。たとえば少なくとも10dBまたは好ましくは約20dB以上の自己-SINRを提供するサイクリックプレフィックスをたとえば選択することができる。自己-SINRの基準は、自己誘導の符号間干渉を制限または回避するための好ましい通信品質基準である。
図3Aの実施形態は、自己-SINRを推定するステップと、自己-SINRをサイクリックプレフィックスの長さを選択するための基準として使用するステップとを含む。サイクリックプレフィックスを選択するステップ130は、通信品質基準としての自己-SINRの基準に基づいており、リンクの自己-SINRを推定するステップ130Bと、この自己-SINRに鑑みてサイクリックプレフィックスを選択するステップ130C、たとえば少なくとも10dBまたはおよそ20dB以上の自己-SINRに対応するサイクリックプレフィックスを選択するステップとを含む。
【0044】
第2の通信品質基準に鑑みて、選択されたサイクリックプレフィックスと物理層のさらなる1つまたは複数のパラメータとの組み合わせを評価するステップ140は、さまざまなパラメータ設定についてリンクのパケット誤り率(PER)を求めるステップ140Bを含む。さまざまなパラメータ設定についてPERを求める(140B)ために、さまざまなパラメータ設定のシミュレーションを行うことができる。代替的に、PERを求めるステップ140Bは、リンクの信号対雑音比から行うことができる。どの物理層パラメータが評価されるかによって、PERの推定または算出はSNRから提供されることができ、たとえば高い変調次数は低い変調次数よりもSNRに影響されやすく、その結果、高い変調次数では高いPERが得られる。また、PERを求めるステップ140Bは、好適には、選択されたサイクリックプレフィックスに対応する以前に確立された自己-SINRにも基づいてもよい。リンクのSNRは、事前情報、たとえば送信電力およびチャネル帯域幅を通じて取得され、ステップ130Aにおいて取得されたCIRからも取得される。
【0045】
この方法はさらに、求められたPERを第2の通信品質基準として使用するステップを含む。したがって、選択されたサイクリックプレフィックスとさらなるパラメータとの組み合わせは、PERの閾値に鑑みて評価される(140C)。この方法は、選択されたサイクリックプレフィックスと組み合わせてPER閾値を満たさないパラメータ設定を廃棄するステップ142を続ける。この方法は、PER閾値基準を満たすサイクリックプレフィックスとさらなるパラメータ設定とのそれらの組み合わせのレイテンシを推定するステップ144を含む。パラメータ設定を選択するステップ150は、第2の品質基準、すなわちPER閾値を満たし、かつ、最低レイテンシ/送信時間を有する組み合わせを選択するステップを含む。
【0046】
送信時間を推定および/または比較するためのさまざまな方法を使用することができる。たとえば、OFDM通信ネットワークのレイテンシまたはパケット送信時間(Tpkt)の計算については、M.ルビソット、Z.パン、D.ズン、M.ジャンおよびX.ジアンによる「クリティカル・コントロール・アプリケーションのための高性能ワイヤレス送信の物理層設計」(IEEEトランザクションズ・オン・インダストリアル・インフォマティクス 第13巻 No.6 第2844~2854頁 2017年12月)に記載されている。
【0047】
【0048】
式中、
NFFTは、FFTサイズ、すなわち各OFDM符号についての非CPサンプルの数であり、効率的な実行のために一般に2の累乗、たとえば32、64または128であり、
Mは、変調次数であり、BPSKではM=2であり、QPSKではM=4であり、16QAMではM=16であり、log2Mは、OFDMにおけるサンプル当たりの実際のビット数であり、
Rcは、符号化率、すなわち(冗長ビットを含む)送信のためのビットの数と符号化されたビットの数との比率であり、たとえば1/2、2/3、3/4である。
【0049】
本発明は、各リンクのレイテンシおよび信頼性を最適化するために、CPの選択とともに、FFTサイズ(NFFT)、変調次数(M)および/または符号化率(Rc)を、好ましくは3つ全てを変化させることを提案する。
【0050】
【0051】
その後、中継ノードの処理時間とともに、ルートの各リンクの送信時間を加算して、ルートの総レイテンシを提供してもよい。
【0052】
図3Cは、推定最低レイテンシを有するルートを選択するステップ160の実施形態を示し、送信時間および処理時間を含むさまざまなルートのレイテンシを推定するステップ160Aを含む。ルートを選択するステップ160は、各ルートの総PERの閾値などの第3の通信品質基準に鑑みて実行されてもよい。
図3Cのルートを選択するステップ160は、PERなどのルート通信品質を推定するステップ160Bと、このルートのPER閾値などの第3の通信品質基準を満たさないルート設定を廃棄するステップ160Cと、第3の通信品質基準を満たすルートの中で最低レイテンシを有するルートを選択するステップ160Eとを含む。最低レイテンシを有するルートを選択するステップ160は、推定されたルートレイテンシに基づいてルートをランク付けするステップ160D、特に第3の通信品質基準、すなわちルートPER閾値を満たすルートをランク付けするステップも含んでもよい。
【0053】
ルート選択の方法100は、ネットワークコントローラ30ユニットなどの制御システムによって実行されてもよく、ネットワーク10の2つもしくはそれ以上のノードもしくは基地局1~4に分散された制御システムによって実行されてもよく、またはインターネットなどを介してワイヤレス通信ネットワーク10に通信可能に接続された通信システムにおける別個に配置された制御システムによって実行されてもよい。このような制御システム40の一例が
図4に示されている。制御システム40は、ルート選択方法100の機能を提供する処理およびメモリ手段を含むコンピュータベースのシステムであり、ワイヤレス通信ネットワーク10のノード1~4との通信のための通信部41を含む。制御システム40は、
第1の通信品質基準に鑑みてCPを選択するステップ130を実行するためのCP選択部42と、
選択されたCPを物理層のさらなるパラメータを用いて評価する(140)ためのパラメータ評価部43と、
推定最低レイテンシを提供し、かつ、第2の通信品質基準も満たすパラメータ設定を選択する(150)ためのリンク設定選択部44と、
最低レイテンシを提供し、好ましくは第3の通信品質基準を満たすルートを選択する(160)ためのルート選択部45とで構成される。
【0054】
制御システム40は、ネットワークコントローラ30などの単一のユニットで実現されてもよい。
図4は、コンピュータプログラムを格納するためのCDの形態のコンピュータプログラム製品50も示している。ネットワークコントローラ30または制御システム40などの1つまたは複数のコンピュータで実行されたときに、コンピュータ(たとえば、コントローラ30または制御システム40)に、好ましくは特定の実施形態のうちの1つまたは複数の実施形態を含む記載されているルート選択方法100を実行させるこのようなコンピュータプログラムが提供される。
【0055】
ワイヤレス通信システムにおけるルート選択の方法100およびこの方法を実行するように構成された制御システム40が実施形態に記載されている。この方法は、第1のノード1と第2のノード2との間のルートを選択するステップを含み、
複数の考えられるルートR1,R2,R3,R4を評価するステップ110を備え、少なくとも1つのルートR2,R3,R4は、第1のノードと第2のノードとの間に第3のノード3,4を含み、上記方法はさらに、
考えられるルートの中で最低レイテンシを有するルートを選択するステップ160を備える。
【0056】
特に、方法100は、
考えられるルートの各リンクについてパラメータ設定を選択するステップ120を含み、上記選択するステップ120は、
サイクリックプレフィックスの長さを選択するステップ130と、
選択されたサイクリックプレフィックスと物理層の少なくとも1つのさらなるパラメータのさまざまな設定との組み合わせを評価するステップ140と、
推定最低レイテンシを有し、かつ、少なくとも1つの通信品質基準を満たすパラメータ設定を選択するステップ150とを備える。
【0057】
本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で変更されてもよい。