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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】物品吊り下げ部材
(51)【国際特許分類】
   A47F 5/00 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
A47F5/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021098212
(22)【出願日】2021-06-11
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591218972
【氏名又は名称】株式会社美工
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】細野 明彦
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0071181(US,A1)
【文献】特開2001-62288(JP,A)
【文献】登録実用新案第3214294(JP,U)
【文献】登録実用新案第3115378(JP,U)
【文献】登録実用新案第3162720(JP,U)
【文献】米国特許第5908119(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
展示用ボードに設けられた貫通孔に取り付けられて、物品吊り下げ部に物品を吊り下げることが可能な物品吊り下げ部材において、相対的にボード厚みが小さい薄肉展示用ボードおよび相対的にボード厚みが大きい厚肉展示用ボードのどちらにも取り付け可能とされているものであって、
略方形の板状をなし、物品吊り下げ部が前方に突出するように固定されて左右端部が各展示用ボードの貫通孔左右縁部に前側から当接する前側当接部と
展示用ボードの貫通孔上縁部に当接する上側当接部と
上端部が上側当接部に固定された縦向き部分と、縦向き部分の下端部から前方に延び、かつ、下面に各展示用ボードの貫通孔下縁部に当接する下側当接部が形成されている横向き部分とを有する弾性変形可能な弾性変形部とを備えており、
上側当接部は、薄肉展示用ボードの貫通孔上縁部に下側から当接する第1の上面と、第1の上面の後端から上方に延びて薄肉展示用ボードの貫通孔上縁部に後側から当接する第1の前面と、第1の前面の上端から後方に延びて厚肉展示用ボードの貫通孔上縁部に下側から当接する第2の上面と、第2の上面の後端から上方に延びて厚肉展示用ボードの貫通孔上縁部に後側から当接する第2の前面とを有していることを特徴とする物品吊り下げ部材。
【請求項2】
側当接部は、横向き部分の下面に形成されて各展示用ボードの貫通孔下縁部に前側から当接するようになされた段差面と、横向き部分の下面に形成されて各展示用ボードの貫通孔下縁部に上側から当接するようになされた複数の突起とによって形成されていることを特徴とする請求項1の物品吊り下げ部材。
【請求項3】
弾性変形部の縦向き部分に、厚肉展示用ボードの貫通孔の左右縁部に後側から当接し、薄肉展示用ボードの貫通孔の左右縁部に後側から若干の距離をおいて対向する突起が設けられていることを特徴とする請求項2の物品吊り下げ部材。
【請求項4】
展示用ボードに設けられた貫通孔に取り付けられて、物品吊り下げ部に物品を吊り下げることが可能な物品吊り下げ部材において、相対的にボード厚みが小さい薄肉展示用ボードおよび相対的にボード厚みが大きい厚肉展示用ボードのどちらにも取り付け可能とされているものであって、
略方形の板状をなし、物品吊り下げ部が前方に突出するように固定されて左右端部が各展示用ボードの貫通孔左右縁部に前側から当接する前側当接部と、
各展示用ボードの貫通孔上縁部に当接する上側当接部と、
上端部が上側当接部の下面後端部の下方に固定され、略L形となされたL字部分と、L字部分の下端部から下方に延びた曲線部を介して前方に延び、かつ、下面に各展示用ボードの貫通孔下縁部に当接する下側当接部が形成されている横向き部分とを有する弾性変形可能な弾性変形部とを備えており、
上側当接部は、薄肉展示用ボードの貫通孔上縁部に下側から当接する第1の上面と、第1の上面の後端から上方に延びて薄肉展示用ボードの貫通孔上縁部に後側から当接する第1の前面と、第1の前面の上端から後方に延びて厚肉展示用ボードの貫通孔上縁部に下側から当接する第2の上面と、第2の上面の後端から上方に延びて厚肉展示用ボードの貫通孔上縁部に後側から当接する第2の前面とを有していることを特徴とする物品吊り下げ部材。
【請求項5】
下側当接部は、横向き部分の下面に形成されて各展示用ボードの貫通孔下縁部に前側から当接するようになされた段差面と、横向き部分の下面に形成されて各展示用ボードの貫通孔下縁部に上側あるいは後側から当接するようになされた複数の突起とによって形成されていることを特徴とする請求項4の物品吊り下げ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、展示用ボードに設けられた貫通孔に取り付けられて、物品を吊り下げることが可能な物品吊り下げ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
台紙などの展示用ボードに設けられた貫通孔に取り付けられて、物品を吊り下げることが可能な物品吊り下げ部材は、特許文献1などに開示されており、種々の形状のものが市販されている。
ここで、展示用ボードとしては、一般的に、2mmのものと3mmのものとがあり、物品吊り下げ部材も2mmのボード用のものと3mmのボード用のものとが製作されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6820996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の物品吊り下げ部材では、展示用ボードの厚みに応じて物品吊り下げ部材を用意する必要があるため、手間が掛かるという問題があり、また、展示用ボードの厚みが変更になった場合、従来使用していた物品吊り下げ部材が使えなくなるという問題もあった。
【0005】
この発明の目的は、展示用ボードの異なる厚みに対応可能な物品吊り下げ部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
1)展示用ボードに設けられた貫通孔に取り付けられて、物品吊り下げ部に物品を吊り下げることが可能な物品吊り下げ部材において、相対的にボード厚みが小さい薄肉展示用ボードおよび相対的にボード厚みが大きい厚肉展示用ボードのどちらにも取り付け可能とされているものであって、
物品吊り下げ部が前方に突出するように固定されて左右端部が各展示用ボードの貫通孔左右縁部に前側から当接する前側当接部と、
各展示用ボードの貫通孔上縁部に当接する上側当接部と、
各展示用ボードの貫通孔下縁部に当接する下側当接部を有する弾性変形可能な弾性変形部とを備えており、
上側当接部は、薄肉展示用ボードの貫通孔上縁部に下側から当接する第1の上面と、第1の上面の後端から上方に延びて薄肉展示用ボードの貫通孔上縁部に後側から当接する第1の前面と、第1の前面の上端から後方に延びて厚肉展示用ボードの貫通孔上縁部に下側から当接する第2の上面と、第2の上面の後端から上方に延びて厚肉展示用ボードの貫通孔上縁部に後側から当接する第2の前面とを有していることを特徴とする物品吊り下げ部材。
【0007】
2)弾性変形部は、上端部が上側当接部に固定された縦向き部分と、縦向き部分の下端部から前方に延びる横向き部分とを有し、下側当接部は、横向き部分の下面に形成されて各展示用ボードの貫通孔下縁部に前側から当接するようになされた段差面と、横向き部分の下面に形成されて各展示用ボードの貫通孔下縁部に上側あるいは後側から当接するようになされた複数の突起とによって形成されていることを特徴とする前記1)の物品吊り下げ部材。
【0008】
3)弾性変形部の縦向き部分に、厚肉展示用ボードの貫通孔の左右縁部に後側から当接し、薄肉展示用ボードの貫通孔の左右縁部に後側から若干の距離をおいて対向する突起が設けられていることを特徴とする前記3)の物品吊り下げ部材。
【0009】
4)弾性変形部は、上端部が上側当接部の下面後端部の下方に固定され、略L形となされたL字部分と、L字部分の下端部から下方に延びた曲線部を介して前方に延びる横向き部分とを有し、下側当接部は、横向き部分の下面に形成されて各展示用ボードの貫通孔下縁部に前側から当接するようになされた段差面と、横向き部分の下面に形成されて各展示用ボードの貫通孔下縁部に上側あるいは後側から当接するようになされた複数の突起とによって形成されていることを特徴とする前記1)の物品吊り下げ部材。
【0010】
上記において、「~縁部に~側から当接する」は、「~縁部との間に隙間がない」だけを意味するものではなく、~縁部とわずかな隙間をおいて対向していて、「~縁部が~側に移動した場合に~側から当接する」を含むものとする。
【0011】
第1の上面は、薄肉展示用ボードの厚みに等しい前後幅を有しているものとされ、第2の上面は、第1の上面と合わせた前後幅が厚肉展示用ボードの厚みに等しくなる前後幅を有しているものとされる。
【0012】
弾性変形部は、取付け・取外しに際して弾性変形させられ、下側当接部は弾性力によって各展示用ボードの貫通孔下縁部に当接させられる。下側当接部に突起が形成されていると、突起の先端が貫通孔下縁部上面に食い込む、あるいは、突起の前側面が各展示用ボードの貫通孔下縁部に後側から当接することから、下側当接部が前後に動きにくいものとなる。突起の先端は、尖っていることが好ましい。突起としては、左右に延びる突条が所定間隔で前後に数本設けられたものとしてもよく、左右に所定間隔をおいて配された突起が所定間隔で前後に数列設けられたものとしてもよい。いずれにしろ、突起(突条)は複数設けられて、薄肉および厚肉展示用ボードの両方の貫通孔下縁部上面に当接する突起(突条)、薄肉展示用ボードの貫通孔下縁部後面および厚肉展示用ボードの貫通孔下縁部上面に当接する突起(突条)、ならびに、厚肉展示用ボードの貫通孔下縁部後面に当接する突起(突条)を含んでいることが好ましい。
【0013】
薄肉展示用ボードの貫通孔の左右幅は、前側当接部の左右幅よりも小さいものとされ、薄肉展示用ボードの貫通孔の上下高さは、前側当接部の上下高さよりも小さいものとされる。そして、物品吊り下げ部材を薄肉展示用ボードに取り付けるに際しては、薄肉展示用ボードの前側から上側当接部を後傾させて貫通孔に挿通した後、第1の上面を貫通孔上縁部下面に近づけるように上側当接部を押し上げながら、弾性変形部を後方に押し込んでいくと、前側当接部の後面が貫通孔の前側縁部に当接し、上側当接部の第1の上面が貫通孔上縁部の下面に当接し、上側当接部の第1の前面が貫通孔上縁部の後面に当接し、下側当接部が貫通孔下縁部に当接する位置で物品吊り下げ部材が薄肉展示用ボードの貫通孔に係止される。これにより、物品吊り下げ部に種々の方向の力作用したとしても、物品吊り下げ部材は、動くことなく、薄肉展示用ボードに取り付けられた状態を維持することができる。
【0014】
厚肉展示用ボードの貫通孔の左右幅も、前側当接部の左右幅よりも小さいものとされ、厚肉展示用ボードの貫通孔の上下高さは、薄肉展示用ボードの貫通孔の上下高さよりも第1の前面の上下高さだけ大きいものとされる。そして、物品吊り下げ部材を厚肉展示用ボードに取り付けるに際しては、厚肉展示用ボードの前側から上側当接部を後傾させて貫通孔に挿通した後、第2の上面を貫通孔上縁部下面に近づけるように上側当接部を押し上げながら、弾性変形部を後方に押し込んでいくと、前側当接部の後面を貫通孔の前側縁部に当接し、上側当接部の第2の上面が貫通孔上縁部の下面に当接し、上側当接部の第2の前面が貫通孔上縁部の後面に当接し、下側当接部が貫通孔下縁部に当接する位置で物品吊り下げ部材が薄肉展示用ボードの貫通孔に係止される。これにより、物品吊り下げ部に種々の方向の力作用したとしても、物品吊り下げ部材は、動くことなく、厚肉展示用ボードに取り付けられた状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0015】
前記1)の物品吊り下げ部材によると、上側当接部は、薄肉展示用ボードの貫通孔上縁部に下側から当接する第1の上面と、薄肉展示用ボードの貫通孔上縁部に後側から当接する第1の前面と、厚肉展示用ボードの貫通孔上縁部に下側から当接する第2の上面と、厚肉展示用ボードの貫通孔上縁部に後側から当接する第2の前面とを有しているので、薄肉(例えば厚みが2mm)の展示用ボードおよび厚肉(例えば厚みが3mm)の展示用ボードのいずれにも取り付けることができる。
【0016】
前記2)の物品吊り下げ部材によると、薄肉展示用ボードおよび厚肉展示用ボードのいずれに対しても、突起の先端が貫通孔下縁部上面に食い込む、あるいは、突起の前側面が各展示用ボードの貫通孔下縁部に後側から当接することから、下側当接部が前後に動きにくいものとなり、物品吊り下げ部材の適切な取付け状態がより確実に維持される。
【0017】
前記3)の物品吊り下げ部材によると、弾性変形部の縦向き部分に突起が設けられており、厚肉展示用ボードの貫通孔の左右縁部に後側から当接し、薄肉展示用ボードの貫通孔の左右縁部に後側から若干の距離をおいて対向することから、物品吊り下げ部材が貫通孔から前方へ抜け落ちに対するストッパーとなり、物品吊り下げ部材の適切な取付け状態がより確実に維持される。
【0018】
前記4)の物品吊り下げ部材によると、薄肉展示用ボードおよび厚肉展示用ボードのいずれに対しても、突起の先端が貫通孔下縁部上面に食い込む、あるいは、突起の前側面が各展示用ボードの貫通孔下縁部に後側から当接することから、下側当接部が前後に動きにくいものとなり、物品吊り下げ部材の適切な取付け状態がより確実に維持される。さらに、弾性変形部が、上端部が上側当接部の下面後端部の下方に固定され、略L形となされたL字部分と、L字部分の下端部から下方に延びた曲線部を介して前方に延びる横向き部分とを有していることにより、弾性変形部に上方への力が働いた際に、L字部分および曲線部に上方への力が分散され、物品吊り下げ部材の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、この発明による物品吊り下げ部材の第1の実施形態を示す側面図である。
図2図2は、同平面図である。
図3図3は、同底面図である。
図4図4は、同正面図である。
図5図5は、同背面図である。
図6図6は、この発明による物品吊り下げ部材を薄肉の展示用ボードに取り付けた状態を示す一部拡大側図である。
図7図7は、この発明による物品吊り下げ部材を厚肉の展示用ボードに取り付けた状態を示す一部拡大側図である。
図8】この発明による第2の実施形態の物品吊り下げ部材を薄肉の展示用ボードに取り付けた状態を示す一部拡大側図である。
図9】この発明による第2の実施形態の物品吊り下げ部材を厚肉の展示用ボードに取り付けた状態を示す一部拡大側図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の第1の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
以下の説明において、物品吊り下げ部材(1)が展示用ボード(B1)(B2)に取り付けられた使用状態において、展示用ボード(B1)(B2)の表面を臨む側を前側、展示用ボード(B1)(B2)の裏面を臨む側を後側といい、左右は、前側から見ていうものとする。また、上下は使用状態における上下をいうものとする。
【0021】
図1から図7までに、この発明の物品吊り下げ部材(1)の1実施形態を示す。
この物品吊り下げ部材(1)は、台紙等の展示用ボード(B1)(B2)に設けられた縦長方形状の貫通孔(H1)(H2)に取り付けられて、物品を吊り下げることができるようにするもので、薄肉の展示用ボード(B1)にも厚肉の展示用ボード(B2)にも取り付けることができる点に特徴を有している。
【0022】
物品吊り下げ部材(1)は、合成樹脂製の一体品として形成されており、展示用ボード(B1)(B2)の前側に位置して貫通孔(H1)(H2)の左右縁部(貫通孔(H1)(H2)の左右面を形成している展示用ボード(B1)(B2)の部分)に前側から当接する前側当接部(3)と、前面が前側当接部(3)の後面に固定されて貫通孔(H1)(H2)の上縁部(貫通孔(H1)(H2)の上面を形成している展示用ボード(B1)(B2)の部分)に下側および後側から当接する上側当接部(4)と、貫通孔(H1)(H2)の下縁部(貫通孔(H1)(H2)の下面を形成している展示用ボード(B1)(B2)の部分)に前側および上側から当接する下側当接部(6)を有し、上端が上側当接部(4)に固定された弾性変形部(5)とからなる。
【0023】
前側当接部(3)の前面中央部に、物品吊り下げ部(2)が前方に突出するように固定されている。物品吊り下げ部(2)は、前後にのびる棒状部(2a)と、棒状部(2a)の前端部において斜め上方に折り曲げられた屈曲部(2b)とからなる。
【0024】
物品吊り下げ部材(1)の物品吊り下げ部(2)には、複数の物品を吊り下げることができる。各展示用ボード(B1)(B2)には、通常、複数の物品吊り下げ部材(1)が取付け可能なように、複数の貫通孔(H1)(H2)が設けられる。貫通孔(H1)(H2)は、通常、方形とされ、その左右幅および上下高さは、使用される物品吊り下げ部材(1)の形状に合わせて形成することができる。
【0025】
前側当接部(3)は、略方形の板状をなし、貫通孔(H1)(H2)の左右幅よりも大きい左右幅と、貫通孔(H1)(H2)の上下高さよりも小さい上下高さを有している。前側当接部(3)は、使用状態において、その左右端部が貫通孔左右縁部(貫通孔(H1)(H2)の左右面を形成している展示用ボード(B1)(B2)の部分)に前側から当接するものとされており、その上下面は、使用状態において、上面が薄肉展示用ボード(B1)の貫通孔(H1)の上面より高い位置でかつ厚肉展示用ボード(B2)の貫通孔(H2)の上面より低い位置にあり、下面が貫通孔(H1)(H2)の下端よりも上に位置するようになされている。前側当接部(3)の後面の左右の中央部には、貫通孔(H1)(H2)内に位置する補強部(3a)が設けられている。
【0026】
上側当接部(4)は、薄肉展示用ボード(B1)の貫通孔(H1)の上縁部に下側から当接する第1の上面(11)と、第1の上面(11)の後端から上方に延びて薄肉展示用ボード(B1)の貫通孔(H1)の上縁部に後側から当接する第1の前面(12)と、第1の前面(12)の上端から後方に延びて厚肉展示用ボード(B2)の貫通孔(H2)の上縁部に下側から当接する第2の上面(13)と、第2の上面(13)の後端から上方に延びて厚肉展示用ボード(B2)の貫通孔(H2)の上縁部に後側から当接する第2の前面(14)とを有している。
【0027】
弾性変形部(5)は、上端部が上側当接部(4)の下面後端部に固定された縦向き部分(15)と、縦向き部分(15)の下端部から曲線部(17)を介して前方に延びる横向き部分(16)とからなり、縦向き部分(15)が上側当接部(4)に対して前後に弾性変形可能とされ、横向き部分(16)が縦向き部分(15)に対して上下に弾性変形可能とされている。
前側当接部(3)の下面は、弾性変形部(5)の横向き部分(16)の上面との間に間隙(弾性変形可能間隙)を有するように形成されている。
【0028】
横向き部分(16)は、上面が面一の後側の薄肉部(16a)および前側の厚肉部(16b)からなり、薄肉部(16a)の下面と厚肉部(16b)の下面との間に形成される段差面(16c)は、展示用ボード(B1)(B2)の前面とほぼ面一になるように形成されている。
【0029】
横向き部分(16)の薄肉部(16a)の下面には、左右の端から端まで延びる複数(図示は全部で3本)の突起(18)が前後に連続するように設けられている。詳細には、突起(18)は、横向き部分(16)の薄肉部(16a)の下面における第1および第2の上面(11)(13)に上下に対向する箇所に設けられている。また、突起(18)は、下から見て細長い長方形であり、その横断面は、三角形とされている。なお、突起(18)の数や形状は上記のものに限定されず、その機能を果たしうる範囲で、適宜設定される。
【0030】
下側当接部(6)は、貫通孔(H1)(H2)の下縁部に前側から当接するようになされた段差面(16c)と、貫通孔(H1)(H2)の下縁部に上側あるいは後側から当接するようになされた複数本の突起(18)とによって形成されている。
【0031】
縦向き部分(15)の左右両側面それぞれの同じ高さ位置には、突起(19)が設けられている。突起(19)は、横から見ると長方形であり、上下から見ると三角形とされている。突起(19)は、好ましくは、縦向き部分(15)が貫通孔を前方から後方へは通過しやすく、かつ、後方から前方へは通過しにくくなるように、上下から見ると頂点が突起(19)の前後方向中央より前方に位置する三角形とされる。なお、突起(19)の形状は上記のものに限定されず、その機能を果たしうる範囲で、適宜設定される。
【0032】
図6に、物品吊り下げ部材(1)が薄肉の展示用ボード(B1)に取り付けられた状態を示し、図7に、物品吊り下げ部材(1)が厚肉の展示用ボード(B2)に取り付けられた状態を示している。
【0033】
図6において、物品吊り下げ部材(1)を薄肉展示用ボード(B1)に取り付けるに際しては、薄肉展示用ボード(B1)の前側から上側当接部(4)を後傾させて貫通孔(H1)に挿通した後、第1の上面(11)を貫通孔(H1)の上縁部の下面に近づけるように上側当接部(4)を押し上げながら、弾性変形部(5)を後方に押し込んでいくと、弾性変形部(5)は弾性変形しながら貫通孔(H1)へ挿入されていき、前側当接部(3)の後面を貫通孔(H1)の前側縁部に当接し、上側当接部(4)の第1の上面(11)が貫通孔(H1)の上縁部の下面に当接し、上側当接部(4)の第1の前面(12)が貫通孔(H1)の上縁部の後面に当接し、さらに、下側当接部(6)の段差面(16c)が貫通孔(H1)の下縁部に前側から当接する位置で物品吊り下げ部材(1)は貫通孔(H1)に係止される。この状態において、下側当接部(6)の複数本の突起(18)の前側に位置する部分が貫通孔(H1)の下縁部に上側から当接する、あるいは、貫通孔(H1)の下縁部に後側から当接する。これにより、物品吊り下げ部(2)に種々の方向の力作用したとしても、物品吊り下げ部材(1)は、動くことなく、薄肉展示用ボード(B1)に取り付けられた状態を維持することができる。
【0034】
図7において、物品吊り下げ部材(1)を厚肉展示用ボード(B2)に取り付けるに際しては、厚肉展示用ボード(B2)の前側から上側当接部(4)を後傾させて貫通孔(H2)に挿通した後、第1の上面(11)を貫通孔(H2)の上縁部の下面に近づけるように上側当接部(4)を押し上げながら、弾性変形部(5)を後方に押し込んでいくと、弾性変形部(5)は弾性変形しながら貫通孔(H2)へ挿入されていき、前側当接部(3)の後面を貫通孔(H2)の前側縁部に当接し、上側当接部(4)の第2の上面(13)が貫通孔(H2)の上縁部の下面に当接し、上側当接部(4)の第2の前面(14)が貫通孔(H2)の上縁部の後面に当接し、さらに、下側当接部(6)の段差面(16c)が貫通孔(H2)の下縁部に前側から当接する位置で物品吊り下げ部材(1)は貫通孔(H2)に係止される。この状態において、下側当接部(6)の複数本の突条(18)のうち、最も後側に位置する突起(18)の前側面が貫通孔(H2)の下縁部に後側から当接するとともに、残る全ての部分が貫通孔(H2)の下縁部に上側から当接する。これにより、物品吊り下げ部(2)に種々の方向の力作用したとしても、物品吊り下げ部材(1)は、動くことなく、厚肉展示用ボード(B2)に取り付けられた状態を維持することができる。
【0035】
図6および図7において、物品吊り下げ部材(1)を各展示用ボード(B1)(B2)から取り外すに際しては、弾性変形部(5)の横向き部分(16)における厚肉部(16b)を上方に押し上げると、横向き部分(16)が上方へ弾性変形し、下側当接部(6)の段差面(16c)および突条(突起)(18)による貫通孔(H1)(H2)の下縁部に対する当接が解除され、下側当接部(6)を貫通孔(H1)(H2)から前方へ引き出すことが可能となる。下側当接部(6)を貫通孔(H1)(H2)から前方へ引き出した後、上側当接部(4)を後傾させて貫通孔(H1)(H2)から前方へ引き抜くと、物品吊り下げ部材(1)は各展示用ボード(B1)(B2)から完全に取り外される。
【0036】
上記のように、第1の実施形態の物品吊り下げ部材(1)によると、各当接部(3)(4)(6)が貫通孔縁部に当接していることで、物品吊り下げ部(2)に物品を吊り下げたり、物品吊り下げ部(2)から物品を取り外したりする際に、物品吊り下げ部(2)に種々の方向の力作用したとしても、取り付けられる展示用ボードが薄肉および厚肉のいずれ(B1)(B2)であっても物品吊り下げ部材(1)は、動くことなく、展示用ボード(B1)(B2)に取り付けられた状態を維持することができる。また、取り付けられる展示用ボードが薄肉および厚肉のいずれ(B1)(B2)であっても、弾性変形部(5)を弾性変形させることで、物品吊り下げ部材(1)の取付け・取外しを容易に行うことができる。
【0037】
次に、この発明の第2の実施の形態を図8および図9を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成を有している物品吊り下げ部(2)、前側当接部(3)、上側当接部(4)については説明を省略する。
【0038】
物品吊り下げ部材(100)は、上端が上側当接部(4)に固定された弾性変形部(150)を有している。弾性変形部(150)は、上端部が上側当接部(4)の下面後端部の下方に固定され、略L形となされたL字部分(115)と、L字部分(115)の下端部から下方に延びた曲線部(117)を介して前方に延びる横向き部分(116)とからなり、L字部分(115)が上側当接部(4)に対して前後および上下に弾性変形可能とされ、横向き部分(116)がL字部分(115)に対して上下に弾性変形可能とされている。
前側当接部(3)の下面は、弾性変形部(150)の横向き部分(116)の上面との間に間隙(弾性変形可能間隙)を有するように形成されている。
【0039】
詳細には、L字部分(115)は、上側当接部(4)の下面後端部から下方に延び、かつ、前方に傾斜させられた傾斜部(118)と、傾斜部(118)の下端から後方に伸びた横向部(119)とからなる。傾斜部(118)および横向部(119)の境目が屈曲部(120)となっている。傾斜部(118)、横向部(119)および屈曲部(120)の構成によって、L字部分(115)は上側当接部(4)に対して前後および上下に弾性変形可能とされている。
【0040】
横向き部分(116)は、上面が面一の後側の薄肉部(116a)および前側の厚肉部(116b)からなり、薄肉部(116a)の下面と厚肉部(116b)の下面との間に形成される段差面(116c)は、展示用ボード(B1)(B2)の前面とほぼ面一になるように形成されている。
【0041】
横向き部分(116)の薄肉部(116a)の下面には、左右の端から端まで延びる複数(図示は全部で3本)の突起(180)が前後に連続するように設けられている。詳細には、突起(180)は、横向き部分(16)の薄肉部(16a)の下面における第1および第2の上面(11)(13)に上下に対向する箇所に設けられている。また、突起(180)は、下から見て細長い長方形であり、その横断面は、三角形とされている。なお、突起(180)の数や形状は上記のものに限定されず、その機能を果たしうる範囲で、適宜設定される。
【0042】
下側当接部(160)は、貫通孔(H1)(H2)の下縁部に前側から当接するようになされた段差面(116c)と、貫通孔(H1)(H2)の下縁部に上側から当接するようになされた複数本の突起(180)とによって形成されている。
【0043】
図8において、物品吊り下げ部材(100)を薄肉展示用ボード(B1)に取り付けるに際しては、薄肉展示用ボード(B1)の前側から上側当接部(4)を後傾させて貫通孔(H1)に挿通した後、第1の上面(11)を貫通孔(H1)の上縁部の下面に近づけるように上側当接部(4)を押し上げながら、弾性変形部(150)を後方に押し込んでいくと、弾性変形部(150)は弾性変形しながら貫通孔(H1)へ挿入されていき、前側当接部(3)の後面が貫通孔(H1)の前側縁部に当接し、上側当接部(4)の第1の上面(11)が貫通孔(H1)の上縁部の下面に当接し、上側当接部(4)の第1の前面(12)が貫通孔(H1)の上縁部の後面に当接し、さらに、下側当接部(160)の段差面(116c)が貫通孔(H1)の下縁部に前側から当接する位置で物品吊り下げ部材(1)は貫通孔(H1)に係止される。この状態において、下側当接部(160)の複数本の突起(180)の前側に位置する部分が貫通孔(H1)の下縁部に上側から当接する、あるいは、貫通孔(H1)の下縁部に後側から当接する。これにより、物品吊り下げ部(2)に種々の方向の力作用したとしても、物品吊り下げ部材(1)は、動くことなく、薄肉展示用ボード(B1)に取り付けられた状態を維持することができる。
【0044】
図9において、物品吊り下げ部材(100)を厚肉展示用ボード(B2)に取り付けるに際しては、厚肉展示用ボード(B2)の前側から上側当接部(4)を後傾させて貫通孔(H2)に挿通した後、第1の上面(11)を貫通孔(H2)の上縁部の下面に近づけるように上側当接部(4)を押し上げながら、弾性変形部(5)を後方に押し込んでいくと、弾性変形部(150)は弾性変形しながら貫通孔(H2)へ挿入されていき、前側当接部(3)の後面が貫通孔(H2)の前側縁部に当接し、上側当接部(4)の第2の上面(13)が貫通孔(H2)の上縁部の下面に当接し、上側当接部(4)の第2の前面(14)が貫通孔(H2)の上縁部の後面に当接し、さらに、下側当接部(160)の段差面(116c)が貫通孔(H2)の下縁部に前側から当接する位置で物品吊り下げ部材(1)は貫通孔(H2)に係止される。この状態において、下側当接部(160)の複数本の突起(180)のうち、最も後側に位置する突起(180)の前側面が貫通孔(H2)の下縁部に後側から当接するとともに、残る全ての部分が貫通孔(H2)の下縁部に上側から当接する。これにより、物品吊り下げ部(2)に種々の方向の力作用したとしても、物品吊り下げ部材(100)は、動くことなく、厚肉展示用ボード(B2)に取り付けられた状態を維持することができる。
【0045】
図8および図9において、物品吊り下げ部材(100)を各展示用ボード(B1)(B2)から取り外すに際しては、弾性変形部(150)の横向き部分(160)における厚肉部(116b)を上方に押し上げると、横向き部分(116)が上方へ弾性変形し、下側当接部(160)の段差面(116c)および突起(180)による貫通孔(H1)(H2)の下縁部に対する当接が解除され、下側当接部(160)を貫通孔(H1)(H2)から前方へ引き出すことが可能となる。下側当接部(160)を貫通孔(H1)(H2)から前方へ引き出した後、上側当接部(4)を後傾させて貫通孔(H1)(H2)から前方へ引き抜くと、物品吊り下げ部材(100)は各展示用ボード(B1)(B2)から完全に取り外される。
【0046】
上記のように、第2の実施形態の物品吊り下げ部材(100)によると、各当接部(3)(4) (160)が貫通孔縁部に当接していることで、物品吊り下げ部(2)に物品を吊り下げたり、物品吊り下げ部(2)から物品を取り外したりする際に、物品吊り下げ部(2)に種々の方向の力作用したとしても、取り付けられる展示用ボードが薄肉および厚肉のいずれ(B1)(B2)であっても物品吊り下げ部材(1)は、動くことなく、展示用ボード(B1)(B2)に取り付けられた状態を維持することができる。また、取り付けられる展示用ボードが薄肉および厚肉のいずれ(B1)(B2)であっても、弾性変形部(150)を弾性変形させることで、物品吊り下げ部材(1)の取付け・取外しを容易に行うことができる。さらに、L字部分(115)が上側当接部(4)に対して前後および上下に弾性変形可能とされていることで、物品吊り下げ部材(100)の各展示用ボード(B1)(B2)への取り付け時および取り外し時に下側当接部(160)に対して上方への力が働くが、L字部分(115)(特に屈曲部(120))および曲線部(117)によってもその力が吸収されるため、弾性変形部(150)の耐久性が向上し、ひいては物品吊り下げ部材(100)の耐久性が向上する。
【符号の説明】
【0047】
(1):物品吊り下げ部材
(2):物品吊り下げ部
(2a):棒状部
(2b):屈曲部
(3):前側当接部
(3a):補強部
(4):上側当接部
(5)(150):弾性変形部
(6)(160):下側当接部
(11):第1の上面
(12):第1の前面
(13):第2の上面
(14):第2の前面
(15):縦向き部分
(115):L字部分
(16)(116):横向き部分
(16a)(116a):薄肉部
(16b)(116b):厚肉部
(16c)(116c):段差面
(17)(117):曲線部
(18)(180):突条(突起)
(B1):薄肉展示用ボード
(H1):貫通孔
(B2):厚肉展示用ボード
(H2):貫通孔
【要約】
【課題】展示用ボードの異なる厚みに対応可能な物品吊り下げ部材を提供する。
【解決手段】左右端部が各展示用ボードB1,B2の貫通孔左右縁部に前側から当接する前側当接部3と、各展示用ボードB1,B2の貫通孔上縁部に当接する上側当接部4と、各展示用ボードB1,B2の貫通孔下縁部に当接する下側当接部6を有する弾性変形可能な弾性変形部5とを備えている。上側当接部4は、薄肉展示用ボードB1の貫通孔上縁部に下側から当接する第1の上面11と、第1の上面11の後端から上方に延びて薄肉展示用ボードB1の貫通孔上縁部に後側から当接する第1の前面12と、第1の前面12の上端から後方に延びて厚肉展示用ボードB2の貫通孔上縁部に下側から当接する第2の上面13と、第2の上面13の後端から上方に延びて厚肉展示用ボードB2の貫通孔上縁部に後側から当接する第2の前面14とを有している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9