(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】下半身用衣類
(51)【国際特許分類】
A41B 9/02 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
A41B9/02 M
A41B9/02 Q
(21)【出願番号】P 2021501899
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2020005489
(87)【国際公開番号】W WO2020170920
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2019027476
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 親彦
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 孝臣
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-178312(JP,A)
【文献】登録実用新案第3137929(JP,U)
【文献】登録実用新案第3210833(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0104293(US,A1)
【文献】国際公開第2019/004426(WO,A1)
【文献】特開2007-239124(JP,A)
【文献】国際公開第2009/123270(WO,A1)
【文献】特開2005-264411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B9/02-9/04
A41C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向と前記第1の方向と略直交する第2の方向とで伸縮性が異なる編地を用いた下半身用衣類であって、
前記第1の方向の伸縮性が前記第2の方向の伸縮性よりも大きく、前記第1の方向が前記第2の方向よりもよく伸びてよく縮み、
平面上に
ウエストラインが略水平方向になるように載置した前記下半身用衣類を腹側から見た場合に少なくとも中央部は前記第1の方向が上下方向であり、
平面上にウエストラインが略水平方向になるように載置した前記下半身用衣類を背中側から見た場合に前記第1の方向がウエストラインの全長において前記ウエストラインに略直交して胴回り方向に伸びにくく、ウエスト部にウエストバンド部が存在せず、
前記中央部に穴が設けられていることを特徴とする、下半身用衣類。
【請求項2】
第1の方向と前記第1の方向と略直交する第2の方向とで伸縮性が異なる編地を用いた下半身用衣類であって、
前記第1の方向の伸縮性が前記第2の方向の伸縮性よりも大きく、前記第1の方向が前記第2の方向よりもよく伸びてよく縮み、
前記下半身用衣類を着用した起立状態を腹側から見た場合に少なくとも中央部は前記第1の方向が上下方向であり、
前記下半身用衣類を着用した起立状態を背中側から見た場合に前記第1の方向がウエストラインの少なくとも中央部において前記ウエストラインに略直交して胴回り方向に伸びにくく、ウエスト部にウエストバンド部が存在せず、
前記中央部に穴が設けられていることを特徴とする、下半身用衣類。
【請求項3】
前記穴は、前記第1の方向よりも前記第2の方向に長い、ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の下半身用衣類。
【請求項4】
前記穴は、前記第1の方向よりも前記第2の方向に長い略三角形形状であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の下半身用衣類。
【請求項5】
前記穴は、左右対称形状であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の下半身用衣類。
【請求項6】
前記下半身用衣類は、前記中央部における肌当接面の逆面に前記穴を覆う被覆編地をさらに含むことを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれかに記載の下半身用衣類。
【請求項7】
前記被覆編地における編地端であって前記中央部の第2の方向の編地端が前記中央部に接合され、前記被覆編地における編地端であって前記中央部の第1の方向の編地端の少なくとも片側が前記中央部に接合されていないことを特徴とする、請求項6に記載の下半身用衣類。
【請求項8】
前記被覆編地における編地端であって前記中央部の第2の方向の編地端の少なくとも上下方向における中間以外が前記中央部に接合され、前記被覆編地における編地端であって前記中央部の第1の方向の編地端の少なくとも下側が前記中央部に接合されていないことを特徴とする、請求項6に記載の下半身用衣類。
【請求項9】
前記下半身用衣類が前開き仕様であって、前記被覆編地における編地端であって前記中央部の第2の方向の編地端の上下方向における中間以外が前記中央部に接合され、前記中間が前記中央部に接合されていないことを特徴とする、請求項8に記載の下半身用衣類。
【請求項10】
前記下半身用衣類が前閉じ仕様であって、前記被覆編地における編地端であって前記中央部の第2の方向の編地端の上下方向の全てが前記中央部に接合されていることを特徴とする、請求項8に記載の下半身用衣類。
【請求項11】
前記被覆編地は、左右方向に少なくとも2つの編地が接合されて形成されていることを特徴とする、請求項6~請求項10のいずれかに記載の下半身用衣類。
【請求項12】
前記被覆編地は、前記被覆編地を平面上に載置し、腹側から見た場合において、左被覆編地と右被覆編地とが対向する編地端の少なくとも下方の型紙形状が曲線状であり、前記左被覆編地の曲線状を含む編地端と、前記右被覆編地の曲線状を含む生地端とが接合されていることを特徴とする、請求項11に記載の下半身用衣類。
【請求項13】
前記被覆編地の接合位置は少なくとも左右方向の中央で、かつ、前記第1の方向に沿っていることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の下半身用衣類。
【請求項14】
前記被覆編地は、ウエストから股下へ左右幅が狭くなる部分を備えた形状であることを特徴とする、請求項6~請求項10のいずれかに記載の下半身用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚部と腹部と臀部とを被覆するパンティ部を備えたタイツやストッキング等、腹部と臀部とを被覆する下半身肌着であるボクサーパンツ(ボクサーショーツ)やガードル等の下半身用衣類に関し、下半身の動きに対して追従しやすく履き心地のよい下半身用衣類に関する。なお、本発明における下半身用衣類は男性用および女性用に限定されないことに加えて、少なくとも腹部と臀部とを被覆する下半身用衣類であればよく、脚部を備える場合には脚部を被覆する丈の長さには特に限定されるものではない。また、肌着用であってもスポーツ用であっても構わず、その用途は限定されるものではない。なお、腹部とは主として下腹部を指すものである。
【背景技術】
【0002】
伸縮性が大きい(よく伸びてよく縮む)生地および/または緊締力の大きい(伸びにくく締め付けて身体に密着する)生地を採用して、これらの生地を適宜使い分けた下半身用衣類が知られている。なお、この生地としては伸縮性の観点から編地が特に好ましい。このような下半身用衣類の1つとして、肌着が挙げられる。ここで、肌着は、均一な着圧分布で良好なフィット感を確保するとともに、身体の動きに対して突っ張り感やだぶつき感が生じることなく、着用時の美観を向上させる機能を備える。
【0003】
このような肌着の1つであるボクサーパンツは、平面的な基準パターンに沿って裁断された身頃部、マチ部、前立て部の各生地片を縫製することにより構成されている。このような生地片として、日常生活での様々な動作を行なう際に、その動きを妨げないように伸縮性を備えたフライス編等のヨコ編地が用いられることが多い。
しかし、身体を平面上に投影したような平面的なパターンに沿って裁断された生地片を縫製して立体形状に仕立て上げても、三次元の複雑な曲面形状を呈する人の腹部、臀部、脚部に対応するのは極めて困難であり、不快な着圧を回避するためにパターンを大きめに構成すると、だぶつきが生じて脚部が臀部側に引き上がったりして着心地が悪くなるばかりか美観が損なわれるという問題点があった。そのため、本願出願人により、この問題点を解決する肌着が開発されて、特開2016-050367号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1に開示された肌着は、身頃部と、前立て部と、マチ部とを備え、身頃部と身頃部に形成された前刳りに接合される前立て部とで形成される胴部上縁に腰部緊締部材が設けられ、身頃部と身頃部に形成された股刳りに接合されるマチ部とで脚部を挿通する裾部が形成されている肌着であって、刳り深さ方向に沿って刳り幅が次第に大きくなり刳り幅が最大になる部位を備え、最大刳り深さが臀溝に対応する位置またはその近傍位置となる後股刳りが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された肌着(実施の形態に例示されたボクサーパンツ)によると、後股刳りの刳り幅が刳り深さ方向に沿って次第に大きくなり、刳り幅が最大になる部位を備えているので、刳り幅が小さい部位ほど裾部の生地量が増し、大腿部の周囲、特に臀溝下部で十分な生地量が確保できるようになり、最大刳り深さが臀溝に対応する位置またはその近傍位置に設定されているので、臀部の膨出部位を覆う後身頃の生地量も十分に確保できるようになる。その結果、臀部膨出部から臀溝及び脚部にかけて三次元の複雑な曲面形状に沿ってバランス良く生地が配され、臀部及び大腿部周りの着圧バランスが適正になり、良好なフィット感が得られるようになる点で非常に好ましい。
【0006】
ところで、本願出願人は、特許文献1の
図10(a)に開示された従来の肌着(ボクサーパンツ)のパターン図に鑑みて、特許文献1に開示された肌着とは異なるアプローチで、着用性の好ましい肌着の開発を鋭意進めた。より具体的には、特許文献1に開示された肌着のようにパターン図の形状を工夫するのではなく、従来のパターン図に第1の方向とこの第1の方向と略直交する第2の方向とで伸縮性が異なるという特性を備えた編地をその方向性を考慮して採用することに着目して開発を鋭意進めた。
【0007】
しかしながら、このような編地を単に採用しても、着用性の好ましい肌着を容易には実現することができないという問題点があった。また、限定されるものではないが男性用の下半身用衣類については、局部を包み込むように設けられる膨出部において適度な伸縮性および適度なホールド性を兼ね備える必要があるが、伸縮性が不足して履き心地が阻害される場合も見られた。
【0008】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、主として腹部と臀部とを被覆する下半身用衣類に関し、下半身の動きに対して追従しやすく履き心地のよい下半身用衣類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る下半身用衣類は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のある局面に係る下半身用衣類は、第1の方向と前記第1の方向と略直交する第2の方向とで伸縮性が異なる編地を用いた下半身用衣類であって、前記第1の方向の伸縮性が前記第2の方向の伸縮性よりも大きく、前記第1の方向が前記第2の方向よりもよく伸びてよく縮み、平面上に載置した前記下半身用衣類を腹側から見た場合に少なくとも中央部は前記第1の方向が上下方向であり、前記中央部に穴が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の局面に係る下半身用衣類は、第1の方向と前記第1の方向と略直交する第2の方向とで伸縮性が異なる編地を用いた下半身用衣類であって、前記第1の方向の伸縮性が前記第2の方向の伸縮性よりも大きく、前記第1の方向が前記第2の方向よりもよく伸びてよく縮み、前記下半身用衣類を着用した起立状態を腹側から見た場合に少なくとも中央部は前記第1の方向が上下方向であり、前記中央部に穴が設けられていることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記穴は、前記第1の方向よりも前記第2の方向に長いように構成することができる。
さらに好ましくは、前記穴は、前記第1の方向よりも前記第2の方向に長い略三角形形状であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記穴は、左右対称形状であるように構成することができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記下半身用衣類は、前記中央部における肌当接面の逆面に前記穴を覆う被覆編地をさらに含むように構成することができる。
さらに好ましくは、前記被覆編地における編地端であって前記中央部の第2の方向の編地端が前記中央部に接合され、前記被覆編地における編地端であって前記中央部の第1の方向の編地端の少なくとも片側が前記中央部に接合されていないように構成することができる。
【0013】
さらに好ましくは、前記被覆編地における編地端であって前記中央部の第2の方向の編地端の少なくとも上下方向における中間以外が前記中央部に接合され、前記被覆編地における編地端であって前記中央部の第1の方向の編地端の少なくとも下側が前記中央部に接合されていないように構成することができる。
さらに好ましくは、前記下半身用衣類が前開き仕様であって、前記被覆編地における編地端であって前記中央部の第2の方向の編地端の上下方向における中間以外が前記中央部に接合され、前記中間が前記中央部に接合されていないように構成することができる。
【0014】
さらに好ましくは、前記下半身用衣類が前閉じ仕様であって、前記被覆編地における編地端であって前記中央部の第2の方向の編地端の上下方向の全てが前記中央部に接合されているように構成することができる。
さらに好ましくは、前記被覆編地は、左右方向に少なくとも2つの編地が接合されて形成されているように構成することができる。
【0015】
さらに好ましくは、前記被覆編地は、前記被覆編地を平面上に載置し、腹側から見た場合において、左被覆編地と右被覆編地とが対向する編地端の少なくとも下方の型紙形状が曲線状であり、前記左被覆編地の曲線状を含む編地端と、前記右被覆編地の曲線状を含む生地端とが接合されているように構成することができる。
さらに好ましくは、前記被覆編地の接合位置は少なくとも左右方向の中央で、かつ、前記第1の方向に沿っているように構成することができる。
【0016】
さらに好ましくは、前記被覆編地は、ウエストから股下へ左右幅が狭くなる部分を備えた形状であるように構成することができる。
また、上記目的を達成するため、本発明に係る下半身用衣類は、上述した構成に代えて/加えて、以下の技術的手段を講じるようにしても構わない。
すなわち、本発明のある局面に係る下半身用衣類は、第1の方向と前記第1の方向と略直交する第2の方向とで伸縮性が異なる編地を用いた下半身用衣類であって、前記第1の方向の伸縮性が前記第2の方向の伸縮性よりも大きく、前記第1の方向が前記第2の方向よりもよく伸びてよく縮み、平面上に載置した前記下半身用衣類を腹側から見た場合に少なくとも中央部以外は前記第1の方向が斜め方向であり、平面上に載置した前記下半身用衣類を背中側から見て前記第1の方向が上下方向であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の別の局面に係る下半身用衣類は、第1の方向と前記第1の方向と略直交する第2の方向とで伸縮性が異なる編地を用いた下半身用衣類であって、前記第1の方向の伸縮性が前記第2の方向の伸縮性よりも大きく、前記第1の方向が前記第2の方向よりもよく伸びてよく縮み、前記下半身用衣類を着用した起立状態を腹側から見た場合に少なくとも中央部以外は前記第1の方向が斜め方向であり、前記下半身用衣類を着用した起立状態を背中側から見て前記第1の方向が上下方向であることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前記下半身用衣類は、下腹部および臀部を少なくとも被覆する下肢用衣類であって、前記腹側から見た前記第1の方向が、前記下腹部における斜め方向であり、前記背中側から見た前記第1の方向が、前記臀部における上下方向であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記下半身用衣類は、下腹部および臀部を少なくとも被覆する下肢用衣類であって、1枚の編地の編地端どうしで接合されているように構成することができる。
【0019】
さらに好ましくは、前記下半身用衣類は、前記1枚の編地に加えて腹側から見た場合に中央部に位置して膨出部を形成する中央部編地をさらに含み、前記1枚の編地の編地端どうしで接合されているとともに前記1枚の編地と前記中央部編地とが接合されているように構成することができる。
また、上記目的を達成するため、本発明に係る下半身用衣類は、上述した構成に代えて/加えて、以下の技術的手段を講じるようにしても構わない。
【0020】
すなわち、本発明のある局面に係る第1の方向と前記第1の方向と略直交する第2の方向とで伸縮性が異なる編地を用いた下半身用衣類であって、前記第1の方向の伸縮性が前記第2の方向の伸縮性よりも大きく、前記第1の方向が前記第2の方向よりもよく伸びてよく縮み、平面上にウエストラインが略水平方向になるように載置した前記下半身用衣類を腹側から見た場合に、前記平面上に載置した前記下半身用衣類における左右のラインと前記ウエストラインとの交差部において前記第1の方向が斜め方向であり、平面上にウエストラインが略水平方向になるように載置した前記下半身用衣類を背中側から見て、前記平面上に載置した前記下半身用衣類における前記ウエストラインの左右方向の中点において前記第1の方向が前記ウエストラインと略直交する方向であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の別の局面に係る下半身用衣類は、第1の方向と前記第1の方向と略直交する第2の方向とで伸縮性が異なる編地を用いた下半身用衣類であって、前記第1の方向の伸縮性が前記第2の方向の伸縮性よりも大きく、前記第1の方向が前記第2の方向よりもよく伸びてよく縮み、前記下半身用衣類を着用した起立状態を腹側から見た場合に、前記下半身用衣類を着用した起立状態での前記下半身用衣類における左右のラインとウエストラインとの交差部において前記第1の方向が斜め方向であり、前記下半身用衣類を着用した起立状態を背中側から見て、臀裂に沿った線と前記ウエストラインとの交差部において前記第1の方向がウエストラインと略直交する方向であることを特徴とする。
【0022】
好ましくは、前記下半身用衣類は、下腹部および臀部を少なくとも被覆する下肢用衣類であって、前記腹側から見た前記第1の方向が、前記下腹部における斜め方向であり、前記背中側から見た前記第1の方向が、前記臀部における上下方向であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記下半身用衣類は、下腹部および臀部を少なくとも被覆する下肢用衣類であって、1枚の編地の編地端どうしで接合されているように構成することができる。
【0023】
さらに好ましくは、前記下半身用衣類は、前記1枚の編地に加えて、腹側から見た場合に臍の位置または臍の仮想位置と太腿の付け根位置または太腿の付け根仮想位置とを結んだ線を含む位置に男性の局部を収納するための膨出部を形成する中央部編地をさらに含み、前記1枚の編地の編地端どうしで接合されているとともに前記1枚の編地と前記中央部編地とが接合されているように構成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、下半身の動きに対して追従しやすく履き心地のよい下半身用衣類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】本発明の実施の形態に係るボクサーパンツ100を着用した着用者を腹側から見た正面図である。
【
図1B】本発明の実施の形態に係るボクサーパンツ100を着用した着用者を背中側から見た背面図である。
【
図2A】
図1のボクサーパンツ100を平面に載置した状態における正面図である。
【
図2B】
図1のボクサーパンツ100を平面に載置した状態における背面図である。
【
図3A】本発明の実施の形態に係るボクサーパンツ200を着用した着用者を腹側から見た正面図である。
【
図3B】本発明の実施の形態に係るボクサーパンツ200を着用した着用者を背中側から見た背面図である。
【
図4A】
図3のボクサーパンツ200を平面に載置した状態における正面図である。
【
図4B】
図3のボクサーパンツ200を平面に載置した状態における背面図である。
【
図5】
図1のボクサーパンツ100の型紙を示す平面図(紙面表面が肌に当接する面)である。
【
図6】
図3のボクサーパンツ200の型紙を示す平面図(紙面表面が肌に当接する面)である。
【
図7】
図1のボクサーパンツ100の型紙における第1の方向および第2の方向を説明する平面図である。
【
図8】
図3のボクサーパンツ200の型紙における第1の方向および第2の方向を説明する平面図である。
【
図9A】本発明の実施の形態の変形例に係るボクサーパンツ300を平面に載置した状態における正面図である。
【
図9B】本発明の実施の形態の変形例に係るボクサーパンツ300を平面に載置した状態における背面図である。
【
図10】
図9のボクサーパンツ300の型紙を示す平面図(紙面表面が肌に当接する面)である。
【
図11】
図9のボクサーパンツ300の型紙における第1の方向および第2の方向を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態として、下半身用衣類の一例であるボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200を、図面に基づき詳しく説明する。なお、本発明に係る下半身用衣類は、ボクサーパンツに限定されるものではなく、主として腹部と臀部とを被覆する下半身用衣類であれば構わず、さらに脚部を被覆する下半身用衣類であっても構わず、脚部を備える場合には脚部を被覆する丈の長さには特に限定されるものではない。
【0027】
図1Aはボクサーパンツ100を着用した着用者の正面図(腹側から見た図)であって、
図1Bはその背面図(背中側から見た図)であって、
図2Aはボクサーパンツ100を平面に載置した状態における正面図であって、
図2Bはその背面図である。
図3Aはボクサーパンツ200を着用した着用者の正面図(腹側から見た図)であって、
図3Bはその背面図(背中側から見た図)であって、
図4Aはボクサーパンツ200を平面に載置した状態における正面図であって、
図4Bはその背面図である。
【0028】
これらの
図1~
図4において伸縮性の大きい第1の方向は、仮想的に図示したストレッチラインSに沿った方向である。なお、後述するように、これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200は任意的構成としての被覆編地130および被覆編地230を備えるために、これらの被覆編地130および被覆編地230に覆われてしまうストレッチラインSは、
図1~
図4において点線で示している。
【0029】
さらに、
図5はこのボクサーパンツ100の型紙を示す平面図(紙面表面が肌に当接する面)であって、
図6はこのボクサーパンツ200の型紙を示す平面図であって、
図7は
図5に示したボクサーパンツ100の型紙における第1の方向およびその第1の方向に略直交する第2の方向を説明する平面図であって、
図8は
図6に示したボクサーパンツ200の型紙における第1の方向およびその第1の方向に略直交する第2の方向を説明する平面図である。
【0030】
ここで、ボクサーパンツ100とボクサーパンツ200との差異は、ボクサーパンツ100が膨出部Bを形成するための中央部編地120を備えるが、ボクサーパンツ200がこのような中央部編地を備えないで膨出部BBを形成する点である。この膨出部Bまたは膨出部BBは、
図1Aまたは
図3Aに示すようにボクサーパンツ100またはボクサーパンツ200を男性が着用した起立状態を腹側から見た場合に中央部に表されるとともに、
図2Aまたは
図4Aに示すように平面上に載置したボクサーパンツ100またはボクサーパンツ200を腹側から見た場合に中央部に表される。この膨出部Bまたは膨出部BBは、男性の局部を収納するための膨らみを実現するためのものであって下腹部Uの中央部に備えられている。なお、膨出部Bおよび膨出部BBは本発明に係る下半身用衣類に必須の構成要件ではないが(そのため本発明に係る下半身用衣類は男性用および女性用に限定されるものではない)、膨出部Bおよび膨出部BBを設ける場合には伸縮性の大きい第1の方向が仮想的に図示したストレッチラインSに沿った方向(上下方向)であることが好ましい。このため、中央部編地120における第1の方向およびその第1の方向に略直交する第2の方向は
図7に示す方向になる。なお、このボクサーパンツ100においては、中央部編地120は編地110と同じ種類(同じ編糸で同じ編成)の編地であるとする。
【0031】
これらの図に基づいて、これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200について詳しく説明する。
これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200は、第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)とこの第1の方向と略直交する第2の方向とで伸縮性が異なる編地を用いて形成されている。ここでは、第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)の伸縮性が第2の方向の伸縮性よりも大きく、第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)が第2の方向よりもよく伸びてよく縮む方向であるとする。
【0032】
そして、より具体的には、これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200は、このような編地としてヨコ編地を採用している。ヨコ編地においては、編糸が進む方向であるヨコ方向が(タテ方向よりも)よく伸びてよく縮む第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)になる。その結果、ストレッチラインSに沿った方向がヨコ編地のヨコ方向(第1の方向)でストレッチラインSに沿った方向と略直交する方向がヨコ編地のタテ方向(第2の方向)になる。
【0033】
なお、本発明に係る下半身用衣類に用いられる編地はヨコ編地に限定されるものではなくタテ編地であっても構わない、タテ編地においては、編糸が進む方向であるタテ方向が(ヨコ方向よりも)よく伸びてよく縮む第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)になる。その結果、ストレッチラインSに沿った方向がタテ編地のタテ方向(第1の方向)でストレッチラインSに沿った方向と略直交する方向がタテ編地のヨコ方向(第2の方向)になる。
【0034】
ここで、本発明に係る下半身用衣類の一例であるこれらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200の構造(たとえば、編地片(パーツ片)の形状および個数ならびにそれらの接合方法)には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する技術的特徴を備えたものであれば、どのようなボクサーパンツの構造であっても、ボクサーパンツを構成する編地の種類、編地の型紙(編地片(パーツ片)の形状および個数)およびその編地の接合方法がどのようなものであっても基本的には構わない。そのため、以下に示すボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200の構造自体は単なる例示でしかない。
【0035】
このボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200が備える技術的特徴について説明する。なお、以下においては、ボクサーパンツ100で代表させて説明する場合も、ボクサーパンツ200で代表させて説明する場合もある。
このボクサーパンツ100は、
図1に示すように、ボクサーパンツ100を着用した起立状態を腹側から見た場合に少なくとも中央部以外(膨出部B以外)は第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)が斜め方向であり、ボクサーパンツ100を着用した起立状態を背中側から見て第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)が上下方向であることが技術的特徴である。ここで、このボクサーパンツ100の着用状態でない平面上に載置した状態(商品としてのボクサーパンツ100を広げて平面上に載置した状態)であっても、
図2に示すように、ボクサーパンツ100を腹側から見た場合に少なくとも中央部以外(膨出部B以外)は第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)が斜め方向であり、背中側から見て第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)が上下方向である。
【0036】
また、このボクサーパンツ200は、
図3に示すように、ボクサーパンツ200を着用した起立状態を腹側から見た場合に少なくとも中央部以外(膨出部B以外)は第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)が斜め方向であり、ボクサーパンツ200を着用した起立状態を背中側から見て第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)が上下方向であることが技術的特徴である。ここで、このボクサーパンツ200の着用状態でない平面上に載置した状態(商品としてのボクサーパンツ200を広げて平面上に載置した状態)であっても、
図4に示すように、ボクサーパンツ200を腹側から見た場合に少なくとも中央部以外(膨出部BB以外)は第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)が斜め方向であり、背中側から見て第1の方向(ストレッチラインSに沿った方向)が上下方向である。
【0037】
すなわち、本発明においては、(1)ボクサーパンツ100自体およびボクサーパンツ200自体を見ただけで編地の方向(第1の方向および第2の方向)が視認できる場合、(2)ボクサーパンツ100自体およびボクサーパンツ200自体を見ただけでは編地の方向(第1の方向および第2の方向)を視認できず着用した状態で編地の方向が視認できる場合、の少なくともいずれかの場合で、このような技術的特徴が視認できれば構わない。たとえば、平面上に載置した状態のボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200では第1の方向および第2の方向を明確には視認できなかったが、着用してみると第1の方向および第2の方向を明確に視認できる場合を想定することができる。
【0038】
さらに、このボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200において、腹側から見た第1の方向が、下腹部Uにおける斜め方向であり、背中側から見た第1の方向が、臀部Hにおける上下方向である。なお、このボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200において、下腹部Uの下方または臀部Hの下方であって脚の上方部分である大腿部(より詳しくは右大腿部Rおよび左大腿部L)は太腿の付け根を覆う程度に短いが(脚部を長く覆うものではないが)、本発明に係る下半身用衣類においてはこの大腿部の長さは(脚部を備える場合には脚部の長さも)限定されるものではない。すなわち、ここでは、ボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200は、タイツ等とは異なり、主として下腹部Uおよび臀部Hを覆い太腿部から足首部までの脚部を覆わないために、
図1~
図4に示すように、腹側から見た第1の方向が、下腹部Uにおける斜め方向であり、背中側から見た第1の方向が臀部Hにおける上下方向である。
【0039】
ただし、このような太腿部から足首部までの脚部を全て覆うタイツや脚部の一部分のみを覆うガードル等を含めボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200を含めた本発明に係る下半身用衣類における技術的特徴は、腹側から見た場合に少なくとも中央部以外(膨出部B以外および膨出部BB以外)は第1の方向が、下腹部Uにおける斜め方向であり、背中側から見た第1の方向が、臀部Hにおける上下方向である。
【0040】
そして、このボクサーパンツ100は、
図5に示すように、腹側から見た場合に中央部に位置して膨出部Bを形成するための中央部編地120と、それ以外の部分を形成する編地110とを含み、
図5において実線の両矢示で示すように1枚の編地110の編地端どうしで接合されているとともに1枚の編地110と中央部編地120とが接合されて、
図5において点線の両矢示で示すように胴周りおよび左右の太腿周りで筒状になるように接合されている。
【0041】
また、膨出部BBを形成するための中央部編地を備えないボクサーパンツ200の場合には、
図6に示すように、編地210(のみ)を含み(中央部編地を含まず)、
図6において実線の両矢示で示すように1枚の編地の編地端どうしで接合されて、
図6において点線の両矢示で示すように胴周りおよび左右の太腿周りで筒状になるように接合されている。
【0042】
本実施の形態においては、この接合方法として縫合を採用しているが、本発明がこの縫合に限定されるものではない。すなわち、接合方法については特定の方法に限定されるものではなく、縫合(縫製による接合)であっても構わないし、接着であっても、さらに別の接合方法であっても構わない。ここでは、接合方法として縫合を用いて、
図5および
図6に実線の両矢印で示されるように編地を合わせて縫合することにより、これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200が形成されている。
【0043】
ここで、接合方法として接着を用いる場合には、
図5および
図6に実線の両矢印で示されるように編地を合わせて接着テープを用いて接合することによりこのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200を形成することができる。このような接着方法についても限定されるものではないが、帯状部材の一面に接着材が塗布された接着テープであって、加熱することにより接着材が溶融して生地を熱接着して接合するものが好ましい。なお、このように、この接合には、縫合によるもの、熱圧着によるもの、熱溶着によるもの、熱融着によるもの等を含むことになる。
【0044】
このように、本実施の形態に係るボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200においては、
図5および
図6において実線で示す両矢印に示すように縫合されて胴周りおよび左右の太腿周りで筒状に形成されるとともに、立体化されて形成されている。
さらに、これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200の中央部には穴を備える。より詳しくは、ボクサーパンツ100は中央部編地120に穴122が設けられ、中央部編地を備えないボクサーパンツ200は編地210の中央部に穴212を備える。
【0045】
そして、これらの穴122および穴212は、第1の方向よりも第2の方向に長く、さらに、略三角形形状であること、左右対称形状であること、が好ましい。特に、略三角形形状については、略二等辺三角形の形状であって、頂角が大きな鈍角(120度以上)で長辺が上側であることが好ましい。また、略三角形形状には、三角形の角がR形状に丸められているものを含む。なお、これらの穴122および穴212は、ボクサーパンツ100またはボクサーパンツ200を履くときに間違って足先を入れない程度に、その大きさが(左右の太腿周りにおける筒状の部分の大きさに比べて相当に)小さいこと、その位置がウエストラインWに近いことが好ましい。
【0046】
このように、中央部編地120に設けられた穴122および編地210の中央部に設けられた穴212は、その部分に編地が存在しないことになるために、これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200の中央部に形成される膨出部Bおよび膨出部BBにおける伸縮性を向上させる。すなわち、中央部編地120および編地210の中央部における第1の方向は上下方向であることに加えて、これらの穴122および穴212の存在により、膨出部Bおよび膨出部BBにおける上下方向の伸縮性を向上させる。この結果、局部を包み込むように設けられる膨出部Bおよび膨出部BBにおいてさらに適度な伸縮性を備えることができるために、伸縮性が不足して履き心地が阻害されることを抑制することができる。
【0047】
特に、これらの穴122および穴212は、
・第1の方向よりも第2の方向に長いことにより第1の方向である上下方向の伸縮性を特に向上させることができ、
・略三角形形状(特に略二等辺三角形の形状であって、頂角が大きな鈍角(120度以上)で長辺が上側である)であることにより、(略二等辺三角形の短辺に垂直な)腹部から両足の太腿の方向に向かう方向であって第2の方向よりも第1の方向に近い方向の伸縮性を特に向上させることができ、
、左右対称形状であることにより左右均等に上下方向の伸縮性を特に向上させることができる。
【0048】
また、これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200は、この中央部における肌当接面の逆面(肌当接面の逆面であるので外側または被覆側)にこれらの穴122および穴212を覆う被覆編地130および被覆編地230を備える。なお、これらの被覆編地130および被覆編地230は、本発明に係る下半身用衣類の必須構成ではなく任意的構成である。なお、このボクサーパンツ100においては被覆編地130は編地110と同じ種類(同じ編糸で同じ編成)の編地であって、ボクサーパンツ200においては被覆編地230は編地210と同じ種類(同じ編糸で同じ編成)の編地であるが、これらの被覆編地130および被覆編地230における編地の方向(第1の方向および第2の方向)は特に限定されない。さらに、ボクサーパンツ100においては被覆編地130は編地110と異なる種類の編地であっても、ボクサーパンツ200においては被覆編地230は編地210と異なる種類の編地であっても構わない。また、これらの被覆編地130および被覆編地230は、この中央部を補強する機能も備える。
【0049】
これらの被覆編地130および被覆編地230は、これらの被覆編地における編地端であって中央部の第2の方向の編地端が中央部に接合され、これらの被覆編地における編地端であって中央部の第1の方向の編地端の少なくとも片側が中央部に接合されていない。すなわち、これらの被覆編地130および被覆編地230は、中央部における第2の方向が接合されて第1の方向は接合されていない。
図5に示すように、ボクサーパンツ100においては、2点鎖線で示すように被覆編地130が中央部編地120の穴122を覆うように中央部編地120に接合されるが、被覆編地130の編地端132が接合されて編地端134が接合されない。また、
図6に示すように、ボクサーパンツ200においては、2点鎖線で示すように被覆編地230が編地210の穴212を覆うように編地210に接合されるが、被覆編地230の編地端232が接合されて編地端234が接合されない。
【0050】
このように、被覆編地130および被覆編地230は、接合される編地端および接合されない編地端を備えるために(左右方向が接合され上下方向が接合されていないために)、中央部編地120自体の第1の方向(上下方向)の伸縮性および編地210の中央部における第1の方向(上下方向)の伸縮性を阻害しないことに加えて、膨出部Bおよび膨出部BBにおける適度なホールド性も実現することができる。
【0051】
ここで、このボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200における第1の方向(伸びやすく縮みやすい:地の目と略直交する方向)および第2の方向(伸びにくく縮みにくい:地の目方向)について
図7および
図8を用いて説明する。
第1の方向は、
図7および
図8における太い直線の両矢印のうちの点線で示す方向であって、第2の方向は、
図7および
図8における太い直線の両矢印のうちの実線で示す方向である。さらに、ウエストラインWで示される胴周りは、必ずしも直線であることに限定されるものではないが(着圧や履き心地等の観点から通常は湾曲している)、背中側のウエストラインWの中央部近傍を
図7および
図8に示した1点鎖線で仮想した場合、背中側のウエストラインWに対して第1の方向が略直交することになる。なお、この仮想した1点鎖線は、
図7および
図8に示す点Pと点Qとを結んだ直線PQとも略一致する直線であるとも言える。
【0052】
型紙における地の目方向を上述した方向としたために、これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200におけるウエストラインWは、腹側において斜め方向(第1の方向)に伸びやすく縮みやすく、背中側において第1の方向に略直交する伸びにくく縮みにくい第2の方向がウエスト周方向(胴周り方向)になる。
このため、ボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200においてウエストラインWにおける背中側は胴周り方向に伸びにくくなるのでウエスト部にゴム等でウエストバンド部を形成しなくてもよくなり、むやみにウエストを締め付けることにより履き心地が悪くなることを回避することができる。なお、本発明に係る下半身用衣類が、ウエスト部にゴム等のウエストバンド部を備えないものに限定されるわけではない。
【0053】
さらに、ボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200においてウエストラインWにおける腹側は斜め方向(第1の方向)に伸びやすく縮みやすいために下半身の動きに対して柔軟に伸縮することができるのでボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200が身体からずれることを抑制することができる。この作用効果は、腹側および背中側のウエスト周方向(胴周り方向)の全周において(第1の方向に略直交する伸びにくく縮みにくい)第2の方向をウエスト周方向(胴周り方向)としてしまうと実現し得ないものであり、これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200においては、背中側においてウエスト周方向(胴周り方向)に伸びにくく縮みにくくして、腹側において斜め方向に伸びやすく縮みやすくしたので、ウエストを締め付けることにより履き心地が悪くなることを回避しつつボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200が身体からずれることを抑制することができる。
【0054】
さらに、背中側において伸びやすく縮みやすい第1の方向がウエスト周方向(胴周り方向)と略直交する上下方向であるために、たとえば起立状態から座った状態に下半身を動かした場合に、臀部Hにおける上下方向がよく伸びるためにボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200が身体からずれることを抑制することができる。
ここで、これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200を形成するヨコ編地は、限定されるものではないが、周縁を切りっぱなし仕様とされた編地で構成することも好ましい。また、周縁を切りっぱなし仕様とされたタテ編みの編地であっても構わない。本実施の形態に係るボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200では綿ベアフライス編みの編地のポリウレタンを溶着した切りっぱなし仕様のヨコ編地を採用している。このヨコ編地は、周縁を切りっぱなし仕様(状態)のままで使用するために、熱融着性繊維(たとえば、ポリウレタン繊維等の比較的に低融点の熱融着性繊維が好ましくここでは上述したようにポリウレタン)と該繊維よりも高融点の他の繊維(たとえば、綿、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、キュプラ等の上述した熱融着性繊維よりも高融点の繊維が好ましくここでは上述したように綿)とを含み、予め、熱融着性繊維の融点以上で他の繊維の融点以下の温度で熱セットされて解れ止め処理されるのが好ましい。このように、解れないように周囲が周縁処理(パイピング処理)されていないために肌に直接触れても、履き心地がよいことに加えて、周縁処理のために形成された端部の折り返しの厚みがアウターの衣服に出てしまうこともない。
このように形成され上述した技術的特徴を備えたこのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200は、以下のような作用効果を発現することができる。
【0055】
<第1の作用効果>
これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200におけるウエストラインWは、腹側において斜め方向(第1の方向)に伸びやすく縮みやすく、背中側においてウエスト周方向(第2の方向)に伸びにくい。このため、背中側が胴周り方向に伸びにくいのでウエスト部にゴム等でウエストバンド部を形成しなくてもよくなるとともに、腹部は斜め方向に伸びやすく縮みやすいので、ボクサーパンツが身体からずれることを抑制することができる。
<第2の作用効果>
これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200における背中側の臀部は上下方向に伸びやすく縮みやすい。このため、起立状態から着座した場合に、臀部において編地が突っ張ってしまうことが発生しないのでスムーズに着座動作できるようになる。
【0056】
<第3の作用効果>
これらのボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200は、ボクサーパンツ100の膨出部Bを除けば腹側に接合部を備え背中側に接合部を備えない。このため、背中側に接合線が全く存在せず、また他の部位においても接合線が少ないので、肌に直接触れても、履き心地がよい。
<第4の作用効果>
編地片に切りっぱなし仕様の緯編地を採用した場合には、肌に直接触れても、履き心地がよいことに加えて(肌ストレスと着圧とを低減)、周縁処理のために形成された端部の折り返しの厚みがアウターの衣服に出てしまうこともない。さらに、接合方法として(縫合ではなく)接着テープを採用した場合には、縫合線がないので、肌に直接触れても、履き心地のよく、肌ストレスと着圧とをさらに低減することができる。
【0057】
<第5の作用効果>
ボクサーパンツ100の中央部編地120に設けられた穴122およびボクサーパンツ200の編地210の中央部に設けられた穴212は、その部分に編地が存在しないことになるために伸縮性を向上させることができるので中央部編地120および編地210の中央部における第1の方向(上下方向)の伸縮性を向上させる。この結果、局部を包み込むように設けられる膨出部Bおよび膨出部BBにおいてさらに適度な伸縮性を備えることができるために、伸縮性が不足して履き心地が阻害されることを抑制することができる。
【0058】
[変形例]
以下において、本発明の実施の形態の変形例として、下半身用衣類の一例であるボクサーパンツ300を、
図9~
図11を参照して詳しく説明する。なお、このボクサーパンツ300は、上述した実施の形態に係るボクサーパンツ100と中央部編地を備える点で共通しており(中央部編地を備えないボクサーパンツ200と共通しておらず)、ボクサーパンツ100が膨出部Bを形成するための1枚の被覆編地130を備えるがボクサーパンツ300は膨出部Bを形成するための被覆編地330が少なくとも左右2枚の編地を接合(接着、縫合)しており、さらに、被覆編地330の中央部編地320への接合箇所が異なる。それ以外の構造であって上述した実施の形態と同じ対応する構造(たとえば第1の方向および第2の方向を考慮した編地使い、接合方法、作用効果等)についての説明は、上述した説明と重複するために、ここでは繰り返して説明しない。なお、ボクサーパンツ100と対応する構造についてはボクサーパンツ100の符号(数字のみまたは数字とアルファベットとの組合せ)に200を加算した符号(数字のみまたは数字とアルファベットとの組合せ)をボクサーパンツ300に付している。それらについての説明は、上述した説明と重複するために、ここでは繰り返して説明しない。なお、本変形例が備える特徴をボクサーパンツ200(中央部編地を備えないで膨出部BBを形成するタイプ)へ適用することも可能である。
【0059】
図9Aはボクサーパンツ300を平面に載置した状態における正面図であって、
図9Bはその背面図である。この
図9において伸縮性の大きい第1の方向は、仮想的に図示したストレッチラインSに沿った方向である。なお、このボクサーパンツ300は被覆編地330を備えるために、この被覆編地330に覆われてしまうストレッチラインSは、
図9Aにおいて点線で示している。さらに、
図10はこのボクサーパンツ300の型紙を示す平面図(紙面表面が肌に当接する面)であって、
図11は
図10に示したボクサーパンツ300の型紙における第1の方向およびその第1の方向に略直交する第2の方向を説明する平面図である。
【0060】
このボクサーパンツ300が備えてボクサーパンツ100(およびボクサーパンツ200)が備えない特徴について詳しく説明する。
図9~
図11に示すように、このボクサーパンツ300が備える被覆編地330は、左右方向に少なくとも2つ(ここでは2つ)の左被覆編地330Lと右被覆編地330Rとが接合されて形成されている。なお、上述した実施の形態と同じく、接合方法は限定されるものではなく、接着テープを用いた接合、縫合を用いた接合、非連続的(ドット状など)または非直線状(ジグザグ状など)に形成された接着剤を用いた接合等の方法が採用される。ここでは、
図10に示すように、これらの左被覆編地330Lと右被覆編地330Rとは接着テープを用いて左右方向の中央位置(ウエストから股下へ向かう第1の方向に沿った方向)で接合されている。なお、この接合箇所は肌への直接接触が少ないために縫合であっても肌触りが悪化することは少ない。ただし、伸縮穴322の開口形状、開口面積の影響で、肌触りが悪化する場合は、接着テープや接着剤を用いた接合が好ましい。
【0061】
この場合において、
図10に示すように、左被覆編地330Lと右被覆編地330Rとが対向する部位において、その上方の型紙形状が直線状であるのに対して、下方の型紙形状が曲線状である。さらに、
図9Aおよび
図10に示すように、この被覆編地330は、ウエストから股下へ左右幅が狭くなる部分を備えている。これらのため、この被覆編地330は下側において編地に余裕を持たせた形状を構成して、立体的で下絞りな形状の被覆編地330が構成されて、局部のホールド感を向上させるとともにデザイン的にすっきりした印象を与えることができる。詳しくは、この被覆編地330は、被覆編地330を平面上に載置し、腹側から見た場合において、左被覆編地330Lと右被覆編地330Rとが対向する編地端の少なくとも下方の型紙形状が曲線状であり、左被覆編地330Lの曲線状を含む編地端と、右被覆編地330Rの曲線状を含む生地端とが接合されている。
【0062】
この被覆編地330は、この被覆編地330における編地端であってボクサーパンツ300の中央部の第2の方向(左右方向)の編地端の少なくとも上下方向における中間以外がボクサーパンツ300の中央部(より詳しくは中央部編地320)に接合され、被覆編地330における編地端であってボクサーパンツ300の中央部の第1の方向(上下方向)の編地端の少なくとも下側がボクサーパンツ300の中央部(より詳しくは中央部編地320)に接合されていない。
【0063】
なお、被覆編地330の上下方向の編地上端と中央部編地320の上下方向の編地上端との位置関係において、被覆編地330の編地上端は少し下方に接合しているが、ウエスト部周方向の伸びやすさに合わせて、被覆編地330の編地上端と中央部編地320の編地上端とを一致させてもよく、ウエスト部の周方向の伸びやすさを考慮し、適宜決定すれば良いものであって、限定されるものではない。
【0064】
すなわち、
図9Aおよび
図10に示すように、被覆編地330と中央部編地320とは、被覆編地330の接合部位330ULが中央部編地320の接合部位320ULと接合され、被覆編地330の接合部位330URが中央部編地320の接合部位320URと接合され、被覆編地330の接合部位330DLが中央部編地320の接合部位320DLと接合され、被覆編地330の接合部位330DRが中央部編地320の接合部位320DRと接合される。端的には、被覆編地330の上端332Uおよび被覆編地330の下端332Dが接合されておらず、被覆編地330の左端の上下方向中間部332Lおよび被覆編地330の右端の上下方向中間部332Rが接合されていない。
【0065】
なお、被覆編地330の下端332Dは必ず接合されていないことが好ましいが、被覆編地330の上端332Uは接合されていても構わない。このように被覆編地330の下端332Dを接合しないようにすることにより、局部のホールド感を向上させることができる。また、被覆編地330の上端332Uはウエストの最大伸びを阻害しない点においては中央部編地320と接合されていないことが好ましいが、このボクサーパンツ300の編地310(膨出部以外を1枚でボクサーパンツ300を形成する編地)および中央部編地320の伸縮性等の編地物性によっては被覆編地330の上端332Uを中央部編地320と接合させるようにすることもできる。
【0066】
また、このボクサーパンツ300が前開き仕様である場合には、被覆編地330における編地端であってボクサーパンツ300の中央部の第2の方向の編地端の上下方向における中間以外がボクサーパンツ300の中央部(より詳しくは中央部編地320)に接合され、中間がボクサーパンツ300の中央部(より詳しくは中央部編地320)接合されていない。すなわち、
・接合部位:被覆編地330の接合部位330ULと中央部編地320の接合部位320UL、被覆編地330の接合部位330URと中央部編地320の接合部位320UR、被覆編地330の接合部位330DLと中央部編地320の接合部位320DL、被覆編地330の接合部位330DRと中央部編地320の接合部位320DR
・非接合部位:被覆編地330の左端の上下方向中間部332L、被覆編地330の右端の上下方向中間部332R
となる。
【0067】
そして、このボクサーパンツ300が前閉じ仕様である場合には、被覆編地330における編地端であってボクサーパンツ300の中央部の第2の方向の編地端の上下方向の全てがボクサーパンツ300の中央部(より詳しくは中央部編地320)に接合されている。
すなわち、
・接合部位:被覆編地330の接合部位330ULと中央部編地320の接合部位320UL、被覆編地330の接合部位330URと中央部編地320の接合部位320UR、被覆編地330の接合部位330DLと中央部編地320の接合部位320DL、被覆編地330の接合部位330DRと中央部編地320の接合部位320DR、に加えて、被覆編地330の左端の上下方向中間部332L、被覆編地330の右端の上下方向中間部332Rとなり、被覆編地330の左右両端の上下方向の全長にわたって被覆編地330が中央部編地320に接合されている。
【0068】
これは、被覆編地330の左右両端のいずれか一方端において、その上下方向の中間を含めて上下方向の全長にわたって中央部編地320と被覆編地330とを接合すると、このボクサーパンツ300の着用時において(特に前開き仕様のボクサーパンツ300の伸縮穴312から局部を出して小用を足す時や足して局部を戻した後)、接合した一方端の方向へ編地が引っ張られて逆側のその上下方向の中間を接合していない他方端に負荷がかかりボクサーパンツ300の全体形状が(左右対称性を喪失してしまったりその状態が元に戻りにくくなり)大きく崩れてしまう。このため、前開き仕様の場合には被覆編地330の左右両端ともその上下方向の中間を中央部編地320と接合しないで、左右のいずれか一方端への負荷がかからず、左右均等に負荷がかかるようにしている。
【0069】
一方、前閉じ仕様のボクサーパンツ300の場合には、このような不具合が発生することがないために(基本的には左右均等にしか負荷がかからないために)、被覆編地330の左右両端の上下方向の全長にわたって被覆編地330が中央部編地320に接合されている。
以上のようにして、本変形例に係るボクサーパンツ300によると、ボクサーパンツ100および/またはボクサーパンツ200の作用効果に加えて、上述した作用効果を奏する。
【0070】
以上のようにして、本実施の形態に係るボクサーパンツによると、主として腹部と臀部とを被覆する下半身用衣類の一例であるボクサーパンツにおいて、下半身の動きに対して追従しやすく履き心地のよいボクサーパンツを提供することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、腹部と臀部とを被覆するボクサーパンツ(ボクサーショーツ)、脚部の一部と腹部と臀部とを被覆するガードルまたはパンティ部を備えたタイツまたはストッキング等の下半身用衣類に好適であり、下半身の動きに対して追従しやすく履き心地のよい点で特に好適である。
【符号の説明】
【0072】
100 ボクサーパンツ(中央部編地ありタイプ)
110 編地(膨出部以外を1枚でボクサーパンツを形成する編地)
120 中央部編地(膨出部を形成)
122 伸縮穴
130 被覆編地(補強編地)
200 ボクサーパンツ(中央編地なしタイプ)
210 編地(1枚でボクサーパンツを形成する編地)
212 伸縮穴
230 被覆編地(補強編地)
300 ボクサーパンツ(中央部編地あり部分接合タイプ)
310 編地(膨出部以外を1枚でボクサーパンツを形成する編地)
320 中央部編地(膨出部を形成)
322 伸縮穴
330 被覆編地(補強編地)