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特許7162145スリットを調整可能な押出ヘッド、及びそれを備えた付加製造システム装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】スリットを調整可能な押出ヘッド、及びそれを備えた付加製造システム装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20221020BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20221020BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20221020BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20221020BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221020BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/00
B05C11/10
B29C64/209
B33Y30/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021544440
(86)(22)【出願日】2020-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 CN2020071865
(87)【国際公開番号】W WO2020156134
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】201910071799.6
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201920148380.1
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521336082
【氏名又は名称】牟 振如
【氏名又は名称原語表記】MU, Zhenru
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牟 振如
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0182709(US,A1)
【文献】特開2017-200763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0320272(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107344419(CN,A)
【文献】特開平06-198240(JP,A)
【文献】米国特許第05575851(US,A)
【文献】特開2001-029860(JP,A)
【文献】特開平05-004062(JP,A)
【文献】特開2011-218350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/02
B05C 11/00
B05C 11/10
B29C 64/209
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出に基づく付加製造システムに使用され、
本体であって、軸方向に沿って延びており、径方向の下端が前記本体の底面を通り抜けて外部へ開口した調整スライド溝を有し、前記径方向が前記軸方向に直交し、前記底面が前記軸方向と平行する本体と、
前記調整スライド溝とは、形状が合わせて、前記調整スライド溝に液密して摺動可能に結合される調整スライダを有するコアと、
前記本体又は/及び前記コアに製造され、素材を受け入れる少なくとも1つの入口と、
前記本体と前記コアの両方により画定される収容スペースからなり、前記少なくとも1つの入口から受け入れた前記素材を収容するためのチャネルと、
前記チャネルの底端に形成され、前記調整スライド溝と前記調整スライダの両方により境界を限定され、前記素材を押出するためのスリット出口と、を含む、スリットを調整可能な押出ヘッドであって、
前記本体は、前記軸方向に沿って延びており、前記チャネルに連通し、前記本体の底面から離れて設けられた平衡摺動部をさらに有し、
前記コアは、前記平衡摺動部とは、形状が合わせて、前記平衡摺動部に液密して摺動可能に結合される平衡嵌合部をさらに有し、
前記本体及び前記コアは、前記付加製造システムのラック機構により保持され、お互いに対して前記軸方向に沿って操作可能に摺動し、前記スリット出口の前記軸方向のスリット長さを調整し、前記調整スライダ及び前記平衡嵌合部のうちの一方は前記チャネルに入って収容スペースを圧縮させ、他方は前記チャネルから移出して収容スペースを拡大させ、単位時間内の前記圧縮量と前記拡大量は等しく設定され、前記チャネルは一定の容積を有するようになる、ことを特徴とするスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項2】
前記平衡嵌合部の前記軸方向での投影面積が、前記調整スライダの前記軸方向での投影面積に等しい、ことを特徴とする請求項1に記載のスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項3】
前記本体は、前記調整スライド溝と前記平衡摺動部との間に配置され、両方に連通している本体仕切り凹部をさらに有し、前記本体仕切り凹部と前記コアとの間に径方向隙間があり、前記径方向隙間は前記チャネルの一部となる、ことを特徴とする請求項2に記載のスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項4】
前記コアは、前記調整スライダと前記平衡嵌合部との間に配置され、両方に連通しているコア仕切り凹部をさらに有し、前記コア仕切り凹部と前記本体との間に径方向隙間があり、前記径方向隙間は前記チャネルの一部となる、ことを特徴とする請求項2に記載のスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項5】
前記径方向隙間は、少なくとも部分的に環状チャネルとして構成され、前記環状チャネルの環状軸線が前記軸方向に直交する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載のスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項6】
前記調整スライド溝は、前記本体の底面から上へ延びているスリット部と、前記スリット部の上端から前記径方向に沿って延びている補助部とを含み、
前記調整スライダは、前記スリット部とは、形状が合わせて、前記スリット部に液密して摺動可能に結合されるスリット嵌合部と、前記補助部とは、形状が合わせて、前記補助部に液密して摺動可能に結合される補助嵌合部とを含み、
前記スリット嵌合部の前記軸方向での投影は矩形であり、又は上部が広く下部が狭いベル形状を有し、前記補助嵌合部の前記軸方向での投影の幾何学的形状には多角形、円形、楕円形、弓形、及びこれらの組み合わせが含まれ、
前記平衡嵌合部の前記軸方向での投影の幾何学的形状には、多角形、円形、楕円形、弓形、及びこれらの組み合わせが含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載のスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項7】
前記平衡嵌合部の前記軸方向での投影は前記補助嵌合部の前記軸方向での投影を完全に覆い、前記平衡嵌合部の前記軸方向での投影と前記補助嵌合部の前記軸方向での投影の差集合の幾何学的形状には、多角形、リング状、弓形、三日月形が含まれる、ことを特徴とする請求項6に記載のスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項8】
前記調整スライダと前記平衡嵌合部は一体化シートとして構成され、前記調整スライダと前記平衡嵌合部の前記軸方向での投影は、垂直方向において所定の距離だけずれた合同矩形として構成され、前記垂直方向は前記軸方向に直交する、ことを特徴とする請求項3に記載のスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項9】
前記コアの前記軸方向の外端部に操作可能に作用する軸方向の引張力により、前記コアと前記本体がお互いに対して前記軸方向に沿って両方向に摺動するように駆動される、ことを特徴とする請求項1に記載のスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項10】
前記本体は2つのハーフモールドを一体に合わせることにより形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項11】
前記スリット出口の軸方向境界を限定する前記調整スライド溝と前記調整スライダの軸方向の側端面は内へ広がる流動促進傾斜面を有し、前記流動促進傾斜面と垂直方向がなす角度は流動促進角αとなり、流動促進角αの範囲は3°~10°である、ことを特徴とする請求項1に記載のスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項12】
前記チャネルに接近して設けられ、前記チャネルに収容された前記素材を溶融して溶融流れとし、又は溶融流れを少なくとも押出可能な状態に維持する加熱部をさらに含み、
前記加熱部の加熱方式は抵抗加熱と誘導加熱を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項13】
前記本体と前記コアの底面にコーティングを有し、前記コーティングの材質は前記素材との濡れ性が悪い、ことを特徴とする請求項1に記載のスリットを調整可能な押出ヘッド。
【請求項14】
スリットを調整可能な押出ヘッドを備えた付加製造システム装置であって、
請求項1~13のいずれか1項に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドを少なくとも1つ用いる、ことを特徴とする付加製造システム装置。
【請求項15】
ローラ式素材供給部、スクリュー押出送り式素材供給部、及び計量フィードポンプ式素材供給部を含む少なくとも1つの素材供給部と、
前記スリットを調整可能な押出ヘッドの前記スリット出口の下方に接近して作動し、3次元(3D)造形物を載置するための1つの基礎構築プラットホーム部と、
前記スリットを調整可能な押出ヘッドを保持して駆動し、それにより、前記スリットを調整可能な押出ヘッドと前記基礎構築プラットホームが命令に従ってデカルト座標系中の「X」、「Y」及び「Z」軸に沿って互いに3次元的に移動し、前記スリットを調整可能な押出ヘッドの前記本体と前記コアが命令に従って互いに前記「X」軸方向に沿って摺動し、さらに、前記スリットを調整可能な押出ヘッドと前記基礎構築プラットホームが命令に従って前記「Z」軸を軸心として互いに水平に回転し、さらに前記付加製造システム装置自体も全体として命令に従って前記「Y」軸を軸心として回転することを可能とするラック機構部であって、駆動装置、伝動装置、及び案内装置を含み、前記駆動装置はステッピングモータ、サーボモータ及びリニアモータを含み、前記伝動装置は同期ベルト伝動装置、ロープ伝動装置、螺旋伝動装置、歯車伝動装置、及びリニアモータ伝動装置を含み、前記案内装置はリニアスライドレールを含むラック機構部とをさらに含む、請求項14に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドを備えた付加製造システム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は押出に基づく付加製造システムに関し、特に、押出に基づく付加製造システムで使用される押出ヘッドユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
押出に基づく付加製造システム(例えば、米国特許番号5121329で開示された「Apparatus and method for creating three-dimensional objects3次元物品を製造する装置及び方法」)は、流動性のある消耗性素材を押出して積層方式により3次元(3D)造形物のデジタル表現に従って3次元(3D)造形物を構築するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
技術的課題
従来の押出に基づく付加製造システムでは、押出ヘッドが固定孔径の押出口を有する点形押出ヘッドであり、このような点形押出ヘッドは、「点が移動して線になる」線形堆積から始まり、次に線が互いに集まり面となり、最後に、面が絶えずに集まり体となるような成形プロセスであり、このように「点-線-面-体」のような一般的な成形技術では、解決しなければならない問題は以下のとおりである。
【0004】
(1)3次元(3D)造形物の成形や製造に時間がかかり、成形効率が低く、押出ヘッドの材料押出能力が成形効率向上を制限するボトルネックとなる。
【0005】
(2)3次元(3D)造形物の成形ワークでは、空隙率が高く、緻密性が低く、その結果、3次元(3D)造形物の機械的特性の向上が困難になる。
【0006】
中華人民共和国国家知識産権局で公布された公告番号CN204222625Uの押出流量を調整可能な3次元プリンタジェットヘッド、公告番号CN205167581Uの線形走査ジェットヘッド、及び公告番号CN107344419Aの3次元物品プリンタ用の押出機組立体のいずれも、少なくとも1つのバッフルブロック(又はバッフル板やピストンという)を駆動することにより押出スリットの長さを変えて、異なる押出流量を出力する調整可能な押出口を有し、それにより、成形効率を効果的に向上させる。ただし、上記の3つの文献に記載の技術案のいずれにも、以下の問題が解決されなければならない。
【0007】
(1)流体材料を収容するチャネルの容積が、バッフルブロック(又はバッフル板やピストンという)の動きに応じて変わり、それにより、押出流量の正確な制御が複雑かつ困難になり、その結果、3次元(3D)造形物には過剰堆積や堆積不足という成形の欠陥が生じるリスクがあり、3次元(3D)造形物の成形品質や成形精度が深刻に制限されてしまう。
【0008】
(2)前記バッフルブロック(又はバッフル板やピストンという)が押出流量を減少させるために動くときに、このバッフルブロック(又はバッフル板やピストンという)に作用する駆動力と摩擦力が対向する軸方向の押出力であるため、このバッフルブロックが径方向に屈曲変形するリスクがあり、特に前述調整可能な押出口の押出スリットの長さの調整範囲が大きいほど、このような径方向変形のリスクや変形量が大きくなり、その結果、このバッフルブロック(又はバッフル板やピストンという)の位置決め精度に悪影響を与え、最終的には3次元(3D)造形物の成形精度に影響を及ぼす。
【0009】
(3)チャネル内に流動停滞領域(デッドゾーン)が存在し、素材がチャネル内で長時間滞留すると、素材が変質したりする(例えば、高分子粘性流体材料の炭化や合金材料の結晶組織の粗大化)危害がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
技術的解決手段
本開示の目的は、上記問題を解決するために、押出に基づく付加製造システムで使用されるスリットを調整可能な押出ヘッドを提供することであり、第一には、従来の点形押出ヘッドの「点が移動して線になる」線形堆積に比べて、前記スリットを調整可能な押出ヘッドは「線が移動して面になる」面形堆積を提供し、成形効率を大幅に向上させ、3次元(3D)造形物は密度が大きく、強度が高く、第二には、このスリット式押出ヘッドは、チャネルの容積のバランスを自動的に取る構成とされているので、チャネルの容積を一定とし、それにより押出流量の制御を簡便とし、第三には、細長い棒状の摺動部品に対しては、このスリット式押出ヘッドは、押出スリットの長さを調整する過程において摺動部材に作用する駆動力が軸方向の引張力であるように構成され、明らかなように、このような構成とすると、摺動部材、特に細長い棒状の摺動部品が径方向に屈曲変形するというリスクを回避でき、第四には、このスリット式押出ヘッドのチャネルには、流動停滞領域の形成を回避する環状チャネル構造を有し、それにより、素材がチャネル内で長時間滞留して変質することを回避する。
【0011】
上記目的を達成させるために、本開示は下記技術案を提供する。
【0012】
(1)押出に基づく付加製造システムに使用され、本体であって、軸方向に沿って延びており、径方向の下端が前記本体の底面を通り抜けて外部へ開口した調整スライド溝を有し、前記径方向が前記軸方向に直交し、前記底面が前記軸方向と平行する本体と、前記調整スライド溝とは、形状が合わせて、前記調整スライド溝に液密して摺動可能に結合される調整スライダを有するコアと、前記本体又は/及び前記コアに製造され、素材を受け入れる少なくとも1つの入口と、前記本体と前記コアの両方により画定される収容スペースからなり、前記少なくとも1つの入口から受け入れた前記素材を収容するチャネルと、前記チャネルの底端に形成され、前記調整スライド溝と前記調整スライダの両方により境界を限定され、前記素材を押出するためのスリット出口とを含む、スリットを調整可能な押出ヘッドであって、前記本体は、前記軸方向に沿って延びており、前記チャネルに連通し、前記本体の底面から離れて設けられた平衡摺動部をさらに有し、前記コアは、前記平衡摺動部とは、形状が合わせて、前記平衡摺動部に液密して摺動可能に結合される平衡嵌合部をさらに有し、前記本体及び前記コアは、前記付加製造システムのラック機構により保持され、お互いに対して前記軸方向に沿って操作可能に摺動し、前記スリット出口の前記軸方向のスリット長さを調整し、前記調整スライダ及び前記平衡嵌合部のうちの一方は前記チャネルに入って収容スペースを圧縮させ、他方は前記チャネルから移出して収容スペースを拡大させ、単位時間内の前記圧縮量と前記拡大量は等しく設定され、前記チャネルは一定の容積を有するようになる。
【0013】
(2)さらに、上記(1)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドにおいて、前記平衡嵌合部の前記軸方向での投影面積が、前記調整スライダの前記軸方向での投影面積に等しい。
【0014】
(3)さらに、上記(2)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドにおいて、前記本体は、前記調整スライド溝と前記平衡摺動部との間に配置され、両方に連通している本体仕切り凹部をさらに有し、前記本体仕切り凹部と前記コアとの間に径方向隙間があり、前記径方向隙間は前記チャネルの一部となる。
【0015】
(4)さらに、上記(2)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドにおいて、前記コアは、前記調整スライダと前記平衡嵌合部との間に配置され、両方に連通しているコア仕切り凹部をさらに有し、前記コア仕切り凹部と前記本体との間に径方向隙間があり、前記径方向隙間は前記チャネルの一部となる。
【0016】
(5)さらに、上記(3)又は(4)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドにおいて、前記径方向隙間は、少なくとも部分的に環状チャネルとして構成され、前記環状チャネルの環状軸線が前記軸方向に直交する。
【0017】
(6)さらに、上記(1)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドにおいて、前記調整スライド溝は、前記本体の底面から上へ延びているスリット部と、前記スリット部の上端から前記径方向に沿って延びている補助部とを含み、前記調整スライダは、前記スリット部とは、形状が合わせて、前記スリット部に液密して摺動可能に結合されるスリット嵌合部と、前記補助部とは、形状が合わせて、前記補助部に液密して摺動可能に結合される補助嵌合部とを含み、前記スリット嵌合部の前記軸方向での投影は矩形であり、又は上部が広く下部が狭いベル形状を有し、前記補助嵌合部の前記軸方向での投影の幾何学的形状には多角形、円形、楕円形、弓形、及びこれらの組み合わせが含まれ、前記平衡嵌合部の前記軸方向での投影の幾何学的形状には、多角形、円形、楕円形、弓形、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0018】
(7)さらに、上記(6)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドにおいて、前記平衡嵌合部の前記軸方向での投影は前記補助嵌合部の前記軸方向での投影を完全に覆い、前記平衡嵌合部の前記軸方向での投影と前記補助嵌合部の前記軸方向での投影の差集合の幾何学的形状には、多角形、リング状、弓形、三日月形が含まれる。
【0019】
(8)さらに、上記(3)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドにおいて、前記調整スライダと前記平衡嵌合部は一体化シートとして構成され、前記調整スライダと前記平衡嵌合部の前記軸方向での投影は、垂直方向において所定の距離だけずれた合同矩形として構成され、前記垂直方向は前記軸方向に直交する。
【0020】
(9)さらに、上記(1)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドにおいて、前記コアの前記軸方向の外端部に操作可能に作用する軸方向の引張力により、前記コアと前記本体がお互いに対して前記軸方向に沿って両方向に摺動するように駆動される。
【0021】
(10)さらに、上記(1)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドにおいて、前記本体は2つのハーフモールドを一体に合わせることにより形成される。
【0022】
(11)さらに、上記(1)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドにおいて、前記スリット出口の軸方向境界を限定する前記調整スライド溝と前記調整スライダの軸方向の側端面は内へ広がる流動促進傾斜面を有し、前記流動促進傾斜面と垂直方向がなす角度は流動促進角αとなり、流動促進角αの好適な範囲は3°~10°である。
【0023】
(12)さらに、上記(1)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドにおいて、前記チャネルに接近して設けられ、前記チャネルに収容された前記素材を溶融して溶融流れとし、又は溶融流れを少なくとも押出可能な状態に維持する加熱部をさらに含み、前記加熱部の加熱方式は抵抗加熱と誘導加熱を含む。
【0024】
(13)さらに、上記(1)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドにおいて、前記本体と前記コアの底面にコーティングを有し、前記コーティングの材質は前記素材との濡れ性が悪い。
【0025】
(14)スリットを調整可能な押出ヘッドを備えた付加製造システム装置であって、上記(1)~(13)のいずれか1項に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドを少なくとも1つ用いる。
【0026】
(15)さらに、上記(14)に記載のスリットを調整可能な押出ヘッドを備えた付加製造システム装置において、ローラ式素材供給部、スクリュー押出送り式素材供給部、及び計量フィードポンプ式素材供給部を含む少なくとも1つの素材供給部と、前記スリットを調整可能な押出ヘッドの前記スリット出口の下方に接近して作動し、3次元(3D)造形物を載置するための1つの基礎構築プラットホーム部と、前記スリットを調整可能な押出ヘッドを保持して駆動し、それにより、前記スリットを調整可能な押出ヘッドと前記基礎構築プラットホームが命令に従ってデカルト座標系中の「X」、「Y」及び「Z」軸に沿って互いに3次元的に移動し、前記スリットを調整可能な押出ヘッドの前記本体と前記コアが命令に従って互いに前記「X」軸方向に沿って摺動し、さらに、前記スリットを調整可能な押出ヘッドと前記基礎構築プラットホームが命令に従って前記「Z」軸を軸心として互いに水平に回転し、さらに前記付加製造システム装置自体も全体として命令に従って前記「Y」軸を軸心として回転することを可能とするラック機構部であって、駆動装置、伝動装置、及び案内装置を含み、前記駆動装置はステッピングモータ、サーボモータ及びリニアモータを含み、前記伝動装置は同期ベルト伝動装置、ロープ伝動装置、螺旋伝動装置、歯車伝動装置、及びリニアモータ伝動装置を含み、前記案内装置はリニアスライドレールを含むラック機構部とをさらに含む。
【発明の効果】
【0027】
有益な効果
本開示によれば、構造がシンプルであり、一定のチャネル容積を有し、押出流量に対する正確な制御を実質的に実現でき、調整や位置決めの精度が高く、素材の物理化学的特性を安定的にするスリットを調整可能な押出ヘッドを提供することができ、このスリットを調整可能な押出ヘッドを用いた付加製造システムは、成形効率、成形品質や3次元(3D)造形物の機械的特性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第1の実施例の正面斜視図である。
図1B図1Aで切断された断面1B-1Bの断面図である。
図1C図1Aで切断された断面1C-1Cの断面図である。
図1D図1Bで切断された断面1D-1Dの断面図である。
図1E図1Bで切断された断面1E-1Eの断面図である。
図1F】前記本体が垂直に分割された2つのハーフモールドを一体に合わせてなることを示す第1の実施例の分解斜視図である。
図2A】本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第2の実施例の正面断面図である。
図2B図2Aで切断された断面2B-2Bの断面図である。
図2C図2Aで切断された断面2C-2Cの断面図である。
図2D図2Aで切断された断面2D-2Dの断面図である。
図3A】本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第3の実施例の正面断面図である。
図3B図3Aで切断された断面3B-3Bの断面図である。
図3C図3Aで切断された断面3C-3Cの断面図である。
図3D図3Aで切断された断面3D-3Dの断面図である。
図3E】第3の実施例の調整スライダの前記軸方向での投影の拡大図であり、図においては網掛け部分でスリット嵌合部を示す。
図3F】第3の実施例の平衡嵌合部と補助嵌合部の前記軸方向での投影の拡大図であり、図においては平衡嵌合部と補助嵌合部の前記軸方向での投影の差集合がリング状であることを網掛け部分で示す。
図3G】前記本体が水平に分割された2つのハーフモールドを一体に合わせてなることを示す第3の実施例の分解斜視図である。
図4A】本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第4の実施例の正面断面図である。
図4B図4Aで切断された断面4B-4Bの断面図である。
図4C図4Aで切断された断面4C-4Cの断面図である。
図4D図4Aで切断された断面4D-4Dの断面図である。
図5A】本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第5の実施例の正面断面図である。
図5B図5Aで切断された断面5B-5Bの断面図である。
図5C図5Aで切断された断面5C-5Cの断面図である。
図5D図5Aで切断された断面5D-5Dの断面図である。
図5E】第5の実施例の平衡嵌合部と補助嵌合部の前記軸方向での投影の拡大図であり、図においては、平衡嵌合部と補助嵌合部の前記軸方向での投影の差集合が弓形であることを網掛け部分で示す。
図6A】本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第6の実施例の正面断面図である。
図6B図6Aで切断された断面6B-6Bの断面図である。
図6C図6Aで切断された断面6C-6Cの断面図である。
図6D図6Aで切断された断面6D-6Dの断面図である。
図6E】第6の実施例の平衡嵌合部と補助嵌合部の前記軸方向での投影の拡大図であり、図においては、平衡嵌合部と補助嵌合部の前記軸方向での投影の差集合が三日月形であることを網掛け部分で示す。
図7A】本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第7の実施例の正面断面図である。
図7B図7Aで切断された断面7B-7Bの断面図である。
図7C図7Aで切断された断面7C-7Cの断面図である。
図7D図7Aで切断された断面7D-7Dの断面図である。
図8A】本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第8の実施例の正面断面図である。
図8B図8Aで切断された断面8B-8Bの断面図である。
図8C図8Aで切断された断面8C-8Cの断面図である。
図8D図8Aで切断された断面8D-8Dの断面図である。
図9A】本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第9の実施例の正面斜視図である。
図9B図9Aで切断された断面9B-9Bの断面図である。
図9C図9Aで切断された断面9C-9Cの断面図である。
図9D図9Bで切断された断面9D-9Dの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本開示の技術案を説明するが、明らかなように、説明する実施例は本開示の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではない。当業者が本開示の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに得られる全ての他の実施例は、本開示の特許範囲に属する。
【0030】
なお、別に規定がない限り、本開示で使用される以下の用語は以下のような意味を有する。
【0031】
「軸方向」、「軸線」という用語は、前記スライド溝と前記スライダの相対摺動方向を意味し、該用語は、同心軸線が必要とされず、円柱形のスライド溝とスライダにも、非円柱形のスライド溝とスライダにも適用でき、前記非円柱形のスライド溝とスライダの断面形状には、楕円形、多角形、弓形及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0032】
「連通」、「接続」という用語は広義で理解すべきであり、例えば、固定して接続されてもよく、取り外し可能に接続されてもよく、一体に接続されてもよい。機械的に接続されてもよく、電気的に接続されてもよい。直接連結してもよく、これらの間に設けられた1つ又は複数の別の中間部材を介して間接的に連結してもよく、2つの構成要素の内部が連通してもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本開示での具体的な意味を理解することができる。
【0033】
「指令」という用語は、制御信号を直接及び/又は間接的にコントローラユニットから装置に転送し、前記装置を転送信号に従って作動させることを意味する。信号は、任意の形態で転送されてもよく、例えば装置のマイクロプロセッサへの通信信号が、電力を操作装置に印加するなどする。
【0034】
「好ましい」、「好ましくは」、「好適」及び「好適には」という用語は、場合によって、いくつかの利益を与える本開示の実施例を指す。しかしながら、他の実施例も、同じ場合又は他の場合においては、好ましい又は例示的なものであってもよい。さらに、1つ又は複数の好ましい又は例示的な実施例の詳細は、他の実施例が不可能であることを示唆するものではなく、また、他の実施例が本開示の範囲から排除されることも意味しない。
【0035】
「長さ」、「幅」、「厚さ」、「高さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、」底」、「内」、「外」、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などの用語により示される方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本開示の説明の便宜及び説明の簡潔さのために過ぎず、係る装置又は構成要素が必ず特定の方位を有したり、特定の方位で構成、操作されたりすることを指示又は示唆するものではなく、このため、本開示を制限するものとして理解できない。
【0036】
「約」及び「実質的には」という用語は、ここで当業者に公知の予期される変化(例えば、測定の制限性や変動性)の測定可能な値や範囲を意味する。
【0037】
「弓形」という用語は、弦とそれに対する弧とからなる図形のことであり、円上の1本の弦により円が2つの部分に分割され、得られた2つの部分はいずれも弓形と呼ばれ、弓形の弧が半円よりも小さい場合、用語の名称は「劣弧弓」であり、弓形の弧が半円よりも大きい場合、用語の名称は「優弧弓」である。
【0038】
用語「差集合」に関しては、集合Aに属しかつ集合Bに属しない全ての要素からなる集合が、集合Aと集合Bの差集合(又は集合Aから集合Bを取り去る)と呼ばれ、A-Bと記し、即ち
【0039】
である。
【0040】
説明の簡素化及び理解しやすさから、図面においては、点線で示される図面のマーキングラインは、図面の隠された部位に指し示すことを意味する。
【0041】
図1A図1Fは、本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第1の実施例を示し、図1Aは第1の実施例の正面斜視図であり、図1Aに示すように、このスリットを調整可能な押出ヘッドは、軸線100に沿ってお互いに対して操作可能に摺動する本体101及びコア102と、本体101の前記付加製造システムに外付けされる材料供給装置(未図示)に接続され、素材を受け入れるための入口139と、本体101とコア102の両方により画定され、入口139から受けられた前記素材を収容するためのチャネル103と、チャネル103の底端に位置し、片状又は膜状の前記素材を押出するためのスリット出口130と、を含む。
【0042】
図1B図1Cは、それぞれ、図1Aで切断された断面1B-1B及び断面1C-1Cの断面図であり、図1D図1Eは、それぞれ、図1Bで切断された断面1D-1D及び断面1E-1Eの断面図であり、図1B図1Eに示すように、本体101は、軸線100に沿って延びており、かつ径方向の下端が本体101の底面を通り抜けて外部へ開口した調整スライド溝113と、軸線100に沿って延びており、本体101の底面から離れて設けられた平衡摺動部116と、平衡摺動部116と調整スライド溝113との間に配置され、両方に連通している本体仕切り凹部115と、をさらに有し、コア102は、調整スライド溝113とは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される調整スライダ123と、平衡摺動部116とは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される平衡嵌合部126とを有し、調整スライダ123と平衡嵌合部126は一体化シートとして構成され、前記調整スライダ123と前記平衡嵌合部126の前記軸方向での投影は、垂直方向において所定の距離だけずれた合同矩形として構成される。
【0043】
本体仕切り凹部115は環状溝の構造に配置され、コア102との間に径方向ギャップが形成され、該径方向ギャップはチャネル103の一部となり、チャネル103の中央領域に環状チャネルを形成し、該環状チャネルの環状軸線が軸線100に直交し、該環状チャネルの構成の有益な効果は、チャネルの短絡や顕著な局所流動停滞領域の形成を回避することにある。
【0044】
スリット出口130は、調整スライド溝113と調整スライダ123の両方により画定され、本体101及びコア102は、前記付加製造システムのラック機構(未図示)により保持され、コア102の外端部に作用する軸方向の引張力の作用により軸線100に沿ってお互いに対して操作可能に摺動し、それにより、スリット出口130のスリット長さW(図1B参照)が動的に調整され、ここで、調整スライダ123及び平衡嵌合部126のうちの一方はチャネル103に入って収容スペースを圧縮させ、他方はチャネル103から移出して収容スペースを拡大させ、調整スライダ123と平衡嵌合部126が等しい軸方向での投影面積を有するように構成されているので、単位時間内の前記圧縮量と前記拡大量は等しくなり、チャネル103は一定の容積を有するようになる。
【0045】
図1Bにおいて、軸線100の矢印方向は本体101とコア102が互いに摺動する動き方向を指し、コア102の外端部に作用する上記軸方向の引張力の方向は図1Bの軸線100の矢印に示される動き方向と一致し、軸方向の引張力により細長い棒状の摺動部品が駆動されるような構成は、前記コア102が径方向に屈曲変形するリスクを回避できるという有益な効果がある。
【0046】
図1Bに示すように、スリット出口130の軸方向境界を限定する調整スライド溝113と前記調整スライダ123の軸方向の側端面は内へ広がる流動促進傾斜面を有し、前記流動促進傾斜面と垂直方向がなす角度は流動促進角αとなり(図1Bでは、一方の側の流動促進角αのみが示されている)、流動促進角αの好適な範囲は3°~10°である。スリット出口130のスリット長さWの動的調整範囲はWmax~Wminであり、Wmaxの範囲は、好適には、1mm~4000mmであり、特に好適には、20mm~200mmであり、Wmin範囲は、好適には、0~0.5mmであり、特に好適には、0である。
【0047】
図1Dに示すように、調整スライド溝113はスリット幅Bとスリット高さHを有し、スリット幅Bの範囲は、好適には、0.01mm~5mmであり、特に好適には、0.1mm~0.4mmであり、スリット高さHとスリット幅Bとの比は、好適には、2~20の範囲、特に好適には、4~10の範囲内である。
【0048】
なお、コア102の外端部に作用する軸方向の引張力に関する上記の記載は本開示の第2~第7の実施例にも適用でき、流動促進角α、スリット長さW、スリット幅B及びスリット高さHに関する上記の記載は本開示の他の実施例にも適用でき、他の実施例の図面では、同じ図面の符号が使用されており、記載を簡素化させるために、後述する他の実施例では再度言及しない。
【0049】
図1Fは第1の実施例の分解斜視図であり、図1Fに示すように、本体101は、ハーフモールド101aとハーフモールド101bを位置決めピン105及び締付け具(未図示)で一体にしたものであり、図には、チャネル103に収容された前記素材を溶融して溶融流れとし、又は溶融流れを少なくとも押出可能な状態に維持するための抵抗式加熱部106が示されているが、他の任意の実施例では、加熱部106の加熱方式は誘導加熱も含む。
【0050】
図2A図2Dは本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第2の実施例を示し、図2Aは第2の実施例の正面断面図であり、図2B図2C図2Dは、それぞれ、図2Aで切断された断面2B-2B、2C-2C、2D-2Dの断面図であり、該実施例は、第1の実施例の1つの任意の実施例を示し、ここで、対応する図面の符号は「100」を追加したものであり、以下のことを除き、第2の実施例は第1の実施例と類似している。本体201には、入口239aと入口239bの2つの入口が設けられ、本体仕切り凹部215は分岐管の形状に構成され、入口239a及び入口239bは内部へ延びて、本体仕切り凹部215の軸方向の両端に連通し、2つの入口が設けられることにより、前記スリットを調整可能な押出ヘッドの押出能力を高める一方、2つの入口、分岐管形状の本体仕切り凹部215、及び未図示の材料供給装置は、本質的には共同で環状チャネルを構成し、その有益な効果も、チャネルの短絡や顕著な局所流動停滞領域の形成を回避することである。選択的に、該実施例では、平衡嵌合部226の厚さを大きくし、高さを小さくし、それによる有益な効果は、前記スリットを調整可能な押出ヘッドの径方向のサイズをコンパクトとすることである。
【0051】
図3A図3Gは、本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第3の実施例を示し、図3Aは第3の実施例の正面断面図であり、図3B図3C図3Dは、それぞれ、図3Aで切断された断面3B-3B、3C-3C、3D-3Dの断面図であり、図3A図3Dに示すように、このスリットを調整可能な押出ヘッドは、軸線300に沿ってお互いに対して操作可能に摺動する本体301及びコア302と、本体301の前記付加製造システムに外付けされる材料供給装置(未図示)に設けられ、素材を受け入れるための入口339と、本体301とコア302の両方により画定され、入口339から受けられた前記素材を収容するためのチャネル303と、前記チャネル303の底端に位置し、片状又は膜状の前記素材を押出するためのスリット出口330とを含む。
【0052】
本体301は、軸線300に沿って延びており、かつ径方向の下端が本体301の底面を通り抜けて外部へ開口した調整スライド溝313と、軸線300に沿って延びており、かつ本体301の底面から離れて設けられた平衡摺動部316とをさらに有し、コア302は、調整スライド溝313とは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される調整スライダ323と、平衡摺動部316とは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される平衡嵌合部326と、平衡嵌合部326と調整スライダ323との間に配置され、両方に連通しているコア仕切り凹部325と、を有する。
【0053】
平衡嵌合部326は、直径3D3(図3D参照)の円柱体として構成され、コア仕切り凹部325は平衡嵌合部326と同心の不完全な円柱体として構成され、コア仕切り凹部325は、上凹溝325aと、下凹溝325bと、上凹溝325a、下凹溝325bを連通させる貫通孔325c、貫通孔325dとを有し、上記凹溝と貫通孔で形成される径方向ギャップは、チャネル303の一部となり、チャネル303の中央領域に環状チャネルを形成し、該環状チャネルの環状軸線が軸線300に直交し、該環状チャネルの構成の有益な効果は、チャネルの短絡や顕著な局所流動停滞領域の形成を回避することにある。
【0054】
スリット出口330は、調整スライド溝313と調整スライダ323の両方により画定され、本体301及びコア302は、前記付加製造システムのラック機構(未図示)により保持され、コア302の外端部に作用する軸方向の引張力の作用により軸線300に沿ってお互いに対して操作可能に摺動し、それにより、スリット出口330のスリット長さW(図3A参照)が動的に調整され、ここで、調整スライダ323及び平衡嵌合部326のうちの一方はチャネル303に入って収容スペースを圧縮させ、他方はチャネル303から移出して収容スペースを拡大させ、調整スライダ323と平衡嵌合部326は軸線300に沿う軸方向での投影面積が等しいように構成されているので、単位時間内の前記圧縮量と前記拡大量は等しくなり、チャネル303は一定の容積を有するようになる。
【0055】
さらに、図3Cに示すように、調整スライド溝313は、前記本体301の底面から上へ延びているスリット部313aと、スリット部313aの上端から径方向に沿って延びている補助部313bとを含み、調整スライダ323は、スリット部313aとは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合されるスリット嵌合部323aと、補助部313bとは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される補助嵌合部323bと、を含み、補助嵌合部323bは、平衡嵌合部326と同心の円柱体として構成され、補助嵌合部323bの直径3D1が、コア仕切り凹部325の直径3D2よりもわずか0.001mm~1mm大きい。図3Eは、調整スライダ323の軸線300に沿う軸方向での投影の拡大図を示し、スリット嵌合部323aの軸方向での投影は図3Eの網掛け部分で示され、スリット嵌合部323aの軸方向での投影は、上部が広く下部が狭いベル形状であり、補助嵌合部323bの軸方向での投影は図3Eの非網掛け部分で示される。図3Fは、平衡嵌合部326及び補助嵌合部323bの軸線300に沿う軸方向での投影の拡大図を示し、平衡嵌合部326の軸方向での投影は補助嵌合部323bの軸方向での投影を完全に覆い、平衡嵌合部326の軸方向での投影と補助嵌合部323bの軸方向での投影との差集合がリング状である(図3Fの網掛け部分)。
【0056】
図3Gは第3の実施例の分解斜視図であり、図3Gに示すように、本体301は、ハーフモールド301aとハーフモールド301bを位置決めピン305及び締付け具(未図示)で一体にしたものである。
【0057】
図4A図4Dは本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第4の実施例を示し、図4Aは第4の実施例の正面断面図であり、図4B図4C図4Dは、それぞれ、図4Aで切断された断面4B-4B、4C-4C、4D-4Dの断面図であり、該実施例は第3の実施例の1つの任意の実施例を示し、ここで、対応する図面の符号は第3の実施例に対して「100」を追加したものであり、4A~図4Dに示すように、以下のことを除き、第4の実施例は第3の実施例と類似している。実施例3の貫通孔325c及び貫通孔325dの代わりとして、それぞれ環状溝425e及び環状溝425fが、上凹溝425aと下凹溝425bを連通させることに用いられる。
【0058】
図5A図5Eは本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第5の実施例を示し、図5Aは第5の実施例の正面断面図であり、図5B図5C図5Dは、それぞれ、図5Aで切断された断面5B-5B、5C-5C、5D-5Dの断面図であり、図5Eは、平衡嵌合部526及び補助嵌合部523bの軸線500に沿う軸方向での投影の拡大図を示し、該実施例は第3の実施例の別の任意の実施例を示し、ここで、対応する図面の符号は第3の実施例に対して「200」を追加したものであり、図5A図5Eに示すように、以下のことを除き、第5の実施例は第3の実施例と類似している。図5Eに示すように、補助嵌合部523bは、軸方向での投影が「優弧弓」の形状である不完全な円柱体として構成され、補助嵌合部523bは、平衡嵌合部526と等しい外径5D1を有し、平衡嵌合部526の軸方向での投影と補助嵌合部523bの軸方向での投影との差集合は「劣弧弓」の形状である(図5Eの網掛け部分)。
【0059】
図6A図6Eは本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第6の実施例を示し、図6Aは第6の実施例の正面断面図であり、図6B図6C図6Dは、それぞれ、図6Aで切断された断面6B-6B、6C-6C、6D-6Dの断面図であり、図6Eは、平衡嵌合部626及び補助嵌合部623bの軸線600の軸方向での投影の拡大図を示し、該実施例は、第3の実施例の1つの任意の実施例を示し、ここで、対応する図面の符号は第3の実施例に対して「300」を追加したものであり、図6A図6Eに示すように、以下のことを除き、第6の実施例は第3の実施例と類似している。図6Eに示すように、平衡嵌合部626は、軸方向での投影が、大径円と小径円が交差した形状の柱体であるように構成され、平衡嵌合部626は、補助嵌合部623bと等しい外径6D1を有し、平衡嵌合部626の軸方向での投影と補助嵌合部623bの軸方向での投影との差集合は三日月形である(図6Eの網掛け部分)。
【0060】
図7A図7Dは本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第7の実施例を示し、図7Aは第7の実施例の正面断面図であり、図7B図7C図7Dは、それぞれ、図7Aで切断された断面7B-3B、7C-7C、7D-7Dの断面図であり、図7A図7Dに示すように、このスリットを調整可能な押出ヘッドは、軸線700に沿ってお互いに対して操作可能に摺動する本体701及びコア702と、本体701の前記付加製造システムに外付けされる材料供給装置(未図示)に設けられ、素材を受け入れるための入口739と、本体701とコア702の両方により画定され、入口739から受けられた前記素材を収容するためのチャネル703と、前記チャネル703の底端に位置し、片状又は膜状の前記素材を押出するためのスリット出口730とを含む。
【0061】
本体701は、軸線700に沿って延びており、かつ径方向の下端が本体701の底面を通り抜けて外部へ開口した調整スライド溝713と、軸線700に沿って延びており、かつ本体701の底面から離れて設けられた平衡摺動部716と、調整スライド溝713と平衡摺動部716との間に配置され、両方に連通している本体仕切り凹部715とをさらに有し、コア702は、調整スライド溝713とは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される調整スライダ723と、平衡摺動部716とは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される平衡嵌合部726と、平衡嵌合部726と調整スライダ723との間に配置され、両方に連通しているコア仕切り凹部725とを有する。
【0062】
本体仕切り凹部715、コア仕切り凹部725、及び平衡摺動部716の径方向断面は円心が軸線700にある一連の同心円であり、本体仕切り凹部715とコア702の間には、チャネル703の一部となる径方向ギャップを有し、コア仕切り凹部725と本体701との間には径方向ギャップを有し、この径方向ギャップもチャネル703の一部となり、本体仕切り凹部715の平衡摺動部716に接近する一端は入口719に連通し、このような構成の有益な効果は、チャネル703内で軸方向に沿って順次流動することを可能とし、チャネル703の内部に顕著な局所流動停滞領域が形成されることを回避することにある。
【0063】
スリット出口730は、調整スライド溝713と調整スライダ723の両方により画定され、本体701及びコア702は、前記付加製造システムのラック機構(未図示)により保持され、コア702の外端部に作用する軸方向の引張力の作用により軸線700に沿ってお互いに対して操作可能に摺動し、それにより、スリット出口730のスリット長さW(図7A参照)が動的に調整され、ここで、調整スライダ723及び平衡嵌合部726のうちの一方はチャネル703に入って収容スペースを圧縮させ、他方はチャネル703から移出して収容スペースを拡大させ、調整スライダ723と平衡嵌合部726は軸線700に沿う軸方向での投影面積が等しいように構成されているので、単位時間内の前記圧縮量と前記拡大量は等しくなり、チャネル703は一定の容積を有するようになる。
【0064】
さらに、図7Cに示すように、調整スライド溝713は、前記本体701の底面から上へ延びているスリット部713aと、スリット部713aの径方向からずれた補助部713bとを含み、調整スライダ723は、スリット部713aとは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合されるスリット嵌合部723aと、補助部713bとは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される補助嵌合部723bとを含み、補助嵌合部723bは、平衡嵌合部726と同心の円柱体として構成され、スリット嵌合部723a及び補助嵌合部723bの形状及び位置の関係については図3Eを参照する。
【0065】
図8A図8Dは本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第8の実施例を示し、図8Aは第8の実施例の正面断面図であり、図8B図8C図8Dは、それぞれ、図8Aで切断された断面8B-8B、断面8C-8C、8D-8Dの断面図であり、図8A図8Dに示すように、このスリットを調整可能な押出ヘッドは、軸線800に沿ってお互いに対して操作可能に摺動する本体801及びコア802と、コア802の前記付加製造システムに外付けされる材料供給装置(未図示)に設けられ、素材を受け入れるための2つの入口、即ち入口839a及び入口839bと、本体801とコア802の両方により画定され、入口839a及び入口839bから受けられた前記素材を収容するためのチャネル803と、前記チャネル803の底端に位置し、片状又は膜状の前記素材を押出する1つのスリット出口830とを含む。
【0066】
本体801は、軸線800に沿って延びており、かつ径方向の下端が本体801の底面を通り抜けて外部へ開口した調整スライド溝813と、軸線800に沿って延びており、かつ本体801の底面から離れて設けられた平衡摺動部816とを有し、コア802は、調整スライド溝813とは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される調整スライダ823と、平衡摺動部816とは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される平衡嵌合部826とをさらに有し、調整スライダ823と平衡嵌合部826との間に軸方向の間隔距離L(図8A参照)を有し、該間隔距離Lによりコア802と本体801との間にチャネル803を構成する収容スペースが形成され、該収容スペースの軸方向の両端のそれぞれは入口839aと入口839bに連通し、2つの入口の構成により、チャネル803の内部に顕著な局所流動停滞領域が形成されることを回避する。
【0067】
スリット出口830は、調整スライド溝813と調整スライダ823の両方により画定され、本体801及びコア802は、前記付加製造システムのラック機構(未図示)により保持され、軸線800に沿ってお互いに対して操作可能に摺動し、それにより、スリット出口830のスリット長さW(図8A参照)が動的に調整され、ここで、調整スライダ823及び平衡嵌合部826のうちの一方はチャネル803に入って収容スペースを圧縮させ、他方はチャネル803から移出して収容スペースを拡大させ、調整スライダ823と平衡嵌合部826は軸線800に沿う軸方向での投影面積が等しいように構成されているので、単位時間内の前記圧縮量と前記拡大量は等しくなり、チャネル803は一定の容積を有するようになる。
【0068】
図9A図9Dは本開示のスリットを調整可能な押出ヘッドの第9の実施例を示し、図9Aは第9の実施例の正面斜視図であり、図9Aに示すように、このスリットを調整可能な押出ヘッドは、軸線900に沿ってお互いに対して操作可能に摺動する本体901及びコア902と、コア902の前記付加製造システムに外付けされる材料供給装置(未図示)に設けられ、素材を受け入れるための入口939と、本体901とコア902の両方により画定され、入口939から受けられた前記素材を収容するためのチャネル903と、前記チャネル903の底端に位置し、片状又は膜状の前記素材を押出するためのスリット出口930と、を含む。
【0069】
図9B図9Cは、それぞれ、図9Aで切断された断面9B-9B、断面9C-9Cの断面図であり、図9D図9Bで切断された断面9D-9Dの断面図であり、図9B図9Dに示すように、本体901は、摺動平面910と、摺動平面910に設けられ、軸線900に沿って延びており、かつ径方向の下端が本体901の底面を通り抜けて外部へ開口した調整スライド溝913と、摺動平面910に設けられ、軸線900に沿って延びており、かつ本体901の底面から離れて設けられた平衡摺動部916と、摺動平面910に設けられ、平衡摺動部916と調整スライド溝913との間に配置され、両方に連通している本体仕切り凹部915とをさらに有し、コア902は、摺動平面910とは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される摺動適合平面920と、調整スライド溝913とは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される調整スライダ923と、平衡摺動部916とは、形状が合わせて、液密して摺動可能に結合される平衡嵌合部926と、を有する。
【0070】
本体仕切り凹部915は、環状溝の構造に配置され、コア902との間に径方向ギャップを形成し、該径方向ギャップはチャネル903の一部となり、チャネル903の中央領域に環状チャネルを形成し、該環状チャネルの環状軸線が軸線900に直交し、該環状チャネルの構成の有益な効果は、チャネルの短絡や顕著な局所流動停滞領域の形成を回避することにある。
【0071】
スリット出口930の軸方向境界は調整スライド溝913と調整スライダ923の両方により画定され、本体901及びコア902は前記付加製造システムのラック機構(未図示)により保持され、軸線900に沿ってお互いに対して操作可能に摺動し、それにより、スリット出口930のスリット長さW(図9A参照)が動的に調整され、ここで、調整スライダ923及び平衡嵌合部926のうちの一方はチャネル903に入って収容スペースを圧縮させ、他方はチャネル903から移出して収容スペースを拡大させ、調整スライダ923及び平衡嵌合部926が等しい軸線900の軸方向での投影面積を有するように構成されているので、単位時間内の前記圧縮量と前記拡大量は等しくなり、チャネル903は一定の容積を有するようになる。
【0072】
上記実施例の前記スリット出口の外端面にコーティングを有し、前記コーティングの材質は前記素材との濡れ性が悪く、適切なコーティング材料として、フッ化重合体(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、及びパーフルオロアルコキシ重合体)、ダイヤモンド型炭素材料、及びこれらの組み合わせが含まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D